大学生 における神経性過食症の頻度 と自我状態 の関連
Pr e va le nc eo fBu li mi ai nUni ve r s i t ySt udent sand Spe c i alRe f er enc et oEg oSt at e
聖路可 国際病院 多 田 敦子 弘前 大学教育学部 阿部 テル子 弘前大学保健管理 セ ンター 佐 々木大輔
Ⅰ
緒 言Ⅱ
対象お よび方法Ⅲ
成 績1
有効 回答2 BI T E
の成績 1)BI T E
得点2 )
重症度待点3) BI T E
得点 と重症度得点 の相 関4)
ダイエ ッ トあるいは肥満恐怖 についての質問項 目とBI T E
得点3 BI T E
得点 とT E G
得点 の関連1
)BI T E
得点 とT E G
の各尺度得点の相 関2)
エ ゴグラムパ ター ンとBI T E
得点Ⅳ
考 察Ⅴ
まとめⅥ
文 献K e yW o r d s: B ul i ni a . BI T E , E G O G R A M
.Ⅰ
緒 言近年,摂食障害者 は増加 してい る。 それ と共 に症状 が多彩化 し.病型 も変化 してい る1‑。古 くか ら過食 は神経性食欲不振症
( a n o r e xi an e r v o s a ,
以下A N )
の経過中の1
症状 と して と らえ られて き た。最近では過食 お よび過食 に伴 う症状が問題 となる症例が著 しく増加 し,神経性過食症( b u l i 血a n e r v o s a
,以下B N )
は一つの症候群 と して注 目されてい るoB N
の病態把握 には.経過,心理社会的背 景, および人格の特徴 などさまざまな要 因を考慮 しなけれ ばな らない。 また,治療法 は未 だ確立 さ れ てお らず模索 の段階である2'3'。 また,野上 ら4'は,大学生 におけるB N
の頻度 が学生の1‑5%
を占め ると報告 してい るが.大学生 の
B N
の頻度 の報告 は未だ少ない。そ こで. 国立大学 と私立女子 大学 の女子大学生 を対 象 と し,B N
の頻度 を調査 した. また,交流分析 の立場 か らの 自我状態 につい て も検討 した。‑5‑
Ⅱ
対象および方法弘前大学教育学部の
1‑4
年女子学生 (以下 弘大生)5 3 2
名 と東北女子大学生 (以下,東女生)3
年,4
年学生2 6 3
名の計7 9 5
名 を対象 と した。平均年齢 は2 0 . 6±1 . 3
歳であった。調査期間は平成8
年1 0
月か ら1 2
月 とした。調査用続 と して 自己記入形式の質問紙の,
B N
や過食の症状 を有す る人を特定す る目的で作成 され たB I T E
スケール 日本版 (以下B I T E )
1㌧ および簡便 に被験者 の 自我状態 を把握できる東大式エ ゴ グラム第2
版 (以下,T E G )
5)を用いた。B I T E
には2
種類の評価尺度得点がある。過食の症状の程度 を評価す る症状評価尺度の得点 (以下B I T E
得点),過食の重症度 をみる重症度評価尺度の得点 (以下.重症度得点)である。B I T E
得点は2 6
点満点で得点が高いほどB
打の診断に合致す る可能性が高い と判定 され る。B I T E
得点の2 0
点以上 はcl i ni c al
群 (以下, C群),1 5 ‑1 9
点はs u b cl i ni c al
群 (以下. S群) に分け,1 4
点以下をn o r m al
群 (以下N
群) と した。 また,重症度得点は1 8
点満点で得点が高いほど重症 と判定す る。T E G
は 各尺度得点をパーセンタイルに変換 した。エゴグラムパター ンは優位分類によった。B I T E
得点およ び重症度得点 については大学別.学年別 に比較 した。 また.B I T E
得点 とT E G
の成績 についての関連 を検討 した。 なお.B I T E
の質問項 目の中のダイエ ッ トあるいは肥満恐怖 についての質問である質問2
,3
,4
,1 6
については別個 に検討 した。推計学的検定 は
t ‑ t e s t .I2
検定.分散分析.P e a r s o n
の検定 を用い,危険率5%
未満 を有意 と し た。Ⅲ
成 績.1.有効回答
B I T E , T E G
共 に7 9 5
名全員か ら有効回答 を得た。2.B I T E
の成績1 )B I T E
得点弘大生 1
年
弘大生2年
弘大生3年
弘大生4年 東女生
3年 東女生
4年
図 1
大学別 ・学年別のB I T E
得点M±SD
大学別.学年別の
B I T E
得点の平均値 は弘大生2
