不適応感をもつ児童の自己概念とロールシャッハ反応
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(2) . 第 17 巻. 北海道教育大学紀要(第一部C). 第2 号. 昭和41年12月. 不適応 感をも つ 児童 の 自己概 念とロー ル シ ャ ッ ハ 反 応. 鈴. 木. 正. 義. 北海道教育大学函館分校教育心理学研究室. M [asayoshi sUZUエq ; Se1f Concepts and R0rschach Responses l l f Chi l dren wi ings 。f Ma jus tment th Fee ad o. 1,. 問. 題. Led(y (1945) s (1959) らは, 個 人 の 不 適 応 行 動 を 理 解 す , Combsand snygg (1959), Roger. るためには, 環境の刺激に即して, 外部的準拠枠から, 行動へ接近する方法よりも, その行動者 の現象の場,すなわち,経験され認知されている場を解明する方法による方 が優れているとして,. いわゆる現象学的方法の有効性を主張した, 彼らによると, 個人の行動は, 全体的現象の場によ っ て決定されるが, その全体的現象の場を適切に抽象する近似値として, 個人が自分についてな す諸認知 の体制があげられている. 自己概念の定義は, 自分についての諸認知のうち, その個人 にとっ て どの程度重要視されている認知の範囲に限るかという点で, 各研究者によっ て若干異な. っ ているが, いずれに しても, 自己についての認知体制 が,適応問題を取扱う際最も有効な内部的 準 拠 枠 で あ る と い う 点 は,. f‐theory) に 拠 る す べ て の 研 究 者 に よ っ て 認 め ら l こ れ ら自 己 理 論 (se. れ て い る.. しかしながら, 自己概念は, 個人がそれを通 して経験を処理する枠組と しての役割を果すが,そ れ自身は何の主体的機能をも含むものではない. 自己理論として現在最も体系化の進 ん で い る Roge r s のクライエソト中心理論においては, 自己概念を通して経験を処理し自分の行動を決定す l ing t tua る と い う 主 体 的 機 能 は, 実 現 傾 向 (ac l z endency) とそれの下部組織である自己実現傾向 i ing t f actual z (sel endency) と して 把 え られ て い る が, そ れ らに つ い て の 分 析 は十 分 で あ る と は. 言えない. この理論では, 適応の水準の低い者ほど, 経験と自己との間に認知的不均衡を有し, この不均衡を低減するために, 自己概念の方を維持 し, 経験の方を否認または歪曲して認知する. という機制がまず働くと考え られている. このような心理機制は, 精神分析的人格理論において. は, 防衛機制と呼ばれているものである が, この機制 の働きによっ て, 不適応者は, 自分の有機 体的経験を正確に認知しにくく なり, したがっ て, 有機体的経験を支配する人格の主体的機能の 状態をも正確に認知することが困難になると考えることができる. また逆に, 適応者は, 有機体 的経験を, 不適切な防衛機制というフィ ルターを通さずに認知するので, 自分の主体的機能の状 態を正確に認知し, その認知は, 意識された水準にある自己概念に正確に反映されていると考え. ることができる. 現在, この人格の主体的機能についての最も精細な研究は, 精神分析的自我心 理学の立場から行なわれている自我機能に関する研究であると考えられるので, 自我心理学の考 - 24 一.
(3) . 鈴. 木. 正. 義. えを導入して, Roge r s が十分な吟味を行なっ ていない人格の主体的機能と自 己概念と の関係を解 明することは, 臨床心理学の1つの課題であると思う. 本報告は, 先の報告 (鈴木,1 966b) に続く もので, 不適応感をもつ児童の自己概念, および,. その自己概念と自我機能との関係を明らかにしようとするものである. 本研究では, 人格の主体 f 的機能である自我機能は, K1 e op r (1951) の提出した自我機能の健全度の測定法である 「ロー ル シ ャ ッ ハ 予 後 評 定 尺度」(Ror l ing Sca schach Prognostic Rat e , 以 後 R.P. R,S, と 略 称 す る). によって測定可能であり, 自己概念は, 本研究において新しく 作製された自己評定法質問紙によ っ て把握可能であるということを, 前提として いる, 自己概念 を調べるためには, 被験者が自分 自身を対象として眺め評価するため の自己評定法質問項目が必要であるので 後述するように本 , 研 究 で は, R. P, R,S , お よ びそ の ほ か 自 我 機 能 の 状 態 を表 わす と 考 え られ る ロ ー ル シ ャ ッ ハ 指 標 の 整 理 結 果 と 比 較 対 照 で き る よ う に, K1 f op er (1954 , 1956) の ロ ー ル シ ャ ッ ハ解 釈 仮 説 を 1 人 称. 記述の自己評定法項目へ置きかえた質問紙を作製した.. 本研究の目的 は, 不 適応感をもつ児童と適応感をもつ児童とが, 精神分析的自我心理学 の観点 から作製さ れた自己評定法質問紙に対して, いかなる自己認知の特徴を示すか, さ らに 質問紙 , に よ っ て 把 え られた 自 己 概 念 と, ロ ー ル シ ャ ッ ハ ・ テス トに よ っ て 把 え られた 自我 機 能 の 状 態 と は, い か な る 関 係 に あ る か を 明 らか に す る こ と で あ る, 2,. 方. 法. 方法のうち, 先の報告 (鈴木, 1 966b ) と重複する部分は簡単に述べる ことにする, q ) 被 験 者 函館市立五稜中学校1年6学級の児童242名(内女子99名)から, 質問紙法性格検査によっ て抽 出された不適応感をもつ児童2 8名 (内女子11名) と, 適応感をもつ児童26名 (内女子9名) . 団 調 査 期 間 昭和4 0年9月から11月. 圏. 手. 続. i) 全児童に, 長島らによる適応性診断テスト, 田研式不安傾向診断検査 , 教研式性格診断テ ストの3種の質問紙法検査を実施 した, 教研式性格診断テストは, 補助的な意味において用い ら れた, このテストを構成している下位尺度は, 適応性診断テストのそ れと殆んど重複 しているの で, 本研究では, 児童の回答の信用性 を調べるために, このテストに含まれているL尺度が利用 さ れた.. i i) これらの検査の結果, 2種の検査のいずれにおいても, 不適応を意味する結果を示 した児 童を抽出した. すなわち, 適応性診断テストでは最も低い適応性パ ーセソタイルの方から, 不安 傾向診断検査では最も大きい不安傾向偏差値の方から順に, いずれの検査においても不適応 を意. 味する段階に共通して含まれている児童28名を抽出した. この際, 性格診断テス トのL尺度得点 が8以下, 不安傾向診断検査の検証尺度得点が6以下であることを条件とした, これらの児童を 不 適応感をもつ児童群 (M群) と名 づける, 次に, 2種の検査において, 不適応感をもつ児童の抽出の際とは逆の値の方か ら順に, いずれ の検査においても共通して良好な適応状態にあると判定される児童26名を抽出した. 性格診断テ ス トのL尺度得点と, 不安傾向診断検査の検証尺度得点に関する条件は, 不適応感をもつ児童の 抽出の場合と同 じである, これら2 6名の児童を, 適応感をもつ児童群 (A群) と名 づける, - 25 -.
