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密教研究 Vol. 1927 No. 27 005梅田 龍月「法華三昧と法華法 P107-120」

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Academic year: 2021

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(1)

一 、 緒 言 法 華 の 修 行 ︱ そ れ を 極 狭 義 に 解 し た 方 面 か ら 、 密 に 於 け る 供 養 法 と 顯 に 於 け る 半 行 半 坐 三 昧 中 の 一 に つ い て 究 め て 見 よ う 。 顯 の 法 華 三 昧 は 南 岳 に 始 ま り 天 台 に 大 成 さ れ 、 密 は 之 と 少 し 時 代 を 異 に し た 不 空 に 始 ま り 、 日 本 に 大 成 さ れ た 。 そ れ 故 一 を 支 那 天 台 の も の と せ ば 、 一 は 日 本 の 法 華 法 な り と 言 ひ 得 よ う 。 而 し て 此 二 つ の 行 法 は 其 根 本 に 立 還 れ ば 法 華 経 觀 を 異 に す る の で あ る 。 そ れ は 天 台 三 大 部 と 講 演 法 華 儀 並 に 蓮 華 三 昧 経 を 對 照 し て 直 ぐ に 分 る こ と で あ る 。 先 に 順 序 と し て 材 料 を 列 べ よ う 。 顯 教 の 方 は 第 一 に 法 華 三 昧 小 法 一 岩 を 畢 げ ね ば な ら ぬ 。 こ れ は 天 台 の 撰 す る 庭 、 後 に 遵 式 が 再 治 し 懺 儀 と 附 名 し た 。 第 二 に 止 觀 に 明 せ る 法 華 三 昧 は 四 種 三 昧 中 半 行 半 坐 に 攝 属 し 、 方 等 陀 羅 尼 経 法 と 身 儀 相 等 し い 。 第 三 に (1 )安 樂 行 儀 は 南 岳 の 親 撰 と 認 む べ く 、法 華 三 昧 の 原 形 を 窺 ふ に 當 う て の 貴 重 な 一 巻 で あ る 。 其 他 は 之 を 省 略 し て 密 敷 に 於 け る も の を 集 め る と 、 第 一 成 法 華 三 昧 と 法 華 法 一 〇 七

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法 華 三 昧 と 法 華 法 一 〇 八 就 妙 法 蓮 華 經 王 瑜 伽 觀 智 儀 軌 一 巻 は 法 華 法 の 本 軌 で 、 不 空 三 藏 譯 ( 大 暦 八 年 九 月 一 日 於 大 興 善 寺 譯 ) で あ る 。 し か し 然 る ( 2 ) 梵 本 が 存 し た か 否 や は 疑 問 で 、 三 藏 の 創 制 な り と も 傳 へ る 。 第 二 ( 3 ) 證 誠 白 蓮 華 成 就 威 儀 形 色 經 は 略 し て 威 儀 形 色 經 と も 稱 し 、 矢 張 不 空 譯 な る も 、 新 渡 の 經 に し て 眞 僞 の 程 も 不 詳 と い は れ る 。 但 し 遺 憾 に も 私 は 此 經 を 見 な い の で 内 容 は 分 ら ぬ 。 た い 法 華 曼 荼 羅 を 本 軌 よ り 詳 し く 説 明 し た 箇 所 が あ る こ と を 諸 書 の 引 用 に よ つ て 知 る の み で あ る 。 第 三 ( 4 ) 蓮 華 三 昧 経 は ( 5 ) 講 演 法 華 儀 と 同 じ 思 想 大 系 に 属 し 、 恐 ら く 日 本 出 來 で あ ら う こ と は 硲 君 ( 大 正 大 學 學 報 第 一 巻 ) の 所 論 が 正 し い と 考 へ る 。 右 の 章 疏 の 中 、 本 論 の 根 幹 は 法 華 三 昧 行 法 と 觀 智 儀 軌 で あ る 。 雨 書 に 示 さ れ た 儀 則 は 互 に 相 浸 さ づ し て 現 流 し て ゐ る 。 教 理 に あ つ て は 顯 密 は 完 全 に 一 致 し た が 、 行 門 に 至 つ て は 截 然 た る 邊 に 何 か 妙 味 が あ り さ う に 畳 ゆ る 。 註 1 、 現 存 ノ 安 集 行 儀 ハ 全 篇 ナ ラ ザ ル ガ 如 シ 。 2 、 阿 沙 婆 抄 、 法 華 法 ノ 下 、 第 八 經 軌 事 ノ 處 二 、 梵 本 ノ 有 無 ニ ッ イ テ ニ ソ ノ 考 ( チ 出 セ リ 。 3 、 法 華 鷲 林 拾 葉 集 ( 尊 舜 談 ) 賣 塔 品 下 ニ 依 レ パ 形 色 經 ハ 法 華 ト 同 本 異 譯 ノ 秘 經 也 ト 記 フ 、 菩 提 集 ( 悪 心 ) ニ ハ 蓮 華 三 昧 經 ガ 法 華 ト 同 本 異 譯 ナ リ ト ア リ 、 果 シ テ 然 ラ バ ニ 經 同 本 ノ 如 ク ナ ル モ 、 形 色 經 ノ 文 ハ 現 存 ノ 蓮 華 経 ニ ナ シ ( 拾 葉 集 序 品 下 ニ ハ 蓮 華 經 ハ 壽 量 品 ノ 同 本 異 羅 也 ト ア リ ) 更 ニ 賢 考 チ 待 ツ 。 4 、 蓮 華 經 ト 講 演 法 華 儀 ハ 同 人 ノ 撰 ト 斷 ジ 難 キ コ ト ハ 拾 葉 集 ト 直 談 鈔 ガ 内 容 畧 本 等 シ ク シ デ 而 モ 異 人 ノ 撰 ナ ル が 如 シ 、 況 ヤ 前 者 ハ 寳 塔 品 中 心 、 後 者 ハ 方 便 品 中 心 ナ ル チ ヤ 、 但 シ 叡 山 宗 教 第 五 巻 第 十 號 爲 岳 汀 一 班 ノ 所 明 ガ 蓮 華 経 ト 内 容 チ 同 ウ シ 、 而 モ 性

