1.は じ め に
アジア諸国は,政治,経済,社会,文化等に共通するところもあり税法に は似ている点が多い。これは,なかでも日本と韓国,台湾の税法の規定は,
共通する点が多いと思われる。歴史的背景が影響していると考えられる。筆 者がこれまで研究してきた交際費課税,寄付金課税,引当金課税等の項目や 税法の体系等に,その傾向がみられる。
それは,諸外国の税法,制度が影響しあっているためであると考えられる。
税制の移転メカニズムを筆者はハイブリッド税法と定義している。本小論も このハイブリッド税法の視点から,台湾における税法の移転メカニズムを研 究するのが目的である。
その研究の基礎をなすのが,アジア諸国の税法史である。しかし残念なが ら,前号の紀要で述べた韓国の税法史のみならず,台湾の税法史の資料もわ が国にはない。中国の税法史も一部の期間の歴史資料はあるが,国家成立か ら最近のわたるまで一貫してかかれた税法史はわが国にはない。そこで原文 を翻訳せざるを得ない。したがって筆者が台湾税法史1)を翻訳する意義も大 きいと言わざるをえない。
本章は2001年3月に台湾に出張し台湾東海大学,中央経済研究院図書館,
台湾の税法ハイブリッド
―― 税法史を基礎とした台湾における 税法の移転メカニズム ――
山 内 進
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( 1 )
国立政治大学,中國租税研究会等に赴き収集してきた台湾税法史の資料を翻 訳し,その翻訳に基づき論及したものである。顔慶章『租税法』(実用実務 出版,1998)と陳妙香『所得税法規』(華立図書,1989)を中心として翻訳 した。残念ながら,台湾において台湾税法史に関する原文の資料は必ずしも 十分ではない,また筆者の翻訳能力不足のため研究がなかなか進まなかった のが現状である。なお,すでに第49巻1号で韓国税制史,第48巻3号では中 国税法史についても翻訳し論及している。台湾の所得税は,営利事業所得税
(わが国の法人税に該当)と,総合所得税(わが国の所得税に該当)にわけ られるが,この両所得税を中心に論及を試みた。
2.ハイブリッド税法研究・税制の移転メカニズムの基礎となる台湾税法史
台湾の所得税制度の歴史をたどると1910年までさかのぼる。当時台湾は日 本の統治下にあったが,その頃日本は日露戦争の勝利後で国力が伸張し,そ れに伴う政府支出の膨張にかんがみ,台湾に法人税の課税を試みた。続いて 1921年には個人に対する所得税が課せられるに至った。しかし終戦と同時に 台湾は中華民国に還付され,当時の賦課徴収の根拠となっていた台湾法人税 令と台湾所得税令は廃止された2)。
この台湾の所得税3)は清朝末に立案されてから今にいたるまで,5つの段 階に分けることができる。すなわち,第一段階は清朝末から1936年までであ り,台湾の近代所得税に対する新しい提議が行われた時期である。第二段階 は1937年から1943年までであり,台湾の所得税が始めて徴税を開始した時期 である。第三段階は1945年から1955年までで,台湾の所得税が発展しながら 変化を遂げていった時期である。第四段階は1956年から1968年までであり,
台湾の所得税の制度が確立された時期である。第五段階は1969年から現在に いたるまでで,台湾の所得税が改革され,急激に進歩した時期である。
所得税制度形態の発展変化から見ると,1937年から1946年までが所得税が
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( 2 )
分類所得税の形態をとっていた時期であり,1947年から1966年までが所得税 が分類総合所得税の形態をとっていた時期であり,1956年から現在までが所 得税が総合所得税の形態をとっている時期であるといえる。しかも個人総合 所得税と営利事業所得税は平行して課されており,この二種類の所得税は一 体化されていない。
それゆえ双排(二つが横並びの状態である)所得税制度と呼ばれている。
理論上,個人と営利事業は異なる課税主体であると考えられ,所得税の負担 能力のあるものには全て別々に課税すべきであると考えられている4)。
! 第一段階(清朝末〜1936年)(図表1)
清朝の末年,国家の資金を調達するために所得税の課税という新しい提議 がなされ,税法が制定されて資政院に提出して審議がなされた。審議が未決 のままに国体はすでに変化し,中華民国が創始されるに至って,様々な事業 が立ち上げられなければならず,支出が繁雑となるため,議論が再び始めら れた。そこで日本の所得税制を参照にし,1914年一月に「所得税条例」が発 布され,これが台湾における一番古い所得税法となった。
その納税義務者の規定は,土地にもとづいた主義の原則によってなされた。
すなわち中華民国内の土地に住所がある,あるいは一年以上居住しているも のは納税の義務を負うというものである。それ以外の国民でも財産所有者,
営業を行っている者,公債社債の利息などの所有者もまた,納税の義務を負 う。これは本国人であろうと外国人であろうと,所得の出所がどこであろう と,全て不問で適用される。納税義務者には自然人と法人の両方が含まれる。
個人と法人はそれぞれ別々に課税された5)。
税率は定率と超過累進税率の二つが採用された6)。すなわち,法人所得は 千分の二十,公債および社債の利息は千分の十五である。その他各類の所得 は超額累進税率が採用された。五百元以下は免税,五百元以上五十万元まで は,千分の五から千分の五十までの累進税率とされた。
台湾の税法ハイブリッド(山内) −229−
( 3 )
各種の所得の納付形式はそれぞれ異なり,第一種法人所得は,納税義務者 がその事業の年度末に所得額および損益計算の報告を,管理を行う政府機関 に対して行い調査決定を受け,年度終了後二ヶ月以内を期限として納税した。