(4) . 不適応感をもつ児童の自己概念とロールシャッハ反応. M群とA群の児童,および, 全児童の適応性診断テスト, 不安傾向診断検査の平均値と標準偏差 0年9月に実施した学年別知 を示すと, 第1表の通りである. 附記したように, 中学校側 が昭和4 能検査の結果によると, 両群の児童の知的水準は, ほぼ近似している, i i ) 両 群 の 児 童 に, ロ ー ル シ ・. 第ー表. ャ ッノ、. テ ス トを, 標 準 ロ ー ル シ ャ ッ ハ 図 版 (東 京 ロ ー ル シ ャ ッ 、研 究 会 監 修) を用 い て, 個. 別 的 に 実 施 した. 実 施 方 法, 分 類 体 系, 形 態 水 準 評 価 法 は, Kーopfer 法 に した が っ た . 次に. 反応を R. P. R.S, の 計 算 法 に よ っ て 評 点 し, 加 重 得 点 を 求 め. た,. iv) ロ ー ル シ ャ ッ 、. テ ス ト. 両群の性格検査と知能検査の平均値ならびに標準偏差. 全児童 M 被. 者 験 ( )= 女 子. 数. 群. A. 群. 242 9 (9 ). 28 (11 ). 26 ( 9). 適. 応 性 診 断テ ス ト. パーセソ ル タイル ーセ ソタイ D. S ,. 62 .9 2 5 .6. 21 .3 9 .3. 93 .5 ′ 5 5 .7. 不 安 傾 向 診 断 検 査. 偏. 値. 45 .2 10 .2. 58 .8 7 .6. 35 ,6 4.8. 1 5 8 1 5 .8 ‐. 56 5 .3 g g :. 知 能 検 査. 差 S .. 偏. D.. 値. 差 S .. D.. ノ ′ / ′/ ▲ / ノ /. 6 .5. 5 ,5. の結果と比較対照するた めに, K1opfer のロール シャッ ハ解釈仮説のうち重要と思われる部分を 1人称記述の評定項目に置きか え, これらの項目から自己評定法質問紙を作製 して, 両群の児童 に課した, 新 しく 作製 した自己評定法質問紙は, A, 自我の一般的健全性に関するもの9項目, B. 内的統制に関するもの9項目, C. 外的統制に関するもの9項目, D, 内拡的体 験型に関す 5項目から構成されてい る, 各項目 るもの9項目, E. 外拡的体験型に関するもの9項目の合計4 ごとに, 実際のありのままの自己である 「現実の自己」 と, こう ありたいと望んでい る自己であ る 「理想の自己」 を, 相対視しつつ, 6段階評定を行なうように被験者に求 めた, 用いた 評定項 目 は, 各 下 位 カ テ ゴ リ ー ご と に ま と め て, 本 稿 の 末尾 に 載 せ て あ る, 3,. 結. 果. と. 考. 察. 1 ) 「現実の自己」 についての評価 ( 先ず, 被 験者と して抽出されたM 群とA群の児童 が 精神分析的自我 心理学の観点から作製され た自己評定法項目に対して, いかなる反応特徴を示すか, すなわち, 自己についていかなる評価 の仕方を示すかを, みてみる, 先述の3種の質問紙法性格検査に含まれている質問項日は, 主として, 生活場面における具体. 的な行動や, 具体的な症状について 被験者の自己判断を求めているものであるが, 評定法によっ て自己概念に接近するこの自己評定法項目は, その性質上, かなり団塊的で抽象的な1人称記述 の自己についての表現となる, また, 本研究において果す役割の違いから, 自己評定法項目に対. する被験者の反応は, 自己についてなす positlve ま た は negative な認知の仕方に関 して検討さ れ, さ らに, 現実と理想という2つの水準における自己に ついての認知の隔たりに関 して検討さ れ る.. ive と い う 観 点 か ive 対 negat i t 第 2 表 は, 各被 験 者 の 「現 実 の 自 己」 に つ い て の 評 価 を, pos. ら設 定した評価の仕方の種 類と, その分類基準に したがっ て各下位カテ ゴリー ごと, および, 全 体にわた っ て整理した結果を, M群とA群の別に示 したものである,. 各カテ ゴリーにおける 評価の仕方の種類と, その分類基準を述べると, 次のようになる. 自我 の一般的健全性のカテ ゴリーにおける評価の仕方の種類を, 自己肯定的評価と自己否定的 評価と - 26 -.
(5) . 鈴 第2表 カ テ ゴリ ー. 我. 評価の 仕方. の. 内的統制. 良 好 的 評 有 不 良 的 評 f f. 外的統制. 良 好 的 評 価 不 良 的 評 価 良 好. M群 A群 m 筋 艶 6 22. 2 Z. P <0 ,00. 19 7 14 .464. 2. 7. 26. 19. 的 評 価. I. 7. 6. 12. 良 的 評 価. 21. 7. 内拡型. 拡 張 的 評 I 非 拡 張 的 評. 15. 21. 13. 5. 外拡型. 拡 張 的 評 価 非 拡 張 的 評 価. 10. 21. 18. 両 拡 的 評 価 一方のみ拡張的評価. 全体験型. に分類 した. 自己肯定的評価とは. 1 21 .595. 全 統 制 一方のみ良好的評価 不. 義. 「現実の自己」 についての評価. 自 己 肯 定 的 評価 一般的健全性 自 己 否 定 的 評 価 自. 正. 木. <0 .00 N. S .. 4 ,122 12 ,482 4 ,488. <0 ,0. N. S . く0 .00. <0 .05. 5. 11 ,192. <0 ,00. 8. 18. 9. 6. 8 .927. 両 貧 的 評 価. 11. く0 ,005 N.S .. 2. 7 .362. <0 ,01. 自 己 肯 定 的 評価 自 己 否 定 的 評価. 6. 20. 22. 6. 16 .630. <0 .001. カ テ ゴ リ ー に 含 ま れ る 項 目 の67%. 以上, すなわち, 9項 目中6項目 以上において, 自我の健全性を是 認する評価を指 し, 自己否定的評 価とは, 9項目中4項目以上にお. いて自我の健全性を否認する評価. を指す. 内的および外的統制のカテ ゴリ ーにおいては, 良好的評価と不良 的評価とに分類 した. 良好的評価 と は, 6項目以上 において統制が. 良好である ことを認める評価であ り, 不良的評価とは, 4項目以上 において統制が不良であることを 認める評価である. 全統制に関 し. ては, 良好的評価, 一方のみ良好 的評価, 不良的評価と に 分 類 し. た, 良好的評価とは, 内的, 外的 統制ともに6項目以上 に わ た っ. て, 良好な統制を認める評価であ り, 不良的評価とは, 両統制のい ずれにおいても, 4項目以上にわた って, 不良な統制を認める評価である, 内拡型および外拡型においては, 拡張的評価と非拡張的評価とに分類 した, 拡張的評価とは, 2テ ス トにお い て 瀕 数の 少 な い 場合 は Ya 注 z t esの 修 正 式 を用い た,. 