平成25年度
業 務 報 告
第 51 号
石川県農林総合研究センター
林業試験場
目 次
Ⅰ 健全な森林を維持造成する管理技術の確立 1 多様な森林機能を高める施業技術の確立
森林整備活動が生物多様性に与える影響と評価(第3報)・・・・・・・・・・・・ 1 東日本大震災で被災した海岸林の復興技術の高度化(第2報)・・・・・・・・・・ 3 竹林管理調査(第2報)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
環境林モニタリング調査(第4報)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 多雪地域の森林流域における水収支及び積雪量の観測(第1報)・・・・・・・・・ 9
2 森林病虫獣害の被害軽減技術の確立
石川県の冬気候に適応した樹幹注入施用技術の確立(第2報)・・・・・・・・・・ 11 イノシシ・シカの生息と被害状況の把握と防除技術の検討(第1報) ・・・・・ 13
Ⅱ 有用林木の育種技術の開発 1 有用林木の選抜育種
精英樹由来無花粉スギの量産体制の確立(第2報)・・・・・・・・・・・・・・・ 15 抵抗性マツの改良(第21報)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
Ⅲ 収益性を高める林業生産技術の確立 1 市場性を高める施業技術の確立
低コストな再造林技術の確立(第2報) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 育林技術試験(第17報)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 マルチキャビティコンテナによる育種苗等の生産と現地植栽試験(第3報)・・・・ 23
Ⅳ 木質資源の高度利用技術の確立 1 木材の高次加工技術の開発
県産スギ材を活用した接着重ね梁の長尺化・高品質化技術の開発(第3報)・・・・ 25 県産スギ大径材から採材した梁・桁材の材質性能評価試験(第2報)・・・・・・・ 27 県産スギ平角材の強度データ整備および資料の作成(第1報)・・・・・・・・・・ 29
Ⅴ 特用林産物の生産技術の改良と新規利用技術の開発 1 有用資源の新規利用技術
放置竹林由来の竹を利用した循環型農業技術の開発(第2報) ・・・・・・・・・ 31 耕作放棄地の再生及び管理技術の開発(第2報) ・・・・・・・・・・・・・・・ 33
Ⅵ 普及事業の強化
森林情報処理調査(第20報)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 酸性雨モニタリング(土壌・植生)調査(第12報)・・・・・・・・・・・・・・ 37
Ⅶ そ の 他 1 気象部門
気象観測調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39
2 研修部門
林業技術研修等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 林業緑化相談 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 3 一般業務
組織 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 予算及び決算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 石川ウッドセンター使用料・手数料収入 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 主な行事 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 見学者数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49
森林整備活動が生物多様性に与える影響と評価(第3報)
予 算 区 分 : 国 補 研 究 期 間 : 平 成 23~ 25 年 度 担 当 部 署 : 森 林 環 境 部 担 当 者 名 : 小 谷 二 郎
Ⅰ . 目 的
生 物 多 様 性 に 配 慮 し た 社 会 作 り が 希 求 さ れ る 中 、今 ま で 実 施 し て き た 石 川 県 の 森 林 整 備 活 動 は 生 物 多 様 性 に ど の よ う に 影 響 し て い る か 、ま た 生 物 多 様 性 に 配 慮 し た 森 林 整 備 活 動 は ど の よ う に 実 施 し て い け ば よ い の か 具 体 的 に 示 す 資 料 は な い 。そ こ で 、石 川 県 の 森 林 整 備 活 動 が 、植 生 や 鳥 類 な ど の 生 物 相 に 与 え る 影 響 を 明 ら か に し 、生 物 多 様 性 に 配 慮 し た 森 林 整 備 活 動 は ど う あ る べ き か を 検 討 し て い く 。
Ⅱ . 内 容
今 年 度 は 、 県 内 15 地 域 で の 広 葉 樹 林 、 ス ギ 間 伐 林 、 ス ギ 無 間 伐 林 、 侵 入 ま た は 放 置 竹 林 に お け る 植 生 調 査 の 結 果 を 報 告 す る ( 表 - 1, 2)。
林 床 に 出 現 し た 植 生 の 1 ㎡ 当 り の 平 均 種 数 は 、木 本 は 広 葉 樹 林 で 、草 本 は ス ギ 間 伐 林 で 最 も 多 く 、両 者 と も 間 伐 林 で は 無 間 伐 林 や 侵 入 竹 林 の 2 倍 前 後 で あ っ た 。 広 葉 樹 林 と 他 の 林 型 と の 類 似 度 は 、 間 伐 林 が 無 間 伐 林 や 侵 入 竹 林 よ り も 高 く な る 傾 向 が み ら れ た 。草 本 で 、広 葉 樹 林 と ス ギ 林 に 共 通 し て 高 い 優 占 度 を 示 し た 種 は ゼ ン マ イ な ど シ ダ 類 で あ っ た 。そ の 他 、広 葉 樹 林 で は チ ゴ ユ リ や ト キ ワ イ カ リ ソ ウ な ど が 高 頻 度 に 出 現 し 、 ス ギ 林 で は ス ゲ 類 や チ ヂ ミ ザ サ な ど が 高 頻 度 に 出 現 し た 。木 本 で は 低 木 性 の イ チ ゴ 類 や ヒ メ ア オ キ 、ヤ マ ア ジ サ イ な ど が 共 通 し て 頻 度 も 優 占 度 も 高 い 傾 向 が み ら れ た 。一 般 化 線 形 回 帰 に よ る 解 析 を 行 っ た 結 果 、出 現 し た 植 物 の 種 数 は 林 相 が 、類 似 性 は 地 形 が 影 響 の 強 い 要 因 と し て 選 択 さ れ た 。
以 上 の 結 果 か ら 、ス ギ 林 は 間 伐 す る こ と に よ っ て 広 葉 樹 林 に 共 通 し た 種 の 出 現 頻 度 が 高 ま る 同 時 に 、広 葉 樹 林 と 同 等 な 種 数 が 確 保 さ れ る こ と が わ か っ た 。
こ れ ま で の 調 査 結 果 か ら 、昆 虫・鳥 類 ・哺 乳 動 物 と も に 人 工 林 で も 下
層 植 生 の 豊 富 な 林 内 で 出 現 し や す い 傾 向 が み ら れ て い る こ と か ら 、人 工
林 内 で の 生 物 の 種 多 様 性 の 高 揚 に は 間 伐 に よ る 植 生 回 復 が 重 要 な 役 割