公債および社債の利息所得は,天引き納付方式を採用し,公債あるいは社債 の発行者により率に従って天引き納付された。第一種に属さない各所得は,
毎年2月に前年度の所得をあらかじめ計算し,管理政府機関に報告し,調査 図表1 第一段階 新提議の行われた時期(清朝末〜1936年)
(注)陳妙香『所得税法規』華立図書,1989,p.12 時 期 清朝
宣統2年
(1910年)
1914年 1919年
法 律 名 称 作成中
(名称未定)
所得税条例 所得税条例
立 法 理 由 清代末の日中 甲午戦争後,
および八国連 合軍との戦い に負けたこと による,領地 割譲,賠償金 の支払により 資金が消耗さ れたため。
①中華民国の建立のために 性急に資金が必要であっ たため。
②所得税は公平,普及して いる,弾力性がある,税 収が充分であるという四 原則を兼ね備えていたた め。
自らの管理により関税を実 施し,厘金税を廃止したた めに,税収が減少したため。
内 容 未 定 ①納税義務のある者:居住 者および非居住者
②範囲:全ての所得(列挙 および概括)
③税率:法人所得および利 息源泉所得は比例税,そ の他の所得は累進税率を 採用
1914年の修正内容
①法人所得税を累進課税に 変更
②基本生活水準に準じた控 除の設定
施 行 状 況 未施行 ①主観的客観的 条 件 が 備 わっていなかった。
②国家が不安,動揺し,有 名無実化された。
アメリカ人顧問等が,台湾 は未だ所得税を実施するた めの条件を備えていないと 評定し,徴税が停止された。
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( 4 )
決定された。本条例は公布された後,袁世凱氏が皇帝を名乗ったために雲南 省が蜂起し,そのために中止された7)。
このように台湾の税法の歴史は1910年にスタートした。当時台湾は日本の 統治下であった。1914年の所得税条例は,わが国の所得税法を参考にしたも のであって,これは台湾における最初の所得税法であった。さらにわが国は 日露戦争の処理後,政府の支出膨張のため,台湾に法人税の課税を実施した。
また1921年には個人所得税を実施され,わが国の税法が導入されていった。
しかし日本の所得税法を参考にしたとはいえ,所得税法はそもそもイギリス で生まれ,そのうち累進制度はアメリカの影響を受けてハイブリッド化され ていると考えられる。
! 第二段階(1937年〜1943年)(図表2)
1934年,中央政府は第二次全国財政会議を開き,財政の改訂を立案した。
また1935年には,所得税原則および条例草案三十一条を立案し,これが行政 院を経て中央政治会議に提出され,裁定された。また八項目の原則が定めら れたが,その内の主なものは次のとおりである。
率は累進税率を主とする。所得税は,納税額に応じて決定され,申告,調 査,審査の三つの手順を行う。第三種類の所得は,利息から得た額を課税基 準とする。ただし,預金の中で教育貯金から得た利息が百元に達しないもの に対しては免税する。各政府機関の預金,公務員の法定貯蓄,教育慈善機関 団体の基金預金に対しては免税する。
1936年に定められた所得税暫時施行条例は,上述の原則にもとづいて,四 十九項目の条文を設定した。その内,課税対象となる営利事業部分に官民合 弁の営利事業所得税を加えた。1936年七月一日,財政部により直接税準備部 が設立され,その後所得税事務部に改変された。各省,市に事務所を置き,
さらに各重要な都市に地域分署を設立し,税の徴収検査業務を行った。台湾 において二十数年間にわたって考慮されてきた所得税は,ついに実施が始 台湾の税法ハイブリッド(山内) −231−
( 5 )
まった。1936年の所得税は分類制を採択し,営利事業,給与報酬,および証 券預金の三種類について課税を行うこととした9)。
! 第三段階(1944年〜1955年)
また1943年までに財産貸借売却所得税が増設され,四種類となった。しか し各税の規定は分割され,手順,罰則などにおける重複項目も多く,また財 産売却所得についても土地などの既に増値税を課されているものに対して再 び徴税することは適切ではないことが分かってきた。
また抗日戦争のため軍を強化しなければならず,国内の貧富の格差がます ます激しくなってきたため,分類所得税では負担能力に対応した公平徴収を 行う事が出来ないことが分かってきた。財政部は所得税法の三種類に財産貸
図表2 第二段階 徴税を開始した時期(1937年〜1943年)
時 期 1939年 1939年
法 律 名 称 所得税暫行(暫時施行)条例 非常時期過剰利益税
立 法 理 由 税制の革新,財源の整理 盧溝橋事件により,戦争と政府の ためにかかる費用は日ごとに増え て行き,税源は日増しに緊迫して いく中,一部の富んだ商人は戦争 により暴利をむさぼっていたので,
戦時利益に対して別途過分利得税 を徴税した。
内 容 ①範囲:分類所得税を採用した。
すなわち,営利事業から得た営 業所得額は資本額と比例させて 課税する。また給与報酬および 証券預金利息は累進課税であっ た。
②免税範囲を定めた。
①単独で実行され,所得税とは合 併されなかった。
②課税範囲を三種類,すなわち営 業者,自由業および最高財務行 政機関の認定を経て戦時投機を 利用して得た一時的な過分利益,
に分類した。
③税率は最低で20%,最高で60%。
施 行 状 況 1936年10月公布施行 1937年全面実施
1937年立案,1938年公布 1939年1/1実施,同年7/1税率
を10%〜50%に下方修正した。
(注)陳妙香『所得税法規』華立図書,1989,p.131.
