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新規な機能をもつ核酸結合性小分子の研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

新規な機能をもつ核酸結合性小分子の研究

井原, 敏博

九州大学工学研究科合成化学専攻

https://doi.org/10.11501/3065524

出版情報:Kyushu University, 1992, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

エチジウムブロミドの蛍光を利用した複合体形成の観察

4-3-3

プローブ5についての観察

ド浴液にWY1-WR1複合体とWY1-WR1-5複合 エチジウムブロミ

その際の蛍光強度の変化を観察した。 結果を図 イ本を徐々に添加し、

4 - 1

3に示す。

3本鎖 2本鎖

ー一一一一'J一一一ー 一一�・一一

30

25

20

1 5

10

RU

川也市畑山米相

1 0 6 8

2 4

オリゴヌクレオチド複合体濃度/μM

図4-13 オリゴヌクレオチド複合体添加に伴うエチジウムプロ ミドの蛍光強度の変化.

20mM MgCI2, 5mM NaCl, lmM Tris­

HCl

(pH7.4)司2.5μM エチジウムブロミド,100C,

Àex.=S25nm,

À em.=598nm

ド添加iに伴っていずれの場合も蛍光強度が増大

ゴヌク レオチ オリ

WY1-WR1複合体とWY1-WR1-5複合体とでは異なる しているが、

わずかではあるがWY1-WR

1-5複合体添加系の

挙動を示し ている。

この3元複合体が3本鎖を形成して の度合が大きく、

】ることを示唆している1 25 。 方が蛍光土台

ー143-

(3)

プロープ6についての観察

H P 2-6複合体の添加に伴う蛍光強度の測定

全く同様にして

HP2、

蛍光強度変化を図4 - 14に示す。

25

20

15

も行なった。

wm川畑町心不相

一一_.一一

10

FhJV

2 4 6 8 10 14

オリゴヌクレオチド複合体濃度/μM

12

O.lM

図4- 14 オリゴヌクレオチド複合体添加に伴うエチジウム ブロ ミドの蛍光強度の変化.

10mM MgC12, 50mM NaCl,

CH3COONa (p

H

5)

,2.5μM

エチジウムブロミド,200(,

Æ e".=525nm, ;. cm.=598nm

HP2とHP 2-6複合体とでは全 図4イ3の結呆とは逆ではあるが、

このことからH P

2

-

6が単なるヘアピン構造

ではない後合体�3本鎖複合体~を形成していると考えられる1

21

)。

複合体形成の熱力学的パラメータ の算出126、1

27 )

く災なる挙mJJをボした。

4 -3 - 4

3本鎖形成能を定ii;:的に評価するために 、i�ç,j定型の熱測定装置

ì

-r熱)J �学[l�Jパラメータの算出を行な

OMEG

を則

(MicroCal、

-144-

(4)

った。 解析の単純化のためにターゲットとなる2本鎖オリゴヌクレ オチドには高次の自己会合により安定なヘアピン構造を取り得る

H

P2を用いた。 セル中にこのヘアピンオリゴヌクレオチドを入れ、

セル上部に取り付けた撹粋子イ寸きシリンジからC6T6、 または6を滴 下し、 反応に伴って発生する熱量を測定した。

H P 2-6についての結

栄を図4 -

1

5に示す。

-9

-18

m ω ::i. -27

-36

-45

、hbb?

見 守

旬、

J

+

タレ

8

〆.

.�

./

出川38K)

4 8 12 16

インジェクションナンバ-

図4・15

6の滴定に伴う発生熱量のプロット.

2.5μM HP2の入った

1.4mlのセル浴液に対して,52.5μMの6を7μiずつ滴下した.0.1 M

CH3COONa (pH5) , 50mM NaCl, 10mM MgCl2

iUられたプロ y卜を式(

2 1

)を用いて非線型最小二釆法にて最適化

して)j_ 応エンタルピ一 、 エントロピ一 、 それに結合定数を算出した。

!_ ( dQ \ _

^ uO

I _]_ーム ト(l + r) /

2 - Xr

/ 2

VO

\ d[X]tot )…l

2

{

Xr2 - 2Xr

(l -巾(1

+

r)2 } 1/2

(21)

(5)

ここで、 l/r=c=[M]totK、 Xr=[X]tot/[M]totである。

その結果、 350Cで

K=1.59xl06M-1 n=O.95

ðH=-131 kcalm 01"1 ðS=-398calK-1mol-1

であった。 定圧熱容量変化ðCpを無視して考える と、 常温250Cにお ける結 合定数は実にl09---1010M-lとなり非常に強力な親和性を有す ることがわかった。 この他は、 現在女[!られているDNAリガンドの中 でも最も親和性の強いものの中のlつに分類され得る。 このような 強力な結合能力は、 DNAの非共有結合的なラベル化剤としては必須 条件である。

4 - 3 - 5

考察

融解曲線

W Y1

-

WR1-5

解挙動

おい

は、

W

Y

1を

1 5

0/0

程意識的に増やした系(図4

- 7

)においても全く同様の転移がみら れたので、 WY1-WR1・T 12やWY1-WR1-5が3本鎖複合体を形成し

ていることは確実であろう。

ここでWR1-T 122本鎖複合体の生成のような可能性を考えたの は、 融Wf-!II!総において低瓜側の転移に伴う吸光度の変化が比較的小

さかっ たた がら!倹 いたスト である

2本鎖抜合体WY 1-WR1は安定性を上げて2つの転移を別々に観察 するためにゲストオ1)コビリミジンの倍の長さの24量体を用いてい

って、移は 吸光 j立 を通 観察し てい るの 高温側

ー146-

(6)

-旬、、

での転移が低温if1IJでの�i1�移に比べて大きく見えるのは当然のことな のである。

WY1・WR1・5

わずかではあるがWY1-WR1・T 12、

この測定では、

のTmLはTmHにみられる誤差を差しヲ|いても有意な差があると考え T 12へのフェロ WY1-WR1-5のTm しの方がわずかに高く、

られる。

センの導入は3本鎖複合体を不安定化するとごころか逆に安定化した

5

は3 重 ら せ ん 形 成

いて 図 4 - 1 6に示すよ

従 っ て

ことになる。

うにそのフエロセン部位をWY 1-WR1のメジャーグルーブ側に向け フ

セ ン 部 は WY1 - WR 1と3 重 ら せ ん 形 成 に有 利 な 、 て結合し、

融解曲線の3本鎖ー なんらかの相互作別をしていると考えられる。

l次微分flhおよのi& 11�を解 析して熱力学的パラメ 24iii!、以移の付近の

WY1・WR1・T 1 2とWY1・WR

1-5いず

1 29 )

ータを概71�したがiA2128

WY 1 - WR 1・5の方が安定であるにしても高々数kJmol-1程度であろう。

rEZZE--==========zzz=-========-r

6

S

ー 2 8 0

ca

I K

-

1 mo

l

- 1 であ り

zz=-z==========---.

