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テレビやインターネット、本や教育雑誌、教育研究会により、

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小学校で求められている森林環境教育

~事例を基にした聞き取り調査から~

No.10

藤井

裕樹

はじめに 21世紀を迎え、環境や資源の有限性が認識され、「循環型社会」の構築が求められる 中で、「地球温暖化防止」など森林の多面的機能や森林資源の循環利用の必要性等に対 する理解を醸成するため、林野庁では森林内での多様な体験活動などを通じて人々の生 活や環境と森林との関係について学ぶ「森林環境教育」の機会を、子どもたちをはじめ 広く国民に提供していくための取組を推進している(1) こうした中、森林管理署等では、国民の森林・林業や国有林野事業への理解を深める ため、教育関係機関やNPO等と連携し森林環境教育を実施しており、平成23年度の教育 関係機関等との連携による森林環境教育の取組状況は1,541回、対象者は116,223名とな っている(表1)。 筆者は森林管理署等において小学校生を対象にした森林環境教育に携わってきたが、 小学校で求められている森林環境教育の内容等が、森林管理署等では十分に把握されて いない現状にあるとのではないか考えていた。そこで本研究では、小学校で求められて いる森林環境教育の内容や実施方法を明らかにすることで、今後森林管理署等で実施す る際の改善策を検討、提案を行うこととした。 表1 教育関係機関等との連携による森林環境教育の取組状況(平成23年度) (出典:平成23年度 国有林野の管理経営に関する基本計画の実施状況(2) ) 連携機関 回数 (回) 参加者数 (人) 主な取組内容 保育園 幼稚園 38 3,318 親子を対象とした森林教室、木 工教室、自然観察会等の開催や 植樹などを実施 小学校 538 61,321 森林教室、木工教室、自然観察 会等の開催や植樹などを実施 中学校 124 7,649 森林教室、下刈、間伐等の体験 林業や森林調査等の体験などを 実施 高校 大学 100 5,665 枝打ち、間伐等の体験林業や森 林管理署等における就業体験な どを実施 その他 741 38,270 地域の自治体やNPO等と連携し て開催した各種イベントの一環と して森林教室などを実施 計 1,541 116,223

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第1 研究方法 1 事例収集・整理及び事例集の作成 (1) 事例の収集と整理 まず、森林管理署等で行われている森林環境教育の内容を把握するため、森林管 理署等で実施されている森林環境教育の事例を収集した(3)(4)(5)(6)。事例の特徴を把握 するため、「森林資源」「自然環境」「ふれあい」「地域文化」の4つの要素(7)を用 いて分類を行った。分類にあたっては、表1-1の内容のキーワードを参考とした。 あわせて教 科 と の 関 連 性 も 把 握 す る こ と と し 、 収 集 し た 事 例 に 関 連 教 科 が 示 さ れ て い る 場 合 は そ れ を 用 い 、 示 さ れ て い な け れ ば 関 連 が あ る と 思 わ れ る 教 科 す べ て を 関 連 教 科 と し 、 事 例 整 理 表 に 整 理 し た ( 表 1 - 2 )。 表1-1 森林教育の要素別の内容 (出典:森林教育が包括する内容の分類(7) ) 表1-2 事例整理表(一部抜粋) (「収集した事例(3)(4)(5)(6) 」及び「森林教育が包括する内容の分類(7) 」より作成) 校庭の樹木に親しもう -樹木名板の作成と取付-樹木観察 クラフト 樹名板の取り付け 樹木名板の作成 社会科 理科 ○ ○ 空飛ぶ種子 -種子の観察と模型の制作-樹木観察 クラフト 種子の観察 模型の作成 理科 図工科 ○ ○ 間伐体験 林業作業 間伐 社会科理科 ○ わたしちの公園 春の公園 森林と親しむ 働く人 遊ぶ 公園を管理している 人 生活科 ○ ○ 森へ行こう どんな遊びをしようかな 森林と親しむ クラフト 遊ぶ おもちゃづくり 生活科 ○ ○ わたしたちの生活と森林 木を育てる仕事 林産業 働く人 林業 林業に携わる人 社会科 ○ ○ はっぱを集めてラミネート すてきな葉っぱを集めよう 創作 葉っぱを集める 図工科 ○ 事例・プログラム名 収集事例 キーワード 参考文献 キーワード (表1-1) 関連教科 森林資源 自然環境 ふれあい 地域文化