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( 6 )
し出し所得(売却所得は含まない)を加え,一時所得を増設し,五種類とし た。また個人所得が六十万元を越えたものに対しては,総合所得税を別に徴 収することとした。そして1949年に政府が台湾に移転した後,1950年五月,
立法院において修正を終えて正式に法律化された。
さらに政府が台湾に移転した後,税制は土地税を主とした,所得税,営業 収益税,および資本利息税はまだその輪郭が見えてきたばかりであった10)。
当時,給与および利息所得税は公務員,教員の給与が少なかったため,一 時的にその徴収をストップし,そして五種類の所得税と,総合所得税が平行 して存在し,六種類の独立した税項目となっていた。また申告,検査,徴収 の手続が複雑であり,特に総合所得税は最も手がかかるものであるにも関わ らず,収入は限られていたため,納税者に分類所得税の附加税と誤って認識 され重複課税になっている疑いが高かった。よって1950年には総合所得税を 廃止する議論があったものの,政府当局に採択されなかった。
1950年に台湾省政府は租税制度の専門家や大学教授等を招き「税制改革委 員会」を設定し,当時の税制について「台湾税制改革研究報告書」を発表し,
そこにおいて当時の税制上の欠点五つが指摘された。!若干の税目が立法化 されていない。"税目が複雑であり,互いにあっていない。#詳細すぎる。
$税率が高すぎる。%税法が複雑であり,罰則も統一されていない。以上の 問題点により「税目の簡略化,税率の調整,徴収の統一,罰則の統一」が主 張されるようになったのである11)。
この報告書では戸税,総合所得税,分類所得税の三位一体制なるものが主 張されていた。この制度は分類所得を総合して課税するところの総合所得税 を戸税の上に置き,戸税を超過課税とすることによって,戸税と総合所得課 税の重複課税を避けるべきだというものである。1951年に実施された台湾省 中央および地方税統一賦課徴収条例第10条によれば,戸税を納付すべき収入 額が総合所得税の課税点に達する者は,その超過部分は総合所得税を課すと 台湾の税法ハイブリッド(山内) −233−
( 7 )
された。また第12条には総合所得税の課税点は所得総額1万8千元とされた。
地方公共団体(郷鎮役場)はその原住民の収入源1万8千元以下の部分に 対して戸税を課して,地方自治の経費とし,1万8千元以上の部分には総合 所得税を課して国庫に納付すると規定していた。また同条第9条第1項には 分類所得税の中,営利事業所得税,財産賃貸料所得および一時所得以外の報 酬,給与所得,利子所得等の源泉徴収税額は納税義務者のその年度の戸税と して戸税額より差し引くことができると規定していた。これが研究報告書の
図表3第三段階 成長そして変化発展時期(1944年〜1955年)
時 期 1944年 1947年
法 律 名 称 所得税法 所得税法
立 法 理 由 所得税法および財産貸借売却所得 税法を長期的な抗日戦争の財源と して,永久性をもった税とするた め。
前二種類の税制を合併するため。
対日抗戦後,莫大な再建経費が必 要だったため。
内 容 範囲:①営業利益所得,給与報酬 所得,証券預金所得
②財産貸借売却所得
①分類総合所得税の改正
分類所得税:(a)営利事業所得,
(b)給与報酬所得,(c)証券預 金所得,(d)財産貸借所得,(e)
一時所得
総合所得税:所得総額が60万元 を越えるものは,加えて総合所 得税を納める
②税率構造:(a)全額累進を採用,
(b)超額累進(基準額を超えた 分に対する累進課税)を採用,
(c)比例税率を採用,(d)超額 累進(基準額を超えた分に対す る累進課税)を採用,(e)超額 累進(基準額を超えた分に対す る累進課税)を採用,
施 行 状 況 1943年7/1公布施行 1946年公布
1947年実施 所得税法は計42条と なった。
(注)陳妙香『所得税法規』華立図書,1989,p.13
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( 8 )
分類所得税,戸税,総合所得税の三位一体制である12)。なお1950年以前は戸 税と総合所得税の課税標準は,同様な所得になっていた。
このように戦後は,台湾が中華民国に還付され,当時の賦課徴収の根拠と なっていたわが国を参考にしたという上記の台湾所得税令と台湾法人税令は 廃止された。1950年台湾政府は租税制度の専門家や大学教授等で「税制改革 委員会」を組織し,税制改革の研究がなされたのであった。その結果が台湾 税制改革研究報告にまとめられたといえる。
そこで考えられたのが台湾特有の戸税制度に他国から影響された分類所得 税,総合所得税を組み合わせた三位一体制であった。これは,まさに台湾の 租税制度と他国との税法のハイブリットであるといえる。
1955年には,以下のように台湾では,税法は新しい税制の基礎を作り上げ た。台湾において1950年以前には,所得税は分類所得税を主とし,総合所得 税を副とした混合財政が採用されていた。しかし能力にもとづいて課税する という目的が達成されず,また分類後の相互統一の困難,総合所得税が分類 税の附加税と誤って認識されるなどの問題のため,1955年税制を大幅に改訂 し,個人あるいは営利事業に関係なく総合所得税方式で徴税するという,現 行税法の形を確立した。
