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ホスピタリティの深層に向けて

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ホスピタリティの深層に向けて

― 白百合女子大学・英語英文学科・ 

副専攻「ホスピタリティ・マネジメントプログラム」 

におけるホスピタリティ教育 ―

島 田 由 香

はじめに

 白百合女子大学英語英文学科のホスピタリティ関連授業は、2010年にス タートした「ビジネスマナー」科目を皮切りに、2012年度からは「ホスピ タリティ・マネジメントプログラム」として「ホスピタリティの英語」初 級・中級がスタート、2013年度からは「ホスピタリティ・マネジメント概 論」、2014年度からは「ホスピタリティ・マネジメント特講A」、2015年度 からは「ホスピタリティ・マネジメント特講B」「海外ホスピタリティ研 修A」、2016年度からは「ホスピタリティ・マネジメント演習」といった 科目が加わり順調に発展してきている。

 ホスピタリティは、元来、西欧で哲学、社会学、経済学、教育学と多岐 の分野にわたって広く研究されている。日本では、1990年代から観光産業 やホスピタリティ産業の発展に伴い、人材育成やビジネススキルの重要性 が認識され、ホスピタリティ・マネジメントと呼ぶ学部での研究が発展し つつあるのが現状である。日本の大学におけるホスピタリティ教育には、

マネジメントの分野の他、観光ホスピタリティ教育の分野もある。その授

業の一環としてホスピタリティ教育とマナー教育が行われている傾向があ

る。そのマナー教育の現状は、サービス業での顧客満足を得るための社員

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教育を真似て、ビジネススキルを学ぶ授業がほとんどである。

 白百合女子大学の学生は建学の精神にもとづく宗教教育の中で、「隣人 を自分のように愛する(大切にする)」こと、「他者の必要に自分の心を開 く」ことを長期間に渡って教えられている。その土壌の上で、本プログラ ムでは、心を大切にしようとする学生たちが更にマナーやホスピタリティ に関する興味を持ち、国境、性別、世代を超えたホスピタリティ・マイン ドを身に付けることを考慮に入れた教育内容を心がけている。「ホスピタ リティ」という言葉は、通常「思いやり」「おもてなし」と訳されること が多いが、本プログラムでは、 「相手の立場をよく観察、理解し、よりコミュ ニケーションを深めるための心遣い、行動のことを指すもの」として学生 には説明している。授業では、ホスピタリティの成り立ち、広義、狭義の ホスピタリティの意味を学び、国内外の航空・ホテル・旅行業界で活躍し ている現役の方々から、各企業のホスピタリティについて講義を受ける機 会を設けている。また「ホスピタリティの英語」では、より良いコミュニ ケーションに必要な世界共通語の英語能力を身に付け、同時に空港・ホテ ル・旅行業界の英語を学び、あわせて、世界の地理・文化・習慣をも学ん でいる。

 同時に希望者は、英語英文学科主催の「海外ホスピタリティ研修」で、

3週間の英国語学留学とBritish Airways 英国航空訓練センターでの客室 乗務員トレーニング研修を受講できる。また2019年春には日本航空ハワ イ・ホノルル国際空港(2017年4月から、ダニエル・K・イノウエ国際空 港に名称変更)でのグランドスタッフ研修がスタートする予定である。他 にも英語英文学科主催のイギリス・アメリカへの語学留学、グローバル・

ビジネス・プログラム・センター(GBP)主催のアメリカ・台湾における、

ホテル、ブライダルのインターンシップなど実践的な経験も積むことがで

きる。

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 このため本プログラム履修者には、エアラインだけでなく、ホテル・旅 行会社・ブライダルなどホスピタリティを必要とされる企業への就職希望 者も増えている。現在、ホスピタリティ業界=ツーリズム産業=観光産業 と同意義で表されることが多く、政府の表記はツーリズム産業または観光 産業としている(以下、本文ではツーリズム産業とする)。ツーリズム産 業とは、航空や鉄道・バス・船舶などの運輸業、旅館・ホテルなどの宿泊 業、テーマパークなどの観光施設、レストランや土産店、MICE

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に関わる イベント・コンベンション業、ガイド、旅行会社などツーリズムに関連す る産業のことを指す。本プログラム履修者のツーリズム産業界への希望者 は年々増え、今年度、プログラム履修者からは、エアライン合格者は延べ 22名、ホテル、ブライダルは延べ18名が合格している(2017年9月末現在)。

 本稿では、ホスピタリティ能力を持つ人材が求められるツーリズム産業 において、白百合の学生が高い評価を得られているのはなぜか、その背景 を、時代の流れと日本のツーリズム業界の現状、そして白百合女子大学英 語英文学科における「ホスピタリティ・マネジメントプログラム」の5年 間の実践報告を基に、カトリック教育とホスピタリティ教育との親和性と いう観点から考察していきたい。

