修士論 文
学校 教育の 場における、 言 説としての「 人権」 に関する社 会学的研 究
一 教 師による「 公 共性」 の受 け止 め方と関連づけて ‑
三重 大学 教育学研 究科 学校教育専攻 学校 教育専修 2 0 6 M O O 3
蓮井 洋城
提 出日 2 月 1 3 日(水)
別 紙 様 式 第3
論 文 目 録
三重 大 学 大学院 教育 学研 究 科
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別 紙 様 式 第4
論 文 要
三重 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科
純 紅も 専 攻 守柁 扱高 専 修 氏 名 蓮井 ,,i. i,戊
近年、 人権教 育が積極 的に行 わ れている 一 方、 世 間で は「権利ばかり主 張し, 他人
の迷惑を考え ない若者」 や「学校にイチヤモ ンをつ ける保護 者」 が 問題視されてい る。 人権教 育の方 針で は「他人に迷惑をかけない 」 「仲 間を 思いやる」 な ど、 もっともな記 述 が ある反 面、 「人権」 という言葉そのもの はさほど表立っ て使 わ れ ない傾 向にあるこ
とが確か められ た。 そして、 代わり に人権 教育の中で語 られていたのは、 「子 供にも 人 権が認められる」 「自尊感情を高め る」 「多様 な考え方 を 認め る」「感性 を育てる」といっ た言葉であっ た。 しか しこうした考え方 を無条件に認めれ ば、 生徒指導場 面において 教師 を混乱させ, 学級 崩 壊のごとく教育が成り立 たなくなる可 能 性がある。 また、 これ に伴い, 「教 育」 や「人権」 の考え方 が 本 来 的に持 っていた「公 共 性」 の視点 を、 現在
の教師は見失っ てはいない か。
本研究では 以 上の 問 題意裁から、 人権教 育に取り組 む教師の 「教育」 「人権」 の考 え方と実際の行 動 様 式につ いて調 査 を 実 施した。 そして調 査の際に、 「現在の中 学 校に お いて、 教師達は『自尊感情の高揚』『多様 な考えの尊重』『感性の育成』『子供
にも 人権が認められる』な ど、 教育や 人権に関 する言説の影 響を受けている。 た だし 教育や 人権に つ いて『公共 性』を 持 つものとして受け止 め る教師ほど、 ま た教職 経験 を十 分 につ んだ教師ほど、 実 践場面で は言 説に惑わ されにくくなる傾 向にある。 」 と
いう仮説 を設 定した。
そして質問 紙 調 査の結果、 上記の仮説は 一 応は支持 する結果 となっ た。 た だし、
「感性」 や「自尊感 情」 に見 られ たように、 学校全体として「言 説」 の影 響を受ける教師
は多数派で はなかった。 そ れは、 道徳教 育に力 を入 れて いるX 中学校の風 土に よる ものと考えるのが自 然で はないかと考える。
まえがき
「人権の世紀」といわ れる2 1 世紀、 学校現 場で は「人権教 育」 と呼 ば れる教 育活 動 が行 わ れて
いる。 日本では 1 9 8 9 年に「児 童の権利に関 する条約(子 どもの権利 条約)」 が批准され、 1 9 9 5 年 からは国際連合に お いて決議され た「人権 教育のための国 連 1 0 年」 にの っとっ てさらなる教育活 動が展 開されている。
「人権」 は 一 般に「人 間 が 人 間であることのみに よっ て保障される権利」 などといわ れ、 その位置
づけから尊いもの、 かけがえのないもの、 侵 されてはならないものと言 わ れている。 し か し実 態 とし て、 現代の 日本でも 同 和 問 題 をは じ めとする根強い差 別 問 題 が あるとされて おり、 学校現 場でも、
いじ めや 体 罰、 校則 の問 題 をは じ め、 必ずしも子 供の人権が保 障 されているとはい えない事 態が ある。 今後も人権教 育や 人権啓発 とい った 取り組 み が続けられることは間違いないだろう。 現代で
は、 学校教育に おい て 「人権」という言葉の重 要 性はます ます 高 まりを見せ ているといえる。
し か し本研 究の中で述 べ ていくように、 教 育現 場に「人権」という概念が 持 ち込 まれ、 学校教育が