- e・・===・======-35す

-1zz======================-=・

-ー

ーーー・ーー

ーー ーー ーーーー.

Ez--=============

EZ-22==z--e======・・.

=

.

ーョ 量居直!!"...

.

.

一ー ­

~

主 直話w

= .

-- -

一 一

- ・

= :-:.; .

...

れの場合も6H=-95kcalmol-1、

=====-

三 三 三

-

-

.

6

--------­

-- -- -e-----:- ea- e e

e・---L三三========耳油芳、

:3本お1佐合体の段式図

|戸|斗.

16

この微分ab紋の形状の解析から求めた 本 忠 は 少 し は れ る が

から

温 度 で の 結 合 数 を

出 し 、 の 条 件 でのj昆度 レオテド同志の複合体形成反応)

熱力学的パラメ

(0 _5 μ M

-147 -

ゴヌク

(7)

変化に伴う反応率変化をシミュレートしたものを図4-17に示す。 そ の結果、 3本鎖複合体の融解温度Tm、 つまり反応、率0.5の温度は33

℃であることがわかる。 ここで表4- 1に示したTmは便宜上、 融解曲 線の微分曲線の極大点の温度とした。 しかしな がら理論的にはこの 極大点は結合率0.41の点であり1 28)真の融解温度Tmはこれよりも数 度低いはずである。 従って、 シミュレーシ ョ ンから求めた結果と実 測値は非常に近い値となり、 融解山線のl次微分曲線の形状から概 算して求めた熱力学パラメータはかなりの信頼性をもつことがわか る。

1.0

0.8

川市母出

0.6

0.4

0.2

0.0

270 280 290 300 310 320 330 340

温度/

Oc

図4・17 WY1-WR1-

T12系の3本鎖形成反応、の反応率の温度依存

性. 各オリゴヌクレオチド波度0.5μMとし,融解曲線のl次微 分曲線の形状から概算して求めた熱力学パラメータ(ðH=- 95kcalmol.', ðS=-280caIK'mol', ðCp=Oca1K'mol.')を用いてシミ

ュレートした

-14…

(8)

また、 昇温過程と降j昆過程の版原については、 TmHよりもTmLの 方が大きかった 。 これは 2本鎖ーコイルと3本全員- 2本鎖の解離、 生 成速度の差を反映しているものと考えられる。

C6T6配列系にお いてはT 12配列系で観察されたような明確な2つ の転移を観察することはできなかった。 しかしながらpH7.4から6.0 への変 化によって吸光度変化の ブロードニングと漣色効果の増大が 観測され、 3本全員複合体形成が示唆された。

pHS.Oの条件下において、 2本鎖複合体の安定化 を期待してヘア ピン構造を取り得るシークエンスを有するH P Îを用いた 。 期待どう り2本鎖ヘリックスは安定化し、 融解協度Tmは全く同じベアリング

とさらにこれに加えて3 つの塩基対を余分にもつWY2-WR2複合体 よりも高い値をもつことがわかった。 この安定化はもちろんエント ロピ一的な寄与によるものである120、123.130-132)。 即ち、 WY2・

WR2複合体を形成するにはまず溶液中でWY2とW R2 分子が出合う 必要があるのに対して、 H P Îのヘリックス形成には分子内のコンホ メーシ ョ ン変化が起こればよいのである。

しか しながら、 依然として融 解曲線はブロードなままであり、 3 本鎖形成をあらわに観察するこ とはできなかった。 しかしながら、

HP1とC6T 6の間に相互作用 が全くなく、 溶液中に独立に存在して いるとするとその融解出線はH P Î単独のものとほとんど変わらない はずである。 これに対して、 ここで観察された融解曲線は全て低pH 条件においては2本鎖複合体の ものとは明ら かに異なっている。 従 って、 本章で合成し たプローブ5、

6はいずれも室温では期待した3

本鎖複合体を形成していると結論してもよいであろう。

-149-

(9)

エチジウムブロミドの蛍光を利用した滴定実験

エチジウムブロミドの蛍光強度変化を利用した実験においては、

WY1-WR1-5、 H P 2-6両複合体ではその挙動が全く正反対であった。

即ち、 T

1 2

系 では3 鎖 複

WY 1 -W

R1-5を添加を添加した方が 2本鎖複合体WY1-WR1の場合よりも蛍光増大の度合がやや大 き い が、 これに対して 、

C6T6系では逆に3本鎖複合体H

P2・6を添加し た場合、 H P2単独の添加に比べて蛍光増大が大きく抑えられていた。

この挙動はこれら両複合体の性質を良く反映している。 以下にそ

の性質の速 い について 簡単に述 べる

0

1 i g

0

(d A)

-0 1

ig

0

(d T)の 2本 飢佐合体(辿枕するアデニンーチミンの2本鎖領域)は相対する塩

)r�だけでなくその隣のぷI'� l,�とも部分的に水素結合を結んだ二股水素 材;合倍近が5えて定で あることが女[1られており、 Watson-ClickのB型 DNAとはかなりかけ離れた桃造をとっている133J O そのために隣り 合う塩基対同志は平行には並んでおらず、 もともとインターカレー

タの結合にはあまり好都合ではない状況にある。 従って、 インター カレータとこのよつな2本鎖オリゴヌクレオ チドの反応初期におけ る会合定数は比較的小さく、 正の協同t!:の結合挙動を示す こ とにな

る1 21、1 25

)。 ここで正の協同性とは、 反応初期にはイ ン ターカレート

し難いが、 イ ン ターカレートが進行するにつれ(恐らく塩基同志が 平行に配向することにより)次第に結合しやすくなる現象を言う。

従って、

Scachardプロ ットでは上に凸の典型的な正の協向性を示す

カーブになる。 この佐イ?イ本に刈して、 もうlつのオリゴヌクレオチ ドが水素結合形 成によ っ て結合し てoligo( dT)ーoligo( dA)- oligo(dT) 3本鎖 を 形成すや隣の塩基と形成

で き る 余 裕 は く 塩 基 対 同 志 は 互 いに 平 行に 並 び 、 イ ターカレー

ン に 都 合 良 い 環 坑 を 形成 する

このた め 、 こ 条 件 下 は エ

ー150-

(10)

チジウム ブロ ミドはoIigo ( dA)ーoIigo ( d T)の 2 本鎖よ りも oIigo(dT)ーoligo(dA)-oIigo(dT)3本飢により強くインターカレー トすることになる。 4 - 3 - 3 、

4 - 1

3で用いた2本鎖複合体もまさ

に連続する1 2個のアデニン配列を有しているために、 前述したよう な現象が観察されたものと考えられる。

一方、 C6T6系のようにターゲットの2本鎖複合体に適当にG-Cペ アが存在した場合、 この複合体中の塩基対同志は互いに平行に配向 し、 初めからインタ ーカレーシ ョ ンのターゲ ットとしては女子ましい 環境を提供している。 この2本鎖複合体に3本自のオリゴヌクレオ チドが結合するためにはそのシトシ ン塩基はプロトン化してC.ーG­

