ヒルファーデイングの「資本輸出論」
159
ヒルファーディングの「資本輸出論」
一資本輸出の起動因を中心として−
田口信夫
は じ め に
I 独占的組織の結成
Ⅱ 過剰資本の形成と資本輸出
Ⅲ 保護関税と資本輸出
は じ め に
ヒルファーディングの「資本輸出論」が,今日でもなお,レーニンの「資 本輸出論」とならぶ,マルクス経済学「資本輸出論」の双壁をなしているこ とは疑いないと思うが,いくたの研究にもかかわらず,その正しい理解は必 ずしもおこなわれていない。たとえば,わが国における「資本輸出論」の代 表的論者の1人である清水嘉治氏は,ヒルファーディングの「資本輸出論」
をレーニンの「資本輸出論」と対照して,レーニンが独占と金融資本を速軸 として形成される過剰資本によって資本輸出の必然性を論じているのに対 し,ヒルファーディングには独占体の形成によって過剰資本がどのように一 般化するのかという分析が欠如しており,とくにヒルファーディングの資木 輸出の規定は産業資本主義段階の資本輸山の価値規定の展開にすぎなかった というふうに把捉しておられる1)。氏のいわんとするところは,レーニンの
「資本輸出論」が独占資本主義段階における錮ミ輸出であったのに対し,ヒ ルファーディングのそれは,産業資本主義段階における資本輸出であり,し かも,レーニンのように資本輸出を帝国主義における経獅勺本質の1つとし てとらえるのではなく,金融資本の矛盾解消の手段(氏はこの矛盾が何であ
るのか明記していない)=金融資本の政策としてとらえていたということで ある。
しかし,後者はともかくとして,前者に関する見方は
r
金融資本論」第5 t 1 i r
金融資本の経済政策」第22 i ;
'i:r
資本の輸出と経済領域をめぐる斗・争」の叙述のみに固執した見方であり,ヒルファーディングの「資本輸出論」を 全体的に正しく把握したものとはいいがたい。
また,吉村正晴氏も, レーニンとヒルファーディングの「資本輸出論」に ある主要な差異があることを認めて,次のように述べている。
r
ヒルブァー ディングの方は議論が細かい上に,が:述の仕方が余り筋道立っていないの で,簡単に特徴を言い現わすことはま1&しいが,最も主要とおぼしきものは次 の点であろうO すなわち,貸付資本と産業資本との区別を力説して,後者の 形態での資本輸出,就中カノレテノレとトラストが担当者となって行う産業資本 の輸出を優先祝していること,資本輸出の必然、性を説くにあたっては,保設 関税(カノレテル関税)の作用を非常に主くみて,カルテル→保設関税→「経 済領域の拡大J
(植民地制度)・資本輸出なる図式を描く乙と等がそれであ るD これに対して,レーニンの理論は,資本輸出の必然性をまず資本の過 剰,就中少数回における貨幣資本の大呈の蓄積にもとめ,資本輸出をもって 金融資本の輸出と規定した上で,金利生活者国家,白釆された寄生性,少数2) ー
の債権国家による世界の分割を強調する 」。カルアル→保護関税→「経済 領域の拡大
J
(柏民地制度)・資本輸出なる図式は,まさに「金融資本論」第5
箔第22
章の論理であり,そこでは保護関税→販売領域の縮少が、規校の経 済、との関述で生産性におよぼす悪影智を克服するものとして,資本輸出が 説かれている。従って,古村氏も泊水氏同椋, ヒノレファーディングの「資 本輸出論」を「金融資本論」第22 j
字のみに依拠しているといわねばならなしかし, ヒノレファーディングの「資本輸出論」が両氏等の考えているほど 単純なものでないのは次の文平
1
っとってみても明らかである。ヒルファー デイングは次のように述べているO「カノレテノレ化は異常な特別利潤を意味する。そして,すでにみたところだ が,この特別利潤は資本還元されて,集積された資本呈として銀行
l
乙流れこ む。だが,同時にカノレテノレは投資の絞d良化を志味する。というのは,カルテヒルファーディングの「資本輸出論
j1 6 1
ノレ化した産業では,カノレテノレの第 1の方策が生産の制限だからであり,カノレ テノレ化しない産業では,利潤率の低下がさしあたりヨリ以上の投資をしりご みさせるからである
Oそこで,一方では蓄積されるべき資本の呈がふえるの に,他方では投資の可能性がへる。との矛盾は解決をもとめ,そして解決は 資本の輸出において見出される
O資本の輸出そのものはカルテル化の結果で はない。それは資本主義的発展と不可分なー現象である o だが,カノレテノレ化 はこの矛盾を急激に助長して,資本輸出の急性的性格をつくりだす 3) J
0この文章の論理は,明らかに,過剰資本にもとづいた資本輸出の論理であ り,このかぎりでは, レーニンが「帝国主義論」第 4 章で展開したのとまさ に同じ論理である
O従って,ヒルファーディングの「資本輸出論」を両氏等 のように,一面的に解釈するのは誤りであるといわねばならないであろう。
本稿はかかる観点から,ヒノレファーディングの「資本輸出論」を,とくに資 本輸出の起動因を中心として検討していくことにある
D行論の順序として,
まず資本輸出の主体たる独占体の形成の過程から検討していきたい。
注(1) 清水嘉治『現代資本主義と資本輸出~
(新汗論, 1973 年) 1 0 5 頁 。 ( 2 ) 吉村正附「羽代の資本愉山 J
(産業労働研究所報沼46号) 1 頁 。
( 3 ) ヒノレファーディング「金融資本論 J (林要沢,大月苫庖, 1 9 6 4 年)下巻 1 0 3 瓦 。
第 l章 独 占 的 組 織 の 結 成
ヒノレファーディングの独占形成理論の特徴は, レーニンのように,生産の 集中・集積から出発して,集積の一定の発展段階で独占が成立すると考える のではなく,部門間における利潤率の不均等を均等化ならしめる迎劫とし て,独占形成をとらえていることである o 第 1 1 立のm:工業部門における独占 形成の論理も,また第 1 5 1 ; 1:の独占的組織の一般化(一般的カルテノレの成立) の論理も,若干ニュアンスは見なるが,部門間における利潤率の均等化とい う観点で貫ぬかれている。
まず,論理の山発点をなす固定資本が巨大な部門(その典型は主工栄であ
る)において,なぜ独占的組織が形成されるのかみてみよう。乙乙での論理の
基調をなすのは,固定資本の巨大化が「独占の物質的基礎としてというよりは,
