米国行政法における司法審査の時期の制限
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(2) 2. 秀. 荒. 更に.. ;4)紛争自体が司法的解決の実益あるほどに成熟した段階に至っているかどうか. の,事件成熟性の理論の諸問題に分けることができる.以下これらの開港につき検討する.. 第1節 1.意. 第一次的管理の法理1). 義. 第一次的管時の法理とは,ある問題につき,法律上,裁判所並びに行政庁の両者が何れ も審判をなしうる場合,すなわち,審判権が競合した場合に,何れが最初の審判をなす 権限を有するかに関する理論であり2),その用語は論者により異なるため多様を極め, Primary. Jurisdiction, Preliminary. Resort,. Prior. Resort,. Exclusive. Administrative. Jurisdiction等と呼ばれている。. この法理は後述の「行政的救済を尽すことの理論」並びに「事件成熟の法理」としばし ば混同され易い。これらの理論は相互に司法審査の時期の決定という共通問題を含んでい るが,観念的には一応区別することのできるものである.しかし,また,この第一次的管 轄は極めて酸味であり,その使用する者によって内容が一定していないことも事実であ る.その例として,. Lichter. v.. Eastern. Airlines8)事件をあげえよう.原告はマイアミ. からフィラデルフィアまで航空便で荷物を送ったが航空会社の手落から,受取人に配達さ れず別人の手に渡った。しかし,荷物は航空会社に送り返されたので航空会社は原告に送 付した.ところが,荷物の中にあった価格3千ドル以上の宝石が紛失していた.かかる場 合に備えて航空会社は,民間航空局に対して斯様な場合の危険を荷主に負担せしめる規定 のある約款を提出し敢認をうけていたo そこで荷送人がその約款の無効を主菜したわけで あるが,裁判所はかかる約款の有効・無効は法律問題でなく行政庁の自由裁量の問題であ るから,第一次的管轄ほ民間航空局にあることを理由に訴却下の判決を下した。ところ. が,この判決の少数意見は,この判決を行政的救済を尽すことの理論たよったものと解し て反対している。すなわち,ある裁判官が第一次的管轄の法理と解するものを,他の裁判 v. Chicago Adler 官は行政的救済を尽すことの理論と解しているのである。また, Southern. Airline. lnc.4)事件においては判決白身が第一次的管轄の法理と行政的救済を. 尽すことの理論とを混同している.事案は,アドラ-はシカゴ発セントルイス行の飛行機 の座席の予約をとったが,天候状況悪化のため契約が取消されたので,旅行の遅延を理由. に賠償金の請求をした。これに対して裁判所は1938年の民間航空法は料金の合理性の決 定並びに規則,慣行に関する権限を民間航空局に与えているので,委員会の決定なき限り 裁判所は原告に救済を与えないと述べた。裁判所はこれだけ述べれば充分であったにも拘 わらず,同時に不要な行政的救済を尽すことの法理をも持ち出して訴を却下したのであつ たo. これらの判決は第一次的管轄の法と行政的救済を尽すことの法理との区別を明確に認. 識せぬことに由来している。また,ディヴィスによれば,殊に州においては,第一次的管 轄の法]盟で審理を却下すべきところを,行政的救済を尽すことの理論を用いている判決が 多いといわれている5)0 学説もまた一定していないo. ディヴィスほ行政的救済を尽すことの理論,並びに事件成. &.
(3) 3. 米国行政における司法審査の時期の湖限. 熱性の法理は,如何なる段階で当事者が行政行為につき審査をうけることができるかを決 愛するものであり,第一次的管轄の法理は,裁判所またほ行政庁の何れが最初の審判をな すかについての原則であるとなし,前者は,行政行為が司法審査をうけることができる場. 合にを耳常に起りうる問題であるが,後者は,ある問題につき法律上,裁判所並びd行政庁 が第一次的審判をなしうる競合した場合に生ずるのであると説く.そしてマイヤー事件6) (後述)は行政手続のどの段階で司法審査をうることができるかが問題となったのであるか ら,行政的救済を尽すことの理論に関する事件であって,フランクファータ-判事がこれ. を第一次的管轄の法理に関するものを含んだものと性格づけたのは不幸なことであったと 述べている7〉。 しかし,第一次的管轄の法理と行政的救済を尽すことの理論の区別を否定する学説も存 するo例えば,パーカ-ほ両者を区別せんとする試みほ説得力がないとする.たとえば, Prentise. v・. Atlantic. Coast. Lines. Co.,8)事件(後述)でほ,第一次的管轄の法理の論. 理的帰結として行政的救済を尽すことの理論が生ずるものとして両者を分断することがで きないと説く9'.ステイスソは両者をその発生の面から相違点を見出す。すなわち,第一 次的管轄の法理は,司法審査を求める前に行政審判所に審理を請求する必要性が法律上の 権限に含まれており,その法律の解釈として問題となるに反して,行政的救済を尽すこと の理論は,第一次的管轄の法理と血族関係にあるが,行政権と司法権の限界づけのために 用いられた,いろゆる,裁判所の白己抑制の理論の-適用であるとする10)。 思うにこれらの学説の相違は同一の場において生じたものでなく,それぞれ異なる観点 に立脚したが故に生じたものといえよう。各課ほ各々その論じる場においてほ,それぞれ 妥当性を有しているものと思われる。元来,同法理とも行政権と司法権の関係において行 政庁に対する尊重の念から生じたものであり,また司法審査の時期を制約するものとして ほ同一の棟能を果すことに変りはないのである。そこで,ここでほこれらの事を認めなが らディゲィスの区別説を次の如く解して論を進めたいと思う。すなわち,ディヴィスは行 政的救済手続が情動し始めたか否かを境とし,一旦晴動を開始した後には行政的救済を尽 すことの法理が,また,未だ何らの行政的救済手続が開始されてよい場合にほ第一次的管 轄の法理が適用されるという意味で両者を区別していると解してよいであろう。 2.判例の動向 この法理の発生の起源となったのはTexas Oil. &. Paci丘c. R.. Co.,. Ⅴ.. Abillen. Cotton. Co・,ll)事件であるといわれている。本件は.鉄道会社の不当運賃の徴収に対し,荷主. がその運賃が公平でなく,差別的であることを主張して,その不当に支払った運賃の返還 を訴求した事件である.ところが,州際通商法は「本法中の如何なる規定も,現存するコ ソモソ・ロウ上の救済,または,制定法上の救済を変更し妨げるものでなく,これらの救 済の外に本法の規定が加えられる」こと並びに, 「本法規定に該当する運送業者により揖 嘗を慕った者ほ,州際通商委員会に不服申立をなしうるし,損害賠償請求の訴訟を連邦地 方裁判所またほ連邦巡廻控訴裁判所に捷起しうる。但し,両者を共に求めることはできな い」ことを規定していたo従って州際通商法の明文によれば,州際通商委員会も,また連.
