第六章 通信距離制御法
6.3 特殊なアンテナによる通信距離制御法
前節の結果から既存のアンテナを組み合わせて通信距離を伸ばすことが困難であると分かった ので、アンテナの巻き方を工夫して通信距離を延伸化させる方法を提案する。
通常アンテナの巻き数を上げれば通信距離の延伸化は可能であるが、それは既知のため本研究 においては異なる手段をとる。
6.3.1 特殊なアンテナ
巻き方を工夫したアンテナを紹介し、後に実測実験を行うことで通信距離を延伸化できるか検 証を行う。
6.3.1.1 巻きつけアンテナ
・アンテナの説明
アンテナの構造としては一巻のアンテナに巻きつける形で一周させている。尚、巻きついてい る部分は一巻のアンテナの始点と終点において導通している。
一巻のアンテナに巻きつけることで磁界強度が増加することを期待する。
・アンテナの特性
VSWR 1.143 反射特性 -23.2dB
6.3.1.2 フラクタルアンテナ
・アンテナの説明
小さいループを繰り返しつつ大きく三巻させている。小さいループ及び大きいループ共に同じ 方向に磁界が向く構造であり相乗効果を期待する。
・アンテナの特性
VSWR 1.163 反射特性 -24.7dB
図 60:巻きつけアンテナ 図 61:図
60の整合回路
図 62:フラクタルアンテナ 図 63:図
62の整合回路
6.3.1.2 展開図アンテナ
・アンテナの説明
図64のような形を一筆書きで形成したアンテナであり、磁界の向きは同じ方向を向く。フラク タルアンテナと同様の効果を期待するが、展開図アンテナにおいては中心のループ以外のループ 部分を傾け、中心のループ部分に磁界強度を集中させる目的もある。
・アンテナの特性
VSWR 1.045 反射特性 -32.3dB
6.3.2 実験概要
実験は図60,62,64 の三つのアンテナを用いて、各アンテナともアンテナの中心を基準とし、基 準からの距離に対する電力強度の測定を行う。
また、展開図アンテナにおいては中心のループ以外の四つのループを傾けた時の測定も行う。
傾ける角度は 0°,30°,45°,60°の四種類である。
どのアンテナの測定においても出力はシグナル・ジェネレータ(SG)で行い、受信の測定はスペ クトラム・アナライザを用いている。尚、出力電力は 0dBmである。また、受信プローブはアンテ ナと平行に位置している。
測定の間隔は 5cmで 25cmまでの 5点で計測を行う。
図66 に図60 のアンテナの測定図を代表として示す。
図 64:展開図アンテナ 図 65:図
64の整合回路
図 66:測定図
6.3.3 実験結果
前述した実験方法により得られた結果を図67,68に示す。
図67の結果においては一巻のアンテナとあまり差異のない電力強度となっている。
図68の結果においては中心のループ以外の傾け方によって電力強度に差が見られる。傾け方に よっては一巻のアンテナよりも電力強度が上昇するという結果を得ている。
6.3.3 考察
・巻き付けアンテナ
このアンテナはループが一つあるところに銅箔を巻き付けることで、効果が出るのではないか と考えたが、ほとんど影響はなく有効な手段とは言えない。
・フラクタルアンテナ
小さいループをたくさん作ることにより相乗効果を期待したが、電力強度の上昇はあまり見ら れない。これは小さいループが近接するところでは磁界が打ち消しあうところがあるため、あま り効果がでなかったと考えられる。
・展開図アンテナ
中心のループ以外の四つのループに傾きを持たせることで電力強度の上昇が見られる。これは 中心のループを基準に他の四つのループを傾けることで、中心方向に磁界が集中し磁界強度が増 加したためと考えられる。しかし、この方法は実用性が低くあまり有効な手段とは言えない。