三重大学大学院教育学研究科教育科学専攻理数・生活系教育領域
日中の知財教育の現状調査と
グローバノレ化を意識した知財教育の構想
錦秀
2014 年 2 月 1 3日
目次
第 1 章諸吉
1 . 1 研究背景…・・
1 . 2 研究目的...・
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H・ . . 2 1 . 3 研究方法... ・
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H・ . . 3 1 . 4 本論文の構成... ・
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第 2 章 日 中 の 知 財 に 関 す る 法 律 体 系 の 比 較
2 . 1 日中の知的財産の概念の比較…...・
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H・..……4 2 . 2 日中の知的財産権の分類... ・
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H・ . . 5 2 . 3 日中の知財権の保護期間と所管...・
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H・..…… 6 2 . 4 本章のまとめ...・
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第 3 章日中の知財教育の現状
3 . 1 日中の学習指導要領における知財に関する部分の比較………9 3 . 2 日中の知財テキストの調査と比較…... ・
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H・ . . … 1 0 3 . 3 日中の知財教育の実践例の調査、比較…...・
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M・ "19 3 . 4 本章のまとめ...・
H・..…………...・
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H・..…… 3 0
第 4 章日中で共通に実施できる授業案
4 . 1 目的と方法...・
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H・ ..……… 3 1 4 . 2 授業案の構想…...・
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H・ . . 3 1 4 . 3 本章のまとめ...・
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第 5 章日本の商業高校にいける授業実践
5 . 1 日本の商業高校における授業実践の目的と方法…... ・
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H・ . . … 3 4
5.2日本の商業高校における授業実践の結果と考察…... ・
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H・ .. … 38
5 . 3 本章のまとめ……... ・
H・..………...・
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第 6 章日中の中学生におけるアンケート調査
6 . 1目的と方法...・
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H・ "54 6.2 結果と考察…... ・
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H・ "54 6.3日中の中学生における知財意識の比較... ・
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H・ "59 6 . 4 日本の大学附属中学校アンケート調査... ・
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H・ . . 6 6 6 . 5 本章のまとめ... ・
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H・..…………...・
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H・ ..………...・
H・ . . 6 7
第 7 章結吉
7 . 1 まとめと今後の課題...・
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H・ .. …69
謝辞
参考文献
第 1 章諸言
1 . 1 研究背景
世界経済のグローパル化の進展に伴い、模倣品・海賊版も世界規模で拡散し ている。その内、近隣国である日本と中国の知的財産に関する問題が突出して 多い。例えば、クレヨンしんちゃん商標、無印良品及び MUJI というプランドの 商標やインターネットの普及による模倣品侵害等がある。こう言った問題に伴 い「知的財産 J (以下知財とする)という吉葉が 2 1 世紀ますます注目されるキー ワードになってきている。
時代の流れに伴い、日本と中国の知財に関する理解を深めるために、両国の 政府間で交流が進められ、研究者らによる日中の知財に関する研究も進められ つつある。その 1 つに李正華 ( 2 0 0 9 年) r 日中の知財立法の比較研究 J
[1Jがある。
これは知財の法律についての専門的な研究である。しかし、知財制度は問題が 起こった後の解決の方法という側面が強い。知財問題を減らす、更になくすた めには、問題を解決することだけではなく、問題が起こらないようにする手立 てと考えられる。日本では知財教育の一部になる「裾野人材 j の育成がある。
これは一般人、あるいは、小、中、高校生向けの知財教育である。これについ て、松岡守 ( 2 0 0 5 年)の「幼稚園から大学までの知的財産教育 J
[2Jがある。松岡 は大学での基礎教育における実践から、大学に入学前の早い時期からの知財教 育の重要性を訴えている。
中国では 2 0 0 1 年の WTO の加盟後、知財分野の急成長に伴い、知財人材の需要 が急増するとして、 2 0 0 4 年 1 1 月、「中国教育部が文章を発表し、条件を具備し ている大学が教育資源を整え、知的財産法学或いは知的財産マネジメント学専 門の修士課程、博士課程を立ち上げ、知的財産権の学科における地位を向上さ せることを奨励した J
0 [3Jまた、 2 0 0 8 年 6 月 5 日に「国家知的財産戦略綱要 J が 発表され、「知的財産サービスをサポートするシステムと人材が著しく不足して
いる J と指摘され、[企業向けの知財管理人材と仲介サービス人材を重点的に育 成する J
[4Jと明確に知財人材育成の方針が掲げられた。このような中国の経済発 展とともに企業や大学等の知財の人材が急速に必要となっている現状に合わせ て、大学では「知的財産権学院、知的財産権部(所)、知的財産権研究センター(基 地) J が設立されている。一般向けの知財普及教育としては「国家知識産権局 2 0 1 3 年工作要点 J
[5Jで「青少年向けの知財普及教育の書籍を編制し、知財宣伝教育の 体験活動を行い、子どもたちの知財意識や創新意識を高める。 J と記されている。
これについては、主に国家知財局による行政機関への知財教育、及び全国各地
