• 検索結果がありません。

出版者 法政大学大学院

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "出版者 法政大学大学院"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

抑うつ傾向者の感情語に対するメタ記憶判断と記憶 成績の関連 : 記銘意図の有無は想起の過大評価に 影響するか

著者 ?橋 佳史

出版者 法政大学大学院

雑誌名 大学院紀要 = Bulletin of graduate studies

巻 86

ページ 1‑6

発行年 2021‑03‑31

URL http://doi.org/10.15002/00023764

(2)

抑う うつ つ傾 傾向 向者 者の の感 感情 情語 語に に対 対す する るメ メタ タ記 記憶 憶判 判断 断と と記 記憶 憶成 成績 績の の関 関連 連

―記 記銘 銘意 意図 図の の有 有無 無は は想 想起 起の の過 過大 大評 評価 価に に影 影響 響す する るか か― ―

人文科学研究科 心理学専攻 博士後期課程3年

髙橋 佳史

問題題とと目目的的

一般的に,項目をどれだけ簡単に覚えることができるかというメタ記憶判断と実際の記憶成績は必ずしも一 致しない(Bjork, Dunlosky, & Kornell, 2013)。これはメタ記憶判断において,記憶の想起可能性を過大もしくは 過少に評価するためである。想起可能性を過大評価してしまう要因には項目の属性が関連するといわれ,熟知 性や心像性が高い項目に対して想起可能性を過大評価してしまうということが報告されている(e.g., Koriat,

1997)。Zimmerman and Kelly(2010)は,項目の感情価に着目し,以後項目の感情価は想起の可能性を予測す

るための重要な手がかりの一つだとされている(Hourihan, 2020)。さらに今後の展望として,個人特性に言及 すべきであると報告されている(Fairfield, Palumbo, & Di Domenico, 2015)。

一方で抑うつの悪化・維持の要因は,不快な記憶の想起自体よりも,不快な記憶が頭から離れないだろうと いうネガティブな信念にあるとされている。したがって,近年のうつ病の心理的介入では,ネガティブな信念 の変容が焦点となっている(Wells, 2011)。高橋(2018a; 2018b)は,抑うつ者の記憶に対するネガティブな信 念をメタ記憶判断から検討し,記憶のどの段階からネガティブな信念が生じているか検討した。結果として,

高橋(2018a)では,抑うつ傾向者は,不快語に対する記銘中から記銘後にかけたメタ記憶判断が,実際の記憶

成績を上回ることを報告した。ここから,抑うつ傾向者は記銘段階から記憶に対するネガティブな信念がある と示唆された。さらに高橋(2018b)は,効果の大きさは小さいものの,項目の記銘前に行われるメタ記憶判断 でも実際の記憶成績を上回ったことを報告した。ここから記銘段階前の項目の感情価に対する判断段階におい てすでに抑うつ傾向者にはネガティブな信念が生じていることを示唆された。

しかしながら,高橋(2018b)において,純粋な項目の感情価に対する判断のみを測定していたのか検証の余 地がある。記銘段階には,項目を覚えようとする記銘意図と,実際に項目を覚えるという記銘活動に分類され る。高橋(2018b)で使用したメタ記憶判断は,項目がどれだけ覚えやすいか,覚えにくいかを判断する学習容 易性判断であった。実験の手続きとして,参加者は単語の提示時間中は学習容易性判断を行うために記銘活動 を行う時間はなかった。さらに学習容易性判断を使用する実験では,参加者に項目を記銘しないように後のテ ストを告知しないことが一般的である。そのため,学習容易性判断には参加者の記銘意図は含まれないと考え られている。しかし,参加者が後にテストがあることを予測していた場合,記銘意図が含まれていたのではな いかという懸念は残る。したがって,高橋(2018b)では,メタ記憶判断は項目の感情価だけではなく,自身の 記銘意図が含まれていた可能性が示唆される。そこで本研究は,高橋(2018b)の手続きに加え,あらかじめテ スト予告を行うことで,参加者に記銘意図を持たせたうえで学習容易性判断を求めた。

