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法人税法改正による税効果会計への影響

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法人税法改正による税効果会計への影響

著者

堺 貴晴

雑誌名

会計専門職紀要

3

ページ

115-127

発行年

2012-03-31

URL

http://id.nii.ac.jp/1113/00000210/

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【研究ノート】

法人税法改正による税効果会計への影響

堺  貴 晴

1.はじめに  平成23年12月2日に、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等 の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)(以下、「構築法」という。)および「東日本 大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平 成23年法律第117号)(以下、「復興法」という。)が公布された。  この構築法においては、平成24年4月1日以後に開始する事業年度の所得金額に対する法人 税の税率が、現行の30%から25.5%に引き下げられる。他方、復興法においては、復興特別法 人税が創設され、平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度において、 各課税事業年度の基準法人税額に10%の税率を乗じて復興特別法人税額が計算される。このた め、平成24年4月1日以後に開始する事業年度に解消が見込まれる一時差異等に係る繰延税金資 産および繰延税金負債の計算に用いる法定実効税率は、法人税率の引下げと課税期間が限定的 な復興特別法人税の双方の影響を考慮することが必要である。 2.税効果会計の導入  法人税の課税所得の計算は、確定決算主義に基づき、企業会計上の利益に税務上の申告調整 を行って課税所得を算定する。企業会計と法人税法はその目的が異なることから、収益・費用 と益金・損金との間に認識時点の相違や資産・負債の額に相違が生じる。そのため、企業会計 上の税引前当期純利益と法人税の課税所得の金額は一致しない。この場合、法人税その他利益 に関連する金額を課税標準とする税金(以下、「法人税等」という。)の額が税引前当期純利益 と期間的に対応せず、また、将来の法人税等の納付額に対する影響が示されていないことにな る。税効果会計とは、法人税等の額を適切に期間配分し、法人税等を控除する前の当期純利益 と法人税等を合理的に対応させることを目的としている。「税効果会計を適用しない場合には、 課税所得を基礎とした法人税等の額が費用として計上され、法人税等を控除する前の企業会計 上の利益と課税所得とに差異があるときには、法人税等の額が法人税等を控除する前の当期純 利益と期間対応せず、また、将来の法人税等の支払額に対する影響が表示されないことにな る」(「税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書」「税効果会計に係る会計基準の設定 について」(以下、「基準の設定について」という。)二、1)。この観点から、財務諸表の作成

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上、税効果会計を全面的に適用することになったと考えられる(基準の設定について二、1)。  税効果会計の適用は、昭和50年に企業会計審議会が公表した「連結財務諸表の制度化に関す る意見書」および昭和51年に制定された連結財務諸表規則において、任意選択が認められた。 しかし、連結財務諸表における法人税等には、納税額方式と税効果会計方式が併存し、適用範 囲についても全面的配分法と部分的配分法が併存しており、法人税等の会計処理および利益数 値の比較可能性に欠如があった。平成9年に企業会計審議会は「連結財務諸表制度の見直しに 関する意見書」を公表し、連結財務諸表を全面的に改訂した。この改訂は、連結情報を中心と するディスクロージャー制度への転換を意図したものであり、連結財務諸表が企業集団に関す るより適切な投資情報を投資家に提供することを目指したものである。また、連結財務諸表の 作成上、税効果会計を全面的に適用することを原則とした。適用範囲を全面的配分法とし、会 計基準については資産負債法が採用され、繰延税金資産・繰延税金負債の計上が示された(基 準の設定について一、二)。  しかし、連結財務諸表のみに税効果会計が適用され、個別財務諸表には適用の定めがなく納 税額方式が採られていたことにより、同一事象に対する異なる情報の提供が行われ、連結財務 諸表と個別財務諸表による情報の乖離が、投資家、株主、債権者等の利害関係者の判断を困難 にしていた。税効果会計は、本来連結財務諸表だけでなく個別財務諸表においても適用される べきであるとし、会社法(旧商法)との調整を進めることが要請されていた。これを受けて、 平成10年に企業会計審議会は「税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書」を公表した。 意見書では、個別財務諸表へ税効果会計を適用し、個別財務諸表、連結財務諸表、中間財務諸 表を含めて「財務諸表」と総称し、これらに対して税効果会計を適用することを明らかにした。  わが国における税効果会計基準は、米国会計基準、国際会計基準(International Accounting Standards)、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standard)の体系に基づ

