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高節睾丸に合併した睾丸縦隔の副腎皮質

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札幌医誌 45〔4)177〜180(1976)

高節睾丸に合併した睾丸縦隔の副腎皮質     遺残腫瘍の病理組織学的検索

小田島哲世 伝法公麿 小野江為則

札幌医科大学病理学第二講座(主任 小野江平群教援)

和 田 富 幸

伊達赤十字病院泌尿器科

AHistopathologica1 Study on Adrenocortical Rest

  Tumor Adjacent to the Testis Associated         with a Cryptorchis皿

         一ACase Report一

Tetsuyo ODAJIMA, Kimimaro DEMPo and Tame丑ori ONo重

D(ψα7カπ8漉(ゾR励oZo8:y(566 ∫oπ2),&4ψoプ。 M64加Z CoZZθ98       (C雇げ:Prqズ. T O 置。の

       Tomiyuki WADA

D{ψαr翻6ノ蹉qプσ7−o♂09ツ㌧Dα 6Re4αo∬HoゆオαZ

  Arare case of adrellocortical rest tumor adjacent to the testis圭n a 12−year−old boy with a cryptor−

chism is presented.

  On section, a circumscribed, sharply demarcated nodule,4−mm in diameter, was seen in the hilus of the testis。 Histolog三cal features of the nodule were quite similar to adrenQcortical tissue.

  FrQm the macroscopical and microscQpical丘ndings, it was diagnosed as adrenocortical rest tumor adjacent亡。 the testis.

1.はじめに

 本来,副腎と睾:丸は発生学的に同一の原基に由来する が,睾丸組織における副腎皮質の迷入,そしてその腫瘍性 変化をみることは非常にまれである.

 最近,われわれは停溜睾丸を合併した睾:丸縦隔の副腎皮 質遺残腫揚adrenocortical rest tumorの一症例を経験

し,病理組織学的に検索したので報告する.

1L 症

 患者は12歳の少年で,昭和50年11月12日,睾丸の腹 腔内停溜による鼠径ヘルニアの診断のもとに,某外科で手 術を受けたが,術後,睾丸は陰嚢内に下降せず,また睾:丸 周囲の組織の腫脹が増強してきた.その後,患者は伊達赤 一卜字病院泌尿擬科で,睾丸動脈の血行障害による睾丸梗塞 を疑われ,昭和50年11月25日,再手術を受けた.手術時 の所見で,睾:丸は小さく,大きさ1.7x1.Ox1.1cm大で,

梗塞は認められず,陰嚢は肥厚していた.また,睾丸は陰 177

一回に下降していなかったので,周囲組織と共に別除さ

れた。

III.病理組織学的所見

 摘出物の割面で,睾:丸と副睾丸との間に,明らかに被膜 で囲まれた直径4mm大の淡黄色の小結節が認められた.

検鏡すると,この結節は睾:丸網の周囲で,かつ睾:丸外にあ り,線維性被膜によって周囲の組織からほぼ明瞭に境され ている,組織学的に副腎皮質の球状帯ならびに束状帯に相 当する組織から成るものであった(写真1,2).すなわち,

多角形の細胞が密に接して束状,あるいは小胞巣状に配列

し,その間には多数の拡張した類洞血管腔がある.細胞質

には極めて多量:の脂肪滴と思われる空胞状構造物,時に好

酸性に染まる微細穎粒をいれ,比較的明るい.核は円形な

いし楕円形で,比較的小さいものから大きいものまで,ク

ロマチンがわずかに核周辺にのみ認められて明るいものか

らクロマチンに富むものまで多彩で,また核小体は普通2

ないし3個認められた.全体的に細胞は畢丸のLeidig間

(2)

178 小田島他  停溜睾丸に合併した副腎皮質遺残腫 札幌医誌1975

    写真1 A 副腎皮質遺残腫瘍  R 睾丸網  E 睾丸輸出管         T 精細管   ×25

         写真2 副腎皮質遺残腫瘍の結節   ×40

細胞に良く似ているが,これに比べやや小さく,細胞質内 にはReinkeの結晶体も認められなかった(写真3).核分 裂像ならびに細胞の異型像はなく,悪性所見は認められな いが,一部の線維性被膜の形成が不完全で,結節の細胞が 周囲組織へ圧排性に増殖する傾向を有する部分も認めら

れた.

 翠丸では曲精細管の分化が著しく悪く,胎生期の状態を 示していた.内腔はほとんど認められず,大部分がセルト

リ支持細胞で占められ,また間質も多量であった(写真4).

