• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 医 学 ) 松 田 知 己

     学位論文題名

    Serum Angiotensin I‑Converting Enzyme     Is Reduced in Crohn SDisease

and Ulcerative Colitis Irrespective of Genotype    (クローン病及び潰瘍性大腸炎における血清アンギオテンシン    変 換 酵 素 活 性 の 検 討 〜  ACE 遺 伝子 多 型 性 を ふ ま え て 〜 )

学位論文内容の要旨

【研究目的】慢性炎症性腸疾患であるクローン病は、環境要因と、それに対する免疫学的反応ある いはそれを規定する遺伝的要因の関与する疾患と位置づけられている。またサルコイド様肉芽腫の 出現が認められるなど、病態的にはサルコイドーシスとの類似性も考えられる。しかし、サルコイ ドーシスではangiotensin converting enzyme(以下ACE)の血清レベルの活性上昇が特徴的とさ れているのに対して、クローン病における過去の報告は結果が一致していない。血清ACEレベル は健常者においてもその個体間変動の47%がACE遺伝子多型性によって規定されている。すなわ ち、遺伝 子型はDD、II、IDの3型に分かれ、この順に血清ACEは高い。よって血清ACE活性の 評価には、この遺伝子型を考慮する必要がある。そこで、本研究ではACE.遺伝子多型性を考慮し てクローン病患者での血清ACE活性を検討した。また、対象として、潰瘍性大腸炎と感染性腸炎 患者についても検討した。さらに疾患活動性や病型と血清ACE活性を比較検討することにより、

慢性炎症性腸疾患における血清ACE活性の臨床的意義を明らかにしようと試みた。ACEはその活 性中心に亜鉛を有しており、血清亜鉛濃度の変動が血清ACE活性の変動と関連している可能性が ある。そこで、血清ACE活性と血清亜鉛濃度の検討も併せて行った。

【対象と方法】1994年4月から1997年4月までに北大第一内科及びその関連病院で診断された クローン 病患者39人(男/女=31/8、年齢全体26土11歳、mean土SD)、潰瘍性大腸炎患者43人

(男/女=22/21、全体35土16歳)、感染性腸炎患者19人(男/女=8/11、全体38土15歳)と対照 群として人間ドッグで異常を認めなかった健常者341人(男/女=179/162、全体42土12歳)を対 象とした。被験者の末梢血自血球より分離したgenomic DNA100IL9をテンプレートとして、ACE 遺伝子のイントロン16を含む多型存在部位(約300 bpの挿入/欠失の多型)を、この部位を挟む 2種のセンス及びァンチセンスプライマーを用いてPCR法で増幅した。その後、アガ口一ス電気

135

(2)

泳 動に よ り、alleleと 遺伝 子 型(II、ID、DDの三 つの 遺伝 子型 ) を同 定しそれぞ れのACE遺伝子 の 多型 性 を調 ぺた 。ま た笠 原法にて血清ACE活性を測定 し、ク口一ン病患者につぃ ゝては疾患活動 性 の 指 標 と し てIOIBD score. 血 清CRPを 用 い 、 緩 解 期 と活 動期 の2点で の 血清ACE活性 も検 討 した。 血清亜鉛濃度に関しては原 子吸光法で測定した。

