寝具の保温性の検討
著者名(日) 坂野 世里奈, 芳住 邦雄
雑誌名 共立女子大学家政学部紀要
巻 57
ページ 65‑70
発行年 2011‑01
URL http://id.nii.ac.jp/1087/00002212/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止
;j~立女子大学家政学部紀~ 第
57号
(2011)寝具の保温性の検討
Studies on Thermal Properties of Futon
,
]apanese Style Mattress坂野世里奈ホ・芳住邦雄事
Serina BANNO and Kunio YOSHIZUMI
Abstract: Heat conduction with respect to clothes including ]apanese style mattress
,
futon,
was experimentally examined in this study. In a well thermally regulated labora‑ tory,
heat transfer characteristics were investigated on a futon which was packed with tencel fibers. Electrical heater,
insulator and futon were set to be in triple layers. The thermal conductivity and thickness of the insulator is known. Then heat transfer was evaluated through temperature monitoring at some parts of the futon. As a result,
the performance of the futon was computed as TOG number. The thermal stability was dis‑ cussed. Moreover,
small size experimental system was investigated to obtain a more easier handling system and to examine thermal characteristics of clothes. Satisfactory performance was demonstrated in this study.1.
緒言
寝具は、日常の快適性を確保するために不可 欠な存在である。疲労の回復を図り、明日への 活力を緬養するための心ち良い│睡眠を実現する ことにおいて重要な役割を果たすものである。
寝具の温熱特性を把握することが、最終的に は、保温性能の数値化に至ることになる。これ までにも、
]ISL 1911に規定される試験方法が ある
1)。しかし、これによっての熱安定状態を 達成するには実験開始後、
24時間以上の経過観 察が必要と言われている。
また、より短い実験時間による寝具の温熱性 能評価を行うことについて報告
2.3)がなされて いる。一方、被服における熱・水分移動の検討 はこれまでにも多くの報告がある
4ーへ本研究では、簡便な構成における熱移動の測 定システムを開発するための基礎データを集積 することを日的としている。
‑家政学部被服学科
本研究では、第
lに温湿度の充分に制御され た実験室における実寸の敷布団における熱的特 性を検討した。さらに、より小規模の熱移動系 を設定してその詳細な特性を検討した。実用上 の課題に適用しうるシステム構成の実現を目指
している。
2.
実験方法
本研究では、厳密に温度・湿度が抑制された 実験条件での実寸の敷布団における熱移動(図
1)および、より簡便で小規模サイズな構成系 での熱移動(図
2)を検討し、寝具および断熱 材の保温力評価を行った。保温力とは熱伝達係 数を求めることにほかならない。
電力を発熱体とし、熱貫流肢を各部位で、の温 度測定に基づき見積った。対象としては、寝具 および断熱材である。熱勾配から熱抵抗を算定 することに主眼をおいている。
寝具には、テンセルを中ワタとする敷布団を
‑65
共立女子大学家政学部紀~ 第
57ザ
(2011 )川いた。サイズは、実寸のシング、ル仕様で、あり、 無視しえないとも見られる。
200cm x 90cm
で、ある。厚みは
10mmで、ある。
断熱材は、ポリスチレン製であり、メーカー
もliとしての熱伝導率は0.037W/ (m . K) であ る。厚み 1.5cm-3.0cm の試料を実験に fJ~ した。
l
立
11においては断熱材
(3.0mm)を介して実 寸の試験布同の熱移動を計測した。│望
12におい ては、
30cmX 30cmの発熱体、断熱材、アルミ 板を用いて、第
1断 熱 材 (
1.5cm)を介してそ の上に厚みの異なる断熱材を設置して同様に計 測した。
3.
実験結果および考察
3. 1実寸の敷布団での熱移動
制御された実験室での熱移動:温度2
0: t
1 'c、
iU
度65 : t
3%、気流0
.3/s以下に保った恒温恒 ì!ll~ 室において、各部位での温度を述統的に測定
した。
│
究13‑ 9は、制御された実験室における布団 ( J 手 み
10mm)に関わる熱移動特'目:で、ある。中 ワタはテンセルである。
発熱体上古
I1の温度変化を図
3に示した。実験 I J H 始当初から
45.6'C程度のレベルにあり、
200分経過後まで上昇傾向にある。
200分から400 分
までは、安定している。変動脈としては
0.1‑0.2'C
にある。熱貫通量の評価にはこの変動は
‑ 室 温 熱 貫 流
. c
試験布団
里E
断 熱 材
│
哩
11 i l l l l 制度の制御された室内での実寸1 1 i川の ' , [ 1 ) J 発熱による保
iiA力試験
・ :
iLIl皮測定箇所
図 4は、断熱材
t古
11の温度特性である。 4 1 1 . ¥ ; 間経過までは安定したレベルとは言えない。そ の後も緩やかな上昇傾向にある。
7時間経過後 までも増加 l 隔は
O. 5 '
C程度ではあるが上昇傾向 にあると見受けられる。この変動の要因を直ち に理解することは難しい。保温力を有効数字
3桁で見積もるには影特しうる。
図
5は、試験布I‑
Jj上 i 1 !