いて作成されており、国際的にも調和した基準形成がなされている(1) 3.差異の把握方法  法人税の課税所得は、企業会計上の利益の額を基礎にして計算される。ただ、企業会計上の 利益と法人税法上の課税所得は異なる。利益は収益と費用によって算定され、課税所得は、益 金と損金によって算定される。収益と益金とは必ずしもイコールではないし、費用と損金もイ コールではない。また、収益・費用の認識時点と益金・損金の認識時点に相違がみられるのが 一般的である。税効果会計は、企業会計上の税引前当期純利益と法人税の課税所得の金額に相 違が存在し、その相違が会計数値に影響を与える場合に限り問題とされる。当該差異の把握方 法には、「収益・費用アプローチ」と「資産・負債アプローチ」が考えられる。 (1)中田信正『税効果会計詳解』(中央経済社、平成11年)、30−31頁。

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(1)収益・費用アプローチ  収益・費用アプローチは、企業会計上の利益計算における収益・費用、法人税法上の課税所 得計算における益金・損金の差額から把握する方法である。税効果会計は、法人税等を適切な 期間配分によって、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等の額を合理的に対応される ことを目的としている。また、収益・費用アプローチは、企業会計と課税所得計算の会計処理 の相違によって生じる差異を「永久差異」と「期間差異」に大別している。  永久差異とは、税引前当期純利益の計算に含まれた収益および費用と課税所得計算に含めら れた益金と損金の差額が、将来の期間において解消されることのない差額である。永久差異 は、税引前当期純利益あるいは課税所得のいずれか一方だけに影響を及ぼす差異である。例え ば、交際費は会計上では費用であるが、法人税法上は原則として損金とはならない。したがっ て、交際費は会計上費用であるが、法人税法上は原則として損金不算入であるため、この差異 は税効果会計では永久的に調整されることはないためである。  期間差異とは、企業会計上の収益・費用と法人税法上の益金・損金との差額が将来において 調整・消滅する性格の差異である。例えば、法人税法上で是認される限度を超えて貸倒引当金 の繰入れを行ったことによって生じた差異は、実際に貸倒れが発生する将来の時点で解消され る。まず、このような期間差異が税効果会計の適用対象となる。 (2)資産・負債アプローチ  資産・負債アプローチは、貸借対照表の資産および負債と、税務申告上の資産および負債と の差額から把握する方法であり、企業会計上の収益または費用の認識時点と、法人税法上の益 金または損金の認識時点との相違等が貸借対照表の資産・負債の金額にどのような影響を及ぼ すかに注目するものである(2)  資産・負債アプローチは、貸借対照表上の資産・負債と税務申告上の資産・負債の金額との 差異を「永久差異」と「一時差異」に大別している。  永久差異とは、企業会計上、貸借対照表および連結貸借対照表に計上される資産・負債の金 額と税務申告上の資産・負債の金額との差額のうち、将来の期間において課税所得に算入され ない差額をいう。永久差異は、企業会計上の資産・負債の金額と税務申告上の資産・負債の金 額との差額が、将来の法人税等の支払額において、いかなる期間においても課税所得の計算に 影響を及ぼさない差異である。例えば、課税所得の計算上損金不算入となる罰金、科料の未払 金が貸借対照表に示されている場合が該当する。当該罰金等は、損益計算書において費用とし て処理されており、当該罰金等の未払金が支払われた場合でも、法人税法上は損金とならない ため、課税所得を減少させることはないので、税効果会計の適用範囲外となる。 (2)菊谷正人・石山宏『新会計基準の読み方』(税務経理協会、平20)、98頁。

