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(1)

米国におけるソフトウェア契約について(ニ・完) : 契約成立、契約条項の開示・強制、保証についての 議論を中心として

著者 川和 功子

雑誌名 同志社法學

巻 66

号 6

ページ 1945‑1978

発行年 2015‑03‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000015227

(2)

    同志社法学 六六巻六号一〇五一九四五

――契約成立、契約条項の開示・強制、保証についての議論を中心として――

           

                             

(3)

    同志社法学 六六巻六号一〇六一九四六  

4   明 示 の 保 証

  明示の保証は、UCC第二編第三一三条においては、物品の説明、サンプル、モデルなどを含む売主の物品に関する事実についての確言または約束であり、取引の基礎となるものに生じると規定される 116

。ソフトウェア取引における特定の重要な機能や仕様についての表示は、明示の保証を生じさせるとの判断がなされる場合も多いため、重要な規定である 117

  UCITAの規定もUCCと同様に、﹁取引の基礎テスト﹂を採用する。第四〇二条⒜⑴は、﹁ライセンサーがライセンシーに対してなした、広告によるものを含む事実の確言または約束であって、その情報に関連し、かつ取引の基礎の一部をなすものは、合意により与えられる情報がその確言または約束に適合するという旨の明示の保証を生じさせる﹂とする。第四〇二条⒜⑵、⑶は、情報についての説明、サンプル、モデルまたはデモンストレーションで取引の基礎の一部をなすものについても、﹁ライセンシーである合理的な人間の視点からみた、その見本、モデルまたはデモンストレーションと、使用される予定である情報との間の相違を考慮に入れた上で、その情報のパフォーマンスが、そのサンプル、モデルまたはデモンストレーションのパフォーマンスに合致する﹂旨の明示の保証を生じさせるとする。

  ALIソフトウェア契約法原則は、UCC第二編の明示の保証についてのルールを変更し、UCC第二編第三一三条 118

およびUCITA第四〇二条において採用される﹁取引の基礎テスト﹂を採用せず、合理的な譲受人が信頼することができる場合には約束または表示が明示の保証を生じさせるとする。ALIソフトウェア契約法原則第三・〇二条⒝は、明示の保証について、﹁⒟に規定される場合を除き、譲渡人による譲受人に対する明示の保証は、以下のとおり生じる。

(4)

    同志社法学 六六巻六号一〇七一九四七 ⑴譲渡人による譲受人に対してなした、ソフトウェアとパッケージ化され、またはソフトウェアに付随しているソフトウェアに関連する、広告、または記録を含む、合理的な譲受人が信頼することができる事実の確言または約束は、ソフトウェアが当該確言または約束に適合するという旨の明示の保証を生じさせる﹂と規定する。ここで規定される譲受人とは、譲渡人と契約を締結する直接の譲受人(

im m ed ia te tr an sfe re e

)および、頒布の通常の連鎖において、ソフトウェアを取得し、またはソフトウェアに対するアクセスを得る間接の譲受人(

re m ot e tr an sfe re e

)を含むとされる 119

。このほか、合理的な譲受人が信頼することができるソフトウェアの説明、デモンストレーションについても、明示の保証が生じるとする 120

  ALIソフトウェア契約法原則第三・〇二条コメントbは、明示の保証について、UCC第二編及びUCITAにおいて採用される﹁取引の基礎テスト﹂ではなく、合理的な譲受人が信頼することが可能であったか否かを問うアプローチを採用する理由として、﹁取引の基礎テスト﹂は明確な基準とならないため多くの訴訟が提起されていることを指摘する 121

  UCC第二編の明示の保証の規定であるUCC第二編第三一三条⑵は、明示の保証を生じさせるために、売主の、

“w ar ra nt ” “g ua ra nt ee ”

などの正式な語句の使用または、売主の保証を生じさせるための特定の意図は必要とされないとする 122

。ただし、単なる意見は明示の保証の義務を課すものではないとされる 123

。品質や説明、物品の種類についての約束は、契約上の約束として強制可能であるとされる 124

。UCC第二編第三一三条コメント三 125

は、﹁取引過程において物品について売主がなした事実についての確言は、当該物品についての説明の一部分とされる﹂ため、﹁合意の構造に組み込まれるために﹂、﹁当該声明についての特段の信頼が証明されることは必要ない﹂とする。さらに、売主の表示は、取引の基礎でないことについての明確で積極的(

cle ar a nd a ffi rm at iv e

)な証拠がない限り取引の基礎となるとする 126

。保

(5)

    同志社法学 六六巻六号一〇八一九四八

証法に関する法の目的は、買主が何を売ることに同意したのかを決定する事であるとされる 127

  UCCの判例は、取引の基礎要件を満たすために買主の信頼を必要としないという立場、売主から買主が信頼していないことの証明がなされない限り、買主が信頼したことを取引の基礎として推定する立場、買主が信頼を証明する必要があるとする立場に分類される 128

 

H aw kla nd

は信頼が必要とされるならば、売主が購入後に表示した場合や、買主が購入時に表示について認識していなかった場合など、買主が物品を購入するかどうか決定する際に信頼がなかったため、表示が取引の基礎の一部になっていないと主張することが可能であることを指摘する 129