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空 ガ 金 薩 ヨ リ 直 授 セ ル 法 門 ナ ル コ ト チ 斷 ゼ リ 、 コ ノ 傅 説 ハ 蓮 華 經 ガ 性 空 以 後 ノ 撰 ナ ル コ ト チ 物 語 ル モ ノ ナ ラ ザ ル カ 、 覚 蓮 ノ 念 佛 寳 號 觀 心 偈 ( 私 ハ 蓮 華 經 ニ 影 響 サ レ タ ル モ ノ ト 認 ム ) 及 恵 心 ノ 眞 如 觀 、 菩 提 集 ( コ レ チ 蓮 華 經 ト 關 係 ア ル べ シ ) ト コ ノ 性 空 直 授 ノ 傳 説 チ 合 セ 考 察 ス レ バ 意 外 ノ 收 獲 ア ル ナ ラ ン カ 。 5 、 法 華 儀 ハ 智 證 大 師 ノ モ ノ ナ リ ヤ 否 ヤ 疑 問 ナ リ ( 一 ) 、 コ ノ 書 ハ 長 講 願 文 ノ 形 式 ニ ヨ ル ト モ 解 セ ラ ル レ ド 、 正 シ ク ハ 空 海 ノ 法 華 經 開 題 ( 弘 法 大 師 全 集 第 四 、 百 六 〇 頁 所 出 ノ モ ノ ) ニ 依 リ シ コ ト 明 カ ナ リ 。 形 式 及 思 想 ガ 彼 ニ 同 ジ キ ハ 智 證 ノ 撰 ト シ テ 疑 フ ベ シ ( 二 ) 、 尊 通 ノ 如 キ 學 匠 モ コ ソ チ 僞 録 ノ 部 ニ 編 入 セ リ ( 三 )、 法 華 儀 ハ 智 證 チ 去 ル 長 ラ ク ノ 間 須 ヒ ラ レ ザ リ キ ( 四 ) 、 自 由 思 想 家 ニ 非 ル 智 證 ニ シ テ 觀 智 儀 軌 ノ 曼 荼 羅 八 葉 義 ト 異 レ ル 五 佛 四 菩 薩 説 チ ナ ス ハ 不 審 ナ リ ( 五 ) 、 寛 政 三 年 ノ 板 本 ( 敬 光 師 校 訂 ) ハ 撰 者 號 チ 置 ク も 、 ソ レ ノ 底 本 ト ナ リ シ 播 州 大 山 寺 本 モ 又 寛 徳 三 年 寫 本 ( 天 海 藏 ) モ 智 證 大 師 撰 ナ ル 六 字 チ 置 カ ズ ( 六 ) 、 コ ノ 法 華 觀 ハ 師 々 ノ 密 授 ナ リ キ ト ア ル モ 師 々 ト ハ 誰 ナ リ ヤ 、 智 證 以 前 ニ カ 、 ル 法 華 ノ 密 教 化 チ 試 ミ シ 師 ヲ 見 出 サ ズ ( 七 ) 、 法 華 儀 ハ 貞 觀 九 年 六 月 ニ 講 演 畢 リ 、 處 々 ニ 於 テ 講 儀 チ 改 メ ズ ト 云 ヒ 又 文 中 二 世 人 ハ 法 華 ノ 最 秘 所 ニ 到 ル チ 得 ズ ト 高 言 シ ソ 、 モ 仁 和 四 年 二 觀 普 賢 経 丈 句 チ 撰 シ 純 顯 教 釋 チ 施 セ ル ハ 自 語 相 異 モ 甚 シ ( 八 ) 、 寫 岳 ノ 印 信 ニ ョ レ バ 十 如 ノ 秘 釋 ハ 智 證 ガ 法 全 ヨ リ 受 ク ル 所 ナ リ ト 云 フ モ 史 上 コ ノ 消 息 ヲ 見 ズ 、 以 上 ニ ヨ リ テ 私 ハ 僞 撰 ナ リ ト 考 フ ル モ ノ ナ リ 。 二 、 顯 密 の 法 華 觀 顯 の 法 華 義 は 廣 く し て 、 要 約 は 困 難 で あ る 。 從 て こ 、 に は 密 の 法 華 觀 を 主 に す る で あ ら う 。 第 一 顯 釋 は 、 妙 は 本 蓮 二 十 妙 、 法 は 界 如 三 千 の 法 、 蓮 華 は 法 譬 兼 含 の 稱 な る 顯 釋 に 對 し 、 講 演 法 華 儀 は 妙 法 は 金 剛 界 大 日 目 證 月 輪 、 蓮 華 は 胎 藏 八 葉 心 蓮 な り と 稱 し 、 こ れ を 一 肉 團 心 に 於 て 或 は 蓮 或 は 月 と 觀 せ し む る 爾 部 不 二 の 法 門 が 法 華 經 で あ る と い ふ 。 之 は 蓮 華 三 昧 經 八 句 偶 に 依 憑 し た 釋 義 ら し い が 其 源 は い か に し て も ( 1 ) 本 軌 が 雨 界 の 儀 軌 を 合 糅 し て 成 立 し た の に 、 力 強 い 根 據 を 持 つ も の で は な か ら 法 華 三 昧 と 法 華 法 一 〇 九

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法 華 三 昧 と 法 華 法 一 一 〇 う か 。 私 は 右 の 顯 釋 に 依 て 、 顯 は そ こ ま で も 法 華 經 の 文 相 に 即 し て 行 か う と し 、 密 は 胎 金 の 意 を 酌 ん で 何 事 も 裁 か う と す る 處 に 、 意 見 相 違 の 分 水 嶺 を 認 め た い 。 第 二 に 、 法 華 一 部 は 結 局 何 を 顯 説 す る も の で あ る か に 就 て 、 密 の 解 釋 を 纏 め る な ら ば 、 略 ぼ 三 通 り に な る と 思 ふ 。 ( イ ) (2 )此 經 は 本 地 の 八 葉 蓮 華 を 顯 説 す ( 智 證 の 法 華 儀 、 蓮 華 經 ) ( ロ ) ( 3 )此 經 一 部 始 絡 阿 子 に 非 る な し ( 智 證 の 阿 字 秘 釋 、 蓮 華 經 ) ( ハ ) 此 經 は 觀 自 在 尊 三 摩 地 の 法 曼 な り ( 智 證 の 法 華 梵 釋 空 海 の 法 華 開 顯 ) こ の 中 、 ( イ ) の 説 は 、 本 軌 の 曼 荼 羅 を 以 て 其 本 源 と し 、 ( ロ ) も 亦 本 軌 に ﹁ 阿 字 と は 、 謂 く 一 切 法 本 不 生 の 故 に 一 切 佛 法 は 自 性 本 源 清 淨 法 界 よ り 流 出 す る 處 な り 、 一 切 言 教 は 皆 阿 字 を 以 て 根 本 と す ﹂ と い ふ 文 よ り 出 た 説 で あ ら う 。 ( ハ ) は 經 題 の 首 の 梵 字 が (4 )﹁ 薩 ﹂ 字 な る 所 か ら 登 し 、 弘 法 の 單 見 で あ る 。 但 し 前 に 經 名 ( 梵 字 ) の 九 字 を 五 佛 四 菩 薩 の 轉 子 に 配 し て あ る の は 、 誠 に 思 ひ 切 つ た 見 識 で 、 こ の 自 由 釋 は 臆 て ( イ )説 を 生 み 出 す 母 體 と な つ た の で は あ る ま い か 。 第 三 に 、 法 華 の 本 迹 二 門 な る も の を ぞ う 取 扱 ふ か を 見 る に 、 法 華 儀 は 全 然 問 題 に し て ゐ な い 。 澄 豪 の 総 持 鈔 は 、 此 二 門 を 認 め て ﹁ 方 便 品 は 胎 界 な り 開 示 悟 入 な る 因 位 を 説 く が 故 に 、 壽 量 品 は 金 界 な り