Cトリプレ yトを形成する:必wがある。 従ってこうして形成される 3本鎖複合体に対し ては 、 エチジウムブロミドは前十電反発(それで

も3本鎖複合体のトータルの電荷は負である、 正月未の不電荷の減少 のため静電引力が弱まると考えても同じことである)のために結合 し難くなる1

2

1)o さらに 、 一般的には、 塩基のダブレット同志のス タッキングを解くことよりも、 トリプレ ット同志のスタッキングを 解くことの方-が、 より多くのエネルギーを補償しなければならない ので、 もともとエネルギ一的に不利な反応ではある。 図4 - 14で観察 された蛍光増大の抑制もエチジウムブロミドのインターカレーシ ョ

ンが前述の理由で大きく抑えられた結果であると考えられる。

熱溺定

4 -3 - 4ではH P 2-6の3本記!{複合体形の熱測定は350Cで行 なっている。 はじめはもちろんt紫色E状態である2S0Cで行なったが、

結合定数が大きすぎて測定結果に対して非線型最小二釆法による有

効なカーブフィ ッティングができなかった。

-151-

(11)

得られたデータから熱力学的パラメータを求めるには、 式(21 ) に 示した理論式を用いてカーブフィ ットを行なうが、 この理 論線の形 状は無次元のパラメー タljr=c=[れl1]totKに依存している。 有効なカ ーブフィ ットは、 l<c< lOOO (理想的には10 <c<100)においてのみ 可能で126)、 これをKウインドウと呼んでいる。

社!IJ定条件の設定の際に第lに考慮したことは、 予測される反応エ ンタルピ一変化6Hから、 装置の検出限界を考えた上で、 でき得る限 り少量の試料で測定することである(オリゴヌクレオチドが非常に 高価であるため)。 この理由でcを決定するlつ のパラメータであ る濃度はμm 01オーダーと決めた。 従って、 もうlつのパラメータ である結合定数Kを調整することで有効なカーブフイ ツティングの できる測定条件にもっていかなければならないことになる。

250Cにおける測定では結合定数が大きすぎてcの他が1000を越え た(Kウインドウの上限を越えた)ものと考えられるので、 単純に 逆算すると250Cにおける6の結合定数は

109 M-1を越える非常に大き

なものということになる。

有効にカーブフイ ツティングを 行なうために測定渇度を10 0C程上 げて結合定数を下げたわけであるが、 結局得られた結合定数は先に 示したと お り、 K=1_5 9x1 06M-1で ある ので 、 こ れを代入して c=[M]totK=(2.5x 10・6)x(1.59x106)=3.96とKウインドウのかなり下 限に近いところでの測定を行なっていたことになる。 従って、 得ら

れた熱力学的パラメータは幾らか誤差を含んでいると考えられる。

ここ で定圧熱容量変化6Cpを無祝して考えると、 図4 - 1 5で得られ

た6H=-1 31kcalmol-1、 6S=-398calK-1mol・lから常1-

iÆL

25 oCにおける 結合定数は実に109 ---1 010M-lと非常に大きな値となり先 の計算値と 一致する。

ー152-

(12)

前述したように 、 T 12配列に対してC6T6配列を合成したのはC+ - GCトリプレ ット の利月jによ りプローブとしてのより強力な結合を 期待したからである。 しかし結呆をみると配列の変更はこの条件で は そ れ ほど の 効 果 を 与 え て い な い ようで 25

0

C の 結 定 数 にして 高々l桁上昇しただけであった(先に行なった概算より5も250C で は108---109M-1と いうかなり大きな結合定数をもっと考えられる)。

DNAの2本鎖形成反応、はl次元の結晶成長に類似しており、 はじ めの孤立した核(最初に形成される塩基対)生成の不利な正の自由 エネルギーを克服したあとはジ ッパーが閉じるごとく協同的に 結品

(塩基対)が成長すると考えられる。 核となる塩基対の生成の平衡 定数をわ、 この核から塩基対がや11長するわけであるが、 伸長端の塩 基のベアリングの平衡定数をsとすると、 n塩基の長さのl本鎖DNA 同志の複合体形成の平衡定数はわnと表現できる134)o

L y am i

chevら によると3本鎖形成の熱力学も2本鎖、形成のそれのアナロジーで考 えることができるI

22

)。 この理論では3本鎖複合体の伸長過程の平 衡定数(ヘテロなオリゴヌクレオチドの場合、 TATとC+GCトリフ

レ ットの幾何平均)は次のように定義されている。

S=SO(1+10PK-p") I/r (22)

こ こ

r

1 つ の シ卜シンのヌクレオチ ド 数( ば、 (d C)

n

ではn= 1、 (dTC)nでは n=2) 、 Soは坂L基のトリプレ ットがプロトン 化していない状態での平衡定数の幾何平均、 pKはC+GCトリプレ ツ トのpKaである。 ここでsoとpKは現在のところ決定されていな いが、

0くくし pKはシークエンスにもよるが7---8と考えられる。

この式からsはpHが低い;まど、 さらにC +GC トリプレ ット含量が

-153-

(13)

多いほど大きな値となることが わかる。 従って、 3本鎖複合体形成 の平衡定数ßsnをさらに上げるには反応溶液のpHをさらに下げる か、

または塩基含量はこのままでもシークエンスを変えて(Cの間隔を 一定にする) pKを上げてやるという手法は有効であるかも知れない。

また、 この式(22)から考えるとC

+G

Cトリプレ ットを全く含まない プローブ5の様な配列ではs=so<<lとなりDNAが長くなればなるほ ど複合体生成が困難になることになる。 しかし実際にはそのような ことはな いので、 式(22)の適用範囲にもかなりの制限があるようで ある。

しかしながら、 いずれにしても本章において合成した2つのプロ

ーブ5、 6は現存す る多くのDNAリガンドのっちでも最も大きな親

和力を有するリガンドのグループ に分類され るだろう。 このような 強い親和性はDNAの非共有結合的な可逆的ラベル化剤には必要不可 欠の条 件であり、 両プローブともこの条件を充分に満足しているこ とがわかった。

ここでもこ れらの熱力学的パラメータを用いて温度ー反応 率相関 曲線をシミュレートした。 その結果を図4-18 に示す。 この図から融 解温度Tm、 fl[Jち反応、率0.5の温度は340Cであることがわかる。 しか

しなが ら、 4 - 3 - 1にお いてHPî-C6T6複合体の融解曲線には、 こ

の71dL度の付近に明石在な3本22i-2本全員転移は観察されなかっ た。 オ リゴヌクレオチドの2本鎖や3本鎖複合体形成反応、のような高分子 同志の非常に協同性の大きな反応は、 反応に伴ってエントロピーが 大きく減少する。 そのために、 理論上は図4-18のように反応率が急 激に変化する臨界温度が存在するはずであるので、