1の温度変化で、ある。│立
14 の断熱材 l二 ~II と同様に変化しており、安定領 域に達するには4 時間が必要となっている。│山│
より、断熱材上部による影響であるが、容易に は理解しがたい特性である。
図
6は、室
jillLの特性で、ある。充分に安定して いる。
図
7は 、
A点と
B点、図
8はB 点と
C点の
il11tJi[差である。 H 年間の経過とともに平衡値に近づい て行く。│火 1 9 は、それらに基づく試験布団の保 温力である。平衡状態では
TOG値4
.50と見積も られた。断熱材の保
iiHi力が、
TOG値表示では
7.5であることに基づいている。
3.2
簡便な系での熱移動
図10‑16 は、図
2に示した構成における温度 変化特性を示している。約
3時間にわたり、
6秒ごとにデータをロガーに取り込んでいる。
NJ熱 貫 流
図 2 ìllllì!l1!'支の制御された室内での小規模袋 I(~
による熱移動試験
・
: i l l l l l
3ti J I I J定筒)9f
泌 H の 1h~ì品性の検討
WJ
から約
30分経過後には、各
ml位の温度は定常 状態に達したと言える特性が示されている。室
ilill2 2. 4
Ocにおいてヒータ一部の温度は
ON‑OFF
制御で
39.60Cに 維 持 さ れ て い る (
1文
110)。 当然ながらこの系を通過する熱貫流量はすべて の部位で保持されていると考える。
│
究
110は、ヒーター上部の温度変化である。
O.1"C
の振れ l 陥で安定していることが認められ る。図
11は、第
l断熱材上部の
iidi度変化である。
│
記
110と同様に振れ l 隔
O.1"Cで安定している。 凶
12は、第
2断熱材上部の温度変化である。振れ
l 隔は、図
10および図
11とは異なり、
0.20Cと拡 大している。│弐
113はアルミ板 k 青
11の温度変化で、
ある。振れ
111日は
0.20Cである。図
14は室品
iの変 化である。振れ l 隔は
O. 4
OCである。
こうした構成システム定常条件において、ヒ ータ一部温度、すなわち、第 l断熱材の上部温 度と下部温度の去は
6.860Cである
(1;g115)。ま た第
l断熱材の上端部つまり第
2断熱材のド端 部と第
2断熱材の上端部との温度差は
6.940Cで ある(図
16)。実験誤差の範
rltl内で両者は極め てよく一致していると言える。第 I断熱材と第
2断熱材は、同一メーカーのポリスチレンでそ の熱電導はメーカー値で、
0.037W/ (m . K)であ る 。
したがって厚みが同ーなれば、生じる
jilt度差 もまた理論的には同一であって然るべきである。
本研究の実験系においてこうした一致が確認で きた意義は小さくはない。つまりは、本実験装 11~1~ の信頼性の棋拠のひとつを示しているとも考 えられる。
凶
17には、│文
12の構成において、
l二側の断熱 材の厚みを変化させたときの各部位の温度を示 した。横軸は、
2枚の断熱材の合計の厚みを示 しである。
I二側断熱材の厚みが.1:
(1力
11するにつれ て、第
l断熱材上端部は保温されることにより、
ilnllclt
は上昇して行く。一方、第
2断熱材の上端 部は厚みが増すにつれて、ヒーターによる加温 を受けにくくなり、温度は下降していくことが わかる。こうした結果も、本実験系の熱移動シ
67
ρ
凶岡崎H'" ∞'"。録 過 崎 川 分
l
立
13発熱体上古
I1の
iM度の経時変化 ( 図 lの
A.'.'.Oρ
白 一恒 関
2
∞
3∞
If過時阻分
l
克
14断熱材上向
11の
j1111皮の経時変化 ( 図 1のB点)
ρ
側関20
o
∞
2∞ 武 ' "
録 過 時 間 分
│
究 1 5 試験布│吋卜.部の i 鼠度の経時変化
( 悶 lの
c.'.'.o共立友子大学家政学部紀要 第
57号
(2011 )ρ M
胃圃司 醐制醐
分
間碕過
閉 経
∞
│
主 16 実 験 室 温 度 の 経 H 在変化
10
一ーー一一ー一一一一寸
U ‑
樹岡
o 100 200 300 400 50)
経 過 時 個 分
│
司 1 8 布 団 ( テ ン セ ル ) の 上 而 お よ び 下
ifiiにおける温 度 差 の 経
11寺変化(図
lの
B点と
C点の温度差)
41
40
調
39
38
0 2 0 4 0 回 国 国 : 1120 140 1回 1曲 2曲 臨 昼 時 間 分
1';(110
ヒータ一部上部の i 副交の経時変化 ( 医
12の
A点)
17~
一 一 一 一 一 ー 一 一 ー ー
自
1∞ 出J 3∞ 相J 5∞
経 過 時 間 分
図 7 断 熱 材 の 上 而 お よ び 下 回 に お け る 温 度 差 の 終 H 在 変 化 (
1記
11 の
A点と
B点の温度差)
4 3
.