本研究の目的は,感情価と記銘意図を合わせたメタ記憶判断を比較することで,抑うつ傾向者のメタ記憶判 断の歪みの段階をより精緻に明らかにすることであった。仮説として,高橋(2018a; 2018b)同様に,抑うつ傾 向者は,抑うつ傾向が低い健常者よりも不快単語の想起可能性を過大評価する。記銘意図がある場合は,記銘 意図がない場合よりも不快単語の想起を過大評価すると予想される。

方 方法法

参加加者者ととデデザザイインン

実験には法政大学の日本人の学部生生54名が参加した。サンプルサイズはG * Power(Faul, Erdfelder, Lang, &

(3)

Buchner, 2007)による検出力分析で算出した(f =.25,検出力1–β =.95,両側検定α = .05)。検出力分析の 結果,1群あたり27人の参加者数が必要であることが示された。抑うつ傾向高群と抑うつ傾向低群のカットオ フ値は,抑うつの軽度の症状を示す最小値である14点としたBeck, Steer and Brown(1996)を参考にした。BDI-II 得点が14点以上の27名を抑うつ傾向高群(20.1±1.1歳,女性15名,BDI-II得点=17.9±3.3),BDI-II得点が 13点未満の27名を抑うつ傾向低群(19.8±1.4歳,女性14名,BDI-II得点=6.1±3.3)に割り付けた。年齢(t (51) = 1.28,n.s.)と性別(𝜒𝜒2 (1) = 0.07,n.s.)に両群間に有意差はなく,BDI-II得点に有意差があることを確認 した(t(51) = 12.97,p< .01)。

実験計画は,抑うつ傾向2(高群/低群)×単語の感情価2(不快語/中性語)の二要因混合計画であった。

すなわち,抑うつ傾向は参加者間計画であり,単語の感情価は参加者内計画であった。

材 材料料

抑ううつつ尺尺度度 抑うつ測定尺度は,日本語版BDI-II(小嶋・古川,2003)を用いた。BDI-IIはBeck et al.(1996) によって開発され,日本語第二版は小嶋・古川(2003)によって邦訳された。全21項目で最近の自分にあては まるものを選択させる(e.g., 悲しみは感じない, 自分自身に失望している)。回答形式は一問につき重症度(e.g., 0点:悲しみは感じない,1点:悲しいと感じる,2点:いつも悲しくて,気分の切り替えが出来ない,3点:

非常に悲しい,または不幸だと感じていて,耐えられない)に応じて4つの文章が提示されており,その中か ら当てはまる文章を選択した。

刺激激 刺激は単語を使用した。中性語と不快語はAffective norms for English words(Bradley & Lang, 1999)の 日本語版(本間, 2014)から漢字二字の名詞を24 語ずつの合計48語使用した。練習試行を中性・不快単語そ れぞれ1単語ずつ,フィラー課題を中性・不快単語それぞれ2単語ずつ使用した。したがって,使用単語の合 計は本試行(48単語)と練習試行(2単語),フィラー試行(4単語)合わせて54単語であった。

実 実験験機機材材

刺激の提示にはパ-ソナルコンピュ-タ(Apple社製MacBook Pro (13-inch, 2017)を使用した。実験参加者 の音声反応を測定するためにICレコーダーを使用した。

