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経口免疫療法中に異食症により発見された好酸球性胃腸炎の 1 例

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(1)

症例報告

経口免疫療法中に異食症により発見された好酸球性胃腸炎の 1

国立成育医療研究センターアレルギーセンター

西村 幸士 福家 辰樹 宮地裕美子 犬塚 祐介 豊国 賢治 苛原 誠 石川 史 佐藤 未織 齋藤麻耶子 山本貴和子

成田 雅美 野村伊知郎 大矢 幸弘

好酸球性胃腸炎は,消化管への好酸球浸潤をきたし様々な消化器症状を呈する.今回,異食症を契機に診断に 至った症例を経験した.

【症例】6歳男児.

1

歳時に近医より紹介され,食物負荷試験により即時型食物アレルギーと診断,以降経口免 疫療法(卵,乳,小麦)を継続していた.4

4

カ月より好酸球数,総

IgE,各特異的 IgE

値の急激な上昇を 認め,

4

10

カ月頃より口腔粘膜症状や嘔吐が出現し徐々に増悪した.卵や乳の維持量を減量・中止し症状は 軽快したが嘔吐は時折認めた.

5

10

カ月頃から砂利やスポンジを食べる異食症状が出現し,下痢や血便を伴 わない著明な鉄欠乏性貧血を認め精査入院した.上下部内視鏡検査では明らかな消化管出血を認めず,胃幽門 部と胃体部に

40

個/HPF以上の好酸球浸潤を認め,本症と診断した.多種食物除去療法により消化器症状は消 失した.

【結語】経口免疫療法中に消化器症状が持続する場合には,好酸球性胃腸炎の可能性を考慮する必要がある.血 便を伴わない場合でも貧血の合併に留意を要する.

Key words: anemia

――

eosinophilic gastroenteritis

――

food allergy

――

oral immunotherapy

――

pica

緒 言

好酸球性胃腸炎(eosinophilic gastroenteritis;以下

EGE)は,消化管壁への好酸球浸潤をきたし,様々な

消化器症状を呈する原因不明の炎症性消化管疾患であ る.また,好酸球性食道炎(Eosinophilic esophagitis;

以下

EoE)は経口免疫療法(oral immunotherapy;以

OIT)の合併症として近年報告が増えているが,

OIT

中に

EGE

が合併する報告は少ない.今回,異食症 を契機に診断に至った小児例を経験したため報告す る.

症例呈示

症例:6歳男児 主訴:嘔吐,異食行動

既往歴:食物アレルギー,気管支喘息 家族歴:母:気管支喘息

入院時現症:(6

0

カ月)身長

107.5cm

(−1.2SD),

体重

19.6kg

(−0.2SD).心音:純,呼吸音:清,腹部:

平坦・軟・圧痛なし,肝脾腫なし,浮腫なし.眼瞼結

膜蒼白あり.

現病歴:2013

5

月(1

0

カ月)に近医より当院 に紹介受診され,食物経口負荷試験を実施し,即時型 食物アレルギー(卵,牛乳,小麦)と診断した.以降,

それぞれの食物に対して

OIT

を開始した.微量から漸 増し,症状はほとんど誘発されず,安全性を考慮し閾 値よりも十分少ない量で摂取を継続していた(Fig. 1).

定期的に血液検査を実施していたところ,2016

10

月(4

4

カ月)時に末梢血好酸球数,総

IgE

値,各特 異的

IgE

値が急激に上昇したが,その時点で症状は認 めなかった.2017

4

月(4

10

カ月)頃に口腔粘膜 刺激症状や嘔吐が出現し,徐々に増悪した.OITの維 持量を減量および中止したところ,症状は軽快したが 完全には消失しなかった.腹痛や下痢,血便などその 他の消化管症状は認めなかった.2018

3

月(5

9

カ月)頃から砂利やスポンジを食べる異食行動が突然 出現し,眼瞼結膜蒼白であったが肉眼的血便を伴わな い著明な小球性低色素性貧血(Table 1)を認めたため,

2018

6

月(6

0

カ月)精査目的で入院した.

入院後経過:便中ヘモグロビン濃度は

92ng/mL

Received: October 23, 2019, Accepted: January 10, 2020

Abbreviations:EGE eosinophilic gastroenteritis ,EoE Eosinophilic esophagitis ,OIT oral immunotherapy 西村幸士:国立成育医療研究センターアレルギーセンター〔〒157―8535 東京都世田谷区大蔵2―10―1〕

E-mail: [email protected]

(2)

Fig. 1. Clinical course after initial visit to our department.

