目次
第一章 はじめに...2
第二章 RFID...3
2.1 概要...3
2.2 RFID の基本構成...3
2.3 RFID の仕組み...3
2.4 周波数による分類...3
2.5 電源供給方法による分類...4
2.6 通信距離による分類...5
2.7 13.56MHz 帯における RFID の基本的知識...7
2.8 電磁誘導...8
2.9 トランス...8
2.10 13.56MHz 帯 RFID の動作原理...9
第三章 高周波回路...10
3.1 分布定数回路...10
3.2 整合回路について...13
3.3 S パラメータについて...13
第四章 ビート信号を用いた三次元磁界発生アンテナ...16
4.1 二次元での回転磁界...16
4.2 三次元回転磁界発生アンテナの動作原理...17
4.3 実測実験...20
第五章 位相変調器を用いた無指向性アンテナ...24
5.1 動作原理...24
5.2. 位相変調器...25
5.3 実測実験...32
第六章 通信距離制御法...36
6.1 目的...36
6.2 複数枚のアンテナを用いた通信距離制御法...36
6.3 特殊なアンテナによる通信距離制御法...38
6.4 無給電エレメントを用いた通信距離制御法...41
6.5 共振エレメントを複数枚用いた場合の効果...44
6.6 共振エレメントの動作原理の検討...45
6.7 共振エレメントの共振周波数の相違...46
6.8 共振エレメントを用いた通信距離制御法の動作原理...48
第七章 結論と今後の課題...49
第八章 謝辞...50
第九章 参考文献...51
第一章 はじめに
近年、東日本旅客鉄道(株)の「suica」や日立製作所(株)の「μ-Chip」に代表される RFID シス テムは急速に普及し、社員証や学生証などの身分証明や電子マネーと複合されて、部屋の入退室 管理などさまざまな用途に使用されるようになってきている。主な利用分野としては(1)課金、プ リペイド、(2)セキュリティ管理、(3)物品・物流管理、トレーサビリティ等に大別される。 RFID システムはカード形状などユーザがもつ RFID タグと、その情報を読み書きするリーダ/ラ イタ(R/W)から構成されている。 また、RFID システムには使用する周波数帯がいくつか用意されており、13.56MHz と UHF 帯、 2.45GHz 帯では、動作原理が異なる。前者は電磁誘導方式であり、後者は電波方式である。 13.56MHz 帯は電子マネーや個人認証などで利用されており、通信可能なエリアを限定したい場 合に適しており、UHF 帯、2.45GHz 帯は物品・物流管理やトレーサビリティなど通信距離の延伸化 要求の強い分野に適している。 本稿は比較的設計が簡易で、応用範囲の広い 13.56MHz 帯に着目した。現在の 13.56MHz 帯の RFID システムは suica 等の IC タグを直接、人が R/W にかざして利用することが多いが IC タグと R/W が垂直の状態になると通信不可能となってしまう。人がかざして利用するだけならばあまり支 障はないが、商品の自動管理などの応用例を考えた場合、タグと R/W の向きに関係することなく 通信可能であることが要求される。また、13.56MHz 帯は通信距離が限定されているが、延伸化が 可能となれば、更なる応用が考えられる。 そこで、本稿はタグと R/W の向きに関係なく通信可能となる無指向性アンテナの構築及び通信 距離の延伸化を目標とする。第二章 RFID
ここでは RFID の概要、基本構成、仕組、及び分類について説明する。
2.1 概要
RFID とは、Radio Frequency Identification の略で直訳すると『無線周波による個別認識』シ ステムである。ID 情報を埋め込んだタグから電磁界や磁界などを用いた近距離の無線通信によっ て情報をやりとりするもの、および技術全般を指す。
2.2 RFID の基本構成
IC チップとアンテナが内蔵された「IC タグ(RF タグ、無線タグ)」と通信の 中継をする「アン テナ」、IC タグに書き込まれた情報の読み取り・書き込み 「リーダ/ライタ」、リーダ/ライタか ら送られたデータの処理をする「コンピュータ」から構成される。2.3 RFID の仕組み
1).IC タグがリーダ/ライタ側のアンテナに近づき RF(電波)エリアに入る。 2).リーダ/ライタ側のアンテナから発信される RF(電波)を IC タグが受信。 3).それにより IC タグ内に内蔵された IC チップが起動し、データを IC タグ内 のアンテナから発信。 4).リーダ/ライタ側のアンテナがデータを受信。 5).リーダ/ライタ側からコンピュータへデータを送信、コンピュータがデータ 処理を行う。2.4 周波数による分類
・長波帯(9~250kHz,400~530kHz) 長波帯の RF タグは、9~250kHz や 400~530kHz で使用される。この周波数はISM(Industrial,Scientific and Medical Band:産業科学医療用バンド)には指定されていない。 日本では、リーダ/ライタから λ/2π の距離において 15μV/m 以下の電界強度であれば、特に本 システムの使用にあたって無線局許可の申請などの手続きは必要ない。 ・4.915MHz 通信距離が 2mm 程度の電磁結合方式の密接型 RF タグ(ISO/IEC 10536)で、RF タグからリーダへ は副搬送波 307.2kHz を用いて BPSK 変調で情報を伝送する。 ・13.56MHz 帯 短波帯の 13.56MHz を使用し、ループアンテナによる電磁誘導方式が使われている。日本の場合 は約 25cm の通信距離が得られる。 今回解析する周波数はこの 13.56MHz 帯である。 ・27.125MHz 帯 ヨーロッパでは、26.957~27.282MHz は移動無線識別に用いられている。この周波数は CB ラジ オに 26.565~27.405MHz が割り当てられている。
・433.920MHz 帯 この周波数は、世界的に 430.000~440.000MHz がアマチュア無線に割り当てられ、日本でも多 くのアマチュア無線家に利用されている。 ・UHF 帯(900MHz 帯) UHF 帯 RFID は各国で異なる用途に使用されており、日本国内では 2005 年 4 月総務省令改正によ り使用可能となりました。 UHF 帯は主に携帯電話の周波数帯として用いられており、携帯電話と RFID の周波数帯が重複し て電波状況を乱さない為に、860~960MH zの中でも 952~954MH zを UHF 帯 RFID 用に振り分ける ことによって利用が可能である。 国内で RFID における UHF 帯とは、952~954MH zの周波数帯のことを指す。 ・2.45GHz 帯 電磁波としてはマイクロ波の帯域になる。波長が短いため回り込みがききにくく、UHF 帯に比べ て距離が稼げない。しかし、アンテナは最も小型になる。日本では RFID として使うことが許可さ れている電波帯であるが人体内の水分子を共振させて発熱を起こす可能性があるので、使用する 際には人体への影響に注意する必要がある。 ・5.8GHz 帯 日本ではこの周波数帯は議論されていない。 ・ミリ波帯 アメリカでは既にミリ波帯を用いた RF タグが商品化されているが、日本ではまだ論議されてい ない。
2.5 電源供給方法による分類
