• 検索結果がありません。

IRUCAA@TDC : 健やかな健康は歯周病予防から

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "IRUCAA@TDC : 健やかな健康は歯周病予防から"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

健やかな健康は歯周病予防から

Author(s)

山田, 了

Journal

歯科学報, 111(5): 489-492

URL

http://hdl.handle.net/10130/2616

(2)

東京歯科大学 歯周病学講座の山田と申します。 本日はよろしくお願いいたします。 千葉病院では毎日歯周病の患者さんの治療を行っ ております。私の所に見えられる患者さんは「歯が 痛いんです。歯自体はいいのですが,歯の周りの具 合が悪くてグラグラして,何とかなりませんか」と 10人来て10人の方がこの歯を残して下さいという訴 えで来られます。 「歯周病は放っておくと歯が無くなる,骨が吸収 して無くなってしまうから治しておこう」100人い れば99人の方はそういう考えではないかと思いま す。しかし,そんなに簡単なことではないのです。 もちろん,歯を残すために治療をするのですが,治 療の目的はこれだけではないのです。というのは, 歯周病では,プラークで何億何十億という細菌が歯 の周りに増殖しています。ですから,当然そこには 炎症が起きてきます。あの歯肉に炎症が起これば, 当然血管を通して全身にその為害物質が運ばれてい きます。 21世紀に入りまして,歯周病の研究も進んでまい りました。口腔内で起こっている歯周病というのが, 実は心筋梗塞の引き金の一つになっている,あるい は低体重児出産の要因の一つになっている,国民病 と呼ばれている糖尿病の予防にも歯周病の治療が大 事だという事が分かってまいりました。ですから今 日は,歯周病というのは,歯を残して美味しく食べ られることと共に,全身の疾患に随分影響している のだという事を,是非皆さんにご理解いただけたら 大変ハッピーです。 それでは,お話を進めてまいりましょう。 今日は次の2点からお話をさせていただきます。 まず,「歯周病が本当に全身疾患に関係しているの か?」その関わり合いについてお話いたします。そ して二番目に,その歯周病を予防するにはどんな方 法が良いとされているか,その予防法等を DVD を ご覧頂きご理解してもらいたいと考えております。 当然,口腔内に歯周病は発症します。そして,そ の局所に起こった反応が血液を通して全身の疾患に 関係してきます。肺にいったり,動脈壁に付着した り,あるいは膵臓に,あるいは子宮に影響を及ぼし ていきます。では,具体的にどんな影響があるので しょうか。歯周病が全身に関わってくるということ を理解していただくために,全身から見た歯周病を 理解していただくと,歯周病と誤嚥性肺炎,歯周病 と心臓疾患,歯周病と早期低体重児出産,あるいは 歯周病と糖尿病の関わりが非常に分かり易くなると 思います。 では,まず最初に全身疾患から見た歯周病とはど

――― 講演抄録 ―――

第4回

東京歯科大学公開講演会記録

平成21年7月4日(土) 東京歯科大学千葉校舎講堂

講 演 1

「健やかな健康は歯周病予防から」

山田 了

東京歯科大学歯周病学講座 教授 489

(3)