HPî-C6T6複合

体でも転移が観察されることを期待していた。 しかもこのHP2-6(-

98cal K-1mo 1-1)よりも反応エントロピ一変化の小さなW Y Î -

ー154-

(14)

WRî-T12系(-280caIK.1mol.1)においては図4-6に示したように、

はっきりとした転移が観察できているのであ る。 この原因として、

転移自体は340C付近で急激に起こったとしても吸収スペクトルの変 化としてダイレクトに矧察されなかったということも考えられるが、

現在のところ不明である。

1 .0

0.8

縦十

0.6

ぜ l区

0.4

0.2

0.0

270 280 290 300 310 320 330 340

温度/

Oc

図4-18 熱滴定から求め た 熱力学パラメータを用いてシミュレ

ト し た

H P 2-6

の 3 本鎖形成反応の反応率の温度依存性

. ðH=-

13 1 k ca 1 m 0 1 1, δS=-398cal K1mol.1, ðCp=OcalK1mol.1, 各オリゴヌク

レオチド設反1.0μMとしてシミュレーションを行なっ た

4 - 4

フエロセン修飾オリゴピリミジンの電気化学的挙動

フェ ロセンは0.3 V

(

Ag/AgCl)付近に酸化電位をもち113\

1I1・逆的に際化還元が可能であるc 本節では、

HPLCに備えた電気化 -} 55-

(15)

を用いてプローブ5の対流ボ

ECD-IOO)

EICOM (ECD、

学検出器

3 -

8と同様に 、 フ この測定によ って

った。

ーを行な ンメ トリ

jレタ

ロ環境など 存在場所のミ ク

ロセンの役割、

に関する情報が得られると考えられる。

4 - 4 -

結果と考察 ローブの結合の際のフ工

そ して

イ子牛胸腺DNAとの複合体、

poly(A)との複合イ本の対流ボルタモグラムを示す。

一ブ5 lìi �虫、

図4

- 1

9にプロ

poly(dA) ///

フロープのタ

/

/

Å I

/

Å / / / /

コ/'ー

/

A

/ /

/ . cl-DNA A

&

10.0

8.0

6.0

4.0

〈C\抑刊記純司饗

2.0

0.0

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9

E / V Vs Ag/AgCI

図4-19 プロープ5単独, 仔牛胸腺DNAとの複合体, poly(A)との 複合体の対流ボ)レタモグラム. 複合体形成には5に対して大過 剰の仔牛胸腺ONA,poly ( A )を用いた.複 合体はカラ ムに

SUPELCOSIL LC-ABZを月1 v、たHPLC�こて,5単独系はフローイン

ジェクションによって11'なった

aCI a2トfPo.、 I.OM

流述:

I.Oml!rnin

j品皮:2S0C

検出器:E1COM ECO-100

;n�ni�

�長:O.IM

-1 5 6-

(16)

5単独の

ボjレタモグラムは0.3 V付近で立上り がみられる。 4 - 2 -

2の最終段階の合成では、 新たに�I.:'.じた原料よりも疎水的な成分を 逆相のHPLCで分取したのみで、 特別に同定を行なわなかったが、

この酸化電位から、 プロープ内に は1確実にフエ ロセンが存在するこ とがわかった。

これに対してプローブ5と仔牛胸腺DNAやpoly(A)との複合体の 立上り電位は0.5 Vと、 5単独のものと比べるとかなり正にシ フトし ていることがわかる。 つまりター ゲットとの結合により5は酸化さ れ難くなったのである 。 そこで、 ここでも うl度3 - 8と 同様の考 察をする69、70)。 この系も酸化還元の からんだDNAとの相互作用で あるから3

-

8

-

2の式(

1 6)に示した平衡式を考える。

プローブ5は ターゲットとの結合により酸化電位が正に大きくシフトしたことか ら、 式(

1 7

)より駿化前の方がより大きな結合定数をもつことがわか る。

これは3章で述べたビオローゲンを酸化還元部位として有してい るピスアクリジン2とは全く逆の結果である。 興味深いことに、

5

は 酸化されて正電荷がlつ生じるにもかかわらずポリアニオンの標的 分チに対して結合し難くなったのである。

2の還元電位の負方向へ

のシフト は、 DNAとの結合の|努にその分子内のビオローゲン部位が パックボーンのリン酸部位に接近して静電的に安定化している ため

ということで説明した 。 これに倣って考えると、

5は結合に際して

エのフ エ ロセン部位を疎水的なメジャーグルーブヰlに入れ込み、 疎 水的な相互作用を行なうか、 また は塩基とリンカ一部位がさらに水 素結合することによ って安定化に寄与しているものと考えられる。

従って 、 ;1 - 3 - 1で、観察された フエ ロセ ン導入による3本鎖複合体 の 安定化も 、このD NAの疎水的 ミ ク ロ 環境中 での( リ ン カ ーも含む )

-157 -

(17)

修飾部位の相互作用によ るものであると考えてもよいだろう。

しかしながら、 単純に修飾末端の正電荷がアニオン性である標的

分子との結合を阻害すると考えるのは間違いである。 ここで は電位 掃引速度(プローブの酸化速度~プローブー電極間の電子移動速度) とプローブーDNA 複合体のコンホメーシ ョ ン変化の速度の相対的 な 大きさを考えなければならない。 つまり、 複合体のコンホメーシ ョ

ンの変化と比べるとフェ ロセンの 酸化は非常に速く、 瞬時のうちに 起こる ため複合体は酸化と同時に最安定なコンホメーシ ョ ンへと変 化することはできない。 つまり、 酸化前のフエ ロセンの存在し てい たミクロ環境は、 酸化されカチオン性となったフエロセンにとって は決して好ましくないので、 計算上は酸化後の結合定数の方が小さ くなると考えられる。 従って 、 例えば修飾法を変えてグルーブへの 臥水的結合が不可能な、 またはリン酸パックボーンとの相互作用を 余儀な くされるよう なリンカーを用いれば酸化後の結合定数の方が 大きくなり、 酸化電位のシフトは全く逆、 つまり負の側にシフトす るプローブが実現できるであろう。

DNAの電気化学的ラベル化剤として の利用を考えると、 複合体形 成に伴って酸化定位は負の方向にシフトして くれる方が望ましい。

何故ならば、 ターゲットとの結合種だけをECDで検知することがで きるようになるからで ある。 残念な がら5の場合は正の方向に動い ているが、 ここで得られた結果は、 今後の酸化還元活性基修飾オリ ゴヌクレオチドの分子設計には非常に有用である。

-158-

(18)

