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日本における研修制度についての調査、研究

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(1)

日本における研修制度についての調査、研究 : 三 重県中国研修生のケースから見る研修制度

著者 喬 紅凱

発行年 2008‑01‑01

URL http://hdl.handle.net/10076/10941

(2)

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(3)

複写可

修士論文 2009年1月

日本における研修制度についての調査、研究

‑一三重県中国研修生のケースから見る研修制度

指導教官 児玉 克哉

人文社会科学研究科 地域文化論専攻 学籍番号107M204

氏名 紅凱

(4)

はじめに

本論文作成の目的‥‥…‥‥…….…‥.……….……….…‥……..………‥‥…‥1 本論文の構成.……‥…‥‥‥‥‥……‥‥…….…………‥….….…‥..‥‥.………‥…2

第一部 研修制度について

1.1研修制度の沿革、背景‥‥‥‥.‥‥…‥‥.‥.‥.‥.‥.‥.‥.‥.‥.‥.‥.…‥.‥‥…….3 1.2研修制度の目的………….……‥‥‥………‥‥.‥....‥‥…‥‥‥‥‥‥‥‥‥.4

1.3研修生の要件…‥‥.…‥.‥‥…‥‥‥‥‥…‥‥.‥‥…‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥.‥.‥‥4 1.4受入可能な研修生の人数…‥‥.‥‥‥……‥‥..………‥.…‥.‥‥‥‥.…….…

.5

1.5研修生受入の流れ…‥.…‥‥‥…‥………‥.‥.……‥.‥‥………‥‥‥6 1.6研修生と実習生の比較‥‥‥‥‥‥…..‥‥‥…….……‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥……‥‥‥7

1.7 中国研修生を受入れる方法‥‥.‥‥‥‥‥……‥‥‥……‥‥‥‥‥‥‥………‥…‥8 1.8研修制度の目的による中国研修生を受入れるメリット‥….…..….………9

第二部 外国人研修制度の現状

2.1研修生人数の増加……‥……‥‥………..……‥…‥…‥……‥‥………10 2.2研修生の国籍構成…‥‥‥………‥‥‥‥…‥…‥…‥‥.…….…‥….…‥‥‥…13 2.3研修生の生活状況……‥‥‥……..…….‖‥‥.….…‥‥…‥‥…….‥‥‥‥‥………16 2.3.1不法滞在になった研修生A…….….…‥………‥‥………‥‥‥‥‥‥‥……16 2.3.2診察治療を受けることができず強制帰国させられた研修生B..‥‥‥.…‥‥‥20

2.3.3自由はない研修生C…‥‥….…‥‖..…‥…….….…..‥‥………….….……….…..23 2.3.4残業時給380円の研修生D‥.……‥‥‥……‥‥‥………‥…‥…‥‥.……‥‥‥25 2.3.5仕事場でいじめられる研修生E..…‥‥………‥……‥…‥….……‥‥.27 2.3.6研修生の全体像……‥……….…………‥……….……‥……‥‥.…‥29 2.4研修制度の利用現状..‥………‥…….…‥.….…‥….…‥‥‥……‥‥….‥…‥‥‥30

(5)

第三部 研修制度に対する疑問及び分析

3.1研修制度に対する疑問及び分析‥‥‥…‥………‥‥……‥…‥‥……‥‥‥‥‥‥32 3.2研修制度の問題のまとめ……‥……‥..…………‥…‥‥‥………….…………39

第四部 今後の研修制度の展望

4.1新制度による中国研修生を受け入れるメリット‥…‥‥‥‥…‥………‥.…‥‥41 4.2今後の課題.………‥‥‥………‥‥………….‥……….…….………….……41

(6)

はじめに

本論文作成の目的

外国人研修制度(以下は研修制度と略する)は日本にだけしかない制度である。

日本では少子高齢化の進展により、労働力不足の問題が深刻化になり、多くの中小企業 を苦しめている.一方、毎年数多くの外国人研修生が日本に来て、中′j、企業で働いている。

外国人研修生の大半が中国研修生である。研修生は日本の中小企業を支えていると言って いいほどである。

日本は国際協力と人材育成のために、研修制度を創設した。研修制度によって多くの日 本企業は中国を始め発展途上国から研修生・技能実習生を受入れており、知識の学び及び 技術の修得をさせて、研修生は帰国後研修の内容を母国で活用することができる。研修制 度は労働力不足、技術伝承、販路拡大、経営不況の悩みを持つ数多くの中小企業を悩みか ら脱出させるための制度であり、研修生、技能実習生に対しては、受入れ企業において適 正な研修及び技能実習の実施が求められる。

だが近年労働力不足の進展に伴い、大量の研修生、実習生が技術修得、技能移転のため でなく、時給300円という単なる安価労働力として使われてきた。研修目的ではない研修 生が年々増加し、研修制度を悪用し不正利益を求める零細企業も増えている。中国語では 研修生のことを「労務輸出」と呼ばれ、労働力を輸出するという意味である。数多くの中 国の送出し機関はビジネスとして研修制度を利用し、研修生に多名目多額の料金を徴収し て研修生を搾取している。研修制度はすでに本来の目的に背馳している。

送出し側の問題もあるが、受入れ側の姿勢も問題がある。日本企業が研修計画はない、

また研修計画に沿った研修を行っていない。やはり「研修生」に「労働」をさせて,さら に「残業」までさせ、挙句の果て、残業代をピンはねすることが多くて、問題にならない

ことはあり得ない。それだけでなく研修生・実習生に対する人身虐待、人権侵害、最低賃 金法違反の低賃金支給などのトラブルが多発し、研修生の医療保険問題、行方不明、意外 事故、不法滞在も大きな社会問題となって指摘されている。

結局研修制度は、受入れサイドの意思で研修生はいつでも労働力となり得る不完全な危 険な制度である。 ※1

研修制度は日本の労働力不足と人材危機を解決する良策になるのか?

