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参加者の集中度・得意度を考慮したワークショップの定量評価

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(1)参加者の集中度・得意度を考慮したワークショップの定量評価 Evaluation for Experiential Learning Based on Relationship between Children’s Subjective Impression and Degree of Concentration 政倉祐子 愛知淑徳大学創造表現学部 若林尚樹 東京工科大学デザイン学部 田邉里奈 千葉工業大学先進工学部. MASAKURA Yuko. WAKABAYASHI Naoki Tokyo University of Technology TANABE Rina. Chiba Institute of Technology. 1.はじめに. 的な評価を時系列で分析したものがある3、8)。後者は、著者ら. 1.1. 学びのためのワークショップと従来の評価. によって提案された評価ツール「気持ち温度計」を用いた評価. 昨今では、子どもたちを参加対象とした学びのための様々な. 手法7) であり、ワークショップに参加する子どもたちが自ら. ワークショップが数多く行われている。例えば柚木ら1)のワー. ワークショップ中に感じる印象の主観評定を行うものである。. クショップでは、球転がし装置の制作をテーマに、子どもたち. 3つの評価指標毎にプログラム進行にそって変化する傾向の分. が協働で問題解決に取り組む力を育むことを目的としている。. 析から、評価結果に影響した要因として、プログラム中の各ス. また田邉ら. のワークショップでは、水生生物の観察と対象. テップの目標設定、作業の難易度などのワークショップの企. 生物になりきる体験を通して、その過程での気づきをより深い. 画・設計上の項目を指摘することが可能である。このような評. 理解につなげることを目的としている。このようなワークショッ. 価により、ワークショップの企画・設計上で考慮すべき項目の. プにおけるプログラムは、各ワークショップの目的に対して参. 体系的な整理を行うことができる。しかしながら参加者による. 加者である子どもたちが段階的に学ぶことができるよう、複数. 評価にあらわれる結果は、ワークショップの企画・設計上の項. の工程を経て進行するよう構成されている。プログラム構成に. 目に起因するものの他に、個々の参加者の参加状態(集中の度. おける具体的なステップとして、例えば「観察の体験」をテー. 合いや各作業への苦手意識等)に起因するものもあると考えら. マにしたワークショップのデザイン. について、ワークショッ. れる。子どもたちの参加状態を把握することができれば、ワー. プの全体像を参加者に伝えるための「導入」 、学びの対象とな. クショップにおける学びの密度を高め、より効果的なものとす. る生物等の題材の紹介と観察のポイントの「レクチャー」 、題. ることができるかもしれない。. 材の「観察」 、観察から得た気付きや記録をもとにした「制作」 、. 1.2. 参加者の集中度と得意度. 2、 3). 4). 制作物を通してスタッフや他の参加者と体験を話し合い共有す. 情報化社会が発展し急速に増加した情報の中から必要な情報. る「振り返り」のステップが挙げられている。各工程に設定さ. を処理するためには、集中力が不可欠であり、学習効果を示す. れた目標を段階的に達成していくことによって、ワークショッ. 指標として計測するための検討が多くなされてきている。学習. プの大きな目的の達成につながるよう設計されている。. 場面の集中度を計測する手法としては、学習者の椅子の加速度. 以上のように、昨今のワークショップでは、子どもたちがよ. によるもの9)、瞬目や視線によるもの10)等、行動指標や生理指. り効果的に学習することができる場となるよう様々な工夫が凝. 標を用いたものがある。これらの指標計測により、学習者の集. らされている。一方で、ワークショップの効果計測に関する一. 中度の変化を高い時間解像度で捉えることができる。しかしな. 般的手法はなく、各ワークショップで独自の評価が行われてい. がら、計測時に学習者が着座状態であること、眼球運動計測の. る。最も多く見受けられる方法は、ワークショップ終了後に行. ための機器を装着すること等、計測環境に制約があるため計測. う“楽しかった”、“おもしろかった”等の段階評定や、自由記. 時に移動することは困難であり、装置を着用することは学習者. 述による感想を求めるアンケートである。この方法は、評価性. に少なからず負担をかけるため自然な行動が望めない。また、. を表す(良し悪しの判断のようにポジティブ/ネガティブが明. 学習者ごとに装置が必要となるため、多人数の同時計測にも不. 白である特徴をもつ )用語による評価では高評定値に偏って. 向きであると考えられる。そこで、第3者による集中度の評価. しまうこと. 、自由記述による感想ではボキャブラリーが限. として、現場教師により集中度を評定させた検討がある11)。第. 定的になってしまうこと等の問題があり、定量的な効果計測の. 3者の主観的な評価ではあるものの、IT 活用の学習効果を有意. 手法として十分とは言えない。定量評価を試みた手法として、. に見出すことが可能であると示されている。本研究では、学び. ワークショップ開催前後に感情評定を行うことによりその変化. の密度を高め、より効果的なものとするために必要と考えられ. を分析したもの 、3つの評価指標(高揚感、達成感、難易度). る参加者の集中度を、第3者であるワークショップスタッフに. に基づきワークショップ中に複数回評定を行うことにより多面. よる評定を行い、参加者による主観評価との対応関係を検討す. 5). 6、7). 1). 46. Aichi Shukutoku University. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016.