  【 結果 】 健常 者、 ク口 一 ン病 患者 、潰 瘍性 大 腸炎 患者3群 にお いて 、ACE遺 伝子 多 型性 の分 布 に は有 意 差を 認め なか った 。 血清ACE活性 は健 常者 、ク 口 一ン 病患 者、 潰瘍性大 腸炎患者におい て それ ぞ れ遺 伝子 多型 別に み ると 、II群で は 平均値11.8土2.9 (IU/1)、7.0土2.5、7.4土3.6、ID 群 で は15.2土3.6、9.7土4.1、11.4土4.6、DD群 で は19.3土3.9、13.9土5.8、10.7土3.6 と 、どの遺伝子多型群にお いてもク口一ン病患者と潰瘍 性大腸炎患者では健常者と 比較して有意に 低 下していた(pく0.05)。 しかし、クローン病患者と潰 瘍性大腸炎患者間では有意 差を認めなかっ た 。 感 染 性 腸 炎 患 者 群 で は 血 清ACE活 性 は 平 均 値II群10.0土3.2、ID群16.0土1.9、DD群15.9 土1.0であり、II群におぃゝては健 常者とは有意差がなかった が、クローン病患者と潰瘍性大腸炎患 者 に 比べ る と有 意に 高か っ た(pく0.05)。ID群 でも 健常 者や 潰瘍 性 大腸 炎患 者と は 有意 差が な かった が、クローン病患者と比べると有意に高かった(pくO.01)。クローン病患者におぃゝて疾患活 動 性 との 関 係を みる と、 活 動期 には 緩解 期と 比 較し て血 清ACE活 性は 有意 に 低下 して いた が(p く0.05)、 病型 と は無 関係 であ った 。 血清ACE活性にス テロイド剤投与が影響を及 ぼしている可能 性 もあ る ため 、ス テ口 イド 剤 を投 与し てい な い患 者だ けを 抽出 し て血 清ACE活性 を検討したが、

全 被験 者 の結 果と 同様 にす べ ての 遺伝 子多 型 群におい てクローン病患者と潰瘍性 大腸炎患者では 健 常 者と 比 較し て有 意に 低 下し てい た(pく0.05)。 血清 亜鉛 濃度 は クロ ーン 病患 者 では 平均 値 71.2土13(LLg/dDで あり 、 健常 者87.9土13、 潰 瘍性 大腸 炎患 者84.8土15、感 染性 腸 炎患 者83.6 土17と比 較 して 有意 に低 下 して いた (pく0.01)。し かし 、ク ロー ン 病患 者II、ID群 にお いて 血 清亜鉛 濃度と血清ACE活性の間に有 意な相関は認めなかった。

【 考察 】 クロ ーン 病患 者と 潰 瘍性 大腸 炎患 者 にお いて は、 血清ACE活性 は遺伝子 多型性を考慮レ て 比 較す る と健 常者 や感 染 性腸 炎患 者に 比べ て 明ら かに 血清ACE活性 は低 下 して いた 。血 清ACE 活 性は炎症性腸疾患におけ る特異な病態を反映している 可能性がある。炎症性腸疾 患における血清 ACE活 性低 下の 原 因と して 、ス テロ イ ド投 与に よる 影響 や 吸収 不良 に伴 う血清亜 鉛の低下がまず 考 えら れ る。 しか し、 今回 の 検討 結果 から は 、こ れら の因 子は 血 清ACE活性に影 響を与えている 可 能性 は ある もの の慢 性炎 症 性腸 疾患 で血 清ACE活 性が 低 下す る主 原因 とは考え られなかった。

最 も可 能 性が 高し ゝと 考え られるのは、サイトカイン による調節である。ACEは血 管内皮に存在す る 膜結 合 蛋白 酵素 であ り、 血 中に 存在 するACEの由 来は 、 血管 内皮 の細 胞膜結合 部からの解離に よ るものが主体と考えられ ている。Andreasらはヒト血 管内皮細胞を使用した実験で 、TNFa、IL一1 がACEの 低 下 に 関 与 し て い る と 報告 して いる 。 炎症 性腸 疾患 にお い てもTNFd、IL―1Bな どの サ

136

(3)

イトカインの上昇が報告されており、血清ACE活性はこれらのサイトカインにより調節を受けて いる可能性がある。

【結語】クローン病及び潰瘍性大腸炎患者において、血清ACE活性はACE遺伝子多型性を考慮 すると、どの遺伝子型においても健常者と比較して低下している。また、ク口ーン病における血清 ACE活性の低下は疾患活動性の影響を受けているが、血清亜鉛濃度の低下によって説明すること はできない。