本論文は研修制度の実態を明らかにし,研修制度はいびつな制度で問題ある制度である ことを明らかにし、研修制度の問題を分析しその解決策に提言する。そして今後の研修制

※1 『外国人研修生 時給300円の労働者一壊れる人権と労働基準』 50ページ

(7)

度の課題について展望することを作成の目的とする。

本論文の構成

上記の目的によって、本論文は以下の構成になっている。

まず、第一部では、外国人研修制度の沿革、背景、研修制度の基本内容を紹介し、特に 研修生と実習生の違いについて説明する。

次に、第二部では、グラフと図表を用いて研修生の人数増加、研修生の国籍構成、研修 生の生活状況、研修制度の利用現状から外国人研修制度の現状を説明する。そして研修生 の実際ケースに対するインタビューを通じて研修生の全体像を把握する。

それから、第三部では、インタビューから生じた研修制度に対する疑問を分析し、研修 制度の存在する問題点をまとめる。そして研修制度の問題の解決策に提言する。

最後に、第四部では、中国の労働力市場を紹介し、今後の研修制度を展望し、これから 多文化共生の社会作りを向けるいくつかの課題について検討する。

‑2・

(8)

第一部 研修制度について

1.1研修制度の沿革、背景

外国人研修制度(研修制度と略する)とは日本の優れた技術技能を、実務を通して途上 国の若い研修生に移転することを目的として、創設された制度である。日本の企業が研修 生を受入れることは、国際交流と国際協力の一環として、研修生の母国の技術発展に寄与 することであり、国家間の技術交流を推進することである。研修生は1年間の研修終了後、

技能検定試験を受験し合格すると、技能実習生として更に2年間企業で技術の習得を行う ことができる。

研修制度は1950年代後半から始まり、 1960年代後半ごろから多くの日本企業が海外に 進出することに従って、外国人研修生を受入れる制度を実施するのが盛んになってきた。

そして1981年に研修生は留学生の枝分かれとして在留資格が定められた。海外に進出した 多くの日本企業は、現地法人や合弁会社、取引関係のある企業の社員を日本に呼び、関連 する技術や技能、知識を自社内で効果的に修得させた後、その社員が現地の会社に戻り、

修得した技術などを発揮させるために外国人向けの研修を実施していた。

こうした実績の積み重ねの中で、日本では1980年代末,少子高齢化の進展,ボーダーレ ス社会の出現,高度情報化の進展および労働力不足等により、外国人労働者問題にどう対 応するかという問題が政治、経済、社会等の場で大いに議論されていた。

その結果、日本政府は1990年に従来の研修制度を改正し、日本が技術移転により開発途 上国における人材育成に貢献することを目指して、より幅広い分野における研修生受入れ

を可能とすることになった。

さらに、 1993年日本政府は,研修制度を拡充する観点から、研修を修了し要件を充足 した研修生に、雇用関係の下でより実践的な技術、技能等を修得させ、帰国後母国の経済 発展を担う「人づくり」のために技能実習制度を創設した。

現在、日本の多くの中小企業はインド、マレーシア、中国そして東南アジアの経済発展

途上国の研修生を受入れている。日本入国管理局の統計によると、 ★1研修資格の新規入国者 数は平成15年64,817人、平成16年75,359人、平成17年83,319人、平成18年92,846

人、平成19年102,018人で、年々増加している。

★1データは日本入国管理局̲http://www.moj.go.jp/mKAN/nvukan7̲8・2.Ddfより

(9)

1.2研修制度の目的

研修制度の目的は単純労働力として受け入れるものではなく、国際的な人材育成として 実施することであり、研修生・技能実習生は帰国後母国経済発展のために修得した技能を 発挿させることである。

開発途上国等には、自国の経済発展と産業振興のために、青壮年の働き手に先進国の進ん だ技術・技能や知識を修得させようとするニーズがある。このようなニーズに応えるため に、アジアを中心に外国の青壮年労働者を一定期間日本の産業界に受け入れて産業上の技 術・技能・知識を修得してもらう仕組みが、研修・技能実習制度である。人材育成の目的 だけでなく、日本の受入れ企業等にとっても、外国企業との関係強化、経営の国際化、社 内の活性化、生産‑の貢献をすることも研修制度の目的の一つである.

『外国人研修生 時給300円の労働者一壊れる人権と労働基準』 5ページ目に「研修制 度は本来、アジアを主とした外国の人に、日本の技術などを習得させるという名目で、で きた制度である。 」と書かれている。

しかし、実際に現在研修生は単なる安い労働力として使われている。多くの中小企業は 日本の労働力不足問題に悩まれて、国際競争力を高めて、人件費を削減するために、研修 制度を不正に利用している。

1.3研修生の要件

研修生の受入は要件がある。どの企業でも研修生を受入れることができるというわけで はない。研修生は18歳以上の外国人でなければならない。そして母国での修得が難しい技

術・技能を修得するために、日本で研修を受ける必要がある。それから研修終了後母国‑

帰り、研修内容を活かせる業務に就く予定がある者でなければならない。

研修生は技能修得を目的とするので、研修生を受入れる企業は相応の経験を持つ従業員 を研修指導員、生活指導員とする必要がある。そして研修生のためにタイムカード、賃金 台帳を完備しなければならない。研修生に対して不正行為をしてはならない。また研修生 の残業や休日出勤(実習生は可)がないか、生活費・給与は適切に支払われているかを確 認する必要がある。そして研修生のために労働保険・社会保険を加入する必要がある。

・4・

(10)

1.4受入れ可能な研修生の人数

研修生を受入れ可能な人数について,入国管理法に上限を規制されている。原則として、

受入れ企業の常勤職員20名に付き、研修生1名の受入れが可能である。

研修生受入れ可能人数

従業員数 研修生受入可能人数

2∠名以下 従業員数と同数

3‑50名 3名

51‑100雀l 6名

101‑200名 10名

201‑300名 15名

301名以上 従業員の1/20

入国管理法研修生受入上限規制によって作成

大手国際企業の国際間社内研修においての研修生人数について、特に規定はない。実際 に積極的に研修生を受入れる企業の大半は中小企業である。これらの中小企業は研修生を 安い労働力として使っているから、毎年一定人数の研修生を受入れる企業が多い。筆者が 調べたところ、三重県では研修生10名以下を受入れている企業が一番多い。

(11)

1. 5研修生受入れの流れ

研修生1年間と実習生2年間、合わせて最大3年間の滞在ができるo 入国してから最初 の一年間は「研修」という在留資格で、主に知識を学ぶことであるo 4ヶ月程度の座学と8 ケ月程度の実務研修をするo研修終了後、試験を受ける。合格する人は続けて技能実習に 移るo 不合格の人は帰国する.一般的には90%以上の人は合格できるようになっている.