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(2) 事例集の作成 小 学 校 の 先 生 へ の 聞 き 取 り 調 査 に あ た り 、 森 林 環 境 教 育 の 事 例 を 示 す た め の 事 例 集 を 作 成 し た 。 収 集 し た 5 9 事 例 の 中 か ら 、 4 つ の 要 素 す べ て が 含 ま れ る よ う 代 表 的 な 事 例 を 抽 出 ( 1 4 事 例 ) し 、 事 例 集 を 作 成 し た ( 表 1 - 3 )。 小 学 校 の 先 生 に と っ て 分 か り や す い 事 例 集 と す る た め 、事 例 集 に は「 事 例 の 名 称 」 「 ね ら い 」「 関 連 教 科 」「 対 象 学 年 」「 場 所 」「 道 具 ・ 材 料 」「 所 要 時 間( 目 安 )」 「 学 習 の 進 め 方 ( 概 要 )」 を 記 載 し た 。 表1-3 事例集に掲載した事例一覧表 (収集した事例(3)(4)(5)(6) より作成) 校庭の樹木に親しもう -樹木名板の作成と取付- 木材の特徴を学習し、樹木名板へ樹種名・イラストを書き入れ、 校庭の樹木へ取り付ける。 空飛ぶ種子 -種子の観察と模型の制作- 種子の実物を顕微鏡で観察しながら、様々な種子の形について学 習する。その後、種子の模型を色紙やスーパースチレンで作り、実 際に飛ばす。 木に親しもう-木工クラフト-  木材の端材を利用して簡単なクラフト作り(カブトムシやクワガ タムシ、犬やカエルの携帯ストラップ、おひな様等)に取り組む。 間伐体験  間伐を行うことにより、間伐の方法、間伐の効果を学ぶ。また、 ノコギリの使い方や斜面の歩き方について学ぶ。 森林を育てる  植付、下刈り、枝打ち、除伐、間伐など森林を育てる方法につい て学ぶ。 森林の働き  森林のはたらきについて調べ、暮らしと森林の働きが深くかかわ り合っていることを理解する。 地球温暖化と森林  「地球温暖化とは」「地球温暖化と森林の関係」「地球温暖化を 防ぐには」などについて学ぶ。 人間と動物と森林の共存を考える -生物多様性の保全- 森林の動物たちの生態を知り、人間と動物と森林の共存について 学習する。 森林での生命のつながり  森林での樹木の発芽や樹木の成長、結実の様子を観察し話し合 う。 わたしちの公園 春の公園  公園内の自然と触れ合ったり、遊具を使い楽しく遊ぶことで森林 や樹木について関心を持つ。 森へ行こう どんな遊びをしようかな  森林とふれあったり、遊具を使ったりして楽しく遊ぶ。また、作 品やおもちゃづくりの材料を集め、それを使って作品やおもちゃ作 りを行う。 はっぱを集めてラミネート すてきな葉っぱを集めよう  森林内で葉っぱを集め、葉っぱのアートを作成しラミネートを行 う。 森林と生きる町  森林とともに生きる町について資料やインターネットを使って調 べる。 わたしたちの生活と森林 木を育てる仕事  林業について調べ、林業に携わる人の工夫や林業の抱える問題点 について考える。 事例の名称 概要