年のみ有意 に低得点であ った。東女生 の学 年別 の平均値 に有意差 はなか った。弘大生3
年 と東女生3
年,弘大生4
年 と東女生4
年 の平 均値 を比較 したが.有意差 はなか った (図1
).大学別.学年別の
B I T E
得点の群別割合 は,両校 とも全てにおいてN
群.S
群. C群の割合に有意差はなか った (図
2)
0私大生
1
年弘大生
2
年弘大生
3
年弘大生
4
年東女生
3
年東女生
4
年図
2
大学別,学年別,群別のB I T E
得点2)
重症度得点大学別,学年別の重症度得点の平均値 は両校 とも全てにおいて有意差 はなか った (
図 3)
0E∃
弘大生 1
年
弘大生2年
弘大生3年
弘大生4年
東女生3年
東女生4年
図3
大学別,学年別重症度得点‑7‑
M±SE
3 )BI T E
得点 と重症度得点 の相関BI T E
得点 と重症度待点 の相 関は弘大生γ‑ 0 . 6 4 ,
東女生γ‑ 0 . 5 9
と有意 の相関があ った。4 )
ダイエ ッ トあるいは肥満恐怖 についての質 問項 目とBI T E
待点質 問
2
「きつい ダイエ ッ トを してい ます か」 ,
質 問3 「
1回で もダイエ ッ トが くずれ ると 失敗 した と思い ます か」 .
質 問4
「ダイエ ッ トを しない ときで も食 べ るもの全部 のカ ロ リー を計算 します か」 ,
質問1 6
「太 るのが とて も怖 いです か」 に 「はい」 と回答 した もの と 「い いえ」 と回答 した ものの.BI T E
得点お よび重症度得点 の平均値 を表 1に示す。BI T E
得点 重 症度得点 ともに各質問 に 「はい」 と回答 した ものの平均値 が有意 に高得点であ った。表
1 BI T E
の ダイエ ッ トあ るいは肥満恐怖 についての質問項 目質問
2
「きついダイエ ッ トを していますか」回 答 「はい」
「
いいえ」BI T E
得点( M±S D ) 1 3 . 7 ±6 . 0 7 . 1 ±4. 4
質問
3 「
1回で もダイエ ッ トが くずれ ると失敗 した と思い ます か」回 答 「はい」
「
いいえ」BI T E
得点( M±S D ) 1 0 . 2±4ー 7 6 . 0 ±3 . 8
質問
4
「ダイエ ッ トを しない ときで も食べ るもの全部 のカロ リーを計算 しますか」回 答 「はい」
「
いいえ」BⅠ T E
得点( H±S D ) 9 . 8±5 . 7 7 . 1 ±4 . 4
質問
1 6
「太 るのがとて も怖 いですか」回 答 「はい」 「いいえ」
BⅠ T E
得点( X±S D ) 8 . 3±4 . 6 5 . 1 ±3 . 6
各質問の
BI T E
得点お よび重症度得点の平均値 の 「はい」 と 「いいえ」 の比較 はP く 0 . 0 5
。3.BI T E
得点 とT E G
得点の関連1
)BI T E
得点 とT E G
の各尺度得点の相関BI T E
得点 とT E G
の各尺度得点の相関は両校 ともC P
とAC
が正の相関,N P
とA
が負の有意の相関 を示 した (蓑2)
0表
2 BI T E
得点 と「 E G
の各尺度得点の相関*P 〈 O . 0 5 2)
エゴグラムパターンとBI T E
得点エ ゴグラムパ ターンと
BI T E
得点の平均値の比較 を両校でおこなった。弘大生ではA C
優位型 のBI T E
得点の平均値が,A
優位型およびF C
優位型のBI T E
得点の平均値 よりも有意に高か った。東女生では各パターンの
BI T E
得点の平均値 に有意差はなか った。 また.両校 について各パ タ ーンのB I T E
得点の平均値 を比較 したが,有意差はなか った (図4)
。点 16
14
12
10
8 6 4 2
0医】 弘大生
EZ] 東女生CP
俵位 NP俵位A
俵位F C
優位AC
俵位図
4
エゴグラムパターンとBI T E
得点M±SD
,*P <0 . 0 5
Ⅳ
考 察1 9 8 2
年 にB N
がA
Nとは別の症候群であるという提案がなされたが.治療法は未だ確立 していない6㌧ 薬物療法や各派の心理療法 に携わ る人々が模索 している段階 にある。 また.病因 も様 々なものが考‑9 ‑
えられてお り.明 らかにされていないO病因の一つ として人格的特徴や心理的問題, 自我同一性の 未熟 さなどがいわれているが,その報告は少ない。 また, アメ リカの大学生では
B N
が4 ‑1 4 %
にみ られ るというO本邦では未 だ欧米 に比較 して低頻度であるが,B N
の予備軍的存在は多数 いる6'7㌧ 野上 ら4'は.一般高校生の7. 5%,