よりよい方 向に発 展していく 一 方で、 「人権が教師を多忙に した」といわ れる ように、 教 育現 場で は 教師が「人権」という言葉に戸惑いを感じている場 面 も少 なからず存在する。 そし て時に方 針 を誤 り、 かえって教育の実 態 を悪 化 させて いる実 態 さえ実際に は存在すると筆者は考えるのである。
本 研 究は卒業論文『教育と人権尊重の両立のための教育・ 人権 概念検討』に続き、 その実態把 握お よ び問 題解決の手 段 を「人権」(特に人権につ いての 「言 説」) に求め た。 そして論 文執筆に
辺 り他の学問 研 究に依拠しな がらも、 今回は教育社会学という自身の立 場 を強 調 することに努め
ている。 そして、 調 査校であるX 中学校に協力 を頂 き、 今回は質問 紙 調 査も実 施 することができた。 本 研 究に より、 筆者の想 いが 全て出し切 れ た わ けで はないが、 本 研 究で述 べられることが、 人権 概 念につ いての考察だ けでなく、 教育と人権の両立のた めの足が か りとなることを期待したい 。
目 次 は じ め に
第1 章 問 題の設定 還̲土
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(1) 「『人権』の濫 用に よ る教育の問 題」 の実 態 ‑ 1 頁 (2) 「権利 の濫 用」 に よる学校 現 場の混 乱 ・ ‑ 2 頁 (3) 教 育の公共 性 と規律遵守の関 係 ・ ‑ 4 頁
(4) 教育を巡 る2 つ の 「人権問 題」 一子供の問 題 と「権 利の濫 用」 の問 題‑ ・ ‑ 5 頁 第2節 教 育 論で語ら れる「人権l の実 態
(1) 教育問 題に おける「人権」 の語 られ 方 ・ ‑ 8 頁
(2) 憲法学に おける「人権」 一芦部信義『憲 法学』を 中心 に ‑ ・ ・ ・1 0 頁 (3) 自 然権論か ら見る「人 権」 ‑ T .H ob b e s『リヴァイアサン』より ‑ ‑ ・1 1 頁 (4) 自然 権思 想から 見る「子 どもの権利」 の位置 づけ ‑ ・1 3 頁
(5) 「人権」 を巡る学 問 的 知 見と実 態のズレ ‑ ・1 4頁 第3 節 学 校 教 育の場に おける「 人権l の語 られ 方
(1) 人 権 教育の方 針に おける「人 権」 の課 題 ‑ 1 5 頁 (2) 人権 教育に おける「感 性 重視」 の傾 向 ‑ 1 8 頁 (3) 人 権 教育に おける「自 尊 感情の高揚」 ‑ 1 9 頁 (4) 人権 教育と生徒指導 ‑ ・1 9 頁
第2 章 研究の枠組 み
第1 節 言 説 としての 「 人権lと教 育 ‑ の作尉
(1) 「言 説」 の定義と用 法 ・ ‑2 7 頁
(2) 「人権問 題」 カ テゴリー の拡 大 と「責任」 ・ ‑ 2 9 頁 (3) 「感 性」 重視の教育に よ る「人権」 の多様 化 ・・ ・3 0 頁 (4) 「 自 尊 感情」 と「他 者尊重」 ・ ・・3 1 頁
(5) まとめ ‑ ・3 2 頁
第2 節 学 校 教 育の 公共 性と教 育 言 説
(1) 「教育」 の定義 ‑ E .D u rk heim『教育と社会学』より‑ ・ ・・3 3 頁 (2) 「 公共 性」 の定義 一番藤純 一 の分類 を手が か りとして ‑ ‑ ・3 4 頁
(3) 「公平 な教育保障」 と「教育内 容の道徳性」 ・ ‑ 3 5 頁 (4) 言 説 の作 用 を抑 制 する「公共 性」 の意 識 ‑ 3 7 頁 (5) まとめ ・ ‑ 3 7 頁
第3 章 調 査の目的と方 法
第1 節 調査の 目的と方 法、 お よ び 手続 き (1) 調 査の目 的 ・ ‑ 4 0 頁
(2) 調 査の方 法 ・・ ・4 1 頁 (3) 調 査の手 続 き ・ ‑ 4 2 頁 第2 節 調査対象の概 観
(1) 調査校の特徴 ‑ 4 3 頁 (2) 回 答 者の基 本 属 性 ‑ 4 5 頁 (3) 道 徳授 業の実 践 .・・4 6 頁
第4 章 調査結果 の考 察
第1 節 「人 権 問 題=こつ いての教 師の受 け止 め方 と人権 教 育の評 価 (1) 生徒が直 面 する「教育上の問 題」 につ いての受 け止 め方 ‑ 4 8 頁 (2) 「教育上の問 題」 の「 人権問 題」としての 受 け止 め方 ‑ ・5 0 頁 (3) 「人権問 題」 の捉 え 方 と人権教育実 践 との関連 ‑ 5 3 頁 (4) 生徒の主 体 的 活 動に お ける教 師の指導傾 向 ・ ‑ 5 6 頁 (5) 人権 教育の教師に よる評価の傾向 ・ ‑ 5 9 頁