を 果 た し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。
木本
S S QS S QS S QS
平栗 5.0 a 8.8 a 0.5 2.0 b 0.3 6.8 a 0.3 **
坪野 6.6 a 1.8 b 0.2 2.0 b 0.2 2.6 b 0.1 ***
岩本 8.8 a 7.2 a 0.3 6.4 a 0.5 1.4 b 0.2 ***
中山 6.2 6.8 0.3 2.8 0.4 5.0 0.5 ns
三宮 7.6 a 5.6 a 0.6 0.8 b 0.1 0.6 b 0.1 ***
坂尻 10.8 a 5.8 b 0.3 2.4 c 0.2 2.4 c 0.2 ***
直下 6.2 a 4.6 a 0.3 0.2 b 0.0 1.0 b 0.1 ***
草木 3.8 ab 4.8 a 0.2 2.0 bc 0.1 1.4 c 0.1 *
寺津 6.6 4.2 0.3 4.2 0.3 3.8 0.5 ns
角間 7.0 a 4.4 b 0.4 1.0 c 0.2 0.2 c 0.1 ***
津幡 5.8 6.4 0.5 1.4 0.0 3.6 0.1 ns
国見 5.2 a 5.0 a 0.4 2.4 b 0.0 *
鴇ヶ谷 5.4 5.6 0.2 3.8 0.5 ns
西俣 5.4 a 5.6 a 0.3 1.2 b 0.1 *
三井 7.2 a 6.6 a 0.5 3.2 b 0.5 *
平均 6.5 5.5 0.3 2.4 0.2 2.6 0.2
場所 Sの分散
分析
間伐林 無間伐林 侵入竹林
広葉樹林
草本
S S QS S QS S QS
平栗 5.0 a 5.8 a 0.5 5.6 a 0.1 2.4 b 0.4 **
坪野 4.6 6.6 0.2 5.6 0.0 5.4 0.4 ns
岩本 5.0 6.8 0.6 4.2 0.5 3.0 0.4 ns
中山 1.0 b 5.0 a 0.3 1.2 b 0.3 1.4 b 0.4 ***
三宮 7.6 a 7.4 a 0.5 4.0 b 0.3 0.2 c 0.1 ***
坂尻 4.2 b 7.4 a 0.4 3.4 b 0.2 3.2 b 0.3 * 直下 2.6 b 4.8 a 0.4 2.6 b 0.2 0.4 c 0.0 * 草木 1.6 b 4.0 a 0.3 0.2 b 0.0 1.6 b 0.0 *
寺津 3.6 5.0 0.3 3.0 0.3 2.6 0.5 ns
角間 1.2 1.0 0.7 1.4 0.2 1.6 0.0 ns
津幡 3.8 b 6.2 a 0.3 0.8 c 0.0 2.4 bc 0.1 **
国見 3.8 3.0 0.3 4.0 0.1 ns
鴇ヶ谷 0.6 3.0 0.0 1.4 0.7 ns
西俣 3.2 5.8 0.2 3.8 0.0 ns
三井 0.6 b 3.4 a 0.0 2.4 a 0.2 *
平均 3.2 5.0 0.3 2.9 0.2 2.2 0.2
場所 Sの分散
分析
広葉樹林 間伐林 無間伐林 侵入竹林
表 -2 広 葉 樹 林 、 ス ギ 林 、 竹 林 に 出 現 し た 草 本 の 種 数 比 較
表 -1 広 葉 樹 林 、 ス ギ 林 、 竹 林 に 出 現 し た 木 本 の 種 数 比 較
S: 種 数 、QS: 類 似 度
*(5% 水 準 )・* *(1% 水 準 )・* * *(0.1% 水 準 ): 有 意 あ り 、ns: 有 意 差 無 し abc: 多 重 比 較 ( 記 号 が 同 じ 場 合 は 有 意 差 無 し )
記 号 は 表 -1と 同 じ
東日本大震災で被災した海岸林の復興技術の高度化(第2報)
予 算 区 分 :委 託 研 究 期 間 :平 成 24~25 年 度 担 当 部 名 :森 林 環 境 部 担 当 者 名 :小 倉 晃 小 谷 二 郎
Ⅰ .
目 的
東 日 本 大 震 災 で 被 災 し た 海 岸 林 は 広 大 で あ り 、そ の 復 興 の た め 、従 来 基 準 と さ れ て い た 10,000 本 /ha 植 栽 は 、大 幅 な 苗 木 不 足 、お よ び 、植 栽 後 の 本 数 調 整 の 手 間 と 経 費 が か か る と 予 測 さ れ る 。す な わ ち 、植 栽 本 数 の 見 直 し は 、 喫 緊 の 課 題 で あ る 。 石 川 県 で は H 9 年 度 か ら 5,000 本 /ha 植 栽 を 行 な っ て き た こ と か ら 、低 密 度 植 栽 地 に お け る 植 栽 木 の 生 育 調 査 を 行 い 、今 年 度 は 低 密 度 植 栽 で も 成 林 可 能 で あ る と い う デ ー タ を 蓄 積 す る 。
Ⅱ
. 研 究 成 果
1 ) 調 査 地 の 概 要石 川 県 で 基 準 よ り 低 密 度 で 植 裁 さ れ た 海 岸 ク ロ マ ツ 林 、① 石 川 県 か ほ く 市 白 尾・大 崎 地 区( 以 下「 白 尾 」)に お い て 、活 着 状 況 、毎 木 、風 向 ・ 風 速 調 査 を 行 い 、立 地 条 件 と と も に 成 長 解 析 を す る 。冬 期 の 季 節 風 後 の 葉 の 赤 褐 色 化 等 か ら 判 断 す る と 、十 分 な 防 風 対 策 が 行 わ れ て い る 植 栽 地 で あ る と 判 断 さ れ る 。ま た 、最 前 線 部 の 樹 高 が 防 風 工 の 高 さ を 近 年 越 え た ~ 越 え て い な い ② 石 川 県 宝 達 志 水 町 北 川 尻 地 区 ( 以 下 「 北 川 尻 」) に お い て 最 前 線 部 の 樹 高 お よ び 季 節 風 後 の 葉 が 赤 褐 色 化 し た 高 さ と 防 風 工 の 高 さ を 測 定 し た 。
2 ) 当 年 度 の 研 究 結 果 の 概 要
毎 木 調 査 の 結 果 ( 図 -1)、 白 尾 の 生 存 率 は 高 く 、 樹 高 成 長 は 5,000 本 /ha と 10.000 本 /ha に 差 は な い こ と か ら 、4m 程 度 ま で の 樹 高 成 長 に は 植 栽 密 度 の 影 響 は 無 い と 思 わ れ た 。ま た 、5,000 本 /ha の 樹 高 3.5m ま で の 樹 高 と 枝 張 り の 関 係 は 図 -2 で 示 さ れ 、 高 い 相 関 が 得 ら れ た 。 図 -1,2 よ り 、 防 風 ・ 防 砂 機 能 が 発 揮 さ れ る と 考 え る 林 床 閉 鎖 は 5,000 本 /ha で は 植 栽 後 5 年 程 度 か か る と 考 え ら れ 、10,000 本 /ha と は 1 年 程 度 の 差 で あ る 。よ っ て 、樹 高 成 長 と 林 床 閉 鎖 時 期 か ら 判 断 し て も 人 工 砂 丘 や 防 風 柵 等 に よ っ て 防 風 対 策 の 十 分 な 植 栽 地 や 汀 線 か ら の 距 離 が 十 分 あ る 植 栽 地 は 、 5,000 本 /ha で も 十 分 に 成 林 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 ま た 、 北 川 尻 の 季 節 風 後 に 葉 が 赤 褐 色 し て い る 箇 所 は 、樹 高 が 防 風 工 の 高 さ 以 下 で は 起 こ っ て い な い ( 図 -3)。 こ の こ と か ら 、 防 風 対 策 の 十 分 な 植 栽 地 で は 樹 高 が 防 風 工 の 高 さ 以 下 で あ れ ば 、風 や 砂 等 の 影 響 を 受 け ず 、単 木 で も 生 育 が 可 能 で あ る と 予 測 さ れ る 。