・電池搭載型 電池搭載型の非接触 IC カードや RF タグは、形状の小さな電池で数年間動作するように消費電力 が低くなるような回路設計が行われている。電池を搭載することで電子回路に電源が安定して供 給され、非接触 IC カードや RF タグシステムは安定する。 ・電磁誘導方式 ・電源を供給する仕組み リーダ・ライタに取り付けられてたコイル状のループアンテナに電流をすと、そこに磁界が発 生する。その磁界が非接触 IC カードに取り付けたコイル状のループアンテナの中を貫通すると、 そのループアンテナに電流が流れ、誘導電圧が発生する。非接触 IC カードは、この誘導電圧を電 源として電子回路を動作させている。(図 1) Fig2.1 電磁誘導方式図 1:電磁誘導方式
・電圧を高くする仕組み 実際の非接触 IC カードでは、リーダ・ライタと非接触 IC カードのループアンテナを通信する周 波数に共振させる。すると、図 3 のように誘導電圧は高くなる。しかし、図 3 からもわかるように 共振周波数から大幅にずれると、共振させていないループアンテナよりも誘導電圧が低くなる。 ・電子回路を発熱から守る仕組み 非接触 IC カードとループアンテナの距離が近くなると、その誘導電圧も高くなる。このとき電 子回路が発熱したり破壊される恐れがある。この現象を防ぐために電源にバイパス抵抗を設ける。 この抵抗がループアンテナの共振特性を鈍化させる働きをする。 ・複数枚重ねて使うために 非接触 IC カードは、複数枚重ねて使うことがある。この場合ループアンテナの共振周波数は、 単体のときよりも低い方へシフトする。そのため、アンテナの共振周波数をあらかじめ高めに設 定したり、共振させず非同調ループアンテナとしているものもある。
2.6 通信距離による分類
非接触 IC カードを通信距離により4種類に分類する。 2.6.1 密接型 ・密接型 IC カード 4.915MHz を用いた通信距離 2mm 程度の非接触 IC カードのことを密接型 IC カード(ISO 規格では ISO/IEC 10536)という。 通信方法は副搬送波 307.2MHz を用いて BPSK 変調で、伝送速度 9.6kbps の通信が主流である。 2.6.2 近接型 ・近接型 IC カード 質問器(リーダ・ライタ)と応答器(IC カード)の通信距離が 10cm 程度までののもので、主に 13.56MHz を用いた非接触 IC カードのことを近接型 IC カードという。図 2:共振なし
図 3:共振あり
表1:TypeA 表2:TypeB 表3:Felica ・近接型 IC カードのメリット 通信距離が 10cm 程度なので個人情報が他人に盗まれる可能性が低い。また、13.56MHz の使用は 人体への影響がすくない。 今回解析する周波数はこの近接型 IC カードにあたる。 ・近接型 IC1 カードの実用例 TypeA は世界で最も普及している近接型 IC カード。日本では NTT の IC テレホンカードに使用さ れていた。 日本での TypeB の実用例は住民基本台帳カードに使われている。また、IC チップ搭載型運転免 許証にも採用されることになっている。
Felica はソニーが開発した近接型 IC カード。JR 東日本の Suica や Edy などの電子マネーに利用 されている。 2.6.3 近傍型 ・近傍型 IC カード 質問器と応答器の距離が 70cm 程度までの、長波帯を使う非接触 IC カードのことを近傍型 IC カー ドという。 ・近傍型 IC カードの実用例 電波式万引防止システムがある。これは、清算が終わってない商品を持ったまま自動ドアを通 過しようとすると、アラームで警告するシステムである。 質問器から応答器への変調方式 質問器から応答器への符号化方式 変形ミラー符号化方式 応答器から質問器への変調方式 応答器から質問器への符号化方式 マンチェスタ符号化方式 マイクロプロセッサ 搭載しない。メモリ容量も小さい 価格 安価 プロトコル 高速処理向きできない 通信速度 ASK(100%)変調 副搬送波847kHzのOnとOffの変調 106kbps(あまり早いとは言えない) 質問器から応答器への変調方式 質問器から応答器への符号化方式 応答器から質問器への変調方式 応答器から質問器への符号化方式 マイクロプロセッサ 搭載する。メモリ容量も大きい 価格 比較的高い プロトコル 高速処理向きできない 通信速度 ASK(8〜14%)変調 NRZ-L符号化方式 副搬送波847kHzのBPSK変調 NRZ符号化方式 106/202kbps(高速化可能だが、プロ トコルは高速処理向きでない) 双方向の変調方式 双方向の符号化方式 マンチェスタ符号化方式 通信速度 212kbps ASK(10%)変調
2.6.4 遠方型 ・遠隔型 RF タグ 質問器と応答器の通信距離が数 m 程度までの長距離通信が可能なもの。遠隔型 IC カード、マイ クロ波型 IC カード、電波タグなどと呼ばれている。 遠隔型 RF タグには3種類ある。次ページにそれらを説明する。 i)反射型パッシッブ RF タグ:電池を搭載せず質問器からの電波を反射し情報 を送る。 ii)反射型セミパッシブ RF タグ:反射型パッシブ RF タグに電池を搭載して通 信距離を数倍に延長したもの。 iii)アクティブ型 RF タグ:電池を搭載して RF タグ自ら電波を送信している。
2.7 13.56MHz 帯における RFID の基本的知識
今までは RFID 全般について説明してきたが、今回は解析対象とする 13.56MHz 帯の RFID につい て説明する。この周波数帯は電磁誘導方式でアンテナとしてはループアンテナが使用される。 2.7.1 磁束密度 ここではループアンテナ(円形コイル)における磁束密度を考える。コイル上の微小電流素片 Ids が中心軸上のある点 P に作る磁束密度 dB(z)は、その素片からの距離 r の 2 乗に反比例し次式のよ うになる。 dB=0Ids 4 r2 (2-1) これを一周にわたって積分すると、 水平成分は打ち消しあう。よって 次式のようになる。B z=
0I
4
・
cos
r
2∫
ds
=
0Ia
22z
2
a
2
3/ 2 (2-2) 円形コイルの中心(z=0)では、 磁束密度 B(0)は、次式のように 巻き数や電流に比例し、半径に 反比例する。B0=
0I
2a
(2-3) 式(2-2)から分かるように円形コイル の中心軸上の点 P(z)における磁束密度2.8 電磁誘導
2.8.1 誘起電圧 円形コイル 1 に電流 I1(t)が流れることにより磁束
I
1
が生じる。その磁界の中に、N 回巻 いた円形コイル 2 をおくと、一部分が円形コイル 2 の中を通過し誘起電圧が発生する。この誘起電 圧 Vmは次式のようにコイルの巻き数 N と磁束の変化率の積となる。V
m=
N
d
dt
(2-4) 2.8.2 反磁界 前項ではコイル 2 は無負荷の状態であったが、コイル 2 の端子に負荷を接続すると、誘起電圧に よりコイル 2 に電流が流れる。この電流によって新たに磁界が発生する。この磁界はコイル 1 の磁 界を打ち消す方向に発生するので反磁界と呼ばれる。また、この反磁界の影響でコイル 2 に誘起 する電圧は減少する。2.9 トランス
電磁結合を電子回路で扱う場合は、トランス回路で考えることができる。 2.9.1 結合係数 一次側のコイル 1 で発生した磁束の一部は、二次側のコイル 2 に通過する。この通過する度合を 結合係数 k で表す。一次側、二次側の自己インダクタンスを L1,L2、相互インダクタンスを M とす ると結合係数 k は次式のようになる。k= M
L
1⋅
L
