教科教育と教育実習の関連 : 実習生が指導した理科授業記録の分析
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(2) . 教科教育と教育実習の関連. --実習生が指導した理科授業記録の分析 --. 徳. 好. 永. 1. は. じ. め. 治. に. 日本教育大学協会 (教大協) は, 教育実習にたいして, 「教育実地研究」 の性格を強くもたせるこ とを, 主張しつ づ けている. その性格とは, 「教員としての必要な知識・技能の修得にとどまらず, 実践的研究の方法を体得する」1に とにある, 筆者は, 大学において学生に課せられるべき教科教育に関する教授内容は, 実践的研究授業でな けれ ばならないと考えている. 学生が, その実践的教授内容を深く身につけるためにも, 教育実地 研究の機能をもった教育実習と大学での教科教育が相 互に連関することが重要である, 近年, 教育実習に関する研究 が生まれ, 又その研究と普及さらに学生指導を目的としてセ ンター 的機能をもつ組織・施設 が設置されるようになった, この傾向は, 文部省の提言, 指導, およ び教 大協の研究促進に負うところ が大きい. しかしながら,「実際には, 教育実習が教育実地研究として 〉の の機能を充分に果 しているとはいえない実情もあって, その性格にあいまいさを残してい る」2. が, 今日の状況である, 筆者は, 教育実習前の授業科目 「理科教材研究」 において, 教育現場の授業記録 (VT R, プリ そこでの教授内容が教 ント) , 実験等を活用しながら, 実践的研究授業をおこなってきた. しかし,. 育実習において, より実践的に生かされているか どうかが, 課題となっ ている, 本報では, 教育実地研究の観点から, 「理科教材研究」と教育実習の関連を, それらの実際的内容 に即 して分析検討する, その検討を, 教育実習生が実習の終末にお こなった理科授業の授業記録を 分析することによっておこなう, 更に, 実習生が実習中におこなった教材研究の内容についてアン ケート調査し, その分析と授業記録の分析とを合せて, 教育実習の問題点を指摘する. なお, 本報は, 昭和61年度日本教育大学協会研究集会 で発表したものにさらに分析資料と検討を 加えたものである.. 「 2 , 理科教材研究」 講義概要 北海道教育大学函館分校の教育実習は, 3年次夏期休暇中 (実習校2学期) に, 6週間おこなわ. れる.. 5単位, 実地指導 本学の教職専門科目 「理科教材研究」 は2年次に2単位実施され, 筆者が26/1. 非常勤講師である本学附属小学校教諭が4月5単位を担当している. 受講学生は, 小学校, 中学校, 養護学校, 幼稚園の課程学生全員であり, 前期1クラス, 後期1クラス, 各クラス約150名 である, このような多人数教育のために,講義室には教師用実験演示卓,ビデオ提示装置(TVカメラ 1台, 講義用TV3台, VTRI台) , スライ ドプロジェクター1台, OHPI台が常備されていて, 不十. 139.
(3) . 徳 永 好 治. 分ながらも実践的研究授業が可能な教育機器シス テムがとられている , 筆者が 「理科教材研究」 の講義内容を組み立てるうえで考慮した 点は, 次の4点である , ①理科教材研究に関連した筆者の研究成果および研究のために採用 した文献によっ て教授内容を 構成する.. ②理科教育にお ける, 目標 (何のために) , 内容 (何を) , 方法 (いかに) を連関させる論理を重 視 した教授内容とする. ③小学校の現場理科授業をビデオ教材として活用する. また演示実験を導入する , ④学生の批評力を伸 ばし, また弱点を自覚させるために討論, 演習をおこなう . 「理科教材研究」 講義概要を以下に示す .. 1週. 小学校理科授業のTV録画によっ て, 児童の自然認識およ び授業の組み立ての 一例を観察 する, 同時にその理科授業 にたいする自由な批評を記述させる . 2週 学生の批評を整理して紹介する. 更に学生間の討論をおこない, 筆者のコメ ントを述べる , その中から, 共通の研究課題および理科教材研究の基本的視点を問題提起する . 3週 児童の自然認識における Logicalerror と し て の 「誤 り の 論 理」 を V T R と プ リ ン ト の 授 業. 記録によっ て分析する. 4週 受講学生の 「誤りの論理」 を演示実験, 演習によりながら分 析する , 5~6週 小学校理科教育で扱うべき基礎的・基本的概念, 法則と教材づくりの方法を演示実験. によ っ て講義する, 7週. 