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釋 迦 の 智 果 を 説 く が 故 に 、 寳 塔 品 は 不 二 な り 、 東 寺 は 迹 門 金 な り 、 會 三 歸 一 の 故 に 、 本 門 胎 な り 、 顯 本 久 遠 の 故 に ﹂ と あ り 、 蓮 華 經 は 本 尊 を 決 定 し て 、 迹 門 は 文 殊 、 本 門 は 普 賢 と し た が 、 こ の 総 持 抄 に せ よ 、 蓮 華 經 に せ よ 、 寳 塔 品 中 心 圭 義 で あ り 、 釋 迦 多 寳 並 坐 に 本 迹 の 一 致 を 見 出 し て ゐ る 以 上 、 日 本 天 台 本 畳 法 門 に 於 げ る 如 く 、 二 門 の 範 疇 は あ ま り 大 切 で は な か つ た 模 で あ る 。 第 四 に 、 二 十 八 品 の 中 、 方 便 、 安 樂 、 壽 量 . 觀 音 の 四 を 要 品 と す と い ふ 顯 の 説 に 對 し 、 密 教 は 如 何 を 窺 ふ に 、 法 華 儀 は 尚 顯 の 如 く 、 方 便 品 中 心 圭 義 で あ る が 、 蓮 華 經 は ち が ふ 。 其 品 名 に 依 つ て 判 す る に 、 方 便 、 寳 塔 、 提 婆 、 壽 量 、 不 輕 、 陀 羅 尼 品 の 密 教 化 が 行 は れ て ゐ る 處 を 見 る と 、 此 等 の 六 品 を 尊 重 し た の だ ら う と 思 は れ る 。 殊 に 寳 塔 品 を 中 心 と し 、 以 て 方 便 、 壽 量 の 二 品 を 一 致 せ し め た の は 、 本 軌 の 曼 荼 羅 と 比 較 し て 、 要 當 な 登 展 で あ る と 氣 付 か せ ら れ る 。 こ の 思 想 は 顯 に も 影 響 し 、 始 終 一 貫 し て 顯 教 城 に 立 籠 つ て 釋 義 の 矢 を 放 つ て ゐ る 種 類 の も の で さ へ 、 寳 塔 品 を 重 要 税 す る こ ご 、 な つ た の で あ る 。 假 に 法 華 直 談 鈔 を 引 い て 見 る と ,﹁ 他 流 に は 四 要 品 の 外 に 寳 塔 品 を 加 へ て 五 箇 の 要 品 を 立 つ 、 當 流 に は 付 文 の 四 要 、 元 慧 の 一 品 と 傳 ふ る 也 、 四 要 品 は 術 も 教 門 な り 、 此 品 は 一 切 衆 生 色 心 實 相 の 當 體 を 寳 塔 と 名 く 、 釋 迦 多 寳 を 顯 は す 故 に 、 事 相 の 即 身 成 佛 は 此 品 に 極 ま る ﹂ と あ る の で あ る 。 註 1 、 四 十 帖 決 法 華 法 ト ニ モ ﹁法 華 法 依 台 藏 法 也 故 向 西 也 有 四 攝 菩 薩 外 供 依 金 界 也 又 成 男 等 依 金 界 也 故 此 法 依 雨 界 意 法 華 三 昧 と 法 華 法 一 一 一

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法 華 三 昧 と 法 華 法 一 一 二 也 」 ト ア リ 、 又 ﹁ 故 知 於 ] 一 肉 心 觀 爲 蓮 月 而 於 此 肉 心 施 設 爾 界 之 意 也 故 雨 界 維 因 果 異 而 同 而 異 也 故 往 蓮 月 難 異 亦 互 臭 二 故 如 法 華 尊 勝 等 瑜 伽 爾 界 合 爲 一 諭 伽 耳 ﹂ ト モ 云 へ り 、 本 軌 ノ 五 相 成 身 前 ハ 胎 、 後 ハ 金 ニ 近 シ 。 2 、 二 十 八 品 ハ 八 葉 チ 顯 説 ス ル ノ ミ ナ ラ ス 、 十 如 モ 八 葉 ノ 大 白 牛 車 毛 八 葉 ト ハ 法 華 儀 ノ 説 ナ リ 、 法 華 ノ 即 ハ 八 葉 印 ト ス ル ハ 總 持 抄 ノ 所 説 ナ リ 、 而 シ テ 八 葉 印 ノ 八 指 ハ 八 軸 、 二 十 四 節 ハ 本 迹 二 十 八 品 ナ リ ト ノ ロ 傳 モ ア リ 。 3 、 天 台 名 匠 口 決 巻 一 二 云 ク ﹁ 開 示 悟 入 尊 形 種 子 事 、 種 子 ハ 陀 羅 尼 勸 發 爾 品 相 對 四 種 阿 字 チ 以 テ 開 示 悟 入 ノ 種 子 ト 習 也 ( 中 畧 ) 眞 言 秘 經 心 阿 阿 ( 引 )暗 悪 四 種 阿 字 以 テ 種 子 ト 習 也 尊 形 事 以 一 菩 薩 習 也 ( 中 畧 ) サ レ バ 法 華 一 部 説 相 雖 廣 開 示 悟 入 一 句 チ 不 出 ト 。 コ レ 阿 字 秘 釋 ノ 説 ト 義 釋 ノ 四 種 阿 字 説 ト ガ 結 ビ ソ ケ ル モ ノ ナ リ 。 4 、 法 華 開 題 ﹁ 中 央 八 葉 申 有 八 佛 加 中 嚢 尊 則 九 佛 題 目 九 字 則 彼 佛 楠 子 眞 言 ﹂ ト ア リ 。 コ レ ガ 十 如 ニ 結 ビ ツ ク ゴ ト ハ 容 易 ナ リ 三 、 法 華 三 昧 一 、 本 尊 顯 の 本 尊 は 秘 教 の そ れ の 如 く 、 行 法 上 重 大 で な い 。 法 華 の 本 尊 論 は 密 教 に 影 響 さ れ 、 日 本 に 於 て の み 盛 に 議 せ ら る 、 に 至 つ た の で あ る ら し い 。 然 り 、 法 華 三 昧 の 本 尊 は 何 で あ る ? 暫 く 天 台 名 匠 口 決 巻 一 に 依 る に 、 か の 四 轉 三 昧 通 じ て 一 佛 一 尊 を 本 尊 と す る 義 あ り 、 ま た 其 各 々 に 本 尊 を 別 立 す る 説 も あ る と い ひ 、 一 佛 一 尊 と は 四 種 と も ( 1 ) 彌 陀 を 本 尊 と せ よ と 口 決 し て ゐ る 。 こ れ は 摩 詞 止 觀 に ﹁ 但 專 ら 彌 陀 を 以 て 法 門 の 主 と す ﹂ ( 常 行 の 下 ) と あ り 、 輔 行 に ﹁ 諸 教 の 讃 す る 處 多 く は 彌 陀 に 在 り 、 故 に 西 方 を 以 て 一 准 と す ﹂ と い ふ 文 言 に 、 根 據 を 置 く も の で あ る 。 次 に 四 轉 三 昧 各 々 本 尊 を 立 つ る 場 合 如 何 を 、 四 宗 要 文 巻 上 に 聴 く に 、 常 坐 は 彌 陀 、 ま た は 文 殊 、 常