二年目から技能実習生になり、雇用契約をつけて在留資格も「特定活動」に変更するo この時点で実習生は労働者になり,労使関係が成り立っ。同時に給与,所得税、保険など 法律上の権利と義務が発生する。

技能実習期間は2年間とするo実習終了後,帰国しなければならないoそして、帰国後3 年の間再び研修生として日本入国できないと、法律上に定められているo

外国人研修・技能垂習の流れ

最長3年闇

+‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ll‑I‑一‑I‑‑‑‑‑‑‑‑‑ll‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑1‑‑‑‑一一一一‑‑ll‑‑‑一一‑‑+

通常12か月 通常24か月

‑‑‑‑‑一一‑‑I

研働み

研修侍了穏、技 能弄習に移行

=====ニコ

研幅幡了、帰国

在留資格変更、

雇用契約の締結

【在J;(a"資格「研悔」】

技能実習

技能実習幡了、

帰国

【在留達租「特定浩払」】

出典:財団法人国際研修協力機構http://vvw. jitco.or. jp/system/iH]g/flowchart. gifより

‑6‑

(12)

1.6研修生と実習生の比較

研修生と技能実習生(以下は実習生)をよく混清されるが、両者は大きな違いがある。

研修生は知識を学ぶことが目的であるため在留資格は研修である。研修期間は1年間で ある。研修生は労働者ではないため、収入はない。その代わりに毎月生活費に相当する研 修手当を給付される。収入はないから、当然所得税も課税対象外である。そして研修生は 労働者ではないから、残業もできない、休日労働もできない、労災保険と雇用保険に適用

しない。

実習生は労働実務を通じて技術等を修得するから、在留資格は研修ではなく,特定活動 である。在留期間は最長2年間である。実習生は労働者であるから、毎月働いた分の賃金 が給付される。収入があるから、所得税が徴収される。実習生は労働力であるから、残業 もできるし、休日労働も可能である。ただし、この場合、労使協定が必要である。実習生 は労災保険と雇用保険に適用する。

注意しなければならないのは研修生が労災保険と雇用保険に適用しないため、総合保険 を加入する必要がある。実際に研修生は総合保険に加入していないため、重症と急病時の

診察治療を受けることができないトラブルが多発している。今後受入れ企業は研修生のた めに総合保険を加入することを義務化する必要がある。

研修・技能実習比較表*2

研修生 実習生

目的 技術.技能.知識を学ぶ 労働を通じて実践的に技術等を修得する

在留資格 研修 特定活動

在留期間 1年間 最長2年間

労働者性 非労働者 労働者

残業.休日労働 できない できる

給付 生活費 労働賃金

所得税 対象外 徴収される

労災保険 基本的に対象外 適用対象

雇用保険 対象外 適用可能

年金 国民年金保険が適用可能 厚生年金保険を適用

民間保険 総合保険 総合保険

'2 『外国人研修生 時給300円の労働者一壊れる人権と労働基準』 94ページ表2及び首 都圏商工建設協同組合中国研修生受入組合http://www. ssk‑group. net/ginou/jissyu. htm により作成

(13)

1.7中国研修生を受入れる方法

1. 7. 1企業が単独で研修生受入れ事業を行う場合(企業単独型)

ノゝ.

ll

合弁企業の 親企業

相当の引取の ある企業

1. 7.2団体を通じて研修生受け入れ事業を行う場合(団体管理型)

第一次受入れ機関

商工会 地方公共団体

第二次受入れ機関

会員の 中′ト企業

第一次受入れ機関

事業協同組合 関連財団法人

第一次受入れ機関

農業協同組合 地方共同団体

第二次受入れ織間

組合員の 中小企業

第二次受入れ格粛

農業を営む 組合員

企業単独での 受入れる場合 の条件:企業の 常勤職員20名

に対し、研修生 1名の受入れ が可能。

農業研修生を受入れ る場合の条件: 1組合 員に付き研修生2人/

( 『外国人研修生 時給300円の労働者‑壊れる人権と労働基準』 , JITCO国際研修協力機 構httrl://www.jitco.orJp/卵Sbm/data/acαT)tanCe.Ddt 8こより作成)

上記の図のように、中国研修生を受入れる方法は主に二つあるo 一つは大手企業あるい は中国に進出する企業が直接研修生を受入れて管理する方法である。これは国際企業の社

内研修とは違って、中国の送出し機関を通しての受入れである。

ー8‑

(14)

もう一つの方法は、日本の商工会、公共団体、協同組合といった受入れ機関を通して研 修生を受入れることが可能である。この方法は日本の多くの中小企業に適用する。この場 合、研修生を受入れる機関は研修生・実習生の健康管理と生活指導をし、実際に研修期間

中の研修内容、実習期間中の労働管理においては現場の企業が行う。

言わなければならないのは、商工会、公共団体、協同組合等を通して研修生を受入れた 場合、研修生の保険未加入、時間外の研修、契約通りの研修を行わないというようなトラ ブルが多発することである。協同組合の例をあげると、協同組合と企業間の協力不足、責 務を果たしていないことによる研修生被害問題が頻繁に起きている。今後研修生を受入れ

る機関と実際に研修をさせ、実習生を雇用する企業の間にどう責務を明確にして切実に果 たすかということも研修生問題の課題の一つである。

1.8研修制度の目的による中国研修生を受入れるメリット

まず中国の地方の若者は、素直で仕事に取り組む姿勢が真面目である。研修生を受入れ ることで、企業のベテラン従業員や新入社員、アルバイト・パートにも、良い影響を与え るわけである。すなわち向上心旺盛な若者の影響によって企業の雰囲気が変わり、活性化 を実現することができる。

次に研修生は企業の職種の経験者である。また、日本語(日常会話、専門用語)、必要な 技術等を入国前に教育を受けることが普通なので、新入社員のように‑から教育する必要 はない。つまり基礎技術を習得済みのため、教育が容易である。

それから中国進出の際、幹部候補生として期待できるメリットがある。中国進出の際、

人材の確保と教育は非常に難しいことである。研修生を帰国後に自社で雇用すれば、その 間題は一挙に解決できる。現地採用一切なしで、日本で研修を行った若者を随時中国工場 で雇用している企業もたくさんある。