理科授業における討論成立の要件と討論内容の類型を分析する , 仮説実験授業における児童の感想文を資料にして, レポート 「理科教育にお ける問題 (課 題) , 予想, 討論, 実験について一 を作成させる, 9週 教師の発 問の仕方およ び学習における予想の役割について, プリ ントによる理科授業記録 の分析と, 前週 の学生のレポートを批評することと合せて 講義する, 8週. 10週. 11週 1 2週 13週. 教科書と教材研究の視点, 教科書でいかに教える かについて事例研究する .. 科学的認識の成立過程を科学史をより どころにして講義する,. 理科教育の歴史を教育目標を中心に講義する . 小・中学校理科の教育内容の系統を講義する.. 14~1 5週 非常勤講師 (附属小学校教諭) による講義. VTR, 現場教育の体験談をはさ みなが ら, 児童の生きた姿と教師の対応, 理科の指導計画の実際を講義する . 講義内容で特に強調したところは,学期末試験の次の問題にあらわれているので それを紹介する , , (問題) 理科教育に関する次 のスローガンについて, その意味するところを 具体的かつ 詳しく , 説 明 しな さ い.. ①誤りにも論理がある. 感動的に誤ることを大切に ,. ②子供のもっ ている概念くだきを事実をもっ ておこなえ . ③子供の意見, 討論のない授業は評価のしようのない授業 , ④内容は少なく, 教材は豊かに, ⑤本質的内容をやさ しく教える.. ⑥特殊 (具体的, 個別的自然) を通じて普遍 (自然の一般法則) を教える . ⑦操作的定義で教えた つもりになるな. 物質・生物のイメー ジをもたせよう , ⑧「なぜ, どう して一 と発問するな. ⑨教科書だけで教えこむな. ・子供の発想は教科書をのりこえる, 140.
(4) . 教科教育と教育実習の関連. ⑲教師が教えるのではなく, 教材が教えるのだ, 上記の学期末試験問題の解答は, 講義ノート, 資料の参照を許可している. このような問題およ. t t び試験方法の意図は, 試験時間の中で改めてそれらの mo oの意味を思考し, 自分のものとして定 着させてほしいからである. 解答結果は, およそ7割の受講生が筆者の出題意図をとらえていると. 評価できるものであった,. 学生の講義にたいする評価は, 毎年記述させている講義終了後の感 想文によれば, 大方の学生に 「受け身の授業でなく」 「考察 ) とって好評な講義であったと思われる, 感想文の分析は省略するが3 , 「子供の認識を大 「 「 た 理科のおもさろさがわか であり 自分達が参加した授業 できる授業」 っ 」 」 , , , 「 切にしたい」 , 自分の理科の学力不足を痛感した」 という評価に特徴 づけられる. 不満な点として 「 「 は, 多人数の講義である」 , 学生実験をやらせてほしかった」などが, 毎年数名から出されている の み で あ っ た,. 3,. 教育実習生が指導した理科授業の分析. 3ー1 「授業記録」 の類型とその件数. 理科専攻学生で, 筆者が担当する3年次後期の授業科目 「理科授業研究」 の選択履習を希望する. 学生にたい して, あらかじめ, 教育実習終末授業の録音テー プをとるように指示した, 2 9名,60年度が2 9年度 が1 録音テー プから文字再録して,「授業記録」を提出した学生は, 昭和5 名,61年度が12名である, 各年度における分析結果に意味のある相違が認められなかっ たので, こ こでは三年度分の 「授業記録」 をまとめて, 分析を試みる, 「授業記録」の分析は 評価可能な筆者の観点にした がっ て, その内容を類型に分類し, 妥当する , 件数で表した, 例えば, 机間巡視の様子, 板書・掲示の技術, 教師およ び児童の細かい実験技術は, 「授業記録」 から評価することはできなかった これらの面は, 筆者が授業参観した 一 部の実習 生 . の記録にづ いて, 補足的に評価することは可能だが, 類型評価に加えることはしない. 「授業記録」 にたいする評価分析を以下に示す 類型にたいする件数を百分率 (%) で表示した, , 分析対象総数は53件である, A. 課題の設定. 92%. ①課題において, その求めている結論が, 児童にとっ てわかりきっ た内容 ② 課 題 の 意 味 が 不 鮮 明 (表 現 が あ い ま い) ・ ③課題設定がよい. B. 予想. 45% 21%. 72%. ①予想 がす べての児童 にとっ て 自明. 32%. ② 反 応 な し, 課 題 の と り ち が い. 19% 13%. ③ 予 想 が多 義 に 分 れる. 8%. ④予 想に実 験 への期待 感 がある. C. 26%. たしかめる方法 (実験方法). 72%. ①教師 が提 示する. 38%. ② 児 童 か ら 提 示 さ れる. 28%. ③教科書をみる. 6%. ④ 言 葉 に よ る 説 明 が多 い. 28%. ⑥ 指 示, 注 意 が 多 す ぎ る. 26% 141.