(4) 4. 荒. 香. 邦裁判所の何れもが管轄権を有していたにも拘わらず,連邦最高裁判所は,行政的救済が 求められていないのに裁判所が運賃の合理性につき審査すれば,すべての裁判所が同一の 結論に達しない限り統一性を保持することができないこと,この統一性を確保するために 「運賃の不合理を理由として,すでに支払つ こそ行政委員会が設けられたことを理由に, た超過額の返済を求めるにほ,まず最初に州際通商委員会を通じ賠償を求めねばならず, この委員会のみが運賃を不合理としてその変更手続を行う権限を与えられているのであ る」と判決したのであった.すなわち,州際通商委員会に第一次的管轄権を認めたわけで ある。この判決は明らかに条文の文字から完全に離れた解釈で司法権による立法といえる が,この判決は非常に有力で影響力の強いものであった。 この法理が必要とされたのには二つの理由があるといわれている.第一には,この判決 にも述べられている如く,行政庁にまず最初に争を提起することを要求することによって のみ法規の統一性を確保することができるということ,第二に,技術的要素を含んでいる 問題は裁判所が行うよりも行政庁の専門的知識を充分に用いることが望ましいということ であった12).すなわち,法律問題の統一陸ほ裁判所,殊に唯一の最高裁判所によりえられ るが,この裁判所の統一させうる力は事実問題や,行政的特殊専門性を要する問題につい てはおよばないからであるとされたのである18(.ブランダイス判事は適切にも次のように ).または慣行( )が不合理であるか,不公正な差別 述べた。 「料金,規則( があると攻撃する場合ほ,委員会に対してまず最初になさねばならない--如何なる料 率,規則,または,慣行が将来にとって合理的かを決定することは立法的,行政敵機能で ある。過去において運送業者が不合理,または,差別的な料金によって損害をうけたか香 かを決定することは司法機能である。第一次的管轄の法理ほ,その性質上事実に関する事 項,並びに技術的事項であって行政庁の裁量にかかつている場合に要求される。そ-して, 行政委員会にかかる事項について始審的決定権限を与えることによってのみ,かかる事項 についての統一性がえられるのである。また,かかる事項に対する熟達性は専門家にのみ 見られるのが普通である・・・・」14)と. しかし,これらの理由の外に,行政庁で妥当な救済をうることができるか否かが,この 法理の通用を左右している大きな要素として作用していることも見逃せない。すなわち, もし行政庁で妥当な救済がえられるならば,敢て裁判所が介入するまでもなく,行政庁を 尊重し,行政庁に第一次的管轄権を認め,行政庁によって充分な救済をえられぬことが折 らかな場合には裁判所が救済の役割を演じようとする政策的な考慮が働いていることを見 逃しえないのである15)0. 以下,本法理通用に関して判例がこれらの要素を如何に考慮しているかを概観しよう。 Far. East. Conference. v.. U.S.16). 本件は,法務省がシャーマン独占禁止法に基いて,外国貿易に従事している運送業者の グループが決定した二重料金制度の禁止を求めた事件である。この制度においてほ,この 運送業者のグループのみと運送契約を締結する荷主には低料金を課することになってい Maritime Board)に審判 た。運送業者はこの種の事件はまず連邦海事委員会(Federal.
(5) 米国行政における司法審査の時期の制限. 5. を求めるべき事件であることを理由に却下を求めた。最高裁判所はこの運送業者の主張を 認め,裁判官が通常経験せぬような事実問題を提起した事件,または行政的裁量の行使を 必要とする事件については,かかる規制をなすべく議会により設立された委員会を無視し. えぬこと,また,法律上の争点となっている事情を判断するため,裁判所よりもー段とよ く準備されている官庁に第一次的に審判を求めることが統一的な規整をうるゆえんであり, また司法審査の合理的な制限の上からも望ましいとして,連邦海事委員会に第一次的管轄 権を認めたのであった。 Slocum. v.. Delaware. L.. &. W.. R.. Co.17. 本件もまた,統一性,専門性,妥当な救済の観点から,本法理の適用を認めたものであ る。会社ほ二つの労働組合と別個に労働協約を締結していたが,両労働組合の問に,ある 職程が何れの協約に含まれているかにつき争があったo会社は一方の労働組合と協定をう. るに至り,その労働組合との協約に,問題となった職種が含まれること,並びに両労働協 約の解釈についての宣言的判決を求めたo最高裁判所は,この解釈は将来にとっても,過 去においても重要であり,また,この種の請求は.将来ストライキにまで発展しうる紛争 の潜在的な原因ともなり,また,鉄道労働法の目的は,既存の協約の解釈からも生ずる労 使間の紛争調整のための有効にして,かつ望ましい行政的救済を規定することにあるこ と,従って専門的知識と豊富な経験とを有して,労働協約解釈につき全国的な統一性を与 v・ Illinois R・ Co・18'事件を えうる調整委員会がその専属的管轄を有するとして, Moore 根拠として審査を認めた下級穿の判決を改棄した。 次に行政庁のみによって妥当な救済がえられるか否かが,本法理適用の基準とした判決 をあげようo Georgia. v.. Pensylvania. 良. R・. et. al・19). 20の鉄道会社がジョ-ジア州の通商取引を抑制するために北部における料金より高率. の料金を同州に科する合議を行い,その結果,協定が作られた.この協定は,これらの鉄 Bureau)が文書に作成することによって発効する 道会社が設立していた料金協会(Rate ものとされていた。ジョージア州は,裁判所に第一次的管轄ありとして,この協定の執行 停止を裁判所に求めた。最高裁判所は,同州が,確定された料金を覆すことを求めたので なく,合議に対する執行停止を求めたこと,州際通商委員会はシャーマン法違反の合議に っいてほ何等の権限をも持たぬこと,また,州際通商委員会によっては妥当な救済をうる ことができぬことを理由に,裁判所に第一次的管轄の存することを判決したのであった。 この判決ほ5対4のきわどい判決であったが,議論の不一致点性委員会によって妥当な救 済をえられるか否かにかかつており,もしその救済が妥当ならば,州際通商委員会に審理 を求めることが必要であるとする点では全員一致していたのであるo Texas. Federation. of Larbor. v.. Brown. &. Root.20). 本件でも,妥当な救済がえられるか否かの基準が採られた。本件は,労働組合が不公正な 名簿,ピケ,第二次ボイコットにより使用主を妨害したことを理由に使用主が労働組合に対 して損害賠償と,差止命令の請求の訴を提起した。これに対して,労働組合側は,本件に.
(6) 6. 荒. 秀. ついての第一次的管緒が全国労働関係委員会に存することを抗弁した。裁判所は,行政手 鏡に訴えることほ行政庁が妥当な救済を与えうる場合にのみ要求されるとなし,本件の場 合は裁判所によって妥当な救済をえられることを理由に本法理の通用を除外したのであつ た。 乱. 本法理の展開. 本法理は,初期には鉄道,並びに海上運送事件に端を発していたが,更に,州の公益事 業の規制に関する事件,租税事件,労働事件へと,その通用を拡め乏1)現在はこれらの分野 に限らず,一般的に適用されうるものと解されるに至った22)。また,本法理の発生した初 期においては, 「事実」について行政庁に第一次的管轄権を認めたのであったが,後には 従前には裁判所に第一次的管轄権が存すると解されていた管轄的事実並びに行政規則の妥 当性に関する問題をも行政庁の第一次的管韓の領域に属せしめることとなったといわれ る乏8).しかし,法律問題については,裁判所に第一次的管特権があるとされていた.そ・の Northern Ry. Co. v. Merchants Elevator Co.包4)事件をあげよう。 一例としてGreat 本件は,不当運賃の返還請求訴菰で,州裁判所は本案審理を行い,荷主側の勝訴判決を下. したのに対し,連邦最高裁判所は,料金等が将来合理的か否かの決定は立法的乃至行政的 磯能であり,荷主が過去に不当料金等で損害を蒙ったか否かの決定は司法的機能である が,両事件とともに行政庁に第一次助に審判を求めねばならない。何故ならば,その審理 は必然的に技術的な問題であり,複雑な証拠に基いてなされ,また統一性はそれによって のみえられるからであると述べた.しかし,鉄道料金表が如何に解釈さるべきかは,料金 表の技術放でない言葉の解釈にかかつており,通常の文書が争われた場合と同じ法律問題 であるとして州裁判所の判決を肯定したのであった。 本係争をを法律問題とするか事実問題と解するかについては,本判決の如く法律問題と することには疑問が存するとしても,法律問題についての第一次的管轄権ほ裁判所に存す ることを認めた点に,この裁判の意義が存すると思われる.しかし,この判旨も,ある瞳 の法律問題,殊に技術的知識を必要とする法律問題については行政庁に第一次的管韓権を 認める憤向-と発展して待ったといわれている25). 〔川上勝己・アメリカの行政争訟制度および行政 1)本法理の訳爵も多様である。原始管轄(主義) 〔中村治朗・米連邦行政 争訟手続法(法務研究報告書38集) 87頁〕,第一次管轄権-の原則) 訴訟における若干の訴訟要件の問題(岩松還暦) 563貫〕.姶審的管轄権〔下山瑛二・アメリカ (法学雑誌2巻3号) SA貢,大林正Fl (始審的管轄権の法 における行政行為の司法審査(3完) 理,愛知大学法経論集26号16頁)がある。 Law Treaties III. 2) Davis, Administrative 3) 189 F. 2d 939 (C. A. 2 1951). 4) 41 F. Supp. 366 (E. E. Mo. 1941). 5) Davis, supra 108. v. Bethlehem Shipbuilding Corp. 303 U.S. 41. 6) Myers Administrative Law 664. Davis, 7) 8) 211 U.S. 210. Law 117 n. 48. 9) 戸arker, Administrative Hart, An lntroduction to Administrative Law 2d. (1950) 719, 729より引用. 10).