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450
0 5 10 15
H23 5,000 H22 5,000 H21 5,000 H20 5,000 H19 5,000 H18 10,000 H17 5,000 H15 5,000 H13 10,000
y = 83.89l n(x) ‐277.79 R² = 0.8458
0 50 100 150 200 250 300
0 50 100 150 200 250 300 350 400
N=1,435
林 齢
図 - 1 林 齢 毎 の 樹 高 成 長 ( 実 線 :5,000・ 点 線 :10,000本/ha)
樹 高(cm)
図 -2 樹 高 と枝 張 りの関 係 (5,000本 植 栽 、樹 高 350cm まで)
枝 張 り
(cm)
樹 高
(cm)
高 さ m, (
人 工 砂 丘 の高 さ を 基 準
)
図 -3 防 風 柵 の高 さと樹 高 と葉 の赤 色 化 の高 さ(人 口 砂 丘 の高 さを基 準 とする)
竹林管理調査(長期試験)(第2報)
予 算 区 分 : 県 単 研 究 期 間 : 25 年 度
担 当 部 名 : 森 林 環 境 部 担 当 者 名 : 池 田 虎 三
千 木 容 小 倉 晃
Ⅰ
. 目 的
近 年 、 管 理 放 棄 さ れ た 竹 林 が 増 加 し て い る 。 従 来 で は 、 タ ケ ノ コ の 生 産 活 動 に よ っ て 、 竹 林 が 整 備 さ れ て い た が 、 タ ケ ノ コ 生 産 量 の 減 少 に 伴 い 、 管 理 放 棄 さ れ る 竹 林 が 増 加 し た 。 管 理 放 棄 さ れ た 竹 林 は 毎 年 2m 程 度 拡 大 進 行 し て お り 、造 林 地 へ の 竹 の 侵 入 に よ り 、人 工 林 を 枯 ら す 侵 入 竹 林 が 問 題 と な っ て き て い る 。人 工 林 の 枯 死 に よ り 、林 業 経 営 の 悪 化 、公 益 的 機 能 の 低 下 が 懸 念 さ れ て い る 。侵 入 竹 林 を 伐 採 駆 除 す る こ と で 、元 の 森 林 に 戻 す 必 要 が あ る が 、 現 在 の と こ ろ 侵 入 竹 林 の 駆 除 方 法 は 確 立 さ れ て い な い 。 確 実 な 侵 入 竹 林 の 駆 除 方 法 に よ り 、森 林 再 生 活 動 に 貢 献 す る こ と を 目 的 と す る 。
Ⅱ
. 研 究 内 容
金 沢 市 高 尾 、 坪 野 、 角 間 の 3 地 点 で 放 置 区 、 間 伐 区 ( 25 本 / 100 ㎡ )、
皆 伐 区( 各 30×30m )試 験 地 を 設 置 す る と と も に 、下 記 の 課 題 に 取 り 組 ん だ 。
1 . 竹 の 駆 除 技 術 の 開 発
設 置 し た 試 験 区 に お い て 、 伐 採 後 に 発 生 す る 新 竹 の 発 生 本 数 及 び 胸 高 直 径 を 計 測 し た 。 計 測 後 に は 、 新 竹 を 全 て 伐 採 し た 。
Ⅲ
. 研 究 成 果
1 . 放 置 区 に お い て は 、 毎 年 継 続 し て 成 立 竹 本 数 の 0.2~ 2.1%の 新 竹 が 発 生 し て い た 。 平 成 25 年 度 は 新 竹 発 生 の 裏 年 に あ た る た め 、 新 竹 の 発 生 本 数 は 0.3%(前 年 度 比 △ 1.3%)と 少 な か っ た 。 皆 伐 区 で は 、 伐 採 後 4 年 目 に お い て は 、 新 竹 の 発 生 本 数 割 合 は 親 竹 の 成 立 竹 本 数 の 1.9%(前 年 度 比 △ 2.9%)と な っ た 。間 伐 区 に お い て は 、ど の 伐 採 率 に お い て も 、 新 竹 の 発 生 本 数 は 減 少 傾 向 に あ っ た (グ ラ フ 1 )。
2 . 新 竹 の 直 径 の 変 化 は 、放 置 区 で は 、表 、裏 年 に 合 わ せ 直 径 が 変 化 し 、 H25 年 度 は 平 均 根 元 直 径 8.0cm(前 年 度 △ 3.3cm)で あ っ た 。皆 伐 区 で は 、 4 年 間 を 通 じ て 直 径 の 変 化 は 少 な く 、伐 採 後 4 年 目 の 平 均 根 元 直 径 は 、 1.9cm(前 年 度 △ 0.8cm)で あ っ た 。間 伐 区 で は 、竹 林 の 伐 採 率 が 高 い ほ ど 、 発 生 す る 新 竹 の 平 均 直 径 は 減 少 傾 向 に あ っ た (グ ラ フ 2 )。
環 境 林 モ ニ タ リ ン グ 調 査 事 業 ( 第 4 報 )
予 算 区 分 : 県 単 研 究 期 間 : 平 成 2 0~ 2 8 年 度
担 当 部 名 : 森 林 環 境 部 担 当 者 名 : 小 谷 二 郎 ・ 小 倉 晃
Ⅰ . 目 的
い し か わ 森 林 環 境 税 に よ っ て 実 施 し た 事 業 に よ る 森 林 機 能 の 回 復 効 果 を 、 広 葉 樹 の 更 新 状 況 や 下 層 植 生 の 回 復 状 況 か ら 評 価 す る 。
Ⅱ . 調 査 地 お よ び 調 査 方 法
県 内 4 0 箇 所 の 強 度 間 伐( 本 数 間 伐 率 4 0 % 以 上 )実 施 林 に お い て 、広 葉 樹 の 更 新 状 況 お よ び 下 層 植 生 や A
0層 の 変 化 に つ い て モ ニ タ リ ン グ を 行 っ た 。 調 査 は 、 各 調 査 地 に 1 0 0 ㎡ プ ロ ッ ト を 1 箇 所 設 定 し 広 葉 樹 の 更 新 状 況 を 、 さ ら に そ の 中 に 1 ㎡ の 小 プ ロ ッ ト を 5 箇 所 設 け て 下 層 植 生 と A
0層 の 調 査 を 行 っ た 。ま た 、平 成 2 4 年 度 か ら 新 た に 侵 入 竹 林 の 整 備 個 所 に つ い て も 2 0 箇 所 で モ ニ タ リ ン グ を 行 う た め に 同 様 な プ ロ ッ ト 設 定 し た 。
Ⅲ . 調 査 結 果
今 年 度 は 、侵 入 竹 林 整 備 に よ る 新 竹 の 発 生 状 況 、広 葉 樹 の 更 新 状 況 、 下 層 植 生 の 回 復 状 況 、 A
0層 被 覆 率 の 変 化 に つ い て 報 告 す る 。
1 . 新 竹 の 発 生 状 況
親 竹 伐 採 翌 年 に 発 生 し た 新 竹 お よ び 夏 の 刈 り 払 い 後 に 再 生 し た 新 竹 の 密 度 は 、 親 竹 密 度 と 正 の 相 関 関 係 を 示 し た 。 し か し 、 夏 の 刈 り 払 い 後 に 再 生 し た 新 竹 密 度 は 、親 竹 の 密 度 が 高 い ほ ど 増 加 割 合 が 減 少 す る 傾 向 が み ら れ た ( 図 - 1 )。
2 . 広 葉 樹 の 更 新 状 況
広 葉 樹 の 種 数 と 本 数 は 、伐 採 後 直 後 に 比 べ て 1 年 後 に は 大 幅 に 増 加 し た ( 図 - 2 、 3 )。
3 . 下 層 植 生 の 回 復 状 況
下 層 植 生 は 、広 葉 樹 と 同 様 に 1 年 後 に 大 幅 に 増 加 す る 傾 向 が み ら れ た ( 図 - 4 )。
