VOC 等による子供への 健康影響について
2010.2.3
明治薬科大学 佐々木裕子
1. VOCとはなにか 2. 学校のVOC問題
3. 今、子ども達に何が起こっているのか 4. エコチル調査の概要
本日お話しすること
VOC
VOCとはなにか とはなにか? ?
•• V Volatile olatile O Organic rganic C Compounds ompounds: : 揮発性有機化合物 揮発性有機化合物
常温で揮発しやすい有機化合物の総称です 常温で揮発しやすい有機化合物の総称です 特徴としては
特徴としては
揮発しやすいこと(乾燥しやすい) 揮発しやすいこと(乾燥しやすい)
親油性を持つこと 親油性を持つこと
((油汚れを落としやすい)油汚れを落としやすい)塗料、接着剤などの溶剤 塗料、接着剤などの溶剤 油落しの洗浄剤など
油落しの洗浄剤など
様々な所に使われています
様々な所に使われています
VOC
VOC はこんな所で使われてます はこんな所で使われてます
塗装工場 印刷工場
灯油などの 石油製品
油性ペン 香水、
化粧品
V O C
VOC の様々な発生源
トリクレン パークレン ジクロロメタン
アルコール類 アセトン類 エステル類
代表的な
代表的なVOC VOCの構造 の構造
VOC
VOC 500 500種以上 種以上
含酸素化合物
有機塩素化合物
その他化合物
15%
9%
6%
5%
4%
3%
3%
3% 3%
3%
46%
大気中濃度
トルエン
ブタン
イソペンタン
m+p-キシレン
N-ペンタン
Propylene アセトアルデヒド
ホルムアルデヒド
Ethylbenzene
その他
東京都内の大気のVOCには どのような成分が多いか
(財)東京都環境科学研究所データ
発ガンのリスクを高める成分は
発ガンのリスクを高める成分は (( 試算結果) 試算結果)
15%
9%
6%
5%
4%
3%
3%
3% 3%
3%
46%
大気中濃度
トルエン
ブタン
イソペンタン
m+p-キシレン n-Pentane
Propylene Acetaldehyde ホルムアルデヒド
Ethylbenzene その他
Isobutane
41%
10%
9%
9%
7%
7%
6%
5% 2%1%3%
発ガンリスク ホルム アルデヒド
酸化エチレン アセトニトリル
1,3-Butadiene 四塩化炭素
アセトアルデヒド Benzene
Chloroform 1,2-Dichloroethane 1,2-Dibromothane
その他
(財)東京都環境科学研究所データ 8
15%
9%
6%
5%
4%
3%
3%
3% 3%
3%
46%
大気中濃度
トルエン
ブタン
Isopentane Isobutane m+p-Xylene n-Pentane プロピレン Acetaldehyde ホルムアルデヒド
Ethylbenzene
その他
17%
11%
8%
7% 8%
5%
4%
4%
3%
3%
30%
オゾン生成
トルエン
プロピレン
ホルムアルデヒド
m+p-キシレン Acetaldehyde
1-Butene 1,2,4-
Trimethylbenzene Butane Isobutane o-Xylene
その他
大気中濃度合計:
134μ
g/m 3
オゾン生成総計:467μ
g/m 3
(財)東京都環境科学研究所データ
VOC
VOC の各成分により最大でオゾンがどれだけ生成するか の各成分により最大でオゾンがどれだけ生成するか
×
VOC
各成分の大気濃度(
AM5
~PM8
)平均値各成分のオゾン生成量( O
3g/VOC g)
9
1. VOCとはなにか 2. 学校のVOC問題
3. 今、子ども達に何が起こっているのか 4. エコチル調査のとは
本日お話しすること
学校保健安全法
