2.3.
5仕事場でいじめられる研修生E研修生E
中国黒龍江省出身、 30代前半の男性、日本で三年間働いたら給料の10年分に相当する収 入を得ると聞いて辞職し、 2006年10月来日、三重県四日市にある化学製品会社で就労し
ている。妻が地元のアパレル服工場で働いている。一人っ子の娘が小学校に通っているそ うだ。
筆者は2008年10月、中国留学生中秋パーティーで研修生Eと一時間の話をした。
日時:2008年10月5日(日)午後3時‑午後4時
場所:津市総合文化センター多目的ホール、中秋パーティー会場
筆者:こんなパーティーは毎年ありますけど、初めてですか?
研修生E :初めてだよ、こんなに中国人が多いなんて思わなかった。
筆者:今日楽しかったら来年また来てください。
研修生E :また来たいよ。今日だけ楽しいよ。いつも気持ちが曇りなんだよ。
筆者:なぜですか?仕事がたい‑んですか?
研修生E:もちろん仕事で疲れている、精神的にも疲れている。毎日朝工場に入ると気持ち が悪くなるよ。係長とパートさんの顔を見ると気持ちが悪くなってしまう。
筆者:なぜでしょうか?
研修生E:パートさんは研修生をいじめている。リーダーじやないのに、口先ばかりで、全 然動かない.従わなかったら係長に報告する.すると係長が研修生を叱る。僕たちは一生 懸命働いているのに、訳分からず叱られる。日本語話せないから、弁護できない。だから 気分が悪い。
筆者:暇な時誰かに相談したほうがいいかもしれません。
研修生E:相談できる人いないよ。係長は全部分かっているけど、パートの人に偏っている。
作業する時研修生はしやべってはいけない。工場内では中国語がだめだといわれる。でも パートの人は喋ったり、笑ったりしても大丈夫。パートの人は毎日研修生の悪口を言って
いる。僕たちは聞き取れないけど、顔を見て分かる。何を言っているのか大体感じられる。
研修生、研修生、何も研修していないよ。ただの労働力だけじやないか。しかも苛められ
ている.パートの人がいつも係長と違う指示を研修生に出している。言われるとおりしな いと、中国に帰れと怒鳴る。一年目は本当に若しかった。何で日本に来たのかとみんな後 悔していた。でもお金のために我慢するしかない。今みんなは簡単な日本語を話せるし、
作業指示書も読めるようになった。完全に仕事に慣れた。それでも毎日パートさんに苛め
られている。
筆者:パートさんと係長が違う指示を出したらどうしますか?
研修生E:最初はかなり苦労したよ。パートさんの指示に従うと、係長に怒られて、パート さんが後ろで笑っている。パートさんの指示に従わないと、パートさんが係長のところに 報告する。何を報告したか分からないけど、報告の後で必ず研修生は係長に怒られる。今 はみんな慣れたから作業が早いよ。係長が見て回ってくると、係長の支持どおりにする。
係長が行ってしまったら、パートさんの指示に従う。毎日疲れてしまう。今僕たちは実習 生になって新しい研修生のことを見て本当にかわいそうと思っている。いつかそんな苛め がなくなって、パートの人も研修生もー緒に楽しく働くことができればいいね。
筆者:それは工場の作業管理に問題がありますねo 研修生に対する扱い方も間違っていま すね。
研修生E:研修生を応募する時に、日本語も勉強できるし、技術も学べるし、中国の給料の 10年分のお金が貯まると色々な説明を受けたのに、日本に来たら実はそうではない。中国
でもらった資料には、毎日日本語教室と技術研修、実際練習と書いてあるけど、今のスケ ジュールは全然違って、日本語も勉強しない、技術研修もしない、毎日重い作業をさせら れて、働くばかりだ。みんな編された感じがする。もし応募する時にきちんと説明してく れれば絶対来ないよ。前から苛めがあると聞いたけど、これほどとは思わなかった。
筆者:人身侵害はなかったですか?
研修生E :それはないけど、みんな精神的に崩れそうな状態に近いよo中国では生活はきつ いけど、精神的には、こんなに悪くはなかったよ。研修生の生活というのはこんなに地獄 みたいなのか?
筆者:みんな日本語を勉強したいですか?日本の技術を学びたいのですか?