手 手続続きき

本研究は法政大学文学部心理学科の倫理委員会の承認の下で行われた(承認番号:17-0104)。実験は個別で 行った。実験は「大学生の方々を対象とした単語の覚えやすさについての研究」というカバータイトルをつけ て実施した。最初に同意書,フェイスシートを用いて実験内容の説明と参加への同意を確認した。続いて,抑 うつ尺度(日本版BDI-II)を実施し,回答終了後に実験に移行した。実験は判断段階,妨害課題,再生段階で 構成された。判断段階は画面中央に注視点とブランクがそれぞれ500ms提示後,画面の中央にターゲット語(中 性語もしくは不快語)が3秒間提示された。参加者はこの間に提示された単語を音読してから単語の覚えやす さを判断した。直後に口頭によって学習容易性判断を1秒以内で回答した。回答の仕方は0から100を10刻み にした11件法であった。学習容易性判断時に,参加者には学習容易性判断を行った単語は後ほど思い出しても らう旨をあらかじめ教示した。テスト予告をした上で,参加者には学習容易性判断に集中してもらうことを教 示した。全ての単語判断と学習容易性判断終了した後に,妨害課題として参加者は百マス計算を4分間実施し,

終了後に再生段階に入った。再生はタイピングによる最大10分間の自由再生を行った。再生段階終了後に,気 分の悪化を防ぐために快語(休暇,最高,新品,完成,愛情)を提示し,自由連想を求めた。最後に,デブリ ーフィングと実験開始前と比べて気分の著しい悪化がないことを参加者に確認し実験を終了した。判断段階の 流れをFigure 1に示す。

(4)

Figure 1. 実験での判断段階の流れを示す。

結 結果果

記憶憶成成績績のの差差のの検検定定

抑うつ傾向と単語の感情価による単語の記憶成績の差を検討するために,二要因の分散分析を行った。独立 変数は抑うつ傾向と単語の感情価,従属変数は再生段階での自由再生率とした。分析の結果,抑うつ傾向の主 効果(F(1, 52)= 0.02,n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .00),単語の感情価の主効果(F(1, 52)= 2.76,n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .05)はともに有意 ではなかった。さらに,抑うつ傾向と単語の感情価の有意な交互作用はみられなかった(F(1, 52)= 0.47,n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .01)。記憶成績とメタ記憶判断の結果をTable 1に示す。

Table 1. 抑うつ傾向高群と抑うつ傾向低群の不快語,中性語に対する再生成績,学習容易性判断,絶対的評価,

相対的評価を示す。カッコ内は標準偏差を表す。

注)Table内の学容は学習容易性判断を示す。

火災 注視点 500ms

ブランク 500ms

単語提示+判断 3s

学習容易性判断 1s(口頭)

提示された単語の覚えやすさを 判断してください

判断した単語は後ほど思い出し てもらいますが,単語の覚えや

すさのみを判断してください。

0 100

変数 単語の感情価 抑うつ傾向高群 抑うつ傾向低群 不快 21.8 ( 10.4 ) 21.8 ( 12.3 ) 中性 19.9 ( 11.2 ) 21.0 ( 17.7 ) 不快 53.3 ( 11.0 ) 47.0 ( 11.3 ) 中性 46.8 ( 11.9 ) 48.5 ( 11.8 ) 不快 31.5 ( 16.7 ) 25.2 ( 16.4 ) 中性 26.9 ( 12.7 ) 27.5 ( 18.8 )

不快 .41 ( .42 ) .52 ( .39 )

中性 .47 ( .46 ) .56 ( .34 )

相対的指標 (ガンマ相関) 再生成績(%)

学習容易性判断

絶対的指標

(学容−再生)

(5)

メタタ記記憶憶判判断断のの差差のの検検定定

抑うつ傾向と単語の感情価による単語の学習容易性判断の差を検討するために,二要因の分散分析を行った。

独立変数は抑うつ傾向と単語の感情価,従属変数は判断段階での単語の学習容易性判断の平均とした。分析の 結果,抑うつ傾向の有意な主効果はみられなかったが(F(1, 52)= 0.58,n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .01),単語の感情価の主効 果は有意であった(F(1, 52)= 5.53,p< .05, 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .10)。一方で,抑うつ傾向と単語の感情価の有意な交互作用 がみられた(F(1, 52)= 14.20, p< .01, 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .21)。単純主効果検定の結果,抑うつ傾向高群の単純主効果(F