。結局のところ、物品の種類と品質について、表示した内容に物品が適合する義務を売主が負っているか否か決めるに際し、買主の、売主の表示に対する信頼に関する証拠を提出することは必要とされるべきではないとする 130

。売買後の物の品質に関する表示についても取引の一部となり得るほか、売主が物品を買うことを決めるに際して、物品の品質に関する声明を信頼したかどうかにかかわらず、広告など一般公衆向けになされた表示は取引の一部に含まれるべきであるとする 131

 

W illi st on

は、買主が、売主の確言または約束がなされた後に物品を購入したのであれば、﹁買主が実際に信頼したことについての証拠がなかった場合であっても、売主の確言または約束は、買主が物品を買うことを自然に誘引する種類のものであれば、取引の基礎となる可能性があり、明示の保証となる﹂とする 132

。明示の保証が存在すると主張する買主は、﹁売主よりなされた、事実の確言または約束が、購入された物品について取引の基礎となったことを立証する責任がある﹂が、いったん事実の確言または約束がなされたことおよび物品が購入されたことの立証がなされれば、﹁売主がそうでないと証明しない限り、買主が当該物品を購入したのは、最低限でも部分的にその確言または約束の結果であると推定される﹂ことになる 133

。しかしながら、合理的な買主であれば信じないような確言または約束は取引の基礎とは

(6)

    同志社法学 六六巻六号一〇九一九四九 認められない可能性があるとする 134

H illm an

教授は、例えばもし車の売主が一ガロンあたり、三〇マイル走ることを明確に保証したのであれば、合理的な買主は保証があると予測するが、売主が表示について法的に効力がないことを明示的に述べた場合や、書面による契約において保証を排除する条項が含まれていた場合、合理的な買主は、明示の保証は生じないと理解するとする。同様に、

W in do w s

V ist a

と互換性があると宣伝されているソフトウェアについて、すべての明示および黙示の保証が明確に排除されていたとしても、合理的な譲受人はその声明について保証が排除されていると予測しない。さらに、契約の作成に関わっていた場合、合理的な買主は保証の排除について驚くことはない 135

  つまり、﹁取引の基礎﹂要件を満たすために買主が確言または約束について実際に信頼したかどうかの証拠は必ずしも必要とされず、物の品質に関する表示、または広告など一般公衆向けになされた表示は、明示の保証となり得る。しかし、合理的な買主であれば信じないような確言または約束は、取引の基礎であるとは認められない可能性もある。

  ALIソフトウェア契約法原則は、明示の保証を生じさせるために、実際に信頼したかどうかについて譲受人が証明する必要はないとする 136

。コメントは、﹁単なる宣伝文句でない、義務を負う行為を表すソフトウェアについての事実の確言、ソフトウェアについての説明及び、その他の文言または行為﹂について、譲渡人が支払後までその保証を目にしなかったとしても明示の保証が生じるとする 137

。ただし、コメントはこの際、譲受人の知識の程度(

so ph ist ic at io n

)についても考慮されなければならないとする 138

。例えば、コンピュータソフトウェアとOSの互換性や、ターン・キーシステムと呼ばれる、必要なソフトウェアとハードウェアが含まれ、配達と同時に機能するものについての処理速度の表示は、合理的な譲受人が信頼することができる明示の保証となり得る 139

。合理的な譲受人が信頼することができるかどうかについて判断する際には、譲渡人が義務を負う文言を使用したかどうか、表示が特定されていたかどうか、声明について確かめることができるか(

ve rif ia ble

)どうか等が参考になるとされる 140

(7)

    同志社法学 六六巻六号一一〇一九五〇

  明示の保証の排除、制限についても、ALIソフトウェア契約法原則はUCC第二編第三一六条⑴と異なったルールを採用している。一般的に明示の保証が課される場合、取引の本質に関わる保証については、排除するのは困難である。UCC第二編第三一六条⑴は、﹁明示の保証の発生または制限に関連する語句または行為は合理的に首尾一貫して解釈される﹂とし、UCC第二編第二〇二条の適用を条件として、﹁保証の否定および制限(

ne ga tio n or lim ita tio n

)する語句または行為はそのような解釈が非合理的である限りにおいて無効である﹂とする 141

。例えばカリフォルニア州においては、明示の保証を排除する条項は当事者間の明示的な契約における反対の定めがない限り明示の保証と矛盾しているものとされる 142

。UCITAの場合、第四〇六条⒜は、﹁明示の保証の発生に関連する語句または行為及び明示の保証を排除または変更するような語句または行為は、それが合理的である限り、相互に矛盾しないものとして解釈されなければならない﹂と規定する。

  ALIソフトウェア契約法原則のレポーターである

H illm an

教授は、そもそも保証を生じさせる文言と排除する文言が首尾一貫することは困難であり、裁判所はしばしば保証排除の特定性と明瞭性に基づいて判断を下してきたとする 143

H illm an

教授は、UCC第二編第三一六条のコメント一が、﹁予想外の、かつ交渉が行われていない保証排除の文言から買主を保護する﹂ことを保証排除規定の趣旨としていることに注目する 144