1.明日の日本を支える観光ビジョン

 国連は、2017年を「持続可能な観光国際年」に制定した。ツーリズム産

業の重要性が唱えられている。国連の掲げる17の持続可能な開発目標のう

ち、ツーリズム産業は3目標(目標8、12、14)の中で取り上げられてい

る。文化や歴史的・文化的遺産、自然環境の保護を可能にしながら地域の

雇用や収入を生み出し、持続可能な発展のための重要な推進力となること

が期待されている。この産業が非常に活況であり、今後も伸び続けるとい

うことは既によく知られている。2015年には、のべ12億人の人が海外に出

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かけ、最良のシナリオでは2030年にはこれが18億人に達すると考えられて いる。この産業は、世界のGDPの10%を占める重要な産業となっており、

現在11人に1人がツーリズム産業に従事している計算になるが、2030年に はこれが9人に1人にまで拡大する可能性がある。世界銀行総裁のジム・

ヨン・キ氏も、持続可能な発展におけるツーリズム産業の重要性を支持し ており、ツーリズム産業がもたらす今後の可能性に注目している

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。  日本は、観光ビジョンについて、2003年に当時の小泉総理が「観光立国 宣言」をして、国会の施政方針演説で、「2010年までに訪日外国人旅行者 を1千万人に増やす」目標を掲げた。この目標自体は達成されなかったが、

その後、訪日外国人観光客者数は、2012年に836万人、2015年に約2倍の 1974万人、2016年は、日本政府観光局(JNTO)発表で過去最高2403万人 に達している。

 安倍総理は、今年3月に「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」 (議 長・安倍晋三首相)を開き、訪日外国人観光客数の目標人数を倍増させ、

2020年に4千万人、2030年に6千万人とすることを決めた。日本は、観光 を首相が掲げる名目国内総生産(GDP)600兆円達成への成長戦略の柱に したい考えだ。この観光ビジョン構想会議の冊子1ページ目には、 「めざせ!

観光先進国。すなわち、全国津々浦々その土地ごとに、日常的に外国人旅

行者をもてなし、我が国を舞台とした活発な異文化交流が育まれる、真に

世界に開かれた国。そこでは、次々と新たなサービスの創造やイノベーショ

ンが起こり、地域の産業、経済の足腰が強化されるといった好循環が創出

される。そのためには、まず、我が国の豊富で多様な観光資源を誇りを持っ

て磨き上げ、その価値を日本人にも外国人にも分かりやすく伝えていく必

要がある。そして観光の力で地域に雇用を生み出し、人を育て・・・・・・高齢

者や障がい者などを含めたすべての旅行者が「旅の喜び」を実感できるよ

うな社会を築いていく必要がある」と記されている。新たな目標として「訪

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日外国人旅行者増加」 「訪日外国人旅行者の消費額増加」 「外国人リピーター 数増加」を挙げている。

 一方、日本人の観光についてみていくと、日本の観光は、「爆買い」と 言う言葉が各種メディアでごくごく当たり前のように使われ出したよう に、中国人観光客が高額商品から日用品まで大量に買い込む消費欲が日本 経済にもたらす経済効果は大きく、日本企業を潤している。中国人に限ら ず、訪日外国人の数は増加している。しかし、日本人の国内観光旅行客数 は、熊本地震の影響などから低迷している。2016年度上期の日本人の国内 宿泊数は前年比マイナス3%と下回っている。みずほ総合研究所のリサー チによると、2020年の国内旅行者数を予想すると、2020年は3億200万人 と2015年の3億1300万人に比べて1,100万人減少することになる。2015年 の国内旅行者数が既に2010年比で450万人程度減少していることと比べる と、少子高齢化によりさらに今後も減少が予想されている。このように訪 日外国人観光客数が増える一方で日本人の国内旅行者数の減少は避けられ ないのが現状予想である。しかし、訪日外国人数の増加予想は、日本人の 減少分を補って余りある規模とも予想される

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。更に、国境を超える観光 客数の増加は、全世界的現象である。国連の世界観光機関の調査によると 各国の外国人観光客数がこの20年で2倍以上に増えている。その数は1995 年5億2700万人に対して2015年は11億8400万人になっている。

 日本では、観光というブームが、はるか昔のバブル期の象徴だったとい うイメージがあるかもしれないが、21世紀、観光は、全世界的ブームとなっ ている。今後ますます、国境を超える観光客は増え、観光客の移動手段、

滞在に関わるツーリズム産業は21世紀の最も有望な成長産業の一つになっ ていく。それ故、日本政府も日本のツーリズム産業もまさに、 「観光先進国・

日本」の実現に向け、官民を挙げて挑戦しているのが現状である。

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2.ホスピタリティという言葉の解釈

(1)「もてなし」と「ホスピタリティ」の異同

 2007年、国土交通省の政策レビュー冊子には「訪日外国人観光客の受け 入れ推進」のためには「ホスピタリティの向上が不可欠」と記されている。

しかし2017年に発表された「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」

観光ビジョン冊子からは「ホスピタリティ」と言う言葉が消えている。10 年前に使われていた「ホスピタリティ」という言葉が「もてなし」という 言葉にとってかわられた形だ。これは、2013年9月、オリンピック・パラ リンピック招致活動のプレゼンテーションにおいて、滝川クリステルさん が「お・も・て・な・し」という言葉をアピールして以来、日本国内で「ホ スピタリティ」と「おもてなし」は同意語だという認識が広まったためだ と思われる。だとすれば、日本においては「ホスピタリティ」と言う言葉 の真の意味が理解されていないということになる。