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行 は 彌 陀 (2 )半 行 半 坐 は 二 あ り 、 方 等 經 法 は 七 佛 、 法 華 經 法 は 普 賢 、 非 行 非 坐 は 觀 音 な う と 言 ふ て ゐ る こ の 中 (3 ) 法 華 普 賢 本 尊 説 は 普 賢 勸 發 品 、 觀 普 賢 經 が 材 料 で あ る け れ ぞ も 、 一 天 台 は 普 賢 道 場 に 於 て 安 樂 行 を 修 せ し な り 、 二 止 觀 に は 普 賢 身 の 形 像 に 約 す る 歴 事 觀 を 説 け り 、 と い つ た 様 な 事 項 が 動 機 と な つ て 顯 れ た の で は な い か と 考 へ る 。 二 、 行 法 法 華 經 に 有 相 と 無 相 の 二 種 の 行 を 説 い て ゐ る こ と は 、 恵 思 の 安 樂 行 儀 に 指 摘 さ れ て ゐ る 前 者 は 安 樂 行 品 に あ り 、 後 者 は (4 )勸 發 品 を 所 據 と す る 。 天 台 は こ れ を 相 承 し 、 摩 詞 止 觀 の 四 種 三 昧 中 半 行 半 坐 に 編 入 し た 。 其 無 相 と は 專 ら 理 觀 を 修 す る 方 面 で あ り 、 有 相 と は 禮 拜 讀 誦 等 の 身 儀 に 依 つ て 行 を 立 つ る を 意 味 す る 。 さ て 、 此 有 相 、 無 相 は 、 行 人 必 す や 併 用 せ ね ば な ら な い の で あ ら う か 、 若 は 又 人 に よ つ て 各 一 を 探 る を 得 る か に 就 て 考 ふ る に 、 天 台 と し て は 確 か に (5 )相 修 を 以 て 完 全 な 正 し い 修 行 だ と 信 じ て ゐ た こ と は 明 か で あ る 。 し か し 止 觀 講 述 (法 華 三 昧 之 下 ) に 出 て ゐ る ﹁ 通 方 の 行 人 は 三 修 相 資 く 、 一 途 の 機 類 は 各 々 一 行 を 修 す ﹂ と い ふ の が 畢 竟 隠 當 な 解 釋 で あ ら う 。 而 し て 有 相 無 相 の 二 行 を ぞ う い ふ 風 に 實 修 す る か に 就 て 、 南 岳 當 時 の 形 式 は 不 詳 で あ る 。 古 よ り 傳 へ る の は (6 ) 法 華 懺 法 は 恵 思 の 撰 と し て ゐ る け れ ぞ も そ れ は ぞ う も 確 實 性 が な い 、 し か し 斷 言 す る こ と は 到 底 功 を 上 聖 に 譲 つ た の で あ る と の 難 を 免 れ ぬ で あ ら う 。 動 か ぬ 所 、 法 華 三 昧 行 法 は 天 台 に よ つ て 法 華 三 昧 と 法 華 法 一 一 三

