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Academic year: 2021

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(1)

企業の公開情報の分析に基づく建築産業における SDGs達成に向けた取り組みの特徴把握に関する研究

著者 石井 祐太

出版者 法政大学大学院デザイン工学研究科

雑誌名 法政大学大学院紀要. デザイン工学研究科編

巻 10

ページ 1‑4

発行年 2021‑03‑24

URL http://doi.org/10.15002/00023783

(2)

法政大学大学院デザイン工学研究科紀要 Vol. 10(2021年3月) 法政大学

企業の公開情報の分析に基づく建築産業における SDGs 達成に向けた取り組みの

特徴把握に関する研究

RESEARCH ON EFFORTS TO ACHIEVE THE SDGs IN CONSTRUCTION INDUSTRY BASED ON THE ANALYSIS OF CORPORATE DISCLOSURE REPORTS

石井祐太 Yuta ISHII

主査 川久保俊 副査 出口清孝 法政大学大学院デザイン工学研究科建築学専攻修士課程

In September 2015, the 2030 Agenda centered on the SDGs was adopted. The purpose of this study was to understand the characteristics of efforts to achieve SDGs in the construction industry, and to compare efforts to achieve SDGs in the construction industry and other industries. We collected non-financial information such as CSR reports from 2015 to 2019 for 2071 companies in Japan, and investigated the characteristics of efforts to achieve the SDGs of each industry.

Key Words :2030agenda, SDGs, CSR, company, construction industry

1. はじめに

2015年9月に、「持続可能な開発のための2030アジェ ンダ」1)が国連加盟国によって、全会一致で採択された。

その中核をなすのが、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals : SDGs)」であり、17のゴールから構 成される 2030 年までのグローバルな開発目標である。

2030アジェンダの文中には、「民間セクターに対し、持 続可能な開発における課題解決のための創造性とイノベ ーションを発揮することを求める」と記されており、民間 セクター(企業)によるSDGs達成に向けた取り組みに対 する期待は非常に大きい。

近年の SDGs に関する国内の動向として、日本経済団 体連合会が、Society 5.02)の実現を通じたSDGsの達成を 柱として、企業行動憲章3)を改定した。また、日本建築 センターによって「建築産業にとってのSDGs(持続可能 な開発目標)-導入のためのガイドライン-」4)が発行 される等、国内企業や建築産業における SDGs 達成に向 けた取り組みが促進されつつある。

建築産業はアセンブリー産業と言われており、多くの ステークホルダーと関わりのある産業である。加えて、

SDGs にはゴール17「パートナーシップで目標を達成し よう」があるように、SDGsの達成には多くのステークホ ルダーとの連携が重要とされている。そこで本研究では、

建築産業における SDGs 達成に向けた取り組みの特徴の 把握及び他産業との連携の提案を目的とする。

2. 研究方法

(1)データの収集方法

本研究では、四季報ONLINE5)に掲載されている2,071 社を対象とし、年次比較を行うため、毎年企業が発行して いるCSRレポート等注1)を収集し、SDGs取り組み状況を 調査した(図1)。まず、対象企業のHPにレポートが公 開されているか調査し、レポートが公開されていた場合、

レポート内に SDGs に関する語句が記載されているかを 調査した。本研究ではSDGsに関する語句を「2030アジ ェンダ」、「持続可能な開発目標」、「SDGs」の3つと 定義した。レポートには企業の経営ビジョンや非財務情 報等が記載されている。そのため、レポート内にSDGsに 関する語句が記載されている場合、企業は SDGs を認知 し、SDGs達成に向けて取り組みを行っていると判断した。

図1 データ収集のフロー

対象:四季報ONLINEに掲載されている11産業2,071社

レポート内でSDGsについて言及している企業

SDGs 2030アジェンダ 持続可能な開発目標

サステナビリティレポート 他 2015~2019年

企業のHP

CSRレポート

SDGsに関する語句

SDGsに関する語句の記載がされていない企業 レポートを公開していない企業

(3)

(2)レポートの分析方法

各産業における SDGs 達成に向けた取り組みの特徴を 把握するために、収集したレポートを分析し、企業がどの ような取り組みを行っているか判断する。なお、分析対象 は2019年のレポートとした。

