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免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着分子

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Academic year: 2021

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はじめに  多細胞生物である動物は、単細胞の生物が 集まって形成されたと考えられている。この 細胞の集合には、細胞接着分子が重要な働き をしており、細胞同士の認識や組織の構築に 関与している。このような細胞接着分子は、 免疫グロブリンスーパーファミリー (IgSF)、 カドヘリンファミリー、そしてインテグリン ファミリーなどのタンパク質のグループに分 かれる1)。このIgSFは、免疫グロブリンに特 徴的なIgドメインを持つタンパク質のグルー プであり、細胞接着タンパク質(IgSF-CAM) 以外に、免疫関連タンパク質、レセプター分 子など様々な機能を持つタンパク質が含まれ ている2)。また、エーデルマン(1992)では、細 胞接着に関係する分子ファミリーを、細胞接 着分子(CAM)、基質接着分子(SAM)、細胞結 合分子(CJM)に分類している。CAMは、細胞 表面で他の細胞の分子と結合し、細胞集団 を作っている。このグループの中に、IgSFや カドヘリンが含まれている。SAMは、細胞の 足場となる細胞外マトリックスと細胞とを結 びつけている。この中には、フィブロネクチ ンや細胞側の受容体であるインテグリンがあ る。CJMは、細胞間の結合装置であるギャッ プ結合や密着結合を構成している分子であ る。ギャップ結合は、コネクソンという膜タ ンパク質で作られており、細胞間の分子のや り取りに働いている。  生物のゲノム解析が進み、生物ごとの細胞 接着分子の研究も進んでいる。ショウジョウ バエや線虫の細胞接着分子が明らかにされて おり、また、この2つの生物での比較も行わ れている3)。本研究では、4種類の動物の細胞 接着性IgSFを分析し、また、動物同士の比較 も行ない、細胞接着性IgSFの進化を検討する。 IgSFの検索  IgSFの検索を行なった無脊椎動物は、海綿 動物のカイメン、刺胞動物のイソギンチャク、 線形動物の線虫と節足動物のショウジョウバ エ で あ る。 各 動 物 のIgSFは、SUPERFAMILY はじめに IgSFの検索 海綿動物のIgSF-CAM 刺胞動物のIgSF-CAM 線形動物のIgSF-CAM 節足動物のIgSF-CAM おわりに

免疫グロブリンスーパーファミリーに属する

細胞接着分子

Cell Adhesion Molecules in the Immunoglobulin Superfamily

大 堀 兼 男

1) 細胞接着分子については、宮坂(2000)を参考の こと。 2) IgSFについては、大堀(1988)、 大堀(2013) を参照 のこと。 3) ショウジョウバエや線虫の細胞接着分子の研究 は、 Hynes,and Zhao(2000)、

