金沢大 学十 全 医学 会雑 誌 第9 2巻 第2 号 2 8 卜 2 95 (1 98 3)
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肝細 胞 癌 診 断に お ける L e u c o cy te a d h e r e n c e inh ibitio n
(L A I) a s s ay の診断的意義に関 する研 究
金沢大学 大 学院医学研究 科 内科 学 第一講 座 ( 指 導: 服 部 信教 按)
米 島 学
( 昭和5 8年2 月1 5日受付)
腫瘍の細 胞 性 免 疫反応を利用 し た特 異な癌 診 断 法である白血球付 着 阻止試験 (1e u c o cy te ad he r e n c e
inhibitio n a s s ay, 以下L A I a s s ay と略) を肝 細 胞癌において行い, 各種 腰 瘍マ ー カ ー と の比較お よ び腫
瘍の大さ さ と の関 係な どの検 討よ り, L A I a s s ay の診 断 的意 義を明ら かにし よ う と し た.
新鮮 剖検 肝 細胞 癌 組 織よ り作 製し た抽 出液を抗原と し・ 同様に健 常 肝 組 織よ り の抽 出液を対 照抗 原と し て用いた・
ヘパリン加 末 棉血よ り比 重遠 沈法にて m o n o n u cle a r c ells を分離し, メディウム にて 1 07個/ ml に調整し, Gr o s s e r ら の方 法に準じ てtubeL A Ia s s ay を行った・ 結 果は No n‑ad he r e n c einde x(以下N A I と略) を算 出し て表わ し た.
肝 細胞 癌55 例 中3 7例 (6 7% ) が L A I a s s ay 陽 性であった・ 偽 陽 性は肝 硬 変34例 中6例 (18 % ), 他
の悪性 鵬 2 1 例 中1例 (5% ) であった が, 他の良 性肝 疾 患で は陽 性例は認め な かっ た. 同時に測 定し た 他の腰瘍マ ー カ ー であ るα ‑fetopr otein (以 下 A F P と略) 値やn o v el γ‑G T P is o e n zym e ( 以 下n o v el γ
一G T P と略) の有 無と L A I a s s ay との関係を検 討し た が, これ ら 2 つのマ ー カー と N A I 値と の間には相 関性は認め ら れ な かっ た・ A F P ・n O V el γ‑G T P と もに陰性の2 0例 中1 1 例は本 試験 陽性で あ り, これ ら 3 つのマ ー カ ー を組み合わ せ ることによ り, 肝細 胞 癌の 8 6% に診 断が可 能であった.
さ らに, L A Ia s s ay と腰 瘍の大さ さ と の関連も検 討し た・ 肝スキャ ン によ る腫 瘍のステー ジ分 類と N A I 値と の間には相 関 性は な く, ま た, C T スキャ ンよ り計 測し た腫 瘍 体 積や腫瘍 占拠 率と N A I値との間にも 相 関性は 認 め な かったt 最 大径3 c m 以 下の細小肝 癌8 例 中5例にも本 試験 陽 性を認 吟た.
以 上 よ り, 肝 細 胞痛の L A I a s s ay は特 異性・陽 性率と もにか な り高く, さ らに, 他の腫 瘍マ ー カー や腰 瘍の進行 度に無 関 係に出 現し, 細 小 肝 癌に おけ る陽性 率も高い こと よ り, 本 法は肝 細胞 癌の 血液 学 的診 断 法と し て有用性が高いと考え ら れ る.
Key w o rds L A I a s s ay
, α‑Fetopr otein(A F P), N o v el γ‑G T P is o e nzy m e
(n o v el γ‑G T P), 腫 瘍 体 積
肝細胞癌 (Hepato c ellula r c a r cin o m a, 以下H C C と略) は他の癌に比し てα‑fetopr otein (以下A F P と 略) やn o v elγ‑G T P is o e n zym e (以下n o v el γ‑G T P
と略) 1 ) 2 )のよ うに癌 特 異 性およ び感 度いず れに お いて
も劉は 膿瘍マ ー カー に恵ま れ ている. し か も, これ らマ ー カー は, H C C に限れ ば,
一般にその陽 性 率も進 行度と は無関 係で あ る という成績が得ら れ ている2). し かし,A F P やn o v elγ‑G T P な どのよ うに腫瘍マ ー カ
ーと して現 在 最も優れ ている もの であって も, 腫 瘍が 塵生す る蛋 白や酵 素を直接 測 定す る方 法では検 出 率に
限 界が あ り, 特に細 小 肝癌で の有用性は低く3 ) 4), 新た な 血液 学 的診 断 法の開発が急務であ る.
