• 検索結果がありません。

博士論文審査報告書

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "博士論文審査報告書"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)早稲田大学大学院 基幹理工学研究科. 博士論文審査報告書. 論. 文. 題. 目. Lagrange-Galerkin schemes with a locally linearized velocity for the flow problems 流れ問題のための局所線形化流速を用いる ラグランジュ・ガレルキンスキーム. 申. 請. 者. Shinya UCHIUMI 内海 晋弥 数学応用数理専攻. 偏微分方程式の数値解析研究. 2017 年 2 月.

(2) 本論文では,非圧縮粘性流体問題を数値的に解くための新しい有限要素ス キームを開発している.このスキームは局所線形化流速を用いるラグランジ ュ・ガレルキン法であり,移流拡散方程式とナヴィエ・ストークス方程式に 対して収束性を証明し,数値計算によりその実用性を示している.従来のラ グランジュ・ガレルキンスキームが内包していた理論と計算の乖離を解消し ている. 理工学に現れる種々の現象が偏微分方程式で記述されるが,現実的な問題 の解を解析的手法で求めることは,ほとんどの場合,不可能であり,離散化 された問題を計算機で数値的に解くことが,今日,広く行われている.その 際,離散化の度合いを上げれば,数値的に解かれた解が元の解に収束するこ とを示すことが肝要であり,それを可能にする計算手法の開発の重要性に繋 がる. 流れ問題に現れる代表的な偏微分方程式として,移流拡散方程式とナヴィ エ・ストークス方程式について考察する.空間の離散化には有限要素法を用 いる.有限要素法は偏微分方程式の数値解析において,最も強力な解法の一 つであり,任意形状領域に適用でき,汎用プログラムの作成が可能であるこ と,数学的基礎理論の構築が進んでいることの特長がある.しかし,流れ問 題に対して,通常のガレルキン有限要素法を用いると不安定になることが知 られている.これらの方程式には物質微分項が存在し,その近似を如何に行 うかが安定なスキームを構築する鍵となる.風上方向の情報に重きを置いた スキームにより,安定化を図ることができるが,同時に搬入する数値拡散の 制御も行う必要がある. 本論文で考察するラグランジュ・ガレルキン法は特性曲線法と有限要素法 を結合した手法であり,特性曲線有限要素法やガレルキン・特性曲線法とも 呼ばれる.この方法で物質微分は流体粒子の軌跡を記述する特性曲線に沿っ て近似されるため,物理的に自然な近似になり,風上方向の情報を自然に取 り入れ,数値拡散の影響を小さく抑えることができる.得られる連立一次方 程式の行列は対称であり,その求解に効率の良い対称行列用のソルバーを用 いることができる. ラグランジュ・ガレルキン法には上述の長所がある一方,次の短所を持っ ていた.すなわち,このスキームには物理量を表す関数と流体粒子の軌跡を 表す関数との合成関数を含む積分が現れ,この被積分関数は要素上多項式で ないため,厳密に計算することはできない.従来のラグランジュ・ガレルキ ン法の安定性と収束性は,丸め誤差を除いて,この積分が厳密に行われるも のとして,解析され結果が得られていた.しかし,現実の計算では,この合 成関数の積分は,数値積分を用いて近似される.このとき入り込む誤差の影 響で数値計算が,取り分け,移流が支配的な状況下では,不安定になること が報告された.理論では安定性が証明されているのに,実際の計算では不安 定になるという,乖離が生じていた.この乖離は,ラグランジュ・ガレルキ ン法に特有な問題であり,通常の有限要素法では生じない.実際,通常の有 1.

(3) 限要素法では,各要素上,多項式の積分のみが現れ,その値は解析的に求め られるからである. 本論文では,局所線形化流速を用いたラグランジュ・ガレルキンスキーム を構築し,このスキームの安定性と収束性を証明することにより,理論と計 算の乖離を解消している.局所線形化流速は,各要素上 1 次式で補間した流 速 で ,2 0 0 2 年 に 田 中 克 徳 ら に よ り 導 入 さ れ ,移 流 拡 散 方 程 式 の 数 値 計 算 に 用 いられた.局所線形化流速を用い,特性曲線を記述する常微分方程式系をオ イラー近似して得られる写像を用いると,合成関数項を含む積分は各要素上 で厳密に行うことができる.したがって,このスキームは,丸め誤差を除い て,厳密に計算でき,理論的に証明した安定性と収束性の結果が,数値計算 結果に対してそのまま適用できる. 論文は 8 つの章と付録から成っている.各章の内容は次のとおりである. 第 1 章は導入部であり,ラグランジュ・ガレルキンスキームの概要とその 問題点,本論文の目的が述べられている. 第 2 章では本論文で使われる記号や基本的な概念の準備をしている. 第 3 章では,移流拡散問題を取り上げ,時間離散化にオイラー近似,空間 離散化に有限要素近似を用いたスキームの安定性がまとめられている. 第 4 章では特性曲線法による物質微分の近似についてまとめられている. さらに,局所線形化流速を導入し,これを用いた写像から成る合成関数を含 む積分が厳密に計算できることを示している. 第 5 章では移流拡散問題のためのラグランジュ・ガレルキンスキームが考 察されている.ここでは,局所線形化流速を用いたラグランジュ・ガレルキ ン ス キ ー ム ( ス キ ー ム L G - L LV と 呼 ぶ ) が 提 案 さ れ て い る . 本 研 究 で は 田 中 らと同じ局所線形化流速を用いて流体粒子の軌跡を近似する写像を使い,三 角 形 k 次 要 素 に 対 す る ス キ ー ム L G - L LV を 作 成 し て い る . ス キ ー ム L G - L LV は本質的に無条件安定であることを示し,厳密解に必要な正則性を仮定した 上で収束性を証明している.証明の中で元の流速場と局所線形化流速場の差 を適切 に評 価 し て いる .そ の差 は空 間メッ シュ サイ ズ に関し て 2 次 オー ダー で あ る .時 間 離 散 最 大 値 / 空 間 H 1 ノ ル ム を 用 い た と き ,1 次 ま た は 2 次 要 素 に 対 し て 収 束 次 数 は 最 良 で あ り ,時 間 離 散 最 大 値 / 空 間 L 2 ノ ル ム を 用 い た と き , 1 次 要 素 に 対 し て 最 良 で あ る . ス キ ー ム L G - L LV は , 常 微 分 方 程 式 系 の 厳 密 解 を 使 わ ず 数 値 積 分 も 使 っ て い な い た め ,厳 密 に 計 算 す る こ と が で き る . 空 間 2 次 元 に お い て こ の ス キ ー ム L G - L LV を 実 現 す る プ ロ グ ラ ム を 作 成 し , 回転流れ場問題と創成解問題(既知解析解を未知として解く問題)の数値結 果を示している.そこでは,理論で得られた収束次数が数値的に達成される ことを確かめている.さらに,高ペクレ数問題において,従来の数値積分を 用 い る ス キ ー ム で は 不 安 定 で あ る が , ス キ ー ム L G - L LV で は 安 定 に 計 算 で き る こ と を 確 か め て い る . ス キ ー ム L G - L LV の 解 析 を 行 う 一 方 , 従 来 の 数 値 積 分を用いるラグランジュ・ガレルキンスキームをある仮定の下で考察し,安 定性が成立するための十分条件を示している.時間刻みが空間メッシュサイ 2.