Teichmann and Chothia(2000)、Vogel, et. al.(2003) を参照のこと。

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1.75(Wilson et al. (1999))のデータベースから 検 索 し、 ド メ イ ン 構 造 はInterProt(Hunter et al.(2011))お よ びSMART(Letunic et al.(2012))に 基づき推定した。Igドメイン、FNⅢドメイン および膜貫通部位を持つタンパク質を細胞接 着タンパク質とした。また、タンパク質の相 同検索には、UnitPro(Wu et al.(2006))を使用し た。タンパク質間の相同性を検討するため、 Clustal 2(Larkin et al.(2007))を使用して多重配 列を行なった。 海綿動物のIgSF-CAM  カイメンのIgSFのうち、IgドメインとFNⅢ ドメインを持つタンパク質をSUPERFAMILY データベースより検索したところ、78個が見 つかった。さらに、これらのタンパク質を対 象にドメインを確認したところ、Igドメイン とFNⅢドメインおよび膜貫通部位を持つ細 胞接着タンパク質の候補は36個であった。ま た、これらのタンパク質を元に相同検索を 行ない、接着タンパク質の候補を10個見つけ た。以上より、カイメンには46個の細胞接 着性IgSF(IgSF-CAM)が存在すると推定された (表1)。そのうち、IgドメインとFNⅢドメイン が各1個のドメイン構造のIgSF-CAMは5種類 あった。また、Igドメインが1個でFNⅢドメ インが複数個のドメイン構造のものは23種類 あ っ た。Igド メ イ ン が2個 のIgSF-CAMは4種 類、 Igドメインが4個のものは2種類、 Igドメイ ンが5個のものは3種類、6個のものは2種類、 7個のものは2種類、9個のものは1種類、14個 のものは2種類、19個のものは1種類あった。 また、IgドメインとFNⅢドメインが各1個の IgSF-CAMのなかにファミリーが2種類あっ た。 す な わ ち、 第1の グ ル ー プ はI1FXA84) I1G570およびI1GA45であり、第2のグループ はI1GV86とI1FV87である。Igドメインが14個 のIgSF-CAM(I1FV00とI1EXU1)も フ ァ ミ リ ー と推定された。   な お、 こ れ ら のIgSF-CAMは 他 の 動 物 の IgSF-CAMに は 相 同 な も の は 見 つ け ら れ な かった。しかし、カイメインのIgSF-CAMの なかでは、ドメイン構造は異なるが類似の アミノ酸配列のグループがあった。すなわ ち、I1EYY5(Igド メ イ ン は7個)は、I1FK26(Ig ドメイン5個)と配列が類似していた。また、 I1EVV6(Igド メ イ ン7個)は、I1EZA6(Igド メ イ ン9個)とI1FV00(Igド メ イ ン14個)と 類 似 し て い た。 さ ら に、I1EZA6(Igド メ イ ン9個)は、 I1FV00(Igドメイン14個)とI1EXU1(Igドメイン 14個)と類似していた。これらの例は、進化 の過程でIgドメインの重複が生じたことを示 している。 刺胞動物のIgSF-CAM  イソギンチャクのIgSFでは、 Igドメインと FNⅢ ド メ イ ン を 持 つ タ ン パ ク 質 をSUPER-FAMILYデータベースより検索したところ、 28種類が見つかった。さらに、Igドメインと FNⅢドメインおよび膜貫通部位を持つもの は、13種類であった(表2)。これらをドメイン 構成で分けると、4つのグループに分類でき た。第1のグループは、IgドメインとFNⅢド メインが各1個のIgSF-CAMで、1種類あった。 つぎのグループは、Igドメイン2個とFNⅢド メイン1個を持つIgSF-CAMで、5種類あった。 第3のグループは、4個以上のIgドメインを持 つIgSF-CAMで、4種類あった。最後のグルー プは異なったドメイン構成であるが、膜貫通 部分を境にして、細胞内部分にIgドメインや FNⅢドメインが存在するという共通性があ るIgSF-CAMで、3種類あった(図1)。  なお、第3のグループに属するA7RT95は、 ドメイン構造とアミノ酸配列の類似性からヒ ト のNeuronal cell adhesion molecule(Nr-CAM) と相同と推測された。 線形動物のIgSF-CAM  線虫のIgSFでは、 IgドメインとFNⅢドメイ ンを持つタンパク質をSUPERFAMILYデータ ベースより検索したところ、16種類が見つ かった。さらに、IgドメインとFNⅢドメイン および膜貫通部位を持つものは、8種類であっ 4) 以後、タンパク質の名称は、固有の名前がつい ていない場合は、UnitProで使われている Accessionコード(AC)を使うことにする。