(5) . 徳 永 好. D. 実験 (観察). 治. 93%. ① 課 題 か らみて 実験 結果 を重 視. 74%. (上 記 実 験 目 的 が 成 功 し て い る と い え な い). (上 記 内 数 49%). ②課 題 か らみて実験操 作 を重視. ,. (上 記 実 験 目 的 が 成 功 し て い る と い え な い) ③ 児 童 実 験・. 72%. ④ 教師実 験. 6%. ⑤ 児 童, 教 師 の 両 実 験 ⑥ 必 ら ず しも 明 瞭 と い え な い 実 験 結 果. 15%. ⑦ 課 題 と実 験 教 材 (方 法) の 不 一 致 E. 19% (上 記 内 数 20%). ま とめ. 78%. 26% ,. 11%. ①操 作 的ま とめ. 47%. ② 課 題 の 追 認 (く り か え し). 23%. ③ 認識 の 深ま りが み られる. 8% 17%. H. 妥 当 性 を 欠 く 「な ぜ, どう し て一 の 発 問 児 童 の 「誤 り の 論 理」 が で て い る 児童の 質 問や 討論 がある. 1. 児童の 感 動表 現がみ られる. 8%. F G. 9% 6%. 上記類型 のいくつかについて, その観点を示す. 「A 課題の設定」は児童に示される学習のめあて のことである ◎などとして その学習課題を . . , 板書する指導法が大半の例である. 課題把握がより具体的かつ鮮明にとらえられるように, 学習の めあてを板書した す ぐ後に, あるいは前の導入段階で, 問題を提示したり発問を加える場合がある が, その場合は, めあてとその課題補足とを合せて, 「課題設定」 の評価とした 「食塩水のこさの . ちがいを見つけるには, どう したらいいか(板書) . 先生がここに, こさのちがう食塩水を2つ作っ てきました. さて, どち らがこいだろうか」 . このような授業記録にた いしては, 課題補足も含めて 「③課題設定がよい」 とした . 「①課題において その求めている結論が児童 にとっ てわかりきった内容 は 「空気をあたため 」 , , 「 「 ると体積はふえるだろうか」 , (空気 でっ ぽうの)前玉と後玉の間にあるものは何か」 , せっ けん水 は水をお湯の どちらにはやくとげるか」 な どである. 「②課題の意味が不鮮明 (表現があいま い) は 児童にとって課題の意味や表現があいまいなも 」 , のであっ たり, 多義に解釈されたり, 疑問が生じるような課題 である.「ここに量のちがう水の入 っ 3 た ビー カ が 2 つ あ り ま す. こ っ ち は 20cm3 , こ っ ち は 30cm あ り ま す, 今 日 は こ の 水 に 食 塩 が ど の. くらい溶けるかという実験をします, どれく らいとげるか, さあ どうでしょう みんな予想をたて . 「 「音がでるとき のもののようすを調べま てください.」 , 鉄と硫黄をまぜて熱すると どうなるか」 , しょう (板書) , 紙ぶえをふいて気がついたこと感じたことを先生に言っ てもらいます」 , このよう な事例である. このような課題を与 えられたとき, 児童は沈黙して反応を示さなかったり 課題を , とりちがえたりする傾向にある, 「B予想」は課題にたいする児童の予想意見である ここで評価した授業は ほとんどが 「教師 」 . , , (実習生) 側から 「予想をしましょう」 という指示が出さ れている場合である. 「教師」 側から選択 肢によ っ て予想内容が示されたものは1件のみであった. 授業過程の中に予想の段階をとっていな い授業は, ここでの評価対象にしていない. 142.