。この趣旨に従い、ALIソフトウェア契約法原則は合理的な買主が保証排除について予想していなかった場合には、保証排除条項は強制できないとする 145

。裁判所は売主が提示した状況における保証の文言または行為の明確性、特定性(

dis tin ct iv en es s

)と、保証排除の文言について比較し、買主が売主の排除について驚いたかどうかについて判断することとなる 146

。ALIソフトウェア契約法原則は、カスタムメイド(

cu st om -d es ig ne d

)と一般市場(

ge ne ra l-m ar ke t

)における両方のソフトウェア取引において、合理的な譲受人が明示の保証の排除を予測していない場合には明示の保証は排除できないとする。カスタムメイドのソフト

(8)

    同志社法学 六六巻六号一一一一九五一 ウェア取引においては、ソフトウェアの性質や法的保護について知識を有する商人である複製物の所有者(

co py ho ld er

)が、明示の保証の排除について予測できる場合であれば、排除は有効であるが、ソフトウェア技術について知識を有せず、交渉力がない商人である複製物の所有者(

bu sin es s c op yh old er s

)は十分な保護を得ることができず、譲渡人が表示、約束、その他の明示の保証について遵守する意図がないことに不当に驚かされる可能性がある。一般市場におけるソフトウェア取引においては、複製物の所有者は、通常、ソフトウェアの検査をすることができず、譲渡人の能力(

co m pe te nc e

)と表示に依拠しなければならないため、予測できない明示の保証の排除から譲受人を保護する必要が生じる 147

5   譲 渡 人 が 認 識 し な い 重 大 な 隠 れ た 瑕 疵 が な い こ と の 黙 示 の 保 証

  UCC第二編は、権原および権利侵害に対する保証 148

、商品性についての黙示の保証 149

、特定目的への適合についての黙示の保証 150

について定める。UCC第二編第三一六条は、商品性についての黙示の保証の場合には、商品性という文言を使用することなどにより、あるいは、﹁現状のまま(

as is

)﹂もしくは﹁すべての欠陥(瑕疵)を伴ったまま(

w ith a ll fa ult s

)﹂のような表現によって、黙示の保証を排除し得ることについて規定する 151

  UCITAにおいても、妨害および権利侵害のないことの保証 152

、コンピュータ・プログラムの商品性に関する黙示の保証 153

、情報コンテンツについて、﹁商人であって、ライセンシーとの特別な信頼関係において、情報コンテンツを収集、編集、処理、提供または送信(

tr an sm it

)する者は、そのライセンシーに対して、商人が合理的な注意をもって履行することの懈怠に起因する情報コンテンツにおける誤りのないことを保証する﹂旨の黙示の保証 154

、﹁契約締結時において、ライセンサーが、そのコンピュータ情報を必要とする特定の目的を知るべき理由のある(

ha s r ea so n to k no w

)場

(9)

    同志社法学 六六巻六号一一二一九五二

合であって、かつ、適切な情報の選択、開発または供給(

fu rn ish

)についてのライセンサーの技能または判断をライセンシーが信頼していることを知るべき理由がある場合﹂、情報がライセンシーの目的に適合するとの黙示の保証についての規定が置かれる 155

  UCITAにおいても、﹁現状のまま﹂もしくは﹁すべての欠陥(瑕疵)を伴ったまま﹂のような表現によって、または社会通念上、保証の排除についてライセンシーの注意を喚起し、黙示の保証のないことを表明するその他の文言によって黙示の保証のすべてを排除することが可能であることが規定される 156

  ALIソフトウェア契約法原則は、第三・〇一条に権利侵害に対する黙示の損失補償についての規定を置く。第三・〇三条は、譲渡人がその種のソフトウェアの移転取引を行う者である場合、または、職業として、そのソフトウェアについての特定の知識もしくは技能を有していると主張する者である場合に、商品の説明に基づいて、取引において異議なく合格し、当該ソフトウェアの使用される通常の目的に適合する等の商品性に関する黙示の保証について規定する。第三・〇四条は、譲渡人がソフトウェアが必要とされる特定の目的を知る合理的な理由があり、かつ、譲受人がソフトウェアの譲渡人の選択、開発、用意する技能または判断を信頼する場合に、ソフトウェアは譲受人の目的に適合するものであるという、特定目的適合性の黙示の保証について規定する。

  ALIソフトウェア契約法原則第三・〇五条⒝は、﹁ソフトウェアと引き換えに金銭または金銭的な支払い義務に関する権利を受け取る譲渡人は、通常の頒布経路(

no rm al ch ain o f d ist rib ut io n

)におけるいかなる当事者に対しても、譲渡人が移転の際認識しない、重大な隠れた瑕疵がソフトウェアに含まれないことを保証する﹂とする。この保証は排除することができないほか、不実表示の請求に取って代わるものではないとされる 157

。保証はソフトウェアと引き換えに金銭または金銭的な支払い義務に関する権利を受け取る場合に生じるものであり、オープンソース・ソフトウェアを移

(10)

    同志社法学 六六巻六号一一三一九五三 転する取引には生じない 158

  コモン・ロー上、すでに確立されている原則である﹁重大な違反(

m at er ia l b re ac h

)﹂は﹁被害を受けた当事者(

in ju re d pa rty

)が、取引したもの及び合理的に期待したものを実質的に受け取ることができたか﹂について問うものである 159

。ソフトウェアについては、﹁ソフトウェアが契約上約束された機能を達成するために、大幅な回避策を必要とし、かつ長期のダウンタイムを引き起こす場合、または約束された機能を全く達成しない﹂ことは、重大な違反とされ、これは、重大な瑕疵にあたるとされる 160