6項目以上において, 自我の向性が内拡またはタト拡の方向へ発達してい ると認知する評価であり, 非拡張的評価とは, 4項目以上において, 拡張的評価を行なっていないことを指す. 全体験型に 関しては, 両拡的評価, 一方のみ拡張的評価, 両貧的評価とに分類した. 両拡的評価とは, 内拡. 型, 外拡型ともに6項目以上にわた って, その発達を認める評価であり, 両貧的評価とは, 両体 験型 のいずれにおいても, 4項目以上にわたっ て, その発達を認めない評価である, 全自己概念というカテ ゴリーは, 自己肯定的および自己否定的という分類 が困難な体験型の1 8. 項目を除いた残りの項 目, すなわち, 自我 の一般的健全性と内的, 外的統制に属する2 7項目を含 む, 自己肯定的評価を行なった項目数が1 7以上におよぶ者を自己肯定的評価者, それ以外を自己 否定的評価者として分類した. な お, 各項 目 に つ い て の 評 価 が, pos i ive(自 i t ve (自 己 肯 定 的, 拡 張的, 良 好 的 な ど) か negat. 己否定的, 非拡張的, 不良的など) かという分類は, 評定尺度の段階値を考慮せず, 中央点を境 に して 一 律 に 行 な っ た.. 第 2 表 の 通 り, だ 検 定 に よ っ て 洋間比較を行なった結果, 外的統制を除いては, すべてのカテ ゴリーにおいて, 両群の児童数 の差は有意であった. 自我の一般的健全性とは, 児童が, 強い身体的不安, 情緒的緊張や葛藤,欲求不満感をもたず, 対人関係に適応すると同時に情緒的に深く関与し, 現在の生活を生き生きと楽しみ, 将来に対し. - 27 -.
(6) . 不適応感をもつ児童の自己概念とロールシャッハ反応. f op e r などの精神分析的自我心 て積極的態度を示している状態を, まとめて記述した もので, K1 理学者の主張する自我機能が健全である場合の全体的 人格像を, 把えようとしている, このカテ ゴリーにおいて, 自己を否定的に評価する児童は, A群よりもM群において多い. er によれば, 内的衝動や外部か らの情緒的衝撃を受けても, 直ちに反応 内 的 統 制 と は, K1 opf. i rresources) を 指 す. 外 的 統 制 と は, い nne せず, 必要に応 じて遅延させ, 統制する内的資質 ( わば, 社会化された統 制とも言う べ き機能で, 社会的基準や要求に合致するように, 外部的行動 や表現を調節 し, 統制する機能を指す. 内的統制のカテ ゴリーにおいては, M 群はA群よりも不. 良的評価をする児童が多く, その差は有意であっ たが, 外的統制のカテ ゴリーにおいては, 両群 ‐において 間の児童数の差は有意でなかった, 両統制に関する評定項目か らなる全統制カテ ゴリr は, 両統制に対してともに良好的評価をする児童は, A群において多く, 両統制に対してともに. 不良な評価をする者は, M群において多かった. ト拡型とは, 行動 体験型の内拡型とは, 行動の基準を自分の内部に置こうとする傾向を指し, ク f K 1 ば, 内拡型の h R h( によれ 1 1 と e 9 2 ) o r の 基準を現実場面か ら引き出す傾向を指す, o r c ac s p 人は, 想像力 が豊か で, 自分自身の明確な考えや価値体系を持っ ているので, 現実をそのまま受 容せず, 自分の考えや欲求によって世界を再構成する傾向が強く, 外拡型の人は, 環境からの刺 激に敏感に反応 し, 現実をそのまま受容し易く, 外界に見出した目 標に向って行動する傾向 が強 い と さ れ て い る. 表 か ら明 らか な よ う に,. 内 拡 型 お よ び 外 拡 型 の カ テ ゴ リ ー に お い て, そ れ ぞ れ. の方向へ向性 が発達 していると自己評価する 児童は, ともに, A ‐群において多い. 内拡型と外拡 型に関する項目からなる全体験型カテ ゴリーにおいては, 両拡的評価をする児童はA群に多く,. 両貧的評価をする児童はM群に多い. 全自己概念のカテ ゴリーには, 先述のように, 自己肯定的およ び自己否定的評価という分類が 可能な項目 が集められているが, このカテ ゴリーにおいては, 自己否定的評価をする児童がM群 に極めて 多く, A群のそれと比較すると, 児童数の差は高い信頼度で有意であった, 以上の結果を総合すると, 不適応感をもつ児童は, 精神分析的自我心理学の観点から作製され. た自己評定法質問紙の各下位カテ ゴリーおよび全体において, 適応感をもつ児童よりも, 「現実 i ve であること が理解できる, さ らに, 社会 的 要 求 性 の 自 己」 に つ い て の 評 価 が 著 しくnegat l ldes i i ia i (soc ty) と い う 因 子 の 関 与 が 少 な い と 考 え ら れ る 体 験 型 の カ テ ゴ リ ー に お い て も, rab. A群の児童が自己を拡張的に評価するのに対して, M 群の児童が自己を萎縮的に評価する傾向が 著しい ことは興 味深い. 社会的要求性と 「現実の自己」 および 「理想の自己」 との関係について は, Cowen ら (1959) の 研 究 が あ る が, 今 後, こ れ ら の関 係 に つ い て も 明 ら か に して い きた い,. } 「現実の自己」 と 「理想の自己」 との隔たり 燃 次に, 「現実の自己」 と 「理想の自己」 との隔たりを数量的に検討するために, 評定尺度の1 間隔を1点と し, 各項目の両自己評価間の目盛位置の差 を絶対値として, 各被験者につき, 各下 位 カ テ ゴ リ ー ご と, お よ び, 全 体 に つ い て 加 算 して 合 計 値を 算 出 し,. こ れ を 差 異 得 点 と した.. 第3表は, このように して算出 した 「現実の自己」 と 「理想の自己」 の両評価間の差異得点を 質問紙の各下位カテ ゴリーと全体について, M群とA群の別に示したものである, 表から明らか なように, すべての下位カテ ゴリーおよび全体において, 両群の差異得点間には有意な差が認め. が大きいこと られ, M群は, A ‐群よりも, 「現実の自己」 評価と 「理想の自己」 評価との隔たり. がわかる.. 第4表は, 各群の児童が認知している 「現実の自己」 と 「理想の自己」 の水準を比較 したもの - 28 -.