4 . A
0層 被 覆 率 の 変 化
A
0層 の 被 覆 状 況 は 、 伐 採 直 後 と ほ と ん ど 同 じ 傾 向 で あ っ た ( 図 -
5 )。
0 2 4 6 8 10 12
箇所数
伐採直後 1年後
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 0 2 4 6 8 10 12 14
箇所数
伐採直後 1年後
0 10000 20000 30000 40000 50000
0 2 4 6 8 10
箇所数
伐採直後 1年後
0 10 20 30 40 50 50 60 70
図 -1 親 竹 密 度 と 新 竹 密 度 の 関 係
図 -2 更 新 広 葉 樹 の 種 数 図 -3 更 新 広 葉 樹 の 本 数 ( 本/ha)
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
箇所数
伐採直後 1年後
70 80 90 100 図 -4 下 層 植 生 の 回 復 状 況 ( % ) 図 -5 A0被 覆 率 の 変 化 ( % )
●:刈り払い前(y = 0.0276x ‐54.149 R² = 0.6651)
○:刈り払い後(y = 0.0119x ‐25.577 R² = 0.7475)
0 100 200 300 400 500
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000
新竹密度(本
/100㎡)
親竹密度(本
/ha)
多雪地域の森林流域における水収支及び積雪量の観測
予 算 区 分 :委 託 研 究 期 間 :平 成 25 年 度 担 当 部 名 :森 林 環 境 部 担 当 者 名 :小 倉 晃
Ⅰ
. 背 景 と 目 的
急 激 な 経 済 発 展 に 伴 い 、大 陸 か ら の 越 境 大 気 汚 染 物 質 の 流 入 量 が 増 加 し て い る 。特 に 、日 本 海 側 の 森 林 域 は そ の 影 響 を 受 け や す い が 、こ れ ら の 地 域 は 冬 季 の 積 雪 量 が 多 く 、こ れ ま で 森 林 で の 通 年 の 物 質 収 支 研 究 は 行 わ れ て こ な か っ た 。今 後 、日 本 海 側 の 森 林 域 に お い て も 関 東 平 野 周 辺 の 森 林 と 同 様 に 窒 素 飽 和 な ど の 物 質 動 態 の 撹 乱 現 象 が 発 現 す る 可 能 性 が あ る 。こ の こ と か ら 、大 陸 か ら の 越 境 大 気 汚 染 を 解 明 す る た め 、多 雪 地 域 の 森 林 流 域 に お け る 水 収 支 及 び 積 雪 量 を 観 測 す る 。
Ⅱ
. 研 究 内 容 お よ び 結 果
石 川 県 白 山 市 内 の 森 林 流 域 試 験 地 に お い て 、物 質 収 支 の 通 年 観 測 体 制 を 構 築 し 、降 水・降 雪 に 伴 う 大 気 か ら の 森 林 へ の 物 質 の 流 入 量 を 測 定 し 、 そ の 季 節 変 動 を 明 ら か に す る 。
1 . 森 林 域 に お け る 水 循 環
2013 年 4 月 5 日 か ら 2014 年 3 月 25 日 の 年 間 を と し て 森 林 域 へ の 降 雨 ・ 雪 量 の 定 量 化 を お こ な っ た 結 果 、 転 倒 ま す 雨 量 計 に よ る 林 外 雨 は 、 3,575mm こ の 内 降 雨 期 は 2,979mmm、 降 雪 期 ( 12 月 1 6 日 ~ 3 月 12 日 )は 596mm で あ っ た 。ヒ ー タ ー 付 き の 転 倒 ま す 雨 量 計 の 個 体 降 水 の 捕 捉 率 は 過 小 評 価 さ れ る と い う こ と か ら 、 降 雪 量 の 測 定 は 気 象 露 場 周 辺 の 天 空 が 大 き く 空 い て い る 苗 畑 内 に 内 径 が 46cm の 90L の ゴ ミ バ ケ ツ を 設 置 し て 貯 留 式 に よ る 計 測 を 行 な っ た 。 そ の 結 果 、 貯 留 式( 90L ゴ ミ バ ケ ツ に よ る 計 測 )の 降 雨 量 は 、転 倒 ま す 雨 量 計 の 約 1.25 倍 あ っ た 。ま た 、降 雨 期 の 樹 冠 遮 断 率 は 平 均 9%( 3~ 16% )で 、 降 雪 期 の 樹 冠 遮 断 量( 貯 留 式 を 林 外 雨 と す る )は 23%( 12~ 50% )で あ っ た 。
2 . 物 質 収 支
水 質 の 測 定 に つ い て は 月 2 回 行 っ た 。 こ の 流 域 の 特 徴 と し て 、 窒 素 量 が 他 の 地 域 に 比 べ 多 く 、 冬 期 は Na が 多 い 特 徴 が 見 ら れ た 。
4 / 3 0 6 / 6 6 / 2 9 7 / 3 1 8 / 2 7 9 / 1 3 9 / 3 0 1 0 / 2 9 1 2 / 9 1 2 / 1 6 1 2 / 2 6 1 / 6 1 / 1 4 1 / 2 0 1 / 2 7 2 / 7 2 / 1 8 3 / 4 3 / 1 2 3 / 2 5
図 - 2 林 外 雨 の 配 分 ( 各 測 定 期 間 ) 転 倒 ま す 雨 量 計
図 - 1 転 倒 ま す 雨 量 計 と 貯 留 式 降 雨 量 の 関 係 ( 冬 期 の み )
貯留 式 雨 量 計 ( m m )
林 外 雨 の 配 分 ( % )
石川県の冬気候に適応した樹幹注入施用技術の開発(第2報)
予 算 区 分 :県 単 研 究 期 間 :平 成 24~26 年 度 担 当 部 名 :森 林 環 境 部 担 当 者 名 :池 田 虎 三
千 木 容
Ⅰ
. 目 的
樹 幹 注 入 剤 に よ る 松 く い 虫 予 防 は 、環 境 に 及 ぼ す 影 響 が 極 め て 小 さ く 、 一 度 の 施 用 で 長 期 間 、効 果 が 継 続 す る 特 徴 が あ る た め 、松 く い 虫 防 除 対 策 の 重 要 な 技 術 の 一 つ で あ る 。こ の 剤 は 冬 期 間 の 快 晴 日 に 施 用 す る こ と が 明 記 さ れ て い る が 、石 川 県 で は 冬 期 間 の 快 晴 日 が 数 日 し か な い 月 も あ り 、太 平 洋 側 で 作 成 さ れ た マ ニ ュ ア ル に 沿 っ て 作 業 を 行 う こ と が 困 難 で あ る 。こ の た め 、県 内 で の 樹 幹 注 入 作 業 を 円 滑 に 推 進 す る た め に 、こ の 研 究 課 題 に お い て 石 川 県 の 冬 気 候 に 適 応 し た 施 用 マ ニ ュ ア ル を 作 成 す る 。
Ⅱ
. 研 究 内 容
1 ) 気 候 ・ 時 間 帯 別 の 樹 幹 注 入 速 度 調 査
実 際 の 樹 幹 注 入 作 業 は 、様 々 な 気 候 条 の 下 に 行 わ れ て い る 。マ ツ の 樹 液 流 速 変 化 を 測 定 す る こ と で 、樹 幹 注 入 が 可 能 な 時 期 を 調 査 す る と と も に 、注 入 に 最 適 な 気 候 、時 間 帯 を 調 査 す る 。樹 液 流 速 の 測 定 は 、ヒ ー ト パ ル ス 式 の 機 器 を 樹 幹 に 設 置 し 行 っ た (図 1)。
Ⅲ
.
