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資本金及 び資本準備金の捉え方 と会計処理

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資本金及 び資本準備金 の捉 え方 と会計処理

わが国の現行会計制度 において資本金及 び資本準備金 は,払込資本の区分 に振 り分 け られているとみ られ る.すなわち,企業会計基準第 1号 「自己株式及 び法 定準備金の取崩等 に関す る会計基準」 は,貸借対照表 の資本 の部 を,資本金,餐 本剰余金 ( 資本準備金およびその他資本剰余金), 利益剰余金 ( 利益準備金, 任 意積立金および当期未処分利益 (または当期未処理損失)) およびその他 の項 目 に区分 している ( 1 5 ‑1 8 項). この区分 は資本の部 につ いて 「 払込資本 と留保利益 に区分す る 」( 5 0 項) ない し 「 株主が拠 出 した部分 と利益 の留保 の部分 を分 ける 」

( 51 項) とい う考え方 を取 り入れた ものであ り, 資本金及 び資本準備金 は払込資 本の区分 に振 り分 け られていると解 され る ( 5 0 ‑5 3 項参照. また, 商法施行規則

8 8 ‑ 8 9 条, 「 財務諸表等 の用語, 様式及 び作成方法 に関す る規則 」5 9 ‑ 6 0 , 6 3 条, も参照).

しか し,資本金及 び資本準備金 については, それ らを,株主か ら 「 払 い込 まれ た金額」 ( 払込資本) ではな く, 資本充実の原則が関わ る局面では 「充実 され る べ き ( 払 い込 まれ るべ き) 金額」, 資本維持 の原則が関わ る局面では 「 維持 され るべ き金額」 と捉 えた うえでの会計処理が可能である。本稿 で は, この ことを明 らかにす る. 目次を示せば次の とお りである.

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(2)

資本金及 び資本準備金 の捉え方 と会計処理 (75)

1 「資本金及 び資本準備金」 と 「 払込 資本」 の定義および検討事項 の特定 日) 払込資本 の定義

( 2 ) 資本金及 び資本準 備金 の定義

( 3) 資本充実 の原則 と資本金及 び資本準備金 ( 4) 資本確定 の原則 と資本金及 び資本準 備金 ( 5) 資本維持 の原則 と資本金及 び資本準備金 ( 6) 資本不変 の原則 と資本金及 び資本準備金 ( 7〕 検討事項 の特定

2 資本充実局面 にお ける資本金及 び資本準備金の捉 え方 と会計処理 ( 1) 資本充実局面 にお ける会計処理 の例

( 2 ) 払 い込 まれ るべ き金額 と しての資本金及 び資本準備金

( 3) 払 い込 まれ るべ き金額 と払 い込 まれた金額 に違 いが生 ず る場合 ( 4 ) 資本金及 び資本準備金が払 い込 まれた金額 と見 なされ る事情

3 資本維持局面 にお ける資本金及 び資本準備金 の捉 え方 とその他資本剰余金 の

会計処理 I

( lJ マイナスのその他資本剰余金 をめ ぐる議論

( 2 ) その他資本剰余金 につ いての第 1の見解 ( 3) その他資本剰余金 につ いての第 2 の見解 ( 4) その他資本剰余金 につ いての第 3 の見解 4 結 び

1 「資本金及 び資本準 備金」 と 「 払込資本」 の定義 および検討事項 の特定

まず,本稿 で用 いる 「資本金及 び資本準備金」 と 「 払込資本」 の語 の意味を, 通説的な定義 を もとに確認す る. その際 , 順序 と しては払込資本 の定義 を確認 し てか ら資本金及 び資本準備金 の定義 を確認 す るとともに, わが国の現行会計制度 における資本 の部 の区分を意識 して,資本金及 び資本準 備金 を払込資本 と捉 え ら れ るか否かに も注 目す る. そ してその結果 をふ まえ

,

.本稿 の異体的な検討事項 を 特定 したい.

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(3)

(76) 一橋論叢 第1 31 巻 第 5 号 平成 1 6 年 ( 200 4 年) 5 月号

( 1 ) 払込資本 の定義

会計学 における用語であ る払込資本 ( pa i d‑i nc api t a l ) は, 株主 か ら払 い込 まれた金額 と言 い換 え ることがで きる1 ) . この言 い換 えは, 払込 資本が, 払込 み がなされたときに認識 され うるものであ り 2) , また, 払 い込 まれた金額 で測定 さ れ る ものであること 3) を端的 に表す。

なお, この言 い換 え は, と くに払込資本が増加 した場合を想起 させ るが,反対 に払込資本 の減少 は, 払戻 しがなされた ときに認識 され うるのであ り 4) , また, 払 い戻 された金額 で測定 され ることになる 5) .

( 2) 資本金及 び資本準備金 の定義

資本金及 び資本準備金 については,会社財産 を確保す るための基準 となる一定 の計算上 の金額 であ る, とい う定義がなされ ることが あ る6 ) . このよ うな定義か

らは,資本金及 び資本準備金 を払込 資本 と捉 え ることはむずか しい.

ところで,資本金及 び資本準備金 に係 る商法規定が前提 に して いるとみ られ る 諸原則, したが って, 資本金及 び資本準 備金 の定義 に具体 的 に関わ っているとみ

られ る諸原則 ( 資本充実 の原則,資本確定 の原則,資本維持 の原則 および資本不 変の原則) が, 商法学 において説 明 されている 7) . そ こで, これ らの諸原則 の内 容か ら,資本金及 び資本準備金のよ り異体的な定義 を探 ることに したい.

( 3) 資本充実 の原則 と資本金及 び資本準備金

まず, 資本充実 の原則 とは, 「会社 の設立お よび新株発行 に際 し, 出資 の確実 な履行 によ り, 約束 され た出資総額 に相 当す る資産が充実 され る 8 ) 」 ことを要求 す る原則であ るとされ る. ここでは,資本金及 び資本準備金 は,すで に払 い込 ま れた金額で はな く, 払込 みに先立 って生 ず る 「 約束 され た出資総額」, 言 い換え れば, 払 い込 まれ るべ き金額 あるいは充実 され るべ き金額 ( 以下, 「 払 い込 まれ

るべ き金額」 とい う表現 に統一す る) と して定義 されている 9).

それで も,払 い込 まれ るべ き金額がすべて払 い込 まれた とき,払込資本 は資本 金及 び資本準備金 と金額 的に一致す る. その ときには,資本金及 び資本準備金を

4 30

(4)

資本金及 び資本準備金の捉 え方 と会計処理

払込 資本 と見 なす ことはで きるであ ろ う.

(77)

( 4) 資本確定 の原則 と資本 金及 び資本準 備 金

資本 確定 の原 則 とは,現 行商法 の もとで は, 定款 に記載 す る会社 の設立 に際 し て発行 す る株式 の総数 ( 商 1 66 条 1項 6 号) が, すべて引 き受 け られ る ことを要 す るとい う原則 で あ る 1 0) .

この原則 は, 会社設立 の際 にか ぎってで はあ るが, 出資 の約束 を得 る段 階 にお いて, す なわ ち, 資本充実 の原則が問題 にな るよ りも前 の段階 にお いて, 引受株 式数 を確定 させ る とい うか た ちで払 い込 まれ るべ き金額 の決定 に関わ って い ると 理解 で きる.

( 5 ) 資本維持 の原則 と資本金及 び資本準備金

続 いて, と くに資本充実 の原 則が満 た され た後 で問題 にな るとい う 1 1 ) , 資本維 持 の原則 であ る. これ は,配 当 な ど株主 に対 す る会社財産 の払戻 しや役員賞与 の 支払 いによ って, 会社財 産 ( 純 資産 ) の金額 を, 資本 金及 び資本準 備金 (な らび に利益 準 備金)等 の 合計 額 未 満 にす る ことを許 さな い とい う原 則 で あ ると され る 1 2) . この原 則 にお いて は, 資本金及 び資本準 備金 (な らびに利益準備金) は維 持 され るべ き金額 と して定義 されて い る といえ る.