(7) 7. 米国行政における司法審査の時期の制限 ll) 12) 13). 204,ロ.S.. 14). Great. Cooper,. 426. Administrative. Barnhard,. Primary. Northern. Agencies. Jurisdiction. 良. Co.. Ⅴ.. and Merchants. La野, 668. 15) Davis, Administrative 570. 16) 342ロ.S. 17) 339 U.S. 239. 18) 312 U.S. 630. 19) 324 U.S. 439. (2d) 20) (Tex. civ. app. 1952) S・W・ Hart, Suppa 720・ 21) Law 669・ 22) Davis, Administrative Cooper, Suppa 318-319・ 23) 24) 259 U.S. 285. 25) Hart, Supra 720・. 第2節 1.意. the. and. Courts,. 318.. Administrative Elevator. Remedies.. Co.. 259. U.S.. Geo. 285,. L.. J. 545. (1942).. 291.. 938・ Cooper,. Supra. 318.. 行政的救済を尽すことの法理皇). 義. 行政的救済を尽すことの法理とは行政的決定に対する司法的救済は,行政庁白身の手に したがって,行政 よる救済手段を尽した後でなければ求められないとする法理である2)o 庁に第一次的管轄権を認めることが,行政庁に初めの言葉を発する権限を与えることを意 味するとすれば,行政的救済を尽すことの法理は,行政庁に最終の言葉を発する資格を与 えることに関する法理ということができる.前にも述べた如く,同法理は摂似の機能を営 み,第一の従兄関係にあるものといわれ8),共に行政行為が存する場合に,一般的に司法 審査を排除しようとした一般原則を相補足するものとして発展してまたものをいわれる が4)発生的には,行政的救済を尽すことの理論は,法律の解釈からでなく,. 「司法的自己. 抑制」の問題として発展してきたものといわれている.しかし,両者の区別は,第一次的 管韓の法理のところで述べた如く明瞭でなく,本理論を適用するに当っての細部,並びに その限界は,全く疑問と不確実で満たされているといわれている。しかし,ここでほ,第 一次的管轄の法理の所で述べた相違を一応前提として論を運めることにする。 本法理を支えるパックとしてほ種々の要素をあげうるが,その基本的な骨格として,行 政庁に対する尊重と,不必要な濫訴の阻止,並びに行政行為の適法性の推定が存するもの と考えられるのである.第一次的管轄の法理ほ,ともかく行政庁のイニシアティブを尊重 せんとする点に力点があるのに反し,行政的救済を尽すことの理論ほ「行政機関が,もし 当該事項を処理する完全な機会が与えられれば,正当に裁決するであろうという推定」6). に主眼がある点で,両考に差異があるものと解されているo 行政的救済を尽すことの理論は,栄国行政法発展の基因となった。州際通商委員会の出 現とともに現われたといわれている了).しかし,この法理が明確な形を装って米国行政法. 史上に登場し,そこに確固たる地位を築くに至ったのは20世紀に入ってからであった。 とはいえ,この理論に対する裁判所の態度は棲めて不安定で一貫した態度を持たず,横.
(8) 8. 荒. 秀. 檀,消極の両極を遊走している如き観を呈している。以下,この理論を必要ならしめた板 コ. 拠,並びにこの法理の適用を緩和せねばならなかった諸要素について検討してみることに する。 1)本法理に対する訳語も多様をきわめているo 訴願前置主義〔亀川 清・準司法機関に関する研 究(司法研究報告書3韓1号175貢)〕.行政救済前置主義〔嬰曇勢劉・米国の行政訴訟手続(司 法研究報告書1輯7号29頁).川上・前掲82頁〕,行政上の是正手段経由の原BTl 〔中村・前 掲552貢〕.行政救済を尽すこと〔棟木公亘・米国行政法研究227頁〕.行政救済使用済の原理 〔下山・前掲34頁〕。 to American Administrative Law, 168. 2) Hart, Supra 725 Sc血wartz, An lntroduction Hart, 729. 3) Supra 320. 4) Cooper, Supra 729. 5) Hart, Jur. i197, 52l. Hart Supra 729. 6) 42 Am. Exhaustion Remedies, 48 Yale L. ∫.981 (1939). of Ad皿initrative 7) Berger,. 2.本法理の根拠 ディヴィスは,本法理を必要とならしめた主たる依拠として, (a)本理論を適用せず,国民が自由に,直ちに裁判所に訴えることができるとすれば能 率的な行政の管理,並びに秩序ある行政手続を維持することができなくなること,. (b)豊富な経験と専門的知識を有する行政庁に対する儀礼,礼譲の要請があること, (c)コソモソ・ロウと衡平法の関係を類推適用しようとする傾向のあること。すなわち コソモソ・ロウ上の救済のある時は,それが尽されるまで衡平法上の救済を差経えていた こと。. 等をあげている1)。以下,これらをいま少し分説してみよう. (Ⅰ)能率的な行政の管理,および秩序ある手続維推の要請 これは,行政行為の相手方が,行政的救済を尽すことなく,手続的,または,中間的理 由に基ずく争を,裁判所に提起しうるとすると,行政手続の能率が阻害され,行政の秩序 ある手続の円滑性が現われるに至るので,これを防ぐた釧こ行政的救済を尽すことが必要. だとするのである.この根拠を最初に説いたのは,. 1904年の U.S. Ⅴ. Sing Tuck2)事 件におけるホームズ判事といわれる。本件は,外国人の退去命令に対して人身保護令状が 求められた事件で,シソ・タッグは,自己が市民権を有していること,したがって該命令. は無権限に基ずくことを理由に,本法理が適用されぬことを主張したが,ホ-ムズは,行 政庁の無権限との抗弁を尊重しつつも,たとえ根本的な問題であったとしても秩序ある 手続によって決定されることが,司法行政上の-必要事であることを述べて,行政的救済 を尽すことの原理を強調したのであった3)o. 一般に,訴忍当事者は,しばしば行政庁の無. 権限を理由に,本法理の適用を逃がれるのに成功していたといわれているが,この傾向に 対して,秩序ある手続の維持という観点からチェックした意味でこの判決は意義あるもの とされている。また,. ど.T.C.. Ⅴ.. Claire. Furnace. Company4)事件でも同旨の判決がな. され,また,多くの労働事件におけるインジャクショソ事件で採られたといわれる。そし て,マイヤー事件5)でこのことが再認識され,ともかく,行政庁に何らかの権限が与えら れた場合にほ,まず行政的救済を尽すことの必要性が確立されたといわれている6).この.