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法 華 三 昧 と 法 華 法 一 一 四 組 織 さ れ た も の で あ る 。 彼 處 に 十 科 を 開 き 、 順 序 に 修 す る こ と を 教 へ て ゐ る 。 一 、 嚴 淨 道 場 、 二 、 淨 身 、 三 、 三 業 供 養 、 四 、 請 佛 、 五 、 禮 佛 、 六 、 根 懺 悔 、 七 、 達 旋 、 八 、 誦 經 、 九 、 坐 禪 、 十 、 證 相 が そ れ で 、 此 前 に 所 謂 二 十 五 方 便 な る 要 件 を 具 備 し て 置 か ね ば な ら ぬ 。 但 し 現 流 の 法 華 懺 法 は 、 第 九 坐 禪 な る 要 門 を 削 除 し て あ る の は 何 に 原 因 す る か 、 そ れ は 要 す る に 普 通 に い ふ 法 事 、 即 ち 追 善 報 恩 等 に 擬 す る 必 要 上 、 法 要 の 體 裁 こ い ふ 見 地 よ り し て 、 か く も 大 英 斷 を 行 つ た の で は あ る ま い か 。 兎 も 角 第 九 坐 禪 と は ( 7 ) 一 念 三 千 即 空 假 中 觀 を 骨 目 と す る 十 乗 で あ る こ と を 附 記 し て お こ う 。 註 1 、 修 輝 寺 相 傳 私 註 下 巻 二 ﹁ 於 ソ 此 有 本 尊 消 場 荘 嚴 傳 本 尊 傳 者 南 岳 大 師 以 一 念 三 千 觀 本 尊 付 智 者 大 師 所 謂 繪 像 十 一 面 觀 音 也 ( 中 畧 ) 問 定 四 種 三 昧 本 尊 之 時 皆 以 彌 陀 何 今 以 觀 音 爲 一 念 三 干 觀 本 尊 耶 答 彌 陀 觀 音 一 體 異 名 法 性 常 寂 名 彌 陀 法 性 常 照 名 觀 世 音 矣 ﹂ ト ア リ 、 又 修 輝 寺 相 傳 日 記 ニ ハ ﹁ 四 種 彌 陀 者 謂 定 、 恵 、 亦 定 亦 慧 非 恵 非 定 如 次 四 種 三 昧 本 尊 也 ﹂ ト ア リ 、 觀 音 テ 以 デ 本 尊 ト ナ ス 傳 面 白 シ 、 但 シ コ ノ 十 一 面 ト ハ 頭 上 ノ 面 二 十 界 ノ 形 像 チ 圖 ス ル モ ノ ニ シ デ 普 通 ノ 十 一 面 尊 ニ 非 ル コ ト ハ 彼 書 ニ 示 ス 處 ノ 如 シ 、 尚 彌 陀 チ 以 テ 四 種 三 昧 ノ 本 尊 ス ル モ 其 間 ニ 教 理 上 ノ 區 別 チ ナ セ ル ハ 變 ソ テ 面 白 シ 。 2 、 法 華 三 昧 チ 半 行 半 坐 ニ 属 セ シ メ ル 所 以 ハ 勸 發 品 ノ ﹁ 其 入 若 行 若 立 讀 誦 是 經 鱒 若 坐 思 惟 是 經 ﹂ ノ 文 ニ ヨ リ シ ナ ル ベ シ 。 3 、 比 叡 山 西 塔 法 華 堂 ハ 普 賢 チ 本 尊 ト ス 、 彼 ノ 法 華 堂 ニ ハ 又 宗 祖 自 筆 ノ 法 華 經 一 部 チ モ 安 置 セ リ 、 總 持 抄 ニ ハ 法 華 一 部 テ 本 尊 ト ス ト 云 ( り 、 何 等 カ ノ 關 係 ア リ ト 思 考 ス 。 4 、 止 觀 ニ ハ 勸 發 品 ニ 易 フ ル ニ 観 經 普 賢 チ 以 テ セ リ 品 及 経 ハ 廣 畧 ノ 異 リ ト モ 見 ラ ル レ バ 差 支 ナ シ 。 5 、 一 ハ 迹 門 ノ 一 品 一 ハ 本 門 ノ 一 品 コ ノ 雨 品 ニ 説 カ ル 、 モ ノ チ 一 ジ ノ 行 法 二 纒 メ ル ゴ ト ハ 掲 斷 ノ 如 ク 考 ヘ ラ ル レ ド 、 左 ニ 非 ズ 、

(9)

止 觀 ニ 云 ク ﹁ 一﹂ 經 ( 普 賢 觀 、 安 樂 行 ) 本 爲 相 成 豊 可 執 文 拒 競 蓋 乃 爲 縁 前 後 互 出 非 碩 異 也 安 樂 行 品 護 持 讀 誦 解 説 深 心 禮 拜 等 登 非 レ 事 耶 觀 經 明 無 相 懺 悔 我 心 自 空 罪 福 無 主 恵 日 能 清 除 堂 非 理 耶 ﹂ ト 見 ル べ シ 。 又 二 行 双 資 チ 正 ト ス ル コ ト ハ 止 觀 私 記 モ 同 意 見 ナ リ 。 巻 二 本 ニ 云 ク ﹁ 根 機 異 故 維 分 一﹂ 行 若 究 論 者 慮 修 一行 正 助 合 行 互 顯 發 故 故 今 文 中 兼 修 ﹂ 一行 第 九 坐 禪 是 無 相 行 、 前 八 行 儀 是 有 相 散 知 禮 云 此 二 随 根 修 入 不 同 今 三 所 立 意 在 同 修 耳 ﹂ ト 。 但 シ 天 台 ノ 法 華 三 昧 行 儀 ハ 各 々 一 行 チ ト ル ゴ ト モ 可 ナ ル 事 ヲ 認 メ タ リ 。 6 、 止 觀 第 二 本 ニ 云 ク ﹁ 世 人 云 法 華 懺 法 是 南 岳 撰 者 未 検 二 所 出 ﹂ ト 。 7 , 摩 訶 止 觀 法 華 三 昧 ノ 下 歴 丈 修 觀 テ 明 セ リ 、 コ レ ハ 普 賢 觀 經 ニ 依 ル 有 相 無 相 両 兼 ノ 觀 行 ニ シ テ 一 時 ノ 試 ミ ナ ル ベ ク 、 矢 張 法 華 ハ 十 乗 チ 須 フ ル チ 正 意 ト ス ル ニ 非 ル カ 。 四 、 法 華 法 一 、 曼 荼 羅 本 軌 に ( 1 ) ﹁ 其 壇 三 重 に し て 内 院 に 入 葉 蓮 華 を 書 け 、 華 の 胎 上 に 於 て 拳 都 婆 塔 を 置 く 、 其 ( 2 ) 塔 中 に 於 て ( 3 ) 釋 迦 牟 尼 、 多 寳 如 來 を 書 け 、 同 座 に し て 坐 す 、 (4 )塔 門 西 に 開 き 蓮 華 入 葉 上 に 於 て 南 北 隅 を 首 と な し 右 に 旋 て 入 大 菩 薩 を 布 列 安 置 す ﹂ (進 . 無 盡 意 、 觀 丗 音 、 普 賢 彌 勒 、 文 殊 、 藥 主 、 妙 音 、 常 精 ) と あ る 。 蓮 華 經 の 説 は 之 と 異 り 多 寳 塔 中 湛 然 常 住 な る 其 を 無 量 壽 決 定 如 來 と 名 く 、 手 に 法 界 定 印 を 結 び 、 首 に 二 佛 の 賓 冠 あ り ( 左 釋 賓 運 多 寳 金 大 百 迦 飴 大 日 同 右 ) 乃 至 寳 塔 東 門 上 行 、 南 門 無 邊 行 、 西 門 淨 行 、 北 門 に 安 立 行 あ り 、 是 四 菩 薩 は 四 方 の 四 佛 な り 是 故 に 四 佛 印 を 結 ぶ 、 東 南 普 賢 、 西 南 文 殊 、 西 北 觀 音 、 東 北 彌 勒 な り ﹂ と あ る 。 ( 5 ) け れ ぞ も こ の 圖 様 は 行 は れ な か つ た 様 で あ る 。 二 、 本 尊 義 卒 直 に 云 へ ば 、 曼 荼 羅 ( 特 に 釋 迦 多 寳 ) 即 本 尊 で あ る べ き 筈 な の が 、 ( 6 ) こ れ は 流 に よ つ 法 華 三 昧 と 法 華 法 一 一 五

