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学び続ける教師になるために
―インターンシップの実践と省察を通してー 高度学校教育実践 実習責任教員 前田 洋一 教 員 養 成 特 別コース 実習指導教員 佐古 秀一 牧 野 祐 未 子 キーワード:学び続ける教師,経験学習サイクル 第1章 はじめに 第1節 研究の背景 私は,大学時代の教育実習を通して,生徒の 成長に携わることのできる教職に魅力を感じた。 それと同時に,自分が教師になった時のビジョ ンの不明確さを感じ,「生徒に力を付けられる指 導力が自分にはないのではないか。」と考えるよ うになった。そこで,授業力,生徒指導力など 様々な分野で高い指導力を身につけ,信念を持 った教師になろうと決意した。 一方で,私は大学院の入学当時から,自分の 努力を嫌う性格や,適当な性格に問題を感じて いた。高い指導力を身につけるために大学院に 来たわけだが,こんな自分で成長できるのかと 疑問に思うようになった。そのとき,1年次前 期の教職基礎力開発演習において,指導教員か らこのような話を聞いた。「教育現場では多くの 課題にぶつかるだろう。そのひとつひとつに対 して生徒とのかかわりの中で自分を変えていき, 成長していこうとする真摯さが,今日教師に求 められている」というものだった。「教育」とは, 人を育て,変容を促すためのものであると考え ていたが,「人を変えるためには自分が変わる」 ということが大前提であると思った。そこで, 私は自ら課題を見つけ,その課題を真摯に受け 止めて自分を成長させることのできる「学び続 ける教師」になることを自己の目標とした。 第2節 自己課題の設定 (1)基礎インターンシップを通しての 気持ちの変化 1年次の実習では,「いろんなことを吸収して, 課題が見つかっても少しずつでも解決していき, たくさんのことができるようになりたい。」とい う気持ちで実習に挑んだ。しかし,実習の中で 課題が見つかっても,それがどうすれば解決で きるのか,また,どうすればできないことがで きるようになるのかが分からないままに,課題 が増えていった。そこから,学び続けるために は熱意だけではどうにもならないと感じるよう になった。学び続け,課題を解決していくため には,具体的な学び問題を解決する方法を身に つけ,常にそれが使えるようになっておく必要 がある。そこで,私は課題解決の方法を身につ け,実践の中で実際にその方法を活用し,自己 の課題解決能力を向上し,学び続けられるため の研究をしていくことにした。 (2)経験学習サイクルモデル 〔1〕目的 実際に教育現場で働くようになったときに, 自分で課題を見つけ,それを改善,解決してい くことを繰り返していく中で学び続けられる人 材になりたい。生涯成長し続けるために,自己 の課題解決能力を高め,学び続けるための方法 を身につける。2 〔2〕方法 Kolb(1984)の学習経験サイクルモデルを用 いて,自己の問題解決能力の向上を図る。コル ブの学習経験サイクルモデルにおいて,インタ ーンシップの実践を通して,実践→省察→概念 化→実践というサイクルを回す。実践において 見つかった課題を自分の中で省察する。しかし, 自分だけでは経験も浅く,考えも偏りがあるた め,大学院という環境を生かし,同期の仲間や 指導教官,メンターの力をお借りすることで, 外化を行う。省察したことを聞いてもらい,そ れに対して聞き手のアドバイスや考えを教えて もらう。これにより,省察をさらに深め,自分 の中で新しい概念を構築し,そこから実践の方 法を練ることで,問題の改善を図る。 第2章 実践研究 第1節 基礎インターンシップでの実践研究 以下に,実習でサイクルを用いた実践を挙げて おく。 1年次のインターンシップにおいて,自習の 時間を生徒のためになる時間にできなかった経 験がある。生徒が話をしたりしているのを,「自 習は静かにするもの。」という自分の意識が大き すぎて,生徒を静かにさせることだけに頭がい っていた。