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速度分布を有する流れ場における飛散物の運動特性の支配パラメータ

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Academic year: 2021

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速度分布を有する流れ場における飛散物の運動特性の支配パラメータ

PARAMETERS CONTROLLING DEBRIS FLIGHT CHARACTERISTICS IN VELOCITY DISTRIBUTED FLOW

野田 稔1) 趙 昱喬2) 長尾文明3)

Minoru NODA1) Yuqiao ZHAO2) and Fumiaki NAGAO3)

ABSTRACT

It is well known that Tachikawa number controls characteristics of debris flight in uniform flow. However, Tachikawa number did not include the effect of scale of flow field, so the motion of debris in tornado could not be explained by only Tachikawa number. In this study, parameters controlling debris flight characteristics in velocity distributed flow were investigated by normalization of motion equation of debris with the representative wind speed, 𝑈𝑈� , and the

representative scale of any flow fields, 𝜀𝜀. Furthermore, effects of scale on flight of debris in 1 cell and 2 cells type tornado-like flows were investigated. As the result of this investigation, it was clarified that the flight of debris in any flow fields is controlled by two parameters, ρ ⋅ 𝐶𝐶�𝐴𝐴 𝐴𝐴⁄ ⋅ 𝜀𝜀 and 𝑔𝑔𝜀𝜀 𝑈𝑈⁄ . ��

Key Words: Flying debris, Scale effect, Equation of Motion, Tachikawa number, Froude number

1.はじめに 構造物が強風によってダメージを被るプロセスを考える際に問題となる外力は、基本的に強風に起因する過 大な空気力と、強風によってもたらされる飛散物の衝突力であり、構造物の強風による被害について議論する ためには、この両者を詳しく調べることが非常に重要となる。風速𝑈𝑈の強風によって代表面積𝐴𝐴の構造物に作 用する空気力𝐹𝐹については、流体力の非定常効果などを空気力係数𝐶𝐶に含めて考えると、次式で表される。 𝐹𝐹 =�𝜌𝜌𝑈𝑈�𝐶𝐶 �𝐴𝐴 (1) ここで,𝜌𝜌は空気密度である。つまり,空気力に関しては代表風速𝑈𝑈が正しく与えられ、かつ適切な𝐶𝐶が得ら れれば,空気力は正しく評価できる。したがって、代表風速𝑈𝑈の元となる流れ場の情報が正しく得られさえす れば、空気力の評価は正しく行うことが可能であると言える。 一方、飛散物の衝突力を見積もるためには、飛散物の運動が正しく評価される必要があるため、飛散物の飛 行特性を詳しく調べなければならない。詳細は後述するが、飛散物の飛行特性をはじめに詳しく調べたのは立 川であり1,2)、その際に飛散物の飛行特性の支配パラメータとして空気力と重力の比として定義した量が Tachikawa number3)として知られている。また、Holmesらは、飛散物の飛行特性を支配するパラメータは、物体

1) 高知大学教育研究部自然科学系理工学部門 教授(〒780-8520 高知市曙町2-5-1) 2) 徳島大学大学院先端技術科学教育部 大学院生(〒770-8506 徳島市南常三島町2-1) 3) 徳島大学大学院社会産業理工学研究部 教授 (〒770-8506 徳島市南常三島町2-1)