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 一時差異とは、企業会計上、貸借対照表および連結貸借対照表に計上される資産・負債の金 額と税務申告上の資産・負債の金額との差額をいう。一時差異は、将来の課税所得に含められ ることにより解消する差異である。したがって、益金が計上されれば課税所得が増加し、その 結果税金が増加する。また、損金は税金を減少させることになる。  税効果会計で問題となるのは「一時差異」である。一時差異とは、①収益または費用の帰属 年度が相違する場合、②資産の評価替により生じた評価差額が直接資本の部に計上され、か つ、課税所得の計算に含まれていない場合(「税効果会計に係る会計基準」(以下、「基準」と いう。)第二、一、2(1))に生ずる。例えば、①には、企業会計上設定した貸倒引当金や減価 償却費等が該当する。企業会計上設定した貸倒引当金や減価償却費等について、法人税法は損 金算入限度額を定めている。これによって、企業会計上の利益と法人税法上の所得との間に差 異が生じる。損金算入限度額を超えた分の費用は、将来実際に貸倒れや減価が実現したときに 損金に算入されることになるので、この差異は将来的に調整されることになる。②に該当する ものとしては、有価証券や土地等が該当する。  税効果会計は、初期の段階で収益・費用アプローチを採用していたが、収益・費用アプロー チは、繰延税金の資産性および繰延税金の負債性を説明することが困難であり、また、諸外国 においても貸借対照表が提供する情報の重要性が強調される傾向があり、わが国の税効果会計 は資産・負債アプローチを採用している。 4.税効果会計の方法  税効果会計の方法には、「資産負債法」と「繰延法」がある。資産負債法は、企業会計上の 資産または負債が将来回収または返済されることにより一時差異が解消するときに税効果を将 来支払うべき税金あるいは将来の税金の前払いとして会計処理する方法であり、翌期以降に支 払うか軽減される税額を前払税金「繰延税金資産」または未払税金「繰延税金負債」として貸 借対照表に計上することを主目的としている。資産負債法は、資産・負債アプローチにより企 業会計上の資産・負債の金額と法人税法上の資産・負債の金額との差額を問題とする。した がって、税効果額は、前払税金の場合には前払いした期の税率により、未払税金の場合には、 実際に支払われる期の予測税率(3)により算定され、差異解消期間の税率が適用され、翌期以 降に税率や新税が賦課されれば修正計算を行う(4)  繰延法は、一時差異のうち損益の期間帰属の相違に基づく期間差異について、発生した期の その差異に対する税負担額または税軽減額を差異が解消するまで「繰延税金資産」または「繰 (3)「法定実効税率」が用いられる。    法人税率×(1+住民税率)+事業税率         =法定実効税率          1+事業税率 (4)菊谷正人『財務会計学通論』(税務経理協会、2009)、200頁。

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延税金負債」として計上し、これを将来の期間に対応する企業会計上の収益・費用として償却 していく方法であり、期間差異が発生した期の法人税の期間対応を主目的とする。繰延法は、 収益・費用アプローチにより企業会計上の収益・費用による利益の額と、法人税法上の益金・ 損金の額による課税所得の金額に相違がある場合、期間差異に対する当期に発生した税金負担 額または税金軽減額を問題とする。したがって、当期の企業利益に対応しない部分を繰り延べ るため適用される税率は、再発生年度の税率が適用され、その後の変更があっても新税率によ る再計算および修正は行われない。  現在、税効果会計の方法は、繰延税金資産または繰延税金負債の額は、回収または支払いが 行われると見込まれる期の税率に基づいて計算する資産負債法が採用されており、法人税等に ついて税率の変更等があった場合には、過年度に計上された繰延税金資産および繰延税金負債 を新たな税率に基づいて再計算することになる。これは、資産・負債アプローチの観点に立ち、 繰延税金資産が有する税金の資産性と繰延税金負債が有する負債性をより重視したものである。 5.税効果会計の効果  税効果会計の目的について貸倒れを例に考えてみる。  【設例】  A 社の税引前当期純利益(不良債権償却)と課税所得金額(貸倒償却調整前)は、第1期、 第2期とも1,000万円である。  第1期に企業会計上で不良債権800万円を償却したが、法人税法上は損金不算入として申告 調整において課税所得金額に加算した。  第2期において、法人税法上貸倒損失が確定して損金算入とされ、申告調整において減算さ れた。  税率を40%として、納税額方式と税効果会計による当期純利益を計算し、法人税等の会計処 理を示すことにしたい。        納税額方式        税効果会計        第1期    第2期    第1期    第2期  貸倒償却前当期純利益  1,800   1,000   1,800     1,000   貸倒償却      (−)800        (−)800          税引前当期純利益  1,000   1,000     1,000     1,000  法人税等   当期納税額   720    80      720      80   税効果額   (法人税等調整額)       (−)320    (+)320 

