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幼稚園児の睡眠習慣と身体活動量の関連性

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Academic year: 2021

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(1)

幼稚園児の睡眠習慣と身体活動量の関連性

著者

松井 学洋

雑誌名

教育学論究

11

ページ

125-127

発行年

2019-12-15

URL

http://hdl.handle.net/10236/00028324

(2)

幼稚園児の睡眠習慣と身体活動量の関連性

Relationship between sleep habits and physical activity in kindergarten children

松 井 学 洋

Abstract

This study aimed to investigate the relationship between sleep habits and physical activity among public school kindergarten children. Gross motor activities, as well as sleep habits, were recorded for two consecutive weeks. The average bedtimes, sleep onset times, wake up times, and get up times, during school days, were found to be significantly earlier than those on holidays. Furthermore, during school days the children's bedtime was negatively correlated to their total number of steps. Sleep onset time during school days was also found to be negatively correlated to the total number of steps on a holiday. These findings indicate that sleep habits among kindergarten children are associated with a regular school life and can significantly influence daily motor activity.

キーワード:幼稚園児、睡眠習慣、歩数

Ⅰ.はじめに

睡眠は、乳幼児期から学童期にかけての認知機能 の発達や情動の安定、記憶の定着に重要な役割を 担っている1,2,3)。また、睡眠は生理的な中枢神経活 動であるため、規則的な睡眠・覚醒行動の周期性は 生理機能の恒常性の安定につながり、幼児の心身の 健康の保持・増進に深く関わっている。 2017年に改訂された幼稚園教育要領4)では、「幼 児期の終わりまでに育ってほしい姿」が明示され、 最初に「健康な心と体」が挙げられている。幼児が 自ら健康で安全な生活をつくり出し、維持向上して いく力を養うためには、領域「健康」の内容の取扱 いにある「健康な生活のリズムを身に付ける」こと が重要である。健康的な生活リズムは規則正しい睡 眠習慣から生み出されるものであり、幼稚園では幼 児の睡眠習慣の現状を把握し、家庭と連携して健康 教育を行っていくことが求められている。幼児の睡 眠習慣については、これまで様々な報告が行われて いるが、保護者へのアンケートが中心となってい る。保護者の観察に基づく調査では、就床時刻や離 床時刻を把握することは可能だが、実際に対象児が 入眠した時刻や覚醒した時刻を把握することは困難 である。 一方、ICT の進展と共に、加速度センサーを内 蔵した小型で軽量な活動量計が開発され、歩数計測 や睡眠・覚醒の測定に活用されている5)。本研究で は、以前、著者が報告した活動量計を用いた歩数調 査6)の測定結果を基に、専用ソフトを用いて対象児 の活動量から睡眠時間、就床時刻、入眠時刻、覚醒 時刻、離床時刻を算出し、幼稚園児の通園日と休日 の睡眠習慣を調べた。また、幼児の睡眠習慣につい ては、就床時刻が早いほどその日の昼間の活動量が 多いこと7)や、就床時刻と体力向上との関連性も報 告されている8)。そのため、活動量計から算出され た睡眠習慣と身体活動量の一つの指標である歩数と の関連性についても検討を行った。

Ⅱ.対象と方法

⚑.対象 地域の公立幼稚園に通う⚕~⚖歳(平均5.9±0.3 歳)の⚗名(男児⚔名、女児⚓名)を対象とした。 全例、中枢神経系の障害や発達遅延、睡眠障害の既 往はなく、睡眠習慣に影響を与える薬物の内服はな かった。 * Gakuyo MATSUI 関西学院大学教育学部助教 【T:】Edianserver /【関西学院】/教育学論究/第 11 号/ 松井学洋

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(3)

⚒.睡眠習慣と歩数の測定 睡 眠 習 慣 と 歩 数 の 測 定 に は、小 型 活 動 量 計 MTN-220(エステラ社製)を用いた。活動量計を 対象児の腰部の衣服に、入浴、更衣等の時間を除い て装着してもらい、14日間連続で活動量の記録を 行った。次に解析ソフト SleepSign®Act(キッセ イコムテック社製)を用いて、記録された活動量か ら測定期間中の睡眠時間、就床時刻、入眠時刻、覚 醒時刻、離床時刻、一日当たりの歩数を算出した。 ⚓.分析方法 通園日及び休日の睡眠時間、就床時刻、入眠時刻、 覚醒時刻、離床時刻の平均値を対象児ごとに算出 し、Wilcoxon 符号付順位検定にて通園日と休日に おける睡眠習慣の差を検討した。次に、通園日及び 休日の歩数の平均値と、睡眠時間、就床時刻、入眠 時刻、覚醒時刻、離床時刻の平均値を Spearman 順 位相関係数にて検討し、歩数と睡眠習慣との関連性 を調べた。統計処理は IBM SPSS Ver25®を用いた。 ⚔.倫理的配慮 対象児と保護者に研究の主旨・安全性を紙面と口 頭で説明し、紙面での同意を得た上で調査を行っ た。本研究は、神戸大学大学院保健学研究科倫理委 員会の承認を受け実施した。