この よ うな, 本節 ( 2 ) で示 したの と同様 の定義 か らは,資本 金及 び資本準 備金 を 払込 資本 と して捉 え る ことはむず か しい 1 3) . っ ま り, どの よ うな金額 が維持 され るべ きか につ いての考 え方次第 で, 資本金及 び資本準 備金 と払込資本 との結 びっ 垂は変 わ りうるで あ ろ う.

実 際,留 保利益 の区分 にお け る利益準 備金,任意積立 金 お よび当期未処分利益 杏, 資本金 に組 み入 れ る ことが認 め られて いる ( 商 2 9 3 条 ノ 2 , 2 93 条 ノ 3) . ま た,払込 資本 の区分 にお けるその他資本剰余金 は, 資本金及 び資本準 備金 す なわ ち推持 され るべ き金額 とは異 な る.

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(78) 一橋論叢 第1 31 巻 第 5 号 平成1 6 年 ( 2 0 0 4 年) 5 月号

〔 6 ) 資本不変 の原則 と資本金及 び資本準備金

最後 に,資本不変 の原則であ る.資本維持 の原則が維持 され るべ き金額 に相 当 す る会社財産の維持 を要求 して も, い ったん確定 した維持 され るべ き金額 を会社 が 自由に減少す ることを認 めたのでは,資本維持の原 則 の意 味がな くな って しま ラ. そ こで, そのよ うな ことは認 めない とす る ( 増加 す ることは認 め る) のが, 資本不変の原則 である 1 4).

このよ うな資本不変 の原則 に とって,資本金及 び資本準備金 の金額 はいわば所 与 であ る. しか し, この原則 は,資本金及 び資本準 備金 の減少 につ き特定 の手続 きない し条件 を課す るとい うかたちで ( 商 3 7 5 条 ,3 7 6 条 ,2 8 9 条), と くにそれ ら の減少の認識時点 に関わ っている.

( ' 7) 検討事項 の特定

以上 の ことをふ まえて本稿 の検討事項 を特定すれば,次 のよ うになる。

次 の第 2 節 において は, 資本充実 の原則が関わ る代表的な局面 ( 募集設立 1 5 ) )

につ いての会計処理 で, しか も資本金及 び資本準備金 が払 い込 まれ るべ き金額 を 基礎 と して いることがわか るよ うな ものを取 り上 げる.他方, そのよ うな会計処 理 に対 して,資本金及 び資本準備金 を払込資本 と見 な して いるととれ る会計処理 が広 く知 られている. そ こで,第 2 節で は, そのよ うな会計処理が受 け入れ られ ている事情 につ いて も考え る.

なお,資本確定 の原則 について は,資本充実の原 則 に先立 っ原則 と して捉 え る ことと し,第 2 節 で は改 めて取 り上 げない.

第、 3節で は,資本充実 の原則が満 た された後 に資本維持 の原則 および資本不変 の原則が問題 となる局面 につ いての議論 と して, マイナスのその他 資本剰余金 を め ぐる議論 ( 企業会計基準第 1 号 6 8 ‑ 6 9 項参照) を取 り上 げ る. そ して, この議 論 においてみ られ るいずれの見解 によ って も,資本金及 び資本準備金 は払込 資本

と して会計処理 されない と解 され る, とい うことを明 らか にす る.

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(6)

資本 金及 び資本準 備金 の捉 え方 と会計処理 (7 9)

2 資本充実局面 にお け る資本 金及 び資本準備 金 の捉 え方 と会計処理

( 1 ) 資本充 実局面 にお け る会計処理 の例

資本 充実 の原 則が 関わ る株式会 社 の募集 設立 に際 して行 われ るとされ る会計処 理 の例 を示 す ために, 次 の よ うな場 合を想定 す る.

会社 が発行 しうる総株式数80, 000 株,設立 に際 して発行す る株式数20, 000 株, 発起 人 が決定 した株式 の発 行 価額 は 1株 につ き2, 500 円,設 立 に際 して発行 す る 株式 の うち発起 人 が 1 0, 000 株 を 1株 につ き 2, 5 00 円で引 き受 け る ことと し,残 り 1 0, 000 株 につ いての引受 けは公募 す る,公 募 に際 しての株式 申込証拠金 は 1 株 に つ き2, 500 円 とす る.発起 人 によ り決定 され た株式 の発行 価 額 の うち 1 株 につ き 上250 円が資本金 に組 み入 れ られ,残 りの 1, 250 円 は資本準備 金 に組 み 入れ られ る こととす る ( 商284 条 ノ 2 第 2 項, 288 条 ノ 2 第 1項 1号), また, 会社設立 に要 す る諸 費用 ( 創立費) と して800, 0 00 円 ( 定款 に記載 され た設立 費用 ( 蘭 1 68 条 1 項 8 号) の額 の範 囲 内 とす る) が発起人 に よ り立替払 い され る.

この よ うな場 合, 以下 に示 す よ うな手続 きに応 じた会計処理 が な され ると説 か れ る 1 6)

.

t A ) 公募株式 1 0, 0 0 0 株 につ いて, 株 式 申込人 か ら株式 申込証拠 金 ( 1 棟 につ き 2, 5 0 0 円) が取扱銀行 に払 い込 まれ た旨, 当該銀 行 よ り通知 を受 けた.

( 借)別段預 金 2 5, 0 0 0, 0 0 0 ( 磨) 株式 申込証拠 金 2 5, 0 0 0, 0 0 0 ( BJ 公募 によ る株 式 申込人, および, 発起 人 に株式 の割 当 てが な され, 株式 引受人 が確 定 した1 7 ) .

( 借)株式 引受 5 0, 0 0 0, 0 0 1 〕 ( 質) 引受 済 資本 金 2 5, 0 0 0, 0 0 0 引受済株式払込 剰余金 2 5, 0 0 0, 0 0 0 ( C) 株式 引受 人 によ る, 株式 の発行価額 (1株 につ き 2, 5 0 0 円) の払込 みが完了 し, 取扱 銀行 よ りその 旨の通 知 を受 けた,

( 懲)別段預 金 2 5, 0 0 0, 0 0 0 ( 貸) 株式 引受 5 0, 0 0 0, 0 0 0 株式 申込証拠金 2 5. 0 0 0, 0 0 0

L D 〕 会社設立 に要 す る諸費 用 と して ,8 0 0, 0 0 0 円が発起人 によ り立 替払 い され た.

( 倍)創立 費 8 0 0, 0 0 0 ( 栄) 未払創立費 8 0 0. 0 0 0

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(7)

(80) 一橋論叢 第1 31 巻 第 5 号 平成1 6 年 ( 2 00 4 年) 5 月号

( E) 創立総会が終結, それを受 けて設立登記が完了,発起人 によ る会社への事務引継 の ため, これまでの取引記録の締 切りを行 う.

( 億)引受済資本金 25, 0 00, 000 ( 栄) 別段預金 50, 000, 000 引受済株式払込剰余金 2 5, 0 00, 000 創立費 800, 0 00 未払創立費 80 0, 000

以上 が,会社成立前 の会計処理 とされ る.

( ど ) 会社が成立 すれば,創立総会 において選任 されて いた取締役が,発起人が作成 した 帳簿を もとに,成立時の会社の会計処理 と して次の開始記入 を行 う.

( 倍)当座預金 5 0, 000, 000 ( 貸) 資本金 2 5, 000, 00 0 創立費 800, 000 株式払込剰余金 25, 000, 000 未払創立費 800, 000 ( ○ 発起人 によ り立て替え られていた創立費を会社成立時 に小切手で支払 う。

( 借)未払創立費 8 00, 000 ( 貸) 当座預金 800, 0 00

㈹ 株式払込剰余金を資本準備金 に組み入れ る.

