Title
牛流産胎子および虚弱新生子牛の病因に関する病理学的研
究( 内容の要旨 )
Author(s)
荻野, 博明
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 乙第010号
Issue Date
1997-03-14
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1994
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 学 位 論 文 題 目 審 査 委 貞 荻 野 博 明 (新潟県) 博士(獣医学) 獣医博乙第10号 平成9年3月14日 学位規則第4条第2項該当 牛流産胎子および虚弱新生子牛の病因に関する 病理学的研究 主査 岩 手 大 学 副査 帯広畜産大学 副査 岩 手 大 学 副査 東京農工大学 副査 岐 阜 大 学 授 授 授 授 授 教 教 教 教 教 助 夫 汎 治 昭 幸 連 邦 啓 利 田 川 川 生 木 岡 中 品 桐 柵 論 文 の 内 容 の 要 旨 わが国の養牛産業において、流産および先天性異常子牛の発生は最も大きな生 産性を阻害する疾病として位置づけられているが、そのほとんどは原因不明であ る。また、ウイルス、細菌および真菌等の中で流産を起こす病原休は少数が知ら れているのみである。実際に野外で発生した流死産および虚弱新生子牛の原因を 特定することは難しく、わが国において、胎子の検索により特徴病変と感染因子 を明らかにし、病原体の関与を証明した報告はほとんどない。その理由として、 流産胎子は死亡してもしばらく子宮内に留まってから体外に排出されるため、死 後融解が進む。さらに、娩出された胎子は速やかに家畜保健衛生所へ持ち込まれ ることは少なく糞尿で汚染され放置されることが多いこと等があげられ、検索に 適した材料となりにくい。 このようなことから、申請者は牛胎子の病理組織学的検査材料の採取方法とし て剖検後、胎子の臓器を10%中性緩衝ホルマリンで一晩固定し硬度を高め切り出 しを行うことで、脆弱化した胎子の臓器でも組織標本を作製することができた。 また、25年前に牛伝染性鼻気管炎(lBR)ウイルス感染で流産した胎子のパラ フィン包埋組織について免疫酵素抗体法を用いIBRウイルス抗原の検出を行っ た。壊死巣は胎子の肝臓、腎臓、副腎および胸腺に多数観察された。免疫酵素染 色により壊死巣の分布に一致してIBRウイルス抗原が検出されたことから、酵 素抗体法は長期間保存された流産胎子のパラフィン包埋組織におけるIBRウイ
ルス抗原をはじめ、その他病原体の証明において有用な手技の一つであることを 示した。 新しい牛胎子の病理組織学的検査材料の採取方法と酵素抗体法を組み合わせ、 牛流死産胎子および虚弱新生子牛268検体を検索したところ、以下の病原体を それぞれわが国で初めて証明した。 1.∫什印わCOCC〟ざざ〟/ざ15型感染症:妊娠221日齢の乳用牛に乳量の減少、乳 房および外陰部の腫脹、腫粘液の分泌過多が認められ、1週間後に流産した。胎 子胎盤には血餅が付着し、絨毛は黄褐色を呈し脆弱化していた。羊膜には顕著な 水腫および出血臭が認められ、尿膜には小指頭大のゼラチン様物が付着していた。 胎子胃内には混濁した緑黄色粘桐液を容れていた。組織学的にはグラム陽性球菌 の増殖を伴った出血性壊死性胎盤炎、カタル性小腸炎および第四胃炎が認められ た。細菌学的検査で胎子胎盤、第四胃、小腸内容および母牛膣スワプから£ざ〟/ざ 15型が分離された。酵素抗体法で絨毛胎盤の病変部に£ざ〟/ざ15型抗原が検出さ れた。膣に常在していた分離菌が子宮に侵入、胎盤で増殖し流産を起こしたもの と推察された。£ざ〟/ざ15型は豚の流産胎子から分離されており、今回、同菌が牛 の流産の原因となりうることを明らかにした。 2.舶叩Or∂C∂〝/〝〟所感染症:4例の流産胎子と1例の新生死亡子牛に原虫性 の脳病変が観察された。酵素抗体法で原虫は〟c∂〝/〃〟椚と同定された。