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注 華 三 昧 と 法 華 法 一 一 六 て 口 傳 を 異 に し 、 頗 る 復 雑 し て ゐ る 。 蓋 し 本 軌 に は 三 の 本 尊 候 補 が 見 ら る 、 。 ( イ ) 釋 迦 (7 )多 寳 、 ( ロ ) (8 (無 量 壽 決 定 如 來 、 ( ハ )普 賢 で あ る 。 先 づ ( イ ) の 二 尊 は 本 軌 の 組 織 立 か ら 考 へ て 、 雨 部 大 日 に 結 び 付 け ら れ た の は 自 然 で あ る . 次 に ( ロ ) の 決 定 如 來 と は 、 壽 量 品 中 の 佛 で あ る と は 本 軌 に よ つ て 察 せ ら れ る け れ ぞ 、 籐 り 聞 か ぬ 稱 號 で あ る 。 從 て 、 ( 一 ) 多 寳 、 ( 二 )阿 彌 陀 、 (三 ) 釋 迦 顯 本 遠 壽 身 、 ( 四 ) 釋 迦 本 成 時 .師 範 、 ( 五 ) 普 賢 、 ( 六 ) 釋 迦 多 寳 合 身 、 (七 ) 大 日 な り 等 と 異 説 せ ら れ た 。 次 の ( ハ ) の 一 つ を 須 ひ た の は 四 十 帖 決 で あ つ て 、 以 上 の 三 本 尊 を 若 し 蓮 華 經 の 意 に よ る な ら ば 、 同 一 尊 に し て 、 つ ゞ ま る 處 理 智 冥 合 の 大 日 如 來 也 こ い ふ こ と に 歸 着 す る の で あ る 。 こ の 外 不 動 や 觀 音 や 阿 彌 陀 が 本 尊 に 擬 せ ら れ て ゐ る 傳 も あ る が 、 そ れ は 一 般 的 で な い 。 代 表 的 に 西 山 流 念 持 抄 の 口 決 を 出 せ ば 、 本 迹 二 門 は 爾 部 大 日 に 配 す べ き に よ り 、 法 華 一 部 を 安 じ て 本 尊 と す る か 、 又 は 修 生 の 時 は 釋 迦 多 寳 、 本 有 の 時 は 爾 部 大 日 を 本 尊 と す べ し と 記 し 、 術 ほ 決 定 如 來 は 、 多 寳 報 身 ( 阿 彌 陀 也 ) の 異 名 に し て 、 理 に 約 し て 普 賢 延 命 と 名 け 、 釋 迦 は 應 身 な り 、 塔 ( 法 身 )中 に 入 る は 三 身 相 即 の 義 を 表 し 、 こ の 釋 迦 を 決 定 如 來 と も 名 く と 述 べ て ゐ る 。 要 は 人 に 約 し て 多 説 す る も 法 に 約 す る な ら ば 理 智 冥 合 、 爾 部 不 二 な る も の こ そ 、 法 華 の 本 尊 で あ ら う 。 三 、 行 法 本 軌 に ﹁ 若 し 能 く 此 勝 義 に 依 つ て 修 得 せ ば 、 現 世 に 無 上 畳 を 成 す る を 得 ん ﹂ と あ る 如 く 、 法 華 法 は 正 し く 頓 證 菩 提 の 爲 に 修 す る の で あ る 。 又 其 他 の 事 に も 須 ひ ら れ る 。 種 子 、 三 形 、 印 明 は 本

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尊 義 と 等 し く 雑 多 の 傳 あ る こ と は 、 畳 禪 鈔 丈 け で も 二 十 種 餘 り を 擧 げ て あ る の で 分 る 。 其 多 く は 種 子 汎 又 は 發 三 形 塔 、 印 智 拳 、 又 は 法 界 定 、 明 胎 大 日 、 又 は 無 所 不 至 眞 言 で あ る 。 前 に 準 じ て ( 9 )總 持 抄 を 播 く と 、 大 法 秘 法 を 行 す る 時 に 限 り 、 本 尊 の 法 身 内 證 の 位 に 付 し て 種 子 は す 三 形 は 拳 都 婆 、 印 は 無 所 不 至 眞 言 は 電 明 な る べ く 、 其 他 は 應 化 身 に 附 し て 行 じ 、 種 子 は 尋 三 形 は 鉢 、 印 は 鉢 、 眞 言 は 書 か れ て ゐ な い が 、 矢 張 釋 迦 の 呪 な の で あ ら う 。 こ れ は 即 ち 普 通 は 釋 迦 を 本 尊 と し 、 秘 法 の 時 は 釋 迦 多 寳 冥 合 の 大 日 を 本 尊 と す る 意 味 ら し い 。 前 者 に 於 て 多 寳 が 略 さ れ て ゐ る の は 不 審 の 様 で あ る け れ ぞ も 、 密 教 的 に 見 て 多 寳 の 正 體 が 知 れ な い 以 上 、 塔 や 釋 迦 を し て 代 表 せ し め た 譯 で は な か ら う か 。 行 法 の 次 第 は 各 記 に 依 る も の を 阿 沙 婆 抄 に 載 せ て ゐ る も 、 廣 い 故 略 す る 。 註 1 、 十 巻 鈔 法 華 法 下 二 ﹁ 法 華 曼 荼 羅 諸 尊 形 色 持 物 未 見 説 處 但 世 間 流 布 有 二 本 不 同 ﹂ ト ア リ 、 本 軌 ニ ヨ レ ル モ ノ ト 形 色 經 ニ ヨ レ ル モ ノ 下 ノ ニ 本 ナ ル ベ シ 。 而 シ テ 世 島 傳 フ ル 所 ノ 毛 ノ ハ 多 ク 形 色 經 ニ ヨ レ ル モ ノ ナ ル ガ 如 シ 。 2 、 文 句 畧 大 綱 私 見 聞 巷 三 二 、 密 教 ノ 鉄 塔 卜 寳 塔 ト チ 習 合 セ リ 、 ソ ノ 理 由 ハ 鐵 塔 亦 爾 部 ノ 大 日 並 居 シ 、 今 ノ 寳 塔 中 ノ 爾 尊 ト 威 儀 同 ジ キ ガ 故 ト ア リ 、 又 塔 ノ 形 ニ ツ キ テ 名 匠 口 決 一 ニ ハ ﹁ 多 寳 所 乗 ノ 塔 五 重 塔 也 此 五 智 五 佛 表 示 故 此 五 智 五 佛 云 本 有 佛 體 也 此 テ 表 ス ル 塔 婆 尤 モ 本 有 久 成 ノ 塔 婆 ナ ル ベ シ ﹂ ト ア ル モ 現 圖 ハ 決 シ デ 五 重 ニ ア ヲ ズ 、 所 謂 方 字 塔 ナ ル ハ 如 何 。 3 、 釋 迦 多 寳 ノ 坐 席 ノ 左 右 チ 定 ム ル チ 見 ル ニ 阿 沙 婆 抄 ニ ハ 多 寳 定 、 釋 迦 恵 ノ 故 二 左 多 寳 、 右 釋 迦 ナ リ 、 但 シ 世 間 ノ 客 人 チ 遇 ス ル ノ 道 ハ 左 上 座 ニ 坐 セ シ ム ベ キ ガ 故 ニ 、 コ ノ 點 カ ラ 云 ︽ バ 釋 迦 左 ( 客 ノ 故 ニ )多 寳 右 ( 主 ノ 故 ニ ) ト ス ル モ 可 ナ リ ト 云 フ 。 直 談 抄 寳 塔 品 下 ニ 密 教 ハ 釋 迦 左 、 多 寳 右 ナ リ 、 ソ ノ 理 由 ハ 釋 迦 ハ 胎 大 日 、 多 寳 ハ 金 大 日 ナ レ バ ナ リ ト ア ル ハ 、 阿 沙 婆 抄 ノ 説 ト 相 異 法 華 三 昧 と 法 華 法 一 一 七