研修生E:正直に言うとお金が一番だけど、日本語が分からないと本当に大変だから、みん な日本語を覚えたい。技術を学ぶことはどうでもいいと思う人もいるけど、僕は学びたい。
日本の製造技術は世界でも進んでいるから、地元に日系企業も多いし、三年後帰ったら地 元の日本企業で働きたいと思うよ。三年間貯められるお金は限りあるから、日本語を覚え たら優先的に採用されるかもしれない。でも、実際に日本に来たら全ての夢が泡になって
しまったのだ。日本語、技術はどうでもいいから、ただの労働力としても、最低限で苛め られることなく、この三年間を送ることができればありがたい。だから、今日のようなパ ーティーに来て良かった。気分転換ができたけど,明日からまた曇りになるよ。
・28・
ケース5のまとめ
このケースは日本語の教育を計画通り実施していない事例である。こつこつ働いてくれ ればいい、わざわざ時間を設けて日本語教育を実施するなんか要らないという考え方は少 なくない。研修生・実習生は最長3年間で日本語の勉強,日本文化の理解、さらに知識・
技術・技能を修得するという三つの項目がある。日本語の勉強と異文化理解ができないと、
技術・技能を修得する目標が達成できないだろう。なぜかというとコミュニケーションが 必要である。たとえ単なる労働力としてこつこつ働いていけばよいとしてもコミュニケー
ションをとることが必要である。日本語教育を実施することによって国際コミュ.ニケ‑シ ョンがとれるわけである。
安い労働力だからといっても、研修生・実習生が3年間続けて働けるような就労環境も 必ず必要であるo 一緒に働いている労働者を冷たくすることは必ず損する結果を招くこと になり、いろいろな研修生問題が起こる原因になる。研修生・実習生に対して仕事場の人 間関係をサポートする必要があるのではないか。
2. 3.
6研修生の全体像研修生・実習生は東南アジア経済発展途上国の経済遅れている地域から集められてきた 人が多く、技術修得ではなく、出稼ぎ目的の人が多い。
多くの研修生は母国の送出し機関に大金を払って事実と違った説明を受けて日本に来た。
来日後、
3k
(きつい、きけん、きたない)の仕事をさせられた。ほとんどの人は日本語が分からない。日本語の研修を受けていない。仕事場でいじめら れたり、誤解されたりしても、コミュニケーションがとれない。
研修生は毎日の労働時間が契約時間よりはるかに超過しているが,もらえる給与が非常 に少ない。時給に換算すると、 300円‑500円程度が多い。
研修生は週に日曜日しか休めない。土曜日と祝日は基本的に出勤である。日曜日でも半 日働くことがある。生活費を節約して貯金する。
研修生のパスポート、外国人登録証は会社に取上げされ、容易に外出できない。携帯電 話とインターネットの使用は禁止されるところが少なくない。
多くの研修生・実習生は肉体疲労とともに精神的にも傷っけられ、日本という国に対し て悪印象を残されてしまった。辛い思いを与えられた研修生・実習生は一日も早く帰りた いという人が少なくない。
2.
4研修制度の利用現状一研修制度は悪用されている日本の研修制度は多くの日本企業と中国の送り出し機関および研修生に不正利用されて
いる。
まずは日本企業。多くの中小企業は毎年中国研修生を受入れている。研修生には研修を させるのではなく、重複した単純作業を始めいろいろな作業ばかりをさせて安い労働力と して使っている。そして研修名目での時間外作業、休日作業をさせることも日常茶飯事で ある。研修生の話によって一年間研修満了後、何らかの理由で研修生を帰国させて新しい 研修生を受入れる会社もある。
会社は何も分からない研修生に「もっと早く頑張ってください、来年一人前になればい い給料をもらえるよ!」と言いながら、研修生たちに賃金を払わない。その代わりに研修 手当てといった5万円か6万円の生活費を毎月研修生に支払っている0
実習生に対して働いた分を給料として支払っているが、残業、休日出勤の時給は380円 しか支払っていない。この時給は三重県の最低賃金701円よりはるかに低い。筆者が調べ ているところ実習生たちは休日が非常に少ない。日曜日以外基本的に出勤するのが普通で ある。会社によって日曜日でも半日しか休めない。少ない人は年間休日24日しかない。し かし収入はそんなに変わらない。
給料計算のことだけでなく、研修生のパスポート、登録証明書、銀行通帳等を取り上げ、
外出を禁止し、携帯電話とインターネットの使用を禁止し、他社の研修生と付き合うこと を厳禁するなど研修生の自由を制限する会社が少なくない。そして、賃金支払について毎 月生活費だけ支払って帰国する時(飛行機に乗る直前という極端の例もある)に2年間の 給料をまとめて研修生に支払う会社もあり、研修生を偏し取って給料を支払わない会社も あり、会社が倒産するため研修生に給料を支払うことができなくなる会社もある。給料を
もらえないことは研修生が不法滞在になった原因の一つでもある。
研修生・実習生から保険料を徴収しているのに、実際に研修生のために保険を加入して いないことによって、病気の時に診察を受けることができないことがある。
また研修生の健康管理、生活指導のサポート不足のため、研修生たちは周りの人とコミ ュニケーションがとれず安心して働けないことが多く、それも多くのトラブルが発生する 原因となったのである。
次は中国の送り出し機関。中国では研修生の送り出し機関が数多い。現在中国ではそれ らの送り出し機関に対して管理監督指導できるような法律はまだできていないため、数多 くの送り出し機関は日本の中小企業と連携して私益のために中国研修生に大げさの宣伝を し,高額の保証金を徴収するだけでなく研修生に不利益な契約をつけさせている。研修生 の話によると、 3年間契約で総収入の三分の一を中国の送り出し機関に支払った人もいる。