- 31 -
子どもたちの言葉を豊かに育てるための文字指導の重要性 一保育・教育環境の中で子どもたちは文字言語を
どのように体験し、言葉を獲得していくのかー 専 攻 人 間 教 育 専 攻
コース 幼年発達支援コース 氏 名 植 田 高 校
1.問題の所在と目的
著者は, 1年生から6年生までの各学級担 任や特別支援学級の担任,専科,指導改善工 夫担当等をしてきた。なかでも, 1年生の担 任が多く,特に小学校生活をスタートする子
どもたちの学習や生活の基礎・基本を定着し ていくことの重要性が強く感じられた。特に 言語にかかわる「話すJ
r
聞く Jr
書くJr
読む
J
という活動が授業の中でどれだけ相互に 機能的に働き,自分の思いや考え,気持ちを お互いに伝え合うことができるのかが課題で あった。このように言語面の活動を充実させ ていくことが,子どもたちの小学校生活への 適応を促すことに関与するのであれば,就学 前の段階で言語面の活動をある程度充実させ ておく必要があると思われる。実際に就学前 段階に小学校以後の学習内容を含めようとする動きがある。
毎日新聞(東京・
2 0 1 4
・7
・1 2 )
による と,文部科学省は,次期学習指導要領の改訂 で,現行の小学校1年生の学習内容の一部を 幼稚園教育要領と保育所保育指針に取り組む ことを検討しているとのことである。その内 容としては,1 9 9 2
年度から新設された教科f生活科jなどが想定されている。生活科は 体験活動が中心であり,動植物とのふれあい など幼稚園や保育所で実施されているものと も重なるところもあるため,内容的にも見直
指 導 教 員 田 村 隆 宏
されることが指摘されている。さらに,絵本 などの普及で5歳児の識字率が上がっている ため,国語のひらがなの読み書きのほか,算 数の足し算,引き算も検討対象になるとされ ている。
小学校 1年生の問題と文部科学省のこのよ うな動向により,幼稚園・保育所と小学校教 育との接続で,特に言語領域の大きな課題と なる文字言語を就学前教育のなかで,どのよ うに扱っていくのかが重要になってくると考 えられる。
本研究では,小学校入学前の子どもたちが どのような環境で文字と出会い,字を読んだ り,書いたりするようになっているのか。ま た,子どもが,文字と出会う機会をもたらす 環境の一要素であると考えられる絵本を取り 上げ,絵本を介して,子どもたちは文字も含 めた言葉をどのように豊かに獲得していくの かについて検討する。そして,これらの検討 から,保育者や教師が子どもたちの言葉を豊 かに育てるために具体的にどのような支援を していくことが望ましいのかについて,探る ことを目的とする。
2. 研究方法
(1) 就学前・小学校段階における文字指導 に関する文献による理論研究
保育所・幼稚園・小学校における文字 環境に関する文献による理論研究
- 32 - (2)調査研究
.読み書き調査
・文字に関する環境についての調査 .保育所・幼稚園・小学校の読書環
境・文字環境の観察
・就学児前・就学児後の文字指導に対 しての意識調査
(3)文字環境・文字言語経験に関する保育の 観察・記録・分析
(4)絵本や児童文化財から受ける影響につい て分析
(5)小学校l年生における文字言語の発達過 程の分析
3. 本研究の結果と考察
本研究の一連の調査から,就学前,就学後の文 字学習に関する様々な示唆が得られた。実際の ひらがなの読み書き調査の結果より,文字習得 の年齢が早期化されていることが,理解するこ とができた。就学前より,読み書きの個人差があ り,就学後,どのように文字言語を獲得していく のか文字言語の発達過程の分析の中で,絵,文字 の変化を見ることができた。さらに,文字環境に 関する調査から,就学前の段階で,子どもたちの 文字に対する興味,関心を高め,文字に親しめる ように様々な工夫がされていることが示唆され た。このような工夫された文字環境が就学前段 階における文字学習を促し,就学後の文字学習 で困難を伴わないことに結びついているもので あると考えられる。また,就学後の文字環境に関 する調査では,本格的な文字学習に対応して文 字環境が工夫されていることも示唆された。直 接的な文字学習に関する指導だけでなく,子ど もの生活環境の中に文字学習を促す工夫がなさ れていることで,子どもの文字学習に対する意 欲ややる気が高められているものと恩われる。
子どもたちの文字に関わる活動に関する調査か らは,子どもたちの言葉が生まれる時,様々な体 験や経験の中で言葉が生まれていることや,環 境や人とのかかわりの中で,言葉が生まれてい ることも示された。子どもたちは,自分の気持ち を相手に伝えたいとき,相手にわかるように話 そうとする。あるいは,書くという表現手段をと る時,自分の思いを伝えようと,言葉や文字に対 して関心を持つ。その時,文字言語を獲得する意 欲を高めるのである。
文字指導のプロセスの中で,文字言語を獲得 していくことが,子どもたち,一人一人の書く力 につながり,文字指導の重要性を確認するので ある。つまり,うらをかえすと,子どもたちが,
言葉を覚え,言葉を認識し,話し,書くことをし ていく時,まわりの大人,保育土,教員が,子ど もたち一人一人に,どのような言葉がけをし,接 し,かかわっていくのが望ましいのか,そして,
どのような環境構成をつくっていけばよいのか について,考えていかなければ,子どもたちの文 字言語は伸びていかないのではないかと思われ
る。
日々変化する,子どもたちの育ちのなかで,何 を支援していくのか。その時,その場にあった,
適切な支援をしていくことが,教師の姿勢とし て大切であると考えられる。
今後の研究では,子どもたちの発達過程のな かで生まれてくる言葉,絵,文字,子どもたちの 内言についても,さらに,研究を深め,子どもた ちが,出会う絵本のなかにある絵や言葉を通し て,目の前にいる子どもたちに,どのように,提 示していくことが子どもたちの文字学習が促さ れるために有効であるのかについても研究を重 ねていく必要があると考えられる。