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2 電話による聞き取り調査 小学校の授業内容については学級担任の先生が計画を立てることから、小学校の 学級担任の先生を対象に電話による聞き取り調査を実施した。電話による聞き取り 調査ではアンケート調査の場合ほどサンプル数を得ることはできないが、小学校の 先生の考えを詳細に聞き取ることができると考えたため、電話による聞き取り調査 とした。聞き取り調査に先立ち、事前に事例集と聞き取り調査項目を調査対象者へ 配布した。これは、森林環境教育を知らない先生もいると考えられたことと、どの ような森林環境教育の事例が評価されるのか調査するためである。 (1) 調査対象:八王子市内の小学校6校、13名 (表1-4) (2) 調査期間:平成24年11月~12月 (3) 聞き取り調査項目: ア 森林環境教育に関する意識について (ア)森林環境教育について知っているか。 (イ)森林環境教育を学校で実施したいと思うか。 イ 森林環境教育の実施有無について (ア)森林環境教育を実施したことがあるか。 ウ 森林環境教育の実施方法について (ア)実施形態はどのような形がよいか。 (イ)年間に何回実施できるか。 (ウ)実施時期はいつが適当か。 (エ)先生自身が指導者となって実施することはできるか。 (オ)森林環境教育を実施するにあたり問題となることは何か エ 森林環境教育の実施内容について (ア)どのような内容の森林環境教育を実施したいか(事例集より選択(複数選択)) (イ)森林環境教育にどのような効果を期待するか オ 小学校教育で利用する題材に関する情報について (ア)小学校教育で利用する題材の入手方法。 カ 森林管理署等への要望について (ア)森林管理署等に何を求めるか。 小学校と森林の 位置関係 学校数 (校) 調査した先生数 (人) 近い 4 7 遠い 2 6 計 6 13 表1-4 調査対象者の内訳 (聞き取り調査結果より作成)

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第2 調査結果 1 事例の収集と整理 森林管理署等で実施されている森林環境教教育の事例を59事例収集し、この事例 を要素別に分類した結果、59事例のうち34事例(58%)は、森林資源や自然環境、 自然環境やふれあいなどの複数の要素を含んでいることが分かった(表2-1)(図2-1)。また、教科についても、59事例のうち22事例(37%)が社会科と理科、理科と 図工科などの複数の教科との関連がみられるなど横断的な内容となっていることが 分かった(表2-2)(図2-2)。 2 電話による聞き取り調査 聞き取り調査は、調査対象者一人あたり15~30分程度、小学校の一時限目の始業 時前の時間や昼休み、放課後などに実施した。調査は事前に配布した調査項目に従 って質問し、誘導的な質問にならないように心がけ、自由な回答を求めた。聞き取 り調査で得られた結果は、以下のとおりである。 (1) 森林環境教育に関する意識について ア 森林環境教育について知っているか。 「森林環境教育を知っている」と答えたのは、13名中、7名(約54%)であ った。知っている理由は、「実際に森林環境教育を実施したことがあるため」「大 表2-1 森林教育の要素別の事例数 図2-1 森林教育の要素数別の割合 3つの要素を 含む事例 5% 2つの要素を 含む事例 53% 1つの要素を 含む事例 42% 2つの教科と 関連がある事例 25% 3つの教科と 関連がある事例 12% 1つの教科と 関連がある事例 63% 図2-2 関連教科数別の割合 表2-2 関連教科別の事例数

森林教育の

要素

事例数

(重複あり)

自然環境

36

森林資源

27

ふれあい

18

地域文化

13

関連教科 事例数 (重複あり) 社会 35 理科 26 生活 14 図工科 13 (要素別の分類結果より作成) (要素別の分類結果より作成) (関連教科の整理結果より作成) (関連教科の整理結果より作成)