『利潤率を低下せしめる要因』として位置づけられていること
1) J
である。技術的発展にともなって,資本の有機的椛成は高度化し,固定資本は巨大 化する傾向をもつが,乙の固定資本の巨大化は生産の拡張,または新企業の 参入に対して多額の資本を要求し,資本調達の面から
1
つの制約を強いる。というのは,剰余価値からだんだんに蓄積される額が独立の資本になるには 長い時間を必要とするからである
2)
。しかし,資本調達面における乙のよう な困難は,さしあたっては,株式会社制度の発達による「資本の動員」と個 別資本の結合によって解決される。従ってヒノレファーディングにあっては投 資さるべき資本の大きさから生まれる障害=固定資本の巨大化にともなう資 本流入の困難は,ここではなんら企業遂行のさまたげとならない3)
。しかし,問題は資本の流出に対してであるO 乙の固定資本の巨大化は,一 度なされた投資(=現実資本)の移転をつねに困難にするD 固定資本が小規 模な小経営においては,資本設備を破壊して,利潤率のヨリ高い部門ヘ移転 することが容易であるが,固定資本が巨大な部門においては,それに拘束さ れた価値を大した損失なしに実現して,さらに有利な部面ヘ資本を移すこと は困難だからである
o
かくして,資本の流出による利潤率の均等化作用は,ここではほとんどなくなる。
ところで,先に述べたように, ヒノレファーディングによれば,ほかならぬ これらの部門=重工業部門こそ比較的長期にわたって,平均よりも低い利潤 率にあまんじている部門である
o
それは,固定資本の巨大化にともなう資本 の有機的構成の高度化とその部門における競争のはげしさ‑自由競争を前提 とした場合のーによるものであるO 部門間で平均利潤が達成されるための条 件は,部門間で資本の自由な移動がおこなわれることであり, この場合に は,乙れらの部門(利潤率の低い重工業部門)から資本が流出していくこと であるが,上記のように,固定資本の巨大化によってこのことは不可能であ る。(この場合,資本の流入は,資本規模の制約がなくとも,はじめから問 題にならない,なぜなら,これらの部門は他の部門より利潤率の低い部門だ からである)0 かくして,自由競争を前提とすれば,これら固定資本の巨大ヒノレファーデイングの「資本輸出論」
1 6 3
な部門においては,平均よりも低い利潤率が固定的となる傾向がある。しかし,ヒノレファーディングによれば,ほかならぬ大量の固定資本をもっ これら産業こそは競争とこれによる利潤率低下に敏感な産業であり,これら 資木力の充分つよい産業では,それを克服する反対傾向をよびおとす。そし て,乙のような反対傾向乙そが,ついには「自由競争の止拐にみちびき,し たがって利潤率の不平等を永続的に形成する傾向にみちびく
4) J
ところの独 占の形成につながるのであるO 従って1"ヒノレファーディングがここでもち 出した利潤率の不均等なるものは,独占支配のもとで固定化する不均等なの ではなく,これにたいする反対傾向(つまり,均等化傾向)によって克服さ るべき不均等なの」であり,それは, 1"r
固定資本がずばぬけて豆大な役割 を演じる』ところの,したがってれ、ちど投下された資本の流出がもっとも 困難J
(下・p . 1 6 )
な,主工業部門における利潤率の平均水準以下への低 下ということを,その最も重要な特徴とするところの『不均等』なのである ) J
0以上の独占形成に関するヒノレファーディングの「弁証法」を定式化すれば 次のようになろう。
重工業部門における好況 j切における回定資木の明大(生産規~~~の拡 ~N , 新 企業の参入)→資本の有機的構成の高度化とはげしい競争にもとづくところ の利潤率の低下(とくに,不況
j
切においては,この利潤平の低下が顕在化し てくる)→固定資本の巨大化にもとづくと乙ろの資本流出の困難→主工業部 門における利潤率の平均以下への固定化→その克服策としての自由競争の止 揚→独占的組織の形成。以上は,手iJ
i
同率の平均以下への低下傾向を自由競争の止拐によって克服し ようとする資木の迎到Jからみた,同一部門内における独占休の形成である が,他方, ヒノレファーディングによれば,独占的組紋の形成は原料供給部門 と原料加工部門における利潤ネの相述といった閃係からも生じるD いうとこ ろの企業述合(兵部門間の企業粘合)がこれである。乙こでもまた,その論 理を貫ぬいているのは,手lJi
同本の均等化であるD ただし,乙の場合の利潤平 均等化は,先に述べた部門間相互の均等化ではなく,粘合した企業にとっての均等化である。すなわち,乙の場合には,諸企業が結合以前にぞくしてい た産業部門聞の利潤率はかわらず,それらの利潤率の差は存続し,ただ迎合し た諸企業にとってだけ利潤率の格差は消滅するのである
6)
。このような企業連合を推進する契機は, ヒノレファーデイングによれば,産 業循環上の諸局面における原料供給部門と原料加工部門との利潤率の相違で
ある
o
彼は次のように述べている。「繁栄期には生産が拡張されるD 乙の拡張がもっとも急速にお乙なわれる のは,資本が比較的に小さくて生産の拡張が短期間に多くの地点でなされう る場合であるO こうした急速な生産の増大は,あるていど物価の上昇をゆる めるO 完成品産業の大部門では,そうだ。しかし,拍出産業における生産の 拡張は,それほど急速にはできない。あらたな堅抗の完成や,あらたな高炉 の設備は,比較的ながくかかるO 繁栄の初期には,需要の増加は旧生産能力 のヨリ強度の利用によってみたされるO だが最高景気時には,完成産業の需 要は抽出産業の生産より急速にます。したがって,原料の価格は完成品のそ れよりも急速にあがるO そこで拍出産業における利潤率は加工産業を犠牲に して高まり,そのうえ,加工産業は原料の不足のために景気の利用をさまた げ ら れ る こ と も あ り う る ・H ・.....・H ・..不況
j
切には逆であるo C
資本の〉流 出ならびに生産制限は,原料供給の諸部門では完成品生産の部面でよりも,困難で損失が大きい。だから,前者の諸部門では利潤率が平均以下にとどま ることがヨリ長い。このー契機は加工産業における利潤率をその正常水準に もたらすことにもやくだつが,しかし原料生産では不況期はヨリ長くヨリき びしい