(6) . 教科教育と教育実習の関連. 「④予想に実験 への期待 感がある」は, 文字記録のみから的確な評価をおこなうことに無理 がある が, 対立した予想が生まれた とき, あるいは実験前・後の児童の反応からみて推測可能なときに評. 価した, 「Cたしかめる 方法 (実験方法)」 は, 課題 設定がなされた後に, その課題および予想をたしかめ るための具体的実験方法を学習する段階である, ここでは, 実験を実際に開始するまでの授業内容. を評価した, 「D実験 (観察)」 における 「①課題からみて実験結果 を重視」 は, 実験目的が課題の検証として 結果を重視する場合である. 一 方, 実験目的が結果よりも実験操作の習得におかれている場合が,. 「②課題からみて実験操 作を重視」である, 児童実験の場合は, たとえ実験結果が目的であっても, 実験操作の習得も学習内容として指導されなくてはな らないのは, 言うまでもないことである, こ こでは, あくまでも課題と実験の関係で評価されている. 「 「 「⑥必らずしも明瞭といえない実験結果」 , ⑦課題と実験教材 (方法) の不 一致」 は, ①」 およ るとはいえない)」 の内容をさ らに類型したものである. び 「②J の 「(上記実験目的が成功してい・ 「Eまとめ」 は 授業時の終りに, 学習内容を短かくまとめる段階であり, 「教師」 の意識的指導 , と して な さ れ て い る,. 「①操作的まとめ」は 実験事実を実験の操作にしたがったり, 実験事実をそのまま表示してまと , める場合をいう, 「リトマス紙 を使って調べると, 水溶液は3つの性 質に仲間分けすることができ 「 る」 , 音の出し方を変える と音が違う」 などといったまとめである. 「②課題の追認 (くりかえし)」 は, 課題の文言に合せて, まとめを表現している場合である. 実 験などの学習内容が印象深く生かされていると思えない 「まとめ」 といえる, 「(温度の高いほう酸 水を 令して) ほう酸が出てきて透明なところには, まだほう酸がとげているのだろうか」 という課 題 に た い す る, 「ほ う 酸 が 出 た あ と の 水 に も, ほ う 酸 が と げて い る こ と が わ か っ た」と い う ま と め で. ある. この類型は, その中に実験の操作にしたがうものも多いのだが, 「①操作的まとめ」とは別に 評価した, 「③認識の深まりがある」 は, 上記 「①」 「②」 以外で, 物質や生物のイメー ジが明らかとなるよ う な 「ま と め」 で あ る.. 「F妥当性を欠く 『なぜ, どうして』 の発問」 は, 「教師」 の発問である, 事実や物で答えること が具体的にうな がされず, 「なぜ, どうして」と発問されると, 児童は「発問」の意味がわからなかっ たり, 答えが一義的に確定せず答えに窮する傾向にある. そのよう な妥当性に欠ける発問である, ここでは 「A課題の設定」 以外の指導場合で出された発問について評価した,. 「1児童の感動表現がみ られる」は, 文字記録のみで評価しきれないのであるが, ここでは, 声に あらわれた感動表現について評価した, 「授業記録」の作成の観点を十分に会得していない教育実習 生にたいして, 録音テープに収録されている 言語のすべてをありのままに 忠実に文字化するよう求 めた.. 3-2 教育実習生の 「授業」 の特徴 上記の 「授業記録」 の類型とその件 数をもとに, 教育実習生の 「授業」 の特徴を分析 し, 以下に 述 べ る,. 1) 教育実習生の指導 計画は, 課題設定→予想→たしかめる方法→実験→まとめ, という 連続し た授業展開をとっていることが特徴である, 「課題の設定」 92%, 「予想」 72%, 「たしかめる方法」. 2%, 「実験」 93%, 「まとめ」 78%からみて, 実習生の多くが一様な授業展開を採用して指導 して 7. 143.
