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博士(工学)萩野克彦 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)萩野克彦 学位論文題名

砂岩 の変形・ 強度特性と組織に関する基礎的研究 学位論文内容の要旨

  岩石 のカ学 的性質は 、一般 にその組 成や組織 の影響 を受ける が、一 方、これら は岩 石の成 因と関わ っている 。本研 究は、こ れら岩 石のカ学 的性質 、岩石組 織、

成 因 とな っ た 地質 作 用 の3者の 関係を明 らかに すること を目的に 、石狩 夾炭層砂 岩、 太平洋 砂岩、白 浜砂岩を 供試岩 石として 、主に 岩石の組 織と破 壊挙動の 観点 から 検討し たもので ある。

  本論 文は全7章か ら構成さ れてい る。

  第1章 は 序論 で 、 本研 究 の目的 と意義に っいて 述べると ともに 、関連す る既往 の研 究を概 括してい る。

  第2章 で は、 石 狩 夾炭 層 砂岩を 中心とし た供試 岩石の産 地と定 方位供試 体の準 備の ための 採取から 整形に至る一連の作業に関して留意した点を説明し、次いで、

P波 速度 の 計 測お よ び 顕微 鏡観 察を基に 砂岩の 組織に関 し次の諸 点を明 らかにし てい る。

1)いずれ の供試 岩石にも 明瞭な 層構造が 認めら れ、層理に垂直方向には凹凸接触 や縫 合接触 している 粒子が見 られる 。

2)孔隙の 形状は 、白浜砂 岩では 球形が多 いのに 対し、夾炭層砂岩ではき裂状を呈 して いるも のが多い 。また、 石狩夾 炭層砂岩 には方 向性をも った開 口き裂が 分布 して いる。

3)P波 速度に 関して、 石狩夾 炭層砂岩 は直交異 方性、 白浜砂岩 と太平 洋砂岩は面 内等 方性を 示す。

4)これら の組織 の特徴な らびに 孔隙率とP波速 度の問 には明瞭 な対応 関係が存在 し 、P波 速 度 の 異 方 性 は 層 構 造 や 開 口 き 裂 の 配 向 性 に よ っ て もた ら さ れる 。   第3章 で は、 封 圧 下の 圧 縮試験 で得られ た差応 力〜体積 ひずみ ・軸ひず み線図 を整 理し、 変形・強 度に関す る諸特 性の封圧 依存性 と、これ らに及 ばす岩石 組織 の影 響に関 して次の 言者点を 見いだ している 。

1)変形係 数、破 壊強度、 脆性― 延性遷移 時の封 圧などの測定値や破壊後挙動にお ける 応力低 下の激し さは、孔 隙率と 深く関わ ってお り、孔隙 率の減 少ととも に、

これ らの特 性値は増 加し、現 象は激 しさの程 度を増 す。

2)圧縮領 域の変 形係数、 破壊強 度、なら びに残 留強度は、岩石組織の異方性の有 無に 関係せ ず、ほば 等方的で ある。

3)破壊強度の限界線は折れ線で近似でき、

とよく合う。折れ曲がり点の封圧を境に、

ひずみ挙動は変化する。

限界線 から予想 される破断角は実測値 破断角 の増加率 や破断面の性状、体積 4)破壊後挙動の激‐しさを表す最大応力低下率は、封圧により変化するが、赤平砂 岩 および 砂川砂岩 では、封 圧の大 きさが限 界線の 折れ曲がる封圧の50%程度のと き 最大に なる。ま た、供試 体軸と層理のなす角ゼの影響を受け、a―−30°のとき 最大となる。

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(2)

  第4章 では 、封 圧 下の 圧縮 試験 で現 れる 破断 方位 と破 壊モ ード 、圧裂 引張強度 や点圧裂引張試験で生じるき裂の伸展方向ナよどに関して、次の諸結果を得ている。

1) 封圧 下の 圧縮 試験で得られる岩石の破断方位や破壊モ―ドは、岩石組 織の異方 性 の 影 響 を 受 け るoP波 速 度 の 方 向 に よ る 差異 が4% 以上 あれ ば、 異方 性の 影響 が顕 著に 現れ 、破 断方 位はP波速 度の 遅い 方向 に集 中し 、単 一せ ん断型 の破壊モ ー ド が 卓 越 す る。 一方 、P波 速度 の差 異が4%以 下の 場合 は破 断方 位は 分散 し、