7) J
。このような好況期と不況期における原料加工部門と原料供給部門の利潤率 上の相違は,それを克服しようとする資本の迩勤をよびおこすが,ヒノレファ
ーディングによれば,このような迩勤こそが抽出産業と加工産業との結合=
企業述合にほかならず,このことによって具部門聞にまたがる独占体が形成 されるのである。つまり,ヒノレファーデイングにあっては,企業連合は垂直 的関連をもった諸企業の産業循環上の利潤率の差の平均化にほかならず,し たがってまた,連合した企業のための利潤率の安定にほかならないのであるD
ヒノレファーディングの「資本輸出論
j 1 6 5
乙乙では,レーニンのいうような原料資源の支配が独占の基盤強化のために いかに重要であるかという積極的な動機(たとえば,原料の長IJ奪がカノレテノレ への加入を強制するためのもっとも重要な方法のl
つであるーレーニン「帝 国主義論」副島程典訳,大月書居,1 9 6 4
年,3 4
頁 ー と い っ た ) が 欠 け て し可る。以上,産業資本内部の事情(部門間における利潤率の不均等〉を契機とし て,独占的組織(カノレテノレ・トラスト)が形成されるというヒノレファーデイ ングの独占形成論をみてきたが,彼によれば,このような独占体の形成は,
銀行資本の利害関係によっても促進されるO それは,銀行資本の集積ととも に銀行が関係する産業企業の範囲も拡大されるからであるD このことは,い まや多数の企業と関係をもつにいだった銀行をして,企業問の競争をやめさ せる乙とを最大関心事ならしめる。
I
そこで,競争による損失をまぬがれよ うとする産業企業の努力と,関係企業総体の利潤を最大限ならしめようとす ることから自らの利潤を最大限ならしめようとする銀行の要求とが一致する ことによって,競争は止拐される8)
」のであるD ヒルファーデイングは次の ように述べている。「もともと技術的ないし経済的にすぐれている産業企業は,競争
i i
交のあと では勝利者としてT I 1J E i
を維持し,その販路をひろげる見込みをもち,また相 手を放逐してからは競争以による釘失をつぐなって余りある特別利刊を長く おさめる見込みをもっ。だが,銀行の考応するところは,乙れとはちがった 性質のものである白この企業の勝利は,銀行が同総に関係していた他の諸企 業の敗北である。他の諸企業は多額の信用をうけており,その貸し出した資 本がいまや危険となるのであるo
競争戦そのものが,すべての企業にとって 損失の時期だったのだ。そこで,銀行はその信用を制限して,利得のある金 融業務を断念しなければならない。一企業の勝利は,銀行のこの損失をつぐ なうものではない。そんなに強大な企業は銀行にとっては敵であって,そこ からは大した利益を銀行はおさめることができなしL だから,たがいにj i l t
争 する諸企栄が銀行のおf S J E
であれば,そのお1
守rから銀行の期待しうるもの は,ただ不利益だけであるo
そこで,その関係している諸事業問の競争をのぞこうとする銀行の努力は,絶対的である。しかし,また,銀行はすべて,
できるだけ高い利潤をえようとする。利潤は,ほかの :{JI't~j-!こかわりがなけれ ば,やはり‑産業部門内で競争が完全にのぞかれたとき頂点にたつするだろ うO だからこそ,銀行は独占の樹立につとめる。そこで,競争をのぞ乙うと する点で,銀行資本の傾向と産業資本のそれとは一致する。それと同時に,
銀行資本はますます力をえて,個々の企栄ーとくに有利な設備をたのんで競 争戦をなおも選ぼうとするような個々の企業ーの志思に反してでも,この目 的を遂行するO そこで,銀行資本の協力がなければ自由競争がまたつづいた ような経済発展の一段階ではやくも競争がのぞかれたのは,産業資本が銀行 資本の支持に負うものである
9) J
。このような銀行の独占形成にさいして果す役割の重大さは,レーニン自身 も認めるところである
10)
が,ここで注芯しなければならないのは,銀行の 独占形成におよほす影響は,イ呆設貿易か自由貿易かが独占体の形態あるいは その出現の時期における本質的でない相違をひきおこすのと同じように,独 占形成の一般的で基本的な法見jiではないということである(レーニン前掲呑26
頁)0 レーニンとヒノレファーデイングのちがいはこの点にあるように思わ れるO すなわち,レーニンが「自由競争は生産の集積を生みだし,そしてこ の集積はその一定の発展段階で独占に導く」ことを,資本主義の現段階にお ける「一般的で基本的な法則」としたのに対し11)
, ヒルファーデイングにあっては I産業資本と銀行資本との圭印後1~1九が独占形成のすべて
であって生産の集積はただ,固定資本の:1:日大と利潤率低下の役割しか果さな いのである。乙の点について,本間氏は次のように述べているD
「ヒノレファーデイングにおいて,生産の袋詰は,主工業部門における利潤 率の平均以下への低下という循環的現象の物値的基礎としての『固定資本の 増大』という形でとらえられているために,乙の集積が一定の高さに達した ばあい,それ自身として競争制限的作用(といってもこの場合には利潤率を 低下せしめるようなそれではなく,当該部門の利潤率を高めるような競争
1 1 i ! J
限)をもっということが,彼には理解されない以上,カルテノレ,トラスト等
の独占的結合は,手Ij?~~率低下を克服するための『共同の努力』という主観的ヒノレファーデイングの「資本輸出論」
1 6 7
契機によって専かれる以外にないことになる13
」〉 D独占形成論における,このようなレーニンとヒノレファーディングのちがい は,われわれの大いに注目すべきところであろうO
さて,このようにして産業資本と銀行資本との主観的契機によって形成さ れる独占的組織は,他の産業部門(非独占的産業部門)にどのような影怨を およぼすだろうか?ヒノレファーディングによれば,ある産業部門における独 占(カノレテノレ)の成立は,独占部門の他部門からの利
j