2014/8 (2y2m)

2g 0.4mL

10g

0.2g 0.4g 1.4g 2.6g 3g 4g 2g 0.2g Canceled

Pica 3.2g

2mL

15g 3.2mL

5g 0.3mL

1g Canceled

0.2mL Canceled 4mL

15

5 3000 2000 1000 5000 2500 0

0 10 Hb (g/dl)

IgE (IU/mL)

Egg White Ovomucoid Milk Casein Wheat ω5 gliadin

Egg White Milk

Vomiting oral allergy

syndrome

※Japanese chilled thin noodles:

protein 3.5g/100g (Boiled noodles) Somen

O T I

Specific IgE (UA/mL) Peripheral eosinophil count

(/μL)

33 0.74 94.8

>100

2015/2 (2y8m) 27.4 3.85 93.9

>100

>100 6.71

2015/9 (3y3m) 20.5 6.49 61.9 63.2

>100 2.68

2016/3 (3y9m) 21.5 6.23 50 52.2

>100 34.5

2016/10 (4y4m)

80.9 47.1 83.5

>100 5.76

2017/3 (4y9m)

>100

>100

>100 85.2

>100 4.61

2017/8 (4y2m)

>100

>100

>100 95.8

>100 3.17

2018/3 (5y9m)

>100 48.6

>100

>100

>100 3.57

2018/6 (6y0m) 92.6 28.9

>100 81.5

>100 3.58

2018/9 (7y3m)

2019/1 (7y7m) Diet therapy

Ferric   Pyrophosphate

Table 1 Laboratory data before the hospitalization

Hematology Biochemistry Serological study

WBC 8360 /μL AST 26 IU/dL Total IgE 4240 IU/mL

Eos 2310 /μL ALT 12 IU/dL

RBC 389×10

4

/μL LDH 219 IU/dL Specific IgE (ImmunoCAP

®

)

Hb 7.1 g/μL TP 5.8 g/dL Egg white 92.6 UA/mL

Ht 25.3 % Alb 3.6 g/dL Ovomucoid 28.9 UA/mL

MCV 65.0 fl BUN 8.5 mg/dL Egg yolk 55.9 UA/mL

MCH 18.3 pg Cre 0.38 mg/dL Cow milk ≧100 UA/mL

MCHC 28.1 g/dL Na 139 mEq/L Casein 81.5 UA/mL

Plt 61.8×10

4

/μL K 4.4 mEq/L

β-lactoglobulin

4.75 UA/mL Fe 9 /μg/dL

α-lactoalbumin

28.3 UA/mL

UIBC 368 /μg/dL Wheat ≧100 UA/mL

Ferritin 1.6 ng/mL

ω5 gliadin

3.58 UA/mL

soy 71.1 UA/mL

rice 62.0 UA/mL

Dermatophagoides frinae ≧100 UA/mL

TARC 1825 pg/mL

陰性であった.上下部内視鏡検査では,肉眼的に明ら かな消化管出血を確認できなかった.粘膜生検の病理 組織像において胃および十二指腸の粘膜固有層に

40

個/HPF以上の好酸球浸潤を認めたため,

EGE

と診断 した(Fig. 2).食道や下部消化管には好酸球浸潤を認 めなかった.鉄剤の内服および多種食物除去療法(芋 類,野菜,果物,アミノ酸乳以外の食物を完全除去)を 開始したところ,貧血は改善し,消化器症状も徐々に 消失した(Fig. 1).多種食物除去療法開始から約

1

月後に鉄剤の内服を中止したが,貧血の再発は認めな かった.その後,長期的な食物経口負荷試験(被疑食 物を

1

1

回連日摂取し,

2

週間〜1カ月おきに食物の 種類を変更)を実施し,現在のところ米が原因食物と して同定されている.卵,乳,小麦はいずれも即時型 食物アレルギーのため,食物経口負荷試験を実施でき ていない.

(3)

Fig. 2. Hematoxylin & Eosin stain showing eosinophil infiltration of more than 40/

high power field. (A) Stomach. (B) Duodenum.

考 察

本症例は,最初の嘔吐と口腔粘膜症状および好酸球 数や

IgE

値の変化を,症状がいずれも

OIT

食摂取後

1〜2

時間以内に出現していたことから,即時型の食物 アレルギーが病態に関与していると判断していた.今 回,血便は認めなかったが,異食症から貧血を確認し た時点で初めて

EGE

を鑑別疾患として疑うことがで きた.OITには様々な方法が検討されているが,どの 患者にどの方法が適するか,長期治療によりどのよう な合併症が起こりうるか,現時点ではまだ明らかでな い.OIT中に消化器症状が持続する,または好酸球お よび

IgE

値が急激に増加する場合には,EGE

EoE

など好酸球性消化管疾患の可能性を考慮し,内視鏡検 査を実施する必要がある.