レポート内で自社の取り組みや重要課題等を SDGs の ゴールと結び付けて記載している場合、そのゴールに関 する取り組みを行っていると判断した。自社の取り組み とSDGsのゴール間の紐づけの例を表1に示す。この場 合、企業はゴール3(保健)、4(教育)、5(ジェンダー)、

7(エネルギー)、8(成長・雇用)、9(イノベーション)、

10(不平等)、11(都市)、12(生産・消費)、13(気候 変動)、15(陸上資源)、16(平和)、17(実施手段)の 達成に向けて取り組んでいると判断する。

各企業が取り組んでいるゴールを集計した後、各産業 におけるゴール取り組み割合を算出した。なお、ゴール取 り組み割合の算出は以下の式を用いた。

ゴールxの取り組み割合=ゴールxに紐づけを行っている企業数 ゴールとの紐づけを行っている企業数

3. 研究結果

(1)レポート内におけるSDGsに関する語句の記載状況 2015年から2019年における2,071社のレポートの公開 有無、SDGsに関する語句が記載されている企業の割合を 調査した結果を表1に示す。

2015 年から 2019 年にかけてレポートを公開している 企業数は概ね同等である。しかし、2015年から2019年に かけて、レポート内に SDGs に関する語句を記載してい る企業数は毎年増加している。2019年時点ではレポート を公開している企業のうち約8割の企業がSDGs につい て言及しており、国内企業の中で SDGs の認知度が非常 に高まっていることが示唆された。

(2)各産業におけるSDGs達成に向けた取り組み状況 レポート内で SDGs について言及している企業の割合

(産業・年次別)を図2に示す。2018年時点で建築産業の SDGs 達成に向けて取り組む企業の割合は 68.5%であり、

全産業平均の59.6%を大きく超えている。また、2018年 に各産業における SDGs 達成に向けて取り組む企業の割 合を降順に並べると、建築産業は全産業のうち上位に位 置しており、SDGs達成に向けた取り組みが進んでいるこ とが示唆された。2019 年時点においても全産業平均の

79.8%を上回っており、建築産業は他産業と比べてSDGs

達成に向けて取り組む企業の割合が高いことが示唆され た。建築産業では、日本建築センターによって「建築産業 にとってのSDGs(持続可能な開発目標)-導入のためのガ イドライン-」が発行されるなど、建築産業全体で SDGs 達成に向けた取り組み方法が共有されているため、SDGs 達成に向けて取り組む企業が増加したと考えられる。

表1 ゴールの紐づけの例

重要課題 関連するゴール

①環境対応 3、7、11、13、15

②社会的課題解決に向けた

ビジネスの深化 8、9、11、12

③ダイバーシティと

ワークライフバランス 3、4、5、8、10

④コーポレート・ガバナンスと

リスクマネジメントの強化 16、17

表2 レポートの公開有無とSDGsについて言及 している企業の割合

2015年 2016年 2017年 2018年 2019年

① 748社 776社 800社 793社 786社

② 18社 140社 286社 473社 627社

2.4% 18.0% 35.8% 59.6% 79.8%

① レポートを公開している企業数

② SDGsに関する語句を記載している企業数

③ SDGsに関する語句を記載している企業数の割合

(=①/②)

図2 レポート内でSDGsについて言及している 企業の割合(産業・年次別)

他産業に着目すると、2019年時点で食品・農業産業の SDGs 達成に向けて取り組む企業の割合は全産業の中で 最も高い。食品・農業産業では農林水産省がSDGsと食品 産業の関係性や SDGs に関する先進的な取り組み等の情 報を発信する「SDGs×食品産業」6)というHPを公開し ている。このように、食品・農業産業全体としてSDGs達 成に向けた取り組みを推進する動きがあることで、食品・

農業産業で SDGs 達成に向けて取り組む企業が増加した と考えられる。

金融・保険サービス産業は2019年時点で全産業の中で 最もSDGs取り組み割合が低い。しかし、近年ESG投資 等注2)が活発に行われており、今後SDGs達成に向けて取 り組む企業が増加すると考えられる。

2018年 2017年

2016年

2015年 2019年

80

100

60 40 20 0

(%)