(7) . 徳 永 好 治. いることがわかる. このことは, 函館市の教育現場での授業過程が, ほぼ一律に 「課題解決学習」. に よ っ て い る こ と を 反 映 した も・の であ る . 2) 課題が, 児童にとっ てその結論がわかりきったものであっ たり あいまいな表現であるもの ,. が著 しく多 い. 課題設定がよいと思わ れるのは約20%である 課題設定にたいする実習生の研究姿 . 勢に安易な面がうかがえる.自然にたいする目的意識 的な問いの発生段階が課題であり問題である . それゆえ, 課題設定においては, 一人 の児童・生徒といえでもつ まづき は許されない 課題の意味 , が児童にとっ て不鮮明な表現が, ほぼ半数の実習生の授業にみられること は 憂慮される点である , . 現行の教科書には課題が示さ れているが, 教科書のものは小単元としての性格をもつ幅広い課題が. 多い. その教科書の課題を, 児童に与える べきより限定された課題 へと しぼりこん でいく実習生の 教材研究が欠 けているように思われる,. 3) 子供たちにとっ て予想が自明であったり, あるいは反応がないのが半数である この数は . , 「予想」 の指導過程をとっ た 「授業 のうち 70%を占める 子供たちから同一の予想が生ずるこ 」 , , とはよくありうることだが, 実験に期待感をも つ予想が極めて少なく 予想の効果が学習活動に発 ,. 揮されない傾向が強いと言える,. 予想の学習効果は課題や問題 における教材提示の良し悪しと 関連する 「(空気 でっ ぽう) 前玉と , 後玉の間にあるものは何か」 の課題に対して, 「子供たちは口ぐち に (記録のママ) 空気だべや , , 空気 にきまっ ているべや」 と予想し, 実験が 「教師」 の 一人舞台ですすんだ後 「やっ ぱり空気だ べ , や, やらなくてもわかってたべや」 の子供の反応が返 ってくる事例な どは 課題設定の悪さとの関 , 連を典型 的に示したものといえる ,. 又, 実験中に実験 に集中しない児童や, 実験のねらいと異なった行為をする児童が現われ 「教師 」 , が注意する事例 も多いが, これも, 理科教育 における予想の意味およ び学習効果が教育実習生 に強. く自覚されていない結果である,. 予想をた しかめる実験方法の指導段階では, 「教師」 が方法を提 示したのが約40% 子供た , ちから提示された のが約30%である. 教科書を見るよう に指示することは極めて少ない だが 採 , . 用された実験方法・教材は, 子供たちから提示さ れた場合も含めて ほとんどが教科書に示されて , いるものであった, 教科書のものを改良した り, 教科書以外 の実験方法・教材を加えた 「授業」 は 4). 大変少ない. 電磁石の授業において, 教科書の教材に独白な教材を加え 更に実験方法の組みかえ , をおこなっ た例, 教室の中に太陽の動く しくみを作り出して1日の太陽の動きを実験した例 およ , び 「仮説実験授業一 の実験, の3例のみであっ た , 又, 実験準備 の段階でおこなう 「教師」 の指導についてみれば 言葉による説明および指示・注 , 意の多いものが半数をこえている.この段階での指導時間が長いのが特徴である 板書や図示によっ . て具体的にかつ明瞭に指導するという観点およ び技術に欠ける実習生が多 いといえる この点につ . いては, 「授業記録」 の末尾の欄に書かせた 「反省会の意見」 で 自己評価している者が多 い , , 5) 実験は, 教師実験のみが僅かで, 児童実験のみが72%, 児童, 教師の両実験を併用 している のが15%である. ほとんどが班実験であるが, 児童に実験をさせて いるのがほとんどである , 課題からみて実験結果を重視することを目的とした 実験が, 実験操作を重視する実験よりも大変 多く, 74%である. しかしながら, それらを目的とする実験が成功しているとはいえないものが , 実験をおこなっ た授業の中で, 約半数近くも存在すること は憂慮すべきことである . 実験 目的が成功 しているとはいえないものの内容は 実験の準備や教材研究の不足 あるいは児 , , 童の実験ミスな どのために, 必ずしも明瞭と いえない実験結果となったり 単元目標ある いは課題 , にたいして実験方法が不 一致, 不明確であっ たりしたことによる , 144.