EGE

の有病率は

10

万人に

8.4

人と非常に低いが,近 年増加傾向にあると言われている1).日本では欧米に 比べて

EoE

より

EGE

の頻度が高い2)3).疫学的および 臨床的特徴として,EoE

7-8

割を男性が占めるのに 対し,

EGE

は性差がほとんどない.また,

EGE

EoE

と同様に約半数の患者がアトピー性皮膚炎や気管支喘 息などのアレルギー性疾患の病歴を有する3).EGE における食物アレルギーの関連は,EoEほど明確には 定義されておらず,治療も十分なエビデンスがまだな い.特に小児の

EGE

は数件の症例報告4)―9)のみで病態 や発症率など不明な点が多く,今後の症例集積研究や コホート研究が待たれる.本症例は,(a)消化管症状の 出現,(b)消化管への

1

つ以上の領域への好酸球浸潤 を示す組織学的証明もしくは末梢血の好酸球増多に特 徴的な画像所見を伴う,(c)好酸球増多を示す他疾患の 除外を満たす,の

3

つの基準10)を満たしていたため,

EGE

と診断した.

EGE

EoE

は,食物抗原に対する

Th2

型のアレル

ギー反応に伴うサイトカイン誘導,好酸球増殖および 活性化促進が関与していると推測されているが,詳細 な発症機序は明らかではない.細胞性免疫だけでなく 食物抗原に対する液性免疫の両方が関わる説もあ 11),EoEでは血清総

IgE

値や食物抗原特異的

IgE

値が特に小児で上昇する例は報告されているが,その 頻度や臨床的意義については明らかではない12).本症 例では,症状の出現と末梢血好酸球数および

IgE

値の 増加の時期がほぼ一致していた.今後更に検討が必要 だが, 末梢血好酸球数および

IgE

値の急激な増加は,

OIT

中における

EGE

発症の指標となり得るかもしれ ない.

EGE

の症状は腹痛と下痢が多いが,好酸球が漿膜下 に存在する場合は腹水や血便を来すこともある.全層 生検はリスクを伴うため本症例では実施しなかった が,症状として腹水がなく,病理組織所見から粘膜部 分の好酸球浸潤が明らかであり,漿膜下への浸潤は否 定的とした.診断の契機となった異食症の原因である 小球性低色素性貧血は,肉眼的な血便は認めなかった ものの,最初は潜在的な消化管出血によるものを疑っ た.しかし,内視鏡検査でも出血所見が認められず,

病理組織検査にて胃および十二指腸に好酸球浸潤を伴 う炎症所見を認めた.さらに,鉄剤内服により貧血は 劇的に改善したことから,慢性的な微小消化管出血ま たは十二指腸における鉄吸収障害が貧血の原因と考え た.OIT中には,肉眼的血便を伴わない場合でも,貧 血の合併に留意を要する.

EGE

は自然寛解する例もあれば,重度の吸収障害に 伴う栄養不良に進行する例もある13).本症例は軽度だ が低蛋白血症を呈したことと,消化管症状が出現した 時期より元々標準であった身長体重がともに標準を下 回るようになったことから,軽度の栄養不良状態で あったと予想される.更に,食事療法の開始約

1

年後

(4)

Fig. 3. Growth curve.

Height (cm)

190 90

85 80 75 70 65 60 55 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 180

170 160 150 140 130 120 110 100 90 80 70 60 50

400 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 (year) Age

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 (year) Age

OIT start

OIT start Diet therapy

start

Diet therapy start

+2SD

Body Weight (kg)

+1SD

−1SD

−2SD

−3SD−2.5SD avarage

+2SD

+1SD

−1SD

−2SD avarage

2019

10

月 現 在(7

4

カ 月),身 長 が

119.7cm

(−0.4SD),体 重

24.7kg(+0.6SD)と ほ ぼ 標 準 ま で

キャッチアップした(Fig. 3).以上より,栄養状態の 悪化も

EGE

を疑う所見の一つとなる可能性がある.