( 億)株式払込剰余金 ・ 2 5, 000, 0 00 ( 貸) 資本準備金 2 5, 000, 0 00

( F) か ら任 掴 i ,会社成立 時の会計処理 とされ る.

( 2) 払 い込 まれ るべ き金額 と しての資本金及 び資本準備金

( 1 ) で示 した会計処理 は,資本金及 び資本準備金 は払 い込 まれ た金額 とい うよ り ら,払 い込 まれ るべ き金額 であるとい う第 1節 ( 3 ) で確認 した定義 と整合 的であ る.

この ことを明 らか にす るため,上 の会計処理 を, さかのぼ るよ うに して検討す る.

資本準備金 に係 る仕訳鍋 は, 商法の規定, すなわ ち, 「 株式 ノ発行価額 中資本 二組入 レザル額」 ( 株式払込剰余金. 商 288 条 ノ 2 第 1項 1号) 「‑之 ヲ資本準備 金 トシテ積立 ツル コ トヲ要 ス」 ( 商 288 条 ノ 2 第 1項柱書) とい う規定 に忠 実 に 従 った ものであ ると解 され る 1 8) . この仕訳鍋 によれば,資本準備金 は, 仕訳 ( F) 貸 方 の株式払込剰余金が振 り替え られた ものであ る 1 9).

仕訳 ( F) 貸方 の資本金 および株式払込剰余金 は,仕訳( E) を通 じて,仕訳 ( B) 貸方 の

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(8)

資本金及 び資本準備金の捉 え方 と会計処理 (81)

引受済資本金 および引受済株式払込剰余金が振 り替 え られた もの とみ ることがで きる. それに対 して,会社成立 時の仕訳 f F) だけをみれば,資本金 および株式払込 剰余金 は払 い込 まれた金額 と して会計処理 されて いるよ うにみえ る.

しか し, と くに仕訳( E は ( F) の関係 に注 目すれば,会社成立 前の会計処理 は,会 社成立後の会計処理 へ と引 き継 がれ ることを前提 と してなされて いるとみ ること がで きる. つ ま り,仕訳仏) か ら ( E ほ での会計処理 と仕訳 ( F) か らの会計処理 の間に は,形式的 な区切 りはある ものの,実質的な内容 に連続性 がある。 そのよ うにみ れば,仕訳酢 貸方 の資本金および株式払込剰余金 は,仕訳 ( B) 貸方の引受済資本金 および引受済株式払込剰余金が振 り替 え られた もの とみ ることがで きる 2 0) .

その引受済資本金および引受済株式払込剰余金が認識 され る時点,すなわち, 仕訳 ( B) が なされる時点 とい うのは,発行 され る株式 の割 当てがな され,株式 引受 人が確定 した時点 であ る。 その ことを示す よ うに,仕訳 ( B) 借方 には,株式引受 と

い う勘定科 目が示 され る. これは,払 い込 まれ るべ き金額 に係 る,株式引受人 に 対 しての債権 ( 払込請求権) を表わす と考 え られ る 2 1 ) . それに対置 され るのが, 引受済資本金および引受済株式払込剰余金であ り, これ らは払 い込 まれ るべ き金 額 を表わ している 2 2) . したが って, このよ うな引受済資本金 および引受済株式払 込剰余金が振 り替 え られ た もので あ る資本金 お よび株式払込剰余金 ( 資本準備 金) は,払 い込 まれ るべ き金額を基礎 に していると解す ることがで きる 23).

なお,資本金及 び資本準備金が払 い込 まれ るべ き金額 を基礎 に して いることが わか るよ うな会計処理 は,募集設立 の場合 のみな らず,発起設立 および通常 の新 株発行 の場合 について も示 されている 24).

上 の募集設立 の際の会計処理 を もとに して い うと,発起設立 の場合 には, すべ ての株式 が発起人 によ り引 き受 け られて,株式 申込証拠金 に関す る会計処理 ( 仕 釈( A) , および,仕訳( C) の一部)がな くなる. それ以外 は,上の募集設立 の際に行 われ る会計処理 と同 じであ る.

また,通常 の新株発行の場合 には,仕訳( A) か ら t E) を会社成立後 の会計処理 と考 えた うえで (したが って発起人 の株式引受や立替払 いは考えない), 仕訳 ( D) の創 立費および未払創立費 をたとえば新株発行費および未払新株発行費 と して しか も

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(8 2) 一橋論叢 1 3 1 5 号 平成 1 6 ( 2 0 0 4 年) 5 月号

それ らにつ いて の仕訳 ( E) か ら( F) にお け る振替 え を な い もの とす る. さ らに, それ ら以外 の仕訳( a) か ら( F Hこお ける振替 えを払込期 日の翌 日にな され る もの とす れ ば, 上 の会計処 理 は通 常 の新株発行 の際 に行 われ る もの とな る.

( 3) 払 い込 まれ るべ き金額 と払 い込 まれ た金額 に違 いが生 ず る場合

資本金及 び資本準備金 が払 い込 まれ るべ き金額 で あ る ことは,払 い込 まれ るべ き金額 と払 い込 まれ た金額 に違 いが生 ず る場合 をみれ ば, よ り明 らか にな る. そ のために必要 な商法規定 の内容 を以下 に示 す。

会社 の設立 に際 して発行 す る株式 の うち, 会社 の成立 後 ( 設立登記後), なお 引受 けの ない株式 また は申込 みが取 り消 され た株式 が あ る ときは, 発起 人 お よび 会社成立 当時 の取締 役 は,共 同 して これ を引 き受 けた もの と見 な され ( 引受担 保 責任. 商 1 92 条 1 項), 連帯 して払込 み をなす義務 を負 う ( 商 2 0 3 条 1 項).

また, 会社 の成立 後,株式 の発行価額 25) の全額 の払込 み ( 商 1 7 0 条 1 項 ,1 7 7 条 1項), また は, 現物 出資 の給 付 ( 商 1 72 条 , 1 7 7 条 3 項) が未済 で あ る株式 が あ るときは, 発起人 お よび会社成立 当時 の取締 役 は,連帯 して その払込 み をな し, また は,給 付 未済 な財産 の価額 の支払 いをす る義務 を負 う ( 払 込 ( 給 付)担 保責 任. 商 1 9 2 条 2 項).

現物 出資 お よび財産 引受 け ( 商 1 6 8 条 1項 5 号 6 号) の 目的財産 の会社成立 当 時 にお け る実価 が定款 に定 めた価格 に著 しく不足 す る ときは, 発起 人 お よび会社 成立 当時 の取締役 は, 会社 に対 し,連帯 して その不足額 を支払 う義務 を負 う ( 財 産価格 填補責 任.商 1 9 2 条 ノ 2 第 1項 ).

新株発 行 に際 して は,新株発行 によ る資本 ( 金) の額 の変更登記 が あ ったに も かか わ らず, なお引受 けの な い株式 また は申込 みが取 り消 され た株式 が あ る とき は,取締役 お よびその新 株発行 の手続 きまたはその変更 の登 記 の手続 きを した執 行役 は, 共 同 して これ を引 き受 けた もの と見 な され ( 引受 担保責 任. 商 2 8 0 条 ノ 1 3 第 1 項, 商法特 例法 21 条 の 3 6 第 2 項), 連帯 して払込 みを なす義務 を負 う ( 商 2 0 3 条 1項 ). また,取締役 お よび執 行役 は, 現物 出資 が な され る場 合 に財産 価格 填補責任 を負 うことが あ る ( 商 2 8 0 条 ノ 1 3 ノ 2 , 商 法特 例法 21 条 の 2 4) .

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資本金及 び資本準備金の捉え方 と会計処理 (8 3)

以上 のよ うな資本充実責任が生 じたとき,法的 な効力 を生 じている資本金及 び 資本準 備金の金額 は,払 い込 まれた金額 を基礎 に しないことが明 らかである. た とえば, 本節( 1 ) で示 した例の条件 の もとで, 会社成立 時において発起人に 500 万 円の引受担保責 任が生 じた とき , 仕訳 t F) の時点 ( 設立登記時点) では次のよ うな 仕訳 が な され ることになろ う.

