氏 名・(本籍) 工
く藤
どう和
かず大
ひろ(秋田県)
専 攻 分 野 の 名 称 博士(医学)
学 位 記 番 号 医博甲第 850 号 学 位 授 与 の 日 付 平成 26 年 3 月 22 日
学 位 授 与 の 要 件 学位規則第 4 条第 1 項該当 研 究 科 ・ 専 攻 医学研究科外科系専攻
学 位 論 文 題 名 Nrf2 activation protects the liver from ischemia/reperfusion injury in mice.
(Nrf2 活性化はマウスにおける肝虚血再灌流障害に対し保護的に働く)
論 文 審 査 委 員 (主査) 教授 山 田 祐一郎
(副査) 教授 後 藤 明 輝 教授 大 西 洋 英
Akita University学 位 論 文 内 容 要 旨
Nrf2 activation protects the liver from ischemia/reperfusion injury in mice
(
Nrf2活 性 化 は マ ウ ス に お け る 肝 虚 血 再 灌 流 障 害 に 対 し 保 護 的 に 働 く ) 申 請 者 氏 名 工 藤 和 大
研 究 目 的
近 年 、 肝 切 除 の 安 全 性 は 向 上 し た が 、 患 者 の 予 後 を 左 右 す る 虚 血 再 灌 流 障 害 に 起 因 し た 残 肝 機 能 悪 化 は 、 肝 臓 外 科 領 域 で は 依 然 と し て 解 決 す べ き 問 題 で あ る 。 肝 虚 血 再 灌 流 障 害 の 重 要 な 機 序 の
1つ と 考 え ら れ て い る 活 性 酸 素 種 の 過 剰 発 生 に 伴 う 酸 化 ス ト レ ス に 対 し 、 転 写 因 子
NF-E2 related-factor2(Nrf2)は 生 体 を 防 御 す る 役 割 を 担 っ て い る が 、 肝 虚 血 再 灌 流 時 に お ける
Nrf2の 関 与 は 未 だ 明 ら か に さ れ て い な い 。 そ こ で 本 研 究 は 、
Nrf2遺 伝 子 欠 損 お よ び 開 腹 前 の
Nrf2活 性 化 剤 投 与 が 肝 虚 血 再 灌 流 障 害 に 与 え る 影 響 を 検 討 す る こ と で 、肝 臓 外 科 領 域 に お け る
Nrf2の 重 要 性 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。
研 究 方 法
Wild type mice (C57BL/6 mice)(WT)
と
Nrf2 knockout mice (KO)に1時 間 の
70%肝 虚 血 を 行い 、 そ の 後 再 灌 流 し た 。 肝 障 害 の 評 価 、
Nrf2と
peroxisome proliferator-activated receptor γ (PPAR-γ)の 標 的 遺 伝 子 お よ び
Tumor necrosis factor-α (TNF-α)の
mRNA発 現 は
Real-time RT-PCRで 、Nrf2 標 的 遺 伝 子 の 蛋 白 発 現 は
Western blottingで 測 定 し た 。 ま た 、 肝 組 織 中 の 酸 化 障 害 は
GSH/GSSG比 と 過 酸 化 脂 質
Malondialdehyde (MDA)濃 度 で 評 価 し た 。さ ら に 術 前 に
15-deoxy-⊿12,14-prostaglandin J2(PGJ2)を 尾 静 注 し 、そ の 3時 間 後 に 上 記 と 同 様 の 実 験 を 行 い
Nrf2前 活 性 化 が 肝 虚 血 再 灌 流 障 害 に お よ ぼ す 影 響 を 検 討 し た 。
研 究 成 績
肝 虚 血 再 灌 流
6時 間 後 の
AST、ALT値 は
WTに 比 し
KOで 有 意 に 高 く 、 組 織 学 的 な 評 価 で も
KOで 広 範 な 肝 細 胞 壊 死 を 認 め た 。Nrf2 の 標 的 遺 伝 子 で あ る 抗 酸 化 酵 素 (
NADPH quinine oxidoreductase 1(NQO1)、glutamate cysteine ligase (GCLc)、
glutathione-S-transferase (GST)) の mRNAと 蛋 白 発 現 は
WTで 有 意 に 増 加 し て い た が 、
KOで は 著 明 に 抑 制 さ れ て い た 。 抗 酸 化 遺 伝 子 発 現 抑 制 に 伴 い 、
KOで 酸 化 障 害 は 増 悪 し て お り 、TNF-α の
mRNA発 現 も 有 意 に 増 加 し て い た 。
Nrf2
活 性 化 作 用 を 有 す る
PGJ2を 投 与 す る と 、
WTで は 肝 虚 血 前 に 抗 酸 化 遺 伝 子 の 発 現 が 増 加 し て い た 。こ の 増 加 を 反 映 し て 、肝 虚 血 再 灌 流 後 の
AST、ALT値 上 昇 お よ び 肝 細 胞 壊 死 、 酸 化 障 害 、
TNF-αmRNA誘 導 は
PGJ2非 投 与
WTに 比 べ
PGJ2投 与
WTで 有 意 に 抑 制 さ れ て い た 。 一 方 、
KOで は
WTで 認 め た
PGJ2の 保 護 効 果 は 全 く 認 め ら れ な か っ た 。