回収奪を可能にし,い ままで述べてきたのとはちがった意味での部門間における新たな不均等を ひきおこす口すなわち,収奪を基礎とした不均等であるO 資本の自由な移動 がおこなわれれば,資本は利潤率のヨリ高い部門(独占部門)に向って移動 し,利潤率の不均等は解消されようが,独占(カルテノレ)の成立は「投資部 面をめぐる資木の競争」の制限を芯味するから,資本の移動によっては利潤 率の均等化は達成されえない。とすれば,利潤率の均等化は他の手段によら なければならないが,ヒノレファーデイングによれば,乙の均等化は非3'1 1
占部 門(独占部門によって収奪される部門)自らがカノレテノレ化するか,あるいは 企業述合によってカノレテj
レ化を排除するかによってしか達成されえないので あるO かくして,ある産業部門において成立した独占的組織は,手JIiß~ 不均等 化の運動を通じて,他の産業部門にも波及し,終局的には,すべての産業部 門において独占的組織が形成される乙とになるO ここでもまた,独占形成 (波及)の論理を貫ぬいているのは,部門間における利潤率不均等(収布に よって発生した)なのである。「カノレテル化は,さしあたり利潤率の変更を芯味する。この変更は,ほか の資本主義的諮企業の利潤率を犠牲にしてお乙なわれる。これらの利潤ネの 同一水準への均等化は資本の移動によってはできない。それはカルテル化な るものが投資部面をめぐる資本の競争のはばまれていることをな味するから だ。経済的原因と所有関係(原料の独占)とによる資本移劫の自由の阻害 は, じつに市場における完り手相互間の競争の止
m
される前捉である。均等化は, 自分がカルテノレ化するか,または企業述合によってカノレテノレ化を排除 するかによって高められた利潤率の分けまえにあずかることによらねば不可 能であるD そのどちらも袋詰を増大し,したがってカルテノレ化の進展を容易 にする
14)
」。ここで問題となるのは,独占波及の推進力とのしての利潤率不均等,すな わちある部門における独占成立の結果たる利潤率の変更=新たな部門間の 利潤率不均等が,他の資本主義的諸企業の利潤を犠牲にしてお乙るというこ とであるO このことは, ヒノレファーディングが独占的超過利潤の源泉を主要 には流通過程に求めていることを芯味するが,問題は独占的超過利潤の根源、
をはたして流通過程に求めていいものかどうかという乙とである。この問題 は,独占資本の資本苔む様式そのものにかかわる問題であり,ひいては過剰 資本の輸出の源泉にもかかわる問題でもあるので,乙乙での詳論はさける が,ただもし,独占的超過利潤の根源が流通過程ではなく,生産過程(独占 的剰余価値の取得一他部門からの利潤の収奪によらない)にあるとすれば,
ヒ
j
レファーディングがいうような味芯での利潤率の変更,すなわち非独占部 門をして独占の形成にかりたてるほどの利潤率の変更はおこらず,彼のいう 独占的組織波及の論理は根拠のうすいものとなろうO次に,独占的組織の波及の問題であるが,資本力が比較的強く,独占が成 立する基盤がある程度ととのっている産業部門は問題ないとしても,乙の波 及が利潤率が低く
r
旧資本がたえず破壊されてはすぐまた新資本にとって かわられる15
〕」非独占部門にまでおよぶとする16)
のは問題であろうD とい うのは,これらの産業部門においては,角田氏もいわれるように,むしろ非 独占的地位が固定化するとみる方が妥当だからであるO「これらの部面での異常に低い利潤率は利潤の大なる部分が資本家の個人 的消費に向けられざるをえなくさせ,蓄積元本を縮少させ資本蓄積そのもの を困難にするのであり,この志味では利潤が『監督報酬』にすぎなくなるD
それゆえ,なるほどこれらの産業においては競争が戟化するであろうとはい
ヒjレファーデイングの「資本輸出論」
1 6 9
え,そのなかから巨大な資本規枚をもっ少数の企業が現われて支配的な位置 をしめるようになるとはいえないのであって,むしろその非独占部面として の位置は固定化する傾向があると氾握せねばならない。さらにまた,一連の 産業部門においてカルテノレが成立したのちにも,カノレテルが生ぜえないこれ らの産業は技術的にみても生産の集杭がすすみにくい部門であると考えられ ることも,この把握を根拠づけるD もし技術的にこのような性格をもってい るのでなければ,巨額のカノレテル利潤の投下部面に悩むカノレテル参加企業は その産業に資本を投下し,ばあいによっては短期の欠損を招いてでも既存企 業を打ち倒して支配的位置をしめ,かくして独占を成立させるであろうo だ
から,独占が成立して一定期間ののちには,独占による収奪の対象でありそ の利潤率が異常に低い産業としての非独占部面の位置は固定化するという傾 向をもたざるをえないのである1 7 1
D結局,レーニンのように生産の袋町
i
によってではなく,利潤率不均等の均 等化という論理でもって,カルテルの成立=波及を理論化しようとするため に,このような無理が生じるのであるが,独占的超過利潤の源泉としての収 奪の面を強調しようとするのであれば,このような収奪被収奪という閃係は 永続するとみるのが妥当であろうO以上でヒノレファーディングの独占形成理論の検討を終るが,一言でいえ ば,彼の理論は部門間における利潤率不均等の均等化という論理で
1 1
ぬかれ ており,生産の~ミ杭は独占の形成にとってなんら本質的;立味をもつものでは なかった。すなわち,生産の*有i=
固定資本の増大であり,生産の袋町i
は独 占形成の出発点たる利潤率低下の役' g l J
を果すものでしかなかったのである口 独占的超過利潤の根源として生産過程よりも流通過程(収奪の過程)を霊視 する彼の考えも,乙のような生産の袋町i
のとらえ方よりきているヰうに思わ れるo
すなわち,独占の技術水準を軽視したとらえ方である。なお,木
7 2
での論議においては,木問要一郎氏の論文「ヒノレファーディン グの『独占』理論J
(前山)に負うところが大きかった。一言付しておきたし
1 。
注
( 1 )
本問要一郎「ヒノレファーディングの『独占.llJ T
Jl論J
(経済研究VOL.2
1.N o . 4 ) 3 8 0
頁。( 2 )
ヒノレファーディング前向古: 1 2
真。( 3 )
同書1 2
頁。( 4 )
同苦1 8
頁。( 5 )
本問要一郎前掲論文3 8 0
頁。( 6 )
ヒノレファーデイング前掲苦3 2
頁。( 7 )
同書2 5 ‑ 2 6
頁。( 8 )