研 究 成 果樹 木 の 活 動 が 停 止 す る と さ れ て い る 冬 季 に お い て 、ク ロ マ ツ の 樹 体 内 の 樹 液 流 速 は 、 時 間 帯 で 変 化 し て い る こ と が 確 認 さ れ た 。 樹 液 流 速 は 、 日 の 出 の 約 90分 後 に 急 激 に 上 昇 し 、 日 の 入 り と と も に 低 下 す る (グ ラ フ 1)。冬 季 の 夜 間 で は 、日 中 に 比 べ て 樹 液 流 速 は 低 下 す る も の の 、気 温 が 高 い 場 合 は 、日 の 入 り 後 の 樹 液 の 流 れ も 確 認 さ れ た 。今 後 、年 間 を 通 じ て の 樹 液 流 速 変 化 を 測 定 す る こ と で 、施 工 に 適 し た 気 候 、時 期 等 を よ り 詳 細 に 検 討 す る こ と が 可 能 と な る 。
図 -1 樹 液 流 速 機 器 ( SFM1) の 設 置 図
気 温 は 金 沢 地 方 気 象 台 の デ ー タ を 引 用
グ ラ フ -1 冬 季 に お け る 樹 液 流 速 の 経 時 変 化
イノシシ・シカの生息と被害状況の把握と防除技術の検討(第1報)
予 算 区 分 :国 補 研 究 期 間 :平 成 25 年 度 担 当 部 名 :資 源 開 発 部 担 当 者 名 :八 神 徳 彦
Ⅰ
. 目 的
イ ノ シ シ 、シ カ は 、明 治 以 前 に は 県 内 に 広 く 分 布 し て い た が 、一 時 絶 滅 し た も の と お も わ れ て い た 。し か し 、近 年 両 者 と も 県 内 で 見 ら れ る よ う に な り 、イ ノ シ シ に つ い て は す で に 奥 能 登 地 方 に 広 が り 、シ カ も 加 賀 地 方 で の 生 育 が 確 認 さ れ 被 害 の 拡 大 が 懸 念 さ れ て い る 。し か し 、本 県 で の イ ノ シ シ 、シ カ に 関 す る 研 究 は ほ と ん ど な く 、生 息 状 況 や 被 害 状 況 は 十 分 把 握 さ れ て お ら ず 、さ ら に 、捕 獲 す る 多 く の 人 が 経 験 が 少 な い た め 、 捕 獲 に も 苦 慮 し て い る 。 こ の た め 、 農 林 総 合 研 究 セ ン タ ー 農 業 試 験 場 、 林 業 試 験 場 、白 山 自 然 保 護 セ ン タ ー 、石 川 県 立 大 学 が 連 携 し て 、イ ノ シ シ 、シ カ の 生 息 状 況 と 被 害 状 況 を 把 握 す る と と も に 、イ ノ シ シ の 檻 に よ る 捕 獲 技 術 や 緩 衝 帯 整 備 に つ い て も 検 討 し た 。
Ⅱ . 内 容
こ の 研 究 で は 、 各 機 関 が 次 の 課 題 に つ い て 取 り 組 ん だ 。
・イ ノ シ シ 捕 獲 檻 に よ る 捕 獲 技 術 向 上 支 援( 農 業 試 験 場 、白 山 自 然 保 護 セ ン タ ー )
・既 存 資 料 を 活 用 し た イ ノ シ シ 農 業 被 害 発 生 リ ス ク マ ッ プ の 作 成( 農 業 試 験 場 、 石 川 県 立 大 学 )
・ シ カ の 生 育 ・ 被 害 状 況 調 査 ( 白 山 自 然 保 護 セ ン タ ー 、 林 業 試 験 場 )
・ 獣 害 対 策 と し て の 森 林 緩 衝 帯 整 備 調 査 ( 林 業 試 験 場 )
こ こ で は 、主 に 林 業 試 験 場 が 実 施 し た シ カ に よ る 森 林 影 響 調 査 と 、獣 害 対 策 と し て の 森 林 緩 衝 帯 整 備 に つ い て 記 載 す る 。
1 シ カ に よ る 森 林 影 響 調 査
シ カ の 生 息 密 度 の 増 加 に 伴 う 林 床 植 生 の 衰 退 程 度 を モ ニ タ リ ン グ し て い く た め に 、加 賀 地 方 の 1 4 カ 所 の 森 林 に 観 測 地 点 を 設 定 し 、林 床 植 生 の 優 占 種 、植 生 被 度 を 記 載 し 、シ カ の 食 痕 か ら 植 生 へ の 影 響 を 5 段 階 で 評 価 し た 。 7カ 所 で わ ず か に 食 痕 が 見 ら れ た が 、 シ カ と カ モ シ カ の 区 別 は で き な か っ た ( 表 - 1 )。
2 森 林 緩 衝 帯 調 査
能 美 市 徳 山 の 緩 衝 帯 整 備 に よ り 刈 り 払 い し た 森 林 の 藪 の 再 生 状 況 の 調 査 を 行 っ た 。 藪 の 刈 り 払 い に よ り 、 林 内 で の 見 通 し は 10m以 上 に な る が 、1年 後 に は 萌 芽 が 発 生 し( 図 - 1 )、林 縁 や 林 外 で は 再 び 見 通 し が 悪 く な っ た 。こ の た め 、獣 の 潜 む 藪 を な く す に は 、森 林 内 だ け で な く 、 林 縁 や 周 辺 部 を 一 体 的 、か つ 数 年 間 継 続 的 に 整 備 す る 必 要 が あ る と 思 わ れ た 。
表 - 1 . シ カ に よ る 林 床 植 生 へ の 影 響
場 所 林 況 林 床 優 占 種 林 床 被 度 影 響 度
六 万 山 1 サワグルミ ウリノキ、 ハウチワカエデ アカソ、 オシダ
低 木 層 30%
草 本 層 90%
な し
六 万 山 2 ブナ、 イタヤカエデ オオバクロモジ アカソ、 オシダ
低 木 層 55%
草 本 層 90%
な し
鴇 ヶ 谷 ブナ ブナ、 オオカメノキ
ササ
低 木 層 20%
草 本 層 50%
な し
九 谷 オニグルミ マユミ、 ヒメアオキ、 イヌガヤ
アザミsp、 スゲsp
低 木 層 15%
草 本 層 80%
軽
刈 安 山 ミズナラ ツバキ、 ヒメアオキ
コアジサイ、 ミヤマシキミ
低 木 層 75%
草 本 層 50%
軽
熊 坂 スギ( スダジイ) スダジイ、 ヒサカキ スゲsp、 イヌツゲ
低 木 層 15%
草 本 層 15%
軽
鞍 掛 山 ミズナラ、 コナラ ヒサカキ、 リョウブ コアジサイ、 ササ
低 木 層 15%
草 本 層 20%
軽
長 谷 町 コナラ ヒサカキ、 コアジサイ
タガネソウ、 シシガシラ
低 木 層 60%
草 本 層 30%
な し
阿 手 クリ、 コシアブラ ツバキ、 ヤマモミジ ササ、 コアジサイ
低 木 層 60%
草 本 層 30%
軽
中 ノ 峠 ケヤキ、 ホウノキ イヌガヤ、 クロモジ スゲsp、 イワガネソウ
低 木 層 90%草 本 層 20%
な し
内 尾 オニグラミ タニウツギ
スゲsp
低 木 層 5%
草 本 層 98%
な し
金 剛 寺 ケヤキ ヒメアオキ
スゲsp
低 木 層 20%
草 本 層 30%
軽
熊 走 ミズキ ツバキ、 ムラサキシキブ
ジュウモンジシダ
低 木 層 50%
草 本 層 50%
軽
影 響 度 は ニ ホ ン ジ カ に よ る 日 本 の 植 生 へ の 影 響 ( 日 本 植 生 学 会 、2012)に し た が い 、 軽 : 注 意 す れ ば 食 痕 な ど の 影 響 や 被 害 が 認 め ら れ る 。 中 : 食 痕 な ど の 影 響 が 目 に つ く 。 強 : 影 響 に よ り 草 本 ・ 低 木 が 著 し く 減 少 。 激 : 群 落 構 造 の 崩 壊 や 土 壌 流 亡 な ど 自 然 の 基 盤 が 失 わ れ つ つ あ る 。
図 - 1 . 刈 り 払 い 1 年 後 の 林 外 と 林 内 の 藪 の 繁 茂 状 況 林 縁 からの距 離 -10m -5m 林 縁 5m 10m 15m
藪 の高 さ(cm) 105 100 90 80 45 45 地 表 を覆 う率(%) 95 95 80 68 65 50