(9) 米国行政における司法審査の時期の制限. 秩序ある手続を維持することによって,まず専門的知識を有する審判所によって,事件を 節にかけることができ,訴認の増加を食止めるのに一役演ずることになり,また,行政庁 にまず審理させれば,行政庁白身が無権限であったことを認め,また上級行政庁が訂正し うる可能性も引き出されるとする7)o. (Ⅱ)連邦司法部並びに行政府間,および連邦司法部と州行政府問の相互の尊重と儀礼 これは,これらの国家,機関相互の独立性を尊重する儀礼,礼譲が本法理の根拠となつ ているとするものである。このことは,連邦司法部と連邦行政府との間のみならず,寧ろ. 栄国において主として大きな問題となったのは連邦司法部と州庁政府との関係であったo 何故司法部が行政府に友誼と礼譲を持たねばならぬかは,根本的には権力分立の観念に基 ずくのであろうが,現実的な理由としては,行政府が行政に関する専門家であり,特殊な 専門知識,経験を有することを裁判所白身が承認するからであろう。具体的に行政委員会 がどの程度の専門性,特殊知識を有し,司法部に対しその優越性を主張しうるかの証明は. 困難であるが,行政委員会のスタッフの内容を一見することにより,その一端をうかがい 知ることができよう。連邦司法部の州行政庁に対する儀礼,礼譲に基ずくこの理論の適用 は, Prentis. v.. Atlantic. Coast. Line. Co・8)事件でなされた。そこで,州行政庁に対する. Doctrine9'とも呼んでいるo 尊重,礼譲を理由に本法理を適用する理論を,特にPrentis Committee)の決定した旅客運賃が没 本件はヴァージニア州の会社委員会(Corporation. 収的であり,修正憲法第14条に違反することを理由に,その差止を求めた事件である。 最高裁判所は,法律により該委員会に与えられた権限が,公益事業会社の監督規整にあ り,またヴァージニア最高裁判所の見解によれば,立法的,司法的,行政的権限を有して いること,また,該委員会の決定に対する審査権を与えられている州最高裁判所が覆審を 行い,自己の独白の判断によって修正しうる権限を与えられていること,すなわち,行政 防,立法的権限を与えられていることを理由に,これら手続を尽さねば州における運賃決 定がなされたとはいえず,これに連邦司法部が介入することは礼譲に反すると判決したの であった.本件は,連邦司法部と州行政府との特殊な関係に基ずくものではあるが,一. 般的に本法理の背後に,行政府への礼譲の要請が潜んでいることは否めないのである。 Railroad. Commission. v.. Dnluth. Street. RailwaylO(事件でも最高裁判所は「州の救済. が尽されねばならないという要請は,実定法上の基本原理ではないのであって,単に便 宜,または友誼上の要請にすぎないのである」11,12'と明言している。 (Ⅲ)コソモンロウと衡平法の関係の額推 次に,英米法上特有な普通法と衡平法の関係から生じた-原理を,行政庁と司法部の関 係に輝推しようとした傾向のあることがあげられている。すなわち,普通法上の救済が存 する場合には,それを尽した後でなければ衡平法上の救済を差控えるという衡平法上の原 理を,行政行為の審査の場合にも適用し,行政的救済手続が存する以上は,それを尽さね 描,司法審査を求めえないとするのである。歴史上にも,これを理由としてインジャンク. ショソを拒否した衡平法上の事件が,本法理の起源となっているといわれている18)。しか し,本法理は衡平法上の事件のみならず,普通法上の事件についても適用されることに疑. 9.
(10) 10. 秀. 間の余地なきものとされ,判例も,この法理は,単に裁判所の裁量権の行使を規律する法 理にとどまらず,司法行政上の-原則であり,衡平法または普通法を問わぬ,. -原則たる. ことを確認したのであった14'.したがって,本法理の墓跡こ,右に述べた琴平法上の原理 が存するということは,現在では単に発生史的意義を有することにとどまるといわれてい る。. 1). Davis,. Administrative. Law. 615-621.. ディヴィスはこの外に,法律が明示または黙示的に行政庁に最初の決定をなす専属管轄(exclu・ sive jurisdiction)を与えることができ,この場合には行政庁の決定があってから審査をなしう るが,行政的救済を尽すことの法理を適用するときに,裁判所は主としてこの専属管轄の概念 に基礎をおいていること,また,法律が行政庁の命令につき審査規定をおいている場合に,戟 判所は最終命令があるまでは管轄を有さないと解していることをも理由としてあげている。 2) 3) 4). 194U.S. Berger, 274. 161: Supra. 984.. U.S.. 160.本件においては更に,行政的救済によっても妥当な救済をえられるとの理由で, 委員会による情報の提出命令の差止請求を拒否している。. v. Bethlehem Sbipbllilding Corp. 303 U. S. 1938. 5) Myers Berger, Supra 993. 6) Supra 984. 7) Berger, U.S. 210. 8) 211 740. 9) Hart,Supra 625. 10) 273ロ.S. ll) Id. 628. 12)ただ,この法理が適用された初期においては,行政行為が未だ存在しない場合,また,他の救 済がなお利用しうる場合には,衡平法上の救済を求めえないとする。そして,友誼± 礼譲に対 Berger, Stlpra 985. する考慮は,払われていなかったといわれる。 Supra Brown v・ Drain, 112 Fed・ 582 (C.C.D. Cal. 986・その例として, 13) Berger, 1901), Altschul v. Gittings, 86 Fed. 202 (C.C.D. Oreg. 1898)があげられている. 14)マイヤーズ事件におけるプラソダイス判事の見解.. 3.本法理を緩和する要素 前述の如く,本法理は稜々の要請に基ずいてその必要性が認められてきたのであるが,. この法理を固執するあまりに,適に国民の権利保護に欠ける場合も生じうるので,その適 用には慎重でなければならなかった。したがって,裁判所の政策的裁量が相当に行使され. る余地を蔵していたのであった1)。判例によると,国民の権利救済の面から,本法理の適 用が国民にとって過酷にすぎると思われる場合には,その適用を緩和する懐向にある。し かし,判例はその判断に当って,理論的解決よりも,政策的な解決を採りながら,それを 理論化するために,極めて弾力的な表現がとられ,そのた捌こ,統一的,体系的な理解は 極めて困難である。しかし,判例の一般的な債向として,次の要素が本法理の適用を緩和 する如く見えるので,次の順序で述べて行く。. (i)行政的救済を求めていると,回復しが. たい損害を惹起する場合(ii)行政的救済がえられるとしても,それが妥当なものでない 場合(iii)行政庁の行為が違憲,または無権限のおそれがあるか,明らかに違法な場合 (i)回復し難い担辛が生ずる場合 本法理を通用していると,国民の側に回復し難い損害を生ずると思料される時には,そ.
(11) ll. 米国行政における司法審査の時期の制限. の適用を緩和しようとする。これについては,対照的な二判決が存する。第一の事例とし てベトロ1)ユ-ム事件望)をあげることができるo本件は,会社が,ケンタブキーに供給 しているガスの料金について,ケンクッキー公益事業委員会がなさんとしていた調査の執 行の停止を求めた事件である。その理由として,当該会社が公益事業に該当しないので, 委員会は法律上の権限を超えていること,この調査は正当手続と,平等保護違反であるこ と,並びに連邦および州憲法の契約条項(Contract. clause)に違反することを述べた。し. かし,委員会は公聴日を決定し,料金の合理性を立証する証拠,並びに調査に使用しうる. 記録の提出を求めた.会社は,この要求された記録提出のためには25.000ドルの費用を 要することを理由に,裁判所に対してこの聴聞の執行停止を求めたのである。この25.000 ドルの投善が,必ずしも重大とはいえなかったにしても,会社が回復しうるものであると 認める者は一人としていなかったにも拘わらず,最高裁判所ほ,かかる費用,並びにこれ に伴う苦痛ほ,行政の下にある者の負わねばならぬ社会的負担の一部であり,このこと は,不変,かつ根本的な原理であること,聴聞のために要する費用のみを理由にして,何 行政の手続を攻撃することほ各平でないこと,を理由として本件が本法理を緩和しうる原 因としての,回復しえぎる損害に鼓当せず,インジャンクショソを正当ならしめるもので ないと判決した。. しかし,最高裁判所は五年後に提起された全く額似した事件については,全く相反する Public Utilities Commission 態度を採るに至ったのである.すなわち, of Ohio United. Fuel. Gas. v.. Co.3)事件がそれである.委員会ほ会社に証拠の提出を求めたが,会社側. は,そのために10.000ドルの費用を要することを主菜して争った。最高裁判所は,ベト ロリュ-ム事件で採用した理論を簡単に捨て,もし,かかる費用を会社が負担することに なれば,結局ほ,一般消費者に負担が転嫁されること,また,会社が委員会の命令に応じ ない場合には,刑罰を科せられる危険を負うこととなり,何れの場合であっても,相手方 のみならず,公益にも金額では計りしられぬ損害を生ずることになり,かかる命令は明白 に無効であり,かかる出費ほイニジャクショソを正当化するものであると判決した. 両事件は,ともに記録の操出に要する出費の高額な点が争われ,かつ,ベトロリュ-A 事件の方が金額の点でほ多額であったにも拘わらず,本法理が適用されたことほ妥当でな いといわねばなるまい.これに閲し,ディゲィスほ,ユナイテッド・フュエル事件では, 裁判所が,記録提出を要求する委員会の命令が権限を超えており明白に無効であるという 強い確信を有しており,ベトロ1)a-ム事件では,かかる権限の存否についての強い主張 が採られなかったことが,両判決の差異を導いたものであると述べている4).すなわち, 行政庁の棒限の欠妖が,裁判所にとって明白である場合にほ本法理ほ適用されず,逆に司 法的干渉を正当化する程明白でない限り,本法理が要請されるということである。この行 政庁の権限の存否と本法理の適用との関係ほ後に触れることとするが,ともかく,両事 件を比較した場合,裁判所は回復し難い損害の認定についても,単にそれのみを考慮せず, その他の要素をも考慮していることを発見しうる。このことを表明した判決として, Bituminous Coal Fuel Co. Ⅴ. National Commissions)の件をあげよう。委員会は,堰. Utah.