2 (2-5) 2.9.2 トランスの等価回路 トランスのコイルの直流抵抗や高周波損失を直列抵抗 R1,R2とする。また、一次から二次への変 換に寄与しないインダクタンスをリーケンジ・インダクタンスといい、σ1,σ2で表すと等価回路 は以下のようになる。図 5:電磁結合とトランス
M k 磁界R
LI
2V
2L
22N
2N
1I
1L
11V
1図 6:トランス回路と等価回路
R
1 σ1=L1-M σ2=L2-MR
2M
図 7:動作原理の説明図
2.10 13.56MHz 帯 RFID の動作原理
1).ループアンテナに高周波電流が 流れることによって磁界が発生する。 2).発生した磁界がタグを通過することで 電磁誘導の法則により誘導起電力が発生 する。 3).その起電力でタグが動作し、情報により 負荷を変化させタグ側の電流が変化する。 4).タグから磁界(反磁界)が発生し、タグと アンテナとの相互インダクタンスが変化 する。 5).その変化に応じてループアンテナ側が適切な 処理を行う。第三章 高周波回路
この章では本研究の基礎知識となる高周波回路の説明を行う。3.1 分布定数回路
電気回路要素(L,C,R 等)と電源が接続された回路を電気回路と言い、これらの要素が周波数によっ て変化せず、ある一定の値を示す回路が集中定数回路である。実際の低周波回路ではコイルやコ ンデンサを使うが、これらはインダクタンス L、キャパシタンス C と抵抗 R との組み合わせとして 考えることができるので、集中定数回路として扱える。逆に高周波回路になるとコイルやコンデ ンサは単純に L,C,R の組合せで考えることができない。このような回路を分布定数回路という。 3.1.1 伝送線路 図 8 のような伝送線路を考える。単位長あたりのインダクタンスを L[H/m],抵抗を R[Ω/m],キャ パシタンスを C[F/m],コンダクタンスを G[S/m]とすると、微小区間 Δx では次式のよううな関係式 が成り立つ。−
V = R j L I= R j L x I
(3-1)−
I=G j C V=G jC x V
(3-2) 微小区間△x を無限に小さくしていき Δx→dx とすれば式(3-1),(3-2)は 式(3-3),(3-4)のような微分方程式で表せる。−
dV
dx
=
R j LI
(3-3)−
dI
dx
=
G jC V
(3-4) 式(3-3),式(3-4)の連立微分方程式を解くために x を微分すると−
d
2V
dx
2=
R j L dI
dx
(3-5) のようになり、式(3-4)を式(3-5)に代入すると図 8:伝送線路
~ V0 I I−ΔI ΔL ΔR ΔC ΔG V−ΔV V x Δx x+Δx 0 xd
2V
dx
2=
R j LG jC V
(3-6) となる。式(3-6)は一般的に波動方程式と呼ばれる。 実用のため正弦波の場合を考える。
R j LG j C≡≡ j
(3-7) とおく。ここで γ は伝搬定数、α は減衰定数、β は位相定数である。 式(3-7)を用いると式(3-6)はd
2V
dx
2=
2V
(3-8) となる。 式(3-8)を解くと、一般解は式(3-9)のようになる。V=V
1e
−x
V
2e
x=
V
1e
−xe
−jx
V
2e
−xe
−jx (3-9) ここで、式(3-9)の前項は入射波、後項は反射波を表す。 式(3-3),式(3-9)を用いて計算すると電流 I の式は式(3-10)のようになる。I=
G jc
R j L
V
1e
−x−
V
2e
x
(3-10)
G j c
R j L
≡
1
Z
0 (3-11) とすると、式(3-10)は式(3-12)のようになる。I= 1
Z
0
V
1e
−x−
V
2e
x
(3-12) Z0は伝送線路の特性インピーダンスといい、周波数によらず固有の値を持つ。 3.1.2 伝送線路上の電圧、電流分布 伝送線路において終端との整合がとれていない場合、反射波が生じ、線路上の電圧、電流は入 射波と反射波の合成波となる。〜
V
V
Z
,γ
送端
電源
ω
I
終端
負荷
Z
=R
+jX
送端 x=0 では電圧 V は V0に等しいので式(3-11)は
V
0=
V
1
V
2 (3-13) また、終端 x=l での負荷インピーダンス Zl(=Vl/Il)はZ
l=
V
lI
l=
Z
0V
1e
−l
V
2e
lV
1e
−l−
V
2e
l (3-14) 式(3-14)を式(3-13)を用いて V1,V2にわけ、式(3-9)に代入すると V=V0ZlZ0e l−x Zl−Z0e−l−x Zl−Z0e−l−xZ lZ0e l =V
0e
−x1
Z
l−
Z
0
Z
l
Z
0
e
−2 l− x
Z
l−
Z
0
Z
l
Z
0
e
−2 l1
(3-15) となり、ここでZ
l−
Z
0Z
l
Z
0≡
K≡∣K∣e
j (3-16) とおくと式(3-15)はV=V
0e
−x1Ke
−2 l−x1Ke
−2 l (3-17) 電流 I を同様に表すとI=
V
0Z
0e
−x1−Ke
−2l−x1Ke
−2 l (3-18) のようになる。 式(3-17),(3-18)の分子の第一項の 1 を入射波とすると第二項は反射波の大きさの割合と位相の 関係を示す。そのため K は反射係数とよばれる。 次に反射係数 K が特別な場合を考える。 ・整合している場合Z
l=
Z
0 式(3-16)より K=0 (3-19a) 反射波が存在せず、無限長線路と同様に波は伝搬する。・開放端の場合
Z
l=∞
式(3-16)より K=1 (3-19b) 波は同位相で反射し、入射波と合成する ・短絡端の場合Z
l=0
式(3-16)より K=-1 (3-19c) 波は逆位相で反射し、入射波と相殺する。 ・インダクタンス負荷の場合Z
l=
jZ
0 式(3-16)より K=j=∣
K∣e
j/ 2 (3-19d) 波は大きさは同じで位相が π/2 進んで反射する。 ・キャパシタンス負荷の場合Z
l=−
jZ
0 式(3-16)より K=-j=∣
K∣e
−j/ 2 (3-19e) 波は大きさは同じで位相が π/2 遅れて反射する。3.2 整合回路について
電圧・電流は式(3-17),(3-18)で表されるので負荷から距離 x におけるインピーダンスは Z(x)は 以下のようになる。Zx=Z
01K e
−2 l−x 1−K e
−2 l−x (3-20) ここで、整合条件を考えると Z(x=l)は以下のようになる。Zl=Z
01K
1−K
=
Z
l (3-21)3.3 S パラメータについて
高周波回路では電圧や電流を測定することはほとんどできない。そこで、電圧や電流に変わる 別な量で評価する必要がある。 高周波の領域でも正確に測定できるのは電力である。回路に入力する電力と出力される電力を 関係づけることにより回路網をブラックボックスとして扱うことができる。このブラックボック スの役割を果たすのが S パラメータである。 続いて二端子回路を用いて、その波と S マトリクスの説明をする。図 10:二端子回路
各ポートの電圧 Vn、電流 Inは進行波 V → n ,I
→ n と後退波V
← n ,I
← n の和で表される。V
n=
V
→n
V
←n (3-22)I
n=
I
→ n
I
← n (3-23) ここで、入力波 anと出力波 bnは次式のように定義される。a
n=
V
→ n
Z
0=
I
→ n
Z
0 (3-24)b
n=
V
← n
Z
0=
I
← n
Z
0 (3-25) ただし、Z0は伝送線路の特性インピーダンス 式(3-24),式(3-25)を二乗すると∣
a
n∣
2=
∣
V
→ n∣
2Z
0=∣
I
→ n∣
2Z
0 (3-26)∣
b
n∣
2=
∣
V
← n∣
2Z
0=∣
I
← n∣
2Z