で行われているイベント(例えば、毎年の 4 月 26 日前後一周聞が知財週と設定 されている)等。また、陶輝、劉立 ( 2 0 0 6 年)の「中小学校知識産権普及教育の探 析 J
[6Jでは「国家の未来の主人、建設者である青少年に対する系統的な知財権教 育をするのは、社会全体で正式に知財を尊重、保護、意識主せることのポイン
トとなる J と述べている。
日本でも、中国でも知財教育で専門人材の育成以外にも青少年向けの普及教 育が今後のグローパル化時代における各国の発展や国際交流と知財教育の発展 にも欠かせないと考えていることが分かる。更に、世良清 ( 2 0 1 0 年) I 中国の知 財教育の動向一日中の知財教育の連携可能性に向けた基礎的考察 J
[7Jでは、「い まだに模倣品や海賊版が社会に出回るのは、知財教育が十分定着してなかった と見られ、また中国の教育改革により創新教育や技術教育の導入の進みにつれ、
日本の知財教育と中国の創新教育が連携し組み合わせることによって両国の知
財教育の研究を連携できる可能性は大き~ ~J と述べている。また、陳愛華ら ( 2 0 1 2 年) I 知財教育における中日協力の方向性 J
[8Jでは、「最近、知財教育における連 携について、両国の知財教育機関がすでに様マな活動をスタートしているが講 師、教材の交換や開発、また e ラーニングに留まると述べている。また、裾野 人材の育成に当たっては、両国が知財教育の協力の手法を探している段階であ る J と述べている。このように日本と中国の知財教育の共同研究も進みつつあ る。それで、知財に関する共同の意識や態度、考え方を持てるグローパル化を 意識した知財教育が必要だと考えた。
1 . 2 研究目的
本研究では日本と中国の知財教育に関する先行研究をまとめた上、日中の知 財教育の共同研究が進みつつあるが、知財に関する相互の理解がまだ不十分で、
模倣品や海賊版等の知財問題がまだ存在している。このような背景から関連機 関が情報交換をし、対策を進めているが、根本的に問題を解決するには、一般 市民、あるいは国の未来を担う子どもたちに対する知財の意識や知識を育成す ることだと考える。そして、知財制度は国?の政策により異なるが、知財に対 する考え方や態度が同じであれば、地域、国が違っても根本的に問題を解決で きるのではないかと考え、その第一歩として、日中で共に学べる知財に関する 授業作りを目指している。
日中の知的財産権(以下知財権とする)や知財教育の現状を調査、比較を行い、
相互の知財教育の取り組みで参考になる点を見出し、相互に学び合える、学校 基礎教育段階に応じた知財の共通の意識を高める授業案を提案し、授業実践を 行い、結果と課題を考察した上で、今後の日中の架け橋になるような知財教育
2
の教材開発を目的とする。その上で、知財教育を通して、子どもたちの創造工 夫やアイデア発想を広めることを目的とする。
1 . 3 研究方法
日中の知財権の法律体系を調べ、比較を行う。日中の知財教育の現状につい て、学習指導要領、知財に関する教科書類の内容構成、知財教育に関する教育 活動等について調査、分析、比較を行い、日中の知財教育の相違点を検討する。
中国の知財教育の実践について、中国の小中学校の訪問調査を行う。
これらの結果を基に、日中で共通に実施できる知財教育の授業案を構築し、
日中の中学生に事前アンケートを実施し、日本の商業高校生に対して授業実践 を行い、事前・事後のアンケートに基づき、授業の効果、改善と今後の課題を 検討する。
1 . 4 本論文の構成
本論文はこのように構成した。
第 1章では研究背景、先行研究、研究目的と方法について記述した。
第 2 章では日中の知財に関する法律体系を比較し、相違点を検討した。
第 3 章では日中の知財教育の現状について学習指導要領、知財に関する教科書 の内容構成、知財教育実践活動の 3 点から調査、分析し、比較を行った。
第 4 章では日中で共通に実施できる授業案を提案した。
第 5 章では第 4 章での授業案を用いて、日本の商業高校において授業実践を実 施した。また、事前・事後のアンケートを行い、授業の効果を検討した。
第 6 章では日中の中学生におけるアンケート調査を行い、日中の中学生の知財 教育に関する知識や意識を図り、比較を行った。
第 7 章では以上の各章の内容をまとめ、今後の課題を明らかにした。
第 2 章日中の知財に関する法律体系の比較
中国の民法理論によれば、知識産権法(日本の知的財産基本法と同様)は民事 権利の一種で「民法 J の特別法である。 1986 年 4 月 1 2 日全国人民代表大会によ
って制定され、 2009年 8 月 27日、全国人民代表大会常務委員会第十次会議で「明 確に社会主義市場経済と社会発展要求の規定に適してないものについての修訂 j
を行った「民法通則 J
[8Jの中の、民事権利の章の第 3節知識産権において 4カ条 の条文 ( 9 4 条
r‑‑..‑9 7 条)を設けた。一方、日本の「民法典 jでは知財権の内容は書 かれてない。ところが、日本では 2002年に成立された「知的財産基本法 J があ り、「大学等の責務等 jの内容が書かれている。中国の知識産権法にはまだ学校 関係の内容は書かれていない。
2.1日中の知財の概念
英 文 i I n t e l l e c t u a lP r o p e r t y J の訳を日本では「知的財産 j といい、中国で は「知識産権 J という。日本語の「特許 J は中国語では「専利 J と吉い、同様 に「実用新案 J は「実用新型 j、「意匠 J は「タ卜観設計 j と言う。このように、
知財の表現が国によって相違がある。
2 . 1 . 1 日本の知財(権)の定義
日本では知財と知財権の 2 つの概念がある。知財は知財権を含む広い範囲の 概念である。
知的財産基本法によると知財とは「発明、考案、植物の新品種、意匠、著作 物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた 自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、
商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密そ の他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報 j をいう。
知財権とは「特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その 他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に 係る権利 j をいう。
2 . 1 . 2 中国の知識産権の定義
知識産権の概念について、中国の「知識産権法」の中では発明、実用新案、
外観設計等についてはそれぞれに定義されているが知識産権という定義はされ
4
てない。一方、中国研究者らは次のように定義している。郊成思は 1 9 9 5 年の「知 識産権法教程 jで「知識産権は人々がその智力創造的成果で法律により有する 専有権利 J
[lJと定義している。劉春田は 2 0 0 0 年「知識産権法」で「知識産権は 創造的智力成果と工商業表記に基づき、法律により生まれた権利の総称 J
[2Jと定 義している。また、呉漢東は 2 0 0 0 年「知識産権法学 jで「人々が自分の智力活 動を基づき、創造した成果や経営管理活動中の表記、信用で法律により有する 権利 J
[3Jと定義している。王兵らは 2 0 1 0 年「知識産権基礎教程(第 2 版 ) J で「人々 科学技術や芸術領域の智力創新成果や工商業領域の投資成果より有する法定権 益 。 J
[4Jと定義している。
また、中国の法律関係には知識産権法の概念がある。知識産権法