4-5

フェロセン修iS布オリゴピリミジン(5)を用いたターゲット 検出の検出感度の検討

第l章の図1 - 7に示したように、 この検出法ではま ず分析対象と なる異なる複数のフラグメント を含むDNA試料に検出 したいシーク エンス と相補的な結合部位を有するプローブを添加する。 そうする とプローブはこのターゲットシークエンスを有するフラグメントと のみ複合体を形成する。 その後この試料をHPLCに注入しカラムの モードにしたカτってこれらのフラグメントを分\離する。 こ こで検:出 器としてECDを用いると白的フラグメントのみを選択的に検出でき るはずである(フリーのプローブはその保持時間や酸化電位 から容 易に灰別が可能であろう)

本節ではこの日的フラグメントの選択的検出の基礎的 検討として、

まず複合体 検出 はどの程度の量まで可能なのか、 その検出下限を知 るためにHPLC-ECDを用いて複合体の検出実験を行なった。

4 - 5 - 7

結果

はじめに 、 プローブ5に対して100倍(リン酸基準の濃度で)の poly(A)を添加して複合体を形成させたものを試料 として検出感度 の検討を行なった。 それぞれのプローブ添加量に対応するクロマト グラムとそのピークの杯大の電流他による 検量級を図4

-2

0に示す。

検査紋にはきれいな直線性があり、 fmo 1オーダーまで充分に検出で きるこ とがわかった。 最も注入量の少ない1 fm 01でもS/N比はまだ 非常に高く、 少なくともあとlオーダ一 、 つまり数百am 01レベルま

-1 5 9-

(19)

と考えられる。

とは容易であろう で検出感度を上げ、るこ

(a)

1.0

フローブの量/

fmol

ムー一

4.0 2.0 8.0 6.0

10.0

「lill1111l』 《C0.F

絢也oou

分 保持時間

o 10

6.0

5.0

4.0

3.0

2.0

1.0

〈C\絢凶山一時丑悠 、、,a'' 'hu 〆,,、、

8 12 4

0.0 2 0

プロープの量/

fmol

図4・20

5-poly(A}複合体の電気化学的検出.

(a)ECDを検出総と したHPL Cクロマトグラムと(b)そのピーク電流値から作成した

aCl (pH 6.8)

カラム:SUPELCOSIL LC-ABZ 浴縦波:0.1

M

Na2HPO.l、 1.01\1

流速: 1.0ml/min jR度:2S0C

合佐\.t�:EICOM ECD-IOO

検量級

.

ー160-

(20)

この検出感度はHPLCとがlみ合せて分間[ . 分析を同時に行なう系 では他に類をみない驚民的な感度であり、 この手法のもつ潜在的可

能性を物語るものである。

しかしながら、 本章で最終的な目標としている検出対象は2本鎖 DNAの特異的検出である。 即ち、 図4-20で行なっ た2本鎖複合体 の検出ではなく、 2本おliのターゲッ卜との3本鎖複合体の特異的検 出なのである。 この目的を達成するために次にDNA試料としてター ゲット配列を有する24:釦DNAを使用した。 試料として用いたプラ スミドDNAの簡単な制限酵素地図を図4

-

2 1に示す。 このプラ スミ

ドD NAは

pB luescript 11 SK+のEcoRI-KpnIサイトに酵母のコリン

輸送タンパクの構造法伝子の一部を組み込んだものである。 この組 み込んだ部分に は述枕する1 3のア デニンーチミン配列が存在してい る。

プローブ5と このプラスミドDNAとの複合体のHPLCによるク

ロマトグラ ムを図4-22に示す。 図4- 2 0と同様、 複合体を非常に高感 度に検出でき るこ とがわかった。 また、 組換えを行な っていない

pBluescript 11

SK+を試料とした場合には、 このよつなピークは全

く伴られなかった(データは示していな い)。 従って 、 プローブ5 は明らかに連続す るアデニン配 列を認識し て結合していると考えら れる。 このことはこの手法が未知のシークエンスのDNA試料(また は、 その混合試料)からターゲットシークエンスを高感度に検索す

る手 として 利 用 で きる こ とを の である。

-161-

(21)

。\

10

Scal

XmnI Nael

LacZ

SK(MCS)

Bluescript 11 SK+

KpnI EcoRI

♀主主TT♀ATCAACAAATTGGTTAAGTCCATGAACTAAACTGGTTGAAGTCA CATTACATATAACTACTTATTTTATCTAAGTCCTATATAGTTCTGTTATT CACTAGTTTGTATATTGTACCTCTAATTTATCTTATAATTTCGTCAGTAA TGACTTATAATTGGCTTTATTTTCTTCTCTTTTTTTTCACATGCGCAG入A CCTATATAACGAAAAA.λAAAAAAATGAAAACTGAAGATAAGCGGCCTTGA CTTCTCTAAACTGCCGATATTTCAACGAAAGTTAGCCAACTTATTTATAA AAGCCTTGAATACCAACAATTGGAAAGAAGGTGTCTGTGCTTATCATATA TAGCTTGCATAAAGAAAAATTATAATATCTTCG��CTTCCATAGÞ�G��

TATCTTTCAGTGTTAACTGGCTCATTTACTCAGAAATTAGTATTTTGAAG AACGATGAGTATTCGGAATGATAATGCTTCCGGTGGCTATATGCAGCCGG ATCAATCTTCGAACGCTTCTATGCACAAAAGAGACTTAAGAGTTGAGGAG GAAATAAAGCCATTGGATGATATGGATAGCAAGGGTGCTGTAGCAGCAGA TGGTGAAGTTCATCTAAGAAAGTCTATTTCGTTGTGGTCAATTCTTGGTG TTGAATTCGGTTTGACTAATTCCTGGTTCGGTATTTCTACATCGATGGTT GCAGGTATATCTTCTGGTGGACCCATGATGATTGTTTACGGTATAATTAT TGTTGCCCTGATTTCTATTTGCATTG♀1..b.IT

凶4-21 M:!;Jコリン愉送タンパクの{/lj iliJll伝子の1 f11�をもっプラスミドの椛成

(22)

2.0

プローブの量/

fmol

10.0 5.0

「Ill--」〈C0 . F ww凶山一oou

分 保持時間

」一ーL-..J

o 10

5-pBluescript

II SK+複合体のHPLCクロマトグラム カラム:TSK-GEL HA-1C泊O

溶剤I液:0.01 M Na2HP04、 0.5M NaCl

(p

H

6.S) 流速:0.5ml/min

温度:250C

検出器:EICOM ECD・100 図4-22

考察

4 - 5 - 2

りターゲ DNAプローブ法とHPLCの組み合せによ

本節において、

トシークエンスを数百am 01レベルまで検出できる可能性を示すこ

、y

とカfできた。

1る検山下限はプローブのモル数を 本的で述べて

しかしながら

ト基準の検出感 ン

検出対象のDNAフラグメ ユit準としたものであり、

ン酸単位で100倍の量を使用 図4-20ではDNA試料は1)