平成21年4月学校保健法の一部改正教室等の環境に係る学校環境衛生基準
平成
16
年2
月追加大気環境
工場排ガス等 自動車排出ガス
薬剤散布等
建材
塗料
今日の授業学校の教室内の VOC 汚染源
学校のVOCの発生源
発生源の種類 主な材料
校舎の建材
パーティクルボード(接着剤)、化粧板(接着剤・原料)
壁紙(原料・可塑剤)、断熱材;発泡尿素樹脂(発泡剤)
シール剤(有機溶剤)、プラスチック配管(原料・可塑剤)
塗料(有機溶剤・原料)、澱粉糊(防カビ剤)
合成接着剤(有機溶剤・原料)
教室等の備品 机、椅子などの備品(接着剤・防虫剤・原料)
カーテン(難燃剤)
暖房機器 開放型石油ストーブ等 空調機器 空調システムのダクト内壁
事務用品等 コピー機、マーカー(有機溶剤)、接着剤 堀雅宏:
ALIA NEWS
,37
,30-39
(1997
)を改変シックスクール問題
校舎の新築、改築、耐震補強工事
騒音防止、省エネなどのためのサッシ窓の使用-換気回数
新規の教育設備・教材購入
的確な建材の選定
新築・改築、改修時の確認
定期検査(VOCは気温の高い時に)
換気の重要性戸高恵美子、森千里:シックハウス症候群はなぜ減らないのか
Vol79
、988-991
科学(2009)
よりシックスクール問題の例
北海道の小学校で新築校舎で発生した 児童や教師の頭痛、粘膜刺激の原因は
学校衛生基準の6項目はすべて基準値以下
水性塗料の助剤(ピロリドン 1100μg/m 3 、
テキサノール 500μg/m 3 )の影響
室内換気の重要 性
室内のトルエン濃度のシュミレーション
(トルエン 放散速度 4000μg/h 、部屋容積 30m
3)
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
1 5 9 13 17 21
経過時間(hr)
室 内濃度( μ g/ m 3 ) 0.1
0.15 0.25 0.5 0.75 1 1.5 2
1時間当たり 換気回数
トルエンの教室内 基準値
260μg/m3
1. VOCとは
2. 学校のVOC問題
3. 今、子ども達に何が起こっているのか 4. エコチル調査のとは
本日お話しすること
0 5 10 15
1974‐79 1980‐84 1985‐89 1990‐94 1995‐99 2000‐04
1 万 人 に 対す る 発生頻 度 [ 人 ]
ダウン症 水頭症
二分脊椎症 尿道下裂
今、子ども達に何が起こっているのか
出典:国際先天異常監 視機構
(ICBDSR)
25年間で
先天異常は2倍に
尿道下裂、ダウン症などの増加
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0
1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
ぜん 息 被患 率 [% ]
幼稚園 小学校 中学校 高校
20年間で
ぜん息児は3倍に 出典:学校保健統計
免疫系疾患(小児ぜん息)の増加
30年間で
肥満傾向児は1.5倍に
出典:学校保健統計
代謝・内分泌系異常(小児肥満)の増加
日本だけでなく、世界の子供たちが
I4C
(豪1万人、英1.5万人、中国25万人、ノルウェー10万人、米10万人*、台湾2万人*、マレー シア3万人*、中国(新規)30万人*、日本10万人*) *参加予定海外では 世界のコーホート研究の状況
乳児死亡率は低下傾向
環境要因
宿主要因
(遺伝など) 社会・生活習慣要因
子どもの健康
子どもの健康に影響を与える要因
1. VOCとは
2. 学校のVOC問題
3. 今、子ども達に何が起こっているのか 4. エコチル調査とは
本日お話しすること
中心仮説:胎児期から小児期にかけての化学物質曝露が、子どもの
健康に大きな影響を与えているのではないか?