① 個人所得税と営業事業所得を一緒に課税する。会社税のみを徴収 し,またそれについて会社組織に対して罰則を課すような,会社の 設立意思をそぐような状況を避けた。当時はわずか千あまりの会社 があっただけなので,単独で税目を設立する必要は無かった。
② 経済発展を助長する。営業者の税率を個人の税率よりも低くし,
一部の収益を分配せずに留保することを許し,三年間の収益をまと めて計算するようにし,減価償却の加速を採択して投資を促進する ようにした。また会社の創設,および増資を行う株式有限会社に対 しては税金を三年免除し,投資を誘導した。
台湾の税法ハイブリッド(山内) −235−
( 9 )
③ 現時徴収制を試行する。申告者が,天引き納税者よりも遅れて納 税したために,税を納付する際の財務状況が変化してしまい,その 結果起こる遅延納税を避けるため,徴収制を採択した。またこれに ついては期限を分けて暫時的に納付する方法,および収入に応じて 天引きする方法を平行して採択した。
前者は創設されたばかりのものであるため,徴収機関が前年度の所得額に 基づいて徴収する,あるいは納税者が自分で見積もりを行い税金を申告する こともできるものである。「見積もり」,「改正見積もり」および「決算申告」
などの徴収手順を明確に規定した。
! 第四段階(1956年〜1968年)
1958年に営利事業所得税(日本の法人税に該当)決算申告帳簿検査準則が 創始された13)。営利事業申告における各項目の収入および費用支出の認定の ため,あるいは見解が異なり,一致した標準に欠いていたため争議は絶えな かった。台湾省財政庁は各県,市の税収検査事務所による営利事業からの徴 収状況にもとづいて,また所得税法,商業会計法令,各商業団体,会計士団 体のアドバイスを参考として,1958年に「四十六年度営利事業所得税決算申 告帳簿検査規則」を制定し,財政部に提出し認可を受けて一年間試行した。
その後実施した結果が良好であり,帳簿検査および決算申告に有利であった ため,継続して試行された。1961年には,適用年度の文字を削除した後,正 式に通常規則として公布され,実行された。
1958年三月に,行政院の部門が再編成され,また税収政策上では直接税を 中心とする税制を設立すべきであるとの主張が出され,財政部と台湾省政府 が共同で「税収研究グループ」を設立し,投資を奨励する条例を設定し,税 収を5年間免除し,資本の累積投資を促進した。また税制に標準控除額が加 えられた。徴収手順が簡略化され,暫時的な納付は一回で良いこととなり,
改正見積もり手順も廃止されることとなった。総合所得税の見積もり申告範
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( 10 )
囲を縮小し,経営者,単独資本主,パートナーシップのパートナーに限った。
国内に居住していない個人に対しては,源泉に基づいて天引きする制度が採 択された。国営独占事業に対しては営利事業所得税を免除した。また青色申 告制度を設立し,徴収期間を規定し,以前のことを追及しないこととした14)。
第四段階においては,このように戸税の推計課税にひきずられて総合所得 図表4 第四段階 制度の確立時期(1956年〜1968年)
時 期 1956年 1963年
法 律 名 称 所得税法 所得税法
立 法 理 由 ①総合所得税が三位一体の過渡期 を経て,基礎を打ち固め,さら に総合的に税金の計算を行い,
能力にもとづいた課税を実現す るため。
②営利事業所得税会計検査徴税制 度を積極的に進め,その重要性 を高め,営利事業所得税の改善 により投資を奨励するため。
税制の改善
修正の要点 ①双排(=二つが横並びの状態で ある)所得税の新制度を確立し,
分類総合所得税を,個人総合所 得税と営利事業所得税が平行し て実行される双排所得税制に変 更した。
②税率構造を単独で立法し,総合 所得税の課税レベルを29レベル とし,最低5%最高85%とし,
また営利事業所得税の課税レベ ルを3レベルとし,最低5%最 高25%とした。
①人と土地を基準にする主義を土 地を基準にする主義に改めた
(個人および営利事業を含む)。
②標準控除額の増訂。
③徴税調査手順の簡略化。
④減免奨励範囲の拡大。
⑤未分配利潤の限界額。
施 行 状 況 1951年草案の修正
1955年立法の完成,1956年公布施 行
所 得 税 法 は 全 部 で 合 計120条 に なった。
1959年草案の制定
1963年立法の完成ならびに公布施 行
所 得 税 法 は 全 部 で 合 計126条 に なった。
(注)陳妙香『所得税法規』華立図書,1989,p.14
台湾の税法ハイブリッド(山内) −237−
( 11 )
税は本来の役割を果たさなくなった。そこで戸税と切り離して単一所得税に すべきだという主張が高まり,1956年台湾の所得税は単一所得税に移行した。
台湾にとって所得税を中心とする直接税体系を構築することが近代的税制 として必要不可欠であった。ここでは経済発展の助長を所得税の基本原則と したが,その中で同年租税特別措置が導入され特別償却等が実施された。新 設四年免税の加速償却の追加,増設五年免税の加速償却追加がなされている。
行政院では直接税体系を打ち建てるべく所得税再修正案を1959年に立法院に 提出した。
ようやく1963年には所得税を中心とする直接税体系を打ち建てた。これは 専門家,学者,各会社団体等の各階層の意見を集め,立法院で審議された。