精英樹由来無花粉スギの量産体制の確立(第 2 報)
予 算 区 分 :国 補 研 究 期 間 :平 成 24~26 年 度 担 当 部 名 :森 林 環 境 部 担 当 者 名 :池 田 虎 三
小 倉 晃
Ⅰ
. 目 的
ス ギ 花 粉 症 の 発 症 率 は 石 川 県 民 の 20% を 上 回 る と 推 計 さ れ 、ま た 、発 症 年 齢 の 低 年 齢 化 も 示 唆 さ れ て い る こ と も あ り 、ス ギ 花 粉 症 へ の 対 策 を 求 め る 要 望 は 非 常 に 大 き い 。一 方 、ス ギ は 本 県 の 林 業・木 材 産 業 に お い て 最 も 重 要 な 樹 種 で あ り 、今 後 と も 植 林・育 林 が 必 要 で あ る 。こ の こ と か ら 、成 長 や 材 質 な ど 林 業 上 優 れ た 形 質 を 有 し 、か つ 花 粉 を 飛 散 し な い ス ギ を 生 産 す る こ と が 必 要 で あ る 。 そ こ で 、 平 成 19 年 度 末 に 開 発 し た 無 花 粉 ス ギ を 挿 し 木 に よ り 大 量 生 産 す る た め の 、優 良 な 採 穂 木 の 育 成 を 行 う 。
Ⅱ
. 研 究 成 果
1 ) 交 配 に よ る 新 た な 無 花 粉 ス ギ の 作 出
石 川 県 産 精 英 樹 由 来 の 無 花 粉 ス ギ を 新 た に 作 出 す る た め に 、無 花 粉 遺 伝 子 を ヘ テ ロ で 保 有 す る 珠 洲 市 宝 立 町 産 の 精 英 樹 で あ る 珠 洲 2号 の 花 粉 を 用 い て 、能 登 系 精 英 樹 、加 賀 系 精 英 樹 各 2系 統 に 対 し て 交 配 を 行 っ た 。
2 ) 無 花 粉 ス ギ の 選 抜
平 成 24年 度 に 育 苗 し た 無 花 粉 ス ギ 候 補 苗 木 の 中 の 約 4割 に 、珠 洲 2号 由 来 の 無 花 粉 遺 伝 子 を 保 有 す る 個 体 が 確 認 さ れ た (図 1 )。無 花 粉 遺 伝 子 の 確 認 に は 、 無 花 粉 遺 伝 子 に 特 有 の SNP(一 塩 基 変 異 )を 解 析 す る こ と に よ り 、 行 っ た 。
図 -1 無 花 粉 遺 伝 子 を 保 有 す る ス ギ 苗 木
抵抗性マツの改良(第21報)
予算区分:国 補 研究期間:平成4年度~
担当部名:資源開発部 担当者名:八島 武志 千木 容
Ⅰ.目的
松くい虫による被害跡地の復旧を進め、海岸防災林等の造成を早急に進める ため、マツノザイセンチュウへの抵抗性を有するマツを選抜し、これを母樹と して採種園を造成し、松くい虫に強い種子・苗木を供給する。
Ⅱ.概要
激害地での残存個体からマツノザイセンチュウに抵抗性を有する可能性のあ る個体を選抜し、暫定採種園を造成した。その採種園由来の種子から得られた 三年生の実生苗に対し、マツノザイセンチュウを接種して抵抗性の強さを判断 した(図-1)。
Ⅲ.実施結果
抵抗性候補木実生苗134家系に一次検定を実施したところ、5家系合格と判断 された。また昨年度一次検定で線虫接種し生存した実生苗112家系に実生後代検 定を実施したところ7家系が合格と判断された。
また、暫定採種園産の種子を苗木生産者に販売しているが、生産者が苗木に
線虫を接種し生き残った約 (確認中) 本の抵抗性クロマツ苗が供給された。
抵抗性候補木を増殖
激害地での残存個体(抵抗性候補木)の選抜
マツノザイセンチュウ接種(一次検定)
一次検定合格
森林総合研究所林木育種センターにて二次検定
二次検定合格
暫定抵抗性採種園の造成
抵抗性種子の生産
抵抗性採種園の造成
図-1 抵抗性マツ生産の流れ
種苗生産者による抵抗性苗の生産 抵抗性種子の生産
低コストな再造林技術の確立(第2報)
予 算 区 分 :県 単 研 究 期 間 :平 成 24~28 年 度 担 当 部 名 :森 林 環 境 部 担 当 者 名 :小 倉 晃
小 谷 二 郎
Ⅰ
. 目 的
石 川 県 の 人 工 林 資 源 の 状 況 は 成 熟 化 ( 木 材 製 品 と し て の 利 用 が 可 能 ) し て お り 、伐 採 ・ 利 用 が 必 要 で あ る 。ま た 、若 齢 林 が 少 な く 資 源 に 偏 り が み ら れ る こ と か ら 資 源 の 平 準 化 が 必 要 で あ る 。県 ビ ジ ョ ン で は「 10 年 後 の 県 産 材 供 給 量 30 万 m3の 実 現 」 を 提 示 し て い る こ と か ら 小 面 積 皆 伐 が 必 要 と な る が 、木 材 価 格 の 低 迷 と 再 造 林 コ ス ト 高 に よ り 伐 採 が 進 ま な い の が 現 状 で あ る 。こ の よ う な こ と か ら 、経 済 林 で は 再 造 林 を 推 進 し 資 源 の 循 環 を 図 り 、低 コ ス ト 再 造 林 技 術 の 確 立 が 必 要 で あ る 。そ こ で 、県 産 ス ギ を 使 用 し た 植 栽 方 法 の 見 直 し に よ る 低 コ ス ト で 健 全 な 生 育 が 確 保 さ れ る 再 造 林 技 術 の 確 立 を 目 的 と し て 研 究 を 行 う 。
Ⅱ
. 研 究 成 果
1 )西 俣 県 有 林 に お い て 、植 栽 密 度・下 刈 り 期 間 を 従 来 基 準 よ り も 低 く・
短 く し た 試 験 プ ロ ッ ト を 設 定 し た 。
2 )石 動 山 県 有 林 に お い て 、マ ル チ キ ャ ビ テ ィ コ ン テ ナ 苗・大 苗 植 栽 試 験 を 行 い 。 コ ン テ ナ 苗 ・ 大 苗 ・ 普 通 苗 を 植 栽 し た 試 験 プ ロ ッ ト を 設 定 し た 。
3 )西 俣 県 有 林 に お い て 、ス ギ の M ス タ ー コ ン テ ナ 苗 に つ い て 作 業 工 程 の ビ デ オ 撮 影 を 行 い 、 植 栽 作 業 工 程 コ ス ト に つ い て も 検 討 し た 。
a)大 苗 の 毎 木 調 査
植 栽 し た ス ギ 大 苗 に つ い て 、平 成 25 年 4 月 下 旬 ,7 月 下 旬 ,10 月 下 旬 に 毎 木 調 査 を 行 な っ た 結 果 ( 図 - 1 ), 活 着 率 は 100% で あ っ た が , 春 先 の 植 栽 木 は 雪 に よ り 全 て 倒 れ て お り , 全 て 雪 起 こ し の 作 業 を 行 な っ た 。 ま た 、4 月 下 旬 の 平 均 樹 高 は 90cm で 、こ の 時 の 周 辺 植 生 は サ サ 程 度 し か 繁 茂 し て い な か っ た 。7 月 下 旬 の ス ギ の 平 均 樹 高 は 107cm,苗 木 を 中 心 と し た 平 均 植 生 被 度 は 42% ,平 均 の 植 生 高 は 85cm で あ り 、草 本・木 本 多 数 の 種 類 が 見 ら れ た 。 本 来 な ら 下 刈 り を し て い る 時 期 で あ る が , グ ラ ッ プ ル で 1m 四 方 以 上 を 耕 転 し て い る た め 植 栽 木 の 周 辺 は 裸 地 化 し ,下 草 が 繁 茂 し に く い 状 況 に な っ て い る た め , 遠 方 か ら 見 る と , 坪 刈 を し て い る よ う な 状 況 で あ っ た( 写 - 1、2)。10 月 下 旬 に 測 定 し た と こ ろ ,ス ギ の 平 均 樹 高 は 140cm 平 均 , 植 生 被 度 は 70% で , 平 均 植 生 高 は 95cm で あ っ た 。
0 25 50 75 100
0 50 100 150 200 250
スギ樹高 下層植生高さ 下層植生被度
樹高
(m)被度
(%)4月下旬 7月下旬 10月下旬