本問要一郎前持論文3 8 2
頁。( 9 )
ヒノレファーデイング前掲古1 9 ‑ 2 0
頁。側 レーニンは次のように述べている。
「銀行はいずれにせよ,すべての資本主義国で,銀行立法にいろいろと相違があ るにもかかわらず,資本の柴山と独占体の形成との過程を何倍にも強め,促進し ている」。レーニン「帝国主義論
J
(副島程央訳,大月吉田,1 9 6 4
年, )4 8
頁。(11)
同吉 : 2 6
頁。 (12) 本問要一郎前掲論文
3 8 2
頁。傍点は引用者。ω
向者3 8 2
頁。(14) ヒノレファーディング前掲書
9 6 ‑ 9 7
頁。 (1日同書1 8
頁。(
1日 「独占化していない諸産業における利回の減少は,しかし,それら産業の発展の 絞慢化を意味する。しかし同時に,販売悶争はいっそう政烈だろう。というの は,利回率がげんに下がっているからだが,乙の販売闘争は,ここではなおさら 危険作用をする。それは,比較的わずかな価格低下でさえ低い利潤をなくしてし まうからである。同時に,いま
1
つ別の作用があらわれる。つまりーカルテノレ化 した諸産業の侵勢がいちど手u m 1
をたんなる監督報酬におしちぢめるととに成功す れば,そこには株式会社の成立する余地がなくなる。というのは,創業者利得も 配当も,それは監督報酬をこえる収益がなければ支払えないからである。そ乙ヒ l レ 77 ーディングの「資本輸出論」 1 7 1 で,カ
jレテノレ化はカルテル化しない諸産業の発反をはばむ作用をする。 i 同時に,
カノレテノレ化はそれら諸産業のうちに競争を,したがって集積傾向を政成し,やが て,これら諸産業もついには自分がカルテル能力のあるものとなるか,または,
すでにカルテル化した一産業に桁入されうるものとなる J
(~司書 101頁〉。( 1
百 f i J Dl収「資本輸出の必然性にかんする一考祭
J(京京都立大学『経営と経済学』
第
3 2 号)1 4 2 ‑ 1 4 3 頁 。
第
2章 過 剰 資 本 の 形 成 と 資 本 輸 出
前辛でヒノレファーデインクゃの独占形成論についてみてきたので,本手では 独占体の資本苔杭源泉(独占利潤の根源)についてみていきたい。前 2 2 で 述 べ た よ う に , 独 占 利 潤 の 基 本 的 な 部 分 を ど こ に 求 め た ら い い か と い う 問 題 は,独占資本の資本蓄積松式ひいては過剰資本の性格にまでかかわる問題で あり, ヒノレファーディングの資本輸出 5 2 7 を論ずる上で,どうしてもさけて通 ることのできない問題である。
従来,独占利潤の根源をどこに求めるかという問題に対しては, 2 つの具 った立場からのアプローチがおこなわれてきた。 1つは,独占利潤の根源を 流通過程に求める見解であり,もう lつは,独占利潤の根源を生産過程l こ求 める見解である o 前者は,独占不 I l ? 目の根源を独占体の価格設定(生産価格以 上への価格の引き上げによる他部門またはii'J Y H 者からの利潤および所得の収 奪)に求め,後者は独占休の技術水準の向上(技術水準の向上による特別剰
余価値の生産)に独占手IJ?~~ の根源、を求めるものである O 一般的傾向としては,前者に主きをおく見解が文配的であるが,ヒノレファーデイングもそのよ うな論者の代表的な l人と考えていい。それは以下に示す諸文章からも明ら かである。
「カノレテノレ化は,さしあたり利潤率の変更を芯味する。乙の変更は,ほか の資本主義的諸企業の利潤率を犠牲にしておこなわれる 1) J
0「カノレテノレ価格の引き上げによる利潤平の引き上げは,ほかの産業祐部門
における利洞宗の引き下げによるほかない。カルテル利潤は,さしあたっ
て は , ほ か の 産 業 諸 部 門 の 利 潤 の 分 け 取 り , 杭 取 り 以 外 の な に も の で も な い ) J
0「カノレテノレ化は平均手iJ 1 同率におけるある変化をな味する。手lJ i 閏率はカノレテ ノレ化した諸産業では上昇し,カノレテノレ化しない諸産業では低下する
O乙の相 違から企業連合がうまれ,カノレテル化が促進される
Oカノレテル化の外にある 諸産業の利潤率は下がる o カノレテノレ化しない諸産業の価格が生産価格以下に 下がる額だけ,カノレテル価格がカノレテル化した諸産業の生産価格以上に上が る。カノレテノレ化しない諸産業のうちに株式会社があるかぎり,価格は K+Z
(費用価格プラス利子)以下には下がりえない。というのは,そうでなけれ ば,資本の投下が不可能となるからである。そこで,カノレテノレ価格の引き上 げは,カルテル能力のない諸産業における利潤率引き下げの可能性を限界と する o これらの諸産業の内部では,ヨリ低い水準への利潤率の均等化がお乙 るが,それは程々な投資部面をめぐる資本の競争がここには存続するからで ある 3) J。
もっとも,だからといって, ヒノレファーディングが独占的超過利潤の源泉 としての生産過程を全く無視しているわけで、はない。次の文章が示すとお り,彼は独占的超過利潤の源泉としての生産過程にも言及しているからであ る 。
「カノレテノレは価格をきめるさいには生産賀のもっとも高い工場の生産価格 を ら 出 発 せ ざ る を え な い … … … 。 そ こ で カ ル テ ル 価 格 を き め る こ と に よ っ て,技術設備のよい企業には特別利潤がうまれるが,この特別利潤はカノレテ ノレが競争を締め出しているので競争によっては平均化されず, したがって差 額地代の性格をもつようにみえる
Oだが,地代との差は,長劣等の工場ーがけ っして長劣等地のように市場需要の充足に必要ではないということである
Dこの最劣等の工場は,その生産がヨリ優良な工場にうつされれば,とりのぞ くことができる
Oしかし,さしあたりカルテル価格が維持されるから,生産 の増加はヨリ安く生産する諸工場にとっては特別利潤を志味する
Oそこで,
ヨリ高く生産する諸工場の生産をやめるほうが有利になる o だが,そうすれ
ば r 差 額 地 代 J は消えて,高いカノレテノレ利潤だけになる 4) J
0ヒノレファーデイングの「資本輸出論」 1 7 3
「自由競争は改善技術の採用による不断の生産拡張を強制する