(2) る。また集中度に加え、参加者による主観評価に影響すること. の問いかけや補足説明を受けながら水槽正面から観察し、観. が示されている. 察ノートに書き込んだ。「制作1」では、魚の外形が描かれた. 各工程の作業内容に対する得意度も合わせて. 7). スタッフによる評定を行うこととする。. シール台紙に様々な色のドットシールを貼ることにより魚の模. 1.3. 目的. 様を描いた。「観察2」では、モビール制作時の魚の位置に関. 本研究では、評価ツール「気持ち温度計」を用いたワーク. して、水槽内での魚の泳ぐ場所、深さを調べることを目標と. ショップの参加者による主観評価の蓄積を行うとともに、ス. し、水槽正面からの観察に加え、岩場に近い水槽側面の窓にも. タッフの評定による参加者の集中度、得意度を新たな指標とし. 移動し、飼育スタッフと学生スタッフがサポートしながら観. た評価分析を試みる。参加者による主観評価とスタッフによる. 察した。「制作2」では、参加者がドットシールで描いた台紙. 参加者の集中度、得意度の評価との関係について検討すること. のスキャン画像を縮小印刷した魚のモデルを参加者間で交換. により、ワークショップの効果について複数の側面から定量的. し、参加者ごとに3種類の魚のモデルを組み立て、モビールの. に評価する手法を探る。. 制作を行った。「振り返り」では、参加者、ワークショップの スタッフ、水族館のスタッフの全員で完成した作品についてコ. 2.評価対象としたワークショップ. メントを交換し、記念撮影を行った。プログラムのタイムスケ. 東京工科大学デザイン学部 Crew プロジェクトとすみだ水族. ジュールは、導入・レクチャーを15分、観察1を15分、制作. 館との共同開発プログラムとして企画実施したワークショップ. 1を15分、観察2を20分、制作2を25分、振り返りを10分. “いきもののモビールを作って考えよう!∼さかなの模様のフ. とし、計100分であった。. シギ?∼”(2016[平成28]年3月12­13日)を対象に評価. ワークショップの参加者は、1回の定員を12名の事前申し. を行った。ワークショップでは、すみだ水族館の小笠原の海を. 込みとし、小学1年生から6年生までの児童31名(男児14名、. テーマとした“東京大水槽”で展示されている魚の模様や体型. 女児17名)であった。ワークショップのスタッフとして、8. の特徴とともに居場所や泳ぎ方等を観察し、それをもとに魚の. 名の学生スタッフ(ファシリテーター1名、黒板グラフィック. 模様をドットシールで描き、モビールの制作を行った . ワークショップのプログラムは、水生生物の「観察の体験」. ཷ௜. をテーマとしたワークショップのデザイン4)に沿い、「導入」、. ᑟධ. 「レクチャー」、「観察」、「制作」、「振り返り」の5段階の工程. 䝺䜽䝏䝱䞊. をもとに、図1に示すプログラム構成であった。ワークショッ プの様子の一部を図2に示す。プログラムを構成する各工程の 内容は、次の通りであった。「導入」と「レクチャー」では、 ワークショップのスタッフと水族館の飼育スタッフから、具体. ほᐹ1. ไస1. 的なプログラムの概要と、“東京大水槽”のテーマとなってい. Ẽᣢ䛱 ᗘィ1䠄⦎⩦䠅 䛿䛨䜑䜛䜎䛘䛻. Ẽᣢ䛱 ᗘィ2 ㄝ᫂䜢⪺䛔䛶䜏䛶 Ẽᣢ䛱 ᗘィ3 ほᐹ䛧䛶䜏䛶1 Ẽᣢ䛱 ᗘィ4 స䛳䛶䜏䛶1. ほᐹ2. ไస2. る小笠原諸島と魚の模様の原理や特徴についての説明が行われ た。「観察1」では、魚の模様を調べることを目標とし、レク. ᣺䜚㏉䜚. チャーで説明のあった模様が特徴的な5種類の魚の体形やひれ の形、模様の特徴を中心に、ワークショップのスタッフから. Ẽᣢ䛱 ᗘィ5 ほᐹ䛧䛶䜏䛶2 Ẽᣢ䛱 ᗘィ6 స䛳䛶䜏䛶2 Ẽᣢ䛱 ᗘィ7 䛚䜟䛳䛶䜏䛶. 図1 ワークショップのプログラムと評価のタイミング. 図2 ワークショップの様子の一部 左からレクチャー、制作1、振り返りの工程. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016. 47.

