• 検索結果がありません。

幼児の自己概念の発達について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "幼児の自己概念の発達について"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

幼児の自己概念の発達について

I

研 究 の 目 的

人間の社会化の過程は教育の中で中心的な地位を占めている。しかし人が社会化されてゆく 過程は,依存状態から自主独立となり,他人から自分を区別する個性化の過程でもある。社会 化と個性化とは,矛盾概念でなく,個人の発達の別の面にすぎないと思われる。人は発達して ゆくに従って,内的刺戟と外的刺戟との区別がわかり,身体と外界,自己と環境との境界がは っきりし,自他並びに主客が分化して行き()自己の考を認識し, それを発表し,他と対決 し,自己の独自の存在を主張しうるようになる。このように個性化は次第に深化され,拡大さ れて自己概念は益々明確になって行く0(2)

発達に従って,身体でも自己でも,環境の枠組から分離することが出来るようになり,場か らの強い力が働いていても,対象を明らかに意味をもって認知出来るようになると

Witkin

H

A .

はいっている。(3) これは知覚場面ばかりでなく,問題解決場面でも知的解決の基礎的能力 が増大してくるようになり,自己概念の発達にも,環境から自己を分離出来ること,即ち自我

の確立が前提となる。

Ausubel

, 

D .  P .

によると,自己概念は幼児から次第に獲得され,意識内容として把握される にいたるもので(4)環境や他我から自我を識別する自己の本質的な徴標の抽象であるとし,自 我は,経験, 態度, 価値の組織関連の中での抽象であるといっている0(1)

H e l p e r

M.M

自己概念を,その個人をさす記号に関連のあるシVボリックな反応から成立っているものとし て,発達過程を研究している。(5)  しかし本前究では,福島,村山氏の如く,自我が評価し,

認知する自己の行動,能力,社会的な地位,人格特性等の内容を総括した意味で自己概念を取 扱って行く。(6) 

そこで本研究では

(1) 

自我が評価した自己(自己評価〉

(2) 

他人が客観的に評価した自己(教師評価,相互評価〉

(3) 

自己が他人からどのように評価されているかの予想〈予想評価〉

の 3つの面から幼I尼を調査して

(1) 

幼児の評価がどの程度客観性をもっているか。即ちどれほど周囲の教師や友人の評価 に近づいているか。自己概念の発達が充分でない場合には自己評価と他人の評価とのず

(2)

   れは大きいわけで,それだけ客観性の乏しいことを意味し,周囲と自己との関係におけ    る社会性の発達のおくれていることを意味しよう。

 (2) 自我と自己との分離,即ち現実の客観的自己と,非現実的主観的自己との分離が可能    になっているか。自己概念が発達するには両者の間の抵抗が増大し,願望的な自己が客    観的な自我に接近せねばならない。

 (3) 自己概念の発達は更に,その個人の社会的知的行動と密接な関係をもつもので,自己    概念が発達していれば,それだけ周囲の社会内での自己の地位,周囲の社会と自己との    関係が明瞭に確立している筈である。

 以上の如き内容についての検討考察をすることにより,幼児の自己概念はどのような構造内 容をもっているかを,明らかにしょうとするものである。

 ∬ 研究の手続及び方法

(1)対象は5才児 男48名 女32名 計80名

(2)調査は以下のべる4領域にわたり,個別的に面接対話 A.社会的価値的行動

 主として社会的行動領域の価値を種々な角度から検討した。行動評価の項目は指導要領を中 心として,価値的な面を含むと考えられる次の11項目の行動特性をえらんだ。

(1) 自主性:(あなたは先生がいなくても静かに仕事をしていることが出来ますか。)

(2)正義:(あなたはけんかしているのを見て,よい方に味方することが出来ますか。)

(3)責任:(あなたは先生からいわれたことを,その通りにすることが出来ますか。)

(4)根気:(あなたは仕事をおしまいまですることが出来ますか。)

(5)健康:(あなたは天気のよい日に外に出て元気に遊ぶことが出来ますか。)

(6)礼儀:(あなたは朝の挨拶が出来ますか。)

(7)協調:(あなたは友達と仲よく遊ぶことが出来ますか。)

(8)指導:(あなたは仕事をしている友達にいろいろ教えることが出来ますか。)

(9)公共心:(あなたはみんなで使うものを大事にすることが出来ますか。)

(10)遵法:(あなたはきめられたことを守ることが出来ますか。)

(11)親切:(あなたは人がこまっている時やさしくしてあげることが出来ますか。)