図 1 大 苗 樹 高 と 1 m 四 方 の 植 生 の 高 さ ・ 被 度 エ ラ ー バ ー は 最 大 最 小
写 1 植 栽 木 の 周 り は 裸 地 化 写 2 坪 刈 を し た よ う な 状 況
育 林 技 術 試 験 ( 第 1 7 報 )
予 算 区 分 : 県 単
研 究 期 間 : 平 成 9~ 27 年 度 担 当 部 名 : 森 林 環 境 部
担 当 者 名 : 小 谷 二 郎
1 . 長 期 試 験 地 調 査 事 業
Ⅰ
. 目 的
森 林 、林 業 の 特 質 で あ る 長 期 性 を 重 点 に 、長 期 間 に わ た る 変 化 等 を 固 定 試 験 地 に よ っ て 調 査 実 証 す る 。
Ⅱ
. 試 験 内 容
・
ケ ヤ キ 人 工 林 の 間 伐 試 験 ( 珠 洲 県 有 林 : H9~ )・
ブ ナ 人 工 林 の 間 伐 試 験 ( 白 山 市 中 宮 : H18~ )・
ブ ナ 科 3 種 の 種 子 生 産 調 査 ( 県 内 8 箇 所 : H11~ )・
ブ ナ 天 然 林 の 維 持 更 新 調 査 ( 鴇 ヶ 谷 県 有 林 : H11~ )・
ケ ヤ キ と ス ギ の 混 交 植 栽 試 験 ( 輪 島 : H13~ )・
ア テ 漏 脂 病 調 査 ( 穴 水 : H23~ )Ⅲ
. 試 験 結 果
今 年 度 は 、ス ギ と ケ ヤ キ の 混 交 植 栽 試 験(13 年 目 )に つ い て 調 査 し た( 図
-1)。 生 存 率 、 成 長 と も ス ギ が ケ ヤ キ を 上 回 っ て い た 。3 年 前 に 比 べ ケ ヤ キ の 成 長 が や や 上 向 き 傾 向 に あ っ た 。 ス ギ は H11 に 、 ケ ヤ キ は H13 に そ れ ぞ れ 枝 打 ち を 行 い 、 枝 下 高 は ス ギ が 4.3 m、 ケ ヤ キ が 1.8 mと な っ た 。
2 . ア テ 試 験 林 調 査 事 業
Ⅰ
. 目 的
県 木 ア テ の 各 種 施 業 試 験 を 実 施 し 、ア テ 人 工 林 の 効 率 的 経 営 方 法 に つ い て 検 討 す る 。
Ⅱ
. 試 験 内 容
試 験 項 目 :
A . 択 伐 林 ( 複 層 林 ) 誘 導 試 験
ア テ 一 斉 林 を 伏 条 更 新 や 樹 下 植 栽 に よ っ て 、択 伐 林 へ 誘 導 す る 方 法 を 検 討 し て い る ( 1984 年 ~ : ア テ 試 験 林 )。
B . ア テ に よ る 早 期 多 収 穫 林 業 の 実 証 試 験
空 中 取 り 木 か ら 柱 材 生 産 ま で 、早 期 に 間 断 無 く 収 益 を 得 る こ と を 目 的 と し て 、ア テ の 大 苗・高 密 度 植 栽 に 肥 培 を 組 み 合 わ せ た 育 成 試 験 を 実 施 し て い る ( 1993 年 ~ : 輪 島 市 三 井 町 洲 衛 )。
空 中 取 り 木 苗 由 来 の マ ア テ 系 と エ ソ ア テ 系 の 施 肥( 初 期 3 年 連 続 )に よ る 初 期 成 長 の 比 較 試 験 を 実 施 し て い る ( 2000 年 ~ : 輪 島 市 町 野 町 金 蔵 )。
D. 間 伐 試 験
ア テ 一 斉 林 の 間 伐 方 法 を 検 討 す る た め に 、38 年 生 の マ ア テ を 主 と す る ア テ 人 工 林 で 、弱 度 間 伐 区( 本 数 間 伐 率 16.4 % )、強 度 間 伐 区( 同 35.0 % )、
列 状 間 伐 区 ( 同 24.5 % )、 無 間 伐 区 を 設 定 し 成 長 を 比 較 し て い る ( 2003 年 ~ )。 ま た 、 同 林 分 の 試 験 地 の 隣 接 林 分 に 強 度 間 伐 区 ( 本 数 間 伐 率 44.6 % )・弱 度 間 伐 区( 同 25.0 % )・無 間 伐 区 を 2006 年 に 設 定 し 、成 長 ・ 残 存 木 の 形 質 を 観 測 し て い る ( 2006 年 ~ : ア テ 試 験 林 )。
Ⅲ
. 試 験 結 果
今 年 度 は 、D. 間 伐 試 験 (2003 年 施 工 ) の 10 年 目 の 結 果 に つ い て 報 告 す る ( 表 -1)。 材 積 成 長 量 は 対 照 区 (208.4m3/ha) が 最 も 大 き か っ た が 、 材 積 成 長 率 は 強 度 区 (6.21% ) で 最 も 高 か っ た 。 対 照 区 で は 優 勢 木 ほ ど 成 長 率 が 高 く な る 傾 向 が み ら れ た の に 対 し 、強 度 区 で は 小 径 木 ほ ど 成 長 率 が 高 く 、全 体 に 径 級 が 揃 う 傾 向 が み ら れ た 。弱 度 区 と 列 状 区 は 小 径 木 の 成 長 率 は 高 い も の か ら 低 い も の ま で 様 々 で あ っ た 。
0 20 40 60 80 100
0 200 400 600 800 1000 1200
2000 2005 2010 2015
生存率(%)
樹高(m)
西暦
ケヤキ(樹高)
スギ(樹高)
ケヤキ(生存)
スギ(生存)
図 -1 ケ ヤ キ - ス ギ 混 交 植 栽 地 で の 生 存 率 と 樹 高 成 長
本数 D H BH 本数 D H BH 本数 BH
本/ha cm m m m3/ha Ry 本/ha cm m m m3/ha Ry 本/ha m m3/ha Ry 1993 16.9 11.6 6.0 292.4 0.78 1993 16.9 11.6 6.0 292.4 0.78 1993 20.3 14.2 6.2 500.4 1.04
0 0.0 0 3.4 c 2.6 c 0.2 208.0
0 0.0 5.25
1780 14.5 9.6 4.2 168.9 0.54 1335 14.8 9.7 4.3 133.9 0.41 1335 19.7 12.9 4.3 261.3 0.66
445 35.0 0 4.9 a 3.2 a 0.0 127.4
25.0 20.7 5.92
1834 14.8 9.4 3.9 173.6 0.59 1192 15.3 9.6 4.0 120.0 0.39 1192 20.3 12.5 4.0 252.2 0.63
642 53.6 0 5.0 a 2.9 b 0.0 132.2
35.0 30.9 6.21
1885 14.9 9.6 4.3 187.1 0.61 1576 15.2 9.8 4.4 163.2 0.52 1576 19.4 12.5 4.4 314.5 0.77
309 23.9 0 4.2 b 2.7 bc 0.0 151.3
16.4 12.8 6.03
m 間伐前
弱度 1
2
3
4
材積
材積 材積
対照
10年後/成長量/材積成長率(%)
処理区
列状
強度
間伐直後/間伐量/間伐率(%)
D cm
H
表 -1 ア テ 一 斉 林 の 間 伐 後 10年 間 の 成 長 と 成 長 率
マルチキャビティコンテナによる育種苗等の生産と現地植栽試験
予算区分:国 補 研究期間:平成 23~25 年度 担当部名:森林環境部 担当者名:千木 容
Ⅰ.目 的
石川県では、春先のフェーンや夏期の日射等により高温・乾燥状態が著しい年 には、海岸防災林造成など厳しい環境では植栽された苗木が活着不良になり成 育が著しく悪化する。一方、マルチキャビティコンテナは、養水分の吸収を担 う根端量を増加させるために開発された林木育成容器である。造林分野におい ても、育苗期間の短縮や植栽作業の省力化による一層の低コスト化が求められ ているが、当コンテナ苗は活着が良く、その後の成長速度が速いと言われてい る。本県において当コンテナの適用例がないため、本研究で育成・植栽試験を 行い普及に資する。
Ⅱ.内 容