臨床的に予想された睾丸の血行不全あるいは梗塞像は認め られず,精索近くに前回の手術の影響と思われる膿瘍形成 と非特異性の炎症性肉芽組織の形成が認められたにすぎ

ない.

 以上の所見から,停溜睾丸に合併した睾:丸の副腎皮質遺

残腫瘍と診断された.

(3)

45(4)

小田島他一停溜睾丸に合併した副腎皮質遺残腫 179

      写真3 写真2の一部拡大,右は線維性被膜   ×250

      写真4 精細管   ×100

IV.老

 冒頭に述べたように,副腎と生殖腺は,発生学的に同一 の原基である原腎に由来し,生殖腺周囲に副腎皮質の迷入 をみることはまれではない.Dah1らによれば,幼児の睾 丸周囲には7.5%〜!4.8%の割合で副腎皮質の迷入あるい は遺残が認められるという1).しかし本症例のように結入 副腎皮質というよりはむしろその過形成あるいは腫瘍性変 化と考えられる症例は極めてまれで,睾:丸生検,死後の剖

険などで偶然発見される場合が大部分である2)β).ここで 問題となるのは,副腎皮質遣残腫瘍に臨床的ならびに組織 学的に極めて良く似た所見を呈する間細胞腫Leidig in−

terstitial ceII tumorが存在することであり,両老を鑑別 するには注意を要する.そこで本症例を含め,副腎皮質遣 残腫瘍と間細胞腫との鑑別するさいの問題点について,主 に病理組織学的に若干考察してみたい.

 副腎皮質遺残腫瘍は,一般に曲精細管の外側,睾:丸網に

近接する部位に発生し,副腎皮質の束状帯に相当する構造

(4)

180 小田島他一停溜睾:丸に合併した副腎皮質遺残腫 札幌医誌!976 を示し,特徴ある細胞質,核を有する細胞から成る組織で

ある.これに対し,間細胞腫は睾丸の間質細胞であるLei−

dig間細胞に由来し,睾:丸外に発生することはなく,睾丸 内に限られる.また,副腎皮質遣残腫瘍と異なり,多結節 性に分葉化する傾向がある.個々の細胞は多形性で,かつ 大きさも一様でないが,多くの場合,比較的大型の細胞か ら成り,細胞質は好酸性で,脂質にも富む,時に,多核,

紡錘形の細胞から成る部分もある.核は円形で,普通,明 瞭な核小体を1個有する.細胞質内にReinkeの結晶体

を有する場合は,間細胞腫の有力な診断根拠となりうる が,Mosto五とPriceらによれば,間細胞腫の40%に認 められるにすぎないという4).

 このように副腎皮質遣残腫瘍とLeidig間細胞腫との間 には,若干の組織学的鑑別点が認められるが,多くの点で,

組織学的ならびに臨床的に共通の所見を示すこともあり,

実際には鑑別困難なことが多い5).しかし一般には,睾:丸 内に発生する場合,Leidig間細胞由来と考えるべきとい われている4).本症例の場合,睾丸外に発生していること と,細胞学的特徴などから,副腎皮質由来と考えるべきも のである.

 従来,副腎皮質遺残組織の過形成あるいは腫瘍として 報告された症例の大部分は,副腎生殖器症候群adreno−

genital syndromeあるいは先天性副腎過形成症congen一

ital adrenal hyperplasiaの一分症として発生したもので ある2)β).本症例のように,停溜睾:丸に合併した症例はほ とんど認められず,非常に珍しい症例といえる.

      (昭和5L3.23受理)

文 献

1)Dahl, E. V. and Bahn, R。 C.=Aberrant adrenal  cortical tissue near the testis in human infants,

 Amer. J. Path.40,587−598(1962).

2)Piyaratn, P. and Rosahn, P. D. l CQngenital ad−

 renocortical hyperplasia associated with hyper−

 Plasia of aberrant(intratesticular)adrenal tissue,

 J.Clin. Endocr.17,1245−1251(1957).

3)Burke, E. E, Gilbert, E. and Uehling, D. T.:

 Adrenal rest tumors of the testes. J, Urol.109,

 649−652 (1973).

4)Mosto丘, F. K. and Price, E. B.=Tumors of the  male genital system. Fascicle 8, altas of tumor  pathology, Armed Forces Institute of PathQl−

 ogy. Washington(1973).

5)Cohen, H。;Hyperplasia of the adrenal cortex  associated with bilateral testicular tumors. Amer,

 J.Path.22,157−173(1946).

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