そして研修生として来日したいという若者は、中国に大勢いる。募集人数に対して3倍

‑1 0倍の応募があるので、優秀な人材を受入れることが可能である。また、来日後の条 件面についても、該当の組合と中国側送出機関の対応があるので、研修生・実習生の指導 に専念できる。そうすると、安定した人材を確保することができる。

最後に研修生・実習生は帰国後様々な面で企業の発展に貢献することが期待できる。

(15)

第二部 研修制度の現状

以下は研修生の人数増加、研修生の国籍構成、研修生の生活状況、研修制度の利用現状 から外国人研修制度の現状を見てみようD

2. 1研修生人数の増加‑‑一研修生は年々増加している

まず研修生の人数増加について,研修資格での新規入国者数が年々増加しているD研修 生の登録者数を見ると、平成14年は39,067人で,外国人登録総人数の2.11%を、平成18 年は70,519人で、外国人登録総人数の3.38%を占めているo平成19年は88,086人で、外

国人登録総人数の4.1%を占めているD 平成19年研修資格での登録者数は五年前の平成14 年に比べて倍以上になっている。)

入国管理局の統計により作成

前年に比べて研修生登録者の増加数は平成15年5,397人、平成16年9,853人,平成17 年何らかの原因でマイナス210人になり,平成18年16,412人で、平成19年17,567人あ ったo

・10・

(16)

入国管理局の統計により作成

研修資格で新規入国する外国人人数が平成14年柱5万8534人(新規入国者数全休の

1.26%)、平成18年は9万2846人(新規入国者数全体の1.38%)で、 3万4312人の増加 であり、平成19年に至って10万2018人である。新しい研修生は毎年8000人くらいのス

ピードで増加している。平成19年は平成18年に比べて9172人(9.9%)の増加で、過去 最高を記録したo

(17)

入国管理局の統計により作成

平成16年研修資格の新規外国人入国者数は平成15年より10,542人増加した。平成18 年から毎年前年に比べて9000人以上のペースで増加しているo

ー12‑

(18)

2. 2研修生の国籍構成一中国研修生が最も多い

次には平成15年から平成19年までの研修生の国籍の推移状況を見てみよう。

入国管理局の統計によると、中国研修生の数は他の国と比べて遥かにに多いc 平成19 年中国研修生新規入国者数は6万8,188人で、研修生新規入国者全体の66.8%を占めてい

るoその次は、ベトナム6,606人(6.5%)、インドネシア5,924人(5.8%)、フィリピン5,843 人(5.7%)、タイ4,022人(3.9%)の順となっている.現在日本の中′J、企業を発展途上国 の研修生(特に中国研修生)が支えているとよく言われている。

(19)

入国管理局の統計により作成

日本全国では, 2006年研修生除数は70,519人o 中で中国研修生は52,901人で,給数の 75.02%を占める。 2007年研修生総数は88,086人o 中で中国研修生は66,576人で、総数の 75.58%を占める。

三重県では, 2006年研修生総数は2,982人o 中で中国研修生数は2,218人で,終数の 74.38%を占める。 2007年研修生総数は3,624人。中で中国研修生は2,770人で、 76.43%

を占める。

全国範囲においても三重県においても中国研修生が研修生総数の3/4を占めている。

114・

(20)

(人)

法務省の統計(2008年8月13日公表)により作成

法務省の統計(2008年8月13日公表)により作成

(21)

2. 3研修生※1の生活状況‑実際ケースとインタビューから見る研修制度 ケース1

2.3. 1不法滞在になった研修生A

研修生A

中国江蘇省出身、 30代前半の女性、 2005年7月に中国に夫と9歳の男の子を残したまま 来日、三重県鈴鹿市にある大手自動車メーカーの下請け企業の硝子工場で就労していた.

2008年7月に三年間契約満了で帰国のはずだったが、 2008年8月から不法滞在になり、

現在行方不明。

筆者は2007年2月から研修生Aと中華料理店で知り合って、 2008年6月までよく家電 製品の購買で通訳を手伝った。 2008年7月帰国予定日に大阪関西国際空港‑の途中で不法 滞在になってしまった。当日研修生7人が事前に決まった時間に大阪関西国際空港で集合

し帰国することになっていたが、研修生Aは途中で逃げて、行方不明になった。受入企業 の担当者は同行しなかったo

筆者は本論文作成のため、研修生の生活について2008年2月に研修生Aにインタビュ ーをしたことがある。以下のとおりである。

日時:2008年2月10日(日)午後2時‑午後4時半 場所:鈴鹿市、会社が保証人のアパート、 4人室

メンバー:研修生A、同室のZ、 S、 L、 Lの彼氏T (別の会社の研修生、江蘇省出身)、

筆者、計6人

筆者:なぜ他の国ではなくて日本に来たのですか?

研修生A:仲介で来た。仲介所いっぱいあるから、みんな日本に来た。

筆者:日本が好きですか?

研修生A :お金のために来たのだから別に好き嫌いはありません。

筆者:中国では就労できないですか?江蘇省には日系の工場が多いでしょう?

研修生A:日系工場非常に多いよ。就労はできるけど、お金少ないから、全然貯まりませ

ん。

筆者:中国では毎月いくらぐらいもらえますか?

研修生A : 1000元。 (1000元≒14800円、当時の為替レートで計算) 筆者:もっと多いところはないですか?

研修生Z:多いところは1200元あるけど、 1000元はまあまあいいよ、少ないところは 800元しかないよ。

※1研修生・実習生のことをまとめて研修生とする。

・16‑

(22)

筆者: 1000元なら生活できますか?

研修生A :生活はできるけど,子どもの教育費と親の扶養費は出ないよ。

筆者:日本ではお金が貯まりますか?

研修生A:貯まるよ。うまくいけば三年後、 200万円貯まるよ。 (大体13万5000元に相 当する、当時の為替レートで計算)

筆者:日本に来て三年契約ですか?三年後中国に帰らなければならないですか?

研修生A:一年目は研修,二年目から二年間実習、だけど、試験に合格しないと実習生に なれない。まあ試験は簡単だからよほどの事情がなければみんな合格するよ。

筆者:研修生と実習生と何が違うのですか?