Ⅲ.結果

⚑.通園日と休日の睡眠習慣 通園日の睡眠習慣の平均値は、睡眠時間467±30 分、就床時刻21:04±0:13、入眠時刻21:13±0:16、 覚醒時刻6:41±0:38、離床時刻6:48±0:40であっ た。休日の睡眠習慣の平均値は、睡眠時間480±32 分、就床時刻21:20±0:11、入眠時刻21:31±0:19、 覚醒時刻7:22±0:37、離床時刻7:38±0:37であっ た。睡眠時間に差はなかったが、通園日の就床時 刻、入眠時刻、覚醒時刻、離床時刻は休日より有意 に早かった。(表⚑) ⚒.睡眠習慣と歩数の関連性 通園日の就床時刻と通園日の歩数に有意な負の相 関が見られた。(表⚒)また、通園日の入眠時刻と 休日の歩数についても有意な負の相関が見られた。 (表⚓)一方、休日の睡眠習慣は、通園日及び休日 の歩数と関連性は見られなかった。

Ⅳ.考察

2013年に実施された首都圏在住の乳幼児1,500人 の保護者へのアンケート調査によれば、幼稚園児の 半数以上が21時~21時30分までに就床し、⚗時~⚗ 時30分までに離床していたと報告されている9)。今 教 育 学 論 究 第 11 号 2 0 1 9 【T:】Edianserver /【関西学院】/教育学論究/第 11 号/ 松井学洋

126 表⚑ 通園日と休日の睡眠習慣 睡眠時間(分) 就床時刻 入眠時刻 覚醒時刻 離床時刻 通園日 467±30 21:04±0:13⽹⾇ ⽺ * 21:13±0:16 ⽹ ⾇ ⽺ * 6:41±0:38 ⽹ ⾇ ⽺ * 6:48±0:40 ⽹ ⾇ ⽺ * 休日 480±32 21:20±0:11 21:31±0:19 7:22±0:37 7:38±0:37

Values are means ± SD. * p<0.05

表⚒ 通園日の睡眠習慣と歩数との関連性 睡眠時間(分) 就床時刻 入眠時刻 覚醒時刻 離床時刻 通園日歩数 相関係数 -0.69 -0.82* -0.43 -0.42 -0.69 有意確率 0.09 0.02 0.34 0.35 0.09 休日歩数 相関係数 -0.67 -0.5 -0.82* -0.73 -0.67 有意確率 0.1 0.25 0.02 0.06 0.1 * p<0.05 表⚓ 休日の睡眠習慣と歩数との関連性 睡眠時間(分) 就床時刻 入眠時刻 覚醒時刻 離床時刻 通園日歩数 相関係数 -0.43 -0.63 -0.39 -0.25 -0.43 有意確率 0.34 0.13 0.38 0.59 0.34 休日歩数 相関係数 -0.29 -0.04 -0.36 -0.14 -0.29 有意確率 0.54 0.94 0.43 0.76 0.54

(4)