(4) ズの 2 乗のオーダーより小であれば安定であることが 示されるが,これは実 用的には厳しい条件である. 第 6 章ではナヴィエ・ストークス問題のためのラグランジュ・ガレルキン 法 が 考 察 さ れ て い る .局 所 線 形 化 流 速 の ア イ デ ア に 基 づ き ,厳 密 に 実 装 で き , かつ,数値解の厳密解への収束性を証明できるラグランジュ・ガレルキンス キ ー ム ( 再 び , ス キ ー ム L G - L LV と 呼 ぶ ) が 提 案 さ れ て い る . 流 速 と 圧 力 を 近似する有限要素空間として,代表的なテイラー・フッド要素とミニ要素が 使われている.厳密解に必要な正則性を仮定し弱い安定性条件の下で,数学 的 帰 納 法 に よ っ て ス キ ー ム L G - L LV の 収 束 性 を 証 明 し て い る . 流 速 を 時 間 離 散 最 大 値 / 空 間 H1 ノ ル ム で 圧 力 を 時 間 離 散 L2/ 空 間 L2 ノ ル ム で 計 っ た と き , これらの要素で収束次数は最良である.更に,流速を時間離散最大値/空間 L2 ノ ル ム で 計 っ た と き , ミ ニ 要 素 で 収 束 次 数 は 最 良 で あ る . 空 間 2 次 元 に お い て ス キ ー ム L G - L LV を 実 現 す る プ ロ グ ラ ム を 作 成 し , い く つ か の 数 値 計 算を行っている.まず,創成解問題で,理論的な収束次数が得られることを 確認している.また,ベンチマーク問題として広く使われているキャビティ 問題に対して数値計算を行っている.高レイノルズ数の場合,従来の数値積 分 を 用 い る ス キ ー ム で は 不 安 定 で あ る が , ス キ ー ム L G - L LV で は 安 定 に 計 算 できることが分かる.正三角形領域におけるキャビティ問題では,数値的定 常解を計算し,レイノルズ数に関して定常解の分岐が起きていることが観察 されている. 第 7 章では,局所線形化流速を用いた写像から成る合成関数を使うとき, 要素外力ベクトルを高速に計算するためのアルゴリズムが示されている. 第 8 章では本論文の結論が述べられている. 付録ではいくつかの数値積分公式が列挙されている. 以 上 ,述 べ て き た よ う に ,申 請 者 は 局 所 線 形 化 流 速 を 用 い た ラ グ ラ ン ジ ュ ・ ガレルキンスキームを提案し,従来の数値積分を使うラグランジュ・ガレル キンスキームが内包していた理論と計算の乖離を解消している.本研究の成 果は,流れ問題の数値解析の発展に大きく貢献するものである.よって,本 論文は博士(理学)の学位論文として価値あるものと認められる. 2017 年 1 月 審査員 主査 早稲田大学特任教授. 理学博士(京都大学). 田端. 正久. 早稲田大学教授. 工学博士(早稲田大学). 大石. 進一. 早稲田大学教授. 工学博士(東京大学). 高橋. 大輔. 3.

(5)

参照

関連したドキュメント

論文審査の結果の要旨

論文審査の結果の要旨

187 ≪博士論文要旨および審査報告≫ 服部あさこ 日本のマイノリティ女性の 自己解放における「母親性」の影響 学位請求論文  -

[r]

第1章においては、会話の主体の「内側」の声を聞き、自分が「伝えたい」ことを伝え

の子音[t]に逆行同化した結果、派生した形であるという解釈もある(那須

一連の会話展開の中で、依頼側と被依頼側が、相手の働きかけをどのように理解し、そして自分

4.本論文では,発話の「機能文型」の認定基準と記述方法,国語研(1960)の『話しこと ばの文型』, 「構造文型」