このような広い範囲に各階層の意見を結集したことが台湾所得税史にとって 初めてのできことであった15)。当時の所得税の課税範囲は,西ドイツに近い ものであり,わが国やアメリカとは異なっていた。新法第1条に「所得税は 総合所得税と営利事業所得税に分かれると規定されているが,総合所得税が わが国の所得税に該当する。
営利事業所得税が法人税に当たる。すなわち台湾では,わが国と同じ所得 税法と称しているが,所得税法という法律のなかで法人税法と所得税法を規 定している。つまり台湾の所得税法とは,わが国の個人所得税に相当する総 合所得税と,法人税に相当する営利事業所得税の2種類が含まれている16)。 どちらも所得税法を基本法としている。しかし所得税総則第2節では「名詞 定義」がなされ,これはわが国と同様であった17)。
また,この1963年新法では居住者概念を導入しているが,それは,わが国 や米国,英国,仏国等に居住者概念であった。さらに1963年,標準控除額が 新設されたが,これはアメリカの制度を導入したものであった。これは1956 年の税法では事実と証明書類によって,控除額を認めることとなっていたが,
一般の人は領収書の保管の習慣がなく,控除額の適用を受けることができな
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( 12 )
かったためである18)。
また1963年に青色申告制度を導入したが,これもわが国の制度を導入して いた。このように所得税法の仕組みそのものはわが国と似ていることがわか る。わが国の青色申告制度が中小企業に重点をおいたものの,台湾では大手 企業を重点に置いている傾向が強い。したがって青色申告制度には中小企業 を対象としていないこともあった。毎年の法人税の確定申告には税務当局は 多大の人手を要している。青色申告は藍色営利事業税の納税者に限られてお り,わが国のように個人所得税の納税者にも青色申告があるのとは異なって いる19)。
青色申告による税法上の恩典は,わが国と台湾では大同小異であり,違反 者に対する制裁も大差がない。ただわが国では,新規事業者が青色申告をす ると無条件で資格が与えられるのを原則としているが,台湾では厳しく,会 計組織が健全であるかどうかが調査され優秀なものでないと,その資格審査 は通らないという。また居住者概念はわが国や,アメリカ,イギリス,フラ ンス等から導入していた20)。1968年,行政院は税収改革委員会を設立し,総 合所得税が収税に占める割合を積極的にふやし,税収がさらに公平,かつ合 理的になるように促進し,総合所得税部分の所得税法を修正した。
! 第五段階(1969年〜)
1970年には輸出を促進するため,投資奨励条例の実施期間を延長した。19 71年には,外国国際運輸事業の税金の免除,外国事業の特許権,商標権,特
殊技術使用報酬および各特許使用報酬の免税,開発研究支出の拠出が新たに 加えられた。
1972年には,貯蓄預金利息の免税範囲,および海外金融機関利息所得免税 範囲を拡大した。1974年には,給与所得特別控除額および追加納付利子率計 算の規定を加えた。1977年には,免税項目を増設し,会社株主および独立資 本主の規定を修正し,またパートナーシップのパートナーの見積もり申告を 台湾の税法ハイブリッド(山内) −239−
( 13 )
免除した。1979年には,社員退職準備金額を増やし,延期申告納税額の利子 率計算方法を加え,政府が発行した宝くじの当選額を課税項目からはずした。
また外国営利事業の営業収入については,コストの分配が困難となるものに 対して営業収入の10%を所得額として統一し,見積もり,一時的な納付制度 を改善し,上半期における実際の営業収入に基づいて計算する方法を規定し た。
1980年には,投資奨励条例の適用期間を延長した。1982年には,給与所得 特別控除の限度額,および標準控除額の上限下限を押し上げた。個人の原稿 料,印税,楽譜作曲,脚本編集,漫画,講演についてはその収入の定額を免 税した。国家賠償法にもとづいて取得した賠償金を免税とし,また税金徴収 機関は,納税者の純資産,資金の流れおよび営業規定にあわない資料を調査・
審査することで所得額を確定するという内容を増設した。また子ども扶養免 税の際には,二名までに限定されると規定した。
1983年には,財産を他人に貸して使用させるものについて,無償あるいは 営業目的ではない使用以外には,一般のリース料を標準として参照し,収入 を計算して納税させることとした。また夫婦が両者共にサラリーマンである 場合,妻の方の給料の控除額を30%にまで押し上げた。
1990年には,歴年来の最大の修正を行った。総合所得税の面では,以下の ようなことが修正された21)。
夫婦がそれぞれに計算を行い,共に申告をした。さらに給与の特別控除お よび標準控除額を押し上げた。また障害者特別控除を加え,証券取引所得税 を廃止した(1990年1月から)。経営者暫定申告制度を廃止し,控除額の内 の地価税,家屋税の控除項目を削除した。
営利事業所得税部分では,以下のようなことが修正された。暫時納税制度 を簡略化し,前年度の決算申告により納付された税金の2分の1を暫定納税 額として統一した。赤字・黒字の相殺年度をさかのぼって5年まで緩和した。
−240−
( 14 )
不良債権引当準備金は1%に統一され,さかのぼって3年間の実際の不良 債権が高いときは,その平均比率に基づいて計算する。徴収手順部分では,
以下のようなことが修正された。延期決算申告の開始日は,2月20日とする。