 以上11項目について,次の4っの面より調査

(Aの 自己評価…上記の各項目について問い,3段階(出来る…3。出来るか出来ないかは    つきりわからぬ。…2。出来ない…1。)で自己評定させた。

(A。) 教師評価…担任教師により3段階評定

(Aの 相互評価…ゲス,フウ,テストの形式で, 「この組で……は誰でしょう。」 という    Positiveな問いと, 「この組で……でないのは誰でしょう。」 という:Negativeな問の    両面から質問。得点は両面で指名された数の差(前者一後者)をもってした。

(A・)予想評価……これは自己が他の幼児からどのように評価されているかの予想をさせた

一122一

(3)

   もので,やはり3段階で評定

B.社会的地位

 これは集団内での人間関係及びその認知の仕方を調査したものである。

(B・) 願望水準…(あなたはたくさん友達をもちたいか。)3段階評定

(B2) 現実水準(1)…担任教師による人気の程度の3段階評定

(B3) 現実水準(∬)…相互による人気度評価(ゲス,フウ,テスト)

(B。) 予想水準…(みんなはあなたを友達にしたいと思っているでしょうか。)3段階評定。

C.知的領域

 ここでは主:として自己の能力を検討したものである。

(1)あなたはこの本を読むことが出来ますか。(ひらがなの本)

(2)あなたは此の字を書くことが出来ますか。(漢字)

(3) あなたは110までかぞえることが出来ますか。

(4) あなたは3+6==が出来ますか。

(5) しらべたり,考えたりすると雨の降るわけがわかると思いますか。

(6)考えたりしらべたりすると木の実が出来るわけがわかると思いますか。

(7),(8),(9),(10)あなたはこれをつくることが出来ますか。

  見本((7)折紙,(8)粘土作品,(9)モール作品,(10)立体表現)

 以上10項目について(C1)自己評価(C2)教師評価(C・)相互評価(ゲス,フウ,テスト)

(C・)予想評価をして3段階評定をした。

D・人 格 特性

 ここでは主として価値の面を含まない人格特性の面を同じく4っの面から見ようとしたもの である。用いた項目は,矢田部一Guilfordの質問紙より次の10項目をえらんだ。

(1)社会的内向(友達とあまり話をしない。)

(2)思考的内向(なにをするにも用心深い。)

(3)延うつ性(時々ぼんやり考え込む。)

(4) 回帰性(すぐきげんを悪くしてふくれやすい。)

(5) のんきさ(人と一緒にはしゃいで騒ぐ。)

(6)一般的活動性(早くなんでも片づける。)

(7)服従性(人中で常に後の方に引込む。)

(8)劣等感(失敗しないかと常に心配する。)

(9)神経質(小さいことでもすぐ気にやむ。)

(10) 客観性(夢のようなことをよく考えこむ。)

 以上の項目について,同じく4っの面から見た。(D・)自己評価,(D・)教師評価,(D・)

相互評価,(D。)予想評価,すべて3段階評定

(4)

 皿 研究の結果及び考察

(1〕 自己評価の客観性

 研究目的の所で述べた如く,幼児の自己概念の発達を自己評価の客観性の立場から考察する ために,自己評価と他の評価との相関関係を求めた結果が第一表である。(Bの領域について は考察の観点がことなるので別項にゆずる。)

       自己評価と他の評価との相関表

      第一表(A)    第一表(C)    第一表(D)

lA・國A・1馬

A1 A2 A3 A4

.05

.1引

*.E4

lC・IC・園鉱

C1

C2 C3 C4

.29 .14

\・・32   \\

*.7ユ

.05

.工4

iDllD・iD・1軌 D1

D2 D3 D4

.05

.08

.20

*.87

弛 選

(*印 有意相関)

第一表を検討すると

(1) 自己評価(A・,C,)は教師評価(A。, C。)との相関がなく,自己評価の客観性がない といえる。これを北海道大学の福島,村山氏の研究と合せ考えると,小4でA1〜A2(0ユ4)

C1〜C2(0.51)小6でA1〜A2(0.33)CL〜C2(0。54)に対して低いといえる。従って学年 が進むにつれて,自己評価は客観性を増すといわれていることは,此の幼稚園段階を加える

と,一層確実になると思われる。

(2)而し教師評価(A・,C。)と相互評価(A。, C。)とがある程度の相関を示していること は,幼児の段階でも,集団の判定はかなり客観性をもつことが伺える。此の事は前者の研究と 違っている。同氏では小2で(0。17〜0。19)であって,幼児の結果の方が高くなっている。こ の事は集団の判定は年令発達と共に,集団の性質にも関係していることを示唆すると思われ