(12) 12. 秀. 荒. 間に閲し,上告人が秘密事項としていたものの発表を命じた。最高裁判所は,この命令が,. 最終会合ではないがと公表が有害と認めたので,その公蓑を禁止したが,その理由として 日く「ここに主張されている諸状況,惹起された莫大にして明白の損害,係争権利の主菜. 悼,他の救済を欠いていることを勘案すると,衡平法上の救済を求めることができる」6)o すなわち,本法理通周の可否についてほ,程々の諸要素の掛酌が必要であることを明言し たのであった。. (ii)行政救済が妥当でない場合 行政救済を求めることによって妥当な救済をうることが不可能であったり,または,不. 可能の倶れある場合には,しばしば,本法理の適用を不要ならしめる理由となる。これに Smith v. Illinois Bell Co.7)事件で,最高裁判所ほ,本 関する判例を二,三あげよう。 法理の適用を否定した。その理由として,. り」,また,. 「2年間にわたり,委員会は事実上沈黙してお. 「没収的料金を停止させることを,長期間にわたり,不合理にも遷延せしめた. ので,恰もそれを明白に敦課したものと同様になり,財産に損害を与えることになる」8) と述べた。すなわち,行政庁の不作為により,妥当な行政的救済をえられぬことが本法 理適用を緩和せしめたのであるo. また,行政庁内の部局間で,権限上の争があり,そのた. めになさるべき行政行為が遅延していた場合に,行政行為がなされるに先立って救済を与 えた事件がある9)。裁判所は「立法部が,明らかに裁判所の審査権の対象とした行致命令 が,権限上の争のた馴こ発しえないようになっている場合には,この行政上の沈滞を除去 するた糾こ宣言的判決を下すことは妥当である」と述べた。また,. U.S.. Alkali. U・S.10)事件では,政府がシャーマン法違反の行為を抑制することをF・T・. Ass'n. v.. Cに求めず. に,裁判所に求めたのに対して裁判所はF・T・Cの唯一の機能は,調査,勧告,報告で あり,法律上並びに事実上の認定はなしえず,救済を与えることはできぬこと,また,勧 告に対しては服従義務のないことを述べ,行政的救済が妥当でないことを認めて本法理の 適用を除外したのである。. これらの外に,最高裁判所は,行政的救済を与えるか否かが,制定法の解釈如何によつ て決定される場合に,その解釈につき疑義のあるとき,また,行政庁が大蔵大臣の発した 規則に拘束されている場合,ならびに,行政庁が州裁判所の判決に拘束されている場合に 紘,行政的救済を求めても妥当な救済がえられないものと解して,本法理の適用を除外し ているといわれる11)0. しかし,行政的救済が妥当でなかったり,行政的救済の道のないことが原告側の過失に 基ずいている場合(例えば期間の徒過)には,本法理は依然適用されるとする判決があ る。また,行政庁が従来採って来た見解から臆測して,行政的救済を求めても,反対の裁 決がなされることが確実に予測しうる場合はどうであろうか.これについての判決もー賞 していないようであるが,本法理の適用なしとする説が有力といわれている12). (iii)行政行為が権限を欠き,違憲であり,また明らかに違法である場合 かかる場合にも,行政的救済を尽すことが要求されるであろうか。先に,管轄的事実, 憲法的事実について,これら事実ほなお司法審査の領域内に引入れんとする動向のあるこ.
(13) 13. 米国行政における司法審査の時期の制限. とを述べたが,司法審査を求める時期についても同じ考慮の働く余地がないであろうか。 判決によれば,大体これらの場合にも本法埋を通用する態度を採っているといわれる14'が, 必ずしも,かように断言しえぬものを蔵していると思われる。これについて導標となった v. Shipping Bethlehem Corp・15'事件である。べツレ-ム会社 判決は,有名なMyers ほ全国労働関係委員会より発せられた,不当労働行為の審判手続に関する聴聞の禁止を求 める訴を提起した。その理由として,自己が州際通商に関する事業を行っていないので, 全国労働関係法の適用なく,従って,全国労働関係委員会ほ州際通商に関する事業のみの 不当労働行為の蕃棒を有するのであるから,ベツレ-ム会社に対して聴聞手続を開始する 権限を欠いていること,また,聴聞がなされると莫大な費用を要し,かつ,労使間の友好 関係が失われること,また,その円滑な情動を害し,回復し難い投書を生ずることを主張 した.これに対し,地方裁判所,控訴裁判所はインジャンクショソを認めたが,最高裁判 所はサーシオレアライを常軌大要次の如く述べた. -会社は,自己が州際,または外 国通商に従事せぬこと,また,聴聞を開始することほ回復し難い損害を生ぜしめるので, 地方裁判所がこれを禁止する権限を有さないとすれば,連邦蕎法によって保証された権利 が否認されると主張するが,この主張を認めれば,政府が主張するように,実際上読会が. 委員会に専属的に聴聞する権利を認めて,第一次的に決定すべき審判所としたことを否定 し,それに地方裁判所を代えることになる.本件は,法律上規定された行政的救済を尽す までほ,予期される損害につき司法的救済を誰も求めえない,という司法行政につき,義 期間確立された原則に対する争である.この原則は,この事件のように行政庁が行政処分 につき権限を欠いているという争がある場合に,線返し使用されてきた.明らかに行政的 救済を尽す要請は,行政行為が根拠がないとか,行政庁による聴聞が回復しがたい損害を 生ずるといつた理由によっては,阻まれないのである.訴訟の結果,その行政行為が無権 限に基ずいていることがしばしば判明するが,だからといつて,行政的救済を尽す必要が ないとはいえないのであるo. -18)と.. この判決の論旨は必ずしも明快でないが,少くとも行政庁の権限の欠映が主張されたに 拘わらず,本法理の適用除外の理由とならないことを示しているo しかし,行政庁の権限の欠炊が本法理の適用を除外するとした判決もある。例えば, v. Williams18)事件がそれであるo本件は,ボルトリコ住民が移民局により外国. Gonzales. 人として逮捕されたた軌人身保護令状を求めた際,訴航を経る必要なしとされたのであつ た。最高裁判所ほ,その理由として,ボルトリコ人が外国人でないことが明白であること, また,外国人でない者を逮捕する権限を移民局は有さないからであると述べたのであった。 かかる判決の相違は如何なる根拠に基ずくのであろうか.ディヴィスほ判例を分析した 結果,一要素として,行政庁の権限欠妖の明白性の程度を発見したのであった19'.すでに ベトロ.)ユーム事件とユナイテッド・フュエル事件の相違の所で述べたように,権限欠映 の明白性の強い場合には,本法理の適用を不要とする裁判所の態度である。ディヴィスは,. この点を零にAllen Aircraft. v.. Grand. Central. Aircraft. Co・20'事件と. Franklin. v・. Corp.21'事件を詳細に対比して強調したのであった。両会社ともに,会社が賃. Jonco.