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と空気の密度比とフルード数であるとも指摘した3) 著者らは、過去に飛散物の運動を6自由度運動解析によって検討し、飛散物の形状の影響は飛行軌道のばら つきを支配するものであり、飛散物の平均軌道に対しては形状の影響を重視しなくてもよいことを示した4) 一方で、LESで生成した竜巻状流れ内の球状の飛散物の飛行特性について検討した結果、同じTachikawa number であって、かつ風速分布が相似を保っていてもコア半径のような流れのスケールによって飛散特性が異なる ことを示してきた5)。このことから、竜巻や境界層乱流のようにコア半径や境界層高さなどの流れのスケール と代表風速で定義される風速分布を持つ任意の流れ場における飛散物の飛行特性を議論する場合、流れ場の 再現が重要であると考えられる一方で、飛散物の飛行特性の支配パラメータとして用いられているTachikawa numberだけでは不十分であり、流れのスケールの情報を追加する必要があるとの結論に至った。そこで、本研 究では、流れのスケールで定義される任意の風速分布を有する流れ場における飛散物の飛行特性を特定する ために必要となる支配パラメータを見出すため、改めて飛散物の運動方程式について見直し、検討を行った。 2.飛散物の運動方程式に関する従来の取り扱い はじめに、飛行中の飛散物を球と考え、回転を考慮しない三次元の直交座標系における飛散物の運動方程式 は次式で示される。 𝑚𝑚𝑚𝑚̈ =�𝜌𝜌𝜌𝜌�𝐴𝐴|𝐔𝐔(𝑚𝑚) − 𝑚𝑚̇|(𝐔𝐔(𝑚𝑚) − 𝑚𝑚̇) + 𝑚𝑚𝑚𝑚 (2) ここで、𝑚𝑚は飛散物の質量、𝑚𝑚 = (𝑥𝑥, 𝑦𝑦, 𝑧𝑧)は飛散物の座標、𝐔𝐔(𝑚𝑚) = (𝑢𝑢, 𝑣𝑣, 𝑤𝑤)は飛散物の位置における風速ベクト ル、𝑚𝑚 = (0,0, −𝑔𝑔)は重力加速度ベクトルである。立川は、流れ場の代表風速𝑈𝑈を用い、飛散物の座標を𝑈𝑈/𝑔𝑔、 時間を𝑈𝑈/𝑔𝑔でそれぞれ無次元化することで、次式のような無次元化された運動方程式を示した1,2) 𝑚𝑚𝑔𝑔𝑚𝑚∗̈ =� �𝜌𝜌𝜌𝜌�𝐴𝐴𝑈𝑈��|𝐔𝐔∗(𝑚𝑚∗) − 𝑚𝑚∗̇ |(𝐔𝐔∗(𝑚𝑚∗) − 𝑚𝑚∗̇ ) + 𝑚𝑚𝑚𝑚 (3) これを整理して、 𝑚𝑚∗̈ =����� �� 𝜌𝜌�|𝐔𝐔∗(𝑚𝑚∗) − 𝑚𝑚∗̇ |(𝐔𝐔∗(𝑚𝑚∗) − 𝑚𝑚∗̇ ) + 𝑚𝑚∗ (4) ここで、𝑚𝑚= (0,0, −1)は無次元重力加速度ベクトルであり、無次元座標𝑚𝑚∗は𝑚𝑚= 𝑚𝑚/(𝑈𝑈/𝑔𝑔)、無次元時間𝑡𝑡∗は 𝑡𝑡∗ = 𝑡𝑡/(𝑈𝑈 �/𝑔𝑔)で表される。同じ形状の飛散物を前提として𝜌𝜌�を不変とした場合には、飛散物の飛行特性は空気 力と重力の比である次式で決定される。 𝐾𝐾 =����� ��� (5) これが、立川が提案した飛散物の支配パラメータであり、現在、Tachikawa numberとして知られている。また、 Simiuは同じ流れ場の中で形状や大きさ、質量の異なる飛散物の飛行特性を支配するパラメータとして、𝜌𝜌�𝐴𝐴/𝑚𝑚 で定義される空力パラメータを提案している6)。これは立川の無次元運動方程式の空気力項から、飛散物の情 報のみを抽出し、飛散物の形状に左右する空気力係数を含めたパラメータと解釈できる。 一方で、従来の風工学では、代表長を物体の代表長𝐷𝐷で表すことが多く、その場合、飛散物の座標と時間を それぞれ𝐷𝐷と𝐷𝐷/𝑈𝑈で無次元化することが一般的である。その場合、無次元化された運動方程式は次式のように 表される。 𝑚𝑚��� � 𝑚𝑚∗̈ = � �𝜌𝜌𝑈𝑈��𝜌𝜌�𝐷𝐷�|𝐔𝐔∗(𝑚𝑚∗) − 𝑚𝑚∗̇ |(𝐔𝐔∗(𝑚𝑚∗) − 𝑚𝑚∗̇ ) + 𝑚𝑚𝑔𝑔𝑚𝑚∗ (6) これを整理して、 𝑚𝑚∗̈ =� � ��� � 𝜌𝜌�|𝐔𝐔∗(𝑚𝑚∗) − 𝑚𝑚∗̇ |(𝐔𝐔∗(𝑚𝑚∗) − 𝑚𝑚∗̇ ) + �� ���𝑚𝑚 ∗ (7)

