博士論文審査報告書
4
0
0
全文
(2) 申請者は,ごみ収集に係る環境・エネルギー問題への対応,ならびにごみ収 集時の周囲環境負荷低減を目指し,日本初となるごみ収集車の燃料電池駆動化 開発に取り組んできた.ごみ収集車の電動化により,低炭素化や回収地域への 環境配慮が実現できるだけでなく,車両後方で従事する作業者の排気ガス起因 の健康被害も防ぐ事ができる.ごみ収集車の走行は,一般トラック同様の「ご み運搬走行」とごみ収集箇所毎に停発車を繰り返す「ごみ収集走行」に分類で きる.ごみ収集走行時においては,低速走行や頻繁なドア開閉,ならびに作業 者の高強度運動等が特徴となる.一方のごみ運搬走行時は,ごみ搭載有無によ って車重が大きく変化する等の特徴を有する.このような背景のもと,本研究 では同車両に係るこれらの特徴を考慮しつつ車両設計・試作を行い,ディーゼ ル車両との比較を通して環境性能面での優位性を定量的に評価した.また,山 口県周南市での実証試験を通して試作燃料電池ごみ収集車(以降,開発車と称 す)の課題を明らかにすると共に,実用化に向けた性能改善策を提案した. 論 文 審 査 委 員 は , 本 論 文 に 対 し て 2019 年 3 月 22 日 に 予 備 審 査 を , ま た , 5 月 9 日 と 6 月 12 日 に は 本 審 査 を 実 施 す る と と も に , 個 別 の 指 導 を 行 っ て 内 容 の改善や検討の追加を求めた.7 月 1 日には公聴会も実施された.これらを通 してまとめられた論文の概要とその評価について以下に述べる.本論文は以下 の6章から成り立っている.. 第 1 章 で は ,ご み 収 集 車 の 現 状 と 課 題 を ま と め ,本 研 究 の 目 的 を 明 確 化 し た .. 第2章では,開発車の設計・試作の詳細と環境性能評価の結果をまとめた. は じ め に , 2.2 節 に お い て , 設 計 ・ 試 作 思 想 を ま と め た . 最 新 の 量 産 燃 料 電 池車では,高出力燃料電池を用いた負荷追従出力型システムを採用しており, バッテリ重量を最小化できるものの燃料電池は効率の低い広域範囲で作動する ためシステム効率が低い.そこで,開発車は低出力燃料電池を用いた高効率点 一定出力型システムを採用した.これは,重量車においては乗用車と異なり, 負荷追従対応のためのバッテリ重量増がもたらす悪影響よりも,燃料電池シス テ ム の 効 率 向 上 分 の 寄 与 度 が 大 き い と 予 測 し た か ら で あ る . つ ぎ に , 2.3 節 ・ 2.4 節 に お い て , 開 発 車 と デ ィ ー ゼ ル ご み 収 集 車 の シ ャ シ ダ イ ナ モ 比 較 試 験 結 果をまとめた.最終的には,開発車の消費エネルギー削減率が,ごみ運搬走行 時 の 3 7 % に 対 し て ご み 収 集 走 行 時 に 6 1 % と 顕 著 と な り ,前 者 の み の 運 用 と な る 一般トラックと比較して,ごみ収集車の電動化メリットが大きいとの結論を得 た.また,騒音測定試験を通して,架装部駆動時の騒音が従来車より低減して い る こ と を 確 認 し た . 最 後 に , 2.5 節 に お い て , シ ャ シ ダ イ ナ モ 試 験 結 果 を 周 南市ごみ収集ルート走行時の状況へと対応させるための条件補正を行い,最終 的 に は , 同 地 で の 開 発 車 の 導 入 に よ る CO2 排 出 削 減 率 は 40%程 度 と 予 測 し た ..