EGE

に対して,十分なエビデンスをもった有効な治 療法は実証されていない.コルチコステロイドの全身 投与は一時的な症状の改善には有効だが,対症療法で あり,減量または中止後に再発を繰り返し長期投与が 必要になる例が多い14).抗アレルギー薬としては,ク ロモグリク酸,ケトチフェン,トシル酸スプラタスト,

プランルカスト,モンテルカストなどの使用が報告さ れているが,いずれもその有効性は不十分である15)―17) 食物抗原に対する

Th2

型のアレルギー反応が関連す るという病因論から考えると,食物抗原を除く原因食 事除去療法は有効な治療法の一つである18)19).本症例 では多種食物除去後の長期負荷試験(被疑食物を

1

1

回連日摂取し,

2

週間〜1カ月おきに食物の種類を変 更)が,症状の改善および原因食物の推定に有効であっ た.米は毎日摂取していたため消化管症状との関連性 を疑いにくかったが,米を含む多種の食物除去をまず 行い,その後

1

種類ずつ長期にわたる食物負荷試験で 症状を明確に確認することで,初めて米を原因食品と して同定できた.即時型食物アレルギーのため除去を 続けている卵,乳,小麦も,OIT減量時に症状が軽減 したことから,

EGE

の原因としていずれも否定はでき

ない.今後,

EGE

の疫学研究および食事療法の方法や 有効性に関する臨床研究が期待される.

結 語

OIT

は,食物アレルギーの治療法として今後も様々 な施設で実施されることが予想されるが,合併症とし

EGE

を発症し得る.OIT治療中に慢性的な消化器 症状を認めた場合には,内視鏡検査を実施し

EGE

早期発見に努める必要がある.また,血便を伴わない 場合でも貧血の合併に注意を要する.

本論文の要旨は第 68 回日本アレルギー学会学術大会

(2019 年 6 月,東京)にて発表した.本症例の治療経過,病 理写真を報告ならびに掲載するにあたり保護者へ十分な説 明を行い,同意を得た.

利益相反(conflict of interest)に関する開示:著者全員は本論 文の研究内容について開示すべき利益相反はありません.

文 献

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(6)

A CASE OF EOSINOPHILIC GASTROENTERITIS FOUND BY PICA DURING ORAL IMMUNOTHERAPY

Koji Nishimura, Tatsuki Fukuie, Yumiko Miyaji, Yusuke Inuzuka, Kenji Toyokuni, Makoto Irahara, Fumi Ishikawa, Miori Sato, Mayako Saito, Kiwako Yamamoto-Hanada, Masami Narita,

Ichiro Nomura and Yukihiro Ohya

Allergy Center, National Center for Child Health and Development

Eosinophilic esophagitis has been reported as a complication of oral immunotherapy (OIT), but there are only a few reports of eosinophilic gastroenteritis (EGE) occurring after OIT. EGE causes eosinophil infiltration into the gastrointestinal (GI) tract and is characterized by various digestive symptoms. We report the case of a 6- year-old boy with EGE. He was diagnosed as having immediate-type food allergies (egg, milk and wheat) by oral food challenges at 1 year of age. OIT for each food was carried out, and the amounts of the offending foods were able to be gradually increased without causing any immediate-type allergy symptoms. However, the to- tal IgE and specific IgE values were remarkably increased at the age of 4 years and 4 months. He first devel- oped oral mucosa symptoms and vomiting at 4 years and 10 months of age, and they gradually worsened. Stop- ping eggs and milk alleviated the symptoms. Nevertheless, he still occasionally vomited. He started Pica eating disorder (sand and sponge) due to anemia from 5 years and 10 months of age and developed eosinophilia with- out diarrhea or bloody stool. Upper and lower GI tract endoscopic examinations found no bleeding. The GI mu- cosa showed eosinophil infiltration of more than 40/high-power field in the stomach and duodenum, so he was diagnosed with EGE. No eosinophils were found in the esophageal mucosa. His GI symptoms and anemia im- proved on a multiple-food-elimination diet. Patients undergoing OIT should be closely followed up for a long time, and those with GI symptoms should be evaluated by GI endoscopy.

!2020 Japanese Society of Allergology Journal Web Site:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/arerugi/-char/ja/

Fig. 1. Clinical course after initial visit to our department.2014/8(2y2m)2g0.4mL10g0.2g 0.4g1.4g2.6g3g4g2g 0.2g CanceledPica3.2g2mL15g3.2mL5g0.3mL1gCanceled0.2mLCanceled4mL155300020001000500025000010Hb (g/dl)IgE (IU/mL)Egg WhiteOvomucoidMilkCaseinWheatω5 
Fig. 2. Hematoxylin & Eosin stain showing eosinophil infiltration of more than 40/ high power field. (A) Stomach. (B) Duodenum
Fig. 3. Growth curve.Height (cm)1909085807570656055504540353025201510501801701601501401301201101009080706050400 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18(year)Age 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18(year)AgeOITstartOITstartDiet therapystartDi

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