(7) . 鈴 第8表. 群. 群. A. (Mdn). 内的統制 外的統制. 20 .5. 内 拡 型 外 拡 型 体. 全 第4表. U C. 検. 定 P. R. 5 .116. <0 .01. 10 I 、 12 ,5. 4 .363 3 .350. <0 .01 <0 .01. 16 ,O 17 ,8. 8 .1 9 ,O. 4 ,467 4 .510. <0 .01 く0 ,01. 101 .8. 51 .7. 4 ,856. <0 .01. 19 ,2 22 .5. 8 ,8. 「現実の自己」 と 「理想の自己」 の両評価の水準. 自己評価 自我の一般的健全性. 全. 義. (Mdn). 自我の一般的健全性. 体 験 型. 正. 「現実の自己」 と 「理想の自己」 の両評価間の差異得点 M. 統 制. 木. 現実の自己 理想の自己. M 群. A. 群. (Mdn) (Mdn). 検. U C. R. 定 P. 25 .5. 37 .8 48 ,1. - 5.601 - -2 ,259. <0 ,01 <0 .05. 45 .3. 内的統制. 現実の自己 理想の自己. 21 ,7 44 .5. 35 .1 46 .5. - 5 .255. <0 ,01 N.S ,. 外的統制. 現実の自己 理想の自己. 21 ,8 43 .3. 28 .1 44 ,5. - 4 .553. <0 .01 N,S ,. 内 拡. 型. 現実の自己 理想の自己. 24 ,2. 34 .5 44 ,2. - 4 ,380. <0 ,01 N.S .. 外 拡. 型. 現実の自己 理想の自己. 23 ,O 42 ,5. 34 .1 44 .O. -5 .047. <0 ,01 N.S .. 体. 現実の自己 117.5 理想の自己 221.O. 166 .8 228 ,O. ー 5 .999. <0 .01 N.S ,. 43 .7. である. 両自己評価の水準は, 次のようにして算出した, 各項目の評定尺度において, 「理想の 自己」 に 「現実の自己」 よりも高い得点を与えるために, 「理想の自己」 評価の目盛の位置に対. して, 「現実の自己」 評価の目盛の位置が, 左右のいずオ破こあるかによっ て, 得点基点となる極 を決定した, すなわち, 「現実の自己」 が 「理想の自己」 の左に評定された場合は左の端から, 右に評定された場合は右の端から, 1間隔を1点として, 両自己が評定された目盛までの間隔を か ぞ え て 得 点 と し,. こ れ を 各 下 位 カ テ ゴ リ ー ご と, お よ び, 全 体 に つ い て 求 め た. 両 自 己 が 同 じ. 目盛に評定された場合は, 被 験者が, その項目に関して, 自己を好ましく認知していると考えら れるので, 高い得点を与えるために, その目盛から遠い端を得点基点とした, 表に示した通り, 「現実の自己」 の水準を示す得点に関しては, すべての下位カテゴリーおよ び全体において, 両群間の差は有意であるのに対して, 「理想の自己」 の水準を示す得点に関し ては, 自我の一般的健全性のカテ ゴリーにおいてのみ, 両群間に有意な差が認め られた,. 以 上 の結 果 に つ い て 若 干の 考 察 を 試 み て み よ う. Roger s ら (1954) の研 究 を み る と, 「現 実 の. 自己」 に関するクライエソト間の相関は低く, 「理想の自己」 に 関 す る ク ラ イ エ ソ ト間 の 相 関 は - 29 一.
(8) . 不適応感をもつ児童の自己概念とロールシャッハ反応. それよりもかなり高い, これは, おそらく, 「理想の自己」 がおおむね一般的, 社会的概念, つ まり, 社会的要求性の影 響を受ける概念であるためと考えられる, M群とA群との間に, 「理想 の自己」 の水準を示す得点に関 して, 殆んど有意な差 が認められないということも, 被 験 者 が 「理想の自己」 を設定する際には, 等 しく, 社会的要求性の影響を受けるためであろう. それに 対して, 「現実の自己」 についての評価は, はるかに個性的なものである故に, 適応の水準が異 なるにつれて差異が生 じてくる と考えられる.. このように, 「理想の自己」 は, 社会的要求性の影響を受け易いと考えられるが, その個人の 立場に立っ て考えるとき, 被験者は 「理想の自己」 を自分にとっ て望ましい人格の状態と意識し. ているわけであるから, 両自己評価間の差異得点の大きいことは, 「現実の自己」 について不満 を感 じていることを意味する. また, 両自己評価間の隔たりが大きいことは, 理想への接近が困 難であることを意味するか ら, M群の児童は, A群の児童と比較 して, 自己に対する不満が大き. く, しかも, 到達の容易でない目標を掲げているという心理状態にあると言えよう. クライエソト中心的心理療法の1つの実際的目標は, 「現実の自己」 と 「理想の自己」 との間 s ら (1954) の 研 究 を み る と, 心 理 治 療 に よ っ て, 不 適 の 不 均 衡 を 縮 小 す る こ と で あ る。 Roger. 応状態が改善されるにつれて, 両自己の隔たりが著 しく減少するが, その場合, 「理想の自己」 が 「現実の自己」 の方へ 低め られる度合より も, 「現実の自己」 が 「理想の自己」 の方 へ高め ら れる度合の方がはるかに大きい. 本研究において, M群が, A群に対して一貫 して有意差を示 し. たのは, 「理想の自己」 の水準を示す得点に関 してでなくて, 「現実の自己」 の水準を示す得点 に関 してであるとい うことは, 不適応状態 が改善されて両自己間の不均衡が減少する際, 大きな 変 化 量 を示 す の は 「現 実 の 自 己」 評 価 の方 で あ る こ と を 意 味 す る, こ の こ と は, Roger s らの研究. 結果を間接的に支持するものである,. i i t i ve な 自 己 評 価 を 行 な っ た 児童 数 を, M 群 と ve また は negat 第 5表 は, 各項 目 に 対 して pos. A群の別に掲げ比較した ものである。 また, 自己評定法質問紙 の信頼性は, 「現実の自己」 評価 について偶数項と奇数項の各項目について, 折半法で検討したが, 結果は第6表に掲げた通りで あ る, 圏. ロ ール シャ ッ ハ 反 応 と 自 己評 価 と の関 係. ゴ 「現 実 の自 己」 第 7 表 は, R, P. R.S . の総 得 点 〔Sum〕 と, 全 自 己 概 念 の カ テ リ ー に お け る 評価の仕方との関 係 を み た も の で あ る. 表 の R.P .〔Sum〕は, 自己評価との関係を見やす .R,S er の 区 切 っ た 段 階 値 と は 稲 異 な る も の と な っ て い る, 先 の報 告 お よ び本報 opf く す るた め に, K1 ′ こ, M 群 に お い て は, R. P 告に お い て 述 べ て きた よ うむ . R,S,〔Sum〕 が 低 く, そ して, 自 己 否定. 的評価をする児童が多く, A群においては, R .R,S ,〔Sum〕 が高く, そ して, 自己肯定的評 ,P 価 を す る者 が 多 い こ と は,. 本表 か らも 理 解 で き る.. しか し, 各 群 内 部 に お い て は, R,P, R.S ,. 〕 の高い者 が自己肯定的評価をなし, R 〔Sun ・ ,〔Sum〕 の低い者 が自己否定的評価をする .P .R.S という傾向は見られない. このことは, 第8表に掲げた整理結果か らも理解できる, なお, 第7 2 検 定 (Yategscorrect i on) また は 直 接 確 率 計 算 法 に よ ~12表における両属性の関連の有無は, ズ る検 定 に よ っ て 調 べ た,. 全自己概念のカテ ゴリーに属する27項目に対する 自己肯定的評価項目数の比率を 自己肯定指数 と し, 全 群 の R . 〔Sum〕 と自己肯定指数の中央値を境界として, 各群 ごとに4分割表 ,P ,R.S ‐ になり, 有意水準を5%として, 両者 べて みると, 第8表に掲げたようむ を作り, 両者の関連を調 の間には関連は認め られない. - 30 一.