それに対して,省察,概念化によっ て,自習は「自分にとって実りになる時間を個々 の生徒がつくるもの」という意識に変わった。 第2節 経験学習サイクルの振り返り 1年次のインターンシップで学習経験サイク ルを回してみて,以下のような課題が見つかっ た。 ・実習中にサイクルが位置づいておらず省察と 概念化ができていない。 ・省察が浅いため,概念化も浅くなっている。 ・問題を問題として捉えられていない。 ・教師としての在り方や教育観などにおいて, 自分なりのビジョンがない。 これらのことを意識して2年次の実習に臨んだ。 第3節 総合インターンシップでの実践研究 (1)サイクルに当てはめて事例を考える 〔1〕授業実践① 実施日 2015 年 9 月 14 日 内容:中間テストの対策講座 中間テストの対策として,テストに出そうな ところを集めた私が作成したプリントを生徒が 自主的に好きなように解いていくという形式に した。私は生徒がそのプリントを解けるように 支援した。 手立て: ①生徒と学習のルールを決める。意味のある時 間にしてほしいため,分からない問題があれ ば周りと相談してもいいし,聞いてもいい。 ただし,勉強と関係のない話は禁止。 ②生徒ができるようになったのかを確認するた め,机間巡視しながら,生徒に確認で問題を 出す。答えられなければ支援を行う。 (ⅰ)省察 生徒は,1年次の実習の自習に比べたら圧迫 感や支配感を感じていない様子だったが,1時 間プリントを解き続けていくのに飽きていた始 めはお互い質問をしたり,共同で分からない問 題を調べたりしていたが,「先生,俺昨日寝てな いんよ。疲れてきた。」という子や,周りの子と 関係ない話をする子が出てきた。自由に相談し てもいいという決まりは設けたが,1時間ずっ とプリントを解く授業は,苦痛だったのだろう。 (ⅱ)外化 理科嫌いの子がそもそも多いイメージを持た なければならない。その子に対しての取り組み
3 が必要。(メンターの先生より) そもそも学習に意欲を注いでいない子が多く いることに注意しなければいけなかった。そう 考えると,飽きさせない工夫が授業の中に必要 になると考えた。 (ⅲ)概念化 この実践から,生徒が問題を解けるようにす る,というのは,まず生徒のやる気がある,理 科が嫌いではない,ということが前提であるこ とに気が付いた。そこから,授業は,できるよ うにする以前に,理科を好きにさせるものでな ければならないと思った。授業がわかって,楽 しいからこそ生徒は伸びるものだと思うように なった。 〔2〕 授業実践② 実施日 2015 年 11 月 19 日 内容:低気圧・高気圧の移動と天気の変化 手立て:時間を経過させるとそれに合わせて日 本の天気や等圧線,風向,雲などを表したレイ ヤーも連続的に変化するソフトを用いて,生徒 に今まで習ったことが本当であることに気づか せると同時に,新たな発見をさせる。 (ⅰ)省察 以前,この学級には偏西風の話をしていた。 だからこそ,偏西風が本当に蛇行して吹いてい ることが一目でわかる画像を見せたかったが, 時間が足りなくなったので,板書を優先して, 「良かったら教室に帰る前に見てみてね。」と言 った。その後,見ずに帰っている生徒もいて, その時,I先生が「理科嫌いの子がほとんどと 思った方がいい」と言われていたのを思い出し た。そうしていると,ある男の子が,「偏西風見 えました」と言って来てくれた。本当に蛇行し ていたことにびっくりしていることが分かった。 そのことを思うと,板書をとることよりも,生 徒がすごいと思って,理科に興味を持てるよう に口頭で偏西風について説明しながら,偏西風 の吹いている様子を見せた方が良かったのでは ないかと思った。黒板はもちろん大事なことで あるが,もっと頭に残るように,生徒の興味を 優先した方がよかったのでは思った。 (ⅱ)外化 メンターの先生からアドバイスをいただいた。 その内容は,課題の持たせ方がぼんやりとして いるということだった。今回,私は,生徒に課 題をもたせるにあたって「天気予報をできるよ うにしよう。そのために使える要素を,ソフト を使って調べてみよう。」