単一せん断型の出現率が低くナょる。

Z) 圧裂 引張 強度 や点圧裂引張試験で生じるき裂の方位は:岩石組織の異 方性の影 響を受ける。

  第5章 で は 、 封圧 下の 圧縮 試験 にお ける 破壊 の進 展状 況に 関 し、 まずP波 速度 の計測、鏡下における破断面の観察および浸水崩壊 度試験を行っている。そして、

封圧 下の 圧縮 試験 では 、差 応力 〜軸 ひず み線図が脆性挙動を示す場合、 差応カが 破壊 強度 点を 越え ると まも なく 破断 面の 形成が始まること、および破断 面の周り には 破断 面に 平行 に損 傷領 域が 形成 され るが、その幅は脆性が卓越する ほど小さ くなることを見いだしている。

  次 に、 これ らの 結果 を基 に、 破断 面の 不可逆的な辷りとこれ以外の部 分の弾性 回復 の複 合現 象と して 、応 力低 下過 程を モデル化し、これを用いて以下 の諸点を 明らかにしている。

1) 破壊 後挙 動に おける破壊の激しさと、破断面の形成に必要なエネルギ と供給し 得るエネルギの比の間には強い相関がある。

2) 破 断 領 域 の 幅 は 破 断 面 の 摩 擦 抵 抗 に 相 当 す る 散 逸 エ ネ ル ギ に 比 例 す る 。   第6章 では 、砂 岩 が履 歴し た地 質作 用が 組織 に及 ばす 影響 にっ いて、 圧密や有 機変 成度 、地 質構 造な どの 観点 から 検討 するとともに、砂岩のカ学的性 質と岩石 組織 およ び地 質作 用と 現在 の賦 存環 境の 関連性にっいて考察し、次の諸 結果を得 ている。

1) 砂岩 の組 織す なわち、孔隙率、層構造、孔隙の形状・分布は、岩石の 置かれた 固有 の堆 積環 境や 統成 環境 によ って 決ま る。破壊強度は孔隙率と高い相 関関係に あ る か ら 、 破 壊 強 度 に は 履 歴 し た 地 圧 の 大 き さ が 反 映 し て い る と い え る 。 2) 供試 岩石 の層 構造は、圧力溶解作用などいくっかの続成作用の下で作 り出され る。 組織 の異 方性 には 、履 歴し た地 圧の 絶対的な大きさとともにその偏 差成分の 大きさが影響する。

3) 石狩 夾炭 層砂 岩 に認 めら れるL方 向の 存在は、夾炭層が堆積した後の 造構運動 に伴って生じた褶曲と関係があると推定される。

4) 地下 深部 に賦 存する供試岩石では、深度から算定したかぶり圧と破壊 限界線の 折れ 曲が る封 圧は ほぼ 一致 し、 また 、こ の封圧を境に異なった変形・破 壊挙勁が 現れる。

5) 砂岩 のカ 学的 性質や挙勁には、岩石組織との対応が明確なものと、明 瞭でない もの があ り、 前者 の多 くは 、岩 石組 織を 通して統成作用や造構運勁との 関係が認 められる。

  第7章 は結 言侖 で、本研究で得られた主な結果を総括し、今後の課題に っいて述

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(3)

学 位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

砂岩 の変形 ・強度特 性と組織 に関する基礎的研究

  砂岩のカ学的性質はその組織に支配され、一方、岩石組織は地質作用の下で形成される。

したがって、岩石のカ学的性質、岩石組織、地質作用の3者の間には密接な関係があると 考えられる。本研究は、主に道内の夾炭層砂岩を対象に、この3者の関係にっいて詳細に 検討したもので、評価すべき成果は以下の5点に要約できる。