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表1 カイメインのIgSF-CAM

No. UnitPro AC Igドメイン FNIIIドメイン

1 I1FXA8 1 1 2 I1G570 1 1 3 I1GA45 1 1 4 I1FV86 1 1 5 I1FV87 1 1 1 I1EJ13 1 3 2 I1EW38 1 3 3 I1G375 1 4 4 I1FDS4 1 4 5 I1EW37 1 4 6 I1EYI6 1 4 7 I1F8T7 1 4 8 I1EVH5 1 4 9 I1G212 1 4 10 I1FER6 1 5 11 I1G376 1 5 12 I1FTU7 1 5 13 I1EMN9 1 5 14 I1ESB5 1 5 15 I1EWF9 1 5 16 I1F3F1 1 5 17 I1FER8 1 5 18 I1F4M8 1 5 19 I1ERX2 1 5 20 I1FTU8 1 5 21 I1FRY1 1 5 22 I1FDS6 1 6 23 I1F8T6 1 7 1 I1G9L6 2 1 2 I1FH69 2 2 3 I1FPS2 2 2 4 I1F391 2 4 5 I1EYI5 2 6 1 I1ESK5 4 3 2 I1EZB2 4 5 1 I1FK26 5 1 2 I1FPU2 5 2 3 I1GG53 5 2 1 I1FV95 6 1 2 I1GG87 6 3 1 I1EYY5 7 1 2 I1EVV6 7 4 1 I1EZA6 9 6 1 I1FV00 14 5 2 I1EXU1 14 6 1 I1EYE9 19 5

(4)

表2 イソギンチャクのIgSF-CAM

No. UnitPro AC Igドメイン FNⅢドメイン

1 A7RYM5 1 1 1 A7SRI5 2 1 2 A7RR37 2 1 3 A7RN96 2 1 4 A7SKY2 2 1 5 A7SA33 2 1 1 A7SWF5 4 1 2 A7RYG0 5 2 3 A7RYG2 6 2 4 A7RT95 6 5 1 A7SRN0 1 1 2 A7RTK9 1 2 3 A7RTK6 5 1 表3 線虫のIgSF-CAM

No. UnitPro AC タンパク質名 Igドメイン FNIIIドメイン 相同IgSF-CAM

ヒト ショウジョウバエ

1 H2KZQ5 RIG-1 4 2

2 G5EF96 UNC-40 4 6 DCC

1 Q19128 NCAM-1 5 1

2 G5EBF1 sax-3 5 3 Robo2 Roundabout

1 G5ECX2 6 5 L1 Neuroglian

2 Q53U87 SAX-7 6 5 Nr-CAM Neuroglian

3 Q9N3X8 Sidekick 6 13 Sidekick

1 Q9TXI8 IGCM-1 7 1 Echinoid

(5)

A7RTK6

A7RTK9

A7SRN0

Igドメイン FNIIIドメイン 細胞外 細胞内 図1 イソギンチャクのIgSF-CAMのドメイン構造

(6)

た。また、これらのタンパク質を元に相同検 索を行ない、1種類のIgSF-CAMを見つけた。 以上より、線虫には9種類のIgSF-CAMが存在 すると推定された(表3)。これらのIgSF-CAM のドメイン構成は、Igドメインが4個以上で、 Igドメインが1個だけのものはなかった。   ヒ ト のIgSF-CAMと 類 似 の ド メ イ ン 構 成 の も の が、 少 な く と も4個 あ っ た。 G5EF96(UNC-40)はヒトのDCCと相同と推定 さ れ、G5ECX2は ヒ ト のL1、Q53U87(SAX-7) は ヒ ト のNr-CAM、G5EBF1は ヒ ト の Roundabout homolog 2と類似していた。 また、 ショウジョウバエのIgSF-CAMと相同なもの が6種類あった。G5ECX2はハエのNeuroglian と、Q9TXI8は ハ エ のechinoidと、Q9U3P2は ハ エ のHibrisと、Q53U87は ハ エ のNeuroglian と、G5EBF1は ハ エ のRoundaboutと、Sidekick homologはハエのSidekickと相同であった。こ のように、線虫とショウジョウバエのIgSF-CAMは相同なものがヒトに比較して多く、進 化的関係が近いことが推測された。また、線 虫とショウジョウバエとヒトで共通のIgSF- CAMが2種類あった。すなわち、ヒトのIgSF-CAMでいえば、RoundaboutとNr-ACMである。 節足動物のIgSF-CAM   シ ョ ウ ジ ョ ウ バ エ のIgSFの 中 で、 Igド メ イ ン とFNⅢ ド メ イ ン を 持 つ タ ン パ ク 質 を SUPERFAMILYデータベースより検索したと ころ、131個が見つかった。そのうち、 Igドメ インとFNⅢドメインおよび膜貫通部位を持 つものは、90%以上類似の配列を除いたとこ ろ、29種類(表4)であった。IgドメインとFNⅢ ドメインとを各1個もつIgSF-CAMは1種類だ けで、その他は3個以上のIgドメインを持っ ていた。Igドメインを3個持つIgSF-CAMは2種 類、Igドメインを4個持つものは6種類、Igド メインを5個持つものは10種類、Igドメインが 6個、7個、8個のものがそれぞれ2種類、Igド メインを10個持つものが4種類であった。ま た、ドメイン構造が同じで、アミノ酸配列も 類似していて、相同と推定されるIgSF-CAM のグループ、すなわちファミリーが5種類あっ た。 た と え ば、Down syndrom cell adhesion