女子大学生の8. 3%
に食行動異常が存在すると報告 している。大 学生のB N
の頻度や人格的特徴 との関連の報告は少な く,不明の点が多い。今回は国立大学 と私立女 子大学の女子大学生を対象 にB N
の頻度 とB N
と自我状態の関連 を検討す ることとした.B I T E
によるB N
の頻度 はcl i ni c al
群が1 . 7 %,s ub cl i ni c al
群が7. 7 %
であったO摂食障害の頻度は1 0
代後半 にピークがあるとい う8㌧ 真栄 ら9
'は弘大生 1年 と医療技術短大生との比較で 後者 の特 に1
年生はB I T E
得点が高 く,留意が必要 と述べている。今回の結果では両校 に差はな く, 各学年 に も差はなかったoなお.弘大生2
年のB I T E
得点の平均値のみが有意に低かったが理由は不 明である。B N
の発症の契機 と してやせ願望 と肥満恐怖があるO馬場 ら10)は摂食障害者たちが時代風潮であ るやせた身体,皆 と同 じ体型 になることで,同一性 を世の風潮 に合致 させて 自我を保持 しようと し ている点 同一性の基盤を外面的なものや他か らの評価にお く結果 動揺をきた しがちである点 に ついて述べている。B I T E
の質問項 目の中の.ダイエ ッ トあるいは肥満恐怖についての回答 とB I T E
得 点 を検討 した結果, 「はい」 と答えた もののB I T E
待点が有意 に高 く, ダイエ ッ トはB N
と密接 な関係 のあることが確認で きた。やせ願望や肥満恐怖 は現代女性の共通の特徴であ り,摂食障害 に特有のものではない。食行動異 常 の形で. 自己の葛藤 を表現 している根底 には自我状態が関連すると推察 されるCそ こで.
B N
と自 我状態 との関連を検討す ることとした。原田ら11'はB N
について. ロールシャッハテス トとT E G
を用 いて検討 している。B N
は現実検討が悪 く,未熟で協調性にかけ.いきあた りばった り的である性格 傾向である。N P
が低 く.A C . F C
の高い ものが過食 に陥 りやすいという。また.筒井 ら12'は食行動異̀常の調査 と
T E G
(第 1版) を用いた調査か ら,B N
は 自他肯定因子であるN P
が健常者 よりも有意に低 く. 自己受容の低 さがやせ願望や肥満恐怖 と関連す ると述べている。今回の結果では.B I T E
得点 とT E G
各尺度得点の相関ではC P .A C
が正の相関,N P
とA
が負の相関を示 したOすなわち. C艶 S群 の 自我状態は自他否定,自己葛藤型であ り,厳格.現実検討の悪 さ.従順である。非現実的な理想, 希望,期待感を抱 き,妥協 を拒み,完全主義的であると推察 され るC今回の調査は自己記入式の質問紙法を用いてお り,
B I T E
か らはC
群. S群の何人がB N
の診断基準 に合致す るのかまでは不明である.今後.面接法をも組み合わせた詳細な検討 も必要であるoV まとめ
弘前大学教育学部の
1‑4
年女子学生5 3 2
名 と東北女子大学生3
年.4
年学生26 3
名の計7 9 5
名 を 対象 とし.B N
の頻度を調査 した。 また,交流分析の立場か らの 自我状態についても検討 した。調査用紙 と して
B I T E
スケール 日本版.および東大式エゴグラム第2
版を用いた。B I T E
得点の2 0
点 以上をC
群,1 5 ‑1 9
点 をS
群 に分け,1 4
点以下をN
群 としたoB I T E
得点および重症度得点について は大学別,学年別 に比較 した。 また,B I T E
得点 とT E G
の成績 についての関連を検討 した。B I T E
の質 問項 目の中のダイエ ッ トあるいは肥満恐怖についての質問である質問2.3,4,1 6
については別 個に検討 した。1 .B I T E
l
)BI T E
得点大学別,学年別の
BI T E
得点の平均値 は弘大生2
年 のみ有意 に低得点であったO東女生の学 年別 の平均値 に有意差はなか った。弘大生3
年 と東女生3
年.弘大生4
年 と東女生4
年 の平 均値 を比較 したが,有意差はなかった。大学別.学年別の
BI T E
得点の群別割合は,両校 とも全てにおいてN
群, S群. C群の割合 に有意差 はなか った。2)重症度得点
大学別.学年別の重症度得点の平均値は両校 とも全てにおいて有意差はなかった。
3 )BI T E
得点 と重症度得点の相関BI T E
得点 と重症度得点 には有意の相関があ った。4 )
ダイエ ッ トあるいは肥満恐怖 についての質問項 目とBI T E
得点質問
2
.質問3.