Dカルテノレ にとっても,ヨリよい技術の採用はやはり利潤の上昇を意味する
Oそうでな くてもカルテノレはこれを採用せざるをえない(むしろヨリよい技術を独占的 に採用しているためにカルテ j レ,すなわち独占は成立するのではないか‑引 用者)
0というのは,そうでないと,アウトサイダーが新技術をとり入れ,
これをカルテノレに対抗して新たな競争戦にもちいる危険があるからである。
これが可能かどうかは,カルテノレのつくった独占の性格による。生産の自然 的諸条件をも独占したカノレテルたとえば鉱山シンジケートのごときカルテノレ か,または次のようなカルテノレ,すなわち,その生産が最高度の有般的椛成 をもち,したがって新企業にば銀行でなければ融通できないほど異常な資本 力を要するが,銀行はカルテノレの立に反しては何もしようとしない,という ようなカルテルーーこういうカルテノレは,あらたな競争にたいして非常に安 全である
Oそこでは技術の改苦・が特別利潤を芯味するが,それは競争によっ てやがて消滅するようなものではなく,したがって商品の価格も下がる必要 はない。そのさい改菩技術の採用は消費者の利益とはならないで,組紋の強 固な乙れらカルテノレやトラストの利益となるだけである
O……… 5) J
0このように,彼は独占的超過利潤の源泉として生産過程にもふれているの
であるが,全体的な文章のニュアンスからして,また先に述べたように,彼
の独占波及(=一般的カノレテノレの形成)の論理からしても,独占の他部門か
らの利潤収奪が全体的な論理の主要な前捉をなしており,彼が独占手IJm~ の恨源(基本的部分)として,流通過程を主に,生産過程を従につJ 5 " えている
乙とは疑いないところである 6)
D結局のところ,彼はこのように京本的には
流通過程で発生した独占利潤でもって,独占資本主義段階における「資本輸
出の急性的性格」を説明しようとするのであるが,資本輸出の源泉としての
独占的超過利潤の根源を流通過程に求めているかぎり,過剰資木にもとづく
彼の資本陥出論ば独占資木主義の特徴を正しくふまえたものとはいえないで
あろう。独占資木主義段階における資本輸出の起動因(必然性)を過剰資本
の論理から出発させようと思えば,どうしても資本輸出の源泉としての独占
的超過利潤の根源(基木的部分)を生産辺程
lこ求めなければならない。そう
でなければ,独占資本主義をダイナミズムにとらえることも,また独占資本 主義段階における資本輸出を規則的にとらえることもできないからである。
もし,独占的超過利潤の源泉を基本的に価格の奴作(=不等価交換)に求め るというのであるならば,独占資本主義段階における資本苔杭株式も資本の 本源的苔杭 j 切におけるそれも,その性格上,なんらかわりはないであろう。
ただちがうのは,後者が特権的あるいは暴力的におこなわれてきたというこ とだけである。
しかし,資本の本源的蓄積j 切における独占と独占資本主義段階における 独占とは性格上全く具っている。すなわち,前者がたとえば束インド会社な どにみられるように,特許などー述の流通上の特権に代表されるのに対し,
後者は生産の集中・集積による巨大な生産設備といちぢるしい生産力の向上 に代表されるからである。すなわち,独占資本主義段階を代表する独占は 1 , 資本の本源的蓄積 j 切における独占とはちがって,的まん的な不等化交投など やらなくても,巨大な生産設備と生産力のいちぢるしい向上をノ f ックに,そ して他企業との永久的な技術格差を(技術独占)を背景にその成果を 1人じ めし,よって巨額の独占的超過利潤を取得することができるのである。い ま,相対的剰余価値の生産に関するマルクスの設例を引用することによっ て,この過程をみていくことにする
Oマノレクスは次のように述べている。
11 労働時間が 6 ペンスすなわち半シリングという金量で表わされるとす
れば, 1 2 時間の 1 労働日には 6シリングという価値が生産される
O与えられ
た労働の生産力ではこの 1 2 労働時間に 1 2 佃 の 商 品 が つ く ら れ る と 仮 定 し よ
う。各 1佃に消費される原料その他の生産手段の価値は 6 ペ ン ス だ と し よ
う
Oこのような事↑百の下では l 個の商品は 1シリングになる。すなわち,生
産手段の価値が 6ペンス,それを加工するときに新しくつけ加えられる価値
が 6 ペンスであ
eる。いま,ある資本家が,労働の生産力を 2 倍にすることに
成功し,したがって 1 2 時間の 1 労働日にこの屈の商品を 1 2 佃ではなく 24 個生
産することができるようになったとしよう。生産手段の価値が変わらなけれ
ば 1 佃の商品の価値は今度は 9 ペンスに下がる。すなわち,生産手段の価
値が 6 ペンスで,最後の労働によって新しくつけ加えられる価値が 3 ペンス
ヒノレファーディングの「資本輸出論
J 1 7 5
である。生産力が2
倍になっても1
労働日は相変わらずただ6シリングと
いう新価値をつくりだすだけであるが,この新価値は今度は2
倍の生産物に 割り当てられるo
したがって,各1
個の生産物には,この総価値の1 2
分のl
ではなく24
分のl
しか6
ペンスではなく3
ペンスしか割り当たらない。ま たは,同じことだが,生産手段が生産物に転化するときに,生産物l
佃につ き,今度は以前のようにまる1
労働時間ではなくたった半労働時間が生産手 段につけ加えられるだけである。この商品の個別的価値は,いまではその社 会的価値よりも低い。すなわち,この商品には,社会的平均条件のもとで生 産される同種商品の大群に比べて,より少ない労働時間しかかからない。1
個は平均して1シリングであり,言い換えれば 2時間の社会的労倒を表わ
している。変化した生産様式では
1
個は9
ペンスにしかならなし」言い投 えれば1
労働時間半しか含んでいない。しかし,商品の現実の価値は,そ の個別的価値ではなく,その社会的価値であるO すなわち,乙の現実の価値 は,何々の場合にその商品に生産者が実際に費やす労働時間によって計られ るのではなく,その商品の生産に社会的に必要な労働時間によって計られる のである。だから,新しい方法を用いる資本家が自分の商品を1