0 (3-27) という関係になり、各ポートから流入する電力 Pnは、P
n=∣
a
n∣
2−∣
b
n∣
2 (3-28) と表される。ここで絶対値の二乗が流入方向、流出方向の電力を表す。 S マトリクスは anと bnの関係を定義したもので次式のように表される。[
b
1b
2]
=
[
S
11S
12S
21S
22][
a
1a
2]
(3-29) S マトリクスは各ポートの特性インピーダンス Z0によって変化するが、一般的に高周波では特 性インピーダンスは 50Ω である。V
1V
1V
2V
2I
1I
1I
2I
2a
1a
2b
1b
2ポート1
Z
0ポート2
Z
0二端子回路
S
11S
12S
21S
22・S11,S12,S21,S22の意味 S11~S22は次式のように表される。
S
11=
b
1a
1た だ し
, a
2=0
(3-30a)S
21=
b
2a
1た だ し
, a
2=0
(3-30b)S
12=
b
1a
2た だ し
, a
1=0
(3-30c)S
22=
b
2a
2た だ し
, a
1=0
(3-30d) ・S11 ポート2を Z0で終端し、ポート1に波を入力した場合に反射して戻ってくる割合。つまり反射係 数。 ・S22 ポート2の反射係数。 ・S21 ポート2を Z0で終端し、ポート1に波を入力した場合にポート2に伝達する割合。つまり順方 向の伝達係数。 ・S12 逆方向の伝達係数。第四章 ビート信号を用いた三次元磁界発生アンテナ
4.1 二次元での回転磁界
二枚のループアンテナ(以下便宜上のため単にアンテナと表記する) を図 11 のように垂直に配 置する。アンテナ 1 に対して位相が 90 °遅れた信号をアンテナ 2 に給電する。こうすると、図 13,14 に示すように二枚のアンテナに発生する磁界も 90 °の位相差が生じる。時刻 A において はアンテナ 2 の磁界が支配的であり、アンテナ 1 とアンテナ 2 の合成磁界の向きは図 11 の x 軸 の正方向となる。時刻 B では反対にアンテナ 1 の磁界が支配的であり、アンテナ 1 とアンテナ 2 の合成磁界の向きは図 11 の y 軸の正方向となる。同様のことが時刻 C,D,E においても生じ、結果 として合成磁界は図 11 の原点を中心に時間変化と共にアンテナ 1 とアンテナ 2 で囲まれた空間 に回転磁界を生成する。尚、回転磁界の様子を図 12 に示し、合成磁界の向きは原点を中心に円周 方向となる。図 11:アンテナの配置
図 12:回転磁界
図 13:アンテナ 1 の磁界
図 14:アンテナ 2 の磁界
4.2 三次元回転磁界発生アンテナの動作原理
本手法による 三次元回転磁界発生アンテナの構成図を図 15 に示す。 図 11 に示すようにアンテナ 1,2 に加えてアンテナ 3 を二枚のアンテナに垂直になるように配置 する。ビート信号を用いた手法においてはアンテナ 3 に給電される信号に特徴がある。その給電 方法を順をおって説明する。 シグナル・ジェネレータ(SG)から信号を 13.56MHz の搬送波信号を発生させ、三分配器によって 搬送波信号を三分割させる。三分割された信号は、それぞれアンテナ 1、アンテナ 2、アンテナ 3 に給電される。一つ目の信号はアンテナ 1 にそのまま入力される。二つ目の信号は 90°移相線路 を経由することで 90°位相を遅らせてアンテナ 2 に入力される。前述したように位相差 90°とな る搬送波を給電することでアンテナ 1,2 の囲まれた空間に回転磁界が形成される。三つめの信号 は合成器に入力され、任意波形発生器から 11MHz の信号を 13.56MHz の搬送波と合成すると、図 16 のようなビートを伴ってアンテナ 3 に入力される。そのため、アンテナ 3 から発生する z 軸方向の 磁界は時間の経過とともに振幅強度が変化する。これら三つのアンテナで形成される回転磁界は、 アンテナ 1,2 で発生させる回転磁界とアンテナ 3 の z 軸方向の周期的な変化の合成磁界となる。こ のような一連の動作によって、三次元的に向きが変化する磁界が形成される。図 15:構成図(ビート信号による方法)
ス ペ ク ト ラ ム ア ナ ラ イ ザ ( S P )図 16:合成信号によるビートの発生
アンテナ 1、アンテナ 2、アンテナ 3 のコイルの中心を直交して交差する三つの軸を考える。こ れらの軸が交差する点を原点として、三つのアンテナによって発生する磁界の分布を考える。 まず、各アンテナに入力される信号を式で表すと式(1-1)~(1-3)のように表すことができる。V
x
t=V
1sin
{
2 f
1
t− 1
4
T
}
(4-1)V
y
t=V
1sin
2 f
1t
(4-2)V
z
t=V
1sin
{
2 f
1
t− 1
4
T
}
sin2 f
2t
(4-3) ここで Vx(t),Vy(t),Vz(t)は、それぞれ時刻 t にアンテナ 1、アンテナ 2、アンテナ 3 に入力され る信号[V]を表しており、V1は三分配器で分割された信号の振幅、V2は任意波形発生器で生成され た信号の振幅である。また搬送波周波数を f1、アンテナ 3 への合成信号の周波数を f2とし、f1の 周期を T とする。式(4-3)の第一項において 1/4 周期分位相が遅れているのは、合成器を経由する ことで位相が 90°遅れるためである。 アンテナ 1、アンテナ 2、アンテナ 3 のコイル形状はまったく同じものとし、原点におけるアン テナ 1、アンテナ 2、アンテナ 3 への距離がそれぞれ同じものとする。このとき、原点における磁 界の強さはアンテナコイルに流れる電流に比例することから、以下のように表せる。H
x
t ∝V
1sin
{
2 f
1
t−
1
4
T
}
(4-4)H
y
t∝V
1sin
2 f
1t
(4-5)H
z
t∝V
1sin
{
2 f
1
t−
1
4
T
}
V
2sin
2 f
2t
(4-6)ここで、Hx(t),Hy(t),Hz(t)は、それぞれ時刻 t における磁界の x 成分、y 成分、z 成分である。 以上の式より、式(4-3)の搬送波周波数 f1=13.56[MHz]、アンテナ 3 への合成信号の周波数 f2=11[MHz]と、ある一定の期間だけ回転磁界を発生させたときの磁界分布を図 17~21 に示す。こ こで、これらの図は原点を起点としてプロットした点までを結んだ線の方向を合成磁界の方向と し、その原点とプロットした点の間の長さを磁界の大きさとして表したものである。図 17、図 18 は原点における磁界の x 成分 Hx、y 成分 Hy、z 成分 Hz の大きさを示している。 図 19 は、アンテナ 1 で発生する Hx、アンテナ 2 で発生する Hy の合成磁界を示している。式(4-4),(4-5)からも分かるようにアンテナ 1 とアンテナ 2 の磁界は位相が 1/4 周期ずれており、xy 平 面上に回転磁界を発生させる。 図 20 は、アンテナ 2 で発生する Hy とアンテナ 3 で発生する Hz の合成磁界を示している。 図 21 は、アンテナ 1 で発生する Hx、アンテナ 3 で発生する Hz の合成磁界を示している。 f2=11[MHz]を合成しない場合、式(4-4),(4-6)第一項のみだけになるのでリサージュ図形で考える と zx 平面での磁界分布は原点を中心に z=x の傾きを持つ直線となるが、今回の場合は 11[MHz]の 信号を合成しているので図 21 のようにある程度強度に幅を持った図形となる。しかし、磁界強度 で考えると図 21 の斜めに直線の部分と平行のところでは磁界強度が弱くなる。この点がこの方法 での欠点である。