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 法人税等計上額   720    80      400       400   当期純利益   280       920      600       600   第1期では、貸倒償却調整前課税所得1,000万円に有税償却800万円が加算されて、課税所得 が1,800万円となり、納税額は720万円となる。第2期では貸倒償却調整前課税所得1,000万円か ら貸倒償却損金算入額800万円を減算して、課税所得が80万円となる。  納税額方式では、第1期は税引前当期純利益1,000万円から納税額720万円を差し引いて、当 期純利益が280万円となり、第2期は税引前当期純利益1,000万円から納税額80万円を差し引い て、当期純利益が920万円となるため、業績の期間比較が困難である。  そこで、税効果会計て適用する場合、第1期の貸倒償却800万円が法人税法上損金不算入に なるため、将来減算一時差異800万円が生じる。それに40%の税率を乗じた前払税効果額320万 円を繰延税金資産として計上するとともに、当期納税額720万円から320万円を差し引いて法 人税等計上額が400万円となる。この結果、第1期の当期純利益が600万円となる。第2期で は、第1期損金不算入分が法人税法上損金算入されるため、将来減算一時差異800万円が解消 し、対応する繰延税金資産320万円が減少する。この結果、法人税等調整額320万円が納税額80 万円に加えられて、法人税等計上額が400万円となり、第2期の当期純利益は600万円となる。  以上のように、税効果会計を用いれば第1期、第2期ともに当期純利益が600万円となり、 適正な期間比較が可能となる。  事実、金融機関における繰延税金資産の多くは、不良債権の処理に関わるものである。金融 機関の不良債権処理の手順は、まず、貸倒引当金を有税で設定する。その後、融資先が倒産し て、貸倒損失が実現した段階で引当金相当額が損金として認められる。貸倒損失は、企業会計 では費用として計上されても、法人税法では企業会計よりも後になって損金として認識される ことになる。法人税法では、債権について債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が 回収不能であることが明らかにならなければ、貸倒処理を認めていない。すなわち、取引先が 経営破綻あるいは実質的な経営破綻に至っていないが、財政状態が悪化して、元本や利払いが 滞っている場合がある。企業会計であれば、こうした段階で貸倒損失を見込んで貸倒引当金を 設定する。しかし、法人税法上は、租税回避の防止、課税の公平の確保という点から、①法律 上の貸倒(法人税基本通達9−6−1)、②事実上の貸倒(法人税基本通達9−6−2)、③形式上 の貸倒(法人税基本通達9−6−3)という場合にのみ貸倒損失の損金算入が認められる。つま り、法人税法では、債務者が経営破綻あるいは実質的な経営破綻に至った段階で貸倒れを認定 する。  さらに、設定する貸倒引当金の額にも問題がある。引当金の額について、企業会計では独自 の判断で貸倒引当金の額を見積もることが可能である。一般企業における「受取手形、売掛金、 貸付金その他の債権に係る貸倒引当金については『企業会計原則』注解18に基づき設定する こととされており、貸倒見積高の具体的算定方法は会計慣行に委ねられてきた」(金融商品に