質問4,
質問1 6
に 「はい」 と回答 した もの と 「いいえ」 と回答 した もの の.BI T E
得点お よび重症度得点の平均値はともに各質問に 「はい」
と回答 した ものが有意に 高得点であった。2.BI T E
得点 とT E G
得点の関連1
)B I T E
得点 とT E G
の各尺度得点の相関は両校 ともC P
とA C
が正の相関,N P
とA
が負の有意の相関 を示 した。2 )
エ ゴグラムパ ター ンとBI T E
得点の平均値 は,弘大生ではA C
優位型 のBI T E
得点の平均値が.A
優位型 お よびF C
優位型 よりも有意 に高かったO東女生では各パ ターンのBI T E
得点の平均値 に有意差 はなか った。 また.両校 について各パ ターンのB I T E
得点の平均値 に有意差 はなか っ た。以上.
BI T E
によるB N
の頻度に両校 に差はなく.各学年 にも差はなかったoBI T E
の質問項 目の中の.ダイエ ッ トあるいは肥満恐怖 についての回答 と
BI T E
得点を検討 した結果, ダイエ ッ トはB
Ⅳと密接な 関係のあることが確認で きた。BI T E
得点 とT E G
各尺度得点の相関ではC P
,A C
が正の相関,肝
とA
が 負の相関を示 した。すなわち, C群. S群の自我状態は自他否定, 自己葛藤型であ り,厳格,現実 検討の悪 さ.従順である。非現実的な理想,希望,期待感を抱 き,妥協 を拒み,完全主義的である と推察 された.今後,面接法をも阻み合わせた詳細 な検討 も必要である.Ⅵ 文 献
1)中井義勝 :過食症患者調査表
( BI T E )
の有用性の検討 と神経性大食症の実態調査.厚生省特定 疾患神経性食欲不振症調査研究班平成5
年度報告者p 6 3 ‑ 6 8 , 1 9 9 4
2 )
馬場謙一 :神経性食欲不振症の予後規定因子.心身医学2 9: 41 5 ‑ 4 1 7 . 1 9 8 9
(抄録)3 )
笠原敏彦.田中 哲 :B ul i m i an e r v o s a
の発病 に関する心理的要因について.心身医学3 0: 1 3 8 ‑ 1 4 4 . 1 9 9 0
4)
野上芳美.門場康次,鎌 田康次朗 :女子学生層 における食行動異常の調査.精神医学2 9: 1 5 5 ‑1 6 5 . 1 9 8 7
‑l l ‑
5 )
東京大学医学部心療 内科編著 :新版 エ ゴグラムパター ン.p 5 8 ‑ 7 9 .
金子書房,東京.1 9 9 5 6 )
筒井末春, 中野弘一.坪井康次,也 :大学生の食習慣及び食行動異常 に関す る検討.厚生省特定疾患神経性食欲不振症調査研究班平成
4
年度報告書.p 7 5 ‑ 7 9 . 1 9 9 3
7 )
竹川 隆.玉井 一,小林伸行,他 :食行動異常者1 7 4
例の臨床 な らびに心理特徴の検計 心 身医学3 2: 4 5 6 ‑ 4 6 1 , 1 9 9 2
8)武田 綾,鈴木健二.松下幸雄 :男女高校生 における神経性過食症の出現頻度.精神医学 3 5: 1 2 7 3 ‑1 2 7 8 , 1 9 9 3
9 )
真栄登志子 阿部 テル子,佐 々木大輔 :BI T E( T h eB ul i mi cl n v e s t i g a t o r yT e s t , E di n b u r g h )
スケール 日本版お よび食習慣調査 による大学生の神経性過食症 のスク リーニ ング.弘前大学保 健管理概要
1 8: 5 ‑1 5 . 1 9 9 6
1 0 )
馬場謙一,遠山尚孝 :病態心理の側面 か ら.末松弘行.他編 :神経性過食症 その病態 と治 療.p 3 0 ‑ 4 5 .
医学書院,東京,1 9 9 6
ll)原 田真理.赤林 朗,野村 忍,他 :摂食障害患者 における東大式 エ ゴグラム