[5Jとは「知識 産権の所属、実施、管理、保護等の活動の中で生じる社会関係の法律規範の総 称である J と定義されている。
2 . 1 . 3 まとめ
日本では知財と知財権の 2 つの概念がある、一方中国では知識産権だけであ り、知的財産関係の定義から異なるところがある。しかし、知的財産の対象に なる[人間の創造的活動や事業活動に用いられる商品や役務を表示するもの j については共通と考える。ただし、日本ではもう 1 つの対象「営業秘密その他 の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報 j については、中国の知的財産の 概念からは読み取れないが、「商業秘密の定義 jの中に表示されている。したが
って、基本概念として表現が異なるが本質は同じであると考えられる。
2 . 2 日中の知財権の分類
2 . 2 . 1 日本の知財権の分類
日本の知財権には知的創造物についての権利と営業標識についての権利があ る。知的創造物についての権利では特許権、実用新案権、意匠権、著作権、回 路配置権、育成者権、企業秘密が含まれる。営業標識についての権利では商標 権、商号権、不正競争防止法関連が含まれている。
その内、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の 4つの権利はまとめて産業財 産権と呼ばれている。
日本では知財権を目的
[6Jから見て、 3つに分けている。第 1 には産業の発達に 貢献する目的とした権利:産業財産権(特許権、実用新案、意匠、商標権)等で、
かつてはこれらをまとめて工業所有権と呼ばれていた。第 2 には文化の発展に
貢献することを目的とした権利:著作権等である。第 3 には公正な競争秩序に
貢献する目的としたもので、営業秘密、不正競争防止法の権利等がある。
2.2.2 中国の知識産権の分類
中国では日本のように知的創造物や営業標識についての権利という分け方が なく、宜接に専利権、商標権、著作権または版権と吉い、商業秘密権、集成回 路配置図設計、植物新品種が含まれる。ただし、発明、実用新型(日本の実用新 案と同様)、外観設計(意匠と同様)の 3 つは専利権の中に配置している。日本で 吉う産業財産権に対しては、中国では工業産権といい、日本の分類と同じであ
る 。
2.2.3まとめ
日本と中国の知財分類は主に産業財産権、著作権、その他の 3 つである。し かし、産業財産権の中の特許権、実用新案権、意匠権については、日本ではそ れぞれ特許法、実用新案法、意匠法の独立の法から保護されている。中国では 専利法で保護されている。
2.3日中の知財権の保護期間と所管
2 . 3 . 1日本の知財権の保護期間と所管
日本では特許権は出願から 20年保護される、実用新案権は出願から 1 0 年 、 意匠権は登録から 1 5 年、商標権は登録から 1 0 年(更新登録可能)、著作権は著 作者死亡から 5 0 年、植物新品種の保護は登録から 2 0 年(樹木は 2 5 年)、回路配 線利用権は登録から 1 0 年保護される。
産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)が経済産業省、特許庁(産 業財産権は特許庁に登録)に所管され、回路配線利用権と不正競争防止法が経済 産業省に所管されている。著作権が文部科学省・文化庁で所管され、植物新品 種の保護が農林水産省で所管されている。
2.3.2 中国の知財権の保護期間と所管
発明が出願から 2 0 年、実用新型が出願から 1 0 年、外観設計が出願日から 1 0 年、商標権が登録日から 1 0 年(延長可能)、著作権(版権)が著作者死亡から 5 0 年、集成田路配置図設計が出願日から専有杖の保炉期は 1 0 年保護される。集成 田路配置図設計については、登録したかどうかや商業利用かどうか関係なく,
集成屯路布図没廿が創作完成の日から 1 5 年後は《集成屯路布図没 i 十保炉条例》
に保護されないと規定されている。植物新品種は、蔓科植物、林木、果樹と鑑
6
賞樹木品種等が 20 年,そのほかの植物 1 5 年と規定されている。
専利権(発明、実用新型、タ卜観設計)は知識産権局で、商標権は工商局で、著 作権(版権)は版権局で、集成回路配置図設計が知識産権局(国務院知識産権行 政部門)で、植物新品種が国務院農業・林業行政部門で所管されている。
2 . 3 . 3 まとめ
日本と中国の知財分類は主に産業財産権、著作権、その他の 3つである。し かし、産業財産権の中の発明、実用新案、意匠(タ卜観設計)については、日本 ではそれぞれ独立の法から保護されている。中国では合わせて専利法で保護さ れている。
保護期限から見ると意匠、回路配線利用権、植物新品種が異なるがそれ以外 は同じである。
所管について管理が国の制度により相違していることが分かった。
表 1
[7J日本の知財権の種類、保護期間、所管について
産業財産権 種別 権利期間 所管
特許権 出願から 2 0 年 経済産業省 実用新案権 出願から 1 0 年 特許庁(産業財産
権 は 特 許 庁 に 登 意匠権 登録から 1 5 年 録)
商標権 登録から 1 0 年 (更新登録可能)
著作権 著作権 著作者死亡から 5 0 年 文 部 科 学 省 ・ 文 化 庁
その他の 回路配線利用権 登録から 1 0 年 経済産業省 知財権 不正競争防止
植物新品種権 登録から 20 年 農林水産省
(樹木は 25 年)
表 2 中国の知識産権の種類、保護期間、所管について
種別 権利期間 所管
専利権 発明 出願日から 2 0 年 知 識 産 権 実用新型 出願日から 1 0 年 局
タ卜観設計 出願白から 1 0 年
商標権 登録日から 1 0 年(延長可能) 工商局
著作権 著作者死亡から 5 0 年 版権局
(版権)
商業秘密権 無期限
集 成 田 路 配 出願日から専有叔の保炉期 10 年 、 知 識 産 権 畳図設計 でも、登録したかどうかや商業利用 局
かどうか関係なく,集成屯路布図没 ( 国 務 院
i 十自創作完成の日から 15 年後は 知 識 産 権
《集成屯路布図没 i 十保炉条例》に保 行政部門) 護されない
植物新品種 我が国の規定:蔓科植物、林木、果 国 務 院 農 樹と鑑賞樹木品種の保護期限は 2 0 業・林業行 年、その他植物は 1 5 年 政部門
2.4 本章のまとめ
日本と中国の知財制度の概念、分類、権利の保護や所管等の比較を通して、
知財の名称や意匠の保護期限や国家制度により権利の所管等の細かなところの 違いがあるが、知財の保護対象や権利の役割はほ t ! " 同じであると言える。
8
第 3 章日中の知財教育の現状
日本で「知財教育 J という用語は、 2002 年の「知的財産戦略大綱 jにおいて 使われたのが始まりである。知財教育の目標は 2 0 1 1 年の知的創造サイクル専門 委員会によると、「創造性の育成と知財を尊重する態度からなる知財マインドの 育成 J とされている。そして知財教育とは[知財権を含んだ知財に関連する学 習内容を取り扱う普通教育及び専門教育 J
[1 Jと定義されている。一方、中国で は 「 創 新 教 育 J と い う 用 語 が 使 わ れ て い る 。 「 創 新 j と 吉 う の は 、 英 文 の
i I n n o v a t i o n s J の訳で、「創造教育 j と「素質教育 J と密接な関係のある知識 経済時代に向かった新しい用語である。「創新教育 J
[2 ][3Jには創新精神、創新能 力、創新人格が含まれている。創新原理に基づき、主に創新意識、創新思考、
創新能力及び創新個性を育成する目標を持つ教育理論や方法であると言われて いる。