のようなものかをお話していきましょう。 これは,健康な歯周組織であります。もちろん歯 肉も綺麗に引き締まった状態であります。この歯周 組織,健康な歯を骨が維持し,その周りに歯肉があ ります。ですから健康な時には歯面にはとくにプ ラークもありません。これが健康な姿であります。 そして,これが歯周炎です。今,成人の50歳以上の うち,85%以上は歯周炎に罹患しているといわれて います。内部を見てみますと,この歯の周りに細菌 が増殖しています。そして,周囲の歯茎には炎症が あります。その炎症が骨を吸収します。こちらが歯 周炎の内側であります。実は皆さん「私はあまり付 いてない,プラークは大丈夫です」と自信を持って いる方でも,プラークを染めてみますとこのように 既にプラークが付着しているのです。しかし歯周病 の怖いところは,こんなに付いていても特に自覚症 状がないことです。実はもう,そのプラークがこの 歯周組織を襲っています。このように最初にプラー クが付くことによって歯周病が発症します。 この内側を見てみますと,色々な細菌があります。 この中には50億,100億という細菌が付着していま す。この細菌群は単純な集落ではなく厄介な集落を 形成して非常に複雑で,自分たちがお互いに栄養供 給をして増殖をしていきます。歯周ポケット内に抗 菌剤を応用してもこのプラーク集団はそれをはね除 ける自分たちの防御機構を持っています。ですから, スケーリングあるいはルートプレーニングをしてそ の集落を破壊しない限り,このポケット内に増殖を します。つぎに,この細菌を中心として当然細菌が 出す LPS・酵素が歯周組織・歯茎に炎症を起こし, その炎症によって骨を吸収していくのです。これが 皆さんの考えているように歯を残す為には歯周病の 治療をしなければいけないという局所の状態です。 ところで,あれだけの細菌が歯面に付着していま す。ここはポケット内でブラシが届きにくい所です。 その中に何十億という細菌が増殖して毒素を産生 し,その毒素や酵素によって為害性物質がどんどん 産生されていくのです。ここに産生される為害性物 質をサイトカインといっています。サイトカインに は,TNF−α,IL−1β,IL−6などが あ り,こ れ は細菌による炎症で産出された為害性物質でありま す。すると,ここに産生された為害性物質は血管を 通して全身に運ばれることになるのです。 皆さんが心配されているように,確かにこれだけ の細菌がいれば,骨が吸収して歯肉がブヨブヨする, 歯が無くなってしまう。それは大変な事です。しか し,その内に隠された実態というのはそれにも増し て,ここに細菌が出す毒素などで産生される各種の 為害性物質が,血管を通して全身に運ばれるという ことです。 さて,このことによって,どのような現象が起こっ てくるのでしょうか。まず,歯周病と誤嚥性肺炎の 関わりのお話を進めていきたいと思います。「肺炎 は老人の友」といわれています。高齢者になり肺炎 で亡くなる方は,かなりの率で現れています。こち らは気管であり,こちらが食道で唾液を飲み込んで いきます。すると,この気管の調節あるいは食道へ の機能が衰えてくると,誤って唾液を肺の方へ飲み 込んでしまうのです。高齢化という中でやむを得な い現象であるのですが,唾液が気管を通して肺に, そして,歯周病細菌が増殖を始めます。つぎに,炎 症を起こし,誤嚥性肺炎が起こるのです。このよう に汚れた口腔内にいる細菌が唾液を通して肺に入り 炎症を起こしてきます。機能が衰えてくることは高 齢者であればいたしかたのないところですが,もう 一つの道を断つことができます。口腔内を綺麗にし てあげれば,飲み込んでもそれほどの細菌が肺に入 らずに誤嚥性肺炎を防ぐことが出来るのです。 今申し上げたように全身疾患と歯周病の関わり は,1990年から欧米で疫学的な研究が始められてい ますが,その中でも心臓血管系との関わりが高いと いう事が解明されてきています。全身疾患において, 心臓血管系疾患との関わりについて解明が進んでい ます。 これから疫学調査でのグラフをいくつかご覧頂き ますが,その中でまず CHD(心臓血管疾患)を見て みましょう。これは,心筋梗塞,狭心症,心臓発作, この三つをまとめた心臓血管疾患の調査を致しまし た。ここにアタッチメントロス,いわゆる組織破壊 をおこしています。組織破壊が24%,24∼49%,こ 講 演 抄 録 490

(4)

