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(1)

氏 名

ア サ バ ユ ウ タ ロ ウ

学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与の日付 課程・論文の別 学 位 論 文 題 名

論 文 審 査 委 員

浅羽 祐 太郎

都市環境科学研究科 都市環境科学専攻 分子応用化学域 博士(工学)

都市環境博 第

178

号 平成28年3月25日

学位規則第4条第1項該当

Cell differentiation therapy by histone acetylation modification using epigenetics control carrier (

エピジェネティクスコントロー ルキャリアを用いたヒストンアセチル化制御による細胞分化治療

)

主査 教 授 川上 浩良 委員 教 授 内山 一美 委員 准教授 朝山 章一郎

【論文の内容の要旨】

エピジェネティクスとは、

DNA

の塩基配列によらず遺伝子の発現制御を行う機構である。

エピジェネティクスでは、核内に存在する

DNA

DNA

を巻き取るタンパク質であるヒス トンの複合体であるクロマチンの構造が重要な役割を担っている。クロマチン構造が弛緩 したユークロマチン構造では、露出した

DNA

に対して酵素や転写因子が作用することによ り、遺伝子発現が活性化する。一方、凝縮した状態であるヘテロクロマチン構造では、

DNA

の遺伝子発現は不活性化する。このようなクロマチン構造の変化は、

DNA

メチル化、ヒス トン修飾などの化学修飾により複雑に制御されている。近年、酸化ストレスや環境要因に よりエピゲノム異常が惹起されることでがんやアルツハイマー病、生活習慣病などの疾患 が発症することが明らかになってきた。エピジェネティクスはクロマチンへの多数の化学 修飾が複雑に絡み合うことで生命現象を制御する機構であるが、もしその制御を任意に行 うことができれば、これまで困難とされてきた難治性疾患や生活習慣病の新しい治療法に つながる可能性がある。現在、エピジェネティクス関連酵素を阻害する低分子薬剤に関す る研究が盛んに行われているが、複雑に絡み合ったエピジェネティクス修飾を包括的に制 御する研究はこれまで検討されてこなかった。

本研究は、包括的なエピジェネティクス制御を可能とする新たな技術であるエピジェネ

ティクス工学を確立し、このエピジェネティクス工学を用いた従来とは全く異なる新しい

治療法を提案する。クロマチン構造制御が可能な新規エピジェネティクスコントロールキ

ャリア

(EpC

キャリア

)

を創製し、これまで治療が困難とされてきた様々な疾患細胞モデルに

おけるエピジェネティクス治療の効果について検討した。

(2)

本論文は、全

5

章から構成されている。

1

章は、序論としてエピジェネティクスと各種疾患の関係性について述べ、本研究の 位置付け及び研究指針を示した。

2

章では、ヒト骨髄性白血病細胞

(HL60)

から顆粒球への細胞分化を行うことによる新 しい細胞分化治療に関して検討した。具体的には、

EpC

キャリアを用いた

HL60

細胞のヒ ストンアセチル化制御を行い、誘導することを試みた。そのため、ヒストンアセチル化酵 素

(HAT)

を発現するプラスミド

DNA(pDNA)

とヒストン脱アセチル化を抑制する阻害剤

(

ト リコスタチン

A, TSA)

を同時封入した

EpC

キャリアを創出し、強力なヒストンアセチル化 制御による

HL60

細胞の分化誘導を試みた。

EpC

キャリアは、

pDNA

TSA

の共送達に よりヒストンアセチル化が効果的に誘導され、 さらに

EpC

キャリアの薬剤徐放効果により、

長期的なアセチル化ヒストン量の維持が可能となった。その結果、

EpC

キャリアを投与し た

HL60

細胞の顆粒球への細胞分化率は、極めて高い値を示した

(

60%)

。以上より、

EpC

キャリアはヒストンアセチル化制御を行うことにより、

HL60

細胞を顆粒球へ効率的に分化 誘導できることを明らかにし、白血病の新しい治療となる可能性を示した。

3

章では、酸化ストレス障害によるヒストン脱アセチル化酵素

(HDAC)

の機能不全、お よびそれに伴うヒストンアセチル化異常が原因で発症する慢性閉塞性肺疾患

(COPD)

の治 療を試みた。具体的には、ヒストン脱アセチル化酵素

(HDAC2)

を発現する

pDNA

と、抗酸 化剤であるカチオン性マンガンポルフィリンダイマー

(MnPD)

を含む新規抗酸化能を有す る

EpC

キャリアを創製し、酸化ストレス及び炎症性サイトカイン

(IL-8)

が過剰産生し、治 療薬への耐性を示す

in vitro COPD

モデルにおける治療効果を検討した。

EpC

キャリアは

in vitro COPD

モデルにおいて、

HDAC2

発現量の上昇を導き、

IL-8

産生量を有意に抑制し た。この結果は、

EpC

キャリアの抗酸化効果と

HDAC2

発現の相乗効果によるものである。

さらに、

EpC

キャリアを添加した

in vitro COPD

モデルは、治療薬への感受性の回復が認 められ、耐性の寛解が示唆された。以上の結果から、

EpC

キャリアは、抗酸化能による

HDAC2

保護効果と遺伝子導入による

HDAC

発現上昇の相乗効果により

in vitro COPD

モ デルに対して有用な治療効果を示した。

4

章では、

DNA

メチル化やヒストン脱アセチル化により不活化したがん抑制遺伝子、

上皮間葉転換

(EMT)

によるがん転移・浸潤に対し、ヒストンアセチル化制御による新しい がん細胞分化治療を検討した。具体的には、がん細胞である

A549

細胞において

HAT

を発 現する

pDNA

TSA

を含む

EpC

キャリアによるヒストンアセチル化制御を行い、がん抑 制遺伝子の再活性化を介したがん細胞分化制御を検討した。また、

In vitro

転移がんモデル における

EMT

抑制を試みた。

EpC

キャリアは、効率的なアセチル化ヒストン量の上昇を 導き、ヒストンアセチル化の増加に伴いがん抑制遺伝子である

p53

発現量が向上した。さ らに、

EpC

キャリアを添加したがん細胞はアポトーシスを誘導していることが確認された。

これは、ヒストンアセチル化制御によりがん細胞の形質が変化したためである。次に、in

vitro EMT

モデルにおいて、EpC キャリアは、アセチル化ヒストン量の上昇に伴い、間葉

(3)

系細胞への分化誘導、即ち

EMT

を抑制した。以上の結果より、EpC キャリアはヒストン アセチル化によりがん細胞の形質変化を誘導し、さらに

EMT

を抑制することによるがんの 転移・浸潤の制御が示され、これまでとは全く異なる新しいがん細胞分化治療に成功した。

5

章では、本論文の結論と今後の展望をまとめた。本研究では、エピジェネティクス

工学の確立に際し、ヒストンアセチル化制御による細胞分化治療を検討した。今回創製し

たエピジェネティクスコントロールキャリアは、細胞種によらずヒストンアセチル化制御

が可能であり、その結果、細胞分化制御や疾患治療に対して有効な手段となりうることが

示された。また、

DNA

メチル化などの他のエピジェネティクス異常が原因で誘発される疾

患に対してもヒストンアセチル化制御が有用であることが明らかとなった。以上より、従

来の治療法とは全く異なる作用機序で治療が可能なヒストンアセチル化制御による細胞分

化治療は、今後様々な疾患治療分野に対して多大なる貢献が期待される。

参照

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