137

(4)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

    Serum Angiotensln I‑Converting Enzyme     Is Reduced in Crohn SDisease

and Ulcerative Colitis Irrespective of Genotype    (クローン病及び潰瘍性大腸炎における血清アンギオテンシン    変 換 酵 素 活 性 の 検 討〜  ACE 遺 伝 子 多 型 性 を ふ まえ て 〜 )

   慢性炎症性腸疾患であるク口ーン病は、病理学的にもサルコイド様肉芽腫の出現が 認められるなど、サルコイドーシスとの類似点も存在する。しかし、サルコイドーシ スでは血清 angiotensin converting enzyme( 以下ACE) の活性上昇が特徴的とされ ているのに対して、ク口ーン病においては相反する報告があり結諭がでていない。ま た、血清ACE レベルは個体間変動の 47 %がACE 遺伝子多型性(遺伝子型はII 、 ID 、 DD の3 型に分かれ、この順に血清ACE は高い)によって規定されていることから、

血清ACE 活性の正確な評価には、この遺伝子多型を考慮する必要がある。そこで、

申請者はク口ーン病患者、潰瘍性大腸炎患者、感染性腸炎患者での血清ACE 活性を ACE 遺伝子多型性を考慮し検討した。対象はク口ーン病患者39 人、潰瘍性大腸炎患 者 43 人、感染性腸炎患者 19 人と人間ドッグで異常を認めなかった健康人 341 人を 対象としだ。被験者の末梢血自血球より分離したDNA をテンプレートとして、ACE 遺伝子の多型存在部位を挾む PCR 法を施行し、遺伝子型(II 、ID 、 DD) を同定した。

結果は、健常者、ク口ーン病患者、潰瘍性大腸炎患者3 群において、ACE 遺伝子多 型性の分布には有意差を認めなかった。血清ACE 活性は健常者、ク口一ン病患者、

潰瘍性大腸炎患者においてそれぞれ遺伝子多型別にみると、II 群では11.8 (平均値)

土 2.9 (標準偏差)(IU/D 、7.0 土2.5 、7.4 土3.6 、 ID 群では15.2 士3.6 、9.7 +4.1 、 11.4 土 4.6 、DD 群では19.3 土3.9 、 13.9 土5.8 、10.7 土3.6 と、どの遺伝子型群にお いてもク口ーン病患者、潰瘍性大腸炎患者では健常者と比較して有意に低下していた

西

(5)

(p く0.05) 。しかし、ク口ーン病患者と潰瘍性大腸炎患者間では有意差を認めなかった。

この 傾向 はス テ口 イド非 投与 群を 対象 にし ても 同様であった。感染性腸炎患者群では 血 清 ACE 活 性 は 低 下 し て い な か っ た 。 ク口 ー ン 病 患 者 におい て疾 患活 動性 との 関係 を み る と 、緩 解 期 と 比 較し て活 動期 には 血清 ACE 活 性は 有意 に低 下し てい たが (p く 0.05) 、病 型と は無 関係 であ った 。結 諭と して ク口ー ン病 患者 と潰 瘍性 大腸 炎患者に お い て は 、血 清 ACE 活 性 は 遺 伝 子 多 型 性を 考 慮 し て 比 較する と健 常者 や感 染性 腸炎 患者 に比 べて 明ら かに低 下し てお り、 更に ク口 ーン病に関してはその活動度と関連し ていた。

   発 表後 、副 査上 出教授 から ACE の転 写調 節に ついて の質 疑が あっ た。 .申 請者は転 写調 節の 機構 に関 しては 、現 在の とこ ろそ の詳 細は不明であると回答するとともに、

年 齢 、 性 別な ど の 生 理 的 な 変 動 に 関 し 補 足 説 明 し た。 次に 、炎 症性 腸疾 患の ACE 遺 伝子 多型 の民 族間 での違 いに つい ての 質疑 があ ったが、本報告以外には炎症性腸疾患 の ACE 遺 伝 子 多 型 に 関 す る も の は な い と回 答 し た 。 さ ら に 、 血 清 ACE の 由 来 に つ い て 質 疑 が あっ た . 健 常 人 で は 血 清 ACE の主 た る も の は 血管内 皮由 来で ある が、 疾患 群 に 関 し ては 免 疫 担 当 細 胞 の 産 生 す る ACE も 考 慮 し な ければ なら ない と回 答し た。