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法 華 三 昧 と 法 華 法 一 一 八 ス 、 恐 ラ ク 薫 華 經 ニ 依 リ シ ナ ラ ン 。 次 テ 顯 教 ノ 意 ハ 釋 迦 ハ 報 身 、 多 賢 ハ 法 身 チ 表 ス 、 釋 迦 ハ 智 體 ノ 故 ニ 右 、 多 寳 ハ 理 體 ノ 故 ニ 左 ナ リ ト 云 ヘ リ 。 又 二 尊 チ 雨 部 大 日 ニ 配 ス ル コ ト ニ ツ キ 線 持 抄 ハ 釋 迦 金 大 日 、 多 寳 胎 大 日 卜 定 ム 4 . 阿 沙 婆 抄 二 曇 ク ﹁ 或 圖 依 息 災 意 塔 戸 開 南 甚 無 詮 也 呪 乖 軌 乎 ﹂ ト ア リ 。 5 、 日 蓮 ノ 曼 荼 羅 ハ 蓮 華 三 昧 經 ニ 依 リ シ コ ト 明 カ 也 。 6 、 悉 持 鈔 ニ 云 ク ﹁ 法 華 本 尊 有 ﹂多 種 山 門 普 賢 也 三 井 寺 阿 彌 陀 與 不 動 又 釋 迦 多 寳 並 爲 本 尊 也 醍 醐 定 大 日 也 仁 和 寺 定 觀 音 也 胎 金 爾 部 大 日 習 ビ 之 ﹂ ト ア リ 、 覺 禪 抄 ニ 記 ス ル 處 ハ コ レ ト 少 シ ク 異 レ リ 。 更 ニ 胎 大 日 チ 本 尊 ト ス ル モ ア リ 十 巻 鈔 ニ ハ ﹁ 大 日 外 五 古 ア ビ ラ ウ ン ケ ン 、 釋 迦 智 拳 歸 命 バ ク 、 多 寳 無 所 不 至 ア ア ー ア ン ア ク ﹂ ト ア ル ハ 三 尊 チ 本 尊 ト ス ル 意 カ . 何 シ ロ 本 尊 ハ 何 ト 云 フ コ ト ハ 古 ヨ リ 深 ク 密 セ ラ レ タ ル モ ノ ナ ル ガ 如 シ 。 7 、 多 寳 ハ 賓 生 尊 ナ リ ト 習 フ コ ト ア リ 、 寳 生 尊 ノ 三 形 ハ 寳 珠 ナ リ 、 ゴ レ ト 多 寳 塔 中 ノ 全 身 含 利 ト チ 合 セ シ モ ノ ナ ラ ン 。 8 、 無 量 壽 決 定 如 來 ト ハ 多 寳 塔 中 二 尊 冥 一 ノ 尊 ナ レ ハ 釋 迦 ト 云 フ モ 可 、 大 日 ト 云 フ モ 可 、 更 ニ ハ 無 量 壽 ナ ル 鮎 ニ 於 テ 阿 彌 阿 ト モ イ フ ベ キ 也 。 決 定 如 來 ノ コ ト ニ ハ 十 巻 鈔 ニ ハ コ レ チ 多 寳 ト ロ 傳 ス ル ハ 誤 ナ リ 、 多 寳 ハ 東 方 ノ 佛 、 決 定 如 來 ハ 無 量 壽 命 決 定 光 明 王 如 來 ノ コ ト ニ シ テ 西 方 ノ 佛 ナ リ ト 言 ヘ リ 。 コ ノ 説 新 譯 無 量 壽 命 決 定 王 如 來 陀 羅 尼 經 ニ ョ ル 正 當 ナ リ 。 何 ト ナ レ バ 彼 ノ 陀 羅 尼 經 ノ 決 定 王 如 來 ノ 眞 言 ト 儀 輪 ノ 決 定 如 來 ト ノ 眞 言 ハ 同 一 ナ ル ガ 故 ナ リ 。 サ レ ド コ ノ 決 定 王 如 來 陀 羅 尼 經 モ 疑 フ ベ キ 餘 地 ア リ ト 思 ハ ル 。 9 、 總 持 抄 ニ ヨ ル ニ 法 華 ノ 印 ハ 八 葉 、 明 ハ 肝 心 眞 言 ナ リ ト ア リ 、 法 華 一 部 曼 荼 羅 チ 本 尊 ト ス ル 時 ニ 須 フ ル モ ノ ナ ル カ 。 但 シ 覺 禪 鈔 ニ ハ ﹁ 此 眞 官 誦 爲 法 華 經 一 部 誦 巳 了 ﹂ ト ア サ 一 部 讀 誦 ニ カ フ ル 爲 ニ 用 ヒ タ ル カ ト モ 思 ハ ル . 同 鈔 ニ ハ 更 ニ ﹁ 延 懐 ノ 云 法 華 肝 心 眞 言 結 八 葉 印 廻 轉 心 上 頂 散 之 傅 大 師 口 決 傳 受 露 地 和 尚 云 云 ﹂ ト ァ リ 。 ノ 肝 心 眞 言 ハ 蓮 華 經 ニ 出 サ レ 性 空 ガ 金 薩 ヨ リ 傳 授 セ ラ ル 、 モ ノ ト モ 云 フ 。 要 ス ル ニ コ ノ 眞 言 ハ 密 匠 ノ 作 ル 處 ニ 非 ル カ 。 語 義 ニ ヨ リ 特 ニ 然 カ 考 ヘ ラ ル 、 ナ リ 。 五 、 結 言