 ホスピタリティとは? ホスピタリティという言葉の解釈は、その概念を どう定義するかで変わってくる。日本では、上記のように、テレビなどで 流布した滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」もあり、また、日 本の伝統文化である茶道で、茶事において亭主一人が客を何人ももてなす 茶会などの影響もあり、温かなもてなし=ホスピタリティとクローズアッ プされるようになった。日本のエアラインは、日本航空が「世界一愛され る航空会社を目指す」という目標を掲げ、全日本空輸は「ANAが大切に してきたおもてなしの心」を世界に発信していくことをブランドコンセプ トに掲げ、客室乗務員が接遇のスキルを競うコンテスト「“OMOTENASHI”

の達人コンテスト」を行っている。日本を代表する航空会社が揃って、ホ スピタリティ=「和のおもてなし」として他国の航空会社との違いを強調 しているわけである。

 「おもてなし」をそのままローマ字で表現した omotenashi はすでに欧米

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メディアにおいては「日本文化の素晴らしさを示す概念」のひとつとして 捉えられていたようだ。例えば、20年前の1997年4月20日付の『ニューヨー ク・タイムズ』では、日系人記者 ELIZABETH ANDOH の以下の記事が 掲載された。

THE Japanese call it omotenashi: a service concept for which no  simple translation exists. Thoughtfulness, dedication to customers’ 

needs and meticulous attention to detail are key elements of such  service.

「日本人はこれを「おもてなし」と呼んでいる。単純な英訳語は存在 しないサービスの概念で、心遣い、顧客のニーズへの献身、細いとこ ろにまく行き届く配慮がこうしたサービスの主要な要素だ」

 2009年12月15日にはロサンゼルスの日刊紙 Daily Breeze に omotenashi についての記事が掲載された。

“Omotenashi is a traditional Japanese way of hospitality with the  most dedicated and exquisite manners. It creates an ambiance of  tranquility and relaxation where guests will experience unforgettable  moments at ease.”

「おもてなしは、もっとも献身的で、もっとも洗練され上品なマナー による、日本の伝統的なホスピタリティの方法です。それは、穏やか さとくつろぎの雰囲気を作り出し、忘れることのできないくつろぎの 時間をゲストは経験します」

 2012年10月9日、ロンドンで発行されている The Daily Telegraph の

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“Win an enchanting holiday to Japan”という記事では、 「おもてなし」は、

「日本のホスピタリティのエッセンス」として紹介されている。

Discover omotenashi, the essence of Japanese hospitality, from the  moment you step on to the plane with All Nippon Airways. 

「全日空の機内に足を踏み入れた瞬間から、日本のホスピタリティの 真髄である「おもてなし」を発見しよう」

 「もてなし」とは、本来は、「持成し」であり「もて」と「なし」が合成 された言葉である。古くは「もてなし」は客を招待し共食や贈り物を提供 することで人間関係を戦略的に強化することを目的にする手段だった。16 世紀に茶人千利休が広めた茶道の一期一会の精神が入り、客に思いやりの 心を持ち、客を迎える万全の準備をし、客に心地よい体験を演出すること の大切さ、また招かれた客は、その場にふさわしい振る舞いをして感謝を 表すことが求められた。招く側招かれた側双方が一体となり気持ち良い空 間を作り上げることの意味合いも出てきた。現代では、企業においては得 意先の人をもてなす「接待」もあり、感謝の形のもてなしを夏には「中元」、

冬には「歳暮」といった形で相手に示す習慣もある。旅行に行くと近所へ のおすそ分け、お土産として近所に配る品を大量に買い込み、目的地につ いて真っ先に土産屋に走り、他者のための「もてなし」の品を選ぶ。公の 場からごく個人の事柄まで贈り物を交換する「もてなし」が習慣化している。

 「もてなし」がホスピタリティと違う点は、「もてなし」は、あくまでも

相手が決まっていて、相手に喜んでもらう行いをする、来る客に備え万全

の準備をすることである。「ホスピタリティ」は、相手がどんな人種だろ

うが関係なく、いつ来るかもわからずとも戸を開けて迎え入れる意味が強

いと考える

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。それ故、日本以外の国々においてはホスピタリティという

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言葉についての意味合いはかなり違う状況である。ヨーロッパにおいては、