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学の授業で聞いたことがあるため」と回答があった。 イ 森林環境教育を学校で実施したいと思うか。 今回調査を行ったすべての先生が「実施したい」と回答しており、実施して みたいという意識が高いことが分かった。このことから、小学校と森林の位置 関係による意識の差は見られなかった。 (2) 森林環境教育の実施有無について ア 森林環境教育を実施したことがあるか。 森林環境教育を実施したことのある先生は、13名中4名(約31%)であった。 しかし、小学校単独で実施したものではなく、八王子市内に所在する高尾森林 センターや地元住民の協力により実施されていた。 (3) 森林環境教育の実施方法について ア 実施形態はどのような形がよいか。 「座学よりも体験学習の方が児童の興味・関心を高めることができ効果的で ある」「体験学習を行う前に事前学習を行うと効果的である」「体験学習後に 振り返り学習を行うと効果的である」などの意見が出された。このことから、 体験学習とあわせて、事前学習と振り返りの学習を行うことが求められてい る。 イ 年間に森林環境教育を何回実施できるか。 年間の実施可能な回数については、多 い 者 で 6 回 、 少 な い 者 で 2 回 と い う 意 見 が 出 さ れ た 。 回 数 に ば ら つ き は あ っ た も の の 、 複 数 回 は 実 施 可 能 で あ る こ と が 分 か っ た 。 ウ 実施時期はいつが適当か。 実施時期は、活動しやすい気候である夏から秋にかけてという意見が多かっ た。しかし、夏は熱中症を懸念する意見も出された。 エ 先生自身が指導者となって実施することはできるか。 自らが指導者として実施できると答えた先生は13名中3名であった。実施で きないと答えた先生の半数は、森林環境教育に関する研修会などを受講すれば 実施できると回答した。しかし、実施できると答えた先生、できないと答えた 先生ともに実演や実技を自ら行うことは困難であると回答した。 オ 森林環境教育を実施するにあたり問題となることは何か。 「学校の周辺に森林環境教育を実施できるフィールドがなく、森林へ行くま での移動手段が問題になる」「授業時間の確保が難しい」などが挙げられた。

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(4) 森林環境教育の実施内容について ア どのような内容の森林環境教育を実施したいか(事例集より選択(複数選択)) 間伐体験を実施したいという回答が最も多く6名の先生が選択した(図2-3)。 選択した理由として「生徒が楽しみながら学ぶことができる」「森林の中で活 動することをとおして、豊かな感受性やコミュニケーション能力を培うことが できるのではないか」という意見が挙げられた。次いで、実施したい内容とし て「森林の働き」が挙げられ、その理由として「森林の働きや大切さを肌で感 じてもらいたい」「森林を身近に感じてもらい、森林と人間の関係について学 んでもらいたい」等といった意見が挙げられた。また、要素別に見ると「森林 資源」「自然環境」を含む要素が多く挙げられた。 その他、「事例集に掲載されているすべてのものを実施してみたい」という 回答もあり、小学校の先生にとって森林管理署等で実施されている森林環境教 育の事例は魅力的な内容となっているということが考えられる。なお、すべて のものを実施したいと回答した先生に対しては、その中で特に実施してみたい 内容を挙げてもらい集計した。 また、「これらの事例に教科と関連性を持たせることで、学校でも取り組み やすい」という意見も出された。 図2-3 小学校の先生が実施したい森林環境教育の内容(事例集より選択(複数選択)) 注:すべての事例を実施したいと回答した者に対しては、特に実施したい事例を挙げてもらい集計した。 (聞き取り調査結果より作成)