(14) 14. 金凍結命令(an. 荒. order. て,行政庁(National. freezing Enforcement. 秀. wages)に違反して多額の賃金を支払ったか否かについ Commission)の聴聞をうけることになっていた。. この命令に違反したことが発見された場合,租税法上ほ多額賃金を基準として課税される ことになっていた。そ・こで両会社ほ,この事件が聴聞に付されると回復しがたい損害が生 ずることを理由に,裁判所に審査を求めたのであるoところが,この回復しがたい艮害の 生ずる根拠については,両会社は異なる主張をなした.すなわち,アレン事件では,この 事件が聴聞に付されることにより,銀行の借用が低下し,それを回復しえざることを理由 としたのに対し,フランクリソ事件では,原告が不確定期間莫大な罰金に曝されるという ことにあった。最高裁判所はアレン事件については本法理の適用を緩和したのに対し,フ ランクリソ事件では本法理を適用したのであった。ディダイスは,何故かかる差異が生し たかを分析し,回復しがたい損害の点では両者に差異の存しないことを認めた.銀行の借 用の低下の問題は,行政庁の聴聞が開始されることによるのと,また,裁判所で審理され ることによるのとで一体如何なる差異があるというのであろうか,とoそして,アレン事 件の判決の根底にほ,この間題が行政官に非ずして裁判官が専門家と解したことがあり, フランクリソ事件では,そのように解さなかったことに,両判決の差異のポイントがある とする皇2'。しかし,この行政庁の権限欠故の明白性による基準も,一貫しておらず,この 間題の解決が単純に割り切れぬものであることが指摘されている. 次い憲法問題が提起された場合はどうであろうか。マイヤーズ事件の判決ほ,この間題 につき何ら解決のための光を投げかけなかった.バージャ一によれば,全国労働関係法制 定前には,多くの連邦地方裁判所は憲法問題.につき本法理を適用しなかったといわれる28,. しかし,この憲法問題について注意せねばならないことは,法律白体の達意が主菜される 場合と,特定の事件に法律を適用した時の,適用の合憲性が主張される場合との間には差 異が存することがある。何故ならば,元来行政庁には適用の合憲性についての決定権はあ. っても,法律自体の合憲性を決定する権限を持たないからで卑るoしたがって,法律自体 の合憲性の決定は裁判所固有のものであるから,本法理を適用することは論理的な根拠を 失うことになる。これに反し,法律を特定事件に■適用することの違憲が主束された場合に は,行政庁も審判しうるのであり,本法理の適用を認めることに問題はない。しかし,こ のことは,飽くまで論理的な結論にすぎない。判例では時には,規定された行政的救済を 尽すまでは司法的救済を与えぬという原理を,法律適用に関する合憲性以外の,法律の達 意が争われた場合においても,本法埋を適用すると解しているからである.この間題につ いても判例は統一を欠いている。思うに,憲法上の問題ほ,しばしば政治紛争の形で裁判 所に提起される.殊に,新しく設立された行政庁に対する攻撃はしばしば政治斗争の様相 を呈する.かかる場合に行政庁が自己の手により解決の努力をする間に,政治的感情が冷 却する場合もありうるので,司法的自己押倒をすることが政策的に妥当な場合もあろう。 また,道に,行政庁に救済を求めても,行政庁が請求を容認する可能性が少いので,無益 であるのみならず,却ってこれを欠いた時には,エストyベルの原理で後に争えなくなる ような不合理なことにもなるという主菜もある望5'.かくして,裁判所ほ,単に論理的な操.
(15) 15. 米国行政における司法審査の時期の制限. 作のみならず,講壇の要因に対する,微妙な比較衡量をなさねばならなかった。殊に租税 事件で憲法問題が争われた場合の本法理適用については,判例は統一を欠き混乱している といえよう。いま少しく判例を概観してみよう。 Ⅲillsborougb. T. P. Somerest. County. v.. Crowel126)事件において,州納税者は憲法. 問題につさ本法理を適用されることなく,司法審査を許されたのであった。原告は,州の 租税訴顕委員会に訴蔽を提起しうるが,該委員会は制定法の合憲性に関しては審理棒を有 しないこと,また,該委員会の決定についてはサーシオアライ手続で州裁判所に訴を捷起 しうるが,州裁判所がこれに対して審査を許すか否かが州裁判所の裁量にかかつているの で,州における救済が満足でないことを,理由として,直接裁判所で救済を与える道を開い た事件である.これに反して,. Gorham. Mfg.. Co.. Ⅴ.. State. Tax. Commission27)事件で. ほ,本法理の適用が必要とされた.ニ3・-ヨーク州の法律は,同州で営業しているある外 国会社に対し租税を賦課することを規定したo会社ほ法律自体,また,その適用が正当手 続条項,並びに通商条項(Commerce clause)違反であることを主張して裁判所に訴えた のが本件である.最高裁判所は,原告が本法理を遵守していないことを理由に却下したの Corp. v. Aircraft & Diesel Equipment Hirsh28)事件でも,本法理 であった.また, の適用が必要とされた。事案は,戦時中締結された契約の再調整法(Renegotiation. Act). についての紛争が租税裁判所に繋属中であったが,会社は同法の適用をうけぬことを争う. と共に,同法が達意である旨の宣言的判決,並びに執行停止を求めた。そ・の理由として, 本法が実質的な正当手続条項を侵し,憲法修正第7条,第10条に違反し,また,使用さ れた情報に対する調査,反論の機会を与えなかったので,手続的な正当手続条項に違反す ることをあげた。最高裁判所は,単なる達意の主張は,本法理の適用を緩和せず,法律上, 行政庁による決定が唯一のものと規定されているか,あるいは,裁判所の審理以前に行わ れることが要求されている場合には,その手続の不適当,および急迫な危険の存在が特に. 強く示されねば,行政手続を省略することはできぬ旨断じたのであった。しかし,本判決 直後に,同じ法律の違憲を理由に,同法の下で生ずる請求権の強行を制限することを求め た事件が生じたが,地方裁判所はマイヤ-事件並びにWaterman. Case29)を引用し,制. 定法上の管轄権の欠放でなく,憲法上の権限の欠映が主張された場合であっても,この法. 理を変更するものでなく,行政的救済の完結が司法救済の前握条件とされると述べて,杏 件にも本法理の適用あることを理由に救済を否定したのに対し,最高裁判所は本法理の適 v. Lichter U.S.80)事件においても,本法理の適用が否 用を否定したのであった.更に, 定された。本件も再調整法に関する事件であった。軍事次官(The. Under. Secretary. of. War)は,リヒタ-が1万ドルの超過利潤をえていることを認定したが,リヒタ-がその 支払いを拒んだので,合衆国は提訴し勝訴判決をえた。睦訴裁判所は地方裁判所の判決を 認容した.最高裁判所の審理において,リヒタ-は,超過利潤(excessive. profits)という 譜に明確な基準がおかれていないこと,したがって,違憲な委任立法であることを主張し. たo. しかし,リヒタ-は,超過利潤の再決定のた糾こ許されていた租税裁判所に対する申 請の期間を徒過していたのである。これに対し,最高裁判所はリヒタ-が,もはや租税裁.