ー163-

.'1

度では六

0

(23)

し ている

これ はプローブ

5の

結 合 定 数 の 制 限 でこの よ う な 条 件 設 定 しな く て は ならなかったこと に よ る。 つま り この プロ

ブは 現 存 のあら ゆ る

DNAプローブ

ち で 最 も 親 和力 の 強 い リガンド の うち の

1

つ で あ る こと は 硲 かで ある が

電 気 化 学的検出 法 の 検 出 感 度 が あ ま り に 高 い た めに 検 出 感 度 の検 討 の 際 は 、 複 合 体 形 成 反 応 を 行 な う 溶 液 の 濃 度 非常 に 希 薄 に ざ る 得 ないので あ る。 実 際 fm 01オーダーで検出を行なう際には、 複合体形成はプローブ濃度、

100pM程度で

なっている。 この場合、 1 : 1の化学量論的な反応、で

は全てのプローブを結令させるためには単純計算で1013___1014M-1の 結 合 定 数が :

� に なる。 本 的 の 測 定 温 度 の

2S

0C では 結 合 定数 は

108

---

1

09

M - 1で あ るの で ほ と んど の プローブは 結合で

ない。 従 って、

DNA試料を100倍加えて平衡を大きく 3 本鎖形成但IJに移動させ、 複

ムイ本検出を行なったわけである。 しかしながら、 研究目的は特定遺 伝子の高感度検出法の開発であるので、 本来はターゲツトDNA基準

の検出感度で議論すべき である。 こ こで4

- 3 -

5で述べた熱力学的

パラメータ(D.H=-9Skcalmol-1、 D.S=-280calK-1mol・1

)を用いて計

算すると(定正熱容量変化D.Cpは無視する) 5

oCでは5の結合定数は

lOI3___1014M-1となり、 複合体形成に充分な結合定数が得られる もの と考えられ る。

プローブ

6

に つ いて は この 検出 感 度 の検 討 は 現 在 のと ころまだ 行

なってい ない 。 しかしなが ら、 4

- 3 -

4の熱滴定実験で、 3

5

oCで K=1_S9xl06M守l、 D.H=-131 kcalmol-1、 D.S=-398c乱lK -1 m 01・lである

ことがわかっているので、 これ も50Cでの結合定数を算出する と約 10 16M-1という非常に大きな他となり、 数十am 01レベルの1 : 1反応、

こおいても完全結合が充分に達成できることがわかった。

HPLCとの組み合せを考えると 、

カラム中で非結合程と 結合程は

-164-

(24)

分離される た め結合平衡は分離の問、 刻々と解離側に移動するはず である。 従って、 これまではもっぱら平衡論のみで考察し て きた が、

より実用的なパラメータは速度論 によって求め ることができるはず である。

塩基配列、 長 さ、 測定条件が全く異なるが(370C、 2SmMトリス

ー酢酸緩衝液(pH6.8)、 70mM NaCl、 20mM M gC12、 0.4mM スペ ルミン四塩酸塩、 10mM ß-メル カフトエタノール、 0.1mg/ml

B

SA 、

シトシンを10個含む21量体につ い ての3本鎖形成反応) 、 D e rv a n らは、 オリゴヌクレオチドの3本鎖形成反応の速度論を展開して い る1 35)。 こ れによると生成速度定数 k2は1.8x 1 03M.lsec.l '\ 解離速度 定数klは2.2x10・5s e c-1である。 半減期を計算すると32000sec、 約9

時間で ある。 シークエンスは異なるがこの値を目安程度 に考えるこ とはできるだろう。 例えば、 ゲル ろ過などでDNAフラグメントの分 離を行なう場合に要する時間は長くともせいぜ、い数時間である。 カ ラ ム温度を下げる ことにより、 さらにこの解離速度を かなり抑える ことができると考えられるので3本鎖、複合体を利用し たHPLCにお け る検出法は、 速度論の立場からは問題は ないと考えられる。

検出実験の際、 DNA試料との複合体は検出され た が、 フ リー の プ ローブは全く検出されなかった 。 さらに、 DNA試料を全く加えない プ ロ ー ブ単独の場合、 その 検出感度は著しく減少し、 複合体 の 1/1000程度であった 。 このことは全く単純には理解しが た い現象で あり、 原因は次の2つ の どちらかであろう。

1)

DNAがl次元の電子伝導ワイヤーとしてはたらき、 フェロセン部位に電 子を供給し続けた ためにlつのフエロセンが何度も酸化された。

2 )非常に少量のプローブを用いているため、 遊離のプローブ はカラム担体 中に吸着した。

ー165-

(25)

DNAはプリン坊とピリミジン以が等し く3.4Aの間隔で重なり合 った構 造 をして お り、 これほどの去Jt則正しい

π

電 子 の連続体は生体 中はもちろんのこと、 人工の高分子化合物にも他に類をみない。 塩 基の酸化によってDNAを切断する光切断試薬などでは、 Gが選択的 に切断されることが多いが、 これ はGが最も酸化電位が低く試薬に よって酸化 されやす いこともあるが、 それ以上にDNAのスタックし た塩基の中をプラスに利子lZしたホールが移動し 、 最も安定 なGで落 ち着くという機仙の笥:与-が大きいと考えられる103、108 )。 また、 電極 上に固定したDNAへの紫外光の照射により、 l次元の電子の散逸が 観測されている1 36)。 つまり、 これらの実験条件下ではDNAは明ら かにl次元のワイヤーとしてはたらいているのである。

図4

- 1

9よりフェ ロセン修釘liオ1)ゴヒリミジン5では 、 フエロ セン の酸化電位はターゲットとの結合状態で約O.6V

(VS

Ag/AgCl)で ある。 これに対して右足基の酸化電位はGで約0.5 V、 他の塩基では約 0.6 Vであり、 結合型のプローブのフエロセンと非常に近い電位であ ることがわかる。 従って塩基からフエロセンへの電子の供給は充分 に起こ り科ることである。 特に 、 プローブはターゲットに結合して そのフ ェ ロセン部位を疎水的な環境、 つまり塩基のすぐ近くにもっ ていっていると考えることができるので、 塩基からの電子の受け取 りにはまさに格好の状況が用意されているこ とになる。 つまり、

DNA塩基からフエロセンへの電子移動はエネルギ一的にも距離的に も可能であると考えられる。

DNA塩基からフエロセンへの電子移動に関連して、

複合体形成後 のフエ ロセンの酸化電位のシ フトに対する別の考え方もできる 。 即 ち、 これまで述べてきたように、 酸化電位はその存在環境の変化の ために正にシフトしたのではなく、 通常はフエロセンよりも酸化電

-166-

(26)

イ'J:の低いDNA似),とから託子を供給されるためには、 より大きな活性 化エネルギー(よ り出い氾位)を必25とした考えることもできるか

も矢!!れない。

合成した プロープは1 - 2 - 2で此に述べてい るようにゲルろ過

( SephadexG-2S)