(3) [板書]担当2名、制作サポーター5名)と、レクチャーを担 当するすみだ水族館の飼育スタッフ1名が参加した。. 評定値を評価者の気持ちの程度を表す温度と位置づけることに より、評定に対する直感的な理解を促している。評価者は各温 度計内部を好きな色で塗りつぶすことにより評定を行う。3つ. 3.参加者による「気持ち温度計」の評価. の指標(高揚感:わくわくした、達成感:できた、難易度:む. 本研究では、参加者がワークショップ中に感じとる主な印 象である、高揚感、達成感、難易度の3つの指標. 6). をもとに、. ずかしかった)を3本の温度計で表し、指標ごとに色を塗り分 けることにより、指標の識別を促している。塗りつぶされた長. 参加者自身がプログラムの工程に沿って評定を行う評価シート. さをその指標の評定値とする。評定値は評価者ごとに標準化を. 「気持ち温度計」(図3) を用い定量評価を行う。以下にその. 行うため、段階評定法において生じる評定値の偏りは生じない。. 7). また、線分の長さを色で塗りつぶして表現する工夫を施すこと. 概要を説明する。 「気持ち温度計」を用いた評価の特徴は、参加者が感じる印 象(気持ち)の程度を工程ごとに線分の長さで表すマグニチュー ド推定(Magnitude Estimasion:ME)法. 12). が用いられている. ことにある。評価シート「気持ち温度計」の一部を図4に示す。. により、プログラムに制作工程を含むワークショップにおいて、 工程ごとに評定を行うことの違和感の軽減を図っている。 「気持ち温度計」による評価には、ワークショップを定量評 価すること以外にも、参加者がそのとき感じた気持ちを他の参 加者やスタッフと共有するという目的もある。参加者は、来場 後にワークショップスタッフの促しにより、自己紹介、名札の 作成、「気持ち温度計」の豆本作成、「気持ち温度計」への名前 の記入と練習評定を行う。これらの作業をワークショップ開始 前に行うことで、アイスブレークとして参加者とスタッフ、あ るいは参加者同士での気持ちの共有やコミュニケーションの きっかけ作りとなり、ワークショップ進行の円滑化を図る。 本研究で実施した評価には、次のような手続きをとった。参 加者は、来場後ワークショップ開始前にワークショップのスタッ フとともに A4サイズに印刷された評価シートを折り線にそって 折りたたみ、 「気持ち温度計」の豆本(75×105㎜)を作成し た。評定のタイミングは、受付後ワークショップ開始までの「は じめるまえに」 、ワークショップスタッフおよび飼育スタッフに. 図3 評価シート「気持ち温度計」. よるレクチャー後の「説明を聞いたとき(レクチャー) 」 、水槽で 観察した後の「観察してみて1(観察1) 」 、ドットシールでの制 作後の「作ってみて1(制作1) 」 、2度目に水槽で観察した後の 「観察してみて2(観察2) 」 、モビール制作後の「作ってみて2 5mm. (制作2) 」 、作品の感想を共有する等の振り返り終了後の「お わってみて(終了後) 」の7回であった(図1) 。各工程終了後、 参加者はそのとき感じた気持ちに関する3項目(高揚感:わく わくした、達成感:できた、難易度:むずかしかった)につい て「気持ち温度計」を用いて評定した。ワークショップ中、 「気 50mm. 持ち温度計」の豆本は各参加者が所持し、ワークショップのス タッフの指示により色塗りによる評定を行った。. 4.スタッフによる集中度・得意度の評価 前述のように本研究では、これまでに著者らが実施してきた 参加者による主観評価7) と共に、各工程における参加者の集 中度と得意度についてワークショップスタッフによる評定を実 施した。得られた集中度および得意度と、参加者による高揚 図4 参加者用の評価スケール(1工程分). 48. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016. 感、達成感、難易度の主観評価との関係について検討する。.