(9) . 鈴. 木. 正. 義. 第5表 各項目に対する反応の群間比較 カ テ ゴリ ー. だ 検定 種 類 M群 A群 禦 評価の 11. 14 16 18 19 23 26 29 41 3 4 17 27 28 31 35 44 45 I 7. 外 的. 12 20 21. P N P N P N P N P N P N P N P N P N P N P N P N P N P N PN PN PN PN P N PN P N P N P N. 18 10 13 15 18 10 17 11 12 16 20 8 16 12 7 21 14 14 18 10 12 16 11 17 0 28 12 16 8 20 9 19 11 17 17 11 10 18 11 17 8 20 10 18 11 17. 24 2 22 4 23 3 23 3 23 3 25 I 26 0 18 8 20 6 17 9 17 9 23 3 7 19 15 11 17 9 23 3 22 4 25 I 6 20 13 13 12 14 14 12 13 13. *. ** * * *** * *** ** * N,S , N.S , *** * N.S . ** *** *** ** N.S , N.S , N,S , N,S ,. カ テ 項目 評価の # 検定 ゴリ ー 番号 種 類 M群 A群 PN 12 15 N,S 統 24 . 16 11 PN 17 22 34 11 4 P 制 16 18 N 38 PN 12 8 9 9 N,S 42 , 19 17 PN 12 21 2 16 5 P N 23 21 5 5 5 内 P 18 19 N 8 10 7 P 拡 9 N 16 1 ‐ 10 12 7 P 的 N 16 18 15 PN 12 8 体 20 23 33 8 3 験 P 16 25 37 N 12 I 型 P 18 22 40 N 10 4 P 19 21 N.S 43 . N 9 5 P 20 22 6 8 4 N P 8 14 9 20 12 N 外 P 13 23 13 15 3 N 拡 P 20 25 22 N 8 I 的 P 20 17 25 N 8 9 体 P 16 22 30 N 12 4 験 P 10 8 32 N 18 18 型 P 21 24 36 N 7 2 P 18 23 39 10 3 N. N.S ,. 注 1) だ テ ス トにお い て 瀬 数 の 少 ない 場合 は Yat es の 修 正 式 を 用い た, ive な自己評価を意 i 2) 表 中 の Pは Posit ve な 自 己 評 価, Nは Negat 味 す る.. 3 ) * … … P<0,05. * * … … Pく0 ,01. * *〆ー …・P<0 .001. 第6表 自己評定法質問紙の信頼係数. (Spearman-Brown). 群. r. M. 群. A. 群. 両. 群. 0 .574 ○ ,724. 0 ,814. - 31 -.
(10) . 不適応感をもつ児童の自己概念とロールシャッハ反応 第7表 R.P .R.S .〔Sum〕 と全自己概念との関係 R,P.R,S .. 〔Sum〕. 全 自 己 概 念. 全 自 己 概 念. 自己肯定的 評. 8 .50以上. 4 J8 .50ト .49 1 J4 .50ハ .49. 1 ,49以下. 1 ←. 価. 自己否定的 群 評. n v. 価. っ 〕 3. ハ 〇6. . ←. ○ リ. ^ 乙3. 7 十16. A 群. 自己肯定的 価. 評. 3 14. 2. 17. 3. 3 I. 3. 0. 0 N. S .. N.S .. 第8表 R.P .R.S .〔Sum〕 と自己肯定指数との関係 R.P .R.S.〔Sum〕. M群. 自己肯定指数 <Mdn. >Mdn. >Mdn <Mdn. 群. 3. 4. A. 14. 5. 3. 18. 群. 6. 1 N.S ,. N.S .. 第9表 R.P.R ,〔Sum〕 と差異得点との関係 .S R.P .〔Sum〕 .R,S. M群. 差 異 得 点 <Mdn. >Mdn. >Mdn <Mdn. 3 19. 2 = 4 525 Z .. 群. 4. A. 5. 14. 2. 群. 1. 6 N,S .. P<0 .05. 次に, 全群の R .P .〔Sum〕 と, 「現実の自己」 評価と 「理想の自己」 評価と差異得点の ,R.S 中央値を境界として, 各群 ごとに4分割表を作り, 両得点間の関連を調 べ てみると, 第9表のよ うになる, A群では両得点間の関連は全然見 られず, 予想に反して, M 群において関連 が見られ た. す な わ ち, M 群 で は, R. P, R,S,〔Sum〕 の 高 い 児童 は, 「現 実 の 自 己」 と 「理 想 の 自 己」. との隔たりが小さく, R,P .R,S .〔Sum〕 の低い児童は, 両自己の隔た りが大きい傾向が認めら れ る.. 第 10 表 口rルシャッハ・テストによる内的統制と自己評価との関係 、 レ・ ロ ーノ シャッ ロールシ ハ ヤ ツノ. M群. 内 的 統 制. 内的統制につい ての自己評価 良. 良. 好 不. 良 好 欠 如・抑 圧. 5. 8. 1. 14. 群. 内的統制につい ての自己評価. A ‐. 群. 13. 5. 6. 2 N.S.. N.S ,. 第 11 表 ロールシャッハ・テストによる外的統制と自己評価との関係 レ・ ローノ シヤ ツノ、. M 群. 外 的 統 制 良 好 欠 如・抑 圧. 外的統制につい ての自己評価 良. 良. 好 不. 群. 良. 良. 好 不. 1. 10. A. 4. 7. 1. 16. 群. 3. 12. N,S.. - 32 -. N,S ..