1 9 72 * , Halliday ら5)によ り報 告さ れ た白血球 付 着 阻止試験 (1e u c o cy te ad he r e n c einhi bitio n a s s ay, 以 下 L A I a s s ay と略) は, 腰 瘍の膜 特 異 抗原に対す る細 胞 性 免疫 応 答を in vitr o でと ら え る もので あ り, 従 来
の蛋白や酵 素な ど を直 接測 定す る方 法と は異な る特 異 な癌 診 断 法と期 待さ れ ている5ト7). しか し, H C C に お いて も, その診 断 的 意 義は未だ十 分に検 討さ れ ていな い. 本 稿で は, 1 9 75 年, Gr o s s e r ら6)によ り開発さ れ た Studie s o n the C linic al S ignific an c e of Le u c o cy te A d he r e n c e Inhibition (L A I) As s ay in Hepato c ellula r Ca r cin o m a (H C C)・ M a n abu Y o n e shim a, D epa rtm e nt of Inte r n al
Medicin e(Ⅰ),(D ir e cto r : Pr of・ N ・ H at tori),Scho ol of M edicin e
, K a n a z a w a U niv e r sit y.
ガ ラス試 験 管壁への m o n o n u cle a r c ells の付 着 阻 止を 観 察す るtube L A I a s s ay を H C C に お いて行い, 本 試 験と各種腫 瘍マ ー カー と の比 較お よ び腫 瘍の大き さ と の関 連な ど も検討し, 本 試 験の診 断 的 意 義を明ら か
に し よ う と し た.
対 象お よ び方法
1 . 対 象
対 象は, 金 沢 大学 第1内 科ま た は関 連施 設に入院し た H C C 5 5 例, H C C を合併し ない肝 硬 変 (以下L C と 略) 34 例, 慢 性肝 炎 ( 以 下C H と略)1 6 例, 急性 肝 炎 (以下A H と略)8例,H C C を除く 他の悪 性 腫 瘍2 1例 (9 例は肝 転 移を伴な う) である. さ らに対 照と し て,
健 常 者2 8例で も本 試 験を行っ た. H C C の診断は, 17 例は手術ないし剖検で確 認さ れ,残り 3 8 例ほ臨床 症 状, 一 般生 化 学検 査にカロえ て, 肝 動 脈 造影 所 見によ り診 断 さ れ た. 他の疾 患の診 断は, 臨 床 症 汎 生 化 学 的検 査
に加え, 各 種Ⅹ線検 査, 生検, 腹 腔 鏡によ り な さ れ た.
2) Tu m o r e xtr a cts の抽 出
tu mo r e xtr a cts の抽 出は H al li day ら5)7)の方法に準 じ て行った. す な わ ち, 手術ない し は剖 検によって得 ら れ た新 鮮H C C 組織を水 冷したpH 7・3,0・0 1 M リン 酸綬 衝 液 加食 塩 水 ( 以 下P B S と略) 内で壊 死 部・結合 織を除去 後, ハサ ミにて紙 切し た. これ を テフロ ンホ モジ ナ イ ザ 一 にてホ モジ ネー ト後,さ ら に P B S を加え,
4 0C,2 0,0 0 0g,3 0 分 間遠 心し た.上滞を Folin‑Lo w ry
法にて蛋 白濃 度を測 定し,0.5mlずつ に分 注し, a S S ay に使用 す る ま で は ‑8 00Cにて保 存し た. 同様に, 健 常
刑
↓m o n o n u cle Q r C ell s u spe n sio n O・1r nL 1 1xl O†c ells/ ml) tis s u e e xtねct O .1 ml
m ediu m O.3 ml
に」ノ 這 S et ho riz o ntqlly q nd
inc ubQtCrin CO 之in c ubQtO r qt 3 アOc fo r 2 hr s.
S et V e rtic qlly q nd
C O U nt n O n ‑Qd he r e nt c eLLs b y Co ulte r Co u nte r
F ig.1. Pr o c edu r e s fo r tube L A I (1e u c o cy te ad he r e n c einh ib itio n) a s s ay.
肝 組織か ら もe xtr a cts を抽 出し, 分注 保 存し た.