(4) 図5 スタッフ用の評価スケール(全工程分) 左:集中度、右:得意度. スタッフによる集中度と得意度の評価票を図5に示す。これ. 上もつ参加者4名分の評定値を除外した。結果、1年生4名(男. らの評価票は、参加者用の評価シート「気持ち温度計」の裏面. 児1名、女児3名) 、2年生1名(男児1名) 、3年生7名(男児4. にレイアウトした。ワークショップでは、スタッフ1名につき. 名、女児3名) 、4年生5名(男児4名、女児1名) 、5年生1名. 参加者2、3名のサポートを行ったため、各参加者の集中度お. (男児1名) 、6年生1名(女児1名) 、計19名の参加者の評定値を. よび得意度の評価は、サポートを担当したスタッフが行った。. 分析することとした。. スタッフによる各参加者の工程ごとの評定は、サポート作業を. 高揚感について、各工程における標準化マグニチュード推. 主とするワークショップ中には困難であるため、ワークショッ. 定(ME)値19名の平均(誤差棒は標準誤差)を図6(a)に. プ終了後に実施した。評価者は、各参加者について工程ごとの. 示す。同様に、図6(b)に達成感、図6(c)に難易度の評. 集中度(集中していた­気が散っていた)と得意度(得意そう. 価結果を示す。工程による参加者の気持ちの変化について検討. だった­苦手そうだった)を3段階の該当する箇所に丸をつけ. するため、6水準の工程(レクチャー・観察1・制作1・観察. ることにより評定を行った。. 2・制作2・振り返り)を1要因とした繰り返しのある分散分 析を指標ごとに行った。分析結果を以下に示す。. 5.評価の分析 5.1. 参加者による「気持ち温度計」の評価 参加者自身がワークショップの工程に沿い行った「気持ち温. 高揚感(図6[a] )について、工程による有意な主効果は認 められなかった(F(5, 90) =0.78,p > .10) 。工程によらず一 定した高揚感が得られたと考えられる。これに対して同様の評. 度計」による評定結果について分析する。評価票のモチーフと. 価手法を用いたワークショップの評価7)によると、高揚感は、. している温度計についての理解や、3つの指標の識別が可能で. ワークショップの時間進行や作業の能動性が影響し変化すると. あるか否かを考慮すると、評価者は小学3年生以上とすること. されている。すなわち、レクチャー・観察・制作・振り返りの. が原則であるが、評定値のプロフィールを確認したところ、小学. 工程でプログラム構成されたワークショップでは、プログラム. 1、2年生と3年生以上との間に著しい変化傾向の違いが認めら. が進行するにつれて、また、観察よりも能動性の高い制作の工. れなかったため、1、2年生の評定値も分析に含めることとした。. 程において達成感が高くなることが一般的傾向として示されて. 分析に先立ち、 「はじめるまえに」の評定値は練習とみなし除. いる。これらの傾向と、本ワークショップにおける傾向との違. 外した上、 「はじめるまえに」以外で計測不能(e.g.,“∞”と表記). いは、プログラム構成に起因するものと考えられる。本ワーク. あるいは欠損値のある参加者7名と全工程の評定値が同じ参加者. ショップでは、 「魚の模様について学び成果物としてモビールを. 1名の評定値を除外した。参加者ごとの評定値の平均は、19.44. 制作する」という目的のために、観察と制作の工程を1度ずつ. ㎜から43.78㎜(M =33.42、SD =15.81)であった。参加者ご. ではなく、観察1・制作1・観察2・制作2とし、各工程におけ. とに平均を用い評定値を標準化した。標準化後さらに、外れ値. る目標を段階的に設定した。つまり、まず魚の模様をドットシー. (23名の平均からの差が標準偏差の2倍以上である値)を3つ以. ルで描くための工程を観察1・制作1とし、次にモビール制作 デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016. 49.