( 借)当座預金 45, 000, 000 ( 貸) 資本金 25, 0 00, 000 株式引受 5, 000, 0 00 株式払込剰余金 2 5, 000, 0 00 創立 費 80 0, 00 0 未払創立 費 8 00, 0 00

この貸方 の資本金 および株式払込剰余金 ( 資本準備金) は払 い込 まれた金額 を 表 してお らず, したが って この仕訳 は,資本金及 び資本準備金を払 い込 まれた金 額 と捉 えたのでは行 いえない会計処理 である.

以上 のよ うに,法的な効力が生 じている資本金及 び資本準備金 の背後 に,払 い 込 まれた金額 ではな く,払 い込 まれ るべ き金額が あることを保証す る商法規定が 用意 されている。 それゆえに, 資本金及 び資本準 備金 は,払 い込 まれ るべ き金額 を基礎 に しているといえ る.

( 4) 資本金及 び資本準備金が払 い込 まれ た金額 と見 なされ る事情

しか し,資本金及 び資本準 備金 ( 払 い込 まれ るべ き金額) につ いては, それ ら を払込資本 ( 払 い込 まれた金額) と見 な しているととれ る会計処理が広 く受 け入 れ られて いる. それ は具体的 には, ( 借方) 当座預金 ( 貸方) 資本金/資本準備 金, とい うよ うな会計処理 であ り, また, もし株式 申込証拠金が払 い込 まれ ると すれば, それ (ただ し払込期 日には株式払込金) を資本金及 び資本準備金 に振 り 替え る会計処理 であ る. このよ うな会計処理が受 け入れ られている理 由は,以下 の ことにあるとみ られ る.

わが国の現行商法 は,資本金及 び資本準備金の法的な効力が認 め られ る時点で, すで に資本充実 の原則が満 た されているよ うにす る仕組 み,言 い換 えれば,資本

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(8 4) 一橋論叢 第 1 3 1 巻 第 5 号 平成 1 6 年 ( 2 0 0 4 年) 5 月号

金及 び資本準備金 と払込資本 を測定面 で一致 させ るよ うにす る仕組 みを用意 して いるとみ ることが で きる.

た とえば,株 式 の発行価 額 の全額払 込 み ・現 物 出資 の 目的物 の全部 給 付 ( 商

1 7 0 条 1項 ,1 7 2 条本文 ,1 7 7 条 1項 3 項 ,2 8 0 条 ノ 7,2 8 0 条 ノ 1 4 第 1項),払込取 扱機 関への払込 み ( 商 1 7 0 条 2 項, 1 7 7 条 2 項 ,2 8 0 条 ノ 1 4 第 1項),払込取扱機 関 の払込金保管証 明 とそれ に伴 う責任 ( 商 1 8 9 条 1項 2 項, 2 8 0 条 ノ 1 4 第 1 項), 設 立登記 申請 時 の払込金保管証明書 の添付義務 ( 商業登記法 8 0 条 1 0 号), (と くに現 物 出資 につ いて)検査役 による調査 および弁護士等 によ る証 明 ( 商 1 7 3 条 ,1 8 1 条,

2 8 0 条 ノ 8 ),取締役 および監査役 によ る設立手続 の調査 ( 蘭1 7 3 条 ノ 2,1 8 4 条) 等 の規定 が, そのよ うな仕組 みを構成 して いる.

これ らの規定 によ って,資本金及 び資本準備金 の法 的効力発生前 に資本充実 の 原則が満 たされ るよ うに促 され, したが って,資本金及 び資本準備金 の法 的効力 発生後 に本節( 3) で示 した資本充実 に係 る責任 が生 じな いよ うに促 されて い るので あ る ( 会社設立 時 にお ける資本充実 の欠紋 は,設立無効原 因 にな る).

さ らに,株式 引受 の募集 に際 して,株式 申込人 に株式 申込証拠金 を払 い込 ませ るとい う実務慣 行 も,資本金及 び資本準 備金が,法的効力 を生 ず る時点 にお いて 払込資本 と金額 的 に一致す るとい う状況 を もた らす の に一役買 ってい る.

このよ うな商法規定 および実務慣行 に支 え られて, 資本充実局面 にお ける資本 金及 び資本準備金 は, すで に述べ たよ うに認識過程 をみればそ うで な くて も, そ の法的効力発生 時点 ( 会社設立 に際 して は設立 登記 時,通常 の新株発行 に際 して は払込期 日の翌 日) において,測定面 で払込資本 と通常一致 す るよ うで あ る.

それゆえ, 資本金及 び資本準 備金 を払込資本 と見 な して会計処理 を行 って もさ ほど問題 はな く, あえて払 い込 まれ るべ き金額 と払 い込 まれ た金癖 を区別 して, それ らの認識過程 にお ける違 いを強調 す る必要 はない と思 われ るか もしれ ない 2 6 )

しか し,資本金及 び資本準備金 を払込 資本 と見 なす会計処理 だ けが念頭 に置か れ る場合 と , それ らを厳密 に払 い込 まれ るべ き金額 と捉 え る会計処理 も知 られて いる場合 とでは, 資本充実局面 に続 く資本維持局面 にお ける資本金及 び資本準備 金 の捉 え方 がず いぶ ん変わ って くるので はないか, と私 は考 え る,

4 3 8

(12)

資本金及 び資本準備金の捉え方 と会計処理 (85)

資本 金及 び資本準 備金 を定義 どお りに捉 えれ ば, それ らは資本充実局面 にお い て は払 い込 まれ るべ き金額 で あ るが,続 く資本維持 局面 にお いて は維持 され るべ き金額 とな る.

他方, 資本金 及 び資本準 備金 を払込 資本 と見 なせ ば, 資本充実 局面 に続 く資本 維持局面 にお いて も, それ らを払込 資本 と見 な した会計処理 が説 か れ ることにな る とみ られ る. しか し, 資本金 及 び資本準 備金 を払込 資本 と見 なす ことには,餐 本 充実局面 で は さほ ど問題 が ないに して も, 資本維持 局面 ( 具体 的 には次節 で取 り上 げ るマイナ スの その他 資本剰余金 が問題 とな りうる局面 ) で は限界が あ る と 思 われ る.

3 資本維持局面 にお ける資本 金及 び資本準 備金 の捉 え方 と その他資本剰余金 の会計処理

( 1) マ イナ スのその他 資本剰余 金 をめ ぐる議論

企業会計基準 第 1号 は , 「自己株式処分差損 は, その他資本剰余金 か ら減額 し, 減額 しきれ ない場合 は,利益剰余金 の うち当期未処分利 益 か ら減額 ( 又 は当期未 処理損失 を増額) す る 」( 2 2 項) こと と して い る.

この よ うな規 定 は, 企業会計基準公 開草 案第 1号 「自己株式 及 び法定準 備金 の 取崩等 に関 す る会計基準 ( 莱) 」 ( 企業 会計基準委員 会,平成 1 3 年 1 2 月 21 日) にお いてすで にみ られ た ( 公 開草案 2 2 項)。 公開草案 に対 す るコメ ン トの中に は, 当 該規定 は 「資本剰余 金 と利益剰 余金 の区別 の観点 か ら好 ま しくな く,特 に資本剰 余金全 体の金額 が正 の場合 は, その他資本 剰余金 の マ イナス残高 とすべ きであ る

との意 見 が あ った」 ( 企 業 会計基準第 1号 69 項) とい う 27).