控除および免除の申請書の記入日は,翌年の2月20日までと設定する。総合 所得決算申告書を簡略化し,所得確定の異議を禁止する規定を削除する。税 率構造の変更では,以下のようなことが修正された。総合所得税の税幅を五 段階に簡略化し,最高限界税率を40%まで下げる。扶養家族控除額は免税と なり,かつ金額が引き上げられた。
1990年までは投資奨励条例があり,生産事業は一律に政策的租税優遇措置 を受けられたが,1991年からは新規の適用がなくなり,代りに産業昇級条例 によってR&D,オートメ化,公害防止等に投資する企業が個別に租税優遇 措置が受けられることとなった。
さらに1992年には,免税額を修正し,消費者物価指数が前調整年度の指数 より3%以上越えた場合,消費者指数の増加した程度にもとづき調整を行い,
毎年検討して修正することを避けた。1993年には,次のようなことが規定さ れた。総合所得税の各控除額の調整方法は,三年ごとに所得水準および基本
図表5 第五段階 改革,進歩時期(1969年〜)
時 期 1969年
法律修正理由 ①所得税が総税収に占める比重が低かったため。
②九年間の義務教育を推し進め,また積極的に重要な経済社会の構築 に従事するために財源が必要であったため。
③健全で合理的な税制にするため。
法律修正理由 ①税率3%から52%を,6%から60%に調整するため。
②営利事業所得税を2万以下は免税にするため。
③標準控除額をアップさせるため。
④未分配利潤の10%を所得税として天引きするため。
施 行 状 況 1968年4月税法改訂会の成立,1968年12/30公布施行。
(注)陳妙香『所得税法規』華立図書,1989,p.14
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生活水準の変動状況にもとづいて再評価を行う。総合所得税の各控除額を引 き上げ,満70歳の扶養されている納税者およびその配偶者の直系親族に対す る免税額を30%まで引き上げる。教育費特別控除を増設する。他に税金検査 徴収法の変更にあわせて,罰則を管理する政府機関を税収機関に変更し,裁 判長により罰則が行われるという手順を削除する。
! 配当金課税の改正1997年(インビュテ−ション方式を導入)
台湾において,税法の基礎をなすといわれる配当金課税における二重課税 の調整のためにインビュテ−ション方式が導入されることとなった。これは 台湾の税制上,大きな転換であったといえる。
① 制度改正の背景
" 制度改正以前の税制概述
従来所得税制は会社所得税と個人所得税を平行して課税する税制であった。
会社所得税は会社,単独資本およびパートナーシップなどの三種の企業形態 における営利事業を課税対象とするものであり,その納税後の利益分配の際,
再度単独資本主とパートナーに分配された利益および株の配当金所得に対し て,それぞれ個人所得税を徴収する。この所得税制は伝統的な会社所得税制 であり,投資した企業の所得からと個人出資者としての,二重に課税される ことになるのであった。
上述の重複課税現象を軽減させるために,台湾は多くの租税減免措置を とってきた。例えば,会社の段階においては,特定の産業に対して五年の免 税,投資額分にたいする免税,減価償却を加速させるという特恵を実行した。
これは,租税特別措置法上のわが国の特別償却に該当すると思われる。また 個人レベルにおいては,株の配当金について,若干金額の免税を認めるなど の諸々の規定を定めた。これらの措置により投資所得の重複課税を軽減させ ることはできたが,しかしそれは僅かな特定の産業に対してのみとられた措 置であり,全面的に適用されたものではなかった。それゆえ実際には各産業
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別の租税負担が同一ではなくなり,かえって一種の不公平な状態を作り出し てしまった。
! 制度改正の政策的な理由
制度改正以前には二つの税をそれぞれ課しており,また幾つかの差別性租 税奨励措置が存在していたため,台湾の税制は明らかに不完全な状態であり,
経済行為は捻じ曲げられ,税負担の分配もまた不公平な状態であった。
" 制度改正過程の回顧
台湾における二つの税を一つにする制度の立案は,1968年三月に学士院会 員である劉大中氏が「行政院賦税(租税)改革委員会」を設立し,第一次賦 税(租税)改革を行ったときにさかのぼることができる。
すなわち投資所得の重複課税問題に的を絞り,イギリスの1966年以前の税 制度における精神に準じて提出され,独立資本,パートナーシップに対して は営業所得税を徴税せず,また会社所得税を採択し,会社の利益を分配する 際に株主が既に納付した会社所得税を納付すべき個人所得税と相殺すること が許され,二種類の所得税が一つに統合されたのである。配当金の二重課税 調整措置,台湾ではイギリス精神に準拠して作成したことがわかる。
しかし当時国際間においても二つの税制を統一するという観念はまだ普及 しておらず,また営利事業所得税の税率は18%を越えないという投資奨励条 例の規定に制限されて,この税制の統一は順調に採択されていなかった。
その後1985年5月に行政院が設置した「経済革新委員会」は,投資から得 た所得の重複課税および租税制度にある不公平な待遇をなくすために,二つ の税制を統一する制度における「全体収益計算徴税法」を採用することを提 案した。
一般租税理論からみれば,配当金所得の重複課税問題を解決するために,