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係る会計基準五、1)のである。しかし、実際には、多くの企業は貸倒引当金を設定する場合、 法人税法の設定基準にしたがって設定してきた。それは、仮に、法人税法の基準額を超えて貸 倒損失を見積計上しても、法人税法に損金算入限度額の定めがあって、その限度額を超えた額 は損金に算入されないからである。  金融商品に係る会計基準は貸倒見積額を適切に算定するたに債権を次の3つに区分している。 債務者の財政状態および経営成績等に応じて、①経営状態に重大な問題が生じていない債務者 に対する債権(一般債権)、②経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題 が生じているかまたは生じる可能性の高い債務者に対する債権(貸倒懸念債権)、③経営破綻 または実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権(破産更生債権等)に区分している。 一方、金融機関では、金融庁の「預金等受入機関に係る検査マニュアル」にしたがって、5つ の債務者区分に分けて貸倒引当金を設定している。  この場合、一般債権が正常先・要注意先に、貸倒懸念債権が破綻懸念先に、破産更生債権 等が実質破綻先・破綻先に概ね該当する(公認会計士協会「金融商品会計に関する実務指針」、 295項)。  税効果会計が導入されて、金融機関は不良債権を償却しやすくなった。金融機関は貸倒れに 備えて、引当金を積むが、それは法人税法上、損金不算入であるため、会計上の利益は法人税 法上の所得よりも多く算定され、法人税を企業会計上の利益よりも余分に支払うことになる。 しかし、税効果会計が導入されると、その分が繰延税金資産を構成することになり、仮に、実 効税率が40%であるとすれば、不良債権の帳簿金額の40%は繰延税金資産として認定され、そ れに見合う「税効果資本」が自己資本に組み込まれることになる。そのため、税効果会計は、 金融機関に不良債権処理を積極的に行わせる役割を果たしている(5) 債権の種類 債権の定義 正常な債権 業況が良好な企業の債権 要注意先債権 赤字が続くなど経営不振企業への債権 要管理先債権 要注意先債権のうち返済条件の変更などをした債権 破綻懸念先債権 債権超過状態など経営破綻に陥る可能性が高い企業への債権 実質破綻先債権 相当期間実質的に大幅な債務超過に陥っていて事業好転の見通しが ないなど実質的に経営破綻に陥っている企業への債権 破綻先債権 破産、会社更生の手続きに入った企業への債権 (5)吉田康英「金融機関の不良債権処理」『企業会計』第55巻第2号、28頁。

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6.法人税法改正による税効果会計への影響 (1)改正後の法定実効税率  平成23年12月2日に公布された法人税法改正においては、平成24年4月1日以後開始する事 業年度について、法人税率が30%から25.5%に引き下げられることになり、また、平成24年4 月1日から平成27年3月31日までの期間内に開始する事業年度は、各課税事業年度の基本法人 税額の10%が復興特別法人税として課税されることとなった。これらの改正により、法定実効 税率は以下のように引き下げられることになる。 (2)改正後の税率を適用する時期  改正後の税率を適用する時期については、改正税法が決算日までに公布されている場合には、 下記の取り扱いにしたがって処理することになる。 ・税効果会計上、改正後の税率を適用する(個別税効果実務指針第18項) ・決算日現在における改正後の税率を用いて、当期首における繰延税金資産及び繰延税金負 債の金額を修正する(税効果会計基準注解(注6)参照) ・税率の変更が行われた結果生じた繰延税金資産及び繰延税金負債の修正差額は、損益計算 書上、税率変更に係る改正税法が公布された日を含む年度の法人税等調整額に加減して処 理する(税効果会計基準注解(注7)前段) ・ただし、資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額が直接純資産の部に計上される場 合において、税率変更に伴い評価差額に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の金額を修正 したときは、当該修正差額は、評価差額に加減して処理する(税効果会計基準注解(注 7)ただし書、個別税効果実務指針第19項)  一方、改正税法の公布日が決算日よりも後の場合には、税率変更の内容及びその影響を注記       法人税法等改正による法定実効税率 (期末資本金の額が1億円超法人に対する東京都の税率の場合) 法人税法改正前 法人税法改正後及び復興 特別法人税 (平成24年4月1日から平成 27年3月31日までの期間内 に開始する事業年度) 法人税法改正後 (平成27年4月1日以後開始 事業年度) 法人税率 所得金額に対する税率 30% 25.5% 25.5% 復興特別法人税 なし 各課税事業年度の基準法 人税額の10% なし 法定実効税率 40.69% 38.01% 35.64%