図 17:三次元磁界分布1
図 18:三次元磁界分布 2
4.3 実測実験
4.3.1 実験装置 ここで、各装置の説明をする。まず、13.56[MHz] の発振器としてシグナル・ジェネレータ(SG) を用いており、11[MHz]の発振器としては任意波形発生器を用いている。尚、SG の出力は 0dBm で あり、任意波形発生器の出力は 1[V]である。このような出力にしたのは SG と任意波形発生器の出 力の振幅を合わせるためである。このように設定することで図 16 のようなビートを持った信号と なる。 本手法は xy 平面,yz 平面,zx 平面での電力強度を測定し、各平面での磁界分布を推測する。そ のため、測定にはスペクトラム・アナライザ(SP) を用いる。また、受信プローブとして微小ルー プアンテナを用いた。 90°移相線路は使用周波数 13.56[MHz]を考慮して 3.7m となる。この移相線路によって前述した 回転磁界を生成させることができる。 三分配器はSG からの高周波信号を均等に三分配させ各アンテナに給電させるために用いる。通 常、本手法で使用するような三分配器等は同軸ケーブル等の伝送線路を用いるが、使用周波数が 13.56[MHz] であることから集中定数の素子に置き換えて構成する。三分配器の回路図は図22 に 示す。また、各素子の値は式(4-7),(4-8),(4-9) から求められる。L=
275.66×Z
0f
(4-7)C=
91888.15
f ×Z
0 (4-8)R=Z
0=50
(4-9) 合成器は二分配器を逆に接続することで実現している。二分配器も三分配器と同様の理由から 集中定数の素子に置き換えて構成している。合成器の各素子の値は式(4-10),(4-11),(4-12)から 求められる。L=
2 Z
02 f
(4-10)図 21:zx 平面の磁界分布
C=
1
2 f Z
0 (4-11)Z
0=50
(4-12) 式(4-10)~(4-12)の周波数fは13.56[MHz]を用いている。合成させる周波数が11[MHz]であり、 設計値と異なるため正確な合成器とは言えないが、実際に測定を行うと特性にさほど影響がない ため、上述した合成器を使用することとした。尚、合成器の回路図は図23に示す。 4.3.2 実験方法 装置の説明に続いて実験の詳細について説明する。図15 に示すようにSG からの高周波信号を 三分配器で均等に分割する。三分配された信号の一つはそのままアンテナ1 に給電される。もう 一つの信号は90 °移相線路を経由してアンテナ2 に給電される。最後の一つの信号は合成器へ接 続される。また、合成器には任意波形発生器から11[MHz]の信号が入力され、出力は図16のような ビート信号となってアンテナ3に給電される。 受信側としてはSP に受信プローブを接続して三枚のアンテナの内部の測定を行う。測定方法と しては受信プローブを測定する平面と平行にし、図15 の原点を基準(0 °) とする。尚、図15 の 原点は各アンテナで囲まれた空間の中心を表している。受信アンテナを図24~26のθ方向に回転 させ、θ=0°~180°まで回転させて各点での電力強度の測定を行う。動作原理において説明した 磁界分布となっているかの検証を行うため、xy 平面,yz 平面,zx 平面の測定を行い、測定間隔は 45 °刻みで計5 点の測定を行う。尚、測定図を図24~26に示す。図 22:三分配器の回路図
図 23:合成器の回路図
図 26:xy 平面の計測方法(パターン 3)
図 24:yz 平面の計測方法(パターン 1)
図 25:zx 平面の計測方法(パターン 2)
スペクトラム アナライザ スペクトラム アナライザ スペクトラム アナライザ4.3.3 実験結果 上述した実験方法により得られた結果を図 27 に示す。 ここでパターン 1 は yz 平面、パターン 2 は zx 平面、パターン 3 は xy 平面の結果を表している。 この結果から yz 平面の 135°点で極端な落ち込みが生じている。このためこの点においては通信 不可能となってしまう。 4.3.4 考察 図 27 の結果から zx 平面、xy 平面においては比較的均一な電力強度となっていることが分かる。 このことから、zx 平面及び xy 平面においては磁界分布も同様に均一に分布していると考えられる。 しかし、結果でも述べたように yz 平面の 135°の点においては極端な落ち込みが生じている。 このことから、この点においては受信プローブと平行な平面に磁界が分布していると考えられる。 これは動作原理で説明した図 21 の斜めの直線部分に相当するため、動作原理で説明した磁界分布 が生成されていると考えられる。 ビート信号を用いた三次元磁界発生アンテナは単一方向の指向性ではなく三次元的に指向性を 持たせることができた。しかし、ある点において磁界強度が弱くなるという欠点がある。これを 改善するために次章では位相変調器を用いた無指向性アンテナについて説明する。
図 27:実験結果
第五章 位相変調器を用いた無指向性アンテナ
5.1 動作原理
第四章において記述したようにアンテナを垂直に二枚組み合わせ、片方のアンテナの給電を 90°位相をずらすことで回転磁界が生成できる。この二枚のアンテナに垂直にアンテナ 3 を配置 する。配置図は図 28 示す通りである。ここでアンテナ 1,2 の給電は回転磁界が生成されるように 固定したまま、アンテナ 3 にアンテナ 1 と同相の給電を行う。このような給電を行うことで、アン テナ 1,2 で生成された回転磁界は図 29 に示すように yz 平面に対して 45°傾きを持った磁界とな る。尚、合成磁界の向きは図 29 の原点を中心に円周方向となる。 このように各アンテナに給電される信号の位相差を固定した状態だと yz 平面に 45 °の傾きを 持った磁界分布となる。 位相変調器を用いた手法はアンテナ3 に給電される信号の位相を順次変化させることで無指向 性アンテナを実現する。アンテナ3 の給電位相θ はアンテナ1 に対して進んでいることを意味す る。図30,31,32 はアンテナ3 に給電される信号の位相差θ がθ=45°, 90 °,135 °と変化させ たときの磁界分布である。図29 の回転磁界はθ を順次変化させると、θ と同様に順次回転し θ=180 °のときは図29 の磁界分布と原点を中心に水平方向に180 °回転した磁界が形成される。図 28:配置図
図 29:θ=0°の磁界分布
図 30:θ=45°の磁界分布
図 31:θ=90°の磁界分布
図 32:θ=135°の磁界分布
図33 にθ を0 °から180 °まで変化させたときの磁界分布を示し、図34~図36 に各平面にお ける磁界分布を示す。図34~図36 からxy 平面,yz 平面,zx 平面に真円の磁界分布が形成される のが確認できる。このことからアンテナ3 の給電位相θ を180 °まで変化させれば三次元的に均 一な磁界分布を確保できる。
5.2. 位相変調器
前述したアンテナ 3 に対する給電を順次変化させる方法として Branch Line Hybrid Coupler (以下 BHC)と可変容量ダイオードを組み合わせた位相変調器を用いる。
5.2.2 Branch Line Hybrid Coupler
BHC は通常、伝送線路を用いるが使用周波数が 13.56[MHz]であることから集中定数の素子に置 き換えて構成する。各素子の値は式(5-1)~(5-4)によって求められる。また、BHC の回路図を図
図 33:形成される磁界分布
図 34:図 33 の xy 平面
図 37:BHC の回路図
L=
50
2 f