  第一の成果は、供試岩石の組織に関するもので、顕微鏡観察を基に、いずれの供試岩石 にも明瞭な層構造が認められ、層理に垂直方向には凹凸接触や縫合接触している粒子が見 られること、孔隙は白浜砂岩ではほば球状であるのに対し、夾炭層砂岩ではき裂状を呈し ているものが多いこと、石狩夾炭層砂岩ではこのような先在き裂の分布に配向性が認めら れることなどを明らかにしている。また、P波速度に関し、石狩夾炭層砂岩は直交異方性、

白浜砂岩と太平洋砂岩は面内等方性を示すこと、これらのP波速度の異方性は層構造や先 在き裂の配向性に起因していることを見いだしている。

  第二の成果;ま、砂岩のカ学的な性質や挙動に関するもので、変形係数、破壊強度などは ほぼ等方的で、孔隙率の減少とともに増加することを多数の実験結果を基に示している。

また、破壊強度に関しては、強度の限界線が折れ線で近似でき、限界線から予想される破 断角が実測値とよく合うこと、折れ曲がり点の封圧を境に、破断角の増加率や破断面の性 状、体積ひずみ挙動が変化することを見いだしている。そして、応力低下の激しさを表す 最大応力低下率は、封圧により変化するが、地下深部から採取した砂岩では、限界線の折 れ 曲 が る 封 圧 の50% 程 度 の 封 圧 下 で 最 大 に な る こ と を 明 ら か に し て い る 。   第三の成果は、封圧下の圧縮試験で得られる岩石の破断方位や破壊モードに関するもの で、径方向のP波速度に4%以上の差異があれば、破断方位はP波速度の最も遅い方向に 集中し、単一せん断型の破壊モードが卓越すること、差異がこれ以下の場合には破断方位 が分散し、単一せん断型の破壊モードの出現率が低くなること、圧裂引張強度や点圧裂引 張試験で生じるき裂の方位は岩石組織の異方性の彫響を受けることなどを明らかにしてい るョ

  第四の成果は、破壊後挙動における急激な応力低下として特徴づけられる不安定破壊に 関するもので、この現象は孔隙率が小さくて破壊強度が大きいほど生じやすいこと、組織 の異方性の影響を受けて、径方向のP波速度の異方性が強く単一せん断型の破壊モードが 出現するときに現れやすいことを見いだしている。また、封圧下の圧縮試験において差応 カが破壊強度点を越えた直後に始まる破断面の形成過程を、破断面の不可逆的な辷りとこ れ以外の部分の弾性回復の複合現象としてモデル化し、これを基に、不安定破壊の程度が 破断面の形成に必要なエネルギと破面の形成に供給し得るエネルギの比に比例すること、

単一せん断型の破壊モードはエネルギ的に最も効率のよい壊れ方であるために、組織の異 方 性 が不 安 定 破 壊の 重 要 ナょ 因 子 にな っ て いる こ と など を明 らかに している 。

499

二 一

洋 壽

島 藤

石 佐

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

  第 五の成 果は、 砂岩の 組織や カ学的性質と続成作用や造構作用との関連を明らかにした こ とであ る。地 質作用 が組織 に及ばす影響にっいて、圧密や有機変成度、地質構造などの 観点から詳細に検討し、岩石の層構造が圧力溶解作用ナょどいくっかの続成作用の下で作り 出 されて いるこ と、石 狩炭田 空知地区 の砂岩 に認め られるL方向は、夾炭層が堆積した後 の 造構運 動に伴 って生 じた地 層の褶曲軸と直交していることを見いだしている。さらに、

地 下深部 から採 取した 供試岩 石の場合、かぷり圧と破壊限界線が折れ曲がる封圧はほぼ一 致し、また、この封圧を境に異ナょった変形・破壊挙動が現れること、ナょらびに、砂岩のカ 学 的性質 や挙動 には岩 石組織 との対応が明確なものと明瞭でないものがあり、前者の多く は 岩石組 織を通 して続 成作用 や造構運動との関係が認められることを明らかにしている。

  こ れを要 するに 、著者 は、石 狩夾炭層砂岩のカ学的な性質や挙動に関して多くの有益な 知 見 を 得 て お り 、 岩 石 力 学 の 進 歩 に 貢 献 す る こ と 大 な る も の が あ る 。   よ って著 者は、 北海道 大学博 士(工 学)の 学位を授 与され る資格 あるも のと認める。

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参照

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