脳の病変 は2タイプに分類された。1つのタイプは多発性巣状壊死を特徴とし、妊娠5カ 月で流産した3例の胎子に認められた。他のタイプはtgGを保有した形質細胞と マクロファージからなる顕著な炎症反応で妊娠7カ月で流産した1例の胎子と新 生死亡子牛に観察された。この生体反応の相違は牛胎子の免疫システムの発達の 違いによるものと思われた。 3.仇/。町d/∂。Pざ/H甘C/およぴIBRウイルスの混合感染症‥Cpざ/fねC/感 染と診断した流産胎子9例および娩出後まもなく死亡した子牛1例を病理学的に 検索した。肝臓の特徴的な病変は9例の流産胎子における巣状壊死と死亡新生子 牛の肉芽腫性巣状壊死であった。核内封入体は肝臓、牌臓、胸腺、リンパ節、副腎、 腎臓、肺および第一胃の壊死巣で観察された。免疫組織学的には、少数のα pざ/亡ねc/抗原が肝臓の壊死巣の基本小体に一致して検出された。IBRウイルス 抗原は種々の臓器の変性、壊死した実質細胞に検出され、核内封入体の分布に一 致して検出された。以上のことから、今回の流産胎子並びに新生子牛は胎子期にC pざ/fねC/とIBRウイルスの重複感染を受けたことが証明された。 本研究により、わが国で今まで発生のなかった£ざ〟/ざ15型、〟c∂〃/〃〟吼C pざ/fねC/とIBRの混合感染による牛流産を発見した。今回の研究成果から臨床
の実践の場において病理組織学的検索手法がより広く啓蒙され、流産の病理発生 ならびに流産病原体の解明に重要な役割を果たすであろう。このことは、わが国 における流死産および異常子牛の発生予防および治療の確立の指針へ発展するも のと思考する。 審 査 結 果 の 要 旨
申請者は新潟県中央家畜保健衛生所において、家畜の病性鑑定に関する日常業
務を遂行するなかで、①流産胎子は死亡してもしばらく子宮内に留まってから体
外に排出されるため死後融解が進むこと、②散発性の流死産は畜主の危機感が低
く、牛舎に糞尿にまみれ放置され家畜保健衛生所への搬入が遅れること、③畜主
は虚弱新生子牛には初乳を速やかに強制的に飲ませるため、初乳未摂取子牛の血
唐が得にくいことなどにより病性鑑定に適した材料を採取しにくいことから牛の
流死産、先天性異常子牛のほとんどが原因解明に達していないことを痛感しこの
研究に取り組んだ。
1.牛流産胎子における病理組織学的検査材料の採取方法および酵素抗体法の
検討剖検後、臓器を10%中性緩衝ホルマリンで一晩固定し硬度を高めた後切り出し
をすることで、脆弱化した胎子の臓器でも酵素抗体法用の組織標本を作製するこ
とができた。25年間保存した牛伝染性鼻気管炎(暮BR)ウイルス感染で流産した胎子のパ
ラフィン包埋組織について酵素抗体法を用いIBRウイルス抗原の検出を行った ところ、組織の壊死巣に一致して同抗原を検出することができた。上記に示した病理組織学的検査材料の採取方法と酵素抗体法を組み合わせた手
法を268例の牛流死産胎子および新生虚弱子牛に実践し、以下に示す病原体に よる流産をわが国で初めて証明した。 2.∫什甲わcocc〟ざ∫〟/ざ15型感染症妊娠221日齢の乳用牛が1週間後に流産した。胎子胎盤には出血性壊死性炎、
胎子にはカタル性小腸炎および第四胃炎が認められ、酵素抗体法で絨毛胎盤の病
変部に£ざ〟/ざ15型抗原が検出された。£ざ〟/ざ15型は豚の流産胎子から分離され
ており、今回、同菌が牛の流産の原因となりうることを明らかにした。
3.他0印Or∂C∂〃/爪〟感染症 4例の流産胎子と1例の新生死亡子牛に原虫性の脳病変が観察された。酵素抗 体法で原虫は〟c∂〃/〃〟仰と同定された。脳の病変は2タイプに分類された。1つ のタイプは多発性巣状壊死を特徴とし、他のタイプはIgGを保有した形質細胞と マクロファージからなる顕著な炎症反応であった。この生体反応の相違は牛胎子 の免疫システムの発達の違いによるものと考えられた。4.仇/劇叩仇り甘圧ね石およぴIBRウイルスの混合感染症 Cpざ/托∂C/感染と診断した流産胎子9例および娩出後まもなく死亡した子牛1