59.6

35.8

18.0 2.4 SDGs

79.8 82.2

33.3 18.8

0 68.5

(4)

(3)各産業における SDGs 達成に向けた取り組みの 特徴把握

a) 建築産業における取り組みの特徴把握

建築産業と全産業における SDGs の各ゴールへの取り 組み割合を図 3に示す。建築産業は全産業と比較して、

12個のゴールにおいて取り組み割合が高い。このことか ら、建築産業は SDGs に対して幅広く関係があるとこが 示唆された。

建築産業では主にゴール13(気候変動)、8(成長・雇 用)、11(都市)、5(ジェンダー)、12(生産・消費)

に対する取り組みの割合が高い。ゴール13(気候変動)

について、パリ協定の採択や環境不動産の普及によりCO2

削減等の環境面について取り組む企業が多いため、取り 組み割合が高くなったと考えられる。しかし、ゴール 6

(水・衛生)、14(海上資源)、15(陸上資源)等の環境 面のゴールに対する取り組み割合は低い。今後建築産業 が更に環境面に貢献するためにはこれらのゴールへの取 り組みを行う必要があることが示唆された。

反対に、建築産業におけるゴール1(貧困)、2(飢餓)

に対する取り組み割合は他のゴールと比べて低い。これ らのゴールの取り組み割合は全産業においても低く、建 築産業に限らず国内企業が取り組みを始めることは困難 であることが示唆された。

全産業との取り組み割合の差に着目すると、建築産業 におけるゴール11(都市)、5(ジェンダー)の取り組み 割合は全産業の取り組み割合と比べて 15%以上高い。ゴ ール11(都市)について、都市は建築物の集合体であり、

建築産業が直接的に関係するゴールであるため、取り組 む企業が多いと考えられる。ゴール5(ジェンダー)につ いて、国土交通省が「女性の定着促進に向けた建設産業行 動計画」を策定しており7)、建設産業で働く女性に対し て働きつづけられるための環境整備が行われている。建 築産業全体としてゴール5(ジェンダー)に対する取り組 みが推進されているため、ゴール5(ジェンダー)に対す る取り組む企業の割合が高くなったと考えられる。

b) 建築産業以外における取り組みの特徴把握

各産業におけるゴール1(貧困)に対して取り組みを行 っている企業の割合を図4 に示す。金融・法人サービス 産業のゴール1(貧困)に対する取り組みは全産業の中で 最も高く、建築産業の取り組み割合と比較して非常に高 い。建築産業のゴール1(貧困)に対する取り組みは進ん でおらず、今後金融・法人サービス産業と連携することで ゴール1(貧困)に対する取り組みを進めることが可能だ と考えられる。

金融・法人サービス産業では主に金融機関等が地域に 密着した取り組みが多く行っている。そこで、建築産業と して低価格住宅の普及の際に金融・法人サービス産業と 連携することでゴール1(貧困)に貢献することが可能で あると考える。

図3 建築産業における各ゴールへの取り組み割合

図4 ゴール1(貧困)に対して取り組みを

行っている企業の割合

図5 ゴール2(飢餓)に対して取り組みを

行っている企業の割合

図6 ゴール13(気候変動)に対して取り組みを

行っている企業の割合

1

12

13

14

15

16

17

2

3

4

5

6

7

8

11

10

100

9 0

40 80

20

(%)

60

建築産業 全産業

50

0 20 40

10

%

30 1

100

0 40 80

20

(%)

60 2

100

0 40 80

20

(%)

60 13

(5)

各産業におけるゴール2(飢餓)に対して取り組みを行 っている企業の割合を図5 に示す。食品・農業産業のゴ ール2(飢餓)に対する取り組みは全産業の中も最も高く、

建築産業と比較して非常に高い。建築産業におけるゴー ル2(飢餓)に対する取り組み割合は低く、今後食品・農 業産業と連携することでゴール2(飢餓)に対する取り組 みを進めることが可能だと考えられる。

近年デベロッパー等の企業が農業事業を開始し、街づ くりという事業に活かしつつある8)。食品・農業産業と 建築産業の間で適切に連携をすることがゴール2(飢 餓)の貢献にとって重要であると考えられる。