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イ 森林環境教育にどのような効果を期待するか 「児童は自然は大切と言葉では知っているが、体験を通じて自然の大切さを知る 機会が少ないので、森林環境教育の場などで肌で感じてもらいたい」など、体験を 通じた教育を求める意見が出された。 (5) 小学校教育等に関する情報について ア 小学校の授業で取り扱う情報はどのように入手しているか。 テレビやインターネット、本や教育雑誌などにより情報を収集している他、小学 校の先生を対象に行われる教育研究会など専門知識を入手する場も活用しているこ とが分かった。 (6) 森林管理署等への要望について ア 森林管理署等に何を求めるか。 「森林 環境教育に関する情報提供を積極的に行って欲しい」「小学校では調達 できない資材や教材の提供をして欲しい」「フィールドの提供をして欲しい」「実 演や実技指導、講師をして欲しい」といった意見が出された。 第3 考察 1 森林管理署等で実施されている森林環境教育 森林管理署等で実施されている森林環境教育は複数の要素を含んでいるものが多く、 様々な視点で森林・林業について学ぶことができる。また、複数の教科との関連も見ら れることから、総合的な学習の時間だけでなく、生活科・社会科・理科・図工科など、 様々な教科の時間を活用して森林環境教育が実施できると考える。 平成23年度より新学習指導要領が全面実施され、従来森林環境教育を行うことが多か った総合的な学習の時間が短縮されたが、一方では「各教科で知識・技能を活用する学 習活動を充実する(8)」とされており、教科との関連性を明確にすることで、森林管理署 等で実施されている森林環境教育は、小学校にとって受け入れやすいものになると考え る。 また、「自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の 育成が図られるよう配慮しなければならない(9)」とされており、森林内で実施する 森林環境教育は森林や林業の知識を深めるだけでなく、児童の道徳性の育成に寄与 できると考えられる。 2 小学校の先生の森林環境教育に関する意識 今回調査した小学校の先生は、森林環境教育の認知の有無にかかわらず、森林環 境教育を実施したいという意識が高いことが分かった。このことは、事例集を配布 したことにより、森林管理署等で実施されている森林環境教育の事例が、授業で取 り扱いたい内容になっていて、森林環境教育を知らない小学校の先生でも森林環境

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教育を実施したいという意識が高まったためであると考える。 なお、森林が近くにある小学校、近くにない小学校の両方に聞き取り調査を行っ たが、両者の間に森林環境教育の実施に対する意識の差はなかった。このことから、 森林環境教育を実施したいという意識は、小学校の近くに森林が有る、無しにかか わらないと考える。 3 森林環境教育の実施内容と実施方法 (1) 小学校での森林環境教育の実施内容 実施内容については、小学校の先生から体験することの重要性が多く挙げられ たことから実際に森林へ行き、森林に触れ、体を動かし作業するなどの体験学習 が有効であると考える。特に「間伐体験」は木を伐採し丸太を運搬するなど、直 接森林に触れる機会が多いことや、普段の生活で扱うことの少ないノコギリを使 った作業であることから、有効な森林環境教育の一つであると考える。 しかし、小学校の周辺に森林がないなど、森林をフィールドとした体験学習が できない場合も考えられる。そのような小学校に対しては、小学校の教室や校庭、 体育館などで体験学習が実施できるプログラムや教材・資材の提供を行う必要が ある。すでに森林管理署等で実施されている事例の中に、森林をフィールドとし ない「木工クラフト」や「種子の模型製作」などの森林環境教育も実施されてい ることから、そのような事例も紹介していく必要があると考える。 (2) 小学校での森林環境教育の実施方法 森林環境教育の実施にあたっては、前述のとおり体験学習が有効であることと ともに、併せて「事前学習」や「振返り学習」を行うことで、より効果的な森林 環境教育となると考えられることから、「事前学習―体験学習―振り返り学習」 の一連の流れで実施することが望ましい。森林管理署等には、これらの学習を進 めやすいよう、資材・教材、フィールドの提供やアドバイス等の支援が求められ ている。 小学校の先生は、実演や実技は行うことができないとしているが、児童へ知識 を教えることに長けている。一方、森林管理署等の職員は森林・林業に関する知 識や技術を持っている。このことから、小学校の先生は知識を教えることの多い 「事前学習」や「振り返り学習」を中心に行い、森林管理署等は技術を教えるこ との多い「体験学習」を中心に行うことで、効率的で効果的な実施につながると