多様な二つの税制を一つに統一する方法を採択することができる。その方法 とは,パートナーシップ法,既に納付された配当金の減除法,既に納付され 台湾の税法ハイブリッド(山内) −243−
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た配当金の相殺法,二種類の税率法,配当金所得免税法,配当金所得控除法,
全体収益計算徴税法,および混合法など,八種類があった。
二つの税制を一つに統一する方式を選択するにあたって,財政部と国内の 研究界およびビジネス業界がのぞましいと見なしたものは全体収益計算徴税 法と配当金所得免税法の二種類であった22)。全体収益計算徴税法がインビュ テ−ション方式と考えられる。
事実上,アメリカの財政部が1992年に行った二つの税制を一つに統一する ための研究報告においても,配当金所得免税法を採択する方向で建議がなさ れていた。また国内の研究会においても,一部の人にこの方法を押す傾向が みられた。その主な理由は,配当金所得免税法においては制度の変更が小さ かったため,税務業務の複雑性を増加させることが無く,よって簡単に実行 することが可能だったのである。当時のアメリカ財政部は,配当金所得免税 法に動いていたことがわかる。
しかし台湾財政部は検討作業において,全体収益計算徴税法は配当金所得 免税法よりも比較的公平であり,一般個人所得税の総合課税といった精神と 矛盾しないことに気付き,しかも事実上,二つの税制を一つに統一する方法 を実行する国家においては,殆ど全体収益計算徴税法が採用されていた。し たがって財政部は全体収益計算徴税法と配当金所得免税法を比較比較した上 で,次の理由にもとづいて全体収益計算徴税法を採用し,二つの税制を一つ に統一する方法として決定した。
つまり,台湾はアメリカ財政部の主張していた配当金所得免除法を採用せ ず,イギリス式のインビュテーション方式つまり全体収益計算徴税法を採用 したことがわかる。
事実,全世界の二つの税制を一つに統一する方法を採択する二十ヶ国と地 域の中で,香港が配当金所得免税法を採用した。これは,香港の税制度が分 類所得税の概念を持っていたことにもとづいて設立されたためである。した
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がって,配当金所得免税法は,その税制の精神に符合すると言えたのであっ た。
これに対して世界中の多くの国においては,台湾を含めて,その個人所得 税は個人のそれぞれの所得を総合してから累進課税を行っていたため,配当 金所得の課税はこれらの国々の所得税制の精神にも符合していたと言える。
つまり総合課税,累進課税を適用していた台湾にとつては,インビュテ−ン 方式である全体収益計算徴税法が適合していたこと考えられる。
全体収益計算徴税法のもとにおける配当金所得については,会社段階にお いて納付する会社所得税において個人株主段階の所得税の一部を含めて納付 しなければならない。すなわちこの場合の会社所得税は,個人税を天引きし たことと同じである。これは,普通の国家で通用している,給与から税金を 天引きする方法と同じである。したがって全体収益計算徴税法は,台湾の所 得税制の精神に符合し,個人所得税税制の完全性を維持することができたの である23)。
3.台湾税法の特徴
台湾の税は大きく分けて,国税と地方税に分類され,各々直接税と間接税 からなる。
台湾の租税構造を顧みると従来は間接税を主とし,直接税を従としてい た24)。1969年では,直接税23.0%,間接税77.0%であった。このように元来,
直接税の比率が低かったが,1989年に民主化の進展に伴い直接税が間接税を 超えるようになった。
台湾の税制の特徴としては,第一に統一徴収が挙げられる。
これは行政院の直轄都市である台北市と高雄市以外は,各省市にそれぞれ の徴収事務所を設置し,国税と省市税,県市税の地方税をまとめて徴収する 制度である。国民政府では,大陸では,国税と地方税とを分けて別個に徴収 台湾の税法ハイブリッド(山内) −245−
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していたが,台湾に後退後は,徴税効率を上げるため,国税と地方税の徴収 機関を上記のように統合した25)。
第二の台湾税制の特徴には営業税の存在があげられる。
台湾では税といえば,やはり所得税よりも営業税という付加価値税(消費 税)が中心となると考えられる。この点はわが国とは異なっている。営業税 が利益の有無に関わりなく毎月納付される。課税対象は台湾国内における物 品や労働サービス販売とされ,一般的な営業税率は一部例外を除いて5%で ある。
第三の台湾税制の特徴として,公給領収書の使用がある。
わが国では飲食業者に対してのみ公給領収書の使用が義務づけられている が,台湾では全産業に対して統一発票と称する公給領収書が求められる。政 府が印刷したものを使用し,受領の申請から使用状況まで税務機関によって 管理される。
企業は,商品や原料の仕入れにあたり統一発票を取得しなければ処罰され る。また年間のグロス計算で一定の比率を超える部分は費用として計上でき ず所得として見なされるため営利事業所得税の税額が増えることとなる26)。
営利事業所得税とはわが国の法人税に該当する。台湾では法人組織でない 企業に対しても,営利を目的としたものに対しては全て,営利事業所得税を 課している。ただし1997年8月の行政院の閣議により営利事業所得税と総合 所得税を一体化,1999年から新税制体系に移行した。