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する(税効果会計基準第四、4)ことになる。 (3)回収または支払が行われると見込まれる期の税率  税効果会計基準第二、二、1および2に基づき、期末における将来減算一時差異および将来 加算一時差異の将来解消見込年度のスケジューリングを実施し、改正税法に基づく将来解消見 込年度に適用される税率により繰延税金資産または繰延税金負債の金額を算定する必要がある。  なお、監査委員会報告第66号5の会社分類(例示区分)が①の会社(6)も、期末における将 来減算一時差異及び将来加算一時差異の将来解消見込年度のスケジューリングを実施した上で、 繰延税金資産または繰延税金負債の金額を算定することとなる。 (4)スケジューリングが不能な一時差異の取扱い  スケジューリングを行った結果、スケジューリングが不能な一時差異については、当該一時 差異が復興特別法人税課税期間に解消するとはいえないため、復興特別法人税の課税を含まな い税率に基づき、繰延税金資産及び繰延税金負債の算定を行うこととなる。  また、その他有価証券の評価差額のうちスケジューリングが不能なものについて、その評価 差額を評価差損と評価差益に区分せず、各合計額を相殺した後の純額の評価差損または評価差 益に対して繰延税金資産または繰延税金負債を認識する場合(監査委員会報告第70号Ⅰ3.参 照)、当該純額の評価差損または評価差益に係る一時差異については、復興特別法人税課税期 間に解消するとはいえないため、復興特別法人税の課税を含まない税率に基づき、繰延税金資 産および繰延税金負債の算定を行うこととなる。 (5)会計処理方法  【設例】 四半期累計期間中に税率の変更があった場合の税金費用の計算  1.前提条件 (1)当第2四半期累計期間に係る税引前四半期純利益は1,000、将来減算一時差異の発生額 は300(前期末残高1,500、当第2四半期末残高1,800)、交際費(損金不算入)は100である とする。 (2)四半期会計期間を含む事業年度(×1年3月期)に係る予想年間税引前当期純利益は 2,000、将来減算一時差異の発生額は500(前期末(当期首)残高1,500、予想当期末残高 2,000)、交際費(損金不算入)は200であると予想する。 (3)当第2四半期会計期間中に税法改正が公布され、法定実効税率は40%から翌期(×2年 3月期)以降は38%に、×5年3月期以降は35%になったが、当事業年度における納付税 (6)期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期(当期及びおおむね過去3年以上)計上して いる会社をいう。

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額の計算には税額変更の影響はないものとする。また、簡略化のため納付税額は、課税所 得に税率変更前の40%を乗した金額と同額になると仮定する。 (4)当第2四半期末の将来減算一時差異1,800は、×2年3月期から×4年3月期までに1,300、 ×6年3月期までに500が解消すると見込まれる。 (5)繰延税金資産回収可能性の判断にあたり、経営環境等に著しい変化は生じておらず、か つ、一時差異等の発生状況について前期末から大幅な変動がないと認められるものと仮定 する。また、当期末に予想される将来減算一時差異2,000には当期末残高1,500から繰り越 されたものを含み、×2年3月期から×4年3月期までに1,400(前期末残高1,100を含む)、 ×6年3月期までに600(前期末残高400を含む)が解消すると見込まれる。 (6)税金費用は、法人税等調整額を含むことに留意する。 2.年度決算と同様の方法による法人税、住民税および事業税並びに繰延税金資産の計算  (1)法人税、住民税および事業税の計算    税引前四半期純利益      1,000    将来減算一時差異        300    交際費損金不算入        100        課税所得       1,400        納付税率         40%   法人税、住民税および事業税    560  (2)繰延税金資産の計算    繰延税金資産(第2四半期末)   669(1,300×38%+500×35%)  (3)法人税等調整額の計算    繰延税金資産(当期首)      600(1,500×40%)    繰延税金資産(第2四半期末)   669    差引法人税率調整額(△貸方)  △69   (注)以下の税率変更による影響額が含まれている。    1,300×(40%−38%)+500×(40%−35%)=51  (4)仕訳    法人税、住民税及び事業税  560   未払法人税等    560    繰延税金資産         69   法人税等調整額    69  3.四半期特有の会計処理による税金費用および繰延税金資産の計算