3) M o n o n u cle a rc ells の分 離
ヘパリン加 末 棺血 1 0 ml よ り,Co n r ay‑Fic oll による 比 重 遠 沈 法8)で m o n o n u cle a r c ells を分 離し, m ediu m
T C‑1 9 9 m にて 1 ×1 07個/ mlに調 整し た. 4) Tube L A I a s s ay
Gr o s s e rらの方法6)に準じ て, tube L A I a s s ay を行
っ た. F ig.1 に示 す ご と く, m O n O n u Cle a r c ells浮遊液 1 0 0jLl, 蛋 白 濃 度1 m g/ml の H C C あるいは健常 肝
e xtr a ctsl O O/(l, m ed iu m T C‑1 9 9 m 3 0 0pl を 1 6×2 55
m m の W H E A T O N c ultu r e tube に注入 し た. 水平 位にて 3 70C, 5 % C O2インキュベ ー タ ー内で 2 時間培 養後, 試 験 管を垂直に立て, パ スツ ー ルピペ ットにて 管 底の液を軽く攫 拝 後, 管 底 液 中の非 付 着 細 胞数 (n o n‑ad he r e ntc ells) を Co ulte r Co u nte r にて カ ウン ト し た. 測 定 結 果は 以下に示 す式によ り, n O n‑adhe r‑ e n c einde x (以下N A I と略) を算 出し て表わ し た9).
N A I (n o n ‑ad he r e n c einde x)
n o n‑ad he ren c e c ells with n o n‑ad he r e n c e c ells with H C C e xtr a ct n o r mal liv e r e xtr a ct
n o n‑ad he r e n c e c ells with n o r mal liv e re xtr a ct
×1 00(%) な お,詳 細は後 述す る が,予 備 実験と し て,数例のB C C 患 者お よび健 常 者か らの m o n o n u cle a r c ells を用いて,
各 種 蛋 白 濃度(0.2 5, 0.5, 1 , 2 mg/ ml)のe xtr a cts
でtube L A I a s s ay を行った結果, e Xtr a CtS の至適蛋 白濃 度は 1 m g/ mlであった. 以後の測 定は 1 mg/mi の蛋 白 濃 度で行っ た. m o n o n u cle a r c ells 分 離時の
m ediu m , L A I a s s ay 時の m ed iu m には fetal c aIf
s e r u m は添加しな かった.ま た,測 定は すべてtriplic ate で行い, 平均 値を求め て, N A I を算 出し た.
5) 各 種 腫 瘍マ ー カー の測 定
同 時ないし ほ ぼ同時 期に採 血し た血 清を 用しゝ, A F P 値,n O V el γ一G T P の有 無を検 討し た.A F P は D in abot t
社 製の キット を使 用し た Radioim m u n o a s s ay 法にて測 定し,H C C の特 異 性の高く な る40 0ng/ml 以 上 を陽性 と し た. n o v el γ‑G T P の有 無は 既報l ) 2)1 0 )の ごと く,
Polya c ryla mide gr ad ia nt gel ele ctr opho r e sis にて検 索し た.
6) 腫 瘍の大き さの測 定
腫 瘍の大き さの測 定に用いた肝スキャ ン およ び C T ス
キャ ンは 1JA I a s s ay と ほ ぼ同 時期に施 行し た ものを用
いた.
(1) 肝スキャ ン によ る進行 度 分 類
H C C の ステー ジ分 類は肝 癌 研 究 会の試案3 ) 1 0 )に基づ いた. す な わ ち, 肝スキャ ン の正面像にお け る defe ct の有 乳 程 度によ り,Tab lel に示 す ごと くstage I 〜IV の 4 段 階にわ け た.
(2) C T スキャ ン によ る腫瘍 体 積
肝 細 胞癌に おけ る L A I a s s ay の診 断 的意 義に関す る研 究
Table l. Stage s a nd tu mo r v olu me s of H C C (hepato c ellula r c a r cin o m a)
1). Stage s of H C C cla s si 鮎 d by po ste rio r‑a nte rio r
v
ie w of liv e r s c a n n l ng
Stage l: n O dete ctable 丘11ing defe ct.
Stage2: Defe ctisbelo w 20% in pr opo rtio n tothe whole hepatogT a m.