(11) . 鈴. 正. 木. 義. 先の報告で示した基準に したがって, 各被験者のロールシャッハ反応か ら, 内的統制と外的統 制を, 各々良好型, 欠如型, 抑圧型に分類したが, 自己評価との関連を調べるために良好型と欠 如 , 抑 圧 型 の 2 型 に まと め た,. 第10, 11表 は, ロ ー ル シ ャ ッ ハ ・ テ ス ト に よ っ て 把 え ら れた 統 制 と, 統 制 に つ い て の自 己 評 価 と の 関 係 を示 した も の で あ る 丙 群 と も ロ ー ル シ ャ ッ ハ , テ ス ト , , .. によるいずれの統制も, 自己評価とは相互に 独立であった,. 第 12 表 ロールシャッハ・テストによる体験型と自己評価との関係 体験型につい ての自己評価. レ・ ローノ シ ヤ ツノ、. M 群. 体. 験. 型. 拡 収. 張 収. 拡. 張 縮. 縮. 群. 張 収. 拡. 縮. 7. 11. A. 17. 3. 2. 8. 群. 5. 1. N.S .. 同 じく, 先 の 報 告 で 示 した 基 準 に した が っ て,. N.S,. ロ ー ル シ ャ ッ ハ 反 応 か ら, 体験型を, 内拡型,. 外拡型, 両拡型, 両貧型の4型に分類したが, 自己評価との関連を調べるために, 前者3型を一 括して拡張型とし, 両貧型を収縮型とした, また, 「現実の自己」 評価においては, 全体験型の カテ ゴリーに属する1 8項目中12項目以上に, 内拡, 外拡を問わずその発達を認めた評価を拡張的 評価とし, それ以外を収縮的評価とした, 第12表に示した通り, ロールシャッ ハ体験型と自己評 価とは相互に独立であった.. 第 !3 表 ロールシャッハ反応と自己評価とのくい違い くい違いの数 ハ = V T 十 1 リ レ Q U. M. 群 7 11 8 2. A. 群 R U ^ u J 7 十. }. リ ム. 2 Z. P N,S. N, S . N,S .. 第13表 は, 各 個 人 の ロ ー ル シ ャ ッ ハ ・ テ ス トに よ る 統 制 型 お よ び 体験型と , 自己評価による統 制型および体験型とのくい違いの数を求め, M群とA群の別に示 したものである くいラ 牽いの数 , の求め方は次の通りである, 先述のように, ロールシャッハ反応の整理から, 内的統制と外 的統 制は, 各々良好型と欠如・抑圧型に, 体験型は, 拡張型と収縮型に分類され また 自己評価の , ,. 仕方の整理から, 内的統制と外 的統制は, 各々良好型と不良型に, 体験型は 拡張型と収縮型に , 分類 さ れ る, した が っ て, 内 的 統 制, 外 的 統 制 , お よ び, 体 験 型 の3 領 域 に お い て, ロ ー ル シ ャ. ッ ハ反応と自己評価とがくい違う場合, 最小は0, 最大は3となる. 表から明 らかなように, く い違いの数の両群間の分配の差は, 全くなく, 同一の傾向を示 した, 以上の結果について若干の考察を試みた い, クライェ ソト中心理論においては 不適応者 は , , 有機体的経験と自己概念とが不一致の状態にあると 主張されている, 不適応者は 経験と自己と , の間の認知的不均衡を縮小するために, 自己概念の方を維持しようとして, その経験を無視した. り, 否認したり, あるいは, 歪曲して認知するこ とが多く, 精神分析的人格理論において防衛機 制と呼ばれている心理機制が優勢に働いていると, 考えられている . Roge r sによれば, 有機体的経験 は, 人格の主体的機能である実現傾向に したがい, 自己概念に 合致する行動は, 実現傾向の一部を占め る自己実現傾向にしたがうわけであるが , 適応の水準の - 33 -.
(12) . 不適応感をもつ児童の自己概念とロールシャッハ反応. 高い者ほ ど, 有機体的経 験を, 不適切な防衛機制というフィルターを通さずに認 知するので, 自 分の主体的機能の状態を正確に認知し, その認知は, 意識された水 準にある自己概念に 正確に反 映 さ れ て い る と い う こ と に な る,. 本研究においては, 操作的に, この主体的機能の状態は R,P, R.S. に よ っ て 把 え られ, 自 己 概念は自己評定法質問紙によっ て把えられると考えた, したがっ て, 適応感をもつ児童の R.P,. ’ 対 不 適応 感 を も つ 児童 の R.P,R. R.S ,〔Smn〕 と 自 己 評 価 の 間 に は 関 連 が 認 め られ る の に して,. が 既述の通り, S .〔Sum〕 と自己 評価とは無関係な状態に あるという仮説を立て, 研究を進めた , 両児童群とも, R.P .〔Sum〕 と自己評価との間には, 殆ん ど関連は認められず, む しろ, . R.S 予想に反して, 不適応感をもつ児童群において一つの関連を見 出した. また, 不適応感をもつ児 適 応 感 を も つ 児 童 よ り も, ロ ー ル シ ャ ッ ハ ・ テ ス トに よ っ て 把 え られ る 自 我 の 諸 機 能 と, そ の 機 能 に つ い て の 自 己 評 価 と が, 不 一 致 の状 態 に あ る だ ろ う と い う 仮 説 も, ロ ー ル シ ャ ッ ハ 反. 童 は,. こついて検討の結果は, 両群間に差のないことを示 した。 重いし 応と自己評価とのくいラ. こ のよ う に 仮 説 が 検 証 さオ亀得 な か っ た 理 由 と して は, 次 の よ う な こ と が 考 え られ る。 先 ず, R,. すれば, 本 P , が自我機 能の健全度を測定 し, 自己評定法質問紙が自己概念を肥えていると .R,S 研究の結果は, ここで取 扱った適応の水準とは関係なく, 両群の児童は, ともに, 自我機能の状 態を正確に認 知 していないことが考えられ, その理由の一つと して, 被験者の年令においては,. 962 ) は, 本研究と方法は異なる このような認知が困難であることが考え られる. また, 斎藤 (1 が, 成人の正常者, 神経症者,分裂病者を被験者として, ロールシャッハ反応と自己評価とのく い. 草い数の有意な差を見出 違いを調 べ, 正常者と分裂病者の間, 神経症者と分裂病者の間に, くいラ しているが, 正常者と神 経症者の間には有意な差を見出してい ないことを考えると, 本研究の被 験者が年少であることのほかに, 適応の水 準は異なるにしても, 正常範囲の精神生活を送っ てい. 牽い数に関 する両群間の差を見出 し得ない一つの理由であるかもしれ る児童であることも, くいi な い.. し か しな か ら, 自 我 機 能 を 測 定 す る と い う R.P. R,S. に も, いく つ か の 問 題 の あ る こ と を 指 966a) し, 自我 機 能 の状 態 の解 釈 仮 説で あ る K1opfer の ロ ー ル シ ャ ッ ハ解 釈 摘できる (鈴木 1. , 仮説にも問題があろう し, また, それを一人称記 述の意識的用 語に置きかえることに も若干無理 な 点 が あ り, 厳 密 な 意 味 で は 手 続 上 に い く つ か の 問 題 が 含 ま れ て い る こ と に な る。. した が っ て,. 上述の仮説の検証のためには, 今後, 方法的に新 しい工夫をこ らし, その上で, さ らに, 自我機 能と自己概念との関係を追求する必要 があると考える, 4.. 要. 約. 本研究は, 3種の質問紙法性格検査によっ て抽出された不 適応感をもつ児童28名 (M群) と適. erの ロ ー ル シ ャ ッ opf 応 感 を も つ 児童26名 (A 群) を 対 象 と し て, ロ ー ル シ ャ ッ ハ ・ テ ス トと, K1. ハ解釈仮説を一人称記述の文章に置きか えた自己評定法質問紙を課 し, 得 られた反応か ら, 1 .自発 実 の 自 己」 に つ い て の 評 価 の 仕 方, 2. 「現 実 の自 己」 と 「理 想 の 自 己」 と の 隔 た り, 3, ロ ー ル シ. ャッハ反応と自己評価との関係について整理検 討し, その結果を報告した, 本研究の結果は次の通りである. 1 () 精神分析的自我心理学の観点から作製された 自己評定法質問紙の 外的統制を除く すべての i ve (自 己 否 定 カ テ ゴ リ ー に お い て, M 群 の 児 童 は, A 群 よ り も, 「現 実 の 自 己」 に つ い て negat. 的, 非拡張的, 抑圧的な ど) に 評価する者が有意に多かった. -3 1- ‘.