(1, 26)= 14.58,p< .01, 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .36)と不快語の単純主効果(F(1, 52 = 4.10, p< .05 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .73)が有意であった。

抑うつ傾向高群においては,中性語(M= 46.8,SD= 11.9)よりも不快語を(M= 53.3,SD= 11.0)より簡単に覚 えられると判断した(t(26) = 3.82, SE= 1.69, p< .01, d= 0.74)。不快語においては,抑うつ傾向低群(M= 47.0, SD= 11.3)よりも,抑うつ傾向高群(M= 53.3,SD= 11.0)の方が簡単に覚えられると判断した(t(52) = 2.03, SE

= 3.10, p< .05, d= 1.05)。抑うつ傾向低群と中性語の単純主効果は有意ではなかった(それぞれ,F(1, 26)= 1.40, n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .05,F(1, 52)= 0.26,n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .01)。

Figure 2. 抑うつ傾向高群と抑うつ傾向低群の不快語,中性語に対する学習容易性判断の平均の差を示す。エラ

ーバーは標準誤差を示す。

メタタ記記憶憶判判断断のの絶絶対対的的指指標標のの差差のの検検定定

メタ記憶判断の絶対的指標として,学習容易性判断と再生成績の差分を算出した。参加者ごとに学習容易性 判断の平均と再生率の平均の差分を指標とした。この絶対的指標は0に近いほどメタ記憶判断と記憶成績は等 しいといえる。正の方向にずれるにつれて,メタ記憶判断を過大評価し,負の方向にずれるにつれて,メタ記 憶判断を過小評価したといえる。絶対的指標は参加者につき中性語と不快語の2つ算出された。

抑うつ傾向と単語の感情価によるメタ記憶判断と記憶成績と単語のメタ記憶判断の差を検討するために,二 要因の分散分析を行った。独立変数は抑うつ傾向と単語の感情価,従属変数は判断段階での単語の学習容易性 判断の平均から再生成績を引いた差分とした。分析の結果,抑うつ傾向と単語の感情価の主効果はともに有意 ではなかった(それぞれ,F(1, 52)= 0.42, n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .01,F(1, 52)= 1.25, n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .02)。一方で抑うつ傾向 と単語の感情価の有意な交互作用がみられた(F(1, 52)= 10.72, p< .01, 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .17)。単純主効果検定の結果,

抑うつ傾向高群の単純主効果が有意であった(F(1, 26)= 8.16, p< .01, 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .24)。抑うつ傾向高群においては,

中性語(M= 26.9,SD= 12.7)よりも不快語(M= 31.5,SD= 16.7)の方が,メタ記憶判断と想起の差分は大きか

った(t(26) = 2.86, SE= 1.61, p< .01, d= 0.41)。この結果から,メタ記憶判断と記憶瀬石の差分が正の値であっ

(6)

たため,抑うつ傾向高群は不快語を中性語よりも想起の可能性を過大評価したといえる。抑うつ傾向低群,不 快語,中性語の単純主効果は有意ではなかった(抑うつ傾向低群:F(1, 26)= 2.84,n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .10,不快語:F

(1, 52)= 1.86,n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .04,中性語:F(1, 52)= 0.02,n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .00)。

Figure 3. 抑うつ傾向高群と抑うつ傾向低群の不快語,中性語に対する絶対的指標(学習容易性判断と再生成績

の差分)の平均の差を示す。エラーバーは標準誤差を示す。

メタタ記記憶憶判判断断のの相相対対的的指指標標のの差差のの検検定定

メタ記憶判断の相対的指標として,学習容易性判断と再生成績間で算出されたグッドマン=クラスカルのガ ンマ相関(Nelson, 1984)を算出した。ガンマ相関は,メタ記憶判断を大きく評定(例えば,「簡単に覚えられ る」,「後で必ず思い出せる」)した項目を実際に思い出せているか,またメタ記憶判断を小さく評定(例えば,