シリングと いうその社会的価値で売れば,彼はそれをその個別的価値よりも3ペンス日
く売ることになり,したがって
3
ペンスの特別剰余価値を実現するのであ る口しかし,他方,1 2
時間のl
労働日は,いまでは彼にとって以前のように1 2
個ではなく24
個の商品に表わされているD だから1
労働日の生産物を売 るためには,彼は2
倍の完れ行きまたは2
倍の大きさの市場を必要とするOほかの事情に変わりがなければ,彼の商品が市:lEiのより広い範囲を占めるに は,その価格を引き下げるよりほかはない。そこで,彼は自分の商品を,そ の個別的価値よりも布く,しかしその社会的価値よりも安く,たとえば
1
佃1 0
ペンスで完るであろうO それでもまだ彼は各l
佃から1
ペンスずつの特別 別余価値を取り出す。彼にとってこのような刺余価値の治大が生ずるのは,彼の商品が必要生活手段の範囲にはいるかどうかには,したがってまた労働 力の一般的な価値に規定的にはいるかどうかには,かかわりがないO だか ら,このあとのほうの ~Jr仙は別として,どの個々の資本家にとっても労仰の
生産力を高くする乙とによって商品を安くしようとするという動機はあるの である
o
とはいえ,この場合にも剰余価値の生産の増大は必要労働時間の短縮とそ れに対応する剰余労働の延長とから生ずるのであるO 必要労働時間を
1 0
時 間,すなわち労働力の日価値を5シリングとし,剰余労働を2時間,したが って1
日に生産される剰余価値を1
シリングとしようO ところで,われわれ の資本家は今では2 4
個を生産し,それを1
佃10
ペンスで,すなわち合計20シ リングで売るO 生産手段の価値は1 2
シリングに等しいのだから,1 4
合個の商 品はただ前貸しした不変資本を:fJ1j以するだけであるo 1 2
時間のl
労働日は残 りの9号個で表わされる。労働力の価格は5シリングだから 6佃の生産物 には必要労働時間が表わされ3
号佃には剰余労働が表わされる。必要労働 と剰余労働との割合は,社会的平均条件のもとでは5
対1
だったが,いまで は5
対3
にしかならない。同じ結果は,次のようにしても得られるo 1 2
時間 の1
労働日の生産物価値は20
シリングである。そのうちに1 2
シリングは ,1 . こ
だ再現するだけの生産手段の価値に相当するD そこで
8シリングが 1
労 働日を表わす価値の貨幣表現としておえるO この貨幣表現は,同じ程類の社会 的平均労働の貨幣表現よりも高く,この平均労働はその1 2
時間分が6
シリン グにしか表わされない。例外的に生産力の高い労働は,何釆かされた労働と して作用する。すなわち,同じ時間で同程の社会的平均労働よりも高い価値 をつくりだす。ところが,われわれの資本家は労働力の日価値としては相変 わらず5
シリングしか支払わない。したがって,労働者はこの価値の再生産 には今では以前のように1 0
時間ではなく?を時間しか必要としない。したが って,彼の剰余労働は2き時間増加し,彼の生産する剰余価値は 1
シリング から3
シリングに増加するO こうして,改良された生産様式を用いる資本家 は,他の同業資本家に比べてl
労働日中のより大きいl
部分を剰余労働とし て自分のものl
こするO 彼は,資本が相対的剰余価値の生産において全体とし て行なうことを,個別的に行なうのである。しかし,他方,新たな生産椋式 が一般化され,したがってまた,より安く生産される商品の個別的価値とそ の商品の社会的価値との差がなくなってしまえば,あの特別剰余価値もなくヒ
l
レファーディングの「資本輸出論J 1 7 7
なる。労働時間による価値規定の法則,それは,新たな方法を用いる資本家 には,自分の商品をその社会的価値よりも安く売らざるをえないという形で 感知されるようになるのであるが,乙の同じ法則が,競争の強制法則とし て,彼の競争相手たちを新たな生産様式の採用に追いやるのであるO こうし て,この全過程を経て最後に一般的剰余価値率が影響を受けるのは,生産力 の上昇が必要生活手段の生産部門をとらえたとき,つまり,必要生活手段の 範囲に属していて労働力の価値の要素をなしている諸商品を安くしたとき に,はじめて起きることである7) J
0このように,ある企業における新らしい生産方法の採用は当該企業に特別 剰余価値を保証するが,自由競争がおこなわれる場合,それば,競争の強制 による競争相手たちの新らたな生産様式の採用という経過を経て,除々に減 少
L
ていく傾向をもっO このような意味では,自由競争段階において取得す る特別剰余価値は,一時的・経過的なものである。しかし,独占資本主義段 階においては,事情は具る口独占資本主義段階を特徴づけるのは,なにより も少数の企業におけるいちぢるしい生産と資本の集中・集積であるO 従っ て,独占資本主義段階において,新らしい生産方法を開発し,それを生産lこ 導入しうるのは,まず笠宮な資本力をもち巨大な生産設備を具備した少数の 巨大独占企業であろう。他の中小企業は新らしい生産方法を開発し,それを 生産に導入しうるだけの能力をもたない。かくして,新らしい生産方法は少 数の独占企業によって独占され,競争は制限されることになろうD また,他 部門からの参入も一般につぎのような諸要因によって制限されることになろ う。( 1 )
その生産部門で標準規校の生産・販売を行なうために必要な資本呈が 尼大化していること,( 2 )
標準規校での参入によって生じる供給増加が当該部 門の市場全体に対してかなりの比m
を占め,したがって潜在的な参入者は参 入により価格・利潤率の大幅な低下を覧悟しなければならないこと,( 3 )
既存 企業が生産技術・原料資源・辺愉機関・販売組織などを独占しているため,あるいは広告・立伝によって顧客の選好を確保しているため,参入者はコス ト上できわめて不利であること,
( 4 )
既存企業が参入企業に対して,製品価格 の一時的な大![I日切下げなどの破壊的対抗手段をとる可能性・基盤のあること
8) 。
かくて
I
独占が成立すると,新しい生産方法にもとづく特別剰余価値 は固定せしめられる傾向があり,それによって特別剰余価値は独占的剰余価 値となる。相対的剰余価値の生産過程に見られる特別剰余価値の生産は,新 しい生産方法を一時的に独占することによって可能であったのであるが,独 占的剰余価値の生産はこの一時性を止揚し,特別剰余価値の生産を回定す る9) J