(3) 第3章では,開発車を,実際のごみ収集作業に導入してリアルワールド評価 を行った結果をまとめた. は じ め に , 3.2 節 に お い て , 実 証 試 験 の 概 要 と 開 発 車 が 抱 え る 課 題 ( 最 大 ご み 積 載 重 量 と 水 素 搭 載 の 若 干 量 不 足 ),な ら び に そ れ ら を 考 慮 し た 実 運 用 方 法 と そ の 実 績 に つ い て ま と め た . つ ぎ に , 3.3 節 に お い て , 開 発 車 と デ ィ ー ゼ ル 車 の エ ネ ル ギ ー 消 費 比 較 を 行 な っ た . 低 減 量 の 観 点 か ら は 走 行 に 係 る も の が ( 0 . 9 4 k W h / k m 低 減 ), ま た 低 減 率 か ら は 架 装 部 駆 動 分 が ( 6 6 % 低 減 ) 効 果 大 との結論になり,ごみ収集車の電動化メリットを定量化することができた.ま た ,開 発 車 の CO2 排 出 特 性 を 算 出 し た と こ ろ 0.52 kg-CO2/km と な り ,デ ィ ー ゼ ル 車 比 較 の 削 減 率 は 年 間 平 均 で 37 %と な っ た . つ づ い て , 3.4 節 に お い て , 開発車を対象に,特にごみ収集走行時特有のエネルギー消費傾向の分析を行っ た.同走行時はごみ運搬走行時と比べ,力行電費が. 41%悪 化 し て い た . ま た ,. 回 生 エ ネ ル ギ ー 回 収 率 は 20 ポ イ ン ト 低 く , こ れ は , 同 走 行 時 特 有 の ブ レ ー キ 損失の大きさによるものであるが,同損出値を増大させる低速時の減速エネル ギー未回収領域の設定幅や過度な乗り心地配慮のための弱すぎる回生トルク制 限等について,ごみ収集車電動化の際には他の重量車と異なる適切な設定値と すべきことを指摘した.さらに,空調エネルギー消費について,作業員の発熱 とごみ収集箇所ごとのドア開閉の影響に着目した分析を行い,特に夏季(主に 冷房利用)において両作用が空調負荷を強める方向に働くため,ごみ収集走行 時 に エ ネ ル ギ ー 消 費 が 4 4 % 程 増 大 す る こ と を 確 認 し ,ご み 収 集 車 に お け る 冷 房 システムの増強や暖房システムのダウンスペック化が検討に値することを指摘 し た . 最 後 に , 3.5 節 に お い て , 実 証 試 験 中 に 進 行 し た 燃 料 電 池 劣 化 現 象 に つ いて考察し,今回の現象は水排出問題に起因した異常劣化(アノードフラッデ ィング)と断定しつつ,本現象への対策 3 案を構築・提案した(定期的な高出 力 運 転 の 実 施 ,水 素 パ ー ジ 周 期 の 短 縮 化 ,水 素 パ ー ジ ラ イ ン の レ イ ア ウ ト 修 正 ).. 第4章では,制御方法の改良により開発車両の性能向上を図る方策について 検討した結果をまとめた. は じ め に , 4.2 節 に お い て , ご み 搭 載 に よ る 走 行 中 重 量 変 化 や 架 装 部 駆 動 出 力 な ど を 考 慮 で き る 車 両 シ ミ ュ レ ー タ を 構 築 し , 電 力 積 算 量 ベ ー ス で 5 %以 内 の 精 度 を 有 す る 事 を 確 認 し た . つ ぎ に , 4.3 節 に お い て , ご み 搭 載 状 況 に よ り 変 化 す る 車 両 重 量 の 影 響 を 考 慮 し た 回 生 エ ネ ル ギ ー 増 大 策 「 最 大 0.2G 回 生 ト ル ク 法 」 を 提 案 し , 本 手 法 導 入 に よ り 減 速 エ ネ ル ギ ー 回 収 率 が 45 %か ら 61 % に 改 善 で き る と の 結 論 に な っ た . 最 後 に , 4.4 節 に お い て , バ ッ テ リ 内 部 イ ン ピ ー ダ ン ス 補 正 に よ る 高 精 度 S O C 予 測 手 法 を 提 案 し ,こ れ の 導 入 に よ り ,水 素 損 失 と 燃 料 電 池 劣 化 を も た ら す F C シ ス テ ム O n / O f f 動 作 を ,従 来 の 6 回 か ら 4 2.