やi近相

( LiChrosp herl00RP-18(e)) のHPLC で11122を行なって いる。 このH寺にはカラム担体への吸着は全く観察

されなかった。 しかしながら 、

む気化学検出の感度が非常に高いた め、 先に述べたとおり極めて低波度、 微量(fm 01オーダー) のプロ ープをカラムに辺すわけであ る。 ここでカラム担体 への非特異的吸 活が起こ ったとし ても、 このような微量のオリゴヌクレオチドを他 に般出する手段がなく 、 これを硲認する手立てがない。 そもそも

fm 01 という量は通常、 HPLC で取り扱う量では ないので、 カラム担 体への非特異的な吸着ということも充分にあり得ると考えられる。

そうすると、 図4-20や4-22で観察されたクロマトグラムは、 ボイ

ド体積で溶出してい るので、 試料として用いた多量のDNAによって その吸着点が飽和されて溶出したものと考えると、 複合体としての もの ではない ということもあり得る。 しかしながら、 4

- 5 -

1で述 べたようにpBluescript

11

SK+を用いた溶出実験においては、 組換 えを行なっていな いものについてはピークが観察されなかった。 こ れを考慮、するとターゲット配列との相互作用が関与していることは

確実である。

本節で行なったHPLC-ECD系での 溶出実験はまだ予備的なもので あり、 今後さらに詳しく検討する 必要が ある。 例えば、 ターゲット を全く含まないDNAを溶離液に混ぜて流し、 非特異的吸着を抑制し たり、 ボイド体積では溶出しない試料を用いるなど、

HPLC-ECD

での複合体形成を確認する手段は幾つかある。

-167 -

(27)

いずれにしても (たとえ、 仮に現段階での検出が複合体由来のも のではなくとも)、 合成した沼気化学活性プローブは1

0・1

5モルとい うラジオアイソトープ(

R 1

)にも匹敵する非常に高感度な検出試薬

となる可能性をもつこ とがわかった。

4 - 6

結言

第3 章で:ìZßべた 電 気化 学 活性をもっ

DNAリガンドはインターカレ

ータを基体として いるためその塩基配列選択性 に関しては問題が残 った。

本主主におい ては 、 これ と全く同じ目的、 即ち、 電気化学的に不活 性なDNAを電気化学活性基でラベjレし、 高感度な電気化学をDNA

の分析 に導入しようという目的で第3章の酸化還元活性リガン ド2 を発展させた。 具体的には、 塩基配列認識部位とし てオリゴヌクレ オチドを用いるこ とによって特異的結合が可能にな り、 さらに フエ ロセンの導入によ って高感度化が期待で きる正電位領域でのアノー

デイ ツクな計測が可能になった。

ここで考え ているDNA の電気化学的ラベル化は、 HPLCを用いた 分間r� . 分析を前提としている。 従って、 カラム中では結合程と非結 合砲が分離(B/F分離)されるので、 分離後も然るべき期間、 複合 体として存在し科る親不il tJ::がw求される。 複合体形成反応、の熱力学

的検討により、 これら のプローブの複合体形成能(3本鎖形成能) は非常に高いことが明ら かになり、 rl!lJ定温度次第では充分に期待し

た目的を達成できると考えられる。

しか しながら、 今後に残され た課題は多い。 例えば、 複合体形成

-16…

(28)

の熱力学のさらに詳細な検討(融解挙動との関連、 フエロセン修飾 による結合様式の変化、 上�

�I!�

y�己列による速い、 yWJ定条件~溶液のpH、

共存塩の組成~の影響など) 、 非常'に長いDNA (遺伝子)からの塩 基配列特異的検出、 そして、 電子伝導体( 1次元のワイヤー) とし てのDNAの可能'性のネ尖討など興味深いテーマが山手責している。

本章で述べたフ エ ロセン修飾オリゴヌクレオチドは、 潜在的に、

RIにも匹敵する検出感度をもっ四則的なプロ ーブであり、 DN Aの 超微量分析という笑川的な制点から眺めてみても非常に有望である。

今後の発展次第では、 遺伝病などの診断試薬として 、 または遺伝子 解析のための新しい強力な試薬としても充分に実用化が可能であろ

つ。

-169-

(29)

第5章 結論

“DNA結合試薬の分子内への適当な機能性部位の導入" 、 即ち、

“ハイブリッド化" により程々の機能性リガンドを分子設計するこ とができると考-えられる。 本論文では、 この非常に単純で、 それゆ えに一般性の広い概念にしたがって、 3つの機能性DNAリガンドを

ム成した。 DNAの切断試薬と検出試薬である。 DNAの切断と検出 (配列特異的な検UJj )と いう2つの技術は迭伝子の解析においては ま さに主役であるば、かりでなく、 この分野の発展は直接に医学や薬

学の進歩となり、 人類に大きく貢献でき得るであろう。

以下、 本研究によって得られた成果を各章ごとにまとめて述べる。

第2章では、 2つのインターカレータ間をつなぐ連結鎖に金属配 位能を有するオリ ゴエチレングリコール官能基を導入したピスイン ターカレータ1を合成した。 この化合物には、 次の2つの機能を期

待した。 ftlJち、 1 )共存金属がDNAのリン酸基とオリゴ エチレング リコール基の両方に配位することによる複合体の安定化と2)DNA の鎖状骨格とエチ レングリコール鎖の つくる擬杢孔内に濃縮された

金属によるDNAの部位特異的切断である。

結合配列特異性は典型的なGC選択性であり、 極性の高いインタ ーカレータ(アクリジンの窒素はプロトンイヒしている)として の'性

質を示した7 )。

金属との針生成による安定化の効来を調べるために共存金属を 程々変化させて仔牛胸腺DNAとの結合定数を求めた。 1価のアルカ リ金属共存下 では}切符した安定化 の効果は得られず、

1とDNAとの

-170-

(30)

結合親和性はもっぱら、 金収との交換反応、に支配されていることが わかった。 つまり、 -pf之に、 ポ1)アニオンであるDNAへのカチオン 性配位子の結合 はイオン交換型で起こると考えられるが、

1の分子

内のエ チレングリ コール飢は 、 このタイプの結合様式に若干の影控 は与え たかもしれないが、 仮に与えたとしても結合定数の変化 とし て観測されるほど の大きさのものではなかったと言うことである。

これは、 もちろん9-アミノアクリジンが中性領域で正電荷を有して いるためである。 従って、 金属配位悲を有する無荷電のインタ ーカ レータはDNAとの相互作用において、 金属との親和性を反映した結 合定数を与えるだろう。 この予測を裏付-けるがごとく福田らは、 無 荷電の類似化合物を用いて、 まさに期待したとうりの結果を得た1