のであるOところで,上記マルクスの設例では, (注)
7
でみたように新らしい生産 方法の導入後,1 0
ペンスという新らしい社会的価値が成立し,新らしい生産 方法を採用した資本家には正の特別剰余価値が,そうではない資本家には負 の特別剰余価値が成立するということであった。しかし,独占が成立してい る状態の下では,必ずしもそうではない。カノレテノレ価格の基準となるのは,通常,カノレテノレ加盟企業のうち,生産賀がもっとも高い企業の価格となる傾 向があるから,その限界企業(旧来の生産方法を採用している企業)の価格 (構成)がたとえば,
1 2
ペンス(6+5+1)であるならば,爾余のカルテ
ノレ加盟企業(新しい生産方法を採用した企業)は,たとえその価格を1 0
ペス ンに引き下げることが可能であったとしても,生産量を制限することによっ て旧来の価格,すなわち1 2
ペンスでその生産物を販売するであろうO この場 合,新らしい生産方法を導入した爾余のカノレテノレ加盟企業の価格結成は1 2
ペ ンス=6+5+1
ではなく,12= 6 +2.5+3.5
であるO すなわち,新らしい 生産方法を導入した企業は生産貨を引きさげることによって,以前にくらべ て,商品l
個につき2 . 5
ペンスだけ余分の利潤(生産'iJlv
の低下分に相当す る)を,また3
ペンスの特別剰余価値(12=6 +2.5+3.5
と9= 6 +2.5+
0.5
とのm
の差)を取得するのであるo
((注)7を参照せよ)。ヒノレファ
ーデイングもこの点は認めて次のように述べているO「たとえば製鋼トラストがこうした改善技術を二・三の経営で使用し,そ この生産だけで需要全部を従来の価格でみたすことができて,他の諸経営を 停止することもまた,ありえようD そうすれば,価格は同じままで生産賀が へり,そして利潤が上がろうO 生産の拡張はおこらず,改善技術は労働者を
ヒノレファーディングの「資本輸出論」
179遊離させるが,かれらには就業のあてがなかろう。同様な結果は,カノレテノレ 組織においてもおこりえよう
O最大の諸工場が改善をおこない,したがって 生産を拡張する
Oこのことをカノレテノレ内部でやりうるために,それらの大工 場は小工場からその持ち分を買いとってこれを停止することにする。そうす れば,改善技術はもちいられて,集積をもたらすが,しかし生産の拡張はお
こらなし JO) 」 。
またもし,カルテノレ加盟企業がすべてアウトサイダーよりヨリ侵良な生産 設備をもち,従ってカルテノレ価格の基準となる限界企業がアウトサイダーで あるとするならば,ガノレテル加盟企業はそれぞ、れの生産設備の侵良皮に応じ てカノレテノレ利潤を享受することになるだろう o 白杉氏は次のように述べてい
る 。
「加盟諸企業のうち,その生産費がカルテノレ価格を決定するところの,最 悪の生産諸条件をもつものには,平均利潤が与えられるだけで,カルテノレ利 潤は与えられないであろうか。アウトサイダーがあって,その生産諸条件が ーそう劣悪であるかぎり,そうは考えられない。この程のアウトサイダーの 生産量が市坊を充足するのに必要であるかぎり, l r Jl見価格はこの程のアウト サイダーのーそう高い生産授によって決定されるであろうが,その j 見合
lこは 最劣悪の生産条件をもっカルテノレ加盟企業もまた一程の差額地代を享受する であろう
Dつまり劣悪な生産諸条件をもったアウトサイダーの存在するかぎ り,すべての加盟企業がカルテル利潤に均芯しうるのである
Oもちろん,そ のためにはカルテノレはその生産量を,アウトサイダーの生産量を加えても,
それが市 J s の需要を超過するとのないように,統制しなければならない。こ
のような生産統制のおこなわれるかぎり,カノレテノレはワウトサイダーをもつ
ことをかえって有利とするものであるが,それは上に述べたような理由によ
ってアウトサイダーの存在がすべてのカルテ j レ加盟企業にカノレテル利潤とい
う形における独占的来 J I 余価値を保証することになるからである o (さらにつ
け加えるならば, アウトサイダーは産業循環上におけるよ正気調整弁として
も,独占にとって主要である口このな味からしでも,独占にとって,アウト
サイダーを完全に抹殺することは利益ではない一一引用者)
0そしてカルテ
ノレとは,すぐれた生産諸条件を所有する諸企業の組織体であるかぎり,その ようにして,すべての加盟企業に独占的剰余価値を保証する傾向があるので ある
11)
0J
このように考えてくるならば,独占利潤の基本的部分,すなわちその根源を 他部門からの利潤収奪,または消資者からの所得収奪に求めるのがいかに皮 相的であるかは明らかであろうO いいかえるならば,独占体は等価交換を前 提としてさえも,たえざる技術更新とその独占(他企業とのたえざる技術ギ ャップ)によって,莫大な独占的超過利潤を恒久的に,しかも産業循環にか かわりなく取得することができるのである。先の例でいえば,カルテルは生産 性が向上した後も生産量を制限することによって,旧来の
1 2
ペンスで商品を 販売することによって,商品l
佃につき3
ペンスもの特別剰余価値を取得す ることができた。しかし,このことは何も不等価交換にもとづく独占的超過 利潤の取得を怠味するものではない。なぜなら,この場合には,1 2
ペンスを「社会的価値
J
(独占段階において,社会的価値という概念が存在するかど うかはわからないが,もしそれらしきものがあるとすれば)とみなしでもさ しっかえないからであるO すなわち,乙の場合には,同部門の非カノレテ)1/加 盟企業=アウトサイダーも,また他部門の諸企業もこのことによって,なんら影響を受けることはないのである
1 : : : )
。以上,みてきたように,独占的利潤は必ずしも収奪によらなくても発生す るが,もし独占が価格を引き上げることによって流通過程でも独占利潤を取 得するとすれば,それは二重の意味での独占利潤の取得であろうO しかし,
この場合でもやはりその基本的部分は,生産過程において生じる独占利潤な のである
13)
。ヒノレファーディングは資本輸出にふれた箇所で,