(4) 回まで減じることに成功した.さらに,提案手法を用いることで,他のバッテ リ を 対 象 と し た 場 合 に お い て も 高 精 度 に OCV を 推 定 で き る 事 を 確 認 し , こ れ の有用性と拡張性について明確化することができた.. 第5章では,搭載機器の改良により開発車両の性能向上を図る方策について 検討した結果をまとめた. は じ め に , 5.2 節 に お い て , 燃 料 電 池 シ ス テ ム の 定 常 性 能 ・ 応 答 性 能 ・ 水 素 パージ状況等の情報に基づき,機器の方式や諸元の変更が可能な燃料電池動力 シ ス テ ム シ ミ ュ レ ー タ を 構 築 し , 台 上 試 験 結 果 と 比 較 し た と こ ろ , 1 %以 内 の 精 度 を 有 す る 事 が 確 認 で き た . つ ぎ に , 5.3 節 に お い て , 開 発 車 の 実 用 化 に 向 け た 性 能 目 標 ( 航 続 距 離 100 km, ご み 積 載 量 2,000 kg) を 満 足 す る た め の 車 載システム改善策「一定出力改良システム」を提案した.同時に,ごみ収集車 を対象とした場合においては,負荷追従対応のためのバッテリ重量増がもたら す悪影響よりも燃料電池システム効率向上分の寄与度が大きいことを明らかに し,効率向上優先設計(一定出力システム採用)が優位となり得る事を指摘し た.さらに,動力部のギヤ比と架装部駆動用のギヤ比を最適化し,前者におい て は 車 両 電 費 改 善 率 2 . 8 % の 達 成 が ,後 者 に お い て は 5 . 0 % の モ ー タ 効 率 向 上 が 見 込 め る と の 結 論 を 得 た .最 後 に ,架 装 部 油 圧 モ ー タ の 電 動 化 に つ い て 検 討 し , 架装部駆動エネルギーが. 41 %低 減 で き る こ と が シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 明 ら. かとなった.. 第6章では,本研究で得られた知見をまとめ,今後の課題を明らかにした.. 以上,本研究は燃料電池ごみ収集車の設計・試作を行い,開発車の実証試験 を通してその優れた環境・実用性能を明確化しつつ,さらには今後の普及に向 けた性能改善策を検討・提案したものである.研究成果は理論と実験の両面か ら検証されており,得られた知見は今後の重量車電動化を促進させるものとし て 高 く 評 価 で き る た め , 博 士 (工 学 )の 学 位 論 文 と し て 価 値 あ る も の と 認 め る . 2019 年 7 月 (主査)早稲田大学教授. 博士(工学)早稲田大学. 早稲田大学名誉教授. 紙屋雄史(電気) 大聖泰弘(自動車). 早稲田大学教授. 工学博士(早稲田大学) 勝田正文(水素・空調). 早稲田大学教授. 博士(工学)早稲田大学 小野田弘士(廃棄物処理). 早稲田大学招聘研究員 博士(工学)北海道大学 廣田寿男(燃料電池) 3.
(5)
関連したドキュメント
次いで「第3部 その他の地区防災計画づくりの事
Miyazaki Women's Junior College..
Averiguando cada elemento, pode-se dizer que residem neste conto as ideias de Eça de Queirós sobre o realismo enquanto nova expressão literária do seu tempo, tal como
On the Malay Peninsula, however, a ranoidean frog Limnonectes kuhlii (Tschudi, 1838) (Dicroglossidae) was once reported as a predator of a Southeast Asian terrestrial
法人税収と税収弾性値 1 法人税収の名目 GDP 比の推移 1980
電動車椅子用鉛蓄電池の低温環境における放電特性実験評価手法を提案した.計算
[r]
[r]