molecule (Dscam)のファミリーは、Igドメイン を10個、FNⅢドメインを6個を持つドメイン 構造であるが、4種類のIgSF-CAMが含まれて いる。また、Sidestepのファミリーは、Igドメ インを5個、FNⅢドメインを1個を持つドメ イン構造になっているが、5種類のIgSF-CAM が属している。Roundaboutファミリーのドメ イン構造は、Igドメインを5個とFNⅢドメイ ンを3個持っており、3種類のIgSF-CAMが属 している。HibrisとEchinoidファミリーはそれ ぞれ2種類のIgSF-CAMが属しているが、ドメ イン構造はそれぞれ、9個のIgドメインと1個 のFNⅢドメイン、 7個のIgドメインと1個のFN Ⅲドメインである。   こ れ ら の 中 で、 ヒ ト のIgSF-CAMと ド メ イン構造とアミノ酸配列から相同と推定さ れるものが10種類見つかっている。 Dscam フ ァ ミ リ ー の4種 類 のIgSF-CAMは、 ヒ ト のDscamと 相 同 で あ る こ と が 推 定 さ れ た。 Roundaboutファミリーは、ヒトのRoundabout homologと 相 同 で あ る。 ま た、Neuroglianは ヒ ト のNr-CAMと 相 同 で あ る。Frazzledは ヒ トのNeogeninと相同であることがわかった。 Fasciclin-2はヒトのNcam-2と相同であった。 まとめ  動物の中で、進化的に最も古いカイメンの IgSF-CAMには、今回調べた他の動物にはな いものが見られた。その特徴的なドメイン構 造はIgドメインが1個でFNIIIドメインが3個以 上となっており、しかも類似ドメイン構造の IgSF-CAMが多数存在していた。その後の動 物には存在しないことから、進化の過程でこ のタンパク質は利用されなくなったことが考 えられる。このように、カイメンではIgSF-CAMの利用は試行錯誤の段階であったことが 推定される。  イソギンチャクのIgSF-CAMで特徴なドメ イン構造のタンパク質は第4のグループであ る。これらのタンパク質では細胞内にIgドメ インやFNIIIドメインが存在することが推定 された。このような構造は他の動物のIgSF-CAMでは見られない。一方、A7RT95はヒト のNr-CAMと相同であると推測され、他の動

(7)

表4 ショウジョウバエのIgSF-CAM

No. UnitPro AC タンパク質名 Igドメイン FNIIIドメイン ヒトの相同IgSF-CAM

1 M9NDT2 CG15312 1 1 1 Q9VP08 CG7166 3 1 2 Q7KUK9 CG17839 3 5 1 Q9VBE5 MIP08606p 4 1 2 Q9W1T6 CG34371 4 1 3 Q9U4G1 CG16857( Boderless) 4 2 4 Q9VM64 Interference hedgehog 4 2

