氏 名 岩田 健宏 授 与 し た 学 位 博 士 専攻分野の名称 医 学
学 位 授 与 番 号 博 甲第 6568 号 学位授与の日付 2022 年 3 月 25 日
学位授与の要件 医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻
(学位規則第 4 条第 1 項該当)
学 位 論 文 題 目
論 文 審 査 委 員 教授 阪口政清 教授 松川昭博 教授 大内淑代
学位論文内容の要旨
REIC/Dkk-3は癌抑制遺伝子である。我々は先行研究で、細胞質内アンドロゲン受容体(AR) シグナルのネガティブモジュレーターとして知られる small glutamine-rich tetratricopeptide repeat-containing protein α (SGTA) が 、REIC/Dkk-3 の 相 互 作用 パ ートナ ー であ り、
REIC/Dkk-3がSGTAの二量体化を阻害し、ヒト前立腺癌PC3細胞におけるARの輸送とシグ ナル伝達をアップレギュレートすることも明らかにした。本研究では、ステロイド受容体の核内 輸送がダイニンモーター依存的に行われていることから、グルココルチコイド受容体(GR)の 輸送におけるSGTAとREIC/Dkk-3の役割を調べることを目的とし、PC3細胞と293T細胞を 用いた。SGTAでは、核へのGR輸送を抑制する効果が観察された。また、REIC/Dkk-3では、
PC3細胞におけるGR輸送に対して抑制効果が認められた。SGTAをshort-hairpin(sh)RNAで 枯渇させたPC3細胞では、REIC/Dkk-3によるGR輸送の抑制が、有意に増強されたことから、
SGTAによるGR輸送の抑制にREIC/Dkk-3が代償的に関与していることが示唆された。この ように、本研究では、293TおよびPC3細胞において、SGTAがGRの細胞質内輸送を阻害し、
REIC/Dkk-3もPC3細胞のGRの細胞質内輸送を阻害することが明らかになった。
論文審査結果の要旨
前立腺がんではホルモン療法が主流であるが、治療を続けているとホルモン抵抗性がんが出 現してくることが問題となっている。ホルモン療法により不活化したアンドロゲン-アンドロゲ ン受容体(AR)のシグナルを補完するグルココルチコイド-グルココルチコイド受容体(GR)のシグ ナルが優位となってくるからである。研究者の教室では、AR活性化制御タンパク質としてSGTA を見出しており、SGTAの制御にREICが重要であることを見出し報告している。そこで本研究で は、SGTAとREICがGRに対しても関係があるものと仮説を立て、それを検証するものとした。
研究では、GR の活性化状態をモニタリングする手法としてプロモーターレポーターアッセイ を使用し、GRに対するSGTA、REICの効果を検討した。解析したところ、SGTA、REICともにGR の活性化を抑制することが明らかとなった。さらに、REICはSGTAと結合することで、この効能 を高める可能性を見出した。REIC はすでに前立がん細胞に対して抗がんの有効性を示すことが 周知となっている。しかし、この効果は、ER-stress-JNK-Bax経路によるがん特異的アポトーシ ス誘導によるものとされてきた。したがって、本研究から得られた知見は、従来のREIC効果に 新たな有用性を付加するものとなった。すなわち、REIC が前立腺がんのホルモン抵抗性改善に も有効性を示すというものである。
委員からは、WBで検出されたSGTAの2本のバンドの意味は、RECを過剰発現させて細胞はア ポトーシスしないのか(レポーターアッセイに細胞死が影響しているのでは)、REICは細胞内の どこでSGTAとともにGRと結合するのか、見出した経路の正常細胞での生理的役割はあるのか、
など多くの質問があったが、本人の知見や他からの情報から、自身の考えを的確に述べ、きちん と説得力を持って回答した。委員間の議論から、本研究成果は、現在進行中の抗がんREIC製剤 の新たな有用性を付加する重要な研究成果であるものと判断するに至った。
よって、本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があると認める。