。隠れた瑕疵とは、﹁瑕疵が、譲受人が行った、または行うべきであったテストにおいて表面化しなかったもの﹂である 161

。譲渡人が、問題があることについて報告を受けたが、合理的に調査する時間がなかった場合、譲受人の問題が、譲渡人が認識していない使用によるものである場合、譲渡人が譲渡の後に問題について知るに至った場合には譲渡人には責任はないとされる 162

  第三・〇五条⒝の要件を満たすには、﹁騙す意図(

in te nt to d ec eiv e

)﹂が必要である。この意図は譲渡人がライセンスされたソフトウェアに重大な瑕疵があることについて悪意であり、かつ、検査によってその瑕疵をユーザーが発見できないことについて知っている場合に推定される 163

。さらに、条項に

“a s i s”

が含まれていたとしても、この保証は排除することができない点が重要である。コメントは、この点に関し、詐欺の責任については契約で排除することができないからであると説明する 164

  この﹁重大な﹂﹁隠れた﹂瑕疵に関しての、排除することができない保証規定については、ソフトウェア産業界から、訴訟が増加する原因となるのではないかという批判がなされる 165

。また、UCITAのレポーターであった

N im m er

教授は﹁重大な﹂﹁隠れた﹂瑕疵といった概念と、排除することができない保証は、リステイトメント、統一商事法典、UCITAといった既存の契約法とは異質のものであると指摘する 166

。この黙示の保証については、確かに従来の契約法

(11)

    同志社法学 六六巻六号一一四一九五四

における保証についての規定とは異なった要素が盛り込まれている。しかしながら、第三・〇五条のコメントによれば、これらの要素は信義則によって課される契約義務、契約上の開示義務、詐欺隠匿法(

fra ud ule nt -c on ce alm en t l aw

)から導かれるものに過ぎないことになる 167

  第三・〇五条レポーター・コメントbは、コモン・ローにおいて、契約における一方の当事者は、当該当事者の管理下にある重要な事実について、他方当事者が合理的にその事実を知ることが予測できない場合、開示しなければならないとする。非開示はその事実が存在しないとの表示となる一定の状況の下で、詐欺的になり得るとする 168

。例えば、

H ill v. Jo ne s

169

においては、重要事実についての開示が必要となる場合について以下のような見解が示される。一、開示が、以前になされた主張が不実表示、または詐欺的、もしくは重要なものとなることを防ぐために必要である場合、二、他方当事者の契約成立の基本的な前提についての誤りを修正する場合であって、かつ、非開示が信義則(

fa ilu re to a ct in go od fa ith

)および、公正取引(

fa ir de ali ng

)の合理的基準(

re as on ab le s ta nd ar d

)に反した行為となる場合、三、開示が他方当事者の、合意の全部もしくは一部分に明示され、または表現される、書面についての内容もしくは効果についての誤りを修正するものである場合、他方当事者が信頼関係(

re la tio ns hip o f t ru st a nd c on fid en ce

)に基づいてその事実を知る権利があるとする 170

。リステイトメント一六一条コメントd 171

も、多くの場合において、一方当事者が、他方当事者が基本的な前提について誤っていることを知っている場合、その誤りを修正するための開示をすることが期待されるとする。例えば物的財産や人的財産の売買について、その品質、権原についての隠れた瑕疵は、買主が通常の契約価格で買うことを妨げるものになるであろうことから、開示が期待される 172

  第三・〇五条レポーター・コメントbは情報を開示する義務について、いくつかの関連判例をあげている。

Kaloti Enters., Inc. v . Kellogg Sales Co .

173

においては、以下の場合において事実を開示する義務があるとされた。一、取引に

(12)

    同志社法学 六六巻六号一一五一九五五 おいてその事実が重要である場合二、当該事実を知っている当事者が、他方当事者が当該事実についての誤りに基づいて取引を行おうとしていることを知っている場合、三、当該事実が一方の当事者の特定的、排他的な知識の範疇にあり、事実について誤解している他方当事者が、合理的にそれに気づく事が期待できない場合、である。当事者の関係、取引の慣習、またはその他の客観的な状況により、その事実についての開示が合理的に期待される場合に開示義務が課されることとなる 174

Cirillo v . Slomin’ s Inc .

175

においても、被告

Slo m in ’s In c.

が自己の警報システムの機能についてより多くの知識を有しており、その知識が原告にとって通常の検査では入手不可能であり、原告が契約を締結するか、もっと効果的、または完全な保護を供給する代替を選択するか(

fo re go

)の原告の決断に関して重要であった場合には、開示の義務が生じるとする 176

  ALIソフトウェア契約法原則第三・〇五条のコメントbによると、ソフトウェアは完全なものではないことが多く、ある程度の欠陥が予測されるものであるとしても、知られている重大な隠れた瑕疵について、より、リスクを負うことができ、避けることができる立場にある譲渡人が重大な事実を開示する義務を負うべきであるとする。ソフトウェアの譲渡人が知っている、開示されていない重大な隠れた欠陥は、欠陥について譲受人が欠陥を手遅れになるまで知ることができず、従って、予防手段をとることができない譲受人にコストをシフトさせるものであるとする 177