ちらに行くに従って歯周炎が重度になっていきま す。すると,歯周炎が重度になると共に CHD(心臓 血管疾患)の発症率が高くなっているのがお分かり かと思います。何もない健康な人と重度の歯周炎の 方で,心臓血管系の発現率を見てみると,明らかに 重度の歯周炎患者は心臓血管疾患(心筋梗塞,狭心 症,心臓発作等)の発症率が高くなっているのです。 こちらは,6,691人を対象とした研究です。P. gin-givalis というのは,歯周病原性細菌の一つでありま す。実際,動物にこの歯周病原性細菌を用いて,CHD が起こってくるのかということ。P. gingivalis を実 際にマウスに感染をさせ血管系疾患が起こるのかど うかアテローム性血管炎で調べてみました。1ヵ 月,2ヵ月,3ヵ月,こちらはP. gingivalis で感染 を起こした方で,こちらは対象群です。確かに歯周 炎の発症に関わるP. gingivalis を投与して歯周炎を 起こしてみると,明らかにアテローム性の血管炎の 発症の率が高いということが証明されています。で すから,アテローム性動脈硬化症を発生することが わかりました。このことは,歯周局所の細菌によっ て炎症が起こり,その炎症性為害物質が血液を介し て心臓の血管壁に到達致します。するとこの為害性 物質が血管内壁に入って,粥状硬化性血管炎を作 り,ゆくゆくは血栓を形成します。形成された血栓 が心臓では心筋梗塞,脳では脳梗塞をおこすという ことです。 次に,歯周病と早産・低体重児出産とは本当に関 わりがあるのでしょうか。 こちらは疫学調査で,歯周病が出産に及ぼす危険 率です。早産と低体重両方を持った胎児,あるいは 低体重児出産の病態を調査し,2007年に発表されて います。正常な出産を1として,それに対して歯周 病に関わるとどれくらいこの率が高くなるのかとい う調査結果です。早産であって低体重児出産の場 合,2.8倍の危険率を含んでいて,早産の場合には 2.27倍,低体重児出産の場合には4.0倍というよう に,疫学調査の結果,歯周病と早期・低体重児出産 あるいは早産とは確かに関わりがあることが分かっ てまいりました。 次に,妊娠初期の妊婦450名について検査をして みました。健康な人122名,歯周病の患者さん328名 で歯周病の患者さんに関しては,そのうち治療をし た人266名,治療をしなかった人62名を対象として, 早産・低体重児出産の率をみてみました。健康な人 122名に関しては,4.1%(122名のうち5名)が早産 あるいは低体重児出産で,歯周病で治療をした人266 名のうち早期・低体重児出産は7.5%(266名のうち 20名),治療出来なかった人62名に関しては79%(62 名のうち49名)の方が早期あるいは低体重児出産で, はるかに高いことが報告されています。 歯周病を治療することによって,実際に危険率が 明らかに変わっているということがお分かりかと思 います。この局所で起こった炎症性為害物質が血液 を介して,胎盤あるいは子宮に運ばれて胎児の低体 重,あるいは子宮の収縮期を早めることによる早産 を起すと考えられています。 次に,歯周病と糖尿病の関係についてであります。 わが国の成人のうち,6人に1人に当たる方が糖 尿病に罹患しているといわれています。糖尿病の合 併症には失明や腎不全,下肢切断などがありますが, 糖尿病の6番目の合併症として歯周病があげられて います。糖尿病が存在すると歯周病が悪化する。反 対に,歯周病が進行すると糖尿病の血糖コントロー ルが悪くなること。また,歯周病を治療すると改善 するか疑問点について,現在分かっている部分をお 話ししたいと思います。 最初に,糖尿病が存在すると歯周病が悪化するこ とについては従来から言われております。まず糖尿 病が重度の患者は白血球の機能の低下等で歯周病が 重症化します。では,反対に歯周病の進行がどれく らい血糖コントロールに関連するかを見てみます。 歯周病の患者さんのうち HbA1c 9%,すなわち, 重度の糖尿病患者の発現状態をみてみました。歯周 炎が軽度の場合には約15%の重度糖尿病の発現率, 重度の歯周炎になると血糖コントロールの悪い人の 発現率が40%以上です。歯周病が重度になるほど HbA1c のコントロールの悪い患者の占める割り合 いが大となるということが,データから出されてい ます。 では,「歯周病を治療してみると本当にコントロー ルが良くなるのか?」という事を見てみました。歯 歯科学報 Vol.111,No.5(2011) 491

(5)