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この場合、ρ𝐷𝐷/𝑚𝑚は空気と物体の密度比であり、重力項の係数はフルード数𝐹𝐹𝐹𝐹 = 𝑈𝑈/�𝑔𝑔𝐷𝐷の逆数の二乗であ る。また、この場合の無次元座標および無次元時間は、それぞれ𝐱𝐱= 𝐱𝐱/𝐷𝐷,𝑡𝑡= 𝑡𝑡/(𝐷𝐷/𝑈𝑈)で表される。この解 釈はHolmesが示した無次元運動方程式3)に示されており,立川数は次式のように空気と飛散物の密度比とフル ード数の2乗の積とも解釈できる。 𝐾𝐾 =����� ��� ∼ ������ �����= � ��⋅ ��� ��= � ��⋅ � ��� (8) ここで、𝜌𝜌は飛散物の密度である。 3.飛散物の運動方程式への流れ場スケールの導入 前述した運動方程式は、いずれも基本的に流れ場のスケールを用いておらず、同じ流れ場を前提としたもの となっている。したがって、流れ場のスケールの違いを考慮できないため,流れ場のスケールの異なる実験に よる飛散物の運動と実物の飛散物の運動を直接結び付けることができない。特に、竜巻のような渦の中の飛散 物のように、流れが回転運動を基本としていて遠心力が飛行特性を左右するような場合には、前節の解釈では 現象を説明することができない。その問題を解消するためには、座標系の代表長を流れのスケールεで与えて やればよいことになり、運動方程式は、次式のように表すことができる。 𝑚𝑚��� � 𝐱𝐱∗̈ = � �𝜌𝜌𝑈𝑈��𝐶𝐶�𝐴𝐴|𝐔𝐔∗(𝐱𝐱∗) − 𝐱𝐱∗̇ |(𝐔𝐔∗(𝐱𝐱∗) − 𝐱𝐱∗̇ ) + 𝑚𝑚𝑔𝑔𝑚𝑚∗ (9) これを整理すれば、 𝐱𝐱∗̈ =� �𝜌𝜌 ��� � 𝜀𝜀 |𝐔𝐔∗(𝐱𝐱∗) − 𝐱𝐱∗̇ |(𝐔𝐔∗(𝐱𝐱∗) − 𝐱𝐱∗̇ ) + �� ���𝑚𝑚 ∗ (10) この無次元運動方程式では、無次元座標および無次元時間は、それぞれ𝐱𝐱= 𝐱𝐱/ε,𝑡𝑡= 𝑡𝑡/(𝜀𝜀/𝑈𝑈)と表される。 ここで、重力項の係数は、遠心加速度に対する重力加速度の比と解釈できる。空気力項の係数については、 ���� �� 𝜀𝜀 ∼ ����� � 𝜀𝜀 = ��� ���� � �𝐶𝐶�= � �� � � 𝐶𝐶� (11) と変形することで、空気と物体の密度比と流れのスケール比、そして抗力係数の積と考えることができる。 ちなみに、空気力項の抗力係数を除く係数と重力項の係数の比をとると、次式のように立川数が求められる。 �� ��� �� ��� =����� ��� = 𝐾𝐾 (12) つまり、形状が同じ飛散物を前提に抗力係数の違いを無視すれば、空気力項の係数と重力項の係数が同時に一 定値を維持すれば、自動的に立川数も一定値を保つと考えることができる。 以上のことから、流れ場に分布があり、その分布を決定づける代表スケールが存在する場合、次の2つのパ ラメータが維持されれば、飛散物の飛行軌道は全く同じになるため、飛散物の飛行特性が流れのスケールによ らず維持されることになる。 𝜌𝜌��� � 𝜀𝜀 ∼ � �� � � 𝐶𝐶� (13) 𝑔𝑔ε/𝑈𝑈�� (14) この結果は,竜巻の流れ場に限らず,あるスケールをもって風速分布が与えられるダウンバーストや大気乱 流境界層などにおける飛散物の運動を議論する際にも当然適用が可能であると考えられる。 4.竜巻状流れにおける飛散物の軌道計算 ここで、式(10)に基づいて、代表寸法εで整理された竜巻状流れ場における飛散物の軌道計算を行うことにす る。話を単純にするため、軌道計算に用いる竜巻状流れ場は移動床付マルチファン・マルチベーン式竜巻シミ