。重大な瑕疵がないことについての黙示の保証は排除することができない。これは、当事者は詐欺についての責任を排除することができないし、判例法もその考え方を支持しているからであるとの説明がなされる 178

。譲渡人の側からも、この原則に従い、重大な欠陥について開示することにより、責任から逃れることができるのである 179

(13)

    同志社法学 六六巻六号一一六一九五六

6   小 括

  ALIソフトウェア契約法原則の目的は﹁ソフトウェア取引法の明確化と統一をはかる﹂ことであるとされる 180

。ALIは、ソフトウェア取引の問題点として、ソフトウェア取引の性質、契約成立に関する現在の実務の適法性、連邦知的財産権法との関連、品質、救済、およびその他の権利についての契約条項の妥当性などをあげる。さらに、ソフトウェア産業の経済における重要性に鑑み、法をリステイトとすることではなく、﹁ケース・ローを説明し、最も良い実務を推奨﹂することを意図している 181

。ALIソフトウェア契約法原則は、第二B編、UCITAの問題点として指摘された、契約成立、契約条項への同意、契約条項の開示・強制、保証、救済条項の適切性、標準書式契約における条項などの問題について特に配慮したルールを提示するものであるということができる。

  適用範囲については、約因と引換えに移転されるソフトウェアの契約にその適用範囲を限定している 182

。連邦知的財産権法との関連については、当事者が与えた取引に関する売買またはライセンスといったレッテルではなく、取引の真の実体および契約条項そのものについて判断がなされることが強調され、当事者の法的権利については、連邦知的財産権法、州の公序、または非良心性に照らした判断がなされるとする 183

  契約の成立について、ALIソフトウェア契約法原則は一つ以上の条項が未定である場合でも﹁契約は、合意を示すに足りるいかなる方法によっても﹂契約は成立するとして、UCC、リステイトメントを踏襲する 184

。しかしながら、標準書式契約につき、どのような条項が強制可能であるかという点について、UCC、UCITAと比較して、供給者側の条項の開示がなされた上で同意が行われる様に配慮した規定が置かれている。第二・〇二条⒞は譲受人が一般公衆に入手可能なソフトウェアの移転について、標準書式を契約として採用したとされるためには、一、ソフトウェアの移転の開始の前に、﹁標準書式に電子的なアクセスをすることが合理的に可能であること﹂ 185

、二、﹁移転の開始に際し、支払

(14)

    同志社法学 六六巻六号一一七一九五七 いの前、または支払いのない場合には移転が完了する前に、譲受人が標準書式に関しての合理的な通知またはアクセスを得ていること﹂ 186

、三、﹁ソフトウェアの電子的移転の場合には、譲受人が電子標準書式の末尾またはそれに近い箇所において合意に署名すること﹂、または﹁パッケージ化されたソフトウェア上に印刷されもしくは添付され、またはソフトウェアから分離されて包装された標準書式に関しては、移転後合理的な期間内に開封されていないソフトウェアについて、全額払戻しの機会が行使されていないこと﹂、かつ四、﹁電子的に提示された標準書式が保存および再製可能であること﹂が必要であるとする 187

。このような開示および署名の要件が存在することによって、譲受人は事前に開示される標準書式を比較した上で合意することができるとされる 188

  第二・〇二条⒟は、﹁第一・一〇条における公序、第一・一一条における非良心性、およびソフトウェア契約法原則またはその他の法によって無効となる抗弁の制限を受ける場合以外には、標準書式は、合理的に理解可能なものであれば強制可能﹂であるとする 189

。第二・〇二条⒠は、譲受人がソフトウェアの移転の開始の前に、標準書式に合理的にアクセス可能であることなど、第二・〇二条⒝⒞⒟の要件を充たしているか否かの証明責任は譲渡人にあるとし、それは譲渡人のコンプライアンスを証明するためのコストを最小化するためだとする 190

。譲渡人がコンプライアンスを証明することとしている点は重要である。

  第二・〇三条は、契約を変更する合意について、ソフトウェアの電子的移転においては、譲受人が変更に関する合理的な電子通知を受け取り、かつ、譲受人が当該電子通知の末尾またはそれに近い箇所に、合意の変更について署名する場合、譲受人は、変更に合意したとみなされるとする。このように、変更を強制するためには、変更について合意することが基本となる。さらに、第二・〇三条⒟は、当事者は当事者間の契約において、契約の変更の手続きについて定めることができるものの、当初の契約が、当該契約を変更する特定の方法について許容していたとしても、一般的に入手

(15)

    同志社法学 六六巻六号一一八一九五八

可能な標準書式によるソフトウェアの移転については、一方当事者による他方当事者への重大な変更に関する通知は、他方当事者による合意を証明するのに足りるものではないとする。変更を求める当事者は、譲受人が通知に添付された﹁同意する﹂旨のアイコンをクリックしたことなどを証明する必要が生じる。コメントは、合意がなされているかの判断は、客観的に、状況が示すものに基づくとし、変更が強制できるか判断する際に、裁判所は変更についての十分な通知およびアクセス、変更の明確性、変更に同意する意図について考慮すべきであるとする 191