9、

4 9

)。 即ち、 金属配位部位であるクラウンエーテルとの親和性の強い

金属ほど、 DNAとの複合体を安定化したのである。

しか しながら、 アルカリ土類金属におい ては若干ながらエチレン グリコール鎖の影響がみられた。

M

g2+存在下の結合定数は対照化合 物であるキナクリンよりも明らかに大きな値を示したため、 M g2+は

o NA-1複合体のつくるクラウンエーテル類似の空孔内に結合し、

錯 イ本を安定化している可能性が示唆された。

1・CU 2令系でのDNAの切断実験では、 CU 2+の添加に伴って切断は進 行したが、 やはりイオン交換の効果が観察され、 1によ って切断は 抑制される傾向があ

った。

しかし、 わずかながら1は単独でも切断 活性を有しており、 これら両者( 1とCU 2 + )は 協同的とい うより も むしろ競争的に作用していることがわかった。 しか しながら、 リニ アーなDNA を試料として用いた切断実験では、 ある波度条件下、 明

らかに1とC

U 2.とが協 同的にDNAを切断していることがわかった。

さらに、 1の結合部位と切断音1)位は比較的良い一致を示しており、

-171-

(31)

イijf-先当初Jにj切りしたクラウンエーテル知似の空孔内へのCu 2.の濃縮 が尖|努に起こ っている11]"能↑Ij:もある。 しかし 、 先の実験では1だけ でも 切 断 活 性 を 布 し、 さ ら

1とC1I 2.

競 争 的 いてい とが わかっ ているので、 1がDNAに誘起するひずみにより 切断が進行し てい る可能性もある。 つまり、

1はピスインターカレー

タであるの でその同方のアクリジン環を比較的近い位置にイン ターカレートさ せざ-るを符ないO 従って、 モノインターカレータで あるキナクリン

などよりは誘起するひずみは大きいわけである。

多くのrt干支は、 触似する反応、の�移状態に合致した反応、ポケ ット を有しており、 基質をそ こに結合させ、 立体的にま たは電子的に遷

移状態に近づけてその活性化エネjレギーを低下させると言われてい

る。 つ まり、 結合に誘起されたひずみが反応に有利に働くこ と は充 分にあり得ることである。

再現性には乏しかったが、 酸化還元不活性なLa 3φでもDNA鎖は切 断可能であったので、 この反応機構 と しては、 加水分解を考えてい る。 人工ヌクレア ーゼの研究は世界的に箆んであるが、 これまでに

DNAをTm�実に加水分解で切断した例は ないO もし加水分解 で切断で きれば、 さらに欲を言えば、 単一末端になるような切断が人工の化

合物で実現できれば、 それこそまさに真の人工制限酵素 と 言えるも のであ り、 分子生物学の発展においてブレークスルー と なるであろ

う。 従って、 この研究の今後の課題 と しては、 加水分解の実験的証 明 その 生 成 分 析 を 行 う 必 � があ であろ

第3章において は、 述結鎖に酸化還元活性なビオローゲンを有す るビスインターカレータ2について述べた。 この化合物はDNAの電

気化学的ラベル化剤として分子設計したものである。 DNAは通常の

ー172-

(32)

状態、では酸化還元不活性 であるので

2

でラベルして、

DNAの分析に

電気化学的な高感度検山を導入しようというものである。

2のDNAとの結合能は、 従来の2価のピスインターカレータ と同 程度で あった。 結合 の塩基選択性は、

1とは逆に、 非常に弱いがAT

選択性 であることがわかった。 もちろん 、 この違いは、 これらのピ スアクリジンの連結鎖の迷いによるものと考えられる。 即ち、

1と

は異なって2の述結鋲のピオローゲンは

、 pHに関係なく 2つの正電

荷をもつので、 アク リジン部位のp Kaが かなり低くなり、 中性の状 態では2のアタリジンはプロトン化していない 。 従って比較的極性 の低いイ ンターカレータとしてふるまうのでAT選択的となっ たと 考えられる99 )。 その上、連結鎖のピオローゲンは、構結合性分子(グ ルーブパインダー) として静電的に DNAの溝に結合するので、 比較

的構造の柔らかいATに宮む部位に結合しやすくなる100 )。

また、 その結合モードは、 予想した通り ピスインターカレーシ ョ ンによっていることが、 粘度j商定その他の手法によって明らかにな

った。 また、 具体的な速度論の検討は 行なっていないが、 ピスイン ターカレーシ ョ ンのためか2の解離速度は比較的遅く、 ゲル電気泳

lli}J

(同程度の結合定数を有するエチジウムブロミドやキナクリンは

複合体として泳動せず、 DNAと解離して反対の方向に泳動する)や ゲルろ過を行なっても複合体は完全に解離すること はな かった。 こ

れは DNAのラベjレ化剤としては不可欠な条件である。

7江気化学的空� ill)Jをサイクリ ックボルタンメトリーによって 検討し た結来、

2は複合体形成後も酸化還元活性である

ことが わかり 、 先 の結合力と併せて考えて、 ラベル化剤として最低限の性質は有して

1ることカf明らかになった。

さらに、 この定位から2のDNA との相互作用に関する情報も得る

ー173-

(33)

ことが できた。 複合体形成に伴って、 その還元電位は、 負にシ フト した。 このことから、

2

DN Aに結合 すると還元され難くなること

がわかった。 即ち、 複合体にとって、 還元状態は好ましくないこと を示す。 言い替えると、

2とDNAの結合は、

主に静電的な相互作用

に支配されてい るので、

2

が送元されてその正電荷がlつ減ると結 合定数は大きく減少するということである。

このように、 酸化還元活性な DNAリガンドはDN Aのラベjレ化だ けでなく、 結合様式のプローブとしても利用できることがわかった。

この酸化還元活性リガンドの DNAの光切断試薬としての利用 につ いても第3章中で述べ た。 ここでは2の同じ酸化還元活性を酸素の j還元的活性化に使った。 可視光の照射を引き金としてアクリジンか らビオ ローゲンへ電子を供給し、 ビオローゲンのl電子還元体を効 半的に生成させた。 対照実験から、 このDNA切断には分子内の電子 移動が関与しており、 さらに稔々の阻害剤共存下での切断効率から 活性酸素が実際の活性栓であることが示唆され、 こ の反応機構が支

持された。

この栓の(分子 内の光誘起電子移動反応、のからんだ)反応機構に よる DNAの切断は、 これまで には報告されてい ない。 この結果は、

例えば、 その励起状態の酸化電位を考えた上で増感剤を選べば(増 感知lのほとんどは複素環であるのでDNAに結合するものが多いであ

ろう)、 好みの波長の光でDNAを切断することのできる 試薬を設計 できることを示している。

このよう に、 酸化還元活性を DNAリ ガンドに導入した だけで、

DNAの高感度検出プローブ以外に、 様々な機能を発揮すること がわ かり、 非r;1�.に興味深い性質を有する試薬を右IJることができた。

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参照

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