「覚えるのが難しい」,「後で絶対に思い出せない」)した項目を実際に思い出せていないかという個人内におけ るメタ記憶判断の相対的な指標となる。ガンマ相関は1から-1の値をとり,1に近いほど学習容易性判断が正 確であり,-1に近いほど学習容易性判断が不正確であったと判断できる。ガンマ相関は参加者につき中性語と 不快語の2つ算出された。

抑うつ傾向と単語の感情価に学習容易性判断の正確さの差を検討するために,二要因の分散分析を行った。

独立変数は抑うつ傾向と単語の感情価,従属変数は参加者ごとに算出されたガンマ相関の平均とした。分析の 結果,抑うつ傾向の主効果(F(1, 52)= 1.37,n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .03),単語の感情価の主効果(F(1, 52)= 0.58,n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .01) と抑うつ傾向と単語の感情価の交互作用(F(1, 52)= 0.04,n.s., 𝜂𝜂𝑝𝑝2 = .00)いずれも有意ではなかった。

考 考察察

本研究の目的は,感情価と記銘意図を合わせたメタ記憶判断を比較することで,抑うつ傾向者のメタ記憶判 断の歪みの段階をより精緻に明らかにすることであった。仮説として,高橋(2018a; 2018b)同様に,抑うつ傾 向者は,抑うつ傾向が低い健常者よりも不快単語の想起可能性を過大評価する。記銘意図がある場合は,記銘 意図がない場合よりも不快単語の想起を過大評価すると予想された。結果として,仮説の一つ目は,抑うつ傾 向高群は抑うつ傾向低群よりも,不快語を覚えるのが簡単であると判断した。一方で,抑うつ傾向高群内にお いて,中性語よりも不快語の方が想起を過大評価したが,不快語においては,抑うつ傾向高群と抑うつ傾向低 群の想起の過大評価に有意な差はみられなかった。したがって,仮説の一部を支持する結果となった。

不快語において,抑うつ傾向高群と抑うつ傾向低群の想起の過大評価に有意な差はみられなかった理由とし

(7)

て,学習容易性判断にかかる時間が考えられる。抑うつ傾向高群の不快語に対する学習容易性判断は抑うつス キーマに基づいていると考えられ,抑うつ傾向低群よりも時間がかからず時判断できたと考えられる。そのた め,抑うつ傾向高群は抑うつ傾向低群よりも多くの時間を記銘活動に割り当てられた可能性がある。一般的に 抑うつ傾向者は健常者より記憶成績が低いと言われている。本研究では記銘活動の時間の違いから,抑うつ傾 向高群と抑うつ傾向低群で不快語の再生成績の差が小さかったことが不快語の過大評価の有意差が見られなか った原因であると考えられる。

仮説の二つ目は,本研究では抑うつ傾向高群は抑うつ傾向低群よりも不快語の学習容易性判断が有意に高か った。一方で,高橋(2018b)では,抑うつ傾向高群と抑うつ傾向低群で不快語の学習容易性判断に有意差はみ られなかった。この原因として,抑うつ傾向者の不快項目に対する想起可能性の過大評価は,項目の感情価の みのメタ記憶判断だけでなく,項目の感情価と記銘意図を含む記銘段階のメタ記憶判断と合わさることでより 強固になると考えられる。また,抑うつ傾向高群は自己と不快項目を関連づけて符号化することで抑うつ傾向 者の不快な記憶に対する想起可能性はより過大評価すると予想される。

今回の実験では,不快語と中性語の比較であった。そのため,抑うつ傾向高群が想起の可能性を過大評価し たのは,不快語特有の効果なのか,それとも感情価の有無の効果なのか明言できない。今後の展望としては,

快語と中性語の比較や快語,中性語,不快語の三つの感情価での比較が必要であろう。

引用用文文献

Beck, A. T., Steer, R., & Brown, G. (1996). Beck Depression Inventory―Second edition. Harcourt Assessment, Inc.