(5) 1.0. 1.0. 1.0. 0.5. 0.5. 0.0. -0.5. -1.0. -1.5. Standardized ME value (䜐䛪䛛䛧䛛䛳䛯). 㻔㼏㻕㻌㞴᫆ᗘ. Standardized ME value (䛷䛝䛯). 㻔㼎㻕㻌㐩ᡂឤ. Standardized ME value (䜟䛟䜟䛟䛧䛯). 㻔㼍㻕㻌㧗ᥭឤ. 0.0. -0.5. -1.0. -1.5. 0.5. 0.0. -0.5. -1.0. -1.5. 図6 ワークショップの評価結果 誤差棒は標準誤差(SE )を示す. 時に魚の泳ぐ位置を表現するための工程を観察2・制作2とし. 身に容易でわかりやすいことが重要である。さらに、ワーク. た。このように最終目的に向かって目標を段階的に設定したこ. ショップ全体の目的と、各工程の目標との関連付けを参加者が. とによって、高揚感の変化も段階的に刻まれ、大きな変化とし. 自然に理解できるような考慮が必要であることが示唆される。. て現れなかった可能性が考えられる。各工程の目標を段階的に. 難易度(図6[c])について、工程による有意な主効果は. 設定する場合には、工程によらず一定した高揚感が得られ、各. 認められなかった(F(5, 90) =1.15,p > .10)。同様の評価. 工程の目標を段階的に設定できない場合には、変化に富んだ高. 手法を用いたワークショップの評価7)によると、難易度には、. 揚感が得られることが示唆される。. 具体的な作業のしやすさ、説明のわかりやすさが影響する要因. 達成感(図6[b])について、工程の主効果が有意であっ. として挙げられること、個人差が表れやすい指標であることが. た(F(5, 90)=2.53,p < .05)。Tukey の HSD 検 定 の 結 果、. 示されている。本ワークショップにおいては有意な難易度の変. レクチャーおよび観察2よりも振り返りにおいて達成感が高い. 化は認められなかったものの、他の高揚感や達成感の指標より. ことが示された(p < .05)。レクチャーと観察2において特に. もばらつきが大きかった(図6[c]の誤差棒)という点にお. 達成感が低く感じられていたことを意味している。同様の評価. いては共通した傾向であった。特に本ワークショップでは、参. 手法を用いたワークショップの評価. 加者が小学1年生から6年生と幅広かったため、難易度におけ. 7). によると、達成感には、. 作業の能動性、各工程の目標設定の明確さおよび具体性、その. る個人差も生じやすかったものと考えられる。. 目標が達成できるか否かが影響する要因として挙げられてい. 5.2. スタッフによる集中度・得意度の評価との関連. る。これらの要因と本ワークショップの結果とを照らし合わせ. 参加者による高揚感、達成感、難易度の評価と、スタッフに. ると、レクチャーや観察の工程では比較的能動性が低いことに. よる各参加者に対する集中度、得意度との関係について分析を. 加え、魚の模様について説明を受けるレクチャーの工程と、魚. 行った。特に、集中度や得意度に差があると考えられる学年. が泳ぐ場所や深さを観察するための観察2の工程において、設. (低学年:1∼3年生、高学年:4∼6年生)の違いに着目し、. 定した目標が低い達成感に影響している可能性が考えられる。. 50. 考察を試みた。. レクチャーに関しては、魚の模様は色素の点の集合体であると. 前節の分析で扱った参加者のうち、スタッフによる評定値に. いう原理と、実際に目で見えている模様との結びつきは、参加. 欠損があった1名の評定値を除き、18名の参加者の評定値を分. 者である小学生が理解するには目標としては高かったのかもし. 析対象とした。分析には、各参加者各工程の標準化した評定値. れない。また観察2に関しては、モビール制作時の魚の位置を. と、スタッフによる評定値(0∼2)を用い、それぞれの相関. 決めるために魚が泳ぐ位置を観察するという目標と、主目的で. 関係を求めた(表1、2) 。無相関検定を行ったところ、有意な. ある魚の模様について学ぶこととの隔たりが大きく、参加者に. 相関関係が認められたのは、低学年および高学年における集中. とって理解しにくかったのかもしれない。達成感を高く保つた. 度と難易度、低学年における得意度と高揚感、達成感、難易度、. めには、作業の能動性、各工程の目標設定の明確さおよび具体. 高学年における得意度と難易度であった。以下に詳細を述べる。. 性に加え、各工程の目標を達成できたか否かの判定が参加者自. まず、集中度と難易度との相関関係について、低学年では負. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016.