。さらに、変更の通知は、場所及びサイズにおいて顕著であり、他方当事者が見ざるを得ないような表示であることが必要とされ、当事者が通知について確実に認識できる様に配慮がなされる 192

  明示の保証については、UCC第二編第三一三条における﹁取引の基礎テスト﹂は、明確な基準ではないとして採用せず、合理的な譲受人が信頼することができる事実の確言または約束は、ソフトウェアが当該確言または約束に適合するという明示の保証を生じさせるというアプローチを採用する 193

。ただし、実際に信頼したかどうかについて譲受人が証明する必要はなく 194

、コメントは、﹁単なる宣伝文句でない、義務を負う行為を表すソフトウェアについての事実の確言、ソフトウェアについての説明及び、その他の文言または行為﹂について、譲渡人が支払後までその保証を目にしなかったとしても明示の保証は生じるとする 195

。合理的な譲受人が信頼することができるかどうかについて判断する際には、譲渡人が義務を負う文言を使用したかどうか、表示が特定されていたかどうか、声明について確かめることができるかどうか等が参考になるとされる 196

。譲受人の知識の程度についても考慮されることとなるため 197

、例えば、コンピュータ・ソフトウェアとOSの互換性や、ターン・キーシステムの処理速度についての表示は、合理的な譲受人が信頼することができる明示の保証となり得るとされる 198

  明示の保証の排除、制限についても、ALIソフトウェア契約法原則第三・〇二条はUCC第二編第三一六条⑴と異

(16)

    同志社法学 六六巻六号一一九一九五九 なったルールを採用している。合理的な買主が保証排除について予想していなかった場合には、保証排除条項は強制できないとし 199

、裁判所は、売主が提示した状況における、保証の文言または行為の明確性、特定性について比較し、買主が売主の保証の排除について驚いたかどうかについて判断することとなる 200

。カスタムメイドと一般市場における両方のソフトウェア取引について、合理的な譲受人が明示の保証の排除を予測していない場合には、明示の保証は排除できないとされる。

  ALIソフトウェア契約法原則における非常に特徴的な規定として、譲渡人が認識しない重大な隠れた瑕疵がないことについての黙示の保証に関する規定があげられる。第三・〇五条⒝は、﹁ソフトウェアと引き換えに金銭または金銭的な支払い義務に関する権利を受取る譲渡人は、通常の頒布経路におけるいかなる当事者に対しても、譲渡人が移転の際、認識しない、重大な隠れた瑕疵がソフトウェアに含まれないことを保証する﹂とする。この保証は排除することができないほか、不実表示の請求に取って代わるものではないとされる 201

。この黙示の保証は、コモン・ローにおける信義則、契約上の開示義務、詐欺隠匿法から導かれる要素をさらに保証の枠組みに取り込むものであることから 202

、より譲受人の立場に配慮した規定であるということができる。

四  電子商取引及び情報財取引等に関する準則   本章においては、平成二四年一一月に公表された経済産業省による﹁電子商取引及び情報取引等に関する準則﹂におけるいくつかの項目についてふれる。具体的には、ALIソフトウェア契約法原則における契約の成立、契約条項の開示・強制、契約の変更についての規定、保証とその排除についての規定に関連した項目について言及する。﹁電子商取

(17)

    同志社法学 六六巻六号一二〇一九六〇

引及び情報財取引等に関する準則﹂は、汎用品として市場で流通する情報材の取引等に関する論点について検討の対象としている。

  ﹁等則準﹂則準るす関に引電取財報情び及引取商子Ⅲ

Dー検討する。ユザいーが販売店でCて -一返立、ライセンス契約の成と品ユーザーのつに否可は等の

。容、かるれ入け受を約報契、はにーザーユ情内財しのるなととこなかい肢択選るす金返・還返 ンてライセ内ス契約容初めれに後払支金代、合場るさ見をてるセこなきで意同に約契スンいイとラが前提とさいる。れ にの内容意不同であ契る約のスンセイラ約契ンオ・クーユれザこーと約契供提、にうよの解。金る品・返返が認めらの を約契スンセイラ、き除ッ合場たしクリクはたま封容開内でに・ッリ同はたま約契プッラククれン意なけきば、シュリ 契の内容を認識し、を約締結の意思もって契約スのボン媒体封の開封前また、同意はタるセイラン、に前すクッリクを なこのようく場合、よい。ュ多がとこるなと能可がとこい用プらリ、合場の約契ンれ・クッオククやシリンる・ッ契約ラ 提契約(=約供契)とするれと容内をとこす渡き引を物解セさラる見を容内約契スンイるて金場め﹂、代合支払後に初 ースンセイラて契し対に売ザーユが店販、が約契をの約及締体ー体有の等ルアュニマ・媒結び位地るきでがとこるす間 -Rザ購M等の媒体を介して情報財を入ーする場合であって、﹁販売店とユO   情報がオンラインで提供され、オンライン契約時にライセンス契約内容が明示されており、オンライン契約画面を通じて、ベンダーのサーバーから情報財を有償でダウンロードした場合には、ライセンス契約内容に同意の上、購入ボタン(契約ボタン)をクリックしたと解される場合は、ユーザーは、ライセンス契約に同意できないことを理由として情報財を返還・返金できない。ただし、﹁オンライン契約画面からリンクでライセンス契約画面に移行するような場合においてリンクが発見しづらく、かつ購入ボタンのクリックに際してライセンス契約についての同意が必要とされない場合等﹂は、購入ボタンがクリックされていたとしても、ライセンス契約は成立せず、ユーザーは返金を求めることがで