(16) 荒. 16. 秀. 判所に再決定を申請できぬこと,並びに合衆国が本法の有効性に関する問題について裁判 所の審査権の存することにつき争っていないとの理由で,本法理を適用せず憲法問題を審 Public Utili理し,本法を合憲と判断したのであった。また,比較的最近の事件として, v. ties Comm. U.S.81)があるo 本件では,合衆国が荷重としてカ1)ホルニア州法の違憲. 該法律は,州行政委員会に対し,正当かつ合理的と思料する範囲で運送老に卸. を争ったo. し,合衆国が当事者となる運送契約の賃金の値下げ,並びに諸条件の決定を許す権限を与 えていた。合衆国は州行政委員会に対し行政的救済を求めなかったが,最高裁は該法律が 達意である旨の宣言的判決を合衆国に与えた。そ-して本法理につき「-・もし--行政手 続に何らの憲法問題も残存していないならば,明らかに,行政的救済を訴求せねばならな. い。しかし,唯一の問題が,行政手続に申立人を強要することが達意でないかということ であれば,行政手続を無視してもよく,かつ司法救済が憲法上の権利を保護する唯一の有 効な方法として求められてよい」と述べた。 以上の判例を通じてほぼ理解しうる如く,憲法問題と本法理との関係に対する裁判所の 態度は理解に困難であり,主として政策的動機に基ずくとも思われる。それで, 「将来, 法律の達意を争う場合に,最高裁判所は本法理の適用を要求するであろうし,また要求し ないであろう。何故ならば,過去の判決が矛盾抵触しているからである。しかし,行政的 救済が事件を満足に解決しうるような可能性が少ない場合に,本法理が要求されることは 少ないように思われる」82)といった展望しかなしえぬのであった. 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10) ll) 12) 13). Cooper,. Supra. Petroleum 317. 322.. Exploration. U.S.. lnc.. Ⅴ.. Public. Service. Commission,. 304. U. S. 209.. Davis,. 456. Administrative. 306U.S.. Law. Treaties. III 62.. 56.. Zd.60. 270. 587.. U.S.. Id.591. Order 325. Conductor. of Railroad U.S.. Davis, Licbter Davis,. v.. Swan. 329. U.S.. 520.. 196. Administrative v.. Supra. U.S.. 334. Law U.S.. 626-627. 742.. 627.. この立場を採った判決として.. City. Bank. Farmer's. Trust. Co.. Ⅴ.. Scbnader,. 29, U.. S. 24.. がある。本件は,州の税務官吏の態度,言明から,明白に賦課徴収のなされることが認められ る場合であったが,これに対して最高裁判所は違法性が争われる行為が,急迫でありまた確実 である時には衡平法裁判所の容啄をを正当化するものであるとし,本件をそれに該るものとし た。 Administrative Law Treaties, ⅠⅠⅠ 59. 14) 303U.S. 41. 15) 16)本件で原告は自己の会社が州際通商に従事していないことを主張しているが,裁判所が州内通 商にのみ従事していると認めた場合には,委員会に権限なしと解して,本法理の適用を除外し Berger v. Hill 76 F (2d) 198 (C.C.A. 9th), etc. Berger Supra 992. ている判決がある。 17)因みに,ディゲィスは本判決に対して次の如く批判している。すなわち,委員会と控訴裁判所 が不当労働行為を阻止する専属的確限ありということは,法律上または憲法上の権限を超えた Davis,.
(17) 17. 米国行政における司法審査の時期の制限. Stat. 775 委員会の行為の執行停止をなしえぬことを意味しないこと,また,法律(46 (1934), Stat. 28 62 930 (1948), U.S.C.A.昔1331)は地方裁判所の管轄権につき「地方裁判所杜合衆 国憲法,法律,条約の下で生じた紛争の金額が三千ドル以上の事件につき第一審の管轄権を有 する」と規定していること,また,全国労働関係法には,地方裁判所から違憲な委員会の行為 の執行停止を阻止する権限を奪うような規定の存しないことをあげて本判決に批判的であり, 更に本判決が本法理を長期間にわたって確立された原月uと述べた点に疑問を抱き!果して我々 Davis, がかかる原BTjを有しているのか,また,持たねばならぬかの問題を提起しているo Supra. 18) 19). 59. 1・. 192U.S.. Supra. Davis,. 68.. ディダイスは,本法理の解釈の鍵として予想されるものに専属的管轄の理論,最終命令の理論 並びに秩序ある手続の理論があげられているが,これらが妥当でないことを次の如く説く。. 属的管轄の理論では解釈しええない。何故ならば,権限なくして専属的極限はありえぬからで ある。また,最終命令だけが審査できるということも解決手段にならぬ。何故ならば法律上最 終命令の規定があっても,状況によっては回復しがたい損害を救うた糾こ,制定法規を超えて 行政行為をチェックし,また,せねばならぬ権限を有するからである。また,行政庁の専門的 領域内の問題か否かを第一に考えねばならぬという推測もまた解決の緒口にはならない.何故 ならば,権限の問題は審査裁判所の専門領域でしばしば,より迅速に解決されて釆たからであ る」とo. 20) 21). 347,ロ.S.. 22). Davis,. 346. 535.本件では,ここに述べた以外に,後述する如く,関係法姐の合憲性も争われた。. U.S● 868・. Supra72-73.●そしてディヴィスの見解では,アレソ事件の場合には権限問題は疑わし. く困難であるから,本法理の適用により重大な損害が生じない限り,本法理が適用さるべきで あるとし,フラソクリソ事件の方を正当と許している。. 23) 24) 25) 36) 27) 28). Berger,. Supra. 995.. Berger,. Supra. lOO2・. Berger,. Supra. 998,. 29). Macauley. 226.. U.S.. 620・. 266.. U.S.. 265.. 331.. U.S.. Hirsh. Block. 267・. Fed. S. S. Corp.. 327. U.S.. v・. 614・. (App・. D・C・. 1920) 26)・. 752・ v.. Waterman. 540.. 本件も再調整法上の超過利益に関する情報の捷出にかかる事件であったが,本法理の適用を必 要と解した事件である。. 30) 31) 32). 334.. U.S.. 742.. 355.. U.S.. 534.. Davis,. Administrative. Law. Treaties. III 80.. 4.予備的中間的命令 次に,法律が行政庁の命令について,司法審査を認める旨の規定を設けている場合でも その命令とは最終命令を指すのか,また,最終命令につき審査を認める旨の規定であって ち,何を以て最終命令とするかの問題を論じよう.これが問題となる理由は,行政手続を 終結せしめる文字通りの最終命令でなく,その最終命令に至る手続における中間的,予衛 的な行政行為であっても,しばしば当事者にとって決定的な侵害となる場合が存するから. で,かかる場合に,その中問的な行政行為に対して,一様に,本法埋の適用を認めること ほ必ずしも妥当といえまい。とはいえ,如何なる範囲で,また,如何なる状況の場合に本 法理の通用を除外するかは,これまた困難な問題であった。行政手続法第10条(c)項は 次の如く規定している。. 「専.
(18) 18. 秀. (2)官庁の行為が法により官庁の自. 「(1)法律が司法審査を排除している範囲,またほ, 由裁量を委ねられている範囲を除き.. --. (c)審査の対象となる行為-(前段略)予備的,手続的もしくは中間的な官庁の行為 またほ裁定で直接審査の対象とならないものほ,すべて最終行為の審査の際に審査される ものとする.. -(後略)」. 本法ほ,従来の慣行を明文化したものであるといわれているが,以下如何なる判決があ ったかを概観してみることにする。. まず,手続的な要求,または,中間的な指示に該る行政行為については本法理が適用さ れた判決をあげよう。 F. P. C.. Ⅴ.. Metropolitan. Edison. Co.1)事件. 連邦動力委員会は会社に対し,聴聞日の決定,並びにその際証拠を提出すべき命令を発 したが,会社の申立に応じて,この命令の妥当性を審査するため再聴聞を行うことを許し. た。この再聴聞において委員会側がある証拠を提出したが,会社側は,その証拠は聴聞で 問題となる寄掛こ関するものでないとの理由で,再聴聞に不必要と解したが,委員会側ほ その証拠を引下げることを拒否したので,会社は控訴裁判所に,この再聴聞の申請が処理. されるまで,委員会が爾後の行政手続を続行することの停止を求めた。控訴裁判所は,請 求認容の判決を下したが,最高裁判所は,サーシオレアライを認めて該判決を破棄した。 最高裁判所は大要次の如く判決した。連邦動力法第313条(b)項は,. 「本法による手続に. おいて委員会の命令により権利を侵害された老は,この命令につき控訴裁判所の審査をう けることができる」と規定しているが,このことは,委員会の行う全ての命令について,. 審査を許したものと解してはならない。もしそのように解すると,単なる手続的な要求や, 中間的な指示の手続で絶えず遅延を生ぜしめ,本規定の明白な目的に反するo. この審査に. 関する規定は,本案についての,最終的,決定的な性格を有する命令に関するものである と。 Eastern. Utilities. Associations. v.. S. E. C.2). 証券取引委員会は,イースターソ会社に対してフィラデルフィアで聴聞を行う決定をし. たが,会社はポストソに変更することを申請した。そ・の理由は.会社の本店がポストソに 存し,また,証人になると思われる大多数の株主がポストソにいること,並びに,聴聞の 日時および場所を定めるに当っては,当事者またはその代理人の便宜と必要を十分に考慮. しなければならないとする行政手続法第5条をあげた。委員会は場所の変更に充分な根拠 なしとして異議を容れなかった。そこで,会社は裁判所に対して異議を拒否した委員会の 決定の審査を求めたのであるが,これに対して,. 「持株会社法第24条(a)質,および他. の法律で司法審査を規定した塀似の文言では,単なる準備的または手続的な性格を有する 行政庁の命令は,睦訴裁判所で直接かつ急速に審査されうるものでないことが確立されて 来た」として蓉査を拒否し,. 「法律による明白な命令がない場合には,単なる手続的要件,. またほ中間的な指示の審査のた糾こ行政手続の過程を絶えず遅延せしめる機会を与えるよ うな解釈に対してほ当然反対するものである」と述べた。.