「創造性の育成 J • i 知財に関連する学習内容 J ・「普通教育及び専門教育 j と の視点から見ると中国の「創新教育 J と日本の「知財教育 J が類似な概念であ ると考えられる。ただし、日本ではこれ以上に「知財の尊重 J という点がある。
逆に、中国の「創新教育」の中では知財の尊重についての主張はまだ弱いと考 えられる。
3 . 1 日中の学習指導要領における知財に関する部分の比較 3 . 1 . 1 日本の学習指導要領における知財教育の位置づけ
日本の幼稚園は 2009 年、小学校は 2011 年 4 月、中学校は 2012 年 4 月、高等 学校は 2013 年(数学及び理科は 2012 年)から実施している新しい学習指導要領
[4J
(告示中学校 2008 年、高校 2009 年)では、複数の教科で知財権の記述が見られ る。一方、知財教育の要素である創造性育成や著作権に関する記述は従前の学 習指導要領にも存在した。 2008 年度で改訂した中学校技術家庭科の学習指導要 領では「情報通信ネットワークにおける知的財産の保護の必要性についても扱 うこと J
[5Jと知財の概念が学習指導要領に取り入れられ、各学校段階の科目に知 財の関連知識を導入し、知財教育が全体的に立ちあげられようとしている。
3 . 1 . 2 中国の知財教育の課程標準(日本の学習指導要領と同様)での位置づけ
2001 年、国家は新世紀の基礎教育課程改革(試行)を起動した。 1 0 年間の実践
探索を経て、 2010 年中共中央国務院が「国家中長期教育改革と発展計画綱要
( 2 0 1 0 年一 2020 年) J
[6J (r 教育計画綱要 j と省略している)を発行し、義務教育 段階の課程改革の推進を明確に提示した。 2012 年秋から実施する課程標準で義 務教育段階の一年から九年までの 1 9 科目について改革を行った。
従来は「基礎知識と基礎技能 J を重視していたが、「教育計画綱要 jで、主に 能力の育成を重視し、「生徒たちの創新精神や実践能力の育成 j を増加した。例 えば、数学課程では、「基本活動経験や基本思想、 jの追求を追加した。また、物 理では 20 個の実験を必修化した。美術課程では「想像能力・実践能力・創造能 力を発展させる J と記載されている。
中国の課程標準ではまだ、「知的財産 J という言葉が使われていないが、知財 の要素である「創造能力・実践能力 j を新課程標準で強調している。したがっ て、中国でも創新教育を重視するに伴い、知財教育を起動し始めていると言え
る 。
3 . 1 . 3 まとめと考察
日本の知財教育と中国の創新教育の目標はほ ' 1 " 同様で、子どもたちの創造や 実践能力を重視していると言える。日本でも中国でも知財教育を重視つつある が学校カリキュラムの独立した科目になっていないのが現状である。
3 . 2 日中の知財テキストの調査、比較 3 . 2 . 1 日本の知財テキストの調査
日本の知的財産に関する教育テキス卜の例としては主に高等専門学校・工業 高等学校向けの「産業財産権標準テキスト jの総合繍がある。著作権について は文化庁のウェプ、あるいは関連団体の学校向けのパンフレットがある。例え ば、子ども向けの 2005 年 9 月に社団法人、著作権情報センターが発行した「お じゃる丸 jや 、 2 0 1 1 年に経済産業省、特許庁が企画、独立行政法人工業所有権 情報・研修館が発行した「特許から見た産業発展史 J や 2012 年に発行した「あ
なたが名前をつける本」ゃ「アイデア活かそう未来へ」等がある。
「おじゃる丸 J は漫画が構成されてあり、主人公のおじゃる丸が「へイアン チョウみやびなお子様学芸大会」で書いた絵を出展したことで、作品になり、
一生懸命作り上げた(作品)を勝手に作りかえられたり、他人の名前で発表さ れたりしたことで著者がどんな気持ちになるか?と問いかけるストーリー展開
となっている。後書きには、「著作権つてなに?著作権にはどんな種類がある の?保護期間ってどのぐらいあるの?著作権にはどんな権利があるの?著作隣
1 0
接 権 つ て な に ? 著 作 物 が 自 由 に 使 え る 場 合 は ? J 等について、記述している。
また、この漫画が 一時 人 気 と な り 、 テ レ ビ で も 取 り 上 げ ら れ た 。 現 在 は 「 コ ピ ーライト・ワールド(おじゃる丸繍 ) J という子ども向けの著作権について解説
しているウェプページ Chttp://www.kidscric.com) がある。
「あなたが名前をつける本 J は「主人公の男の子と女の子と 1匹 の 犬 が 、 森 の 中 で 見 つ け た 飛 行 艇 に 乗 っ て 地 球 か ら 宇 宙 へ 、 そ し て ま た 地 球 に も ど り 無 人 島を旅するというお話である。 2 人と 1 匹は旅行中のいろんな出来事を体験し、
今 ま で 知 ら な か っ た 地 球 や 宇 宙 、 発 明 ・ 発 見 の し く み に つ い て よ く 考 え る よ う に な る 」 ス ト ー リ ー で あ り 、 絵 や 写 真 が 中 心 で 横 に 説 明 文 が 書 か れ て い る 。 面 白 い 構 成 で 、 子 ど も た ち の 好 奇 心 を 引 く と 考 え る 。 ま た 歴 史 、 地 理 、 物 理 、 化 学 、 生 物 等 各 分 野 の 知 識 を 含 め て お り 、 総 合 的 で あ る 。 子 ど も の 工 夫 し た 作 品 例 も 書 か れ て い る 。 例 え ば r 2 1 世紀の発明・発見のヒント j、「身の回りのも のには、いろいろなアイデアがつまっているんだね」、「遠くにいる人に知らせ
る方法を考えよう J があり、子どもたちの発想を拡げると考える。
「おじゃる丸 J と「あなたが名前をつける本 J は 漫 画 や 絵 、 写 真 、 間 違 い 探 し 等 の 子 ど も が 興 味 の あ る も の を 使 い 、 身 の 回 り の 面 白 い 現 象 、 不 思 議 な 原 理 等 を 題 材 に し 、 思 考 や 体 験 、 実 際 に 作 っ て み る ま で の 多 様 な 内 容 を 取 り 入 れ た
テキストと言える。
図 1 は「あなたが名前をつける本 J の表紙である。
図 1 r あなたが名前をつける本 jの表紙
「おじゃる丸 j と「あなたが名前をつける本 J は小学校向けであり、「特許か
ら見た産業発展史 J と「アイデア活かそう未来へ J は中学校向けである。「特許
から見た産業発展史 J では歴史の流れに沿って、世界的背景と日本の経済成長、
産業発展に欠くことのできない新産業、新技術の創造である知財、特に、特許・
実用新案・意匠・商標の 4 つの産業財産権の発展や役割等の内容が書かれてい る。例えば、 1 9 5 8年世界初の即席嫡である「チキンラーメン」の開発成功で、
す ぐ に 模 造 品 が 出 現 し た 事 件 を 特 許 で 対 抗 し て 権 利 が 守 る こ と が で き た こ と を 取り上げている。
「アイデア活かそう未来へ j で は ア イ デ ア か ら 導 入 し 、 知 財 の 種 類 や 保 護 の 仕 組 み を 簡 単 に 全 体 的 に 紹 介 し 、 特 に 特 許 権 、 特 許 法 、 特 許 制 度 や 特 許 の 取 り 方 等 の 理 論 か ら 実 践 ま で の 系 統 的 な 内 容 を 紹 介 し て い る 。 具 体 的 に 見 る と 以 下 のようである。
( 一 )表紙と目次は図 2 と表 l に示す。
図 2 1 アイデアを活かそう未来へ」の表紙
表 1 1 アイデアを活かそう未来へ
jの目次
第 1 章 工夫したアイデアを 1 私 た ち の 暮 ら し の 中 の ア イ デ ア と 知 的 財 産 特許に 2 知 的 財 産 っ て 何 だ ろ う ?