調査方法:出生コーホート研究 調査規模:全国で10万人
調査期間:21年間(リクルート3年、追跡13年、解析5年)
期待される成果
① 小児の健康に影響を与える環境要因の解明
② 小児の脆弱性を考慮したリスク管理体制の構築
③ 次世代の子どもが健やかに育つ環境の実現
④ 国際競争力
子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)とは
全国(沖縄から北海道)の 10 万人の母子(+一部 父親)参加による化学物質影響調査
質問、血液・母乳等の生体試料分析、室内測定など
発生率の低い(0.1%)の疾患についても解析ができる。
なぜ10万人の調査なのか
1% 3% 5% 10% 25%
肥満 10% 10,000 6,970 2,390 1,470 790 390
アトピー性皮膚炎(5歳) 3.8% 3,770 20,420 7,000 4,320 2,310 1,160
早期思春期発来・思春期遅発 3% 3,000 25,960 8,890 5,490 2,940 1,480
ADHD (5歳) 3% 3,000 25,960 8,890 5,490 2,940 1,480
ぜん息(5歳) 2.4% 2,400 32,740 11,220 6,920 3,710 1,860
自閉症 1% 1,000 80,210 27,480 16,960 9,100 4,570
停留精巣 0.7% 700 115,080 39,430 24,330 13,060 6,560
性同一性障害(GID) 0.2% 200 405,670 139,010 85,770 46,050 23,140
ダウン症 0.1% 100 812,500 278,430 171,790 92,230 46,350
尿道下裂 0.05% 50 1,626,160 557,260 343,820 184,590 92,780
1型糖尿病 0.001% 1 81,364,610 27,882,380 17,203,340 9,236,040 4,642,460 疾病の
頻度
10万人あた りの症例数
高曝露群の頻度 疾患名
生体試料の 長期保存 対象化学物 質の選定 分析方法 輸送・小分け 精度管理
10 万人
エコチル調査
明らかにしたいこと
コアセンター
(国環研)
実施体制(案)
分析機関
試料一時保管庫
輸送・処理 請負業者
試料長期保管庫
QA/QC
委員会 データ評価委員会精度管理部門
地方自治体
住民への普及啓発 リクルートへの協力 環境データ提供
生体試料
血液
臍帯血 母体血
父親の血液 子供の血液?
母乳 尿
その他(毛髪等)
長期保管 臨床検査
化学物質分析
試料の小分け、分析、保管
血液、母乳、尿などで、どのような化学物質を調べるのか
無機物質
水銀、鉛、カドミウム、ヒ素、亜鉛、アルミニウムなど ヨウ素、過塩素酸、亜硝酸など
残留性 有機汚染物質
ダイオキシン類、PCB、DDT、クロルデン、
ディルドリンなど
有機フッ素(PFOS、PFOAなど撥水・撥油剤)
臭素系難燃剤、臭素化ダイオキシン類 など
一般農薬類
有機リン農薬、ピレスノイド系農薬、ネオニコチド系農薬、
除草剤など
喫煙 コチニン(ニコチンの代謝物)
その他
フタル酸エステル類、フェノール類、
パーソナルケア含有化学物質(香料、殺菌剤など)
試料の長期保管
血液(臍帯血、両親と子供の血液)、
母乳、尿、毛髪等
国環研サンプルバンク棟外観
試料用液体窒素タンク
-196 ℃
国環研サンプルバンク棟の 中の冷凍庫の様子
-60 ℃冷凍庫
・将来問題となる 化学物質の分析
・分析法の進歩を 期待
室内空気の調査の案
室内汚染
VOC(揮発性有機化合物)
ベンゼン、トルエン、キシレンなど
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど 一般項目
NO
2、SO
2,SPM
,PM2.5
、CO
、オゾン、アレルゲン
パラジクロロベンゼン その他
掃除機のごみや吸着材中の農薬や
PCB
など毛糸のパッシブサンプラー
10cm
室内大気の測定器材例
農薬やPCBなどが吸着
子供たちの未来に生かす
今後の環境行政にどう生かすのか
民間の自主的取り組み、予防への反映
産官学連携による対策の研究
関係省庁間関連取り組みの発展小児の健康に影響を
与える環境要因の解明
今後の環境行政にどう生かすのか
化学物質規制の審査基準への反映
環境基準(大気、水質、土壌)等への反映
途上国への知見の提示による世界的予防小児の脆弱性を考慮した
リスク管理体制の構築
今後の環境行政にどう生かすのか
健康に悪影響を与える環境要因の排除
安心して子育ての出来る環境の実現(子育て支援、少子化対策として)