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    同志社法学 六六巻六号一二一一九六一 きるとされる。

  情報財の提供に関して、重要事項が提供されなかった場合の効果について、準則のⅢ

-一

。こ基づて返品・返金を求めるいとががるとるあす性で可るき能 提供せずザ、ユーがい情てのつに項事要重どな量容の財報ーをザ使に項二条一第法民はー第ーかユできなった場合、用 演と、類種のUPCユにーザーが店売速販算、度量又クスィデドーハ容、のーリモメ・ンイメはーダンベ、はに的体具 い事項﹂と当う。)の情重要事﹁下以(項提るあ要重りた報で供との。すと﹂るいてれさ解るるさあ務が課義れる場合が 結がのそ、は合場るあ締に差格なき大識知的門専程や過条に二情に結締の約契、上)項第お一第法民(則義信、てい報 -三の間者事当約契、﹁は   契約締結後の債務の履行に関する特定の仕様、応答速度などの、﹁動作環境等の重要事項に関する正確な情報﹂が提供されなかった場合、ユーザーは、そのような情報が提供されていれば、﹁自己の使用環境に適合しないソフトウェアを購入することはなかったとして、売買契約の錯誤による無効(民法第九五条)を主張し、返品・返金を求めること﹂また、﹁販売店がユーザーに対し法令又は信義則に基づき情報提供義務を負う場面において、ユーザーを欺罔する意図で重要事項につきあえて告知せずソフトウェアを販売し、その結果ユーザーが重要事項につき誤信してソフトウェアを購入したという場合であれば、売買契約の詐欺による取消し(民法第九六条第一項)をし、返品・返金を求めること﹂が可能であるとする。

  消費者契約の場合には、﹁ベンダー又は販売店が故意に重要事項について告知せず、その結果、ユーザーが動作環境等の自己の使用に不利益な事実は存在しないと誤信してパッケージ・ソフトウェアを購入したという場合﹂に、ユーザーは、消費者契約法第四条第二項に基づき、また、特定商取引法第九条の三、第二四条の二、第四〇条の三、第四九条の二、第五八条の二に基づき売買契約の取消しを主張し、返品・返金を求めることが可能であるとされる 203

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    同志社法学 六六巻六号一二二一九六二

  なお、最高裁平成二三年四月二二日第二小法廷判決民集六五巻三号一四〇五頁は、﹁契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務不履行による賠償責任を負うことはないというべきである﹂と判断した。準則は﹁同判旨に従えば、ベンダー又は販売店がパッケージ・ソフトウェアを販売するに先立ちユーザーに対する重要事項の情報提供義務違反があったとしても、同義務の違反は売買契約における債務不履行とはならず、ユーザーは、本文中に記述した錯誤等による契約の無効・取消しにより返品・返金を求めるか、不法行為による損害賠償責任の追及を検討することとなろう﹂とする。このように、ユーザーは、債務不履行責任ではなく、返品・返金、または不法行為による損害賠償責任を追及できるとされる。ALIソフトウェア契約法原則における譲渡人が認識しない重大な隠れた瑕疵がないことの黙示の保証は、よりユーザーの保護について配慮したアプローチを採用するものであるということができる。

  裁判例は、ソフトウェアは完全なものでないことが多く、ある程度の欠陥が予測されるものだとする。プログラムにバグが生じることは避けられないとしつつ、システムの機能に軽微とはいえない支障を生じさせた上、さらに﹁遅滞なく補修することができない﹂などの場合にプログラムに欠陥(瑕疵)があるとしたケースがある 204

。また、裁判所が﹁重大な瑕疵﹂と判断するのは、システムの機能に軽微とはいえない支障を生じさせた上、さらに﹁遅滞なく補修することができない﹂﹁相当な代替措置を講じていない﹂場合であるとする 205

  損害賠償の制限および免責条項等に関する規定としては、民法第九〇条において規定する公序良俗に違反する条項として、﹁ベンダーの契約解除条件を著しく有利とする条項﹂、﹁ベンダーが支払う損害賠償額を著しく低く定める条項﹂が、

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    同志社法学 六六巻六号一二三一九六三 無効となる可能性があるとされる。消費者契約の場合においては、﹁ベンダーの全部免責条項﹂、﹁ベンダーの故意又は重過失の免責条項﹂、﹁消費者が支払う損害賠償又は違約金の額を、事業者の損害に比して不当に高く定める条項﹂、﹁消費者の利益を一方的に害する条項﹂、﹁例えば、﹃バグについて一切責任を負わないという条項﹄、﹃バグの修補は全て有料という条項﹄、﹃担保責任期間を著しく短くする条項﹄が消費者契約法第八条~第一〇条に基づき無効となる可能性がある﹂とする。ALIソフトウェア契約法原則は、ソフトウェア契約取引について、消費者に対する規定も含めて適用されるものであり、他方、日本法においては、民法、消費者契約法、特定商取引法など異なった法規がそれぞれの状況に応じて適用される。ソフトウェアといった特殊な目的物については、消費者取引に関する規定を含んだ独自のルールが設定される利点が考慮されてもよいのではないかと思われる。