という風に言った。し かし,何が分かったらいいのか,生徒に伝わら なかったのだと分かった。課題においては注目 する点をはっきりして,生徒の動かし方を想定 して,言い方を,例などを使って工夫しなけれ ばいけないと思った。 また,このことを大学に帰って指導教員に話 をした。その時,「指導『案』だからね。案なだ けで,思い通りに行かないものだよ。その場で 変えるのもよくあること。」そう言われた。 また,指導教官に偏西風を生徒に見せたかっ たという話をしたとき,「案は案だからね。その 通りにいかないことも当然。授業で子供たちに 合わせて今,何が最適であるかを考えてやって いくことが大切。」と言われた。 (ⅲ)概念化 確かに,指導案を作って,その通りにいくこ とは少ないし,うまくいかなかったときに軌道 修正もしなければいけないことになる。授業を 柔軟に組んでいくことが必要で,授業の場で, 新しく思いついたことをやってもよく,やるつ もりだったことを削っていくことも大切だと思 った。今回のように指導案があるから…という
4 教師側の都合で授業を進めるのではなく,生徒 のことを見て,授業を進めていくことが大事だ と思った。そのときに,I先生が言われたよう に,やっていることがぼんやりとしたままでは, 生徒の反応が薄くなって当然なので,生徒に分 かる課題を与えることが前提である。そこから, 「授業は形が決まっているものではなく,生徒 の状態に合わせて教師が変えていくもの」だと いうことが分かった。 第4節 総合インターンシップを通しての経験 学習サイクルの振り返り 省察から,成果と課題をまとめると,以下の ようになる。 (1)サイクルを活用した成果 ・サイクルの活用頻度が上がった。 ・ 頭の中でサイクルが以前より回せるように なった。 ・普段の生活でもサイクルが活用できることに 気が付いた。 ・省察や考えが基礎インターンシップに比べて 深まるようになった。 (2)課題 ・忙しくなったとき,サイクルが意識から消え ている。 ・考察によりできないことが多く見え,できな い自分に対して落ち込むことが多くなった。 ・就職してから,外化が難しくなる。 第3章 今後の展望 第1節 2年間の省察 経験学習サイクルを用いることで,自分の中 での変容があったのは,以前に比べて自分ので きないところに目を向けて,できないところに 向き合えるようになったことであると思う。と いうのも,きっと,問題にぶつかったとしても, 誰かがアドバイスをくれて,その中で道が開け るような気持ちを体験したからこそだと思う。 起こった出来事を省察するとき,始めは省察が とても苦痛であった。できないところに目を向 けて,それを改善できるかもわからないのに振 り返って,という過程が苦痛であった。しかし, できなかったことを人に話してみると,確かに 「この人はできて当然なのに私はできないのだ」 と思い知らされることも多いが,その話の中に 糸口が見つかることが多くあった。嫌な道や苦 痛なことは避けてきた私であるが,4月からは 生徒を育てる一人の先生として教壇に立つこと になる。できないことから逃げているようでは, 生徒を育てるための力がいつまでたっても身に つかないと考えるようになった。 この大学院で実習を重ねる中で,人を育てる ことの責任の重さを感じるとともに,自分自身 の人間性を変えていきたいと思うようになり, 自分の指導技術を磨いていきたいと思うように なった。 第2節 目指す教師像 私は,学び続ける教師ということをテーマに この2年間,研究に取り組んできた。その中で, 経験学習サイクルというモデルにも出会って, それを使って課題を解決してきた。サイクルを 使って改善できた点もあった。しかし,それ以 上に,私は,これから年をとっても,できない ことに目を向けて,それに向かっていく気持ち をもった教師でいたいと思うようになった。自 分自身に納得して,できることばかりだと思う ような教師ではなく,今のように,「できないこ とが自分にはたくさんある。少しずつ毎日頑張 っていこう。」と思えるような教師であり続けた い。