回の対象児の就床時刻の平均は通園日21時、休日21 時20分、離床時刻の平均は通園日⚖時48分、休日⚗ 時38分であり、一週間の睡眠習慣についてはこれま での報告とほぼ同じ結果となった。 一方、通園日と休日の就床時刻、入眠時刻、覚醒 時刻、離床時刻の違いを検討した結果、通園日の睡 眠習慣は20分~50分程度休日より有意に早くなって いた。一般的に、幼児は平日に幼稚園・保育園に通 園していることから、睡眠習慣は曜日で異なること が既に報告されている。服部らは⚔~⚖歳の幼稚園 児の睡眠習慣について保護者を対象に質問紙調査を 行い、土曜、日曜日の離床時刻と就床時刻は他の曜 日に比べて遅かったと報告している10)。また、原田 らの⚕~⚖歳児の保護者を対象とした質問紙調査に おいても、休日の幼児の離床時刻は平日より遅く なっていたと報告している11)。幼稚園での保育は午 前⚙時から開始される場合がほとんどである。毎日 定刻に自宅から幼稚園に通園するため、通園時刻が 離床時刻の基準となり、その基準に応じて就床時刻 が各家庭で設定されていると考えられた。一方、子 どもの睡眠習慣は、保護者の就床・離床時刻の影響 を受けることも指摘されている12)。休日は離床時刻 の制約がないため、通園日と比較して保護者の就床 時刻が遅くなることが推測され、子どもの睡眠習慣 への影響がより顕著に表れると考えられた。 また、これまでの研究は保護者を対象にした質問 紙による就床・離床時刻の調査が多く、厳密に幼児 が入眠・覚醒した時刻を調べた研究は少ない。今回 の調査では活動量計を用いて入眠・覚醒時刻につい て定量的に解析を行い、就床や離床時刻だけでなく 入眠や覚醒時刻においても、通園日が休日より早い ことが客観的に明らかになった。そのため、幼稚園 に通園するという行動自体が、幼児の生理的な睡 眠・覚醒リズムの形成に影響を与えていると考えら れた。 睡眠習慣と歩数との関連性については、通園日の 就床・入眠時刻と歩数に有意な負の相関を認めた。 中野らは、幼稚園児152名を対象に歩数と生活習慣 との関連性を検討し、平日及び休日の歩数が多い幼 稚園児ほど、就床時刻が早かったことを報告してい る13)。同様に、前橋は日中の歩数が多い保育園児ほ ど睡眠時間が長いことを報告しており、身体活動量 と早寝との関連性が指摘されている14)。歩数は身体 活動量を示す一つの指標であり、歩数の多い幼児は 日中の身体活動量が高いと考えられる。一般的に、 活発な身体活動が早寝につながることは漠然と認識 されているが、今回の調査により、歩数が幼児の就 床・入眠時刻とも関連していることが定量的に示さ れ、通園日だけでなく休日も活発に運動を行うこと が、日々の健康的な睡眠習慣の獲得と維持につなが ると考えられた。

Ⅴ.結論

幼児の睡眠習慣は通園日と休日で異なっており、 通園に伴う規則的な生活行動や歩数が影響を与えて いる可能性が示唆された。また、幼児の健康的な睡 眠習慣の獲得と維持には、幼稚園や家庭において 様々な運動機会を構成することが重要と考えられ た。 引用文献 1)白川修一郎,編.睡眠とメンタルヘルス.東京:ゆ まに書房,2006.

2)Wu JC, Gillin JC, Buchsbaum MS, et al. The effect of sleep deprivation on cerebral glucose metabolic rate in normal humans assessed with positron emission tomography. Sleep 1991; 14: 155-162.

3)Arnedt JT, Owens J, Crouch M, et al. Neurobehavioral performance of residents after heavy night call vs after alcohol ingestion. JAMA 2005; 294: 1025-1033. 4)文部科学省.幼稚園教育要領.2017. 5)大河原一憲,笹井浩行.ICT を用いた運動・身体活 動の測定方法と健康増進への活用.情報処理 2015; 56:152-158. 6)松井学洋.歩数と身体活動量からみた幼稚園児の運 動習慣の特徴.教育学論究 2018;10:137-141. 7)Kohyama. Early rising children are more active than

late riser. Neuropsychiatr Dis Treat 2007; 3: 959-963. 8)小澤治夫,樽谷将志,小林博隆.子どもの歩行運動. 体育の科学 2006;56:786-790. 9)日本子ども家庭総合研究所,編.日本子ども資料年 鑑 2013.東京:KTC 中央出版,2013. 10)服部伸一,嶋崎博嗣,足立正,他.曜日別にみた幼 稚園児の生活時間について.小児保健研究 2007; 66:840-846. 11)原田眞澄,谷本満江.⚕・⚖歳児の睡眠に関する研 究:睡眠リズムと就寝時に焦点をあてて.中国学園 紀要 2006;⚕:131-135. 12)新小田春美,末次美子,加藤則子,他.幼児の遅寝 をもたらす親子の睡眠生活習慣の分析.福岡医誌 2012;103:12-23. 13)中野貴博,春日晃章,村瀬智彦.生活習慣および体 力との関係を考慮した幼児における適切な身体活動 量の検討.発育発達研究 2010;46:49-58. 14)前橋昭.近年の保育園児の身体活動量と睡眠の関係. 保育と保健 2008;14:24-28. 幼稚園児の睡眠習慣と身体活動量の関連性 【T:】Edianserver /【関西学院】/教育学論究/第 11 号/ 松井学洋

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