難民受け入れ、外国人労働者の受け入れについて、アメリカにおいても、

移民受け入れ、LGBTなど多様性の受け入れ・共存という広い意味合いが 強い。「他者を受け入れ、歓待する hospitality」は、さまざまな制度、

物語、思想を通して、時間を経て不変の言葉として西欧に存在している。

ギリシャ神話、ローマ神話では、ゼウスが旅人に姿を変えて人間の前に姿 を現した際、旅人や困窮者を保護し歓待しなかった者に厳しく罰を与えた。

ゼウスは「異邦人の保護者」「歓待の神」と呼ばれた

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(2)キリスト教および西洋思想におけるホスピタリティ

 次に、キリスト教の視点からホスピタリティを見てみたい。旧約聖書に おける「ホスピタリティ」への代表的な言及は、創世記18章1節~ 16節 に見ることができる。これは、イスラエルの太祖アブラハムが、3人の旅 人が暑い日に彼の家の前に立っているのを見て敏速に恭しくもてなしたエ ピソードである。この3人は、神を、あるいは天使を表すものとされてい る。のちに新約聖書が「旅人をもてなすことを忘れてはいけません。こう してある人々はみ使いたちを、それとは知らずにもてなしました」(ヘブ ライ13章2節)というとき、このエピソードを想起しているかもしれない。

さらに、新約聖書マタイ福音書25章31節~ 46節は、「最後の審判」につい てのたとえ話であるが、その中に、審判者(神・またはキリスト)の言葉 として、「あなたがたが、これらのわたしの兄弟たち、しかも最も小さい 者たちのひとりにしたのは、わたしにしたのである」という箇所がある(40 節)。このたとえ話が後世に与えた影響は計り知れない。もっとも小さな 客人を最大限大切にするというこの思想は、たとえば西洋における修道会 の医療・看護の規範となっただけではなく、現代では、マザーテレサ(1910

-97)とその姉妹たち(修道女)の姿の中に具現化されている。この思想

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によれば、ホスピタリティは、人間との関係であるとともに、そのまま神 との関係であり、ホスピタリティ=神の歓迎、の実践である。このように、

キリスト教では、ホスピタリティとは、宗教、民族、敵味方に関係なく助 けを求める人には手を差し伸べようという教えを意味するのである。

 新約聖書「テモテへの第一の手紙」第5章10節でも「子女をよく養育し、

旅人(strangers)をもてなし(hospitality)、聖徒の足を洗い、困った人 を助けその良いわざで認められるものでなければならない」とある。また、

ルカによる福音書14章12節~ 14節には「宴会を催す時はむしろ、貧しい人、

体の不自由な人、足の不自由な人、目の見えない人を招きなさい。そうす れば、その人たちはお返しができないからあなたは幸いだ」といった印象 的な教えがある。ここには give and take という私たちの常識や、相互性 という価値観を越えた、弱者重視のホスピタリティが教えられている。

 西洋の哲学・思想においてもホスピタリティについてたびたび言及され ている。プラトン(前427-347)は異邦人に対する「ホスピタリティ・歓 待」こそが人間のあるべき姿だと著書『法律』で述べている。現代哲学に おいても、たとえば、エマニュエル・レヴィナス(1906-1995)は、他者 の声を聞くことの重要性や、他者を迎え入れること(hospitalite)につい て度々言及した。彼はキリスト教徒ではなかったが、上述のマタイ福音25 章のたとえ話に関連して、「私が追い出した他者は、追い出された神に等 しい」とまで語っている

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 また、フランスの哲学者ジャック・デリダ(1930-2004)は、ヨーロッ

パの移民問題が緊迫した時に、「歓待(ホスピタリティ)」という言葉の概

念に言及している。デリダは、難民や移民の受け入れに関して、「相手の

名前を聞くことなしにその人を受け入れる絶対的ホスピタリティ」につい

て述べている。イマヌエル・カント(1724-1804)は『永遠の平和のため

に』においてホスピタリティを永久平和の基礎に置いた。もともとホスピ

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タリティの語源は、ラテン語のホスぺスという言葉と言われている。ホス ぺスは、古ラテン語の hostis と potis の合成語である。原義は「客人の保 護者」を示し、「主催者、来客、外国人、異人」を意味する。host 主人は guestである異人、全く見知らぬ人を歓待して、全く見知らぬ情報を得て いた。異人が hostile「敵の」、hostility「敵意」があろうとも、敵を客と して迎え入れ歓待する文化もあった。その異人は、hostage「人質」にも なりえる。hospes の形容詞形 hospitalis ホスピタリスは「歓待する。客を 厚遇する」となり、その派生語 hospitale ホスピターレは、古フランス 語 hospital ホスピタル「宿泊所、来客用の部屋」となり、16世紀以降「病院」

という意味になった。また、英語においては、hostel ホステル「宿泊所」

となり、17世紀以降 hotel となった。来訪者や旅人に無償で宿、食を提供し、

困窮者や病気に侵された人々を分け隔てなく喜び迎え入れ、寝床と食事を 提供する。けが人も収容し治療する弱者救済も行われた。無償で行われて いた病院やホテルの前段階の機能は、だんだんと金銭取引によるホテル、