3 権 利 は ど う 保 護 さ れ る の ?
第 2 章 特許のルーツを 1それは
lレネッサンス時代に始まった 求めて 2 産 業 の 発 展 を う な が し た 特 許 制 度 と は ?
3 アメリカの特許の歴史 第 3 章 日本の産業発展と 1日本の特許制度ことはじめ
特 許 制 度 2 明治・大正の発明ものがたり
第 4 章 技 術 導 入 か ら グ ロ ー 1 戦 後 日 本 の 飛 躍 は 海 外 か ら の 技 術 導 入 パル競争の 2 1 世 紀 2 技 術 導 入 を 支 え た 特 許 制 度
ノ¥
3 技 術 導 入 か ら 先 端 技 術 開 発 へ
1 2
4 発明と特許がますます重要になる 2 1 世 紀 第 5章 特許のとりかたを 1 特許取得への道のり
調べてみよう 2 特許情報は、最先端技術の宝島だ!
3 子どもにだって特許はとれる 資料 特許制度の歴史年表
(二)内容構成
表 1 の目次から分かるように「アイデア活かそう未来へ J は 5 章の構成とな っており、各章を 2 ' " ' ‑ ' 4 節で内容を説明している。
最初に小学犬年生(吉津犬)が「万能電池ボックス jの発明で特許を取った例 を漫画で紹介している。第 1 章では、形のない知財の概念を暮らしの中のもの に工夫したアイデア、物自体に付いているデザイン、構造、マーク、材料、組 み立て製造方法等で分かりやすく説明している。また、権利の保護や保護期限 等、具体例を挙げて説明している。第 2 章では、世界での特許法の始まりの経 緯を有名な発明家(レオナルド・ダ・ヴインチ、ガリレオ・ガリレイ等)の発 明物がどのように守られたことから説明している。また、生活上の必要に応じ て交易がはじまり、産業の革命を支えた特許制度やアメリカの特許歴史等を書 いている。第 3 章では、日本の産業発展と特許制度を発展させた出来事や外国 の時代背景の参考を経て自国の最初の特許、意匠、商標や日本の十大発明につ いて書いている。第 4 章では、外国からの技術導入から先端技術開発へとつな がり知的造創サイクルが回ることを書いている。第五章では、特許の出願書類、
注意事項、出願方法、子どもでも特許を取れる等ことを漫画、絵等を用いて説 明している。最後の資料の部分では特許制度の歴史年表をまとめている。
3.2.2中国の知財テキストの調査
中国においても専門教育の教材以外に青少年向けのテキストが存在する。例 えば青少年向けに 2006年に出版された「知訳戸叔奇幻之旅(知的財産権ファン タジーの旅) J (知識産権出版社)、 2009年に出版された「智慧之光(知恵の光) J
(知識産権出版社)、第一版が 2003年に、第二版が 2006年に、そして 2009年に は中国「専利法(特許法) J の改正を踏まえた第三版が出版されている広東省知 識産権局編「知涙戸校教育法本初級・中級・高級版(知的財産教育読本初級・中 級・上級編) J というシリーズになっている 3 冊がある。
「知坂戸枚奇幻之旅(知的財産権ファンタジーの旅) J は日本の「あなたが名
前をつける本」に似たもので、主人公の二人の小学生が神秘的なトランプに固
まれ、知財のファンタジーの世界に入り、帰る道を探す途中で起こったストー
リーで知財の基礎知識を簡単に紹介している。日本のテキストと同じように漫 画の挿入はあるが、多くない。しかし、中国のテキストでは各章、あるいは各 シーンの終りに質問や関連の格言や子どもと両親や子供同士が一緒にやれるゲ ーム等の課題を設けている。例えば、「著作権の保護期限は作品が完成した日か ら作者が死後( )年?A . 1 0年 B . 3 0年 C.50年 D . 1 0 0年:知財制度 は〈天オの火に利益の泊を添加してくれる)この格言を皆が覚えましょう;商 業秘密は重要な事項である。その知識を暗証して紙に書き、友達とゲームしま
しょう、誰が正しく書けたでしょう:主人公を助けて父、母と一緒に 20 個の商 標を探そう J 等がある。
「智慧之光(知恵、の光) J では知財権の概念、専利(特許)、商標、著作権、そ の他知財権、創造発明の基礎知識、創造発明の技法等の内容を取り扱っている。
各章の後にも考える問題を設けている。「知 i 只戸枚奇幻之旅(知的財産権ファン タジーの旅) J より知識点が深いテキストと 言える。
図 3は「知 i 兵戸枚奇幻之旅(知的財産権ファンタジーの旅) J と「智慧之光(知 恵の光) J の表紙である。
図 3 左が「知 i 只戸枚奇幻之旅(知的財産権ファンタジーの旅) J 、右が智慧之 光(知恵の光) J の表紙
「 知 i 只芹校教育渓本初級・中級・高級版(知的財産教育読本初級・中級・上級 編) J は小、中、高校の学校段階に応じたテキストである。
(一)テキスト表示と目次
図 4に 3冊の表紙を、また表 2に 3冊の目次を一覧にして示した。初級繍は
小学校 4~6 年生向け、中級繍は中学生向け、上級繍は高校生向けと主れている。1 4
牌 朝間関陣
図 4 テキストの表紙(左から初級、中級、上級)
表 2 テキス卜の目次
ロ ミ ミ L 初 級 編 中級編 上級繍
第一章 特 許 あなたの発明と創造 特許文献の利用の を保護する 仕 方
第二章 商 標 あなたの特許をどの 特許をどのように ように維持するか 流通させるか
第一章 著 作 権 商標はどのように 商 標 権 を ど の よ う に 成り立っか 保護するか
第四章 技術秘密 生 活 の 中 か ら 著 作 権 著 作 権 を ど の よ う に を理解する 保護するか
第五章 私 た ち の 身 の 回 りの発明と保護 第六章 特許権利者の
権 利 と 義 務
(二)内容構成
(1)初級編
初級編の構成は、特許、商標、著作権、技術上の秘密、私たちの身の回りの 発明と保護、特許権保持者の権利と義務の 6章からなる。各章には次に示すよ
うな各権利のポイントが書かれている。
‑知財権とは何か:知財権とは、知的成果の法律に基づき、占有、使用、処分、