(6) ショップ全体の目的に対して各工程の目標を段階的に設定する. 表1 集中度と各指標との相関係数(# p < .10) 高揚感. 達成感. 難易度. 場合に、安定した傾向が得られることがわかった。達成感につ いては、各工程の作業目標とワークショップ全体の目的との関. 低学年 (N =72). −0.0017 . 0.12 . −0.17#. 高学年 (N =36). −0.14 . −0.12 . 0.31#. されているか否かが影響していると考えられた。難易度につい. 表2 得意度と各指標との相関係数(# p < .10、* p < .01) 高揚感. 達成感. 係や各工程の目標を達成できたことが参加者にわかりやすく示. 難易度. ては、参加者の年齢や各参加者の作業に対する得手不得手がそ. 低学年 (N =72). 0.21#. 0.20#. −0.37 *. のばらつきに影響していることが示唆された。これらの知見. 高学年 (N =36). −0.15 . −0.20 . 0.27#. は、子どもたちが感じる印象の変化に配慮したワークショップ の企画・設計に生かすことが可能であり、より効果的であるだ. の相関(r =−0.17,p < .10)が有意であったのに対し、高学. けではなく、豊かな学びの実現につながるものと考えられる。. 年では正の相関(r =0.31,p < .10)が有意であった。低学. 本研究ではさらに、スタッフによる各参加者の集中度および. 年においては、参加者が感じる難易度が高いほどスタッフから. 得意度の評定を行い、参加者による主観評価との関係について. 見た参加者の集中度が低かったことを意味している。低学年と. 分析を試みた。集中度や得意度に差があると考えられた低学年. は逆に高学年においては、参加者が感じる難易度が高いほどス. と高学年との傾向の比較を行ったところ、集中度、得意度とも. タッフから見た参加者の集中度が高かったことを意味してい. に参加者が感じた難易度において異なる相関関係が示された。. る。これらの傾向はそれほど顕著な傾向ではないものの、低学. すなわち、参加者が難易度を高いと感じているとき、スタッフ. 年と高学年とで異なる傾向が認められる可能性を示唆してい. が捉えた参加者の状態として、低学年では集中度が低く不得意. る。難易度に関しては、作業のしやすさや説明のわかりやすさ. と感じているように判断される一方、高学年では集中度が高く. が影響しやすい指標である. 得意と感じているように判断されることがわかった。また、低. 7). ことから、これらの要因が参加. 者の集中度にも影響していると言える。. 学年に関しては、参加者が高揚感や達成感を高く感じていると. 次に、得意度と高揚感との相関関係について、低学年では正. き、スタッフが捉えた参加者の集中度や得意度が高くなること. の相関(r =0.21,p < .10)が有意であったのに対し、高学. が示された。一方、高学年では難易度以外においては集中度や. 年では有意ではなかった。低学年においては、参加者が感じる. 得意度との有意な相関関係は認められず、参加者の学年が高く. 高揚感が高いほどスタッフから見た参加者の得意度が高かった. なるほど参加者が感じている印象とスタッフから見た参加者の. ことを意味している。また、得意度と達成感との相関関係につ. 状態が単純な相関関係では表すことができないと考えられる。. いて、低学年では正の相関(r =0.20,p < .10)が有意であっ. これは、学びの過程において低学年と高学年とで感じている印. たのに対し、高学年では有意ではなかった。低学年において. 象は同じでも、第3者から捉えた状態は異なることを意味して. は、参加者が感じる達成感が高いほどスタッフから見た参加者. おり、ワークショップの対象学年の設定において、各工程の作. の得意度が高かったことを意味している。. 業が可能か否か以外にも判断基準となる材料があることを示唆. 得意度と難易度との相関関係について、低学年では負の相関 (r =−0.37,p < .01)が有意であったのに対し、高学年では. している。 以上の検討から、これまでの参加者による高揚感、達成感、. 正の相関(r =0.27,p < .10)が有意であった。低学年にお. 難易度の主観評価に加え、スタッフが捉えた参加者の集中度と. いては、参加者が感じる難易度が高いほどスタッフから見た参. 得意度を指標とした評価を行うことにより、参加者の学年によ. 加者の得意度が低かったことを意味している。