研修生S:研修生は生活費で月に6万円しかもらえない。そして残業できない。実習生は 月に13万円もらえる、残業もできる。

筆者:じやあ、研修生より、実習生のほうがもっとたくさんお金が貯まるというのです

ね。

研修生A:そうだけど、二年目から負担も重くなるよ。一年目の家賃を会社が払ってくれ るから、私たち4人一緒に生活しているから、光熱費を4人で負担して、一緒に食事して、

1人毎月5万円が貯まる。一年後新しい研修生がこの部屋に入ってくるから、私たちは自分 で家賃を負担しなければならない。給料は13万円もらえるけど、4人の部屋は少ないから、

3人で家賃、光熱費を負担して、一人8万円が貯まれば最高だよo物価も上がっているから、

節約しなければならない。こう計算すると、一年目の貯金は50万円、二年目と三年目は80 万円ずつだと、三年で210万円を貯める。帰国の飛行機代は自分で払うから、買い物の後 はちょうど200万円が貯まりますo これは地元なら10年かかっても貯まらないよo私は半 年に一回家に送金しているけど、手数料がかかるから、これから年に一回送ります。

筆者:そう言えば日本に来てよかったのですか?

研修生L:そんなことないよo研修生の生活は辛いよo仕事は一番たい‑んで、お金は一 番少ないほうだ。日本人のアルバイトと比べて時給が少ないよ。

筆者:時給はそれぞれいくらですか?

研修生L:私たちは毎週日曜日しか休めない。毎日10時間働いて月に13万円しかもら えない。一日10時間、週に六日、月に25日働いて、 13万円もらえる。日給に換算すると、

5200円で、時給に換算すると、 495円で、残業時は618円、平均時給520円だ。 3時間残 業すると、平均時給は520円よりもっと低い。残業すればするほど給料が少なくなる。ア

ルバイトの人は時給1000円で,残業時は1250円だよ。まったく同じ仕事をしているのに 私たちは半額しかもらえない。

研修生A:まあ、仕方がない。来る前に中国の仲介所の説明を受けて、 3年間だけだから、

苦労だけど、我慢してがんばったら中国よりお金貯まるからと思って来た。来てから事実

が分かってきて、平等じやないと思うようになってくるよ。まあ仕方ないわ、つまり研修 生というビザはもともとこうなんだ。

(23)

筆者:たしかに、同じ仕事をしているのに、違う給料をもらうのは不平等だけど、日本 の研修制度というのはこんなものですね。仕事が大変で、給料が他の人と比較になりませ んが、自分の家よりお金貯まるのがいいですね。

研修生A:最初に何か技術を身につけられるかなと思って日本に来たけど、実はそうじや ない。研修生の仕事は主にライン作業だ。流れるスピードが速くてすこしだけでも息抜き の暇はない。そして、一目何回も、一回何時間続けるなんて、毎日全身痛くてたまらない。

それだけじやなくて、扱っているものはほとんど健康に悪い有害化学気体が出る部品だよ。

今もう慣れているけど、始めの時その匂いでみんな舷草したり、指先の部分が脱皮して関 節が曲がらないほど痛かったよ。目も痛くてたまらなかった。みんな同じ毎日を送って、

同じ生活を繰り返す。そしてミスを出したら社員に怒られることが多かった。みんな月曜 日から日曜日を期待する。日曜日は休めるけど、全身痛くて、外でぶらぶら散歩する気持 ちもないし、精神的にもさびしくて辛いし、本当に死ぬほどだった。夜眠れなくて、国際

電話の後で激しく泣き出していた。

今もう仕事慣れてみんな作業が早いし、ミスを出さないから、怒られることはない。工 場内の空気は健康に良くないから、社員はあまり入ってこない。コンピュータで監視する だけ.アルバイトの人がよく変わるよo すぐやめる人が多いから.忙しい時は社員の人が お菓子とかたまに持ってくるよo 日曜日はみんな一緒にスーパーに行ったり、近くで散歩

したり、ちょっと遠いところは自転車で行ったりする。だんだん近所が詳しくなって、他

の工場の研修生と食事したり、付き合ったりしている。逆に新しい研修生の泣き面を見る とその気持ちがよく分かる。彼女たちは地獄の脱出がまだ一年だから長いよ。

一年目は本当に辛かったけど、時間も本当に速いから、帰国まで残り半年ぐらいだ。

筆者:家に帰ったらまた日本に来ますか?

研修生A:この三年間は本当に地獄だ。お金は貯まるけど、生活は地獄だ。単身の人はも

う二度と研修生として来ないと思うよ。私は子どもの母親だから辛くてもお金貯まるなら もっと残りたいけど、研修生として三年間契約だから三年後帰らなければならない。そし

て法律上にも五年以内再び研修生として日本に入国できないそうだ。なぜか分からない。

私は帰りたいけど、せっかく慣れたから、もっともっとお金を貯めておきたい。

日本に来て三年間、まだ観光地に行ったことはない。お金、時間あればいつか奈良、京 都、東京、大阪に見に行きたいな。

筆者:会社はどこか連れて行ってくれないのですか?

研修生S:一回バスで愛知県の山の奥‑紅葉を見に行ったことあるけど、お弁当もついて なかったし、つまらなかったよ。写真を撮っただけだ。その前日は夜九時まで残業したか ら、まだ筋肉痛が残っていて、紅葉が実にきれいだけど、気持ちに合わなかった。

筆者:日本に来て、後悔していますか?

研修生A:後悔はしてないけど、辛いよ、とくに子どものことを思う時、すぐに会いたい のに会えなくて。まあ、でもお金のために来たのだから、全然後悔しない。もし、日本人

・18‑

(24)

と、他のアルバイトの人と同じ待遇だったらよかった。研修生は実際に技術とか何も身に つけない、ただの安い労働力じやない?

研修生L:今度チャンスあれば留学に来たいよ。勉強もできるし、アルバイトも給料いい から。

研修生Z:私は不法でも日本に残りたいよ。愛知県の工場に知り合いがいるよ。彼女はビ

ザ切れているけど、毎日工場で働いて、月に30万円以上稼げて、40万円稼げる時もあるよ。

一年一回200万円を家に送金しているよ。

筆者:不法滞在は危ないでしょうo入管につかまったら強制送還になりますよ.