この よ うな意 見 に対 して企業 会計基準 第 1 号 は , 「その他資本剰余 金 の マイ ナ ス残高 を認 めた場合, マイナ ス した金額 だ け法的 に維持 すべ き資本金及 び資本準 備金 の合計 額 に穀損 を生 じさせ る ことにな り, 商 法の資本制度 の趣 旨を損 な うこ

とにな りかね ない. よ って, その他 資本剰余金 が マ イナ ス残高 にな る場 合 は,刺 益剰余金 で補 てんす るはか ない と考 え られ, それ は資本剰余 金 と利益剰余金 の混 同 に はあた らない と判 断 され る 」 ( 69 項) と応 じた. また , 「資本剰余金 は株主 か らの払込 資本 の うち資本金 に含 まれ ない もの を表 す ため,本来 マイナ スの資本剰

4 39

(13)

(8 6) 一橋論叢 第 1 3 1 巻 第 5 号 平成 1 6 年 ( 2 0 0 4 年) 5 月号 余金 とい う概念 は想定 されない 」( 6 8 項) ともしている,

このよ うなマイナスのその他資本剰余金 をめ ぐる議論 にお いて は,資本金及 び 資本準備金 な らびにその他資本剰余金 を一括 りに払込資本 の区分 において取 り扱 お うとす る見解, また, その他資本剰余金 をひ とっの払込 資本 の区分 と考 え る見 鰭, さらに,資本金及 び資本準備金を維持 され るべ き金額 と捉 え, その他資本剰

■●

余金 を払込資本 とい うよ りも分配可能 限度額 と しての永森 姦 2 8) と捉え る見解 が あ るとみ られ る.

これ らの 3つの見解 を同時 に検討 す るためには,維持 され るべ き金額 と定義 さ れ る資本金及 び資本準備金 を払込資本 と見 なす こともで きるよ うな場合 を想定 す るのが よい. そ こで, それ ら 3 つの見解 につ いて述べ る前 に,前節 の資本充実局 面 にお ける会計処理結果 を起点 に して, マイナスのその他資本剰余金が問題 とな

りうる場合 を想定 してお こう.

前節 の例 にお ける会社が, 当期未処分利益 5 0 0 万 円があ る状況 で, 資本金及 び 資本準 備金 を各 々 5 00 万 円ずっ, したが って合計で 1, 0 0 0 万 円減少 させ, その うち 9 5 0 万 円を株主 に払 い戻 す ことを決議 した こととす る ( 商 375 条 ,2 8 9 条 2 項). こ の資本金及 び資本準 備金 の減少 に要 す る手続終了後,資本金及 び資本準備金減少〉

差益 5 0 万 円が生 じることになる.

さ らにその後, 1 5 0 万 円で 自己株式 を取得 ( 取得限度額 は, 資本金及 び資本準 備金減少差益 5 0 万 円 と,当期未処分利益 5 0 0 万 円の合計 5 5 0 万 円 とす る.商 21 0 条) , 5 0 万 円で当該 自己株式 のすべてを処分 ( 商 21 1 条) とい う取 引だけが なされた こ

ととす る. ただ し, 自己株式 の取 引につ いて は,発生 した 自己株式処分差損 の取 扱 いに関す る内容 を除 き,企業会計基準第 1号 に従 って会計処理がな され た こと

にす る.

そ うす ると, その他資本剰余金 ( 資本金及 び資本準備金減少差益) 5 0 万 円を超 え る自己株式処分差損 1 0 0 万 円が発生 したが,資本金及 び資本準 備金が各 々 2, 0 0 0 万 円ずつあるとい う局面 となる. なお, 当期未処分利益 は 5 0 0 万 円のままであ る.

このよ うな場合 に, マイナスのその他資本剰余金が問題 とな りうる 29).

4 40

(14)

資本金及 び資本準備金の捉え方 と会計処理 (87)

( 2) その他資本剰余金 につ いての第 1の見解

第‑ に,資本金及 び資本準備金 を払込 資本 と見 な し, それ らとその他資本剰余 金 を一括 りに払込資本 の区分 において取 り扱 お うとす る見解 であ る. この見解 は, 資本充実局面 で資本金及 び資本準 備金 を払込資本 と見 な した結果,資本維持局面 でそれ らを払込資本 の区分 において取 り扱 お うとす る見解 であ るとい うことがで き, またそれ は, 企業会計基準第 1号 に含 まれてい るもの と解 され る ( 5 0 ‑5 3 項 参照).

この見解 を とる場 合, マイナスのその他 資本剰余金 とい う概念 を受 け入れて, 資本剰余金全体 が なお正の値 を とるか ぎ り, とい うよ りもこのよ うに考えて くる のな ら資本金お よび資本剰余金 の全体が なお正 の値 を とるか ぎり,全体 と しての 払込資本 をわか るよ うにす るのが適切で あ るとい う見方 もで きよ う 30 ).

しか し,企業会計基準第 1号 は,資本金及 び資本準 備金 を払込資本 の区分 に振 り分 けて いるに もかかわ らず, マイナスのその他資本剰余金 とい う概念 を受 け入 れ なか った. その理 由は, 「その他資本剰余金 のマイナ ス残高 を認 めた場合, マ イナス した金額 だ け法的 に維持 すべ き資本金及 び資本準備金 の合計額 に穀損 を生

じさせ ることにな り, 商法 の資本制度 の趣 旨を損 な うことにな りかね ない 」 ( 6 9 項) とい うことにあ る.

貸借対照表が複式簿記 によ る会計帳簿 に もとづ いて作成 され ると した ら ( 商 3 3

条 2 項 ) 3 1 ) , 資本金及 び資本準備金項 目 も, その他資本 剰 余金項 目 も, 勘定組織 に組 み込 まれ ることにな る. それな らば, 資本金及 び資本準備金 とその他資本剰 余金 をま とめて払込資本 の区分 において取 り扱 お うとす るか ぎ り, マイナスのそ の他資本剰余金 を表 す勘定 ( 項 目) は資本 金及 び資本準備金 を表す勘定 ( 項 目) に対 す る控 除的評価勘定 ( 控 除項 目) と して位置づ けざるをえない. そ うなると, 会計 的 に,資本金及 び資本準 備金 の合計額 は, マイナスのその他 資本剰余金 の金 額分 だ け減少 す ることにな る.

企業会計基準第 1号 は, マイナスのその他資本剰余金がそのよ うに資本金及 び 資本準備金 の合計額 を穀損 し,商法 の資本制度 の趣 旨を損 なわせて しま う ( 資本 不変 の原則 に反 す る) ことを避 けるため, マイナスのその他 資本剰余金 を認 めな

4 4 1

(15)

(8 8) 一橋論叢 第 1 31 巻 第 5 号 平成 1 6 年 ( 2004 年) 5 月号

か った とみ られ る 32 ).

以上 のよ うに,企業会計基準第 1号 は,資本金及 び資本準備金 を払込資本の区 分 に振 り分 けることによ って,払込 資本 と留保利益 の区分 の観点 か らは受 け入れ

られそ うなマイナスのその他資本剰余金 を,かえ って否定す ることにな っている.

同基準 は,資本金及 び資本準備金 につ いての維持 され るべ き金額 と しての定義 を 無視 してお らず, それゆえに,資本金及 び資本準備金 をその他資本剰余金 と同様 の払込資本 と して処理 しきれないのだ と解 され る.

( 3) その他資本剰余金 についての第 2 の見解

●●

第二 に, その他資本剰余金 をひとつの払込資本の区分 と考 え る見解 である.

上 の第 1の見解 は, マイナスのその他資本剰余金 とい う概念 を想定 した うえで, それを認 めるか否かを問題 に していた といえ る. ところで,企業会計基準第 1 号 には , 「 資本剰余金 は株主 か らの払込資本 の うち資本金 に含 まれ ない ものを表 す

●■●●●●●●■●●●■●●●■●●●■●● ●

ため, 本来 マイナスの資本剰余金 とい う概念 は想定 されない」 ( 6 8 項. 傍点‑石 川) とい う文言 もあ る. このよ うに, そ もそ もマイナスの (その他)資本剰余金 は想定 されないとす る見解が,第 2 の見解 であ る.