利益を得る権利である。簡単に言えば、法律の手段で知的成果を保護する。知 財権は無形財産権だが、建物や車等有形財産権のように価値や使用価値がある、
国家法律の保護を受ける。
‑知的財産権の種類:著作権と産業財産権の二種で、産業財産権には特許権、
商標権、名称表記権、不正競争防止、集積回路配置等がある。知的財産権の特 徴をまとめると、無形性、専有性、地域性、時間性である
・商標は商品とサービスの由来を明らかにする表示。
‑商標局に登録与れば、登録商標になる
0・商標は広告機能及び品質保証機能を有している等。
それ以外にも身の回りの物(テレビ、冷蔵庫、牛乳、靴等)やインターネット から資料を集めて児童たちが自ら実践する総合実践活動も記載されている。ま た、圏内や海外の実例を挙げた背景資料、知識の補足資料も充実している。こ のように理論や実践の両面から児童たちの知財意識や社会責任を育成させる工 夫がされている
以上のように、初級編では知財権の基本概念を説明し、知財権全体を紹介し ている。そして小学校上級生向けとは思えない、知財権の詳しいところまで踏 み込んだ記載がされている。
( 2 ) 中級編
中級編では初級編で知財権全体を学んだことを前提とし、特許権、商標権、
著作権について主に説明している。中級編の構成は、第 1 章があなたの発明と 創造を保護する、第 2章があなたの特許をどのように維持するか、第 3章が商 標はどのように成り立つか、第 4 章が生活の中から著作権を理解するというよ
うになっている。各章の構成は、初級と同じように各章の後に総合実践活動が ある。ただし初級と異なり、活動を課外活動と授業内活動の 2 つに分けている。
課外活動では、活動の主題として例えば、特許について生徒たちを 7、8人のグ ループに分けて活動特許の情報収集や特許申請状況調査等を行うことが書かれ ている。一方、授業内活動では、特許知識の面白いコンテストや小発明コンテ スト等課外活動で集めた資料を皆で学ぶことが書かれている。その他には、知 財に関する実例を 3つ挙げ、レビューも付けて、知的財産に関する知識を広げ、
思考能力、創造力、分析判断能力等を育むような記述がされている。
( 3 ) 上級線
上級編では知財権の詳細な紹介と法律上の規則、申請資料の書き方や注意事 項等、初級と中級の内容を復習しつつさらに深め、知財権を実際に運用する方
16
法が示されている。
特許文献の利用の仕方、特許をどのように流通させるか、商標権をどのよう に保護するか、著作権をどのように保護するかの 4 つの特集を組み、実際例、
理論的な知識、法律の知識を含めて紹介している。構成としては、特集毎に小 課題と知識指南の 2 つの部分がある。小課題は初級と中級と同じように実例を 挙げて、課題目的を立て、生徒たちをグループに分けて、最後に発表・評価を する。例えば、ある特許の申請状況調査(名称、申請番号、申請日、特許種類、
申請人名称、法律状況)、課題によるアンケート調査、模擬法廷づくり等である。
知識指南では事例と分析の部分を付け加えて商標登録者の権利(使用権、禁止 権,移転権、使用許可権、存続権)や商標権侵害行為の種類や商標専用権を保 護する法律上の手段(行政保護、司法保護)等の理論知識について説明してい
る。そのほか、各特集の後ろに材料を 2つ挙げて生徒たちの討論や思考能力を 重視している。中級では生徒たちの知識の把握を重視している一方、上級では 問題を解決できる能力を重視していると言える。
それ以外に最新テキストとして、天津市知識産権局、天津市教育委員会編集 し、知識産権出版社が出版された ( 2 0 1 2 年 4 月第 1 版)テキスト「中小学知識産 権教育読本 J (表紙を図 5 に表示)がある。本書では知識産権の概念や特徴の説 明や主に専利、商標、著作権についての基礎から権利の申請・受ける条件・期 限、停止、無効・費用等の法律関係の知識までも書かれている。前のテキスト
と同じように法律概念については簡単な説明(無効の宣告とは専利権の初めか ら存在しなかったと言える等の説明)が付けられているが分かりにくいと考え る。また、天津市の小中学生の専利申請予告(申請専利作品の基本要求、専利申 請の過程、専利権を得る過程、専利権を保護する過程、天津市知識産権サービ ス中心の団体サービスの提供)や天津市小中学生専利申請申報表が書かれてい て地域に対する方法を考えていると言える。商標秘密、地理標識、植物新品種 等のその他の知財にも書かれて、知識点は充実で前のテキストと多くの違いは ないと考える。また、同年 1 0 月に、中国知識産権トレーニングセンターが編集
し、知識産権出版社から出版された「小中学生発明創造と知識産権 J (表紙を図
6に表示)がある。本書では主に発明創造と知識産権の 2つの部分で、漫画の表
現形式を利用し、知識点の 30 個のストーリーに導入し、人物・言葉・画面設計
等も分かりやすく、特定の人物 5人の間でストーリーを展開した。各節が学習
目標、学習内容、教学まとめ、拓展練習の 4 つの部分がある。また、事例が多
く、「中小学知識産権教育読本 j では漫画の横に解説を付けていたが、本書では
全部が漫画の会話でできている。日本の子ども向けのテキストに似ている。し
かし、知識点の構成については、中国のテキストではほとんどが節や章の後に
知識のまとめの部分が設けているが、日本のテキストではなく、まとめがある
と知識を憶えるにはよいのではないかと考える。
昨年の 2013 年 9 月で、国家知識産権局が編集(組織縮写)した小中学知識産権 教育読本として、「知識産権の基礎知識 J 、「創作と版権(著作権) J 、「プランドと 商 標 j、「発明と専利(特許) J の 4 点があるようで、(図 7 の表紙の標記はこの内 の 3点である)標記の 3冊の内容構成は概念から法律の原則まで書かれている。
具体的に見ると、「創作と版権(著作権) J は関連知識の法律の条文を参考用に載 せているのは追加内容だと考える。「プランドと商標 J には前のテキス卜での商 標の内容の説明とほぽ同様で、多くの変化は見られない。「発明と専利(特許) J