研修生A:私もそんなこと聞いたことあるよ。相当のリスクかかるけど、両親の扶養費と 子どもの教育費のために、冒険してもやってみたい。

筆者:不法滞在の人は仕事が見つかりますか?送金できるのですか?

研修生A :三ケ月分の給料を出したら紹介してくれる人がいっぱいいるから、大丈夫よ。

送金も問題ない。手数料高いだけだ。

筆者:それはまた地獄に落ちるじやないですか?三年間日本で貯まったお金は中国でど れぐらい使えますか?

研修生Z :私が鎮江市だからこのお金で生活はまあまあいいけど、子どもの教育費は高い から、五年後このお金がなくなったらどうしよう。

研修生S :私が無錫出身で上海に近いから物価が年々上がってきて、生活はたい‑んよ。

いくらお金が貯まると言っても、この三年間はこれからの一生の保障にならないよ。でも、

研修生は三年後帰国することと決められているから、もっとお金を貯めたいという時に、

不法滞在も仕方ないでしょう。

ケース1のまとめ

研修生は労働能力と労働意欲があるが、続けて働くことができない。そして研修生・実 習生は三年後帰国してから三年の間再び研修生として入国できないと法律上に定められて いる。これは後で起きた帰国したばかりの研修生を再び日本に招いてしまう問題の源では ないか。本当に技術を学んできた研修生・実習生には三年間は短すぎて、最長3年間とい

う規定の意味は不明確である。今後研修・実習の期間を延長することを期待する。

(25)

ケース2

2.3.2診察治療を受けることができず強制帰国させられた研修生B

研修生B

中国江蘇省出身、 30代後半の女性、 2006年3月来日、三重県鈴鹿市にある大手自動車メ ーカーの下請け企業のシートベルト工場で就労していた。研修契約は2007年3月で契約満 了更新し、実習契約は2009年3月までであるが、病気治療の理由で2008年5月労働組合 に強制帰国させられた。

筆者は2007年クリスマスの日、研修生Bと鈴鹿市にある整形外科で知り合って、診察を 受ける時の通訳を手伝った。

当日の夕方研修生の医療保険についてインタビューをした。

日時:2007年12月25日(火)午後6時‑午後7時半 場所:鈴鹿市、会社が保証人のアパート、三人室

メンバー:研修生B、同室のW, GとK (同じ会社の研修生、隣の部屋)、筆者、計5人

筆者:なぜ1人で病院に来たのですか?会社の担当者、通訳の人が来ないのですか?

研修生B:頼んだけど、来ないよ。

筆者:なぜ私費で通院しているのですか?研修生の保険は使えないのですか?

研修生B :保険料は毎月給料から引かれているけど、病気になる時は使えない。

筆者:なぜですか?

研修生B:分からない。何回も聞いたけど、答えてくれない。

筆者:研修生の担当指導員はいるでしょう?

研修生B:いないよ。仕事については課長が相談に乗ってくれるけど、仕事以外のことは聞 いてくれない。保険料は毎月の給料から引かれているけど、病気になったら労働組合に行 ってくださいといつも会社の人にそう言われる。

筆者:研修生の生活管理は誰がするのですか?

研修生B:管理は労働組合だけど、何もしてくれない。会社の上司に連絡してくださいとい つもそう言われる。結局会社と労働組合の間でたらい回しをしている0

筆者:じやあ、 1人ではなくて,みんな一緒に労働組合に相談に行ったら?

研修生B:何にもならないよ。

筆者:みんな万が一病気にかかったらどうするのですか?

研修生B:風邪、頭痛なら自分で診察を受ける。会社に戻って医療費申請書を提出する。経 理審査が通れば3ケ月か半年後診療費が下りてくる。上限あるから、超えた分は自己負担。

筆者:日本語が分からない時にどうするのですか?

・20・

(26)

研修生B :会社も組合も面倒を見てくれないから、みんな一生懸命に日本語を覚えている。

診察を受ける時お互いに助け合って、電子辞書を調べながら、分かる単語だけ使って医師 と会話する。

筆者:それは大変でしょうね。

研修生B.・診療費が下りてくれれば大変でもかまわないけど、私の場合は難しい!

筆者:なぜですか?

研修生B :会社から週に二回の通院が多いと、労働組合の人に診療費上限を超えたよと怒ら れている。私も仕方ないよ。休みを取って損しているし、病院にいきたくないけど、首が

痛くて、ライン作業で全然我慢できないよ。夜も痛くて眠れなくて、もうこれ以上耐えら れない。

筆者:何の病気ですか?何時から?

研修生B:ニケ月前からだけど、ずっと我慢してがんばってきたよ。最近だんだん痛みがひ どくなって我慢できないから、通院を始めた.診断書には変形性頚椎症と書いてあるけど、

どんな病気か良く分からない。医師の話がよく分からないけど、大体毎日頭を下げる作業 だからこんな病気になったそうだ。しばらく休んでみてくださいと医師に言われたけど、

休めない。休んだら給料が少なくなるし,皆勤手当てもなくなる、そして、会社と組合に 怒られる。 2日前に会社の事務所で、あなたは中国でこの病気にかかって、病歴を隠して診 療を受けるために日本に来たのですか?診断書を提出してくださいと、社長に言われた。

私は今までの病歴を隠していないよ。日本に来て一年半働いてこんな病気になった。本当 に痛みに苦しんでいるから、早く治って仕事に戻りたい。病歴を隠したと言われて辛い思 いばかりをしている。

研修生W:そうだ,彼女は本当にかわいそうだ。毎日ライン作業だから、みんな首が痛い

よo だけど、彼女が一番ひどい。

研修生G:もし来週からまだ病気のふりをするなら、強制に中国に帰らせると、会社の人 に言われたよ。

筆者:まず医師に相談してみましょう。この病気になる原因、完全に治るかどうか、これ から通院するか、何か薬をもらえるかを医師に相談してから、診断書を提出したら?