PGJ2
は
PPAR-γ ligandで も あ る た め 、PPAR-γ が 肝 保 護 作 用 を 発 揮 し て い る 可 能 性 が あ る 。 実 際 、PGJ2 投 与 に よ っ て
PPAR-γ標 的 遺 伝 子 の
mRNA発 現 は 増 加 し て い た 。し か し 、PPAR-γ
antagonist(GW9662) を 先 行 投 与 し た と こ ろ 、PGJ2に よ る
PPAR-γ標 的 遺 伝 子 発 現 は 抑 制 さ れ た が 、
PGJ2の 肝 虚 血 再 灌 流 障 害 に 対 す る 軽 減 効 果 は 保 た れ て い た こ と か ら 、
PGJ2の 保 護 効 果 へ の
PPAR-γの 関 与 は 否 定 的 で あ っ た 。
以 上 よ り 、
PGJ2の 保 護 効 果 は 完 全 に
Nrf2依 存 的 で あ る こ と が 証 明 さ れ た 。
結 論
肝 虚 血 再 灌 流 障 害 の 増 悪 抑 制 に
Nrf2が 重 要 で あ る こ と 、 さ ら に
Nrf2前 活 性 が 肝 虚 血 再 灌 流 障 害 軽 減 に 寄 与 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 本 来 、 内 因 性 の 防 御 機 構 を 最 大 限 利 用 す る 治 療 手 段 は 生 体 に と っ て 極 め て 合 理 的 で あ り 、肝 切 除 の さ ら な る 安 全 性 向 上 に 役 立 つ と 期 待 さ れ る 。
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学位(博士―甲)論文審査結果の要旨
主 査:山田祐一郎 申請者:工藤 和大
論文題名:
Nrf2 activation protects the liver from ischemia/reperfusion injuryin mice.
(
Nrf2活性化はマウスにおける肝虚血再灌流障害に対し保護的に働く)
要旨
肝切除において、虚血再灌流障害に起因する残肝機能悪化は、患者の予後を 左右する肝臓外科領域の重要な課題の一つである。著者の研究は、論文内容要 旨に示すように、肝虚血再灌流障害の重要な機序である活性酸素種の過剰発生 に伴う酸化ストレスに対し、マスターレギュレーターである転写因子
Nrf2の遺 伝子欠損マウスあるいは
Nrf2活性化剤である
15-deoxy-∆12,14-prostaglandinJ2 (PGJ2)
を用いることで、
Nrf2が保護的に作用することを明らかにしたもの
である。内因性の防御機構を有効利用する治療手段の開発によって、肝切除の さらなる安全性向上に寄与するものと期待される成果である。
本論文の斬新さ、重要性、実験方法の正確性、表現の明瞭さは以下の通りで ある。
1)斬新さ
肝切除において、虚血再灌流障害に起因する残肝機能悪化は、患者の予後を 左右する肝臓外科領域の重要な課題の一つである。
Nrf2は、酸化ストレスが増 加すると活性化され、酸化ストレス除去に関与する種々の抗酸化酵素の発現を 増加させるなど、酸化ストレスに応答するマスターレギュレーターである。腎 臓などいくつかの組織における虚血再灌流障害においてその関与が示されてい るが、肝臓では未だ十分に解明されていない。本研究では、野生型マウスと
Nrf2欠損マウスを用い、
Nrf2活性化剤である
PGJ2の投与・非投与で比較しながら、
70
%肝虚血ならびに再灌流時の肝障害を血中の肝逸脱酵素や組織所見、抗酸化 酵素発現などで検討した。その結果、
Nrf2欠損マウスではより強い肝臓の虚血 再灌流障害があることから、内因性の
Nrf2が肝臓の虚血再灌流障害からの保護 に関与することを明らかにしたことに斬新さがある。
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2)重要性
Nrf2
活性化剤
PGJ2を肝臓の虚血再灌流の前に投与することで、肝逸脱酵素 上昇や肝細胞壊死などの抑制が得られたことを示している。また、
PGJ2の保護 作用は
Nrf2欠損マウスで消失することから、
PGJ2が内因性の
Nrf2の活性化 によって保護的に作用することを明らかにした。これは、内因性の防御機構で ある
Nrf2を有効利用する治療手段が、肝切除のさらなる安全性向上に寄与する ことが期待され、重要である。
3)実験方法の正確性
野生型マウスならびに理化学研究所から導入した
Nrf2欠損マウスを用いて肝 臓の虚血再灌流モデルを作製し、肝障害を組織学的ならびに遺伝子発現などで 検討、
PGJ2投与による肝障害の改善に関する検討を行っている。
PGJ2が他の 転写因子である
PPARγを活性化する可能性を除外するために、
PPARγ阻害薬 を用いた検討も加えている。本研究は動物実験倫理委員会の承認を得て行われ、
得られた結果は的確に統計学的検討が行われており、正確性があると考えられ る
4)表現の明瞭さ
これまでの問題点の解決に向けた、研究目的、方法、実験結果、考察を明瞭 に記載している。
以上述べたように、本論文は学位を授与するに十分値する研究と判定された。
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