【はじめに】
この春に実施された本学の学生定期健康診断(学部・院)に おける尿蛋白検査の結果(表)では、尿蛋白1+以上の陽性者 38名でした。このうち再検査を受けた27名中24名は陰性で一 過性の蛋白尿でした。 このように健康診断の項目には尿検査が含まれていますが、 なぜ尿蛋白をスクリーニングするのでしょうか?尿蛋白を測定 することの意義について記します。【尿蛋白検査の判定】
健康なひとの尿中の蛋白量は1日150mg以下です。1日の尿 量をおおよそ1.5リットルとすると、尿中の蛋白濃度は10 mg/dl 以下となります。検尿試験紙法による尿蛋白の測定は、尿蛋白 1+は30 mg/dl、2+は100 mg/dlと規定されているので、通 常健康なひとの尿蛋白は陰性を呈します。【蛋白尿をきたす病態】
蛋白尿が立位でのみ認められる起立性蛋白尿や、発熱や運 動後に一過性に認められる機能性蛋白尿は、生理的蛋白尿と よばれ病気ではありません。多くは尿蛋白量1日1g以下です。 蛋白尿が3ヶ月以上続く場合は慢性腎臓病(CKD)と診断されま す。まずは生活習慣(後述)の改善が必要です。尿蛋白2+以上を 呈する場合は、腎臓専門医による診療が望ましいとされています。 ネフローゼ症候群をきたすと、1日3.5g以上の高度の蛋白 尿を呈し、全身に浮腫を生じ、ステロイド治療などが必要です。 治療が奏功しないと高度の蛋白尿が持続し、腎機能が低下し ていき末期腎不全へと至り、腎機能が廃絶してしまいます。【蛋白尿と腎機能低下リスク】
蛋白尿は、その存在自体が腎機能低下の危険因子となりま す。沖縄県において1983年4月から1年間、10万人余に対して 尿検査を実施し、その後17年間追跡調査した結果、スクリーニ ング時の尿蛋白量が多いひとほど末期腎不全へと至るひとが 増えていたと報告されています(図)。 蛋白尿以外の腎機能低下の危険因子としては、喫煙・高血 圧・肥満などがあり、喫煙者なら禁煙し、血圧が高いひとは注意 して減塩し、肥満しているひとはその解消に務めるなど生活習 慣の改善を図りましょう。【おわりに】
このように健康診断における蛋白尿のスクリーニングは将来の 腎機能を予測し、結果によっては今後の人生に大きな影響を与え るため、適切な対応が望まれます。保健管理センターから再検査 を勧奨されているかたは、すみやかに応じるようにしてください。尿検査について ∼蛋白尿∼
滋賀大学保健管理センター 所長・教授山本 祐二
図 蛋白尿と慢性腎不全の発症率 • 健康なひとの尿蛋白は陰性を示す。 • 持続性蛋白尿は慢性腎臓病(CKD)と診断される。 • 蛋白尿2+以上は腎臓専門医の診療が望ましい。 • 腎機能低下の危険因子には、蛋白尿および喫煙・ 高血圧・肥満などがある。 要 点 〈参考〉 ・ 中尾一和 監修、向山政志 編集.病態から学ぶ 新腎臓内科学.診断と治療社.2011年. ・ 日本腎臓学会編.CKD診療ガイド2012.東京 医学社.2012年.・ Iseki K, et al. Proteinuria and the risk of developing end-stage renal disease. Kidney Int. 2003 Apr;63(4):1468-74.
表 尿蛋白陽性者数 (平成29年度学生定期健康診断結果)
−
±
1+
2+
3+
陽性 陰性 蛋白尿 人数 割合(%)2,960
54
29
8
1
94.21
1.72
0.92
0.25
0.03
グラフ下から ●蛋白尿なし、◇蛋白尿±、△蛋白尿+、○蛋白尿2+、▲蛋白尿3+ 以上の群を示す。(Iseki K, et al. Kidney Int. 2003より引用改変)180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 1 5 末期腎不全累積発症率 ( /1,000人 ) 受診後の期間(年) 10 15