研修生E:私たちは日本語が分からないから、相談できないし、会社と組合の人は責任を 取りたくないし、病院に行かせないようにしているのだ。

研修生B:中国ではこのような症状はなかったよ。昨日はまた痛みが出て病院に行きたかっ たが、休みを取れなかった。今日はどうしても我慢できなくて、病院に行ったのだ。

2008年7月 研修生Bに連絡したが、連絡がとれなかった。

2008年8月 研修生Bが強制的に帰国させられたことを同室の人から聞いた。

(27)

ケース2のまとめ

研修生の段階で労災保険・雇用保険は適用しないが、実習生になったら労災保険、雇用 保険およびほかの社会保険は適用するはずである。そして毎月の保険料はちやんと払って いるのに、病気の時は通院を許可しない、受診をさせないことは理解できない。診察費の 上限について会社、労働組合によって違っているが、上限を超えた理由で診察を受けさせ ないことは研修生の権利を侵害することである。

研修生Bは通院のために仕事を休むことは、会社にとっても自分にとっても損をするが、

それは研修生Bが望ましいことではない。研修生を受入れるなら、受入れ機関(企業・労 働組合)は研修生のために安全衛生対策を講じる責務があり、研修生の健康管理、生活指 導を行う責任がある。

しかし、受入機関はそれがきちんとできていない。そして研修生が病気にかかった時、

会社と労働組合は人道的な援助もしないばかりか、お互いにたらい回しをしている。これ は絶対長い目での対応ではなく、労働力を確保する方法ではない。これから研修生・実習 生が安心するような就労環境づくり、そして研修生・実習生を労働力として公平、平等な 取扱いをすることについて、多くの受入れ機関に考えてほしい。

‑22‑

(28)

ケース3

2.3.3自由はない研修生C

研修生C

中国遼寧省出身、 20代後半の女性、 2007年3月来日、三重県鈴鹿市にある大手自動車メ ーカー関係の工場で就労している。実習生になったばかりだ。

筆者は2008年6月、研修生Cと鈴鹿市にある携帯ショップで知り合って、携帯電話修 理の通訳を手伝った。

修理受付の後簡単なインタビューをした。

日時:2008年6月15日(日)夕方6時半‑夕方7時 場所:鈴鹿市にある携帯ショップ前

メンバー:研修生C、同室のJ、筆者、計3人

筆者:なぜ自分のパスポートを会社に返さなければならないのですか?

研修生C :研修生のパスポートは会社が保管しているから、必要な時だけ貸出ししている。

筆者:つまり必要な時に自分のパスポートを会社に貸してもらって、使い終わったらまた 会社に返還するということですか?

研修生C :そうだよ。最近不法滞在の研修生が増えているから、それを予防するために、研 修生のパスポート、ビザ、銀行通帳などを全部会社が保管するのだ。外国人登録証明書だ

け自己責任で保管する。

研修生J :私たちの給料も会社が保管している.毎月の給料を全額ではなくて、一部生活費 として支給されない。残りは全部通帳に貯金する。通帳のパスワードを知らないから,お 金を下ろすことができない。来月の生活費が下りるまで買い物できない。

筆者:それは自由がないじやないですか?

研修生C:まあ、とにかく遠いところまで行けないのだ。お金も身分証明書もないから。

GWとか、お盆のような長い休みに東京ディズニーランドに行きたいけど、行けないのだ。

筆者:それはつまらないですね。

研修生C:はい、家の近くで散歩ぐらいしかできない

研修生J:お金貯めてノートパソコンを買ったけど、インターネットはできない。会社が許 可しない。携帯電話の加入も許可しなかったよ。他の会社の研修生とネットワークになっ てほしくないからだ。

筆者:何か理由があるのですか?

研修生C:研修生は時給少ないから、ネットワークができたら、給料についての情報交換が できて、やる気がなくなって、不法滞在になる考え方も出てくる可能性もあるそうだ。

(29)

研修生J :何回も会社と交渉して携帯電話の加入を許可するようになったけど、インターネ ットの使用はできない。

筆者:国際電話はどうするのですか?

研修生C :国際電話は中国物産店で買ってきて、事前に社長の許可を得れば会社の電話を使 えるけど。

筆者:ビザの更新は会社がしてくれるでしょう?

研修生C:だから、パスポート、ビザ、銀行通帳などを全部会社で保管して、帰国する時に 返してくれるということだ。

筆者:残りの給料を全額ではなくて、一部しかもらえないということがありますか?

研修生C :そんなことを聞いたことがあるけど、今の会社ではまだない。

筆者:もしあったらどうします。

研修生C:それは、訴えるほか仕方ないでしょう?

ケース3のまとめ

パスポート・登録証明書等は研修生本人に所持させるべきである。それを取り上げるこ

とは不適切な対応である。そして研修生の外出禁止、携帯電話所持禁止、インターネット 利用禁止等研修生の自由を制限することはイコール研修生管理ができているということで はない。それらの企業には、研修生たちの人権を尊重し、研修生の自由を制限することで はなく、仕事と生活面でサポートをするべきであることを十分に認識する必要がある。

・24・

(30)

ケース4

2.3.4残業時給380円の研修生D

研修生D

中国湖南省出身、 20代後半の男性、 2006年2月来日、三重県津市にある水産会社で就労

している。 2007年5月水産会社が倒産のため、別の津市にある水産会社に移された。

筆者は2008年5月、研修生Dと津市の中国物産店で30分の話をした。

日時:2008年5月11日(日)昼12時‑昼12時半 場所:津市にある中国物産店内

メンバー:研修生D、筆者

筆者:いつも日曜日にチャットに来るのですか。

研修生D:毎週来るよ。日曜日は休みで、妻が待っているから。

筆者:いつ帰りますか?

研修生D :あと半年ぐらいだけど、お金が貯まっていない。

筆者:なぜ貯まっていないですか?

研修生D :給料が少ないよ。残業の時給は380円しかない。

筆者:そんなに少ないのですか?

研修生D :前の会社が良かったけど、突然倒産したから、中国に帰るか、他の会社で働く か、と社長が言われて、今の会社に移って来た。研修生ならすぐに帰るよ。僕は実習生だ から、今の会社に残ったo

筆者:よかったではないですか?

研修生D :でも今の会社は研修生の人数が増えたから、残業時間と時給が少なくなってき た。一時間380円しかもらえないから、やる気が出ないけど、妻のために、やむを得ない。

毎日気分が悪いよ。

筆者:会社が倒産して、研修生の損失を補償してくれないですか?

研修生D :水産労働組合に聞いたけど、景気が悪いから補償できないと言われた0 筆者:契約書には補償について何も書いていないですか?