なお,本節( 1 ) で紹介 したよ うに, マイナス残高 を認 め るか否かが実際に問題 と されたのは資本剰余金 の うちの, その他資本剰余金 につ いてであ る. そ こで,上 に引用 した第68 項 の文言 に忠実 で はないが, ここで第 2 の見解 は, マイナ スの ( 資本準備金 も含む) 資本剰余金 で はな く, マイナスのその他資本剰余金を想定 で きない見解 と してお きたい.

マイナスのその他資本剰余金が想定 され るか否か につ いての見解 の相違 は,第 1の見解が資本金及 び資本準備金 とその他資本剰余金 を合わせて全体 と しての払 込資本 の区分 を考えているのに対 して,第 2 の見解 はその他 資本剰余金 を資本金 及 び資本準備金 とは区別 されたひ とっの払込資本 の区分 と して考 えていることに 起因 していると解 され る.第 2 の見解 のよ うにその他資本剰余金 をひ とつの払込 資本 の区分 であ ると考 えれば, ( 払込資本 す なわ ち払 い込 まれ た金額 は非 負の概 念であると解 され るので) その区分 内にか ぎっての ことと してマイナスのその他

4 4 2

(16)

資本金及 び資本準 備金の捉え方 と会計処理 (89)

資本剰余金 を想定 で きない ことにな ると考 え られ る.

この第 2 の見解 の特徴 を,第 1 の見解 との対比 を通 じて まとめてお こう.第 1

の見解 は,資本金及 び資本準備金 な らびにその他 資本剰余金 を一括 りに して払込 資本 と して取 り扱 うことに (その成 否 は と もか く)積 極的であ る.他方,第 2 の 見解 は, そのよ うな取扱 いに消極 的であ り, その ことはその他資本剰余金 を資本 金及 び資本準備金 とは区別 され るひ とつの払込 資本 の区分 と して取 り扱 ってい る こと (それ ゆえ にマイナ スのその他資本剰余 金 を想定 で きない こと) に表 れて い る.裏 を返 せば,第 2 の見解 は,資本金及 び資本準備金 を定義 どお りに碓持 され るべ き金額 と して捉 え る ことに積極 的であ ると解 す る ことがで きよ う.

( 4) その他 資本剰 余金 についての第 3 の見解

第三 に, 資本金及 び資本準備金 を維持 され るべ き金額 と捉 えて, その他資本剰

● ●

余 金 を払込 資本 とい うよ りも分配可能 限度額 と して の剰 余金 と捉 え る見解 で あ る 3 3) .

剰余金 につ いて は, その マイナス残高 を考 え ることはで きるよ うに思 われ る.

かっての計算書類規 則にお いてみ られ た, いわゆ る欠損金 の概念 ( 旧3 4 条 2 項) が それ に当 た る.欠損金 は, いわばマイナスの剰余金 であ り,維持 され るべ き金 額 と しての資本金及 び資本準備金 (な らびに利益準 備金) とは異質 で あ る. それ ゆえ, た とえ欠損 金が生 じて も, それ と資本金及 び資本準 備金 (な らびに利益準 備 金) の相殺 関係 が問題 に され ることが なか った.

■■●

剰余 金 お よび欠損金 につ いて このよ うに考 え, その他 資本剰余金 を剰余金 と し て捉 え るな らば, そ の他 資本 剰 余 金 の マ イ ナ ス残 高 ( い わ ば その 他 資 本欠 損 金 3 4) ) を考 え る こと もで きるよ うに思 われ る.

この ことに関 して,商法学 にお いて は,欠損 ( 金) を填補 しなければ剰余金 を 計上 す る ことがで きない旨の規定 が ないので,剰余金 と欠損 ( 金) を同時 に存在

させ てお くことは可能 であ るとい う見解 があ る 3 5 ).

この見解 を敷宿 すれば, 剰 余金 を特定 の規準 を もって分類 し, 各 々の分類 につ いてプ ラス残高 か, マイナ ス残高 かを考 え ることは不可能 で はないよ うに思 われ

‑ t L?

(17)

(90) 一橋論叢 第1 31 巻 第 5 号 平成 1 6 年 ( 2 00 4 年) 5 月号

る. その規準 と して は, いわゆる資本取引によ って生 じた剰余金か, あるいは, いわゆる損益取引によって生 じた剰余金か とい う規準があ りえよ う 3 6) . 貸借対照 表が継続的 に行 われ る複式簿記 に もとづ く会計帳簿か ら作成 され る現行会計制度 の もとで は, この規準 をとることが可能である.

剰余金 および欠損金 を, その他資本剰余金 の区分 と,任意積立金および当期未 処分利益 の区分 の各 々につ いて考え るとす ると, マ イナスのその他資本剰余金, 換言すれば, その他資本欠損金 は,維持 され るべ き金額 と しての資本金及 び資本 準備金 (な らびに利益準備金) と相殺関係 に立っのではな く,剰余金 と しての任 意積立金 および当期未処分利益 の控除項 目となるか, あるいは,欠損金 と しての 当期未処理損失 の付加項 目となる, これ によ って,全体 と しての剰余金 あ るいは 欠損金が把握 され ることにな る 3 7).

発生 したマイナスのその他資本剰余金 を直 ちに消去 させ たい ときは, それ を (もしあれば) マイナスのその他資本剰余金填補 目的の任意積立金か, 当期未処 分利益 と相殺 す ることになろ う. これは一種 の欠損填補 であ ると解 され る。

以上 のよ うに,第 3 の見解 において は,第 1の見解 にお けるの と同様 にマイナ スのその他資本剰余金 は想定 され,第 1の見解 にお けるの とは異 な ってマ イナス のその他資本剰余金が受 け入れ られ うる. それ は,資本金及 び資本準備金 を維持 され るべ き金額 と捉 えた うえで,第 2 の見解 とは異 な ってその他資本剰余金 を払

●■●

込資本 とい うよ りも分配可能限度額 と しての剰余金 とみ ることによる.

本節 の ここまでの検討か ら,次の ことが いえよ う.

マイナスのその他資本剰余金が問題 にな りうる局面 で は, 資本金及 び資本準備 金を払込資本 と して扱 いきることはで きない.資本充実局面 において払 い込 まれ るべ き金額 と定義 され る資本金及 び資本準備金が,払込資本 と

定面で一致 した とい う程度 の根拠 を もって したので は,資本維持局面 において維持 され るべ き金 額 と定義 され る資本金及 び資本準 備金 を,表示 の面で払込資本 の区分 に振 り分 け てお くことまではで さて も,会計処理 の面で払込資本 と して扱 いきれ るとはか ざ

らないとみ られ る.

4 4 4

(18)

資本金及び資本準備金の捉え方と会計処理 (91)

それ はそ もそ も, 資本維持 局面 における資本金及 び資本準 備金が,払込資本 と い うよ りも維持 され るべ き金額 だか らであ るといえよ う.上 の 3 つの見解 はいず れ も, 資本金及 び資本準 備金 を会計処理面 で は維持 され るべ き金額 と して扱 って いるとみ ることがで きたのであ る.

4 結 び

平成 1 3 年 6 月 の商法改正 において資本金及 び資本準備金減少差益 が分配可能限 度額 に含め られ た ことな どを発端 と して,払込 資本 と留保利益 の区分 の意義 をめ ぐる議論 がみ られ るよ うにな って いる 3 8) . その よ うな議論 が,商法 の資本制度 を 前提 と してな され ると した ら, そ もそ も, 当該制度 の もとで どの よ うな払込 資本 と留保利益 の区分 が可能 なのか とい うことの検討 も必要 であろ う.本稿 には, そ の検討 が含 まれて いる.

