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博士論文審査報告書

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学大学院 創造理工学研究科. 博士論文審査報告書. 論. 文. 題. 目. 数理モデルを用いた作業環境における 揮発性有機化合物のばく露評価に関する研究 Exposure Assessment for Volatile Organic Compounds in a Workplace using Mathematical Models. 申. 山. 請. 田. 憲. Kenichi 創造理工学研究科. 者. 一. Yamada 地球・環境資源理工学専攻. 2010 年. 7月.

(2) 近年、労働環境において化学物質による職業性疾病を防止するための考え方と して化学物質のハザードのみに注目するのではなく、そのリスクを評価してリス クを可能な限り低くするような管理を行って化学物質を使用していくという考え 方になってきている。このリスクを評価する手法としてリスクアセスメントがあ り、行政も化学物質管理の手法として推奨し、企業における化学物質管理の基本 的な考え方になりつつある。この化学物質のリスクアセスメントについて、定性 的(簡易的)なリスクアセスメントの手法は行政が示しているが、定量的なリス クアセスメントの手法は明確にはなっていない。本論文の目的は、定量的なリス クアセスメントを行う上で必要となるばく露評価を行うための空気中濃度の推定 とばく露濃度測定の 2 つの手法について数理モデルを構築し、実験によりその有 効性の検証を行うことにある。本論文は、第1章が緒言、第2章がばく露濃度推 定のための数理モデルの開発と有効性の検証、第3章がばく露濃度測定のための パッシブサンプラーの開発と有効性の検証、第4章が総括で構成されており、以 下、各章毎にその概要を述べる。 第1章の緒言では、研究の目的、定量的なリスクアセスメントを行う上で必要 となるばく露評価の本研究の位置づけを明確にするためにばく露の定義やばく露 評価手法についての概要が述べられている。 第 2 章 で は 、ば く 露 評 価 を 行 う 際 に 必 要 な 空 気 中 濃 度 を 推 定 す る た め に 構 築 し た 数理モデルと既存の数理モデルの有効性を検証した。具体的には、発生過程をモ デル化した 3 種類の液溜りモデル(発生モデル)と分散過程をモデル化したボッ クスモデル(分散モデル)について理論的および実験的な検討を行い、その有効 性を検証した。なお、理論的な検討には、数値流体力学を用いた手法やモンテカ ルロ法を用いた手法なども適用した。 3 種の液溜りモデルは、蒸発面積が一定の液溜り、蒸発面積が時間的に減尐す る 液 溜 り 、容 器 に 入 っ た 液 溜 り の 3 つ の 形 態 に つ い て 単 位 時 間 当 た り の 発 生 量( 以 下発生量)の推算式を求め、その有効性の検証を行った。蒸発面積が一定の液溜 りモデルの発生量を、本研究より得られた実験式と既存の理論式や実験式を用い て計算した結果、ほぼ同様な推算値が得られた。蒸発面積が時間的に減尐する液 溜りモデルの発生量については、既存の実験式では発生量の推計に気流の影響が 考 慮 さ れ て い な か っ た た め 、気 流 の 影 響 が 顕 著 で あ る 場 合 に は 適 用 で き な か っ た 。 本研究で提示した蒸発面積が時間的に減尐する液溜りモデルでは、気流の影響を 考慮して発生量の実験式を独自に求めていることから実用性の高い実験式である。 容器内の液溜りからの蒸発を想定した液溜りモデルの発生量については、その 理論的な解析から発生量の推算式を導出するとともに、実験結果からその有効性 の検証を行った。その結果、容器内への気流の影響が小さい場合については、理 論値と実測値は完全に一致し、理論的な解析により導出した推算式の有効性が確 認された。さらに、液溜りモデルのような適当な発生モデルが構築できない場合 1.