病院施設へと変化していった

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。18世紀の産業革命、世界万国博覧会開催 により国境を越えた人々の移動が盛んになり、ホテルの質が向上し、ビジ ネスとしてのホスピタリティも出現してきた。現在、アメリカのコーネル 大学、スイスのグリオン大学、レ・ロシュ大学では、ホスピタリティを学 問として理論と経営スキルを学ぶ。ホスピタリティやホスピタリティ・マ ネジメントを学ぶ背景には、これまで述べてきたように、キリスト教文化 や西洋思想と共に育まれてきた歴史がある。

 ホスピタリティという言葉や「見知らぬ旅人や困窮者を歓待し助力を与

える」という「異人歓待」は現代においては、「人間が他者を積極的に受

け入れようと行動すること」と定義できるのではないか。ホスピタリティ

の精神の根づき方が日本と違う例としては、航空会社における「善きサマ

リア人」

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 法が挙げられる。善きサマリア人の法(よきサマリアびとのほう、

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英:good Samaritan law、良きサマリア人法、よきサマリア人法ともいう)

は、これもまた本来は新約聖書『ルカ福音書』10章に由来するものだが、 「災 難に遭ったり急病になったりした人など(窮地の人)を救うために無償で 善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたの なら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の 法である。この法には、誤った対応をして訴えられる、処罰を受ける恐れ をなくして、その場に居合わせた人(バイスタンダー)による傷病者の救 護を促進しよう、との意図がある。要は、「善意でできる範囲内のことを してくれたのであれば、最悪の結果になっても責任は問いません」という ことであり、アメリカ、カナダで法律化されている。しかし、日本では明 確に立法化されていない。そのため、機内でのドクターコールに手を挙げ ることに躊躇する医師が多いのは、日本に「善きサマリア人の法」がない からだとの指摘があるほどだ。

 西洋では、ホスピタリティは、哲学的にも、倫理学的にも、神学的にも、

最先端のテーマとして扱われ続けている。日本は「もてなし」大国であるが、

こと難民受け入れ、移民受け入れ、マイノリティの人々の受け入れに関し ては消極的な国である。そして、「ホスピタリティ」を「おもてなし」と して捉え、訪日観光客へのあいまいなアピールに使われている傾向が強い。

 西洋では、その複雑な地理的条件や国の成り立ちから多くの民族による

融合、接触、摩擦が繰り返されてきたという歴史がある。ゆえに異邦人や

旅人と接する際も、まず相手を理解することが求められた。こうして育ま

れた「異文化理解」という習慣が、ホスピタリティ文化の形成につながっ

ていった。島国で閉鎖的な日本の環境とは比較にならないほど切磋琢磨を

余儀なくされた歴史的背景を基に人々の心に刻み込まれていった文化と言

えよう。日本が、人種、性別、年齢、国境を越えた他者に対しどれだけ「歓

待」「隣人愛」を持つか、開かれた国になるかで日本においてのホスピタ

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リティの概念がより一層、明確になっていくものと期待する。

3.カトリック教育とホスピタリティ教育の親和性

 2017年現在、日本国内の女子大学は79校。日本で最も古い女子だけの学 校は19世紀にできた。その数4校。その一つが白百合女子大学の母体であ るシャルトル聖パウロ修道女会が創立した学校である。1881年に神田猿楽 町の教会敷地内に創設され、フランス語、英語、技芸を教えた。1887年に 寄宿付の学校を開設。フランス語でフランス語、英語、ドイツ語、音楽、

図画、刺繍、家事、裁縫を教えた。1898年に日本政府から外国人経営の女 学校で正式認可を受けたのは本学が最初だった。1910年には文部省から正 式認可がおり、外国語、技芸の他に文部省令に基づいた教育をスタートし た。1941年に家政科の専攻科設立認可がおり、1945年に修道女たちの理想 として、学校を戦後の復旧だけで満足せず、高度な教養を身に付けた女性 の育成を目指すと掲げ、専門学校設立に奔走した。1946年に白百合女子専 門学校国文科を発足。1947年に英文科、1958年に仏文科がスタートした。

 日本の女子大学の特色として、大きく次の2点が挙げられる。第一に、

学部・学科構成として、英文学などの語学系や日本文学(国文学)系、教 育学、栄養学等を中心とした家政学の学部が多いことである。日本女子大 学、大妻女子大学、共立女子大学、実践女子大学や椙山女学園大学のよう な、良妻賢母を目指す学校を起源とする大学では家政系が中心である。第 二に、日本の多くの私立女子大学は、キリスト教系の学校が目立つことが あげられる。カトリック校では、藤女子大学(札幌)、聖心女子大学(東京)、