5 Q9W4Y6 Brother of ihog 4 2

6 A1Z920 Frazzled 4 6 Neogenin

1 A8DYJ6 CG12484 5 1 2 Q9VB35 Sidestep 5 1 3 Q9VFU7 CG14372 5 1 4 E1JII4 CG34114 5 1 5 Q9VH85 CG12950 5 1 6 P34082 Fasciclin-2 5 2 Ncam-2 7 M9PCI8 Turtle 5 2

8 Q9W213 Roundabout 5 3 Roundabout homolog 2

9 M9PC46 Leak 5 3 Roundabout homolog 2

10 Q9VPZ7 LP22668p 5 3 Roundabout homolog 1

1 X2JHT7 Sidekick 6 13

2 E1JJF8 Neuroglian 6 5 Nr-CAM

1 Q9VQW7 Echinoid 7 1

2 M9NCR3 Friend of echinoid 7 1 1 Q0E9F2 Sticks and stones 9 1

2 A1Z9X4 Hibris 9 1

1 A1Z6X1 Down syndrome cell adhesion molecule 1

10 6 DSCAML1

2 Q0E8G9 Down syndrome cell adhesion molecule 4

10 6 Dscam

3 M9PED2 Down syndrome cell adhesion molecule 2

10 6 Dscam

4 Q7KSE9 Down syndrome cell adhesion molecule 3

(8)

物にも共通に存在するIgSF-CAMと考えられ る。  線虫になると近縁の動物であるショウジョ ウバエと相同なIgSF-CAMが存在するように なる。ショウジョウバエと相同なIgSF-CAM は6種類あった。さらに、ヒトと相同なIgSF-CAMは4種類あった。このように、線形動物 の段階では、共通のIgSF-CAMが多く見られ るようになる。  ショウジョウバエでは、多様なIgSF-CAM が存在するようになってきている。その中 で特に種類が多いのは、Igドメインが5個の IgSF-CAMとIgドメインが4個のものである。 また、これらのグループではアミノ酸配列が 類似したファミリーを構成している。これら は遺伝子の重複によって作られたことが推定 される。  4種類の動物の中で、共通したIgSF-CAM は見出されなかったが、ヒトのNr-CAMの相 同IgSF-CAMがカイメン以外の動物では見つ かっている。このNr-CAMは神経細胞に存在 する膜タンパク質で、軸索の成長と反発で重 要な役割を果たしている。Nr-CAMは6個のIg ドメインと5個のFNIIIドメインを持つIgSFで あるが、類似の構造を持つ脊椎動物のIgSF-CAMには、L1、Ng-CAM、Bravo、Neurofascin など知られている。また、6個のIgドメイン と4個 のFNIIIド メ イ ン を 持 つIgSFと し て は、 F3、F11、TAG、Axonin-1が知られている。5 個のIgドメインと2個のFNIIIドメインを持つ IgSFはNCAMで あ る。Nr-CAMだ け で な く、 L1やNCAMは神経細胞の細胞接着分子として 働いている。このように、これらIgドメイン とFNIIIドメインを複数持つIgSF-CAMは、類 似のドメイン構造と機能を持つことから、1 つのファミリーと考えられる(NCAMファミ リー )。このファミリーの中で、Nr-CAMは複 雑な構造をしているにもかかわらず、すでに 刺胞動物のイソギンチャクにも存在すること から、動物の神経細胞で重要な役割を果たし ていることが推定される。また、最初の動物 である海綿動物の次の段階で急速に進化して きたと推測される。Nr-CAMを含むグループ は多様性があり、L1ファミリーとも言われて いる5)。このことからL1ファミリーの起源が 古いことが推定され、L1ファミリーの一員で あるNr-CAMが刺胞動物から見つかったこと はこの推定を支持するものである。L1ファミ リーを含めてNCAMファミリーがいつ頃形成 されたのか解析することは、多細胞生物にお ける細胞接着の進化を明らかにするためには 必要である。

(9)

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