(6) まとめ ‑ ・6 1 頁
第2 節 生 徒 指 導に お け る教 師の対 応お よ び考 え 方 (1) 生徒指 導に おける教 師の指導方 針 ‑ 6 3 頁 (2) 生徒指導場 面に おける教師の対 応 ‑ ・6 4 頁 (3) 生 徒 指導場 面に おける教師の対 応理由 ‑ 6 7 頁 (4) 生徒指 導で反 発 され た場合の教師の対 応 ・ ‑ 7 0 頁 (5) 生 徒 指導の方 針・対 応 ・理 由の関 連 性 ・ ‑ 7 2 頁 (6) 生徒指 導に おける教師の評価 ‑ 7 5 頁
(7) まとめ ・ ・ ・7 7 頁
第3 節 教 師が受 け止 め る「教 育It「 人権Jを巡る諸 言 説
(1) 言 説 の受け止 め方につ い ての全 体 的 な 傾 向 ‑ ・7 8 頁 (2) 言 説 の受 け止 め方につ い ての職 業 経 験 別 傾 向 ‑ 8 0 頁 (3) 言 説 の受け止 め方につ い ての男女別傾向 ‑ 8 3 頁 (4) 諸 言 説 の間の相 関 関係 と属 性の 作 用 ‑ 8 4 頁
(5) まとめ ‑ ・8 8 頁
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(1) 「子 ども‑ の人権保障」 につ いての教師の捉 え 方 ‑ 8 9 頁
(2) 「人 権 教育に おける感 性の重 要 性」 につ いての教 師の捉 え 方 ・ ‑ 9 0 頁 (3) 「自尊 感情」 につ いての教 師の捉 え 方 ‑ 9 1 頁
(4) 「 公共 性」 の教 師の受 け止 め方 ・ ‑ 9 3 頁
(4 0字 ×3 0 行) 第5 章 結論 ‑ ・9 6 頁
あとが き
参考・ 引 用 文 献
第1 章 問題の設 定
畢1 節■ 「権 利」 の濫用 による教 育 への影豊
本節で は、 問題 設 定の根底にある社会 問題である「権利の濫用」 の問題 を取り上 げ、 本 研 究が現 実の 問 題と結びつ いて述 べられたもの であること を明ら か にするc. そ して、 アメリ
カの事例 を 辛が か りとしながら、 提 示した「権利の濫用」 の問 題 を 改善するため に 必要 な 視点 を 提示することとし たい,v,
(1) r『人権』の濫用 によ る教育の同類J の実 態
現 代 社 会に お いて、 子供 や 若 者の権 利 主 衷が問 題 視 されることがある。 内 閣府の『人 権 擁護に関 する世 論 調 査』(2 0 0 7 年)によ れ ば、 「人権 尊重が叫ば れる 一 方で, 権利の みを
主 張して, 他 人の迷惑を考えない人が増えてきた」という意見につ いて、 「そう思う」(「非 常 にそう思うj + 「かなりそう思う」) と答える者の割合が8 5.2 % (3 4 .9% + 5 0 .3 % ) , 「そうは 思 わ な い」 (「 あ まりそ うは思 わ ない」 + 「 全 くそうは思 わ な い」) とす る者 の 割 合 が
1 2 .7 % (l l ,7 % + 1 .0 % ほ なっ ている( 園1 .1 参 照、 次 百) 1)rJ 前 回(20 03 年) の調 査結果 と 比較してみ ると、 「そう思う」(7 6 .7 % ‑ 8 5 .2% )とする者の割 合が上昇し、 「そうは思 わ ない」
(1 6 .3?//. ‑ 1 2 .79/o) とする者の割合が低下していることが分か るo
この調 査そのものは、 一 般 市 民の受 け止 め る" 意 轟' 'にす ぎないo し か し、 今なお発 生し 続ける未成年による殺傷事件や、 成人式に おける暴動などが マスメディア で取り上 げられ る ようになって久しいo ま た、 日常の場 面でも、 電 車の中 などの 公共 施 設で携 帯 電 話で話 を す る 公衆の面 前で の化 粧直し、 限 られた 公共ス ペ ー スに集まっ て座る(いわ ゆる̀ ̀ジベ
タリア ン' ') など、 周 囲に配 慮しない 自 分勝手 な 行 為 をする若 者を目にすることがあるo
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