は漫画の説明だけではなく、発明物の登録の図や説明等の図の詳しい説明を挿 入した点が追加の内容だと考える。
(表) p
蹴 楢 園圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 園田 ( 裏 )図 5 I 中小学知識産権教育読本 jの表紙
図 6 I 小中学生発明創造と知識産権 jの表紙
1 8
図 7 i 創作と版権(著作権) J 、「プランドと商標 J 、「発明と専利(特許) J の表紙 (左から右順)
3 . 2 . 3 まとめと考察
日中の青少年向けの知財教科書類の内容構成、言葉使い等の視点から比較を した。全体的には同じように漫画や絵等の子どもたちの興味のあるものを用い て知識内容を説明している。
しかし、日本の知財教科書では子どもたち向けに分かりやすく書いであるが 発達段階に応じた配慮、は十分ではないと思われる。中国のある地域では段階に 応じて作られた教科書があるが、内容には法律専門用語が使われているので、
小中学校段階では難しくなって理解しにくいと考えられる。また、日本の青少 年向けのテキストでは外国の知財情報を書かれている 一 方、中国の青少年向け のテキス卜では外国の発明の例を挙げているが他国の知財事情について関連の 内容は書かれてないと考えられる。また、知財の国際性関係の内容にも 言及し た方がよいのではないかと考える。
3 . 3 日中の知財教育の実践例の調査、比較
3 . 3 . 1 日本の知財教育の実践例
新学習指導要領で知財が位置づけられていることから、各学校段階で様々な
実践が各学校で行われつつある。小中学生向けには発明協会による「全日本学
生児童発明工夫展 J [ 7 ] 2 0 0 2 年度より実施主れている高校生、高専生及び大学等
の学生向けには文部科学省、特許庁、日本弁理士会、 I N P I T 主催の「パテントコ
ンテスト J 及び 2 0 0 9 年より本格に実施主れている「デザインパテントコンテス
ト J )がある。本節では主に小中学校での実践を調査した結果を以下に示した。
小 学 校 で は 子 ど も 向 け の 発 明 ・ 特 許 の 絵 本 で あ る 例 え ば 、 「 か ず く ん は つ め い・はっけんシリーズ J
[11J等の読み間かせを 4年生から 6年生までに実践して いる。このような知財の知識や意識を子どもの興味のあるストーリーを作り、
ク イ ズ や グ ル ー プ ワ ー ク 等 の 方 式 で 考 え る 、 感 じ る 力 を 高 め て い る 。 ま た 、 子 どもたちに「自分の曲の作成 jや 「 子 ど も 同 士 の ア イ デ ア を 参 考 に す る 時 、 許 可を得る jや 「 真 似 さ れ た 商 品 が 出 回 っ て 、 買 う 立 場 や 真 似 さ れ た 会 社 の 立 場 になってその気持ちを考える J 等 の ア イ デ ア を ま ね る 時 の 許 諾 、 引 用 の 表 記 の 仕 方 、 著 作 物 を 活 用 す る 時 の 許 可 等 の 「 相 手 の 気 持 ち を 考 え る こ と や 尊 重 す る 活 動 jが行われている。
中 学 校 で は 主 に 技 術 ・ 家 庭 科 に お け る ロ ボ ッ ト 製 作 の 学 習 を 通 し て 、 も の づ くりの楽しさを知るとともに創造性を育む教育が実施されている。また、身の 回りの物からアイデアを発見し、アイデアを表現するトレーニングの実践がさ れ て い る 。 例 え ば 、 ペ ッ ト ボ ト ル の デ ザ イ ン や 形 か ら 人 気 な デ ザ イ ン 、 持 ち や すい、飲みやすい形はどのようなものかを図で表し、アイデアを絞る。そして、
良 い ア イ デ ア を 皆 が 参 考 で き る よ う に 掲 示 し 、 更 に よ い ア イ デ ア が 生 ま れ る 環 境を作っている。また、「アイデアの創造から尊重のサイクルを体験する発明品 構想学習 J
[8Jの実践では、身近な課題に対して、はじめに個人のアイデアを考え、
次にグループ。で、話し合い、 1 つのアイデアにまとめ、「有用性 J i 新 規 性 J i 実 現 性 j との条件をつけ、実際に開発できるものを考える。更に、グループごとで プ レ ゼ ン ト を 作 り 、 発 表 し 、 相 互 に 評 価 す る こ と で お 互 い の ア イ デ ア を 尊 重 す る 意 識 を 高 め よ う と し て い る 。 す な わ ち 、 ア イ デ ア の 創 造 ・ 共 有 ・ 表 現 ・ 尊 重 の 4 過程のサイクルで展開している。
その以外にも、「わくわくカンパ ‑J という名称で取り込まれているアントレ プレナーシップ教育(起業家)の実践、[プレゼンテーション・ソフトを活用した 情 報 の 加 工 jで は 著 作 権 、 肖 像 権 、 公 開 と 公 共 性 等 の 情 報 モ ラ ル に つ い て 理 解 する実践、等の様々な実践が取り組まれている。
こ れ ら の 実 践 例 を ま と め 、 考 察 し た 。 日 本 の 小 中 学 校 の 知 財 教 育 の 実 践 は 知 財の創造一保護(尊重)‑活用の目線から考え、身近な課題で、子どもたちにア イ デ ア の 発 想 や も の づ く り 等 の 体 験 活 動 を 通 し て 、 抽 象 的 な 知 識 点 を 多 様 な 活 動 に あ て は め 、 生 徒 た ち の 思 考 力 、 表 現 力 、 理 解 力 を 高 め 、 育 成 す る 知 識 点 の 把 握 へ 導 い て い る と 考 え る 。 す な わ ち 、 日 本 の 知 財 教 育 で は 、 あ る 課 題 を 与 え
て子どもたちの自由な発想を重視していると考える。
3.3.2 中国の知財教育の実践例
中 国 で は 地 域 に よ り 経 済 の 発 達 段 階 が 異 な る の で 、 教 育 制 度 の 基 本 は 同 様 で
20