(19) 19. 米国行政における司法審査の時期の制限. 次に本法理の適用を不用とした判例をあげよう。 Utah. Fuel. Co.. v.. National. Bituminous. Coal. Commission.8). 1927年の涯育炭法の規定に基ずき,渡青炭委員会は,石炭生産者から生産費に関する 詳細な報告をえた。この報告は該法によって秘密事項とされていたが,委員会は,委員会 の聴聞では公表しうるものと解して命令を発したので,その命令が争われた。本件の前年 に全く同質の事件について控訴裁判所ほ,委員会の命令が予備的命令であって,最終命令 でないことを理由に審査を拒否した。これに対して,最高裁判所は,本法理を適用せず, 本案を審理行ったのである。最高裁判所は,最終命令が発せられているか否かとは無関係 に,秘密報告を発表することは非常に有害であるので,生じうる損害の程度,並びに他の 救済方法を欠いていること等と請状況を勘案して司法審査を求めうると解したのであつ た。本件は委員会の命令を最終的命令と明言していないが,その命令によって生じうる損 害の程度,並びに他の諸状況を考慮に入れることを示した点で注目すべき判決と思われるo Waite. v.. Macy.4). 審査官(examiner)が,ある輸入茶に人工着色がなされていることを認定したので,輸 入業者は,委員会がその審査官の認定に基ずいて決定を下すことの禁止を求めて提訴し たo委員会は,審査官の決定を審査する権限を与えられていたが,未だ審理していなかつ. たのである。最高裁判所は,これに対して,行政的磯能を行使-とディヴィスはいうー -して,問題の茶が除外規定に該当しないものと認定して委員会に対し禁止命令を発した のであった。 Robertson. v.. Chamber.5). 一軍人が身体障害を理由に解雇され,退職金の支給がなされず,また, Review. Board. Army. Disability. は退職金支給の権利なしと認定した。再聴聞の申請に基ずいて,委員会. はそれを認めたが,この軍人は,再聴聞の開始前に,再聴聞で使用される記録を調査した 若菜,復員軍人局(Veteraus. Administration)の作成した医学上の調書を発見したので,. その除去を委員会に申請したが拒否された.そこで,その調書の除去を求めるた糾こ,委 員会の長を相手どって差止命令を求めた。下級審は本法理を理由に却下した。すなわち, 委員会が如何なる決定を行うか未だ不明であり,本法理は,正にかかる場合のために存す るのであるとしたが,最高裁判所は,かかる不利な記録の存在から行政庁の決定が予測し うるとして本法理の通用を不要としたのであるo ところで,裁判所は如何なる命令を,最終的,決定的,命令としているであろうか。以. 下,これに関する判例を概観してみよう。 Algonquin. Gas. Transmission. Co.. Ⅴ.. F. P. C.6). アルゴンキン会社は,ニューイングランドで,天然ガスパイプ・ライン設備の設立と運 営に必要とされている,委員会による公共の便宜と必要性に関する証明をうけたo. ろが,その設立工事が殆んど終了する間際に,競争関係である他の会社が,この証明を与 えた委員会の命令に関して,控訴裁判所に審査を求め,睦訴裁判所はその命令を取消し, 更に裁判所の見解に従って手続を進めることを命じた。アルゴンキン会社は,そこで,追. とこ.
(20) 秀. 20. 行中の設立工事を完成するた糾こ委員会に暫定的緊急証明書を求めた。委員会は自己にそ の権限なしとしてその請求を斥けた。これに対してアルゴンキン会社が争ったのが本件で 「最終命令のみ審査しうるとは規定していない。委員会の ある。裁判所は,関係法律は, 命令で権利侵害をうけた者はその命令につき管轄権ある合衆国控訴裁判所で審査を求めう ると規定している.イースターン事件は,司法審査をうけるにほ必然的に最終命令あるま. で待たねばならないことを意味していない。しかし,審査しうる命令はある程度,宍質的 に最終的性格を有する行政行為でなければならない--。ある碇の中間的命令には,最終 命令を無効に導くようなものであるかも知れない。斯様な場合には,最終命令に関する審 査で,中間命令が最終命令に影響を与えた限度で審査されるであろうが,本件で問題とな っている命令は.そのような中間的命令ではない。. --アルゴンキン会社の暫定的証明申 請は形式上基礎手続の一部となっているが,実際には主たる手続とは別個のもので,緊急 事態に対処するために採られたものであるo委員会は,この別個の申請を最終的に決定し てしまったのである。従って,この命令は単なる予備的または手続的な性格のものと解す. るのでなく,関係法律により直ちに審査しうるに必要な最終性を有するものである」と。 Atlantic. Seaboard. Corp.. Ⅴ.. F.P.C.7). アトラソティック会社は,同会社にとって供給者に該る会社が料金値上を申請した結果, 費用がかさむことを理由に,同日に連邦労力委員会に料金値上の申請をした。ところがア トラソテツク会社の提出した賃料が不完全であったのでその旨を通知し,追加賃料を後に 受取った。さて,天然ガス法は,委員会に増額申請の期日より6ケ月の間,増額運賃を停 止する権限を与えていたので,委員会ほ,アトラソティックに対しては追加賃料の提出さ れた日より期日の計算を行ったが,アトラソティックの供給会社には最初に資料を捷出し た日より計算したので,両者の期間にずれが生じ,アトラソティック会社はその間(22日 間),損害をうけるに至った。そこで.アトラソティック会社は再聴聞を求めたが拒否さ れたので,連邦動力法に基ずき裁判所に審査を求めた。委員会は,この命令が最終的なも Ⅴ. Metropolitan ど.P.C. Edison事件の原則によって審査しえ のでないこと,従って, ざるものであることを主恭した.これに対し裁判所は,この命令は法律により我々に与え られた権限を行使することを正当化する程の充分な最終的,決定的な性格を有するもので あって審査しうるとなし,本案につき期日の開始は,最初の賃料の提出日であると判決し た。. 次に行政庁が最終命令を与えず不作為のままに放置して置いた処分はどうであろうか。 Isblandtsen. Co.. Ⅴ.. U, S.8). イスブランド会社は日本,沖縄,朝鮮向けの商船業を営んでいたが,他の商船業主が連 盟を作り二重料金制度を作っていたので,同会社並びに法務長官は行政庁に対し,聴聞を 要求し,この制度が違法であること,並びに行政庁がこの制度を許可する板拠なきことを 主張した。行政庁は,聴聞を直ちに開くことを否定し,該制度の発効後に聴聞することを 決定した。そこで同会社は最終命令に対する審査を許容した法律に基ずき控訴裁判所に対 して,この決定についての審査を求めた。控訴裁判所ほ,行政庁が実質的には原告を商船.
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