投資により得られた株配当に重複して課税されていた状況を改善するため の措置として導入されたもので,1999年1月1以降に開始する事業年度にお ける利益のうち会社の未配分利益に対して一律10%課税を行うことになった。
これにより企業が納付した営利事業所得税は株主の総合所得税から控除する ことができ,課税は一回で済むこととなった。
台湾税制の特色の第四として,土地増値税が挙げられる。土地増値税とは
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わが国の個人所得税の譲渡所得税に該当する。台湾では,土地増値所得(譲 渡所得)については分離課税方式を採用している。土地の譲渡による利益に は所得税及び法人税は免除されるが,この土地増値税が課せられる。土地増 値等の土地税は孫文のいう平均地権という特色ある考え方を基礎に土地の集 中と土地の騰貴を抑制する見地から,地価税,土地増値税,田賦の諸制度が 設けられていた27)。このように台湾の税制の特色としては,主として統一徴 収,営業税が基本,公給領収書,土地増値税が挙げられる。
4.台湾税法ハイブリッド(税制移転メカニズム)
本節は,台湾の税法史のなかから,台湾の税制の移転メカニズム(ハイブ リッド税法)を検討するものである。
台湾の税法の歴史は1910年にスタートした。当時台湾はわが国の統治下で あった。1914年の所得税条例は,わが国の所得税法を参考にしたものであっ て,これは台湾における最初の所得税法であった。
その後,わが国は日露戦争の処理後,政府の支出膨張のため,台湾に法人 税の課税を実施した。さらに1921年には個人所得税を実施され,わが国の税 法が導入されていった。しかし,台湾がわが国の所得税制を参考にしたとは いえ,所得税制はそもそもイギリスで生まれ,しかも,そのうち累進課税制 度はアメリカの影響を受けてハイブリッド化されていることは確かである。
このように台湾の税法のスタートは,個人所得税,法人税ともわが国の税 法が導入それていた。
しかし戦後,台湾は中華民国に還付されると同時に,当時の賦課徴収の根 拠となっていたわが国を参考にしたという台湾所得税令と台湾法人税令は廃 止された。
そして1950年台湾政府は租税制度の専門家や大学教授等で「税制改革委員 会」を組織し,税制改革の研究をしたという。その結果が台湾税制改革研究 台湾の税法ハイブリッド(山内) −247−
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日本の統治時代
台湾の税法 台湾所得税令 台湾法人税令
(1910年から戦前)
日本の税法
台湾特有の
戸税制度 他国の税制
(戦後1955年まで)
(1956年以後)
名詞の定義 (所得税法総則)
配当金課税
インビュテーション方式
標準控除 課税範囲
青色申告制度
租税特別措置
イギリス
日 本 アメリカ 西ドイツ
台湾の税法
台湾の税法 1963年 所得税中心の課税体系
報告にまとめられた。そこで考えられたのが台湾特有の戸税制度に,他国か ら影響された分類所得税,総合所得税を組み合わせた三位一体制であった。
これは,まさに台湾の租税制度と他国との税制のハイブリット税法であると 図表6 台湾税法ハイブリッド・税制の移転メカニズム
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いえる。
その後,戸税の推計課税にひきずられて総合所得税は本来の役割を果たさ なくなった。しかしやがて戸税と切り離して単一所得税にすべきだという主 張が高まり,1956年台湾の所得税は単一所得税に移行した。台湾にとって所 得税を中心とする直接税体系を構築することが近代的税制として必要不可欠 であった。
ここでは経済発展の助長を所得税の基本原則としたが,その中で同年租税 特別措置が導入され特別償却等が実施された。そして新設4年免税の加速償 却の追加,増設5年免税の加速償却追加がなされている。この租税特別措置 はわが国やアメリカにおける租税特別措置の成功が何らかの形で影響したも のと考えられる。行政院では直接税体系を打ち建てるべく所得税再修正案を 1959年に立法院に提出した。
1963年には所得税を中心とする直接税体系を打ち建てた。これは専門家,
学者,各会社団体等の各階層の意見を集め,立法院で審議された。このよう な広い範囲に各階層の意見を結集したことが台湾所得税史にとって初めての できことであった。
当時の台湾の所得税の課税範囲は,西ドイツに近いものであり,わが国や アメリカとは異なっていた。新法第1条に「所得税は総合所得税と営利事業 所得税に分かれると規定されているが,総合所得税がわが国の所得税に該当 する。営利事業所得税が法人税と個人事業所得税に当たる。
すなわち台湾では,わが国と同じ所得税法と称しているが,所得税法とい う法律のなかで法人税法と所得税法を規定していることがわかる。つまり台 湾の所得税法とは,わが国の個人所得税に相当する総合所得税と,法人税に 相当する営利事業所得税の2種類が含まれている。どちらも所得税法を基本 法としている。しかし所得税総則第2節では「名詞定義」がなされ,これは わが国と同様であった。
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