︒ ︒
﹂
FR
閥麟
2 o ∞ 2曲 家 : X J 4曲 § ∞ 程過"..分
図 9 布│吋(テンセル)の保温力計算値の経時変
続
0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 α:1 120 140 160 100 2α3 経 過 時 関 分
以
111第
l断 熱 材 上 部 の 温 度 の 経 時 変 化 ( 1 ' ; ( 1 2 の B点)
68
27
寝具の保温性の検討
27
2.
員
U ¥
圃咽省) 40 60 80 100
目 。
140 160 II犯 200 経過開聞.分アルミ仮上古
11の温度の経時変化
(1
究
12の
D点)
24 0
│ 羽
1320 40 60 80 100 120 140 160 180 200 経過時間,分
第
2断熱部上部の極度の経
11寺変化 ( 図 2のC点)
24 0
惚
112日
自
24
nF︐制帽
BO 100 120 140 160 180 200 睡過時間φ分
図
15ヒータ一部上
J(IIおよび第
l断熱材上面における温 度差の経 l 時変化
(1主
12の A 点と B 点の温度差)
20
・
o 006 20 40 60 BO 100 120 140 160 180 200 0
量過岡田.分
医
114実験室温度の経時変化
ー っ
45ヒーター!I
40第1断..将よ111国 担
U ¥
圃咽 却 U‑幽同
1121眠燃材上111商 守一一一一一一菅ー アルミ復よ
. . IU ! I
2温25
3.5 4 断酷将司厚みcπ
断熱材の2枚 if(~\':: による各部の温度への影響
4.5 20
2.5
図
17‑69‑
20 40 似) ao 100 120 140 160 lBO 2α3 綬過時剖.分
第
l断熱材上面と第
2断熱材下而
iにおける温度差 の経時変化(凶
2B点と
C点の
i副主差)
5 0
│
究
116共立女子大学家政学部紀要 第
57号
(2011)ステムとしての有効性を示していると考えられ
る 。
4.総括
寝具の温熱特性を把握する観点から、簡便な 構成における熱移動の測定システムを開発する ために有用な基礎データを得た。本研究では、
第
1に温湿度の充分に制御された実験室におけ る実寸の敷布団における熱的特性および、より小 規模の熱移動系での熱的特性を明らかにした。
実寸の敷布団における熱移動および簡便な扱 いが可能なサイズでの断熱材における構成系で の熱移動を経時変化における安定性の観点から 検討した。相当な程度に制御された恒温恒湿の 実験室においても熱移動の平衡状態を得るには
8時間程度を必要とすることが示された。熱移 動特性を高い精度で把握することの難度が確認
された。
一方、本研究において提案した小規模の実験 系の熱移動システムでの熱安定性は、上述の実 寸の寝具を扱う実験室における成績と比肩しう る特性として実証できた。本研究の結果は、こ うした装置の熱物性試験への適用可能性を示し ていると結論される。
引用文献
1
)ふとんの保温性実験方法,
J1S L 199,
(2002) .2
)梶井宏修:敷き布団の熱的特性と接触部 の熱流および皮膚表面温度の変化につい て,第
18回日本睡眠環境学術大会抄録集,
18
,
12,
(2009).3
)犬山義昭,淀縄昌之:室温と羽毛掛ふと んの保温性の至適値推定計算式の開発,
第
18回日本睡眠環境学術大会抄録集,
18,
52,
(2009).4
)諸岡晴美,丹波雅子:肌着材料の熱およ ぴ水分移動特性,繊維製品消費科学誌,
27
( 1 1 ) ,
42‑49,
(1986).5
)原田隆司:衣服内気候の科学と衣生活,
繊維製品消費科学誌,
27 ( 5, )
23‑30,
(1986) .6
)潮田ひとみ,光松佐和子,菅井清美,中 島利誠:絹衣料の熱・水分移動特性,繊 維製品消費科学誌,
37(2),
36‑42,
(1996) .