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ュレータ7)で得られた静止状態の竜巻状流れについて時間平均した平均場を、さらに渦中心からの距離rと高さ zでアンサンブル平均して求めた円筒座標系の風速分布である。図1に今回用いた2種類の流れ場の接線方向風 速の等値線と、半径方向、鉛直方向の各成分のベクトル分布を示す。これらはそれぞれ、1セル型と2セル型 の流れ場となっている。座標系は、最大接線風速を示した半径𝑅𝑅����を代表長として無次元化されており、風 速は最大接線風速𝑈𝑈����を代表風速として無次元化している。ここで、円筒座標系(𝑟𝑟 − φ − z)での運動方程式 を立てると次式のようになる。 ⎩ ⎪ ⎨ ⎪ ⎧ 𝑚𝑚(𝑟𝑟̈ − 𝑟𝑟𝑟𝑟̇�) =�𝜌𝜌𝜌𝜌�𝐴𝐴�(𝑢𝑢�− 𝑟𝑟𝑟𝑟̇)�+ (𝑢𝑢�− 𝑟𝑟̇)�+ (𝑢𝑢�− 𝑧𝑧̇)�(𝑢𝑢�− 𝑟𝑟̇) 𝑚𝑚���� (𝑟𝑟�𝑟𝑟̇) =� �𝜌𝜌𝜌𝜌�𝐴𝐴�(𝑢𝑢�− 𝑟𝑟𝑟𝑟̇)�+ (𝑢𝑢�− 𝑟𝑟̇)�+ (𝑢𝑢�− 𝑧𝑧̇)�(𝑢𝑢�− 𝑟𝑟𝑟𝑟̇) 𝑚𝑚𝑧𝑧̈ =�𝜌𝜌𝜌𝜌�𝐴𝐴�(𝑢𝑢�− 𝑟𝑟𝑟𝑟̇)�+ (𝑢𝑢�− 𝑟𝑟̇)�+ (𝑢𝑢�− 𝑧𝑧̇)�(𝑢𝑢�− 𝑧𝑧̇) − 𝑚𝑚𝑚𝑚 (15) これを、代表長𝜀𝜀(= 𝑅𝑅����)と代表風速𝑈𝑈(= 𝑈𝑈����)で無次元化し、飛行速度(𝑣𝑣, 𝑣𝑣, 𝑣𝑣)で整理すると次式のよう になる。 ⎩ ⎪ ⎨ ⎪ ⎧ 𝑚𝑚���𝑣𝑣�∗̇ =�𝜌𝜌𝜌𝜌�𝐴𝐴𝑈𝑈���(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗) + 𝑚𝑚�� � � ⋅ ��∗� �∗ 𝑚𝑚��� � 𝑣𝑣�∗̇ = � �𝜌𝜌𝜌𝜌�𝐴𝐴𝑈𝑈���(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗) − 𝑚𝑚 ��� � ⋅ ��∗��∗ �∗ 𝑚𝑚��� � 𝑣𝑣�∗̇ = � �𝜌𝜌𝜌𝜌�𝐴𝐴𝑈𝑈���(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗) − 𝑚𝑚𝑚𝑚 (16) したがって、無次元化された運動方程式は次式で示される。 ⎩ ⎪ ⎨ ⎪ ⎧ 𝑣𝑣�∗̇ =�𝜌𝜌���𝜀𝜀�(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗) +�� ∗� �∗ 𝑣𝑣�∗̇ =�𝜌𝜌���𝜀𝜀�(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗) −�� ∗ �∗ �∗ 𝑣𝑣�∗̇ =�𝜌𝜌���𝜀𝜀�(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�+ (𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗)�(𝑢𝑢�∗− 𝑣𝑣�∗) −�� �� (17) ここでは、図1に示した速度分布から任意の(𝑟𝑟, 𝑧𝑧)座標における無次元風速(𝑢𝑢, 𝑢𝑢, 𝑢𝑢)は最寄りの4点の格子点の 値から線形補間によって求め、オイラー法によって飛散物の時々 刻々の飛行速度と座標を求めた。無次元時間における時間ステップ Δ𝑡𝑡∗10-3と し 、𝑡𝑡= 0 に お け る 初 期 条 件 は 、 (𝑟𝑟, 𝑧𝑧) = (1, 0) 、 (𝑣𝑣�∗, 𝑣𝑣�∗, 𝑣𝑣�∗) = (0, 0, 0.5)とした。また、飛散物の物性値として、ここで は 丸 山 が 求 め た 空 力 パ ラ メ ー タ7)を 参 考 に 、 木 片 相 当 で あ る 𝜌𝜌�𝐴𝐴 𝑚𝑚⁄ = 0.030 m2/kgとし、代表風速を𝑈𝑈�= 80 m/s、代表長𝜀𝜀として 最大接線半径𝑅𝑅����を30 ~ 70 mに変化させて計算した。 図2に𝑟𝑟 − 𝑧𝑧面内における飛行軌道の解析結果を示す。この結果よ り、代表長𝜀𝜀が大きくなるにつれて、無次元座標系における飛行距離 (a) 1セル型流れ (b) 2セル型流れ 図2 飛行軌道に対する代表長εの影響 (a) 1セル型 (b) 2セル型 図1 解析に用いた竜巻状流れの流れ場