(3) に発生量を推定する手法として空気中濃度の測定結果を用いた発生量の推算式を 導出した。また、この推算式の有効性を確認するためにチャンバーをモデル作業 場として実験的な検討を行った結果、導出した推算式の有効性が確認された。 分散過程をモデル化したものにボックスモデル(分散モデル)がある。このモ デルは発生源から発生した物質の分散過程において「流体としての物性を無視し て、物質を瞬間的にボックス内に均一に分散する」という仮定のもとにモデルが 構築されている。このボックスモデルの有効性を確認するために定常状態の空気 中濃度について数値流体力学の手法を用いた専用ソフトによる解析や作業場での 実測データとの比較検討を行った。その結果、ボックスモデルの有効性が確認さ れた。その一方、発生源近くでの空気中濃度の推定を行う場合にはボックスモデ ルを応用した数理モデルであるボックス内を発生源付近のゾーンと発生源以外の ゾーンの2つのゾーンに分けて推算を行う2ゾーンモデル(2 ボックスモデル) を使用したほうがより実際の状況にあった推定を行うことができることが明らか となった。これらの結果から、ボックスモデルなどの分散モデルに対して設定し た「物質を瞬間的にボックス内に均一に分散する」という仮定は、定常状態の空 気中濃度の推定を行う際には問題とはならないことが確認された。 発生モデルや分散モデルなどにより空気中濃度を推算する際には、必要な発生 量や換気量などのパラメータは一定の定数を用いるが、実際にはそれらのパラメ ータはあるばらつきを持っているのが通常である。これらのパラメータに一定の 分布を与えて空気中濃度の推定を行うためにモンテカルロ法を用いて解析を行っ た。本研究ではこの解析に汎用性の高いマイクロソフト社のエクセルを用いた。 発生量には正規分布を適用し、換気量には換気回数の範囲のみ判明している場合 として一様分布を適用して解析を行った結果、空気中濃度は換気量の範囲が大き いほど対数正規型の分布となることが明らかとなった。また、パラメータに定数 を用いた計算により得られた空気中濃度の最大値はモンテカルロ法による解析結 果から評価するとその出現確率が非常に小さいことが判明した。よって、出現確 率 を 考 慮 し た 現 実 的 な 値 と し て は 95 パ ー セ ン タ イ ル 値 が 適 当 で あ る こ と が 推 定 された。 第3章では、ばく露濃度測定のために、現在使用されている活性炭などの固体 を捕集材としたパッシブサンプラーとは別に、極性物質の捕集も考慮した独自に 開 発 し た 液 体 を 捕 集 材 と し た パ ッ シ ブ サ ン プ ラ ー( L i P S:L i q u i d P a s si v e Sa m p le r ) を用いて、定常状態と非定常状態における性能に関して数理モデルを構築すると と も に 実 験 的 な 検 討 に よ り そ の 有 効 性 の 検 証 を 行 っ た 。定 常 状 態 に つ い て 固 体( 活 性炭)捕集材を用いたパッシブサンプラーで成立する捕集量とばく露量(ばく露 濃 度 と ば く 露 時 間 の 積 )と の 関 係 式 が 前 述 の L i P S で も 成 立 す る の か に つ い て 検 討 した結果、一定の補正項を加えないと成立しないことが明らかとなった。この補 正項が必要な理由は、固体捕集材への吸着速度に比較して液体捕集材への吸収速 2.

(4) 度の方が小さいために捕集材表面濃度がゼロとならないことが原因と推定された。 そこで、理論的な解析を行い、導出した関係式による推算値と実験値を比較した 結果、ほぼ一致していることが確認できた。パッシブサンプラーは拡散現象を利 用して捕集を行うため捕集速度が小さく、ポンプを用いた捕集に比べて非定常状 態 の 影 響 が 顕 著 に な る と 考 え ら れ る 。 そ こ で 、 拡 散 管 長 の 異 な る L i P S( 拡 散 管 長 が長いほど非定常状態の影響が大きい)をチャンバー内でパルス状パターンの濃 度変動のばく露を受けるようにして実験を行うとともに数理モデルによる理論的 解 析 も 行 っ た 。実 験 的 な 検 討 の 結 果 、パ ル ス 幅 が 5 秒 以 上 の 濃 度 変 動 の 場 合 、L i P S の 拡 散 管 長 が 3.15 ㎝ 以 下 で あ れ ば 非 定 常 状 態 の 影 響 は 問 題 と は な ら な い こ と が わかった。また、フィックの拡散方程式の非定常解をもとに拡散管内の濃度分布 についてシミュレーションを行った結果、実験結果を裏付ける結果が得られた。 第四章の総括では、本研究で対象としたばく露評価のための数理モデルを用い た空気中濃度の推定やパッシブサンプラーを用いたばく露濃度測定などの2つの 手法についてその有効性をまとめた。さらに、空気中濃度の推算式による推算や 独 自 に 開 発 し た ば く 露 濃 度 測 定 器 ( LiPS) に よ る ば く 露 濃 度 測 定 は 、 化 学 物 質 の 定量的なリスクアセスメントにおけるばく露評価を行う際の有効な手段となるこ とを明示した。 現在、我が国において定量的なリスクアセスメントにおける数理モデルを用い たばく露評価の具体的な手法については未だ検討が行われていない。また、学会 等でもまだ議論が始まっていない。一方、ばく露濃度測定のためのパッシブサン プラーとして、液体捕集材の検討は進んでいない。本論文では、これらの先駆的 な分野について数理モデルの構築とその有効性の実験による検証を通して基礎的 な研究だけにとどまらずに、実際に作業現場での使用が可能なレベルでの結論を 導いている。そのため、これらの結果の公表は、今後の定量的なリスクアセスメ ントの進展に寄与するものと思われる。 よって本論文は博士(工学)の学位論文として価値あるものと認める。. 2 01 0 年 7 月. 審査員 主査. 早稲田大学理工学術院教授. 工学博士. 早稲田大学理工学術院教授. 博 士 ( 工 学 )( 東 京 大 学 ). 早稲田大学理工学術院教授. 博 士 (理 学 )( 大 阪 市 立 大 学 ) 香 村 一 夫. 3. (早稲田大学). 名古屋俊士 大河内. 博.

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