(1)平成24年3月からクヌギについて、Mスターコンテナ等を用いて30 0ml~1,300mlの容量の異なるコンテナで育苗し、成長状況を 調査した。
(2)1年後の平成25年春に能美市岩本地内で現地植栽を「スペード」と言 う用具を用いて行い、植栽に掛かる時間を計測した。また、裸苗2年生、
ビニールポット従来型2年生と活着率および1年後の成育状況を比較し た。
(3)平成25年4月からスギ1年生苗をMスターコンテナに移植し11月ま で育苗し、小松市丸山地内の造林地に12月に現地植栽を行い、1冬期 経過した平成26年春に、同時に植栽した4年生の裸苗との状況を比較 した。
Ⅲ.結 果
(1)クヌギのコンテナ苗の成長状況を表-1に示す。
表-1 クヌギコンテナ苗の1年後の成長状況
コンテナ容量 平均苗高(cm) 平均根元径(mm) 得苗率(%)
300ml 34 3.0 7
500ml 54 4.2 67
900ml 54 4.4 62
1,300ml 54 4.8 86
得苗率:山地植栽可能な苗高50cm以上の苗木の割合
苗木の平均苗高、根元径、得苗率の状況からコンテナ容量500ml以上で
成長状況がほぼ同程度なので、1年間の育苗には500mlの容器が適当と判
(2)平成26年4月におけるクヌギ苗の平均成長状況と植栽にかかる時間は、
表-2のとおりである。
表-2 クヌギ苗の成育状況と植栽にかかる時間
苗 木 植栽時の苗高(cm)
1年経過後 の苗高(cm)
1年間の 成長量
(cm)
1年経過後 の根元径
(mm)
枯損率 (%)
植栽に掛 かる時間
(1本/秒)
裸苗2年生 65.5 78.4 12.9 9.0 10.0 76 Mスターコンテ
ナ1年生 58.1 74.4 16.3 6.7 0.0 55 ビニールポット
従来型2年生 64.0 84.3 20.3 7.7 2.6 52
Mスターコンテナで育成した苗は、成長が速かったので1年間で植栽可能な 苗高である50cm以上に達した1年生苗を植栽した。従来のビニールポット 苗と裸苗はこれまで事業で用いられている2年生である。植栽後1年間の成長 状況は、裸苗が最も小さくかつ枯損率は10%と最も大きくなった。ビニール ポット従来型は、1年間の成長量が最も大きく、枯損率も低かった。Mスター コンテナは、植栽時には最も苗高が小さかったが、1年間の成長量は裸苗と従 来型ポット苗の中間であり、枯損するものは見られなかった。Mスターコンテ ナ苗は、根系の形状から植栽後の成長が良いとされており、今後の成長につい て追跡したい。
植栽に掛かる時間については、ビニールポット従来型が52秒要したのに対 して、Mスターコンテナ苗が55秒で2秒長く、裸苗が76秒で24秒長く要 した。
(2)スギ植栽地の1冬期経過後の状況を表-2に示す。
表-2 スギ植栽地の状況 単位:本
苗 木 正常 折れ 枯れ 倒れ
M スターコンテナ苗 77 8 0 12
裸苗 87 3 2 3
小松市丸山地内は、本県の中でも豪雪地帯で1mを超える積雪があった。M スターコンテナ苗の倒れは、雪起こしによって回復が見込まれる状況にある。
植栽前のMスターコンテナ苗の平均苗高は、37.6cm、平均根元径は、5.
4mmであり、今後の成長状況を追跡調査したい。
県産スギ材を活用した接着重ね梁の長尺化・高品質化技術の開発(第3報)
予 算 区 分 : 国 補 研 究 期 間 : 平成23~27 年度 担 当 部 名 : 資 源 開 発 部 担 当 者 名 : 滝 本 裕 美 松 元 浩
石 田 洋 二
Ⅰ.目 的
「公共建築物木材利用促進法」が施行され、低層の公共建築物については原則とし て全て木造化を図ることとなったが、現在、公共建築物や住宅の梁・桁材は外国産材 の無垢および集成材が主流となっている。そこで、無垢材や集成材に比べ材料の歩留 まりが高いスギ接着重ね梁について、確実な長尺化(たて継ぎ)技術を開発し、県産 材の需要拡大に資することを目的とする。
Ⅱ.内 容
乾燥前の曲げヤング係数が 6.4kN/mm
2以上の製材寸法 135mm 角、長さ 3m のスギ心持 ち正角材 260 本(石川県小松市産)について高温セット処理を用いて乾燥した。乾燥 材について、寸法、重量、縦振動ヤング係数を測定するとともに、製材の JAS に基づ いて目視等級区分を行った。これらを、原則として、機械等級(縦振動ヤング係数に よる等級区分)および目視等級が同一の材同士を組み合わせて、フィンガージョイン トによるたて継ぎを施し、たて継ぎ間隔を 100cm とし、梁背方向に 3 層重ねた接着重 ね梁(幅 120mm、梁背 360mm、長さ 8000mm)を製造した。なお、縦振動ヤング係数は製 材の JAS と異なり、約 10kN/mm
2ごとに区分した。
上記で製造した長尺・大断面接着重ね梁について、スパン 6480mm、ロードスパン 2160mm の実大曲げ強度試験を実施した。
Ⅲ.結果と考察
1.エレメントの機械等級および目視等級
表 1 に調達したエレメント 260 本のうち、接着重ね梁の製造に使用した 240 本の機 械等級区分および目視等級区分の内訳を示す。エレメントの機械等級は、E80~E100 が 多く分布し、目視等級は半数以上が 2 級であった。
2.エレメントの組み合わせ
表2に接着重ね梁を構成するエレメントの機械等級および目視等級区分の内訳を示 す。1 体の接着重ね梁の製造に 8 本のエレメントを必要とするため、30 体の接着重ね 梁(曲げ強度試験用)を製造した。
3.長尺・大断面接着重ね梁の曲げ強度試験
接着重ね梁の曲げヤング係数は、接着重ね梁を構成するエレメントの平均ヤング係 数(縦振動ヤング係数)の約0.9倍であることが明らかになった(図1) 。
昨年度実施した接着重ね梁の曲げ強度試験結果と併せて図 2 に示す。2 年間で 55 体
の試験を実施した結果、曲げ強度の下限値は、17.0N/mm2 で、構造用製材の JAS の無等
級材の基準強度の 76%であった。今後は、せん断、めり込み性能についても実大強度データを
表1 エレメントの機械等級区分および目視等級区分 機械等級 縦振動ヤング係数
(kN/mm2) 本数 目視1級 目視2級 目視3級 目視等級外
E70 6.9~7.8 28 1 25 2 -
E80 7.8~8.8 64 5 43 14 2
E90 8.8~9.8 43 4 30 7 2
E100 9.8~10.8 49 15 19 14 1
E110 10.8~11.8 32 14 12 5 1
E120 11.8~12.7 16 3 8 5 -
E130 12.7~13.7 8 2 4 2 -
合計 240 44 141 49 6
表2 製造した接着重ね梁の本数と構成エレメントの機械等級区分および目視等級区分
1級のみ 2級のみ 3級のみ 異等級
E70 6.9~7.8 3 - 3 - -
E80 7.8~8.8 8 - 5 1 2
E90 8.8~9.8 5 - 3 - 2
E100 9.8~10.8 6 1 2 - 3
E110 10.8~11.8 4 1 1 - 2
E120 11.8~12.7 2 - 1 - 1
E130 12.7~13.7 1 - - - 1
異等級 1 - - - 1
30 2 15 1 12
合計 機 械 等 級
縦振動ヤング係数
(kN/mm2) 本数 目視等級
y = 0.923 x R² = 0.885
0 2 4 6 8 10 12 14
0 5 10 15
接着重ね梁の曲げヤング係数 (kN/mm2)
エレメントの平均ヤング係数(kN/mm2)
y = 3.765 x ‐5.998 R² = 0.507
0 10 20 30 40 50
0 2 4 6 8 10 12 14
曲げ強度(N/mm2)
曲げヤング係数(kN/mm2)
図 1 エレメントの平均ヤング係数と 接着重ね梁の曲げヤング係数の関係
図 2 接着重ね梁の曲げヤング係数と 曲げ強度の関係
写真 1 接着重ね梁の曲げ強度試験風景
県産スギ平角材から採材した梁桁材の材質性能評価試験(第2報)