研修生D:日本に来る前に契約書にサインしたけど,回収された。日本に来て二年目に契 約を更新したけど、全部日本語だから全然読めない。会社の説明を受けてサインしただけ だ。

筆者:みんなそうですか?

研修生D :みんな一緒だよ。残業はシフトでローテーションをしている。

筆者:みんなやる気がないでしょう?

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研修生D :仕方ないだろう。お金がほしいからいっぱい残業をしたいけど、残業も減って いるし、時給も減っている。普通のアルバイト時給は750円以上もらえるのに。

ケース4のまとめ

この企業は研修生に支払っている給料の金額は「最低賃金法」に定まっている金額より はるかに低く、 「最低賃金法」に違反している。

最低賃金の金額は地域別最低賃金と産業別最低賃金の二種類があるが,金額の設定は各 都道府県によって異なる。三重県最低賃金は時間額701円である(平成20年10月26日発 効)。それに比べて380円の時給は低すぎる。これは企業の研修生・実習生に対する賃金支 払いの違法行為である。このような問題が起こる原因は現行研修制度にあり、その原因を

第三部研修制度に対する疑問の疑問四において分析する。

‑26‑

(32)

ケース5

2.3. 5仕事場でいじめられる研修生E

研修生E

中国黒龍江省出身、 30代前半の男性、日本で三年間働いたら給料の10年分に相当する収 入を得ると聞いて辞職し、 2006年10月来日、三重県四日市にある化学製品会社で就労し

ている。妻が地元のアパレル服工場で働いている。一人っ子の娘が小学校に通っているそ うだ。

筆者は2008年10月、中国留学生中秋パーティーで研修生Eと一時間の話をした。

日時:2008年10月5日(日)午後3時‑午後4時

場所:津市総合文化センター多目的ホール、中秋パーティー会場

筆者:こんなパーティーは毎年ありますけど、初めてですか?

研修生E :初めてだよ、こんなに中国人が多いなんて思わなかった。

筆者:今日楽しかったら来年また来てください。

研修生E :また来たいよ。今日だけ楽しいよ。いつも気持ちが曇りなんだよ。

筆者:なぜですか?仕事がたい‑んですか?

研修生E:もちろん仕事で疲れている、精神的にも疲れている。毎日朝工場に入ると気持ち が悪くなるよ。係長とパートさんの顔を見ると気持ちが悪くなってしまう。

筆者:なぜでしょうか?

研修生E:パートさんは研修生をいじめている。リーダーじやないのに、口先ばかりで、全 然動かない.従わなかったら係長に報告する.すると係長が研修生を叱る。僕たちは一生 懸命働いているのに、訳分からず叱られる。日本語話せないから、弁護できない。だから 気分が悪い。

筆者:暇な時誰かに相談したほうがいいかもしれません。

研修生E:相談できる人いないよ。係長は全部分かっているけど、パートの人に偏っている。

作業する時研修生はしやべってはいけない。工場内では中国語がだめだといわれる。でも パートの人は喋ったり、笑ったりしても大丈夫。パートの人は毎日研修生の悪口を言って

いる。僕たちは聞き取れないけど、顔を見て分かる。何を言っているのか大体感じられる。

研修生、研修生、何も研修していないよ。ただの労働力だけじやないか。しかも苛められ

ている.パートの人がいつも係長と違う指示を研修生に出している。言われるとおりしな いと、中国に帰れと怒鳴る。一年目は本当に若しかった。何で日本に来たのかとみんな後 悔していた。でもお金のために我慢するしかない。今みんなは簡単な日本語を話せるし、

作業指示書も読めるようになった。完全に仕事に慣れた。それでも毎日パートさんに苛め

(33)

られている。

筆者:パートさんと係長が違う指示を出したらどうしますか?

研修生E:最初はかなり苦労したよ。パートさんの指示に従うと、係長に怒られて、パート さんが後ろで笑っている。パートさんの指示に従わないと、パートさんが係長のところに 報告する。何を報告したか分からないけど、報告の後で必ず研修生は係長に怒られる。今 はみんな慣れたから作業が早いよ。係長が見て回ってくると、係長の支持どおりにする。

係長が行ってしまったら、パートさんの指示に従う。毎日疲れてしまう。今僕たちは実習 生になって新しい研修生のことを見て本当にかわいそうと思っている。いつかそんな苛め がなくなって、パートの人も研修生もー緒に楽しく働くことができればいいね。

筆者:それは工場の作業管理に問題がありますねo 研修生に対する扱い方も間違っていま すね。

研修生E:研修生を応募する時に、日本語も勉強できるし、技術も学べるし、中国の給料の 10年分のお金が貯まると色々な説明を受けたのに、日本に来たら実はそうではない。中国

でもらった資料には、毎日日本語教室と技術研修、実際練習と書いてあるけど、今のスケ ジュールは全然違って、日本語も勉強しない、技術研修もしない、毎日重い作業をさせら れて、働くばかりだ。みんな編された感じがする。もし応募する時にきちんと説明してく れれば絶対来ないよ。前から苛めがあると聞いたけど、これほどとは思わなかった。

筆者:人身侵害はなかったですか?

研修生E :それはないけど、みんな精神的に崩れそうな状態に近いよo中国では生活はきつ いけど、精神的には、こんなに悪くはなかったよ。研修生の生活というのはこんなに地獄 みたいなのか?

筆者:みんな日本語を勉強したいですか?日本の技術を学びたいのですか?

研修生E:正直に言うとお金が一番だけど、日本語が分からないと本当に大変だから、みん な日本語を覚えたい。技術を学ぶことはどうでもいいと思う人もいるけど、僕は学びたい。

日本の製造技術は世界でも進んでいるから、地元に日系企業も多いし、三年後帰ったら地 元の日本企業で働きたいと思うよ。三年間貯められるお金は限りあるから、日本語を覚え たら優先的に採用されるかもしれない。でも、実際に日本に来たら全ての夢が泡になって

しまったのだ。日本語、技術はどうでもいいから、ただの労働力としても、最低限で苛め られることなく、この三年間を送ることができればありがたい。だから、今日のようなパ ーティーに来て良かった。気分転換ができたけど,明日からまた曇りになるよ。

・28・

参照

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