(5-1) C1= 1 2 f ×50 (5-2)L
2=
35.35
2 f
(5-3) C2= 1 2 f ×35.35 (5-4) BHC は、図 13 の A1,A2,A3,A4 の四つのポートを持ち、この時ポート A1~A4 間には以下のような 特性がある。 ポートA1-A2 間 電力は1/2 伝達し、位相は90 °遅れる。 ポートA1-A3 間 電力は1/2 伝達し、位相は180°遅れる。 ポートA1-A4 間 電力は伝達されない。 ポートA2-A4 間 電力は1/2 伝達し、位相は180°遅れる。 ポートA3-A4 間 電力は1/2 伝達し、位相は90 °遅れる。 続いて図 37 の BHC が上述したような特性を示すか Ansoft Designer SV によってシミュレーショ ンを行うことで検証する。 シミュレーションによる結果を以下に示す。表 4 : 13.56[MHz]での S パラメータ S21 S31 S41 S42 S43 振幅 -3.01dB -3.01dB -62.14dB -3.01dB -3.01dB 位相 -90.09° 179.91° -3.44° 179.91° -90.09° 表 4 の結果から上述した特性となっていることが確認できる。 5.2.3 可変容量ダイオード 可変容量ダイオードとは逆バイアスをかけることで容量が変化する。電圧が小さければ容量が 大きく、電圧が高ければ容量が小さいという特性を持つ可変コンデンサとして扱える。 位相変調器に可変容量ダイオードを用いるため可変容量ダイオードがどの程度、位相変化でき るかは重要となる。そのためネットワーク・アナライザを用いて測定を行った。 測定回路図は図 40 に示す通りである。 コンデンサ C の目的は直流カットであり、コイル L の目的は可変容量ダイオードに大部分の 13.56MHz の信号がいくようにすることである。そのためコンデンサ C,コイル L を図 40 の値とした。 以下に示す可変容量ダイオードの電気的特性から可変容量ダイオードの逆バイアス電圧を 1[V] と 8[V]して測定を行った。以下にその結果を示す。
図 38:BHC の振幅特性
図 39:BHC の位相特性
図 40:測定回路図
表 5 : 電気的特性(1SV149) 項目 記号 測定条件 最小 最大 逆電圧 VR IR = 10 uA 15 V 容量 C1V VR = 1V,f = 1 MHz 435 pF 540 pF C8V VR = 8V,f = 1 MHz 19.9 pF 30 pF 表 6 : 測定結果 逆電圧 測定値 位相 1V 150 nH 152° 8V 44 nH -34° 測定結果を見るとデータシートに載っていた値と異なっているがこれは測定に用いた基板がブ レッド・ボードだったのでブレッド・ボードのインダクタンスが支配的になったためと考えられ る。 しかし測定の目的は使用範囲の電圧においてどの程度、位相が変化するかなのでブレッド・ボー ドでも問題ない。 測定結果より位相変化量 =186° なので位相を 180°回せると考えられる。 また、可変容量ダイオードにかける逆バイアス電圧に直流のオフセットを持った低周波信号を 用いれば、周期的に可変容量ダイオードの静電容量を変化させることができる。 5.2.4 位相変調器の動作 以上の結果より、位相を十分変化させられることが分かったので BHC と可変容量ダイオードを 組み合わせて位相変調器の評価を行う。 位相変調器の回路図は図 41 に示す通りである。 続いて 13.56[MHz]の高周波信号が入力された場合の動作について説明する。PORT1 から 13.56MHz の信号が入力されると、この信号はポート A2,A3へと伝達する。ポート A2へ伝達された信 号はインダクタンス L と可変容量ダイオード 1SV149 の静電容量によるリアクタンス値に応じた位
図 41:位相変調器
相変化を伴って、ポート 1 及びポート 2 へと反射される。ポート A3においても同様のことが言え、 インダクタンス L と可変容量ダイオード 1SV149 の静電容量によるリアクタンス値に応じた位相変 化を伴って、ポート 1 及びポート 2 へと反射される。 しかし、ポート A2及びポート A3からポート 1 へと反射された信号は BHC の特性から振幅が同じ で位相が逆のため打ち消しあう。ポート 2 においては逆のことが言え、結果としてポート 1 から入 力された信号は全てポート 2 へ出力される。 ここで可変容量ダイオードに直流のオフセットを持った低周波信号を逆バイアス電圧 VBとして 用いれば、周期的に可変容量ダイオードの静電容量を変化させることができる。このようにする ことで、ポート 2 へ出力される信号も周期的に位相変化を伴って出力される。 5.2.5 位相変調器の評価 BHC と可変容量ダイオードを組み合わせた位相変調器において、どの程度位相変化できるかを シミュレーションによって検討する。ポート 1 からポート 1 へ反射される電力、ポート 1 からポー ト 2 へ通過する電力をそれぞれ S11,S21 で評価する。 また、ポート1 からポート2 への位相変化量もS21 で評価する。可変容量ダイオード1SV149 の 静電容量が最大値540[pF]となる逆バイアス電圧VB = 1[V ] のときの結果を図42 と図43に示し、 静電容量が最小値30[pF] となるVB = 8[V ] のときの結果を図44 と図45 に示す。 ・シミュレーション結果 ・V=1[V](可変容量ダイオードの値は 540[pF]) 13.56[MHz]の値は S11(電力強度) = -18.28dB S21(電力強度) = -0.06dB S21(位相角) = -137.32°
図 42:振幅(V
B=1[V])
図 43:位相(V
B=1[V])
図 44:振幅(V
B=8[V])
図 45:位相(V
B=1[V])
・V=8[V](可変容量ダイオードの値は 30[pF]) 13.56[MHz]の値は S11(電力強度) = -20.10dB S21(電力強度) = -0.04dB S21(位相角) = 96.99° 以上の結果から位相変調器の評価を行う。 ・S11(電力強度) 1[V],8[V]の結果共に反射が少なく、反射による電力損失はほぼないと言える。 ・S21(電力強度) 1[V],8[V]の結果共に通過特性が良く、良好に伝達しているといえる。 ・S21(位相角) 1[V]と 8[V]の位相角の差は 234.31°であり、180°以上の位相差を得られている。 以上の結果より反射特性、通過特性、位相特性が動作原理で述べた目標値を上回っているので、 位相変調器を用いた無指向性アンテナが実現できると考えられる。5.2.6. 低周波発振器
前述したように可変容量ダイオードの逆バイアス電圧として直流のオフセットを持ち、振幅が 1 ~8[V]で変わるような低周波発振器が必要となる。以下に本手法で用いた低周波発振器について 説明する。回路図は図 46 に示す通りである。・素子の決定 ・移相回路 発振周波数を f とすると
f =
1
2
6C
1R
1 (5-5) で表せるので f=1[kH]になるように C,R の値を決定する。 本手法で用いた C,R は以下の値である。 C1 = 0.068[uF] R1 = 1[kΩ] また、発振回路の入力電圧 viと出力電圧 vOの関係はv
o=
CR
3
CR
3−5CR
v
i (5-6) で表せる。 式(5-5)より
CR= 1
6
なので、この式を式(5-6)に代入するとv
o=−
1
29
v
i (5-7)図 46:低周波発振回路
図 47:実験図