Bjork, R. A., Dunlosky, J., & Kornell, N. (2013). Self-regulated learning: Beliefs, techniques, and illusions. Annual review of psychology,64, 417-444.

Bradley, M. M., & Lang, P. J. (1999). Affective norms for English words (ANEW): Instruction manual and affective ratings(Vol. 30, No.

1, pp. 25-36). Technical report C-1, the center for research in psychophysiology, University of Florida.

Fairfield, B., Mammarella, N., Palumbo, R., & Di Domenico, A. (2015). Emotional meta-memories: a review. Brain sciences, 5, 509-520.

Faul, F., Erdfelder, E., Lang, A. G., & Buchner, A. (2007). G* Power 3: A flexible statistical power analysis program for the social, behavioral, and biomedical sciences. Behavior research methods,39, 175-191.

本間 喜子 (2014). 単語の感情価と覚醒度にもとづいた単語刺激の作成. 愛知工業大学研究報告,49, 13-24.

Hourihan, K. L. (2020). Misleading emotions: judgments of learning overestimate recognition of negative and positive emotional images.Cognition and Emotion, 34, 771-782.

小嶋 雅代・古川 壽亮 (2003). 日本版BDI - II ベック抑うつ質問票 日本文化科学社

Koriat, A. (1997). Monitoring one's own knowledge during study: A cue-utilization approach to judgments of learning. Journal of Experimental Psychology: General, 126, 349-370.

Nelson, T. O. (1984). A comparison of current measures of the accuracy of feeling-of knowing predictions. Psychological Bulletin, 95, 109–133.

高橋 佳史 (2018a). 抑うつ傾向者はネガティブ刺激の記憶判断を過大評価するか 16回日本認知心理学会大会発表論文 .16.

高橋 佳史 (2018b). 抑うつ傾向者の感情語に対する記憶判断と記憶成績の関連 82回日本心理学会大会発表論文集.134.

Wells, A. (2011). Metacognitive therapy for anxiety and depression. Guilford press.

Zimmerman, C. A., & Kelley, C. M. (2010). “I’ll remember this!” Effects of emotionality on memory predictions versus memory performance. Journal of Memory and Language, 62, 240–253.

Figure 1.  実験での判断段階の流れを示す。 結 結果果 記 記憶 憶成 成績 績の の差 差の の検 検定定 抑うつ傾向と単語の感情価による単語の記憶成績の差を検討するために,二要因の分散分析を行った。独立 変数は抑うつ傾向と単語の感情価,従属変数は再生段階での自由再生率とした。分析の結果,抑うつ傾向の主 効果( F ( 1, 52 ) = 0.02, n.s.,

参照

関連したドキュメント

現在入手可能な情報から得られたソニーの経営者の判断にもとづいています。実

この項目の内容と「4環境の把 握」、「6コミュニケーション」等 の区分に示されている項目の

森 狙仙は猿を描かせれば右に出るものが ないといわれ、当時大人気のアーティス トでした。母猿は滝の姿を見ながら、顔に

(採択) 」と「先生が励ましの声をかけてくれなかった(削除) 」 )と判断した項目を削除すること で計 83

子どもたちは、全5回のプログラムで学習したこと を思い出しながら、 「昔の人は霧ヶ峰に何をしにきてい

ハンブルク大学の Harunaga Isaacson 教授も,ポスドク研究員としてオックスフォード

層の積年の思いがここに表出しているようにも思われる︒日本の東アジア大国コンサート構想は︑

3.8   ブラベンダービスコグラフィー   ブラベンダービスコグラフを用い、乾燥した試料を 450ml の水で測 定容器に流し込み、液温が