清泉女子大学(東京)、白百合女子大学(東京)、ノートルダム清心女子大

学(岡山)など現在20校。在籍学生数は4万3千弱。一方、プロテスタン

ト校としては、宮城学院女子大学(仙台)、東京女子大学、フェリス女学

院大学(横浜)、東洋英和女学院大学(横浜)、金城学院大学(名古屋)、

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同志社女子大学(京都)、神戸女学院大学、広島女学院大学、活水女子大 学(長崎)などが代表的な女子大として挙げられ、北から南まで全国に点 在している。カトリック、プロテスタントを問わず、これらキリスト教系 の女子大の多くは、英文学系を中心に古くから教養(リベラル・アーツ)

系の学科が中心であり、大学の規模も概して小規模で、良家の子女用の教 養型大学として機能してきた。

日本では、男女雇用機会均等法によって女性の社会進出が促進されたが、

バブル期までは民間企業では男性は総合職、女性は一般職として採用し、

一定年齢で結婚した場合退職するいわゆる寿退社を前提にしていた。しか し、1990年代に入ると、バブル崩壊に伴う日本型雇用慣行の変化や経済の グローバル化への対応から、金融、商社、損保、航空など女子学生に人気 の高い大手企業を中心に、一般職の採用を手控える傾向が出始め、一般職 という職域が縮小または消滅するようになり、このことは「女子学生の就 職難」としてメディアでも大きく取り上げられ、女子学生にも資格志向、

実学志向の傾向が出始めるようになってきた。

 白百合女子大学においては、母体であるシャルトル聖パウロ修道女会は 明治の時代から一貫して創立精神は「従順・勤勉・愛徳」である。

従順  真の自由を知る喜び 勤勉  能力を磨き役立てる喜び 愛徳  お互いを大切にしあう喜び

 明治32年版の学校紹介には「本校は女子に智育と厳正なる徳育を授け、

淑徳才藻を発揮せしめ真正優美なる女子を養成目的とし修身、和漢学、仏 語、英語、歴史、地理、算術、習字、図画、理科、家事、礼法、裁縫ほか にピアノ、尋常師範の学科を授ける」と掲載している。当時の女子教育は

「良妻賢母」を推進していた。修道女が「修道女になる道を勧めること」

はあっても職業婦人として自立することは強くは勧めてはいない。

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 「父が働くことを許さない」として就職しない学生も多々いた時代もあ り、バブル崩壊までは女子大教育はあくまでも教養教育だった感もある。

その教養を身に付ける目的から実務を身に付けることへの移行、良家の子 女を対象とし、教養を身に付け、結婚し専業主婦となり忙しい夫を支え、

家庭内で子供の躾、英語教育を自らできる女性教育から「社会に貢献でき る女性」として英語を使い、現代の外国人観光客への「英語対応」「おも てなし」「お客様の喜ぶ顔が見たい」を重視するホスピタリティ教育を望 む学生が増えてきたことを指摘したい。

 今年度、ホスピタリティの授業履修者は、延べ203名となり、6月のエア ラインフォーラムの参加学生は100名だった。学生の興味が社会で働くこと へと移っていったことがうかがえる。5年前から始まったこのプログラム でツーリズム業界に就職する学生が増えている。2011年度卒業生に関して 大学全体では、全日本空輸5人、ホテルは4人だった。2017年度はプログ ラム履修生のみでエアライン合格者は22人(外資系エアラインは選考中の ため含まず)、ホテル、ブライダルは18人である。ここまで増えたのは、学 生の意識が「CAに落ちたら一般企業」だったパターンが、グランドスタッ フやホテル、旅行などツーリズム業界全体に視野を広げるようになった結 果だと思われる。

 このほかに興味深いデータがある。プログラム履修後、エアライン、旅

行に就職した学生の中から、海外在住の外資系航空会社に転職、海外国際

空港勤務、旅行会社で海外駐在に赴く学生が出始めたことである。これは

ツーリズム業界の企業からグローバルな活躍を期待される卒業生が増えて

きたためかと思われる。また、プログラム履修者の中から卒業後に看護大

学編入・看護専門学校進学が毎年1~2名出ている。当初は、エアライン

希望だった学生が「飛行機に乗るといつも病弱な母に優しく接してくれた

客室乗務員に憧れていたがプログラムを履修して、ホスピタリティを学べ

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ば学ぶほど、私が進みたい道は看護師になることだとわかった。卒業後は 看護専門に進みたい」「漠然と英語で誰かの役に立つ仕事をしたいと思い、

プログラム履修して、留学で語学力向上を目指した。将来は海外で看護師 として資格と英語を生かして働きたい」という学生が出てきた。これらの 事例からもわかるように現代の女子教育の新たな可能性としてホスピタリ ティ教育があり、多様化する女子大生の希望にマッチしていくのではない かと考える。

 一方で、白百合はカトリックの学校である。この白百合で、何故、これ だけ急速にホスピタリティ・マネジメントプログラムが発展したかを考え ると今まで説明してきた時代の流れとは別の親和性も感じる。