そこで、本手法では出力が反転であるエミッタ接地増幅回路を考えた。 ・エミッタ接地増幅回路 エミッタ接地増幅回路の電圧利得 AvはA
v≃
R
4R
5=
R
8R
9 (5-8) であるので発振回路の R4,R5は電圧利得が 29 倍以上になるように設定した。 R4 = 100[Ω] R5 = 3.9[kΩ] また、二つ目の増幅回路の目的はバイアス点及び出力振幅を自由に変化させることである。こ のようにする理由は位相変調器へ入力を考えた場合、13.56MHz の信号が低周波の信号に乗るため である。増幅率が 1.8 になるように設定したので R8 = 2.7[kΩ] R9 = 1.5[kΩ] とした。 このような設計で得られた出力は f = 822[Hz] Vpp = 8.6[V](中心電圧は 6[V]である。)5.3 実測実験
5.3.1 実験装置 前述した位相変調器を用いて無指向性アンテナが構築できているかの検証を行う。全体の実験 図は図 47 に示す。ここで、各装置の説明をする。まず、13.56[MHz] の発振器としてシグナル・ジェネレータを用 いる。また、本手法はxy 平面,yz 平面,zx 平面での電力強度を測定し、各平面での電力強度が均 一な分布となれば、磁界も均一に分布していると考えられる。 そのため、測定にはスペクトラム・アナライザ(SP) を用いる。この際受信プローブは微小ルー プアンテナ(以下便宜上のため単に受信プローブとする) とする。 また、90°移相線路及び三分配器は第四章で用いたものと同様のものを用いる。 4.3.2 実験方法 装置の説明に続いて実験の詳細について説明する。図47 に示すようにSG からの高周波信号を 三分配器で均等に分割する。尚、シグナル・ジェネレータ の出力は10[dBm] である。三分配さ れた信号の一つはそのままアンテナ1 に給電される。もう一つの信号は90 °移相線路を経由して アンテナ2 に給電される。最後の一つの信号は位相変調器を経由してアンテナ3 に給電される。 この際前述した低周波発振器を用いて位相変調器の可変容量ダイオードに適切な逆バイアスがか かるようにしている。このように給電することで無指向性アンテナを構成している。 受信側としてはスペクトラム・アナライザ に受信アンテナを接続して三枚のアンテナの内部の 測定を行う。測定方法としては受信プローブを測定する平面と平行にし、図47 の原点を基準(0 °) とする。尚、図47 の原点は各アンテナで囲まれた空間の中心を表している。受信プローブを 時計回りに180 °まで回転させて各点での電力強度の測定を行う。 無指向性のアンテナであるかを検証するためにxy 平面,yz 平面,zx 平面の測定を行い、測定間 隔は15 °刻みで計13 点の測定を行う。 また、比較対象としてアンテナ1 とアンテナ3 が同相で給電される場合の実験も行う。尚、ア ンテナ2 の給電は同様に90 °の位相遅延の給電である。 測定図は図48~50に示す通りである。
図 48:xy 平面の測定図
スペクトラム アナライザ図 49:yz 平面の測定図
5.3.3 実験結果 以下に位相変調器を用いた無指向性アンテナの実験結果を示す。 図51の結果においてはYZ平面の135°点で約20dBの落ち込みが生じているが、図52の結果におい ては若干の差異はあるものの比較的均一な電力強度を保っている。図 50:zx 平面の測定図
スペクトラム アナライザ スペクトラム アナライザ図 51:アンテナ 1 とアンテナ 3 が同相
の結果
図 52:アンテナ 3 に位相変調器を経由
させた結果
4.3.4 考察 アンテナ1 とアンテナ3 の給電位相が同相の場合は、ある点(yz 平面の135 °の点) において約 20dB 程の落ち込みが生じている。この原因はアンテナ1 とアンテナ3 の給電位相が固定されて いるため、図29 に示す様に、磁界がyz 平面に対して45 °の傾きを持つ平面上を回転するため、 この平面に鉛直方向の磁界成分を持たないことによる。 しかし、本手法で用いた位相変調器を経由させてアンテナ3 に信号を給電させた実験において は、比較的落ち込みがなく均一な電力強度を保っている。このことから、位相変調器を用いるこ とでほぼ均一な磁界分布となり、無指向性アンテナができたと言える。
第六章 通信距離制御法
6.1 目的
13.56[MHz]帯のRFIDシステムは通信距離が短いことから、suicaなどの応用例のように通信範囲 を限定して利用されることが多い。そのため延伸化の求められる物流システムなどにおいてはUHF 帯のRFIDシステムが用いられている。しかし、13.56[MHz]帯において延伸化が可能であれば、設 計の簡易さやUHF帯等で問題となるマルチパス現象による読み取り不能といった問題がなく、実用 性が高いと考えられる。 また、RFIDシステムの普及を考えるとコストの問題もあり、簡易なシステムが求められる。 これらの理由から13.56[MHz]帯RFIDシステムにおいて、簡易な方法による通信距離の延伸化を 目標とする。6.2 複数枚のアンテナを用いた通信距離制御法
簡易なシステムによる方法を目標としているため、既存のアンテナを組み合わせることで通信 距離の延伸化を試みた。 具体的には以下に示すいくつかの組み合わせパターンで距離に対する電力強度の測定を行うこ とで評価を行う。 各パターンにおけるアンテナ番号は第三章及び第四章で用いたアンテナと同様のものを使用し ている。図 53:パターン 1
アンテナ1図 54:パターン 2
2cm アンテナ1 アンテナ2図 55:パターン 3
アンテナ1 アンテナ2 アンテナ3図 56:パターン 4
アンテナ1 アンテナ2図 57:パターン 5
アンテナ1 アンテナ26.2.1 各パターンの説明 パターン 1 基準となるパターンでアンテナを一枚置いただけである。このアンテナと他のパターンを比較 することで、他のパターンの有効性を検証する。 パターン 2 アンテナを図 54 のように平行に配置する。アンテナ間は 2cm であり、各アンテナの給電を同相 にすることで同じ方向に磁界を生成させ磁界強度を増加させる目的である。 パターン 3 アンテナを図 55 のように三枚組み合わせ、アンテナ 1,2,3 に同相の給電をすることでアンテナ で囲まれた空間に磁束を集中させ、アンテナ 1 から生成される磁界を他方面へ分散させない目的 がある。 パターン 4 アンテナ 1,2 を図 56 のように配置し、アンテナ 1,2 間で磁界を合成させ通信距離の延伸化を期 待する。 パターン 5 アンテナ1,2を図57のように垂直に配置し、アンテナ1,2間で磁界を合成させ通信距離の延伸化 を期待する。 6.2.2 実験概要 実験はパターン 1〜3 まではアンテナ 1 の中心からの距離で、受信用ループアンテナはアンテナ 1 と平行である。 パターン 4 はアンテナ 1 と 2 が接している面の中心を基準 0cn とし、その点からアンテナと垂直 方向に測定を行う。受信用ループアンテナは先程と同様でアンテナ 1 と平行である。 パターン 5 はアンテナ 1 と 2 の接しているところから 45°方向の距離で測定を行う。また、受 信用ループアンテナは測定方向と垂直の向きである。 どのパターンにおいても出力はシグナル・ジェネレータ(SG)で行い、受信の測定はスペクトラ ム・アナライザを用いている。尚、出力電力は 0dBm である。また、本提案においてはアンテナ一 枚,二枚,三枚の場合があるがアンテナ一枚の時は SG を直接給電させ、アンテナ二枚の時は二分配 器を経由させて給電し、アンテナ三枚の時は三分配器を経由させて給電している。尚、二分配器 及び三分配器は第三章及び第四章で用いたものと同様である。 測定の間隔は5cmで25cmまでの5点で計測を行った。 図58にパターン1の測定図を代表として示す。