各産業におけるゴール13(気候変動)に対して取り組 みを行っている企業の割合を図6に示す。ゴール13(気 候変動)の取り組み割合は概ね全ての産業で高い。これは、

パリ協定の採択等を受けて既にCO2排出量の削減等に取 り組みを行っている企業が多いためであると考えられる。

このことから、ゴール13(気候変動)の達成に向けて取 り組む際には、特定の産業と取り組むのではなく、全産業 と横断的に連携することが可能であることが示唆された。

上記で例示したように、建築産業は多くの産業と関わ りがある産業だと言える。そのため、今後さらに建築産業 が SDGs 達成に貢献するためには他産業との連携が必須 だと考える。

4. まとめ

(1)総論

本研究では建築産業における SDGs 達成に向けた取り 組みの特徴の把握及び他産業との連携の提案の2 点を目 的とし、国内の2071 社を対象としてCSRレポート等の 非財務情報を収集及び分析をすることで、各企業や各産 業の SDGs 達成に向けた取り組みの特徴を調査した。結 果として得られた知見は次の通りである。

①2019年時点において、レポートを公開している企業 のうち約8割の企業がSDGsについて言及しており、国 内企業のなかで SDGs の認知度が非常に高まっているこ とが明らかとなった。

②建築産業は全産業と比べて SDGs 達成に向けて取り 組む企業の割合が高い。

③建築産業では全産業と比較して多くのゴールに取り 組んでおり、主にゴール13(気候変動)、8(成長・雇用)、

11(都市)、5(ジェンダー)、12(生産・消費)

に対する取り組みの割合が高い。

④建築産業はゴール 1(貧困)、2(飢餓)に対する取 り組みが少ないが、金融・法人サービス産業、食品・農業 産業と連携を行うことでこれらのゴールへの取り組みが 進む可能性がある。

⑤ゴール13(気候変動)の取り組み割合は概ね全ての

産業で高く、ゴール13(気候変動)の達成に向けて特定 の産業と取り組むのではなく、全産業と横断的に連携す ることが可能であることが示唆された。

(2)今後の展望

本研究では建築産業と他産業における SDGs 達成に向 けた取り組みの特徴を把握したが、SDGs達成に向けた取 り組みの詳細な把握は行えていない。近年では SDGs ウ ォッシュのように、表面上のみの SDGs 達成に向けた取 り組みが問題視されているが、本研究ではこのような取 り組みを行なっている企業であるかを判断できていない。

今後は企業の取り組みの内容をより詳細に分析すること が必要であると考えられる。

注釈

1)CSR:Corporate Social Responsibility(企業の社会的責 任)レポート、サステナビリティレポート、統合報告 書等が含まれる。企業は株主をはじめとする様々なス テークホルダーに対して自社の取り組みを毎年公開し ている。

2)ESG投資:ESG(Environment: 環境、Social: 社会、

Governance: ガバナンス)などの非財務情報を考慮す

る投資のことをいう。ESGは、企業のリスクマネジメ ントだけなく、持続的な価値創造を支える先行投資で あると考えられているため、長期的な持続可能性を考 えるSDGsの理念と概ね一致している。

参考文献 1)2030アジェンダ、

https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_develop ment/sustainable_development/2030agenda/

[最終アクセス2021.2.4]

2)Society 5.0、https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

[最終アクセス2021.2.4]

3)企業行動憲章 改定の手引き、

https://www.keidanren.or.jp/policy/cgcb/tebiki7.pdf [最終アクセス2021.2.4]

4)日本建築センター:建築産業にとってのSDGs(持続可

能な開発目標)-導入のためのガイドライン-、2019.2 5)東洋経済新報社:会社四季報ONLINE

https://shikiho.jp/tk/market/、

[最終アクセス2018.3.6]

6)SDGs×食品産業:農林水産省、

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/、

[最終アクセス2021.2.4]

7)建築産業における女性の定着促進に向けた取組につい て|国土交通省、

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_c onst_tk1_000088.html[最終アクセス2018.3.6]

8)持続可能なスマート農業事業による農業振興と雇用創 出を目指し、「三井不動産ワールドファーム株式会 社」を設立|三井不動産、

https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2020/0803 _01/[最終アクセス2021.2.4]

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