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以 上 極 め て 簡 單 に 両 行 を 一 覧 し た 。 此 雨 者 は 各 々 特 色 を 發 輝 し て ゐ る が 爲 め 、 統 一 を 求 む る こ と は 無 理 な 様 で あ る 。 從 て こ 、 に は 安 然 の 言 葉 で あ る 、 天 台 四 種 三 昧 法 の 身 の 開 遮 、 口 の 説 默 、 心 の 止 觀 は 此 れ 三 密 と 意 義 同 じ こ と 、 雖 も 、 行 相 各 々 異 る な り 、 を 以 て 結 言 と し て お く 。 只 法 華 の 圓 敷 が 、 大 い に 密 教 々 義 に 手 助 け を し た こ と に 對 し 、 行 法 の 方 面 に 於 て 、 法 華 は 爾 部 の 道 具 建 を 借 受 け て ゐ る の は 、 如 何 に も 奇 し き 因 果 で あ る と 思 ふ 。 そ う し て 誕 生 し た 法 華 法 が 自 ら の 教 理 を 産 出 し 、 そ の 教 理 は 又 顯 に 影 響 し た こ と は 教 相 發 達 史 上 か な り 注 目 す べ き 事 柄 で あ ら ね ば な ら ぬ 。 こ ゝ に 想 ひ 起 さ れ る の は 、 法 華 經 要 義 に あ る ﹁ 又 或 學 者 は 言 ふ 、 目 蓮 は 天 台 宗 の 外 に 密 教 を 参 酌 し て 自 家 を 成 立 せ る も の 也 、 其 大 曼 荼 羅 の 如 き 、 本 是 密 部 蓮 華 三 昧 經 に 典 據 す 云 々 と 、 鳴 呼 亦 何 た る 言 そ や ﹂ の 語 で あ る 。 私 は 矢 張 或 學 者 の 言 ふ 處 を 却 つ て 肯 定 し た い 。 し か し 蓮 華 經 と の み あ る は 、 少 し 不 足 し て ゐ る の で 、 此 處 觀 智 儀 軌 を も 持 つ て 來 な け れ ば 、 彼 の 曼 荼 羅 は 成 立 し な い の で あ る 。 そ れ か あ ら ぬ か 、 日 蓮 の 本 尊 問 答 鈔 に は 、 觀 智 儀 軌 の 曼 荼 羅 を 是 非 し て ゐ る で は な い か 。 こ れ 全 く 、 本 軌 が 参 考 書 と し て 重 大 で あ つ た こ と を 證 明 す る も の で あ る 。 更 に 眞 宗 の 本 尊 に 就 て 一 言 し た い の は 、 彼 宗 の 久 遠 實 成 阿 彌 陀 佛 の こ と で あ る 。 阿 彌 陀 に 久 遠 實 成 を 附 加 し た の は 、 覺 運 の 念 佛 寳 號 觀 心 偈 に 始 ま る の で 、 彼 書 に 、 法 華 開 顯 の 意 に よ つ て 説 け ば 、 極 樂 應 迹 の 佛 は 久 遠 實 成 な り と 述 べ ら れ て ゐ る 。 而 し て こ の 念 佛 寳 號 觀 心 偈 は 、 覺 蓮 の 親 撰 か 否 か も 判 然 法 華 三 昧 と 法 華 法 一 一 九

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法 華 三 昧 と 法 華 法 一 二 〇 せ な い が 、 私 の 見 る 處 ぞ う も 蓮 華 經 に 深 い 關 係 あ る ら し い 。 即 ち 始 め の 觀 心 偈 は 本 覺 讃 な る 入 句 偈 と 意 相 通 じ 、 次 の 念 佛 偈 に 久 遠 實 成 の 釋 迦 を 出 し 、 こ の 釋 迦 は 金 胎 雨 部 の 冥 合 身 な り と 言 ひ 、 更 に 歸 敬 の 偈 に は 、 普 賢 、 文 殊 、 彌 勒 、 觀 音 、 勢 至 、 地 藏 な る 、 蓮 華 三 昧 經 に 交 渉 多 い 菩 薩 に 南 無 し て ゐ る で は な い か 。 こ れ を 以 て 經 と 偈 は 同 じ 要 領 で あ り 、 其 間 に 交 渉 な き も の と 斷 定 し 難 い と 思 ふ の で あ る 。 さ て 、 今 必 要 な の は 、 蓮 華 經 に 於 て 壽 量 の 本 佛 と 見 ら れ て ゐ る 無 量 壽 決 定 如 來 て あ る 。 こ れ を 覺 禪 鈔 に ﹁ 決 定 如 來 は 天 台 に は 阿 彌 陀 東 寺 に は 大 日 な り ﹂ と あ る 。 文 意 に 照 し て 、 念 佛 寳 號 觀 心 偈 は 決 定 如 來 即 久 遠 實 成 阿 彌 陀 と 信 じ て ゐ る こ と が 知 ら れ 、 眞 宗 の 本 尊 は 蓮 華 三 昧 經 に 依 つ て 立 し た の で あ ら う こ と が 推 測 し 得 ら る ゝ の で あ る 。 そ う し た 事 に 相 對 比 す べ き は 、 常 行 三 昧 と 鎌 倉 淨 土 教 宗 の 關 係 で あ る 。 我 邦 の 淨 土 教 宗 は 、 直 接 法 華 三 昧 の 影 響 は な い ま で も 、 四 種 三 昧 通 じ て 彌 陀 を 本 尊 と す る 義 は 、 當 行 三 昧 を し て よ り 尊 重 す べ き 行 門 た ら し め た 事 、 並 に 四 種 三 昧 は 等 し く 法 華 の 行 法 な り と い ふ 廣 義 釋 よ り し て 、 法 華 三 昧 は 淨 土 教 宗 の 母 た ら す と も 、 父 た る 立 場 に あ る と 考 へ ら れ る 。 か く て 此 二 つ の 異 な れ る 行 法 は ハ チ 切 れ て 新 し い 宗 等 を 生 ん だ と も 解 し て よ か ら う 。

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