 2017年6月に本年度プログラム履修者中「ホスピタリティ・マネジメン ト概論」「ホスピタリティの英語中級」「ホスピタリティ演習」を履修した 56人にアンケートを実施した。「ホスピタリティから連想する言葉を挙げ てください」と「カトリック白百合女子大から連想する言葉を挙げてくだ さい」というアンケートを自由回答、無記名で実施した。アンケートの語 彙をすべて書き出すと、「ホスピタリティから連想する言葉をあげてくだ さい」では、最頻出語彙は「優しさ・思いやり」56件。次は 「心遣い」「気 遣い」13件、「おもてなし」13件、「心」10件、「ホテル・旅館」10件、「エ アライン」 8件、「丁寧」8件、「笑顔」7件、「温かい」7件、「相手を受 け入れる」7件、「皆が幸せになる」7件、「礼儀正しい」5件、「接客」

5件、「グローバル・世界共通・英語を使う」5件。

 カトリック白百合についてのイメージは、最頻出語彙は「洗練・上品・

気品」23件、次いで「美しい」17件、「優しさ」「落ち着き」12件、「あた たかさ」「華やかさ」「女性らしさ」8件、 「まじめ」「教会」「キリスト」「人 を思いやる」7件、「清楚・清潔」「心」「丁寧」 5件となった。

 両方に出てきた語彙は「優しい」「あたたかい」「愛」「心」「他者を大切

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にする」 「奉仕」 「思いやる」 「まじめ」。これらの結果から「ホスピタリティ」

と「カトリック白百合」に共通のイメージを持つ学生が多いことがわかる。

さらに「なぜホスピタリティ・マネジメントプログラムの授業を履修する のか?」というアンケートには「社会人として働く上で役立つ」「ホスピ タリティに関係する仕事に就きたい」「就職や将来に役立つから」「誰かを 助け、幸せにする仕事に就きたいから」「相手を思いやることが出来る女 性に成長したいから」「新しいものの見方が出来そう」「どんな職業に就く にしてもホスピタリティを学ぶことで心の持ちようが異なると思うから」

「教職に就きたいがこのままでは視野が狭くなりそうなので」「美しい女性 になりたい、非常識な女性になりたくないから」 「女性として身に着けたい」

「誰かに正しいマナーで正しい言葉遣いで尽くしたい」「観光業に興味があ り、テクノロジーの進化とは別に人間にしか成す事が出来ないホスピタリ ティを学びたい」「ホスピタリティとはそもそも何なのかを知りたい」と いった回答がみられる。白百合の学生がホスピタリティ・マネジメントプ ログラムの授業に臨む姿勢から「内面を磨きたい」「日常のふるまいを礼 儀正しくしたい」「素敵な女性になりたい」という就職活動に向けてとい う目標だけでなく、内面を磨きたい、誰かに尽くしたい、新しいモノの見 方をしたいという期待がうかがえる。

 この点については、本学には、1年から4年まで必修科目として宗教科

目があり、すべての白百合生は週に一度カトリックの精神を学ぶ機会があ

り、1・ 2年生には、年に一度修養会が必修であるために、学生は常にカ

トリックの教えを通して他者や社会とのかかわりを考える機会に恵まれて

いることが特記されるべきかと思う。4年間、隣人愛、他者を理解するこ

との大切さを学ぶことで、より一層、人と接することに興味を持つ。こう

したカトリック教育を受けることでホスピタリティを理解する土壌が育ま

れている。

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結びに

 大学におけるホスピタリティ教育は、西洋では観光業も含むホスピタリ ティ産業に即しての実際的・実用的研究がほとんどである。それは、キリ スト教という文化、伝統がありホスピタリティの精神が空気のように普及 しているからである。一方、日本では、「隣人を自分のように愛しなさい」

という思いよりも「他人に迷惑をかけない」という日本の仏教・儒教の教 えが美徳概念として普及してきた。日本が観光立国宣言(2003)「ようこ そ日本、ビジットジャパン」キャンペーン以降、真剣に外国人観光客獲得 に取り組む今、多文化、多人種共生、個人、地域社会、国の伝統、習慣な どの違いを超えて新しい共通意識として改めてホスピタリティとは何かを 問うことから始めることが必要であろう。

 英語英文学科の「ホスピタリティ・マネジメントプログラム」では、今後、

特に次の3つの課題に取り組んでいきたい。第一は日本、西洋におけるホ スピタリティの文化、概念を整理することである。第二にホスピタリティ が特に求められるツーリズム業界で必要不可欠な英語能力向上。第三に女 子学生が関心を持つ職種の知識を深め、学んだホスピタリティを他者に表 現する。

 ホスピタリティ教育の目的は、多種多様な人を受け入れ、ツールとして ホスピタリティを使いこなせる人材を育成すると同時に、他者から自分に 向けられたホスピタリティを感じ取り感謝する精神を育むことである。

 短大、大学の淘汰が進む中、カトリック女子大学として、キリスト教思

想を土壌としたホスピタリティ教育の充実は大きな可能性を秘めているこ

とを指摘して本論を終えたい。

(19)