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は小さくなる傾向を持っていることが分かる。この結果は、過去に著者らが検討した竜巻状流れ内の飛散物の 飛散範囲が流れのスケールを小さくするとそのスケールに対する相対座標においては逆に飛散範囲が広がる との指摘5)にも合致する。また、図3にこの時の各方向成分の無次元時間に対する時刻歴変化を示す。この結 果を見ると、流れのスケールの小さなものほど速度変化が小さくなり、流れのスケールの大きなものに比べて 変化が遅れ、変化量も小さくなる傾向が読み取れる。これは、式(17)に示した無次元運動方程式の水平面内の 式において、空気力項のみに代表長εが乗じられる形となるため、その結果、代表長が小さくなればなるほど、 相対的に空気力項が小さくなることが原因と考えることができる。したがって、代表長を流れのスケールε、 流れの代表流速を𝑈𝑈、代表時間を𝜀𝜀/𝑈𝑈として運動方程式を無次元化することによって求められた式(13)と(14) の因子が、流れ場のスケールの影響も含んだ飛散物の飛行特性の支配因子であることが確認できた。 5.回転運動における運動方程式の無次元化 ここで、飛散物の回転運動について検討する。飛散物の回転運動についての運動方程式は、基本的に極慣性 モーメントと空力モーメントの釣り合い式として示されることから、次式で表される。 𝐉𝐉θ̈ =12𝜌𝜌𝜌𝜌𝑀𝑀𝐷𝐷3|𝐔𝐔(𝐱𝐱) − 𝐱𝐱̇|(𝐔𝐔(𝐱𝐱) − 𝐱𝐱̇) (18) 接 線 方 向 成 分 𝑣𝑣� 半 径 方 向 成 分 𝑣𝑣� 鉛 直 方 向 成 分 𝑣𝑣� (a) 1セル型流れ (b) 2セル型流れ 図3 接線方向、半径方向、鉛直方向の各飛行速度の時刻歴変化に対する代表長𝜀𝜀の影響