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 (1)見積実効税率の計算(7)  四半期累計期間に税率の変更が行われた場合には、その影響を合理的に見積もる必要が あるため、見積実効税率は、予想年間納付税額と予想年間法人税等調整額との合計額を使 用して計算する。   ① 予想年間納付税額の計算      予想年間税引前当期純利益   2,000      将来減算一時差異(年間)     500      交際費損金不算入(年間)     200       予想年間課税所得       2,700      納付税率       40%      予想年間納付税額        1,080    ② 予想年間法人税等調整額の計算     繰延税金資産(当期首)の調整    42*1     繰延税金資産(当期発生分)の調整 △184*2     予想年間法人税等調整額(△貸方) △142     (注)*1 (1,100×(40%−38%))+(400×(40%−35%))=42        *2 (300×38%+200×35%)=184       以下の税率変更による影響が含まれている。       1,400×(40%−38%)+600×(40%−35%)=58   ③ 見積実効税率の計算     予想年間納付税額        1,080     予想年間法人税等調整額     △142 (7)見積実効税率は、原則として以下のように算定する。        予想年間税金費用     見積実効税率=          予想年間税引前当期純利益 予想年間税金費用=(予想年間税引前当期純利益±一時差異等に該当しない差異)×法廷効税率−税 額控除額  四半期累積期間中に税率の変更が行われた場合、見積実効税率の調整が必要となり、上記に示た算式の予 想年間税金費用に代えて、予想年間納付税額と予想年間法人税等調整額との合計額を用して見積実効税率を 算定する。       予想年間納付税額+予想年間法人税等調整額   税率変更後の見積実効税率=       予想年間税引前当期純利益   予想年間納付税額は、年間の課税所得を見積り、当期の税率により計算する。  予想年間法人税等調整額は、繰延税金資産および繰延税金負債の増減を見積ることにより算される。 年間ベースの法人税等調整額の予想額である。

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        合計(A)         938     予想年間税引前当期純利益(B)  2,000         見積実効税率(A/B)    46.9% (注)税率変更がなかった場合には、見積実効税率は44%(=(2,000+200)×40% ÷2,000)となる。したがって、税率変更による影響率は2.9%となり、影響額は58 (=2,000×2.9%)となる。この額は一時差異の当期末残高に対する影響額と一致す る。  (2)税金費用の計算    税引前四半期純利益        1,000    見積実効税率      46.9%    税金費用      469   (3)仕訳    法人税、住民税及び事業税   469/ 未払法人税等    469 7.おわりに  個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針18項において、「税効果会計上で適用す る税率は決算日現在における税法規定に基づく税率による。したがって、改正税法が当該決算 日までに公布されており、将来の適用税率が確定している場合は改正後の税率を適用する。」 と示されている。したがって、改正税法が平成23年12月2日に公布されたので、第3四半期の 繰延税金の計算に影響することになる。  また、実務指針17項に、「繰延税金資産は、回収または支払いが見込まれる期の税率に基づ いて計算を行う」と示してあり、復興特別法人税は3年間だけの適用で、4年目以降に解消予 定の一時差異等については、復興特別法人税を加味しない税率で繰延税金資産の計算を行うと いうことになる。  数年先から実効税率を変更するという例はめずらしいとことだが、決算期が12月の会社の場 合、復興特別法人税は平成24年4月1日以降開始事業年度から適用となり、平成23年12月期の 決算においては少なくとも流動項目に係る繰延税金については現行の実効税率で、固定項目に かかわる繰延税金については改正後の実効税率で計算することが要求されると考えられる。こ の考え方からすれば、4年目以降に税率が変更になる場合には、4年目以降に解消される分に ついてはその時点での実効税率を用いることが理論的であると考えられる。

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参考文献 菊谷正人『財務会計学通論』(税務経理協会、2009)。 菊谷正人・石山宏『新会計基準の読み方』(税務経理協会、平20)。 末永英男「税効果会計の効果と問題点」『熊本学園商学論集』第7巻第1号。 中田信正『税効果会計詳解』(中央経済社、平成11年)。 西村幹仁『税効果会計の理論』(同文舘、平13)。 弥永真生・足田浩『税効果会計』(中央経済社、平11)。 吉田康英「金融機関の不良債権処理」『企業会計』第55巻第2号。 企業会計審議会「改正税法及び復興財源確保法に伴う税率変更等に係る四半期財務諸表における税金 費用の実務上の取扱い」(実務対応報告書第28号)。 公認会計士協会「金融商品会計に関する実務指針」www.hp.jicpa.or.jp/specialized_fi eld/pdf/00224− 000428.pdf

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