第 2 節 で述 べ たよ うに, 資本充実局面 ( 発起設立,募集設立,通常 の新株発行 の場合) にお いて ほ, 資本金及 び資本準 備金 を払 い込 まれ るべ き金額 と捉 えた会 計処理 が可能 であ り, それ は資本金及 び資本準 備金 の定義 お よび資本充実責任 に 係 る商法規定 と整合的であ る. とはいえ, 同 じ資本充実局面 で は資本金及 び資本 準 備金 を払 い込 まれ た金額 ( 払込 資本) と見 な して いるととれ る会計処理が一般 的であ り, それを行 って もさほど問題 はない事情 があ る こと もた しかであ る. し か し,第 3 節 で明 らか に したよ うに,資本維持局面 (マイナスのその他 資本剰余 金 が問題 にな る場合) にお いて は,資本金及 び資本準備金 を払込資本 と して会計 処理 しきれない.

本稿 で は結 局,資本金及 び資本準 備金 を資本充実局面 において も資本維持局面 において も払込 資本 で はない もの と捉 え る ことの可能性 を明 らか に した.

ところで, そのため に取 り上 げたのは資本充実局面 お よび資本維持局面 の一部 であ り, すべてではない. それぞれの局面 にお いて資本取 引 とよばれ る取 引は他 に もあ る. 引 き続 き検討 を進 めたい.

1) ここではとくに, 中村忠 『 資本会計論 〔 増訂版 〕 』 白桃書房, 昭和 5 0 年, 2 4 頁,

4 45

(19)

(92) 一橋論叢 第1 31 巻 第 5 号 平成 1 6 年 ( 200 4 年) 5 月号

および,中村悪 『 新稿 現代会計学 〔 七訂版 〕 』 白桃書房,2 003 年,1 57 頁参照.

2) 払込資本 の増加の会計理論的な認識基準 について, 中村, 前掲 『資本会計論』, 2 6 ‑27 頁参照.

3) 中村,前掲書,29 頁参照.

4) 払込資本の減少の会計理論的な認識基準 について,中村,前掲書,2 7 ‑28 頁参照.

5) 「 払 い戻 された金額」 の決め方につ いては, 中村,前掲書,3 0 …32 頁, および,伊 藤邦雄 『 会計制度の ダイナ ミズム』岩波書店,1 99 6 年,第 7 章参照.

6) このよ うな定義 については,弥永真生 『 「資本」 の会計』 中央経済社,平成1 5 年, 2‑3 頁

,

が大 いに参考 になる.

7) ここではとくに,前 田庸 『 会社法入門 〔 第 9 版 〕 』 有斐閣,2 003 年, 1 ∠ 卜1 7 貢,鈴 木竹雄 ‑竹内昭夫著 『 会社法 〔 第三版〕 』 有斐閣, 平成 6 年, 2 6 ‑2 8 頁, 竹内昭夫 著 ・弥永真生補訂 『 株式会社法講義』 有斐閣, 2001 年, 91 ‑95 頁, および, 弥永真 生 『リーガルマイ ン ド会社法 [ 第 7 版 ] 』有斐閣,2 0 03 年,27 ‑29 頁参照.

8) 竹内著 ・弥永補訂,前掲書,91 頁.

9) た とえば,竹内著 ・弥永補訂,前掲書,91 貢参照. ちなみに,本稿で はとくに, 株式 の実際の引受価額が発起人または取締役会の決定 した発行価額 を超過 したとき の超過額 ( 引受差額) は, 資本準備金 あるいは資本金 に組 み入れ られ ることを前提 に議論 を進める ( 弥永, 前掲 『 「資本」 の会計』, 46 , 58 ‑59 頁参照). ところで,

「会社法制 の現代化 に関する要綱試案」 ( 法制審議会会社法 ( 現代化関係)部会, 辛 成1 5 年1 0 月2 2 乱 以下 , 「 試案」 とよぶ) は , 「 新株等 の発行時における資本 ( 金‑

石川) に組み入れ るべ き額 は , 「 払込金額」 を基準 と して算定 するもの とす る」 ( 第 四部第五 2 ( 1 ) ) としている. この 「 払込金額」 は , 「 会社法制の現代化 に関す る要 綱試案 補足 説明」 ( 法務省参事官室, 平成1 5 年1 0 月2 9 日公表) における表現 を用 いて いえば, 「 株主か ら拠出された財産に相当す る額」 ( 第四部第五 2 前文. 傍点一 石) 旧 ともとれ るが , 「 現 に払 い込 まれ る金額」 ( 第四部第五 2 ( 1 ) .傍点一石川) と

もとれ る,

1 0) 資本確定 の原則の内容 は, 昭和2 5 年改正商法を境 に変容 している (たとえば, 汁 内著 B弥永補訂,前掲書,9 4 ‑95 頁参照).

11 ) 前田,前掲書,1 5 貫参照.

1 2) たとえば,竹内箸 ・弥永補訂,前掲書,9卜9 3 頁参照.

1 3) 弥永,前掲 『 「資本」 の会計』 , 9‑1 0,5 4 ‑57 頁参照.

1 4) た とえば, 竹内著 ・弥永補訂,前掲書, 9 4 頁参照. ただ し本稿では,一般的な説 明 とは異 なるが, 資本充実の原則および資本維持の原則を資本準備金 に も関わるも のと していることに伴 い, 資本不変の原 則 は資本金の減少だけでな く, 資本準備金 の減少 に も関わるものとしている.

446

(20)

資本金及 び資本準 緒金の捉え方 と会計処理 (93)

1 5) なお , 「試案」 は , 株式会社の設立手続の うち募集設立 という方法を廃止 し, 管 起設立 に一本化す るものとす る」 ( 第四部第二 3) と している.

頁, の内容 によ らせていただいた. なお, 中村忠 . 『 新訂 株式会社会計の基礎』 白 桃書房, 1 9 96 年, 11 4 ‑11 5 頁, 武 田隆二 『 簿記Ⅲ ( 株式会社会計) ( 第 2 版 ) 』 税務 経理 協会,平成1 0 年,4卜45 頁,片岡泰彦 『 会社特殊会計』 白桃書房,2 00 0 年, 1 2 ‑ 1 5 頁, も参照.

1 7) なお, 募集設立の手続 きと しては, 商法の規定および学説上, まず発起人が株式 を引 き受 けてか ら, 残 りの発行予定の株式 について引受 けを募集 するという手順が 予定 されているとみ られる ( 商1 75 条 2 項 9 号, および,鈴木 ‑竹内,前掲書.73 ‑ 7 4 頁参照). しか し, そのことは本節 の重要 な結論 に影響 を与えないと判断 し, 片 野教授が示 された仕訳の順序 に従 った.

1 8) 中村教授 は, このような会計処理 を行 う必要 はないとされる ( 中村,前掲 『 現代 会計学』 ,1 65 頁 ( 症)参照).

1 9) 会社成立 と同時 に行われ るとみ られ る仕訳酎) 杏,会社成立 と同時に行われるとは か ざらない仕訳 ( G) よ りも先に行 うべ きか もしれないが, ここで も片野教授が示 され た仕訳の順序 に従 った.

2 0) 仕訳( D) においては,発起 人が創立費を立替払 い しているに もかかわ らず貸方 は未 払創立費 とされている ( 片野, 前掲書,726 J7 2 7 頁参照). この会計処理 も,会社成 立前の会計処理 は会社成立後の会計処理 に引 き継がれ ることを前提 と してなされて いるとみれば, 理解で きるのではないか. なお, 仕訳 ( D) の時点 と同様の局面 につい て, ( 億万) 創立費立替金 ( 貸方) 現金預金, とい う会計処理 もみ られる ( 武 乱 前掲憲,3 9,43 頁参照) .