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考 え る (図 3-1)。 また 、 小学 校 の 先 生 は 森 林 環 境 教 育 に 関 す る 知 識 に 不 安 を 感 じ て い る 。 そ の た め 、 小 学 校 の 先 生 に 森 林 環 境 教 育 に 関 す る 知 識 を 深 め て も ら うためのサポートも必要がある。 こ の 場 合 、 森 林 管 理 署 等 は 小 学 校 の 先 生 が 主 体 性 を 持 ち 取 り 組 め る よ う 促 す こ と で 、 各 小 学 校 の 教 育 目 標 や 地 域 の 事 情 に 合 わ せ た 、 森 林 環 境 教 育 が 実 施 で きると考える。 4 森林環境教育の情報提供の問題点 2に記述したように、森林管理署等で実施されている森林環境教育の事例などの情報 が、小学校の先生のもとへ届けば、森林環境教育を実施したいという意識が高めること ができる。森林管理署等では、森林環境教育を推進するため、ホームページにより情報 発信を行っている。しかし、そこから森林環境教育を知ったという回答が得られなかっ たことから、森林管理署等の情報提供の方法に問題があると考えられる。 この点、ホームページは興味を持った人がアクセスするものであり、受け身の情報発 信という側面がある。このため、まず小学校の先生へ直接、森林環境教育の情報を届け ることにより、森林環境教育に対する興味・関心を高めることができれば、森林管理署 等で作成されたホームページもアクセス対象となり、有効に活用されると考える。 提案 以上のことを踏まえ、小学校における森林環境教育を推進するため次のことを提案する。 1 小学校の先生の集まる場を活用した情報提供 情報提供を行う場として、校長会や教育研究会などの先生の集まる場を活用する ことを提案する(図-4)。校長会での情報提供は、市町村単位で校長先生が集まる ことから、効率的に多くの小学校へ情報提供することができる。また、教育研究会 は専門分野ごとに開催されており、森林環境教育と教科の関連性が多くみられた社 会科や理科に関係する教育研究会での情報提供は、より実施につなげられる可能性 が高いと考える。また、森林管理署等で実施されている事例が評価されたことから、 事例を紹介していくことも有効な情報提供の一つである。 図3-1 森林環境教育実施の流れと小学校の 先生と森林管理署等のかかわり方

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2 小学校の先生を対象とした研修会 森林環境教育を実施できない要因の一つとして、森林環境教育に関する知識の不 足が挙げられている。これを解消するため、森林管理署等が小学校の先生を対象に 研修会を開催することを提案する(図-4)。研修会の開催により、森林環境教育の知 識を深めてもらい、森林管理署等で森林環境教育を実施する際に先生も一緒になり 児童へ指導することで、より効果的な森林環境教育が実施できると考える。 おわりに 本研究では、森林管理署等で実施されている事例を基にした聞き取り調査を通じて、小学 校の先生の森林環境教育への関心の高さを伺うことができた。森林管理署等は、この関心の 高さに適切に応え、効果的な森林環境教育の実施につなげていくことが重要である。森林環 境教育の実施により森林・林業のサポーターが増え、森林・林業が発展することを期待する。 謝辞 最後に、本研究を進めるにあたりご指導・ご協力を頂いた関係各位に対し、心からお 礼申し上げる。 図-4 森林環境教育の実施しやすい環境づくり

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参考文献・資料等 (1) 林野庁,2-1.森林環境教育の推進,http://www.rinya.maff.go.jp/j/sanson/kan_kyoui ku/index.html (2013/3/5最終アクセス) (2) 農林水産省,『平成23年度 国有林野の管理経営に関する基本計画の実施状況』, 2012 (3) 高尾森林センター,『~森林環境教育の誘い~プログラムガイド(2012年度版)』, 2012 (4) 箕面森林環境保全ふれあいセンター,『森林環境教育手引書<小学校編>』,2012 (5) 箕面森林環境保全ふれあいセンター,『森林環境教育推奨事例集』,2009 (6) 四万十森林環境保全ふれあいセンター,『森林環境教育プログラム』,2010 (7) 井上真理子・大石康彦,「森林教育の包括する分類の内容」,日本森林学会誌, 第92巻,2010,79-87 (8) 文部科学省,学習指導要領改訂の基本的な考え方に関するQ&A, http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/qa/kihon.htm(2013/3/5最終アクセス) (9) 文部科学省,『小学校学習指導要領(平成20年3月)』,2008

参照

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