周治療による血糖コントロールへの影響です。こち らスケーリングルートプレーニングして抗菌剤を用 いたもの,そしてこちらが蒸留水を用いたものです。 この3つは,歯周病の治療とスケーリングルートプ レーニングをすると共に抗菌を併用して行った群で あります。その結果,ドキシサイクリン群では HbA1c が約1%に改善されています。確かに,歯 周治療を行うことによって,血糖コントロールの改 善がみられるという事が分かってまいりました。こ ちらは歯周治療を行ったときの TNF­α,いわゆる 歯周炎によって産生される為害性物質であり,これ と HbA1c の関係を調べてみました。歯周治療をす ることによって,歯周治療の前より治療後で血中の TNF­α 値は低下しています。歯周治療をすると, 血液内の TNF­α 値が改善され,これに伴って HbA 1c の改善もみられるということが分かりました。 実際の患者さんを見ていただきます。この患者さ んは53歳の男性で,「2型の糖尿病,HbA1c 10.1% と高血糖値を示しております。口腔内はこのような 状況であり,局所の炎症はもちろん骨もだいぶ吸収 しています。この患者さんで治療を開始致しました。 初診時 HbA1c 10.1%,基本治療におけるスケーリ ングルートプレーニング及びプラークコントロール として,ブラッシングを行ない HbA1c 7.8∼6.5% とだいぶ改善されてきています。歯周外科治療もい たしました。歯肉弁を開けて綺麗にして,治療後は HbA1c 6.3%。メンテナンス期 HbA1c 6.3%で維 持をされています。この患者さんは,内科での治療 も受けていて,内科医と歯科治療の連携により血糖 のコントロールもされてきています。ポケットの深 さ及びプロービング時の出血,両者とも改善される ことによって HbA1c の改善が見られています。 糖尿病との関連については,局所に産生される為 害性物質である TNF­α がインシュリン抵抗性を高 め,血糖値が上昇するのですが,歯周病を改善する ことによってインシュリン抵抗性が戻ってくるとい うことが,現在いわれています。すなわち,歯周病 原性細菌による局所の炎症により,インシュリン抵 抗性が高くなることによって血糖コントロールが悪 くなり,一方歯周病の治療をすることによって,イ ンシュリンの感受性が改善され,血糖コントロール の改善をみるということになります。 従って,糖尿病の患者さんに関しては,現在歯科 医師と内科医の連携による治療を開始しています。 内科から歯周病の患者さんの治療依頼がありました ら,血糖コントロールがどうであるかを確認し,そ して歯周病を治して内科に戻ってもらうというよう に,両者で糖尿病の患者さんの管理をしています。 このように歯科治療によって局所の炎症を取り除 き,内科においてはその血糖のコントロールを行な い糖尿病患者においても健康な国民生活を送れるよ うにと,現在内科医と歯科医とで連携をはかってい ます。 お話しましたように,現在,歯周病と全身疾患と の関連は,心臓血管系,早期・低体重児出産,糖尿 病,誤嚥性肺炎,菌血症のような全身疾患が疑われ ています。これは健康日本21で発表された,障害, 早世につながる危険因子であります。このような生 活習慣によって肥満,高血圧,糖尿病や歯周病など に影響を及ぼし,全身の障害,早生につながるとい うことであります。 従って,歯周病の治療は歯周局所に歯を残すこと も大事なのですが,更に全身疾患の予防に大きく関 与することをご理解いただきたいと思います。 それでは次に歯周病の予防について,DVD をご 覧いただきたいと思います。 ご静聴ありがとうございました。 講 演 抄 録 492

参照

関連したドキュメント

 スルファミン剤や種々の抗生物質の治療界へ の出現は化学療法の分野に著しい発達を促して

23mmを算した.腫瘤は外壁に厚い肉芽組織を有して

調査の概要 1.調査の目的

AIDS,高血圧,糖尿病,気管支喘息など長期の治療が必要な 領域で活用されることがある。Morisky Medication Adherence Scale (MMAS-4-Item) 29, 30) の 4

事務用品等 コピー機、マーカー(有機溶剤)、接着剤 堀雅宏: ALIA NEWS , 37 , 30-39 ( 1997 )を改変..

当財団では基本理念である「 “心とからだの健康づくり”~生涯を通じたスポーツ・健康・文化創造

★従来は有機溶剤中毒予防規則により作業環 境へ溶剤蒸気を漏らさず、外気への排出を主に

 本計画では、子どもの頃から食に関する正確な知識を提供することで、健全な食生活