(13) . 鈴. 木. 正. 義. 2 } 「現実の自己」 と 「理想の自己」 の両評価間の差異得点に関 しては, M群は, 質問紙のす ( べ ての下位カテ ゴリーおよび全体において, A群より大きく, 両群間に有意な差が認め られた . 「現実の自己」 の水準を示す得点に関 しては, M群は, すべての下位カテ ゴリーおよび全 体において, A群よりも低く, 両群間の差は有意であった. 樹 「理想の自己」 の水準を示す得点に関 しては, M群は, 自我の一般的健全性のカテ ゴリー 圏. に お い て の み, A ‐群 よ り も 有 意 に 低 か っ た が,. 差は認 、められなかった。. そ の 他 の カ テ ゴ リ ー に お い て は, 両 群 間 に 有 意 な. 5 ) 以 上 の 結 果 か ら, 適 応 の水 準 の 低 い 児童 は, nega ( ive な自己概念を持ち, 「現実の自己」 t. を低く 評価し, 「理想の自己」 との隔たりが大きいが, 「理想の自己」 の高さは, 適応の水準の 高い児童とば殆んど異な らないと考えられる, 6 { ) R. P, R,S.〔Sum〕 と いく つ か の 自 己 評 価 の 指 標 と の関 係 に つ い て 調 べ た と こ ろ, R,P,R.. S ,〔Sum〕 と, M 群の 「現実の自己」 評価と 「理想の自己」 評 価との差異得点との間に, 有意な関 連 を 見 出 した が,. そ の 他 に お い て は 関 連 を 認 め る こ と が で き な か っ た, ロ ール シ ャ ッ ハ 。 テ ス ト. による統制型および体験型と, それぞれの自己評価との間にも関連を見出すことはで き な か っ た。. また, ロ ー ル シ ャ ッ ハ ・ テ ス ト に よ る統 制 型 お よ び体 験 型 と, 自 己 評 価 に よ る そ れ らと のく. い違いの数に関 しては, 両群間に分配の差は全くなく, 同一の傾向を示した. 第 14 表 自己評定法質問紙の項目 A. 自 我 の 一 般 的 健 全性. 11 私ば興味 (きょうみ) の範囲が広い方だ。. た. 力 か ・. い. ん. り. か. 文 ょ な き ら へ . い. 力 か ・. た. か. り. ん. ょ き 大 た ら へ. 1一 日 一 叶 一 日 せまい方だ.. 1 4 私は生活のな かで自分の能力を生かしている一--ョ--1--○--E--1--1 生かしていない かしていな ,. 16 私は張り切った気持で生活している。 18 私は生活をのびのびと楽しんでいる.. 1--1--E--0--ョ--1--1 していない して い な い. E--!--1--○--!--E--E 楽しんでいない 楽しんでいな .. 1 9 私は性格がまとまっている方だ, 1-→ -- トー0--1-→ --1 バラバラな感じがする ラな感 . 2 3 私はユーモア (おもしろみ) のある人間だ. 1--1--;--0--1--1--1 ない人間だ . 2 6 私は自分が好きだ. 1--1--1--○--E--‘--- きらいだ, 2 9 私は将来を考えると不安な気持になる. 1--1--i--0--1--1--! 楽しい気持になる 楽しい気持に・ , 41 私は体の調子が気にかからない方だ, 1--1--1--○--E--E--1 気にかかる方だ 気にかかる方 . B 内 的 統 制 3 私は不満や苦痛を感じたとき, 自分をおだや. トー1--←-○--ー--1--1 できない方だ. かた気持へとなおすことができる方だ. 4 私はやりたいことがあると, いろいろ考えた 1--1--ヨー-○--E--1--- 考えずにす ぐ実行する方 ぐ… 後 で 実 行 す る 方 だ.. 17 私もま 1 青緒 (感情) が安定している方だ。 1--i--1--○--1--1-「 2 7 私はとてもありそうもない空想に熱中する傾 E--1--1--○--!--1-→. だ。 不安定な方だ.. ない方だ. 向が強い方だ. 28 私は自分の感清にふりまわされる傾向が強い E--1--1--○--1--1--1 ない方だ. 方だ.. 1 31 私は心配性 (くよくよすること) の傾向が強 1--- ---1÷÷○ --1--E--1 ない方だ. い方だ.. 35 私は意志が強い方だ,. 1--1一一1--○--トーヨーーョ 弱い方だ. -3 5-.