低学年とは逆に. る傾向の違いを洗い出すことができた。しかしながら有意な相. 高学年においては、参加者が感じる難易度が高いほどスタッフ. 関関係は見出すことができたものの傾向としては弱く、今後、. から見た参加者の得意度が高かったことを意味している。これ. 集中度、得意度に関する評価・分析手法について改善を重ねた. らの難易度における傾向は、集中度の傾向と同様であった。参. いと考えている。. 加者が感じる難易度に影響する作業のしやすさや説明のわかり やすさの要因が、参加者の得意度にも影響していると言える。. 謝辞 本 研 究 は、JSPS 科 研 費( 挑 戦 的 萌 芽 研 究 課 題 番 号:. 6.まとめ 本研究では、参加者の主観評定に基づく評価ツール「気持ち 温度計」による評価の蓄積により、高揚感、達成感、難易度. 265600981)の助成を受けたものです。また、本研究におけ るワークショップでの評価実施にあたり、ご協力いただいたす みだ水族館と担当の皆様に感謝の意を表します。. に影響する要因の整理を行った。高揚感については、ワーク デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016. 51.

(7) 【参考文献】 1)柚木泰彦,片上義則,有賀三夏,古藤 浩,早野由美恵, 三橋幸次,渡部 桂:児童の協働による課題解決型ワーク ショップのプログラム開発─こどもワークショップ「世 界一遅い球転がしに挑戦しよう!」の実施と考察─,日 本デザイン学会研究発表大会概要集,63,pp.176-177, 2016. 2)田邉里奈,若林尚樹,政倉祐子:擬似的な体験を通した学 びのためのコンテンツ設計.デザイン学研究作品集,20 (1) , pp.108-113,2016. 3)田邉里奈,天野未知,宮崎寧子,西村大樹,政倉祐子,若 林尚樹:なりきる体験を取り入れたワークショップの試 行─ 西臨海水族園“きみもヤドカリになろう”ワーク ショップを事例として─,日本デザイン学会研究発表大会 概要集,63,pp.170-171,2016. 4)若林尚樹:「観察の体験」をテーマにしたワークショッ プのデザイン,デザイン学研究特集号,21-2,pp.2-7, 2014. 5)C. E. Osgood: Studies on the generality of affective meaning systems. American Psychologist, 17 , pp. 10 - 28 , 1962. 6)政倉祐子,若林尚樹:子どもの印象評定による体験学習 の評価─ SD 法を用いた試み─,デザイン学研究特集号, 21-2,pp.14-19,2014. 7)政倉祐子,若林尚樹,田邉里奈:子どもの主観評定に基づ く体験学習型ワークショップの定量評価─気持ちの変化を 捉える評価ツールの提案とケーススタディ─,日本感性工 学会論文誌,15(1),pp.233-244,2016. 8)谷口由佳,赤井 愛,若林尚樹,政倉祐子:子どもを対象 としたセルフワークショップにおける印象評価の試み2 ─評価環境の違いによる主観的評価手法「気持ち温度計」 の可能性―,日本デザイン学会研究発表大会概要集,63, pp.174-175,2016. 9)大久保雅史,藤村安耶:加速度センサーを利用した集中度 合い推定システムの提案,Proceeding of the 16th Workshop on Interactive Systems and Software, 2008. 10)中村亮太,井上亮文,市村 哲,岡田謙一,松下 温: 「Ghost-Tutor」:個人の学習ペースを考慮した学習支援シ ステム,情報処理学会論文誌,47(7),pp.2099-2106, 2006. 11)山本朋弘,清水康敬:IT を活用した学習場面における集中 度と行動分析に関する検討―小学校5年社会科での IT を 活用した授業の分析から―,日本教育工学会論文誌,30 (Suppl.),pp.93­96,2006. 12)S. S. Stevens: Psychophysics: Introduction to its Per-. ceptual, Neural, and Social Prospects. New York: Wiley, 1975.. 52. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016.

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