1 . MICE マイスとは、Meeting(会議、研修、セミナー)、Incentive tour(招待旅行)、

Convention または Conference(大会、学会、国際会議)、Exhibition または Event(展 示会)の頭文字をとった造語。ビジネストラベルの一つの形態。参加者が多いいだけで なく、一般の観光旅行に比べ消費額が大きいことからMICEの誘致に力を入れる国や地 域が多い。

2 .西原里美(2017)「修道院から生まれたホスピタリティマネジメント」『大阪学院大学 通信』第47巻12, 37. 参照。

3.みずほリサーチ(2016)「2020年の国内宿泊需要予測」みずほリサーチ9月2日. 参照。

4.The Oxford English Dictionary で hospitality をみると

Hospitality: the friendly and generous reception and entertainment of guests, visitors,  or strangers.

The Cambridge English Dictionary では

Hospitality: The act of being friendly and welcoming to guests and visitors.

Hospitalityは、「ゲスト」でも「ビジター(予約なしもあり得る訪問者)」でも「全く見 ず知らずの人」にすら「歓待」することだと理解できる。

5.  フランスの思想家ルネ・シェレールの著書『歓待のユートピア―ゼウス礼賛』の原 題が Zeus hospitalier である。

6. エマニュエル・レヴィナス/内田樹(1991)『暴力と聖性』,pp.129-130. 参照。

7. 服部勝正(2007)『ホスピタリティ・マネジメント』15-20. 参照

8.  この名前は、新約聖書のルカによる福音書10章25節~ 37節イエスが語ったたとえ話 に由来する。

  「 ある人がエルサレムからエリコへ下る道で追いはぎに襲われた。追いはぎは服を剥ぎ 取り金品を奪い、その人に大けがを負わせ、放置した。たまたま通りがかった祭司は その人を見ると道の向こう側を通って行った。ところが、旅をしていたサマリア人は、

そばに来ると、その人を見て憐れに思い近寄って傷に油とぶどう酒を注ぎ、包帯をし て自分のロバに乗せ宿屋に連れて行き介抱した。そして、翌日になるとデナリオン銀 貨2枚を取り出し、宿屋の主人に渡して言った。『この人を介抱してください。費用が もっと掛かったら、帰りがけに私が払います』」

   サマリヤ人とは、ユダヤ人と外国人との混血であって、ユダヤ人は宗教的にも民族 的にも彼らを異端者と見なした人たちであった。彼らは、地理的には隣の地域に住む 人たちで、決して隣人などではなかった。自発的に人を助ける行為を行うサマリア人は、

まさに「愛」「隣人愛」という教えであり、ホスピタリティの概念のひとつになるであ ろう。

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参考文献

Ana M Manzanas Calvo and Jesus Benito Sanchez(2017) Hospitality in American Literature and Culture, New York, Routledge.

東浩紀(2017)『ゲンロン0 観光客の哲学』,ゲンロン.

岩本英和、高橋謙輔(2015)「日本のおもてなしと西洋のホスピタリティの見解に関する 一考察」,『城西国際大学紀要』第23巻第6号.

エマニュエル・レヴィナス/内田樹(1991)『暴力と聖性』,国文社.

大津ゆり(2006)「キリスト教に於けるホスピタリティ精神」,『埼玉女子短期大学紀要』

第16号, pp.149-168.

長田克弘、尾島麻由美、倉知善行、三浦弘、川本卓司(2015)「2020年東京オリンピック の経済効果」.日本銀行調査統計局.

加藤紘(2009)『ホスピタリティの正体』,ビジネス社.

国土交通省官公庁(2016)「明日の日本を支える観光ビジョン-世界が訪れたくなる日本 へ-」.

小山彰子(2005)「上層資産階級層の教育における再生産戦略:カトリック系学校出身者 を母親に持つ家族の聞き取り調査と歴史資料から」『慶応義塾社会学研究科紀要』60 号,pp.1-14.

サービス&ホスピタリティ・マネジメント研究グループ/徳江順一郎(2011)『サービス

&ホスピタリティ・マネジメント』,産業能率大学出版部.

ジャック・デリダ/廣瀬浩二訳(1999)『歓待について:パリのゼミナールの記録』,産 業図書.

Sr. 小林淑子、釘宮明美、佐々木裕子(2016)『シャルトル聖パウロ修道女会の歩みと白 百合学園の創始』,白百合女子大学.

中川伸子(2011)「ホスピタリティの起源」『神戸女子短期大学 論攷』56,pp.25-32.

西原里美(2017)「修道院から生まれたホスピタリティマネジメント」『大阪学院大学通 信第47巻』12号,pp.35-57.

服部勝正(2008)『ホスピタリティ学のすすめ』,丸善.

服部勝正(2008)『ホスピタリティ・マネジメント学原論』,丸善.

八木茂樹(2007)『「歓待」の精神史』,講談社選書メチェ.

参照

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