図 59:各パターンにおける実験結果
6.2.3 実験結果 前述した実験方法により得られた結果を図59に示す。 結果における番号1~5は番号に対応したパターンの結果を表している。この結果から特に際立っ て電力強度を保ったパターンがないことが見てとれる。 6.2.4 考察 結果から分かるように各パターンで期待した通りの結果は得られていない。パターン1を基準と すると、パターン1の電力強度を上回る結果はパターン3とパターン5である。しかし、パターン3 においては近距離での電力強度が低下している。これは、アンテナ1から生成される磁界をアンテ ナ2,3から生成される磁界が打ち消してしまっているためと考えられる。そのため、有効な手段と は言えない。パターン5に関しては全体的に電力強度の上昇は見られるが、これは測定方向が異な り受信プローブと各アンテナとの距離が近いために得られた結果と考えられる。そのため、この パターンも有効な手段とは言えない。 このことから提案した全てのパターンはどれも有効な手段ではないと考えられる。6.3 特殊なアンテナによる通信距離制御法
前節の結果から既存のアンテナを組み合わせて通信距離を伸ばすことが困難であると分かった ので、アンテナの巻き方を工夫して通信距離を延伸化させる方法を提案する。 通常アンテナの巻き数を上げれば通信距離の延伸化は可能であるが、それは既知のため本研究 においては異なる手段をとる。 6.3.1 特殊なアンテナ 巻き方を工夫したアンテナを紹介し、後に実測実験を行うことで通信距離を延伸化できるか検 証を行う。6.3.1.1 巻きつけアンテナ ・アンテナの説明 アンテナの構造としては一巻のアンテナに巻きつける形で一周させている。尚、巻きついてい る部分は一巻のアンテナの始点と終点において導通している。 一巻のアンテナに巻きつけることで磁界強度が増加することを期待する。 ・アンテナの特性 VSWR 1.143 反射特性 -23.2dB 6.3.1.2 フラクタルアンテナ ・アンテナの説明 小さいループを繰り返しつつ大きく三巻させている。小さいループ及び大きいループ共に同じ 方向に磁界が向く構造であり相乗効果を期待する。 ・アンテナの特性 VSWR 1.163 反射特性 -24.7dB
図 60:巻きつけアンテナ
図 61:図 60 の整合回路
図 62:フラクタルアンテナ
図 63:図 62 の整合回路
6.3.1.2 展開図アンテナ ・アンテナの説明 図 64 のような形を一筆書きで形成したアンテナであり、磁界の向きは同じ方向を向く。フラク タルアンテナと同様の効果を期待するが、展開図アンテナにおいては中心のループ以外のループ 部分を傾け、中心のループ部分に磁界強度を集中させる目的もある。 ・アンテナの特性 VSWR 1.045 反射特性 -32.3dB 6.3.2 実験概要 実験は図 60,62,64 の三つのアンテナを用いて、各アンテナともアンテナの中心を基準とし、基 準からの距離に対する電力強度の測定を行う。 また、展開図アンテナにおいては中心のループ以外の四つのループを傾けた時の測定も行う。 傾ける角度は 0°,30°,45°,60°の四種類である。 どのアンテナの測定においても出力はシグナル・ジェネレータ(SG)で行い、受信の測定はスペ クトラム・アナライザを用いている。尚、出力電力は 0dBm である。また、受信プローブはアンテ ナと平行に位置している。 測定の間隔は 5cm で 25cm までの 5 点で計測を行う。 図 66 に図 60 のアンテナの測定図を代表として示す。
図 64:展開図アンテナ
図 65:図 64 の整合回路
図 66:測定図
6.3.3 実験結果 前述した実験方法により得られた結果を図67,68に示す。 図67の結果においては一巻のアンテナとあまり差異のない電力強度となっている。 図68の結果においては中心のループ以外の傾け方によって電力強度に差が見られる。傾け方に よっては一巻のアンテナよりも電力強度が上昇するという結果を得ている。 6.3.3 考察 ・巻き付けアンテナ このアンテナはループが一つあるところに銅箔を巻き付けることで、効果が出るのではないか と考えたが、ほとんど影響はなく有効な手段とは言えない。 ・フラクタルアンテナ 小さいループをたくさん作ることにより相乗効果を期待したが、電力強度の上昇はあまり見ら れない。これは小さいループが近接するところでは磁界が打ち消しあうところがあるため、あま り効果がでなかったと考えられる。 ・展開図アンテナ 中心のループ以外の四つのループに傾きを持たせることで電力強度の上昇が見られる。これは 中心のループを基準に他の四つのループを傾けることで、中心方向に磁界が集中し磁界強度が増 加したためと考えられる。しかし、この方法は実用性が低くあまり有効な手段とは言えない。
6.4 無給電エレメントを用いた通信距離制御法
前節の結果から、アンテナを組み合わせた方法と特殊なアンテナによる方法では有効な手段と 言えるものがなかった。 そこで、本節においては無給電のエレメントにアンテナから生成された磁界を通過させ、無給 電のエレメントから再度磁界を生成させる方法を提案する。 理論的な検証が困難なためいくつかの無給電のエレメントを用いて実験することで最適な無給図 67:図 60,62 のアンテナの結果
図 68:図 64 のアンテナの結果
図 69:並列共振回路
図 70:直列共振回路
図 71:アンテナを含む共振回路
図 72:測定図
① 無給電のエレメントを既存のアンテナとして整合回路の部分を短絡、開放、 終端の三種類と変化させた時の比較 ② 無給電のエレメントとして既存アンテナの整合回路の部分を 13.56MHz で共振 (直列、並列)する回路とアンテナを含めて共振する回路に変更した時の比較 ・②の共振回路の回路図 6.4.1 実験概要 13.56[MHz]の発振器としてシグナル・ジェネレータ(SG)を用いる。SGからの信号を既存のアン テナに給電し、①,②で示した無給電エレメントを給電されたアンテナから14cm離した位置に配置 する。尚、SGの出力は0dBmである。 受信プローブは給電されたアンテナと平行に置く。給電されたアンテナの中心を基準0cmとし、 基準からの距離に対する電力強度の測定を行う。 測定の間隔は5cmで行い、受信プローブによって測定された電力強度が-66dBmを下回るまで測定 を行う。-66dBmという値は研究室に既存するリーダ/ライタとICタグを用いて測定した通信限界を 意味している。 また、測定図は図72に示す通りである。6.4.2 構成図及び実験結果 図74及び図76におけるn=1の結果は前節で測定した既存のアンテナ(アンテナ1)のみで無給電エ レメントを用いていない場合の測定結果である。 6.4.3 考察 ・①の考察 無給電エレメントを短絡、終端、開放とした結果、通信距離が一番延びるのは短絡させた場合 で、終端と開放の結果はほぼ同じような結果である。これは短絡したことにより給電されたアン テナと無給電エレメントの位相関係が同相に近くなり磁界強度が良くなったためと考えられる。 ・②の考察 直列および並列共振回路は等価的に考えると、回路の部分が短絡もしくは開放に見えるので結 果を見て分かるように、意味がないものと考えられる。アンテナを含めた共振回路は効果があり、 基準となる一巻のアンテナに比べ、大幅に電力強度が上昇している。これは共振エレメントから 再度磁界が生成されたためと考えられる。また、13.56[MHz]で共振しているため効果が大きいと 考えられる。