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実験心理学者としての多様なキャリアパスを考える特別委員会(~社会から求められる・社会に貢献できる研究者養成の支援~)企業で活躍の場を見出した実験心理学者の「声」を届けるシリーズの開始にあたって

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Academic year: 2021

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DOI: http://doi.org/10.14947/psychono.36.42 253 綾部: 実験心理学者としての多様なキャリアパスを考える特別委員会

実験心理学者としての多様なキャリアパスを考える特別委員会

(∼社会から求められる・社会に貢献できる研究者養成の支援∼)

企業で活躍の場を見出した実験心理学者の「声」を

届けるシリーズの開始にあたって

綾 部 早 穂

1 筑波大学人間系 本委員会を設立してから2年が経過した。2017年度の 基礎心理学会大会において,若手の会主催で,「企業が 心理学に期待するもの,心理学が企業に貢献できるこ と」と題したシンポジウムが開催される等,実験心理学 (基礎系心理学)者が,従来の「アカデミアへの貢献」 の範疇だけでは許容されない現状,また,社会からの 「ニーズや期待」が高まりつつある現状に,積極的に立 ち向かう必要があるという考え方はもはや誰しもが切実 に感じていることと思われる。 本委員会の設立の趣旨は基礎心理学研究第35巻第1号 に掲載されている通りで,「…実験室における人間の「普 遍的」な心的機能は,実社会における人間の「個人差」 と対比させることで,より深い理解に至る可能性もあ る。基礎心理学を実験室内に封じ込めておくことは,基 礎心理学にとっても,また産業界にとっても「勿体な い」のである。基礎心理学の有用性は,産業界でも認識 されつつあり,基礎心理学からの現場への積極的な働き かけが求められているのである。今まさに,産業界と交 流し,産業界で貢献できる実験心理学者の養成,および 産業界と交流できる研究者の見識を向上させる必要性が ある。…」ということに基づいている。その活動の一環 として,心理学(特に基礎系)の博士号や修士号を持ち, それを自身のアイデンティティ(専門性)として企業で 活躍する研究者を対象にインタビューを始めた。 基礎心理学で長年培われた実験計画の立て方や実験手 続きや,心理学実験を実施する過程で個人が獲得した実 験テクニックやノウハウは,産業界での製品開発や評価 に適用しうるものである。実験心理学者は,理工系出身 者が有する「分析技術」「設計・制作技術」等は持ち合 わせていないかもしれないが,開発プランと現場での制 作の橋渡し的な役割を担うにも役に立つ(はず)な「人 材」である。製品やサービスや情報といったものは「人 間」が使用する以上,「人間」目線でその設計が必要で あり,そこにも「心理学バックグラウンド」の観点は (私たち実験心理学者は「当たり前」と思っていること でさえも),「新鮮」で「有用」に捉えられることもある のではないかと思われる。また,私たちが,人間として 人間について抱く「不思議」な現象に対して,問題提起 をし,実験計画を立て,それを実行し,分析し,仮説検 証を行う思考プロセスは,それだけで,実験心理学者が 有している1つの「誇るべき能力」である。 しかしながら,企業等のホームページの「採用案内」 にアクセスしても,多くの場合「心理学」出身者は「一 般職」でしかエントリーできない(自分が成しえること をアピールする機会さえ与えてもらえない)ことが多い という現実の壁もある。自分の所属する研究室の指導教 員が企業との共同研究等,企業との接点を持たない場合 には,若手の研究者が企業の研究・開発部門にアプロー チするには遥かに高い壁があるのが現状かもしれない。 多くの実験心理学者自身が自分の実力を発揮できる 「場所」や自分の「価値」に気づいていない,また気づ いても前述の壁にぶつかってしまう,さらには産業界に おいて「実験心理学者」の認知度が低いという状況の中 でも,自分の専門を活かして産業界に貢献している「先 駆者」の事例を検証することが,本特別委員会の活動の 第一歩である。企業人として,(その企業と出会うこと になった)きっかけ,心理学学修者としてどのような経 験(スキル)が有効活用されているのか,大学や大学院 時代に学んでおけばよかったこと,しておけばよいこ と,後悔,反省,限界等々…ありのままに語っていただ くことで(とは言っても,「企業人」なので,「制約もあ る中での」),「実験心理学者」の活躍できる世界の広が り(キャリアパスの拡充)の可能性,産業界で今まさに 求められていることを特別委員会なりに模索し,その問 題に対処する方策を検討し始めている。インタビューを 通して,産業界で必要とされる人材育成のための教育に

The Japanese Journal of Psychonomic Science

2018, Vol. 36, No. 2, 253–254

報  告

Copyright 2018. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved.

(2)

254 基礎心理学研究 第36巻 第2号 ついて改めて,考えさせられることが多い。 インタビューを進める過程で,インタビューの内容を 包括するのだけではなく,できるだけ「生の」情報を基 礎心理学会の会員の皆さんと共有することが望ましいの ではないかという考えに至った。冒頭に記載したよう に,若手の会が主催したシンポジウム「企業が心理学に 期待するもの,心理学が企業に貢献できること」は大盛 況であり,反響も大きく,会員の皆さんとの情報共有の 必要性を痛感したこともその一端である。今後,基礎心 理学研究の各号に「先駆者」の方々から 1∼2名のイン タビューをできるだけ生のまま(インタビュアとインタ ビュイの関係性も活かして)掲載させていただき,会員 の皆さんのご意見やご感想も伺いながら,キャリアパス を考える特別委員会としては,実験心理学者のキャリア パス拡充のための「次の一手」を考えるように努力して いきたい。

参照

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