る。

(3)予想評価(A。,C。, D。)と自己評価(A,, C1, D1)との相関は著しく,特に人格特 性領域(D)において著しい。これは自己評価と予想評価との区別が困難で,立場を替えての 考察がまだ発達していないことを示している。自他未分化の発達段階が続いていることを示

し,相手からの期待を意識した自己概念の発達が不充分といえる。

 以上の事から幼児にあっては,人間関係,社会的価値的行動等に対する理解が不充分である ため,周囲からの影響は多く受けていながら周囲の人との評価の一致がなく,自己概念の客観 性はまだ発達していないといえましょう。諭し相互評価がかなり教師評価と一致の傾向が見ら れることは,集団評価ではある程度の客観性が期待出来る。幼稚園教育の必要性の中心がここ にあるかと思われる。

〔2〕 自己過大評価の傾向

一124一

(5)

前項の如き自己評価の客観性の少いことは,幼児の場合過大評価,過小評価のどの方向をと るかを検討してみると第二表の結果が得られる。此の表は自己過大評価指数を次式によって求 めたものである。即ち

       C−a   自己過大評価指数SOQ=・

      b十I     a…過小評価のi数

    {

    b…一致したi数     C…過大評価のi数

        第二表   過大評価指数:の表

A1〜A2

項目

1

0.95 0.50

2

0.31 0.ユ8

3

1.8

1.75

4   5

1.16  0.05

0.92  0.l1 6

0.52 二〇.06

7

153

1.21

8   9

*    * 工.6  工.33

*    * 1.43 1.7

10

0.77 0.21

:L1

0.54 0.35

平均

0.96

0.93 S.D.

±2.6

±2.1

A4〜A2

一〇.31 二〇.08

0

0.0フ 0.19

0.67 0.17 0.31

0 0.23

.    * 一〇.35  0.65

*    * 0,93  0.80

*    * 1.07  0.72

*    * 0.90  0.90

0.08−0.05 0.13  0.05

0.55

0。43

±2.3

±2.2

C1〜C2

一〇.4

一〇.4

0.65

1.8

一〇.ユ6

一〇.9ユ 0.10

一1.12 0.08 0.31

   

0.52−2.1 0.63−2.0

0.72  0.06

0.83 0.29

*、.。/

0.39

*。.6,/。.、,

±ユ.9

±2.4

C4〜C2

0.38

一〇.08 一〇.07

一〇.22 0

一〇.工 一〇.ユユ

0

一〇.04

0.79

2.63

0.93 一2.00

0

3.33 一〇.ユ7

0.22

0.5

*ユ.37/

α46/

0.60

0.51

±2.5

±ユ.8

      c霧尾奈準率)

 以上の結果から

(1)幼児は全体として過大評価の傾向を示している。特に社会的価値的行動の自己評価(A1

〜A。) においてその傾向が強いといえる。男女の間で有意な差は認められないが,全体とし て男子において過大評価の傾向が強いといえよう。

(2)項目別に見ると,責任(3),協調(7),指導(8),公共心(9)において,過大評 価が強くあらわれ,根気(4),自主性(1)がこれについでいる。予想評価(A・〜A・)に おいては過大評価の傾向は,自己評価(A・〜A2)と殆んど一致した項目に見られるが,自主 性(1)及び男子の礼儀(6)は過小評価の傾向を示している。

(3)知的領域(C)では過大評価の傾向が弱く,特に製作(7)においては著しい過小評価 の傾向を示している。これは幼稚園や家庭でしばしば製作をやっており,自己評価が消極的に なっていることを示す。読むこと(1)数をかぞえること(3)もかなり過小評価の傾向を示

(6)

している。以上の事から,3。4才の頃自我再構成の第2期があらわれ,万能感から現実水準に 自己を下降させる混乱に遭遇し,そして両親その他万能的人々に従者として従属することによ って漸く安定を保ち,4才以後身心両面での能力の発達に伴い自己過大評価の傾向となり,次 第に自我が独立してくるといわれている(りことをよく裏書きしているといえよう、。

(3〕 自己概念の明確化

 ここで自己概念の明確性を考察するために,教師評価と自己評価,及び教師評価と予想評価 との一致度を%で示すと第三表の如くなる。

第三表 {丁丁下顎謡}との一致率(%)

Al〜A2

項目

1 60

53

2

61 58

3

57

61

4

6!

55

5

85

91

6

ワ0

67

7

57

66

8

55 45

9

53 63

10

65

72

ユエ 平均

73  63.3

83  64.9

S。D.