Stage3: Defe ctisfr o m 2 0% to 7 0% Stage4‥ Defe ctis abo v e7 0%
2). Tu m o r v olu me s of H C C c alc ulated by m e a s u r e・ m e ntin C T s c a n n l ng
a n a r e a ofthe s e ctio n C O n Sta nt
V 尋(Sl+S2+ ・ … ‥ +S。)
1 c m 軌こ スラ イスし た各 断面にて,プ ラニメ ーター を 用い て, 各 断面にお け る肝 面 積・腫 瘍 両 横を求めt Tablelの式で示 す よ うに,そ れ ら を積 分す ることによ り, 肝 全体 積 (total liv e r v olu m e), 腫瘍 占拠 体 積 (tu m o r v olu me), 腫 瘍 占拠 率 (tu m o r r atio) を算 出し た1 1 ).
7) 細 小肝 癌 (S m all H C C)
手術や剖検あ るいは画 像 診 断にて診 断し た腫 瘍 径3
C m 以 下の H C C を細 小肝 癌と し て扱っ た1 2). 画像 診 断
にて診 断し た例は, 腹 部 超 音 波 検 査 (ultr a s 。 n 。̲ gr aphy), 選択 的 血 管撮 影 (infu sio n hepatic a ngi0・
gr aphy), 血管 撮 影下C T スキャ ン (s equ e ntial C T
Witha rte rialpo rtogr aphy) を行い, 細小肝 癌と診 断 し た.
な お, 平均 値の差お よ び陽 性率の差の有 意差 検 定は そ れ ぞ れ, t検 定, Ⅹ2検 定にて, 相 関係 数(r)の有 意 差 はr表にて行った.
成 績
1) 添加 抗 原の蛋白 濃 度の決 定
至適蛋白 濃 度を検 討す る た め, 以下の予備 実験を行
った.
数例のH C C 患 者およ び健常人の m o n o n u cle a r c e11s
を用い, 0・2 5, 0・5, 1 , 2 m g/ml の各種蛋白 濃 度の e Xtr a ctsl O OJLl を添 加してL A I a s s ay を施 行し た. 従
って, 最終蛋白 濃 度は そ れ ぞ れ 5 0, 10 0,2 0 0,4 0 0〃 g/
ml と なった・ ま た,e Xtr a CtS の代わ りに P B S lO Opl の
添加にて も測 定を行い, こ の場 合の最終蛋白 濃 度は O P g/ml で あった・ Fig・2 に示 す ご と く, H C C 患 者の
m O n O n u cle a r c ells およ び健常人の m o n o n u cle a r c ells
ともに,最 終 蛋白 濃 度2 0 0 〟g/ml までは非 付 着 率(n o n
‑ad he r e ntr atio) は直線 的に増 加し, 以後は ほ ぼ プ ラ ト にな り, 至適 添 加 蛋白 濃 度は 1 m g/ml( 最 終 蛋 白 濃度では 2 0 0〟g/ml) と判 定さ れ た. こ の至適 濃 度で
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Pr Otejn c o n c e ntratio n of mjxturetube (JJymn
Fig・2・ Op tim al pr otein c o n c e ntr atio n s of tis s u e e xtr a ctsin L A I a s s ay.
n α■tad he rentceus
5 1 0 15 刀
total m o n o n u cLe a r c eL【s
F ig.3. Co r r elatio n betw e e n total m o n o n u cle a r C ells a nd n o n ad he r e nt c ellsin L A I a s s ay u s l ng C ells de riv ed fr o m o n e c a s e of H C C patie nts a nd
n o r m al liv e r e xtr a cts.
L A I a s s ay を行った.
2) 浮遊 m o n o n u cle a r c ells数の決 定
浮 遊m o n o n u cle a r c ells濃 度を そ れ ぞ れ 2.5×1 06,
5 × 106, 1 ×1 07,1・5×1 07†2 ×107個/ml と して,H C C 患 者およ び健 常 者で L A I a s s ay を行った(tube 内の最 終 m o n o n u cle a r c ell 濃度は 0・5, 1 , 2 , 3 , 4 ×1 06 個/ml と な る・)・ Fig・3 にその1例を 示 す が, a S S ay 後
の非付 着 m o n o n u cle a r c ell 濃度は そ れ ぞ れ 2.0, 4.0,
11・3, 17・0×1 05個/mI と な り, 非 付 着 率は そ れ ぞ れ 40・0,4 0・0,42・0,4 3・3,4 2・5 % と ほ ぼ一 定であった. L A I a s s ay 陽 性 を 示 す H C C 患 者の m o n 。 n u Cle a r C ells と H C C e xtr a cts を用いた a s s ay の場合のみ, 非 付 着 率は 6 0〜8 0% と高 値を示 し た が, や は り各m 。 n 。̲