2 1 ) 中村, 前掲 『 株式会社会計の基礎』 , 11 3 頁参照.払込請求権 を表わす勘定科 目と される株式引受 ( s ubs c r i pt i onsr e c e i vabl e ) については, 貸借対照表能力が問題 となりうる. これについて, まずは丹波廉太郎 l F 資本会計』 中央経済社,昭和32 年, 77 ‑78 頁, が参考 になろう. また, 分割払込制 の もとでの払込請求権 について論ず

るものであるが, 増地膚治郎 「 末沸込株金 について 」 『合計』 第35 巻第 4 号 ( 昭和 9 年 1 0 月), も参考になる.

22 ) 引受済資本金および引受済払込剰余金 は,資本金及 び資本準備金の付加的評価項 目とみることがで きる. 資本金及 び資本準備金 に振 り替え られるこれ らの金額 を分 配可能限度額 に含めることには問題があろう.

2 3) Robbi ns , 良. C りNo ‑ ParSt o c k: Le gal ,Fi nanc i al ,Ec o no mi candAc c o unt i n g A s‑

pe c t s ,Ne w Yor k: TheRona l dPr e s sCompa ny ,1 92 7 ,pp. 30 ‑31 ,および, Ne Ⅵト l ove ,G. H.a ndGa r ne r ,S. P. ,AdL l anC e dAc c o unt i n g ,Vol . i .Bos t on: D. C .He at h

447

(21)

(9 4) 一橋論叢 第 1 31 巻 第 5 号 平成 1 6 年 ( 2 00 4 年) 5 月号 ,

andCompany,1 9 51 ,pp.35 ‑3 6 参月 乳

2 4) 発起設立の際の会計処理 につ いては, 片野, 前掲書, 72 8 頁, 中村, 前掲 『 株式 会社会計 の基礎』, 1 1 3 ‑11 4 貢, 武 田, 前掲書 ,3 8 ‑3 9 頁, および, 片岡, 前掲書, 1 1 ‑1 2 頁参照.通常の新株発行 の際の会計処理 については,片野,前掲書 ,7 4 0 ⊥7 41 頁参照. また,佐藤孝一 『 剰余金論』中央経済社,昭和 3 0 年 ,2 2 0 ‑2 2 7 頁, も参照.

2 5 ) ′ この発行価額 は, 本稿でい う払 い込 まれるべ き金額 に当たる ( 竹内著 ・弥永補訂, 前掲書 ,91 頁参照) .

2 6 ) 丹波,前掲書 ,7 7 ‑7 8 貢参月 乳

2 7 ) 公表論文であるが, 払込資本 と留保利益 の区分の観点か らの意見 と して, 野 口晃 弘 「 企業会計基準公開草案第 1号 の検討 」 税経通信』 第 5 7 巻第 4 ( 2 0 0 2 3 月),

41 頁参照.

2 8 ) このような 「 剰余金」 とい う語 の使 い方 は, 現在の商法施行規則 におけるの とは 異 な って, かっての計算書類規則 ( 株式会社 の貸借対照表,損益計算書,営業報告 書及 び附属明細書 に関す る規則) における使 い方 (旧 3 4 条 1 項 2 項, 旧 35 灸 2 項) と同 じである. また , 「 試案」 は , 「 剰余金分配限度額」 , 「 分配可能限度額」 とい う 表現を使 ってお り ( 第四部第五 1 ), 本稿でい う 「 剰余金」 はこれ らと同 じである と思われ る.剰余金 ( s ur pl us ) の語 については , Li t t l e t on , A. C " " Ac c ount i ngEx‑

c hange , " Ac c o unt i n gRe v i e u ) ,Vol .21No.3 ,J ul y1 9 4 6 ,および,安藤英義 「 配当可

6 月), も参照.

2 9 ) このよ うな局面 に至 る前 の, 資本金及 び資本準備金の減少時点, および, 自己株 式の取得時点で, 維持 されるべ き金額の減少 と払込資本の減少 との違 いは論点 にな りうる. これ らの論点 を超えた先で生 じたのが, マイナスのその他資本剰余金 をめ ぐる議論である.

3 0 ) 野 口,前掲論文 ,41 頁参照. この見方 は,資本金及 び資本準備金 を,払込資本 そ

●●●■◆●

の もの と捉えているとい うより, 払込資本 と見 な しているもの と解 したい. なぜな ら, 資本金及 び資本準備金を払込資本 その もの と捉えていれば, マイナスのそや他 資本剰余金 を想定す るまで もな く, その他資本剰余金で補填 しきれない自己株式処 分差損 の額を直接 に資本金及 び資本準備金か ら減額すべ きことを主張す ることにな ると思われるか らである. なお, 本節では, このように資本金及 び資本準備金を払 込資本 その もの と捉え る見解 を取 り上 げていない. それは, 第 1節ゼ確認 したよう に, 資本金及び資本準備金の通説的定義か らは, それ らを払込資本その もの と捉え

られなか ったか らである.

3 1 ) 前臥 前掲書 ,5 0 8 頁参照.

3 2 ) マイナスのその他資本剰余金を認めて も, 配当規制上 は, 資本金及 び資本準備金

4 4 8

(22)

資本金及 び資本準備 金の捉 え方 と会計処理 (95)

が減少せず, それ ゆえ分配可能 限度額 の計算 に影響 が ないので問題 はないとい う見 方 もあ る ( 弥永, 前掲 『 「資本」 の会計』 , 11 6 頁参照. また,本節 ( 4) も参照 の こと)

しか し, 本文で述 べ た とお り, 資本金及 び資本準 備金 な らびにその他資本剰余金 を

‑持 して払込 資本の区分 において取 り扱 お うとす れば, マイナスのその他資本剰余 金 は会計上, お よび開示規制 上 資本金及 び資本準備金 を減少 させ る. 「開示規制 上 の資本金及 び資本準備金」 が 「 配 当規制上 の資本金及 び資本準 備金」 と異 な る場 合で も配当規制上 は問題 ない とすれば, 開示規制上 は, 資本金及 び資本準 備金 が会 計帳簿 ひいては貸借対照表 に記載 され る意味 は弱 まる ことになろ う. それな らば, 開示規制 にお ける払込 資本 と留保利益 の区分 の観点 か らは, 誤解 を避 ける意味 で も 資本金及 び資本準 備金 とい う項 目を廃 して, 払込 資本 とい う項 目を認 めて もか まわ ない ことにな るので はないか. もっと も, 企業会計基準 第 1号 は, そのよ うな こと までふ れて いない ことか らみて も, あ くまで, 資本金及 び資本準備金が開示規制上 と配 当規制上 で一致 す ることを前提 と して い るよ うであ る. それ ゆえ に同基準 は, マイナスのその他資本剰余金 を認 めない ことによ り, 商 法 の資本制度 の趣 旨を損 な わせて しま うことを避 けた とみ られ る.

3 3 ) ここで は と くに,弥永,前掲 『 「資本」 の会計』 ,1 6 3 ‑1 6 4 頁参照.

3 4) 弥永,前掲書 ,1 6 3 頁参照.

35 ) 前 田,前掲書 ,49ト49 3 頁参照.

3 6 ) もっと も, いか な る取 引 を資本取 引 あ' るいは損益取 引 とす るのか は問題 とな りう るが,本稿 では詳 しく取 り上 げない.

3 7) 全体 と しての欠損金 ( が あ る状況)が,商法上 の 「資本 の欠損」 に当た る.

38) た とえ ば,安 藤英 義 「商 法 にお け る資 本 制 度 の 揺 らぎ と 「資 本 の部」 の 表 示」

『会計』 第 1 62 巻 第 2 号 ( 2 0 0 2 年 8 月), 野 口晃 弘 「商法 改正 と資本 会 計 の再 構 築」

『合計』第 1 6 2 巻第 5 号 ( 2 0 02 年 1 1月), および, 弥永,前掲書, と くに第 8 章参照.

2003 年 1 2 月 1 0 日受 稿

2004 年 2 月 1 2 日 レフ ェ リー の審 査 をへ て掲 載 決 定 ( 一橋大学大学 院 博士課程)

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参照

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