最 後 に 、 免疫 を 含 め 炎 症 性 腸 疾 患 の 病 態 に 血 清 ACE の 低下が 関与 して いる か質 疑が あっ たが 、腸 管局 所の抗 炎症 作用 低下 によ る難 治性下痢などと関連する可能性がある と回 答し た。 次い で、副 査浅 香教 授か ら、 疾患 により低値となる酵素は少数であり、

本 研 究 で 明ら か と な っ た 血 清 ACE の 低 下機 序 に 関 し て は興味 深い とコ ヌン トし た上 で 、 炎 症 性腸 疾 患 以 外 の 血 清 ACE が 低 下す る 疾 患 ・ 病 態さら には その 機序 に関 し質 疑 が あ っ た。 慢 性 呼 吸 器 疾 患 の 一 部 で 血 清 ACE は 低 下 すると 回答 する とと もに 、本 研 究 で の 血清 ACE 低 下 の 機 序 は 不 明 で ある が マ ク 口 フ ァ ー ジ ・ T リ ンパ 球 な ど の 関 与 に よ り 最終 的 に は TNFa 、 IL‑1 な ど の 炎 症 性 サ イ ト カ イ ン の バ ラ ンス の 乱 れ が 血 清 ACE を 負 の 調 節 へ と 導い ている ので i ま と回 答し た。 これに 対し 浅香 教授 から その 他の 可能 性と して ACE の inhibit or の 存在 の可 能性に つい ても コヌ ント があ った。最 後 に 主 査 西村 教 授 か ら 、 血 清 ACE 低 下 の機 序 に 関 し て 、栄養 状態 や血 清ア ルプ ミン 値と の関 連に つい ての質 疑が あっ た。 また 、炎 症性サイトカインの関与が重要と考え るなら他の炎症性疾患でも低下する可能性があるかとの質問があった。それに対して、

血 清 ACE 活 性 と 栄 養 状 態 ・ ア ル ブ ミ ン との 相 関 は 認 め なかっ たこ と、 文献 上、 他疾 患における血清ACE 値の低下は報告がないと解答した。   ゛

   本 論 文 は、 過 去 の 報 告 で は 一 致 し て い な か っ た 炎症 性腸 疾患 にお ける 血清 ACE 活 性の 変化 につ いて 、遺伝 子多 型を 考慮 する こと によって疾患により確実に低下するこ とを明らかにしたものであり、過去の論争に決着を与えたものとして高く評価される。

今 後 は 疾 患に お け る 血 清 ACE 値 の 低 下 機序 や ACE 自 体 の 役 割 に 関 し てさ ら な る 展 開

(6)

が期待されるテーマである。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受ける

のに十分な資格を有するものと判定した。

参照

関連したドキュメント

肝臓に発生する炎症性偽腫瘍の全てが IgG4 関連疾患 なのだろうか.肝臓には IgG4 関連疾患以外の炎症性偽 腫瘍も発生する.われわれは,肝の炎症性偽腫瘍は

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

beam(1.5MV,25kA,30ns)wasinjectedintoanunmagnetizedplasma、Thedrift

び3の光学活`性体を合成したところ,2は光学異`性体間でほとんど活'性差が認め

図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実

マーカーによる遺伝子型の矛盾については、プライマーによる特定遺伝子型の選択によって説明す

⑫ 亜急性硬化性全脳炎、⑬ ライソゾーム病、⑭ 副腎白質ジストロフィー、⑮ 脊髄 性筋萎縮症、⑯ 球脊髄性筋萎縮症、⑰

不能なⅢB 期 / Ⅳ期又は再発の非小細胞肺癌患 者( EGFR 遺伝子変異又は ALK 融合遺伝子陽性 の患者ではそれぞれ EGFR チロシンキナーゼ