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ここで、𝐉𝐉は飛散物の極慣性マトリクス、𝛉𝛉は飛散物の姿勢角ベクトル、𝐂𝐂は空力モーメントマトリクスであ り、本来は相対角の関数として表すべき量4)だが、ここでは紙面の都合もあり、次元に関係のない部分は単純 な表記にとどめる。飛散物の物性に関しては代表長を𝐷𝐷、密度をρとし、代表時間は前節と同様に流れ場のス ケールを取り入れてε/𝑈𝑈とすれば、次のような無次元運動方程式が求められる。 ρ�𝐷𝐷�𝐷𝐷�𝐉𝐉∗ �� � �� 𝛉𝛉∗̈ = � �𝜌𝜌𝐂𝐂�𝐷𝐷�𝑈𝑈��|𝐔𝐔∗(𝐱𝐱∗) − 𝐱𝐱∗̇ |(𝐔𝐔∗(𝐱𝐱∗) − 𝐱𝐱∗̇ ) (19) 𝛉𝛉∗̈ =� � � ��� � �� � 𝐉𝐉∗�𝟏𝟏𝐂𝐂 �|𝐔𝐔∗(𝐱𝐱∗) − 𝐱𝐱∗̇ |(𝐔𝐔∗(𝐱𝐱∗) − 𝐱𝐱∗̇ ) (20) ここで、𝐉𝐉∗は形状のみで決まる無次元極慣性マトリクスであり、本式における無次元角加速度と無次元時間は、 それぞれ𝛉𝛉∗̈ = (𝜀𝜀�/𝑈𝑈 ��)𝛉𝛉̈,𝑡𝑡∗= 𝑡𝑡/(𝜀𝜀/𝑈𝑈�)となる。 従って、回転運動に関しては、形状と密度比、飛散物と流れのスケール比を維持すれば、同じ運動となるこ とが保証される。ただし、流れのスケール比を維持しつつ、空力的に形状も相似形を保ち、密度比まで保つと なると、非常に困難な条件となり、回転運動までの相似を保証した実験をすることはかなり困難を極めること が予想される。 6.まとめ ここでは、飛散物の飛行特性を支配するパラメータについて、流れ場に分布があり、流れ場のスケールを考 慮しなければならない条件下での飛散物の運動方程式の無次元化について考察し、従来提案されてきた立川 数や密度比、フルード数による相似則を維持しつつ、流れ場のスケールの影響を取り入れるための飛散物の特 性値を導いた。また、流れ場のスケールを取り入れた無次元運動方程式では、流れ場のスケールの飛散物の運 動に対する影響を明確に説明できることが確認できた。 一方、回転が伴う運動について相似状態を保つことは非常に困難であるが,抗力のみで運動が支配される飛 散物に限って言えば,飛散物と空気の密度比,飛散物と流れ場のスケール比,抗力係数の積で求められる空気 力項の係数と,遠心加速度と重力加速度の比で表される重力項の係数が同時に満たされれば,流れ場が相似で 異なるスケールであっても同じ飛行軌道を描くことは自明の理であり,無次元座標,無次元時間においては全 く同じ運動となる。従って,実験と実物の間の相似を保つために,式(13)と式(14)が同時に満たされるように 代表風速や密度比を調整すれば,完全に相似と言える状態を再現できることが期待される。 今後は、飛散物の飛行特性に対する流れ場の非定常性の影響などを本研究で提案した無次元運動方程式に基 づいて検討を進めていく予定である。 謝辞 本研究を進めるにあたり,JSPS科研費(15H04034)の助成を受けた。ここに記し,感謝の意を表す。 参考文献 1) 立川正夫, 福山雅弘, 「平板の空力特性と飛散の性状について」, 第6回風工学シンポジウム論文集, pp.231-238, 1980. 2) Tachikawa M., “Trajectories of flat plates in uniform flow with application to wind -generated missiles”, Journal of Wind Engineering and

Industrial Aerodynamics, 14, pp.443-453, 1983.

3) J. D. Holmes, C. J. Baker, Y. Tamura, “Tachikawa number: A proposal”, Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics, Vol.94, Issue 1, pp.41-47, 2006.

4) 野田 稔, 長尾文明, 政井一仁, 「六自由度飛行軌道解析による平板状飛散物の飛行性状の検討」, 構造工学論文集, Vol.58A, pp.542-551, 2012.

5) 野田 稔, 八谷 実, 長尾文明, 「竜巻状流れの幾何学的スケールが飛散物の飛行特性に及ぼす影響」, 第24回風工学シンポジ ウム論文集, pp.259-264, 2016.

6) E. Simiu and M. Cordes, “Tornado-Borne Missile Speeds”, NBSIR 76-1050, 1976.

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