あるが地域に合わせている付加の制度も実施されている。そして、地域により 知財教育の展開も異なる。
全国的な取り組みとして中国では 2013年 8 月で第 28回を向かえた「全国青 少年科学技術創新大会 J
[9Jがある。また、 2 年に一度の大学生向けの発明コンテ
スト「挑戦杯 jがある。
3 . 3 . 2.1中国・重慶市の知財教育実践調査
三重大学と重慶大学による知財教育に関する日中二国間交流事業共同研究の 一環で 2012 年 8 月と 2013 年 5 月の 2回の訪問調査を行った。重慶市の壁山県 にある小学校、少年宮、西南大学附属中学校、重慶市j 命中区中小学労働技術教 育基地/普通高校通用技術実践センタ一等で聞き取り調査を行った。
壁山県にある小学校では、基礎教育と科学技術や科学の普及教育と情報技術 教育や教師の知財意識を重視し、教師団体を育成することが行われていた。具 体的には、「科学の名古を一つ憶える・科学者の伝記を一つ理解する・身の回り
に科学の友達を一人作る・科学技術を一つできる」という 4 つの「一(ひとつ) J
の活動が実施されていた。
重慶市の共同施設の一つに「少年宮 J がある。少年宮とは週末や長期休暇期 間における子どもたちの科学・芸術・スポーツ活動センターである。少年宮に は、ロボット・模型・科学実験・楽器演奏・ダンス・囲碁等のクラブ、キャン プ、さらに I M A X 映画館もある。
西南大学附属中学校では、小発明,小論文,小ものづくり,小研究の 4 つの 取り組みが行われ、知財教育を主に物理,技術の授業の中で指導されている。
知財の専任教員はいないため、情報技術の教師が知財を教えている。また、二 人の教師が特許申請書を書く知識を有している。特許申請料は通常 3000 元であ るが、市や区の補助により生徒負担は 200
,....̲,300 元,維持料金は毎年 100 元で済 むとのことである。
重慶市j 命中区中小学労働技術教育基地/普通高校通用技術実践センター(以下 教育基地とする)は諭中区内の小中高校の共同利用施設で、学校毎に日を指定し て技術・家庭・美術関係の授業を提供している。学校毎の年間利用日数は小学 校 (4 年生)が 4日間、中学校 (2 年生)が 4日間、高校 (2 年生)が 8日間で
ある。
(一)教育基地の小学校に対する授業実践
前期 2日間、後期 2日間の 1 年で 4日間の授業を行っている。表 3は後期の
授業課程である。全部は粘土芸術・調理・ミニ四駆・模型組み立て・電子アル
バム・紙の包装箱・木材工芸・紙の服装・ろくろの 9種のものづくり中心の授
業があり、前後期でそのうち 8種の授業をうけるようになっている。創造力を 重視していると考える。
授業の様子を図 9に示す。
表 3 教育基地小学校 2012‑2013 学年度後期の課程表
ト │ ク d
ラt 室ス課¥程 ¥
第一日 第二日
9:00‑‑12:00 113:00‑15:50 9 : 00‑12: 0 0 1 3 : 00‑15: 5 0
第一組 6 0 1 室 3 0 3 室 5 0 6 室 5 0 3 室 粘土芸術 ろくろ 調理 会氏の服装 第二組 5 0 6 室 5 0 9 室 6 0 3 室 6 0 1 室
調 理 木材工芸 模型組み立て 粘土芸術 第一組 5 0 1 室 5 0 2 室 6 0 2 室 5 0 6 室
ミニ四駆 紙の包装箱 電子アルバム 調理 第四組 6 0 3 室 6 0 1 室 5 0 1 室 5 0 2 室
模型組み立て 粘土芸術 ミニ四駆 紙の包装箱 第五組 6 0 2 室 6 0 3 室 5 0 2 室 5 0 1 室
電子アルバム 模型組み立て 紙の包装箱 ミニ四駆 第六組 5 0 2 室 5 0 3 室 5 0 9 室 6 0 2 室
紙の包装箱 紙の服装 木材工芸 電子アルバム 第七組 5 0 9 室 5 0 1 室 5 0 3 室 6 0 3 室
木材工芸 ミニ囚駆 紙の服装 模型組み立て 第八組 5 0 3 室 5 0 6 室 6 0 1 室 3 0 3 室
紙の服装 調理 粘土芸術 ろくろ
図 9 教育基地小学校授業の様子 ( 1 ) ろくろで陶器っくりの様子
22
図 9 教育基地小学校授業の様子 ( 2 ) 木材工芸の様子
図 9 教育基地小学校授業の様子 ( 3 )ミ二四駆作りの様子
(二)教育基地の中学校の授業実践
図 9 教育基地小学校授業の様子 ( 4 ) 模型っくりの様子
訪問した日は中学校の授業がなかったが、小学校と似たようなものづくりで 創造教育を行っていた。授業の様子(図 1 0 に示す)は教育基地のホームページか
ら引用した。 (http://www.cqyzlj.com/article.asp?id=5136)
図 10 教育基地中学生授業の様子 ( 1 ) 木 工 芸
図 10 教育基地中学生授業の様子 ( 2 ) 被 服
図 10 教育基地中学生授業の様子 ( 3 ) 盗片画
(三)教育基地の普通高校の授業実践
教育基地では普通高校の必修科目である通用技術の授業を集中講義の形で行 っていた。
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技術の設計や操作の学習を強調し、基礎的、生活に密接な関係のある、幅広 い技術の内容を課題にしている。課程表と授業の様子を表 4と図 1 1 に示す。
表 4 普通高校の「通用技術」の課程表
学級 学期 課程 内容 課時 教室
‑同ELコ 一 一ー一一宇
前期 技術と設計 1 技術及び性質 2 設計室
設計の基礎 2 設計室
コンビュータ 4 設計室
補助設計
工芸 4 実作室
設計をどのように 4 設計室 するか
設計方案の完成 2 設計室 設計の実現(制作) 6 実作室 テスト最適化 4 実作室 交流評価 4 設計室
後期 技術と設計 2 構成と設計 4 設計室+実作室 流れと設計 4 設計室+実作室 系統と設計 4 設計室+実作室 制御と設計 4 設計室+実作室 設計方案の完成 2 設計室
設計の実現(制作) 6 実作室 テスト最適化 4 実作室 交流評価 4 設計室
」