21.5 ユ4.3

A2〜A4

53 59

63

66

56

66 59 55

74

77

6ユ

6ユ

65 66

5ユ

56

57

59

66 63

65  60.9

フ2  63.6

ユ6,0

16.2

C2〜C2

68

70 59 58

72 56

60 58

43

67 58 66

49 55

52 52

E5

48

52/、、.8ユ4.8

6・/,agユL7

C2 一C4

63

64 52 53

53 50

60 59

64 56

o

49 53

57 59

ε5

501

56

47

・4/,a,、8.、

59/55.。

llボ5 D2〜D2

男 女

57

66

60

67 64 59

66 52

55 63

56

66

6ユ

55

60  56    63  52

55/59.。、a、

,。/ 59.3 15.8

D2〜D4

62

66 53 63

64

45

66 53

1B・一B・}B・一B・

男 女

58 55

54 59

58

55

6エ

63 58 50

52

48

43

o

50

,4/56.2エ3.、

,5/ 54.8 12.9

 ・ 有意な不一致  * 有意な一致

第三表では完全な一致が100%。全く一致がないのが0%として示したものである。

前記の福島,村山氏と合せ考えると,社会的位置(B)領域では発達の傾向がよく合致す る。入格特性(D)領域では同氏小6年相当の一致率になっている。(その他領域については

      ._126一

(7)

資料が提示されていない。(6)以上の結果から,(1)各領域とも殆んど55%〜65%の一致 度で,A領域において,やや高い一致度を示している。しかし男女間の有意な差は認められな

い。

(2)項目別に見ると,A領域では健康(5)親切(11)が高く,自主性(1)指導(8)が 一致度が低くなっている。これを自己過大評価の傾向と合せ考察すると,過小評価の傾向のあ

るものにおいて,一致度が高く,過大評価の傾向のあるものにおいて,一致度が低いといえ る。C領域ではよむ(1)で高く,折紙(7)で低い。 D領域では殆んど項目間で有意の差が

ない。

(3)社会的地位(B)の領域について,願望水準(Bの と現実水準及び現実水準と予想水 準との一致は殆んど50%で,心理的距離の接近度が友人選択の条件の中でかなり大きな比率を 占めることが予想される。勿論ここでいう心理的な距離というのは,他人から気易く思われる 程度と解しての事である。

 皿 要    約

 この研究は自我が評価した自己,他人が客観的に評価した自己,自己が他人からどのように 評価されているかの予想を通して,幼児の自己概念の発達を見たのであるが,その結果を要約 すると

①幼児の自己概念の発達は不充分で客観性に乏しく,自己過大評価の傾向をもつ。

② 幼児においては現実と非現実との分離が充分でなく,社会的な理解や経験及び能力が進む に従い自己概念が発達すると考えられる。即ちそれは自我の独立と社会的な抵抗との関係にお いて,現実水準への下降が見られると考えられるからである。

③自己概念についての男女差は幼児では殆んど見るべきものがないが,た父男子にあってや や自己過大評価の傾向が強い。

④幼稚園生活は幼児の自己概念の発達に極めてよい影響,効果を与えると思われる。

       文    献

(1) Ausubel, D.P.…Theory an(1 problems of Child Development.1958. 273〜275

(2)Piaget, J.:…The Child s Conception of the World.1929

(3)Witkin, H. A。…Personality through perception.1954

(4) Ausube1, D. P.…Ego development and personality disorders.1952

(5)H・lp…M・M・…Lea・ni・g th…yand the self−c・・cept.一P・y・h・1. R・v.一1955,51.184〜194

(6)福島正治村山 登…自己概念の発達的研究…教育心理学研究第6巻第1号

(7)辻岡 美延…矢田部,Guilford性格検査…心理学評論 1957,1,70〜loo

(8)北村 晴朗…基本的な自我についての一考察 心理学研究,1953,24,89〜95

参照

関連したドキュメント

迫があり, 強制があり, 抑止が」 あっ た. これを克服する最も効果的な処方は, 目標をおかないこ 4 1 ( )

第2に,物理的経験,これは対象にかかわる活動であ

ものである。ある出来事を記述する場合,記述暑がどの時刻にいて記述するかという時間

囲増 治之 「 教養」の概念について よっ と気軽に読む といった代物 ではなか ったので あるO この ような シ ョーペ ン- ウ7-の本の耽読 のなかか

このレベルに入ると,今まで未分化であった話し言葉のいくつかが分化するようになる。実験者

己視点 か らの方向の理解が必要ではないか と予測 され た。そ こで以上の 2点 について検討 した。 その結果 ,3歳 児 で水準 1の 課題 が必ず

普通の対話においてさえ、その対話に参加し うる各個人の意識には、単純に現実の身体的行

(他の)活動と同様,対象的であq2)」り,その対象が交流の場合