五  むすびにかえて   本稿ではALIソフトウェア契約法原則について、主に、適用範囲、契約の成立、契約条項の開示、強制可能な契約条項、契約条項の変更、明示の保証の成立と排除、制限、譲渡人が認識しない重大な隠れた瑕疵がないことの黙示の保証に関する問題を取り上げて論じた。

  ALIの試みは、ソフトウェア契約という特定の取引について、従来の議論を踏まえ、専門知識の格差が顕著となる取引であることに鑑み、供給者とユーザ側の双方の立場に立脚した規制の在り方を提示するものであるが、消費者契約に限定されない、情報量、交渉力格差が存在する取引における契約の成立、契約条項の開示、強制可能な契約条項、重要事項の情報提供義務に関する規制の在り方について、示唆を与え得るものである。これらの議論は、直接的には経済

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    同志社法学 六六巻六号一二四一九六四

産業省による﹁電子商取引及び情報財取引等に関する準則﹂の情報財の取引等に関する議論に関連するだけでなく、民法(債権法)改正におけるさまざまな議論と共通する点がある。以下、いくつかの議論との関連性について指摘しておくこととする。

  ALIソフトウェア契約法原則はコモン・ロー上の契約の原則(

ge ne ra l p rin cip le s o f c om m on -la w c on tr ac t

)エクイティー上の原則(

eq uit ab le p rin cip le s

)、信義則による履行(

go od -fa ith p er fo rm an ce

)約束的禁反言(

pr om iss or y es to pp el

)、連邦または州における消費者保護法と知的財産権法等によって補完される 206

。その中でも信義則は、ソフトウェア契約を巡る紛争において、当事者間の契約義務の形成に影響を与えてきた 207

。第二・〇三条の契約条項の変更についても信義則のテストを満たさなければならず 208

、第三・〇五条の重大な隠れた瑕疵に関する黙示の保証についても、義務に関する契約法、信義則、契約上の開示義務、詐欺隠匿法から導かれるものであるとされる 209

。このように、情報格差の存在する当事者間の取引の規制に関し、信義則は重要な役割を果たすものであるといえる。

  民法(債権法)改正の中間試案においては、﹁信義則等の適用に当たっての考慮要素﹂として、﹁消費者と事業者との間で締結される契約(消費者契約)﹂のほか、情報格差・交渉力格差が当事者間にある場合に信義則等を適用するときには、格差の存在を考慮しなければならないとする考え方も提案されていた 210

。これは、﹁二一世紀の民法としては﹃事業者﹄﹃消費者﹄﹃消費者契約﹄といった概念を正面から取り込むべきではないかという問題意識﹂や、﹁﹃格差﹄の存在は消費者契約にのみ存するわけではないという認識から、解釈理念としてその考慮を謳うべきであるという考え﹂に基づくものであったが 211

、民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案においてはそのような案は置かれていない。

  契約条項の開示、契約条項への合意について、ALIソフトウェア契約法原則は﹁契約は、合意を示すに足りるいかなる方法によっても﹂契約は成立するとして、UCC、リステイトメントを踏襲する 212

ものの、標準書式契約に関しどの

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    同志社法学 六六巻六号一二五一九六五 ような条項が強制可能であるかという点について、UCC、UCITAと比較して、供給者側の条項の開示がなされた上で同意が行われる様に配慮した規定を置いている。一般公衆に入手可能なソフトウェアの標準書式条項が譲受人に採用されたとみなされるためには、ソフトウェアの移転の開始の前に、譲受人が、標準書式に電子的なアクセスをすることが合理的に可能であることや 213

、ソフトウェアの電子的移転の場合には、譲受人が電子標準書式の末尾またはそれに近い箇所に合意に署名することが必要とされる 214

。条項を開示する要件が存在することによって、譲受人は開示される標準書式を比較し合意することができるとされる。

  さらに第二・〇二条⒠は、譲受人がソフトウェアの移転の開始の前に、標準書式に電子的にアクセスすることが合理的に可能であるか、合意に署名したか、公序、非良心性によって無効とされないかなど、第二・〇二⒝⒞⒟の要件を満たしているか否かの証明責任は譲渡人にあるとする。このように証明責任を譲渡人に配分することは、コンプライアンス証明のコストを最小化するために有効であるとし 215

、これらの条項は、譲渡人が条項を強制できることを保証するものだとする 216

  他方、﹁電子商取引及び情報財取引等に関する準則﹂は、ライセンス契約が提供契約であるとされ、代金支払後に初めてライセンス契約内容を見ることが可能となるものについて、シュリンク・ラップ契約やクリック・オン契約において、ライセンス契約の内容を認識し、契約締結の意思をもって、開封またはクリックした場合を除き、同意できないことを理由として情報財を返還・返金できるとする。契約締結前の条項の開示が要求されず、同意しない場合には情報財を返還・返金できるという選択肢のみが可能であることが前提となる。

  約款の組入要件の内容について、民法(債権関係)改正における中間試案第三〇の二は﹁契約の当事者がその契約に約款を用いることを合意し、かつ、その約款を準備した者﹂である﹁約款使用者﹂により、﹁契約締結時までに、相手

参照

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