(14) . 不適応感をもつ児童の自己概念とロールシャッハ反応 た. か. い. ん. り. か. 44 私は気分にむ らがない方だ. 4 5 私は自分が頗 卿こできる, C 外 的 統 制. い. か. た. か. り. ん. . 1--ー--1÷÷0--!--1--ー ある方だ. 1--1--1--○--1--!--! できないので不安だ.. 1 私はちょっとしたことで, す ぐ興奮した態度 1--1--1--○--1--!--i 示さない方だ.. を示す方だ. 7 私はまわ りの人が感情的になっても落着いて i--1--』--○--!--1--1 いっ しょに感情的になる 方 だ.. い る方 だ.. 12 私は困難な場面にであうと考えが混乱して し 1--1--i--○--1--i--! 冷静に (落着いて) 考え をまとめることができる まう (こんがらかる) 方だ. 方だ. 20 私は苦 しくても悲 しくても人前ではと りみだ 1--1--1--○--!--1--1 とりみだす方だ. さない方だ, 21 私は感情を顔に表わす方だ, 24 私は他人と衝突しやすい (争う) 方だ.. i--1--!-- 0--1--!--… おさえつけて表わさない 方だ. モ--1--1÷÷0--1--!--! 他人と争わず, うまくつ きあっていく方だ.. 34 私は自分の考えや感情を自由に, 気楽に, 他 1--1--1--○--壬--1--1 ぎこちなくて, 他人に不 快感を与える方だ, 人に不快感を与えずに表現する方だ. 38 私は感情をその場のフソイキに合わせて表現 1--J--』--○--▲--!--! できる方だ. することができない方だ. 42 私は思いつくと, まわりの状況を考えずに, 1--1--1--○--』--1--1 まわりの状況を考えてか ら, 行動の表わし方をき める方だ,. 行動に表わす方だ,. D 内拡的・ 体験型 2 私は自分が正しいと考えることを通そうと し 1--1--!--○--1--!--1 こだわらない方だ. て, こだわる方だ. 5 私は自分だけの独特の工夫や着想をする傾向 1--1--;--○--E--1--1 ない方だ, が強い方だ. 1--○--!--ー--1 影響される方だ. 8 私はものごとを決めるとき, まわりの人たち 1--1一一・ の考えによって影響されない方だ. 10 私は自分の心の動きを分析して考える傾向が 1-→ -→ --0÷→ --1--! ない方だ. 強い方だ. 1 5 私は空想にふける傾向が強い方だ. 33 私は想像力が豊かな方だ,. 1--1--1一一0--4--1--モ ない方だ, t--1--1--○--1--!--1 まずしい方だ.. 37 私はひとりになっ て考えを練る仕事が好きだ.ー--1-→ --○---1-→--! きらいだ. 40 私は自分の直感 (パッと感じ知ること) を信 1--…--1--○--i-「 --… 信用せず, 大切にしない 方 だ.. 用 し大切 にす る 方 だ,. 43 私は何ごとによらず, 自分自身の考えをはっ 1--!--!--0--!--1-「 き り持 っ て い る 方 だ.. はっ きりは持っていない 方 だ.. B 外拡的体験 型 6 私は, まわりの人の気持や考えに合わせて行 1--1--1--○--1--1--! ない方だ. 動する傾向が強い方だ.. - 36 -.
(15) . 鈴. 正. 木 た. か. 義 い. い. か. た. 文 な き. き な 大. ん. か. り. か. り. ん. 9 私は, 大勢の人のなかで活躍するのが好きだ.1--1-----○--1--1--- きらいだ. 1-→ --1--○-→ --1-→ 非社交的だ (ひとりでい 13 私は社交的 (人づきあいがよい) な方だ, る方が好きだ) , f 1 2 私は気分が沈んでいるときでも, 刺激をうけ 1--1--1--○÷÷E-- -- 沈んだままでいる方だ. 2 ると明るく元 気になる方だ. 1--1--1 もたない方だ, 2 5 私は, まわりの人々のことがらに強い興味を ー--1--1--○--- もつ方だ.. 30 私は, まわりから自分が何を期待されている 1--E--!--○--1--1--1 にぷい方だ, かについて敏感な方だ. 3 2 私は流行のコトバやシグサを使うのが人より 1--!--r--0--1-----1 おそい方だ. 早い方だ,. 3 6 私はまわりの人の考え方を, すなおに受け入 1一一1--1--○÷÷1-- トー1 受け入れない方だ, れる方だ.. 3 9 私は, はじめて会った人にでも, すぐ親しみ 1--1--1--○--!--1--1 感じない方だ, を感じる方だ. 女. 献. んのめr: A Pβ Z旧びおγ Combs rc g〆”” ”力めmq物 Z o be . New York: , , & snygg , D. 方z感閉山rd oe , A.VV Harper ,1959 , P ildes i i ipt i i i l i i Cowen tdes ty oft vet ra erms: Appl t rab cr ca on to a ,E, L. , & Tongas , , N, The Soca l f{onceptinvento s”ば Ps“ルメ, se 1γ.! z , の7 ,1959 , 23, 361一365 , i K1 l i 1 t crat e chach prognos ngSca opf er .力γ“. red乙 . R0rs ,ノ , 1951, 15, 425一428 ,B,eta ・ ′ K1 D i 飯 五 々 ‘ l ′ 粥 ▽ 「 Z ′ i た ld c z ” g oPf e B,eta 勿 g o “ ? 8 s ; z α o γ s c α c z 力 ” o c毎z q q”e の扇 動のry . . , 工 : re , VVor Book Co . , 1954 , l Z K1 / 〆, ロ.: ぞ d ず ′ / ld ・ sメ B R塀s c e er りdopme z zI Z α物 Z cルばq”& opf i タ 2 e s oヂ リ弱化α”のz , De , Wor ,B,eta Book Co . ,1956 . l Lecky 」の’ andPres s御捌け :A 前のか o′PB雅馴 破か, New York:ls s z .Sdf ,1945 ,P . (友 田 不 二 男 訳. 955 己統一の心理学, 岩崎書店, 1 ,). 自. ind F,(Bds l Z ‘ Roger z f ) s z o i g メリy 解雇 Pe r so 2mZ 7 rd粥鰭ed y dmi懲8: の- o , R, . , & Dymond , Rosa ,C , Psyc cago; Univer cago Pr ess s粥d”娼 粥 豹BG″8”トcのば8だd q力めγoqGん , Chi .of Chi ,1954 , h f h i l re ionshi Roger l l ty l t erper S sona sona a s deve oped i n the ps ,per , C, R, A t eory o t erapy ,and int ,a i P / α A 1 防 メ -cent d ) ”〆 F er edf ramework s c C ent 2 o : m ぎ f α s y の z G B 外 y o o *加- タ g .1n Koch,S .(Bd . , . , , みBSO ご / すめ7 l l G超Zc e 卿γ s o“ ”””ず so fz 2 の海む 2 . New York: McGraw-Hi ,1959,184-256 , (酒 井 汀 他訳 クラ. イエ ソト中心療法の立場から発展した治療, パーソナリティおよび人間関係についての理論, 来談者中心療 2 96 54- 法, 岩崎書店, 1 4 90 ,1 .). Ror ′ dE’ぎe る”l ! ! ‘ cんo殻αg”o s疑た:脳乾豹o雨乾 脇z schach s s ge z e s W/ ” 7 z“沼方“粥テ増s凄αg“o s詞s c 〆方”のばs i ?のzβ寛ゑ8 ,H.Ps , Bern:HansHu be 1 2 1 ( 東京ロ ル 9 ハ研究会訳 精神診断学--知覚診 r ー シ 断的実験の方法と結果-- ャ ッ , ,. 958 牧書店, 1 ,) 斎藤久美子 ロールシャッハ・テストと一質問紙法 (自己評価法) による適応の研究, ロールシャ ッ ハ 研 究 V, 1962 , 66‐86 ,. 鈴 木 正 義 クロッパーの自我の強さの測定法についての一検討, 北海道教育大学函館人文学会人文論究, 19. 66a, 第26号, 53-73 .. 鈴 木 正 義・不適応感をもつ児童のロールシャッハ特性. 北海道教育大学紀要(教育科学編) 966b, 第17巻 ,1 第 1号, 42-53 ,. - 37 -.
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