(8) . 教科教育と教育実習の関連. 実験目的が達成されないということは, 小・中段階の理科教育において特に問題視きれることで. あるので, ここでみられた内容を少し多く例示しておく. o太鼓をたたいて, 音が空気を振動させて伝わる ことを, ラ ッ プとローソクの炎で検証する実験, 児童の手にもたせたラッ プの振動 がはっ きりせず, 又近くと遠くの違いが, ローソクの炎で十分 に説明 づけられなかった.. o濃い食 塩水とうすい食塩水を見分けする方法を学習する実 験, 児童たちに, 等量の水に異なる重 さの食塩量を計測させて濃い食塩水とうすい食 塩水をつくらせ, そのうえで確かめさせたので,. 児童たちが課題にたいする興味を失うこととなった, oローソクの炎の 色の違いが温度の違いによることを検証する実験. わり ばしや, 金網のこげ方が, 多くの班で検証可能な結果とならなかっ た. o ビーカの重さに差があったため, 溶媒と溶質の加法性 が, 各班同 一の結果とな らず, 児童の理解 に 混 乱 が 生 じた,. 、. o教室の中に太陽の動く しくみをつくり出し, 1日の太陽の動きをまとめようとしたが, 失敗した, o石積みや石ころ がしの実験, まもなく興味を失い. 石を投げたり, 勢いよくころがしてみたり, 積まれた石をくずすいた ずらをしたり, 遊びはじめる児童が増えてしまっ た. o空気でっ ぽうを下に向け, 空気の出を止めて空気のおしかえす力 (弾性) を調べる実験. 6班中 半分の班が失敗, o水の温度とほう酸の溶け方を調べる実験. 温度, とげた量, とげる時間の条件 づくりが不明確な. ままで実験をおこなわせたため, すべての児童を納得させる結果が得られなかった, oせっ けんは水とお湯の どちらにはやくとげるかを検証する 実験, 各班のせっ けんの表面積が違っ たり, 更に方法と手順が徹底されていなかったり, 又, 子供たちはせっ けんを早く溶か したい思. いで意識的に操作を したため, 明確な違いがあらわれなかった, 0風の強さと風車がおもり をもち上げる関係を調べる, 児童たちはおもりをもち上 げる速さ(時間) に興味がうつり, 時間中に実験が終らなかった. oやじろべえの単元で, 水平バラ ンスを課題にした実験指導をおこなう. o鉄に塩酸を加えて発生する気体が水素であることを知る実験. 教師の演示実験で二度失敗し, 更 にくり返えす が, 児童には火が消えた事実の方が印象強い. 「教師」は「今のは消えたのではなく, 音がしたときに燃えてその風で消されたのです」 と説明.. oナフタリ ンをつかって, 純粋な物質のとげる温度は一定であることを検証する実験, 班によっ て かなりの差 が出る, 「教師」は「こんなに値がちがったのは, 火力とか温度計とか, まあ誤差とか, いろいろな原因があるようです」 と説明, o水と鈴を入れたフラスコを沸騰させた後, 冷して真空をつくり, 鈴の音を聞く実験, 聞こえない 班が三つの班, 聞こえた班が二つの班であった, 上記に例示した実験の失敗において, その後の授業処理 が良いものはほとん どない. 最後に例示 した 「真空内の音の実験」 のみが, 実験の失敗を補う指導をおこなっ た, 失敗した二つの班のフラ スコを使い, 水槽中での水のフラスコ内への流入を, すべての児童の前で教師実験した. ところで, 実験結果が不明確なものとなった授業を筆者から批判されても,「実験方法や実験態度 .思う」 という意 を子供たちが身につけることに授業のねらいがあるのだから, 自分としてはよいと 見を述べる実習生もいる, 又, 児童実験があらゆる授業において正当とはいえないのだが, 筆者と の議論によっても, 理科実験は児童実験でなければいけないという先入観をぬぐいさることの でき ない実習生が, 決して少なくない. 145.
(9) . 徳 永 好. 治. 理科専攻の教育実 習生といえ ども,理科の学習過程における実験の 重要性にたいして認識が浅く , さらに実験にた いする教材研究および基礎的実験技術の能力が問われる実習生が多いといえよう , 6) 「まとめJ では, 実験結果を実験の操作にしたがったり, 実験事実をそのまま表示してまと める例が約半数である, 課題の追認, くりかえしとなるまとめも少なからずあり 実験などの学習 , 内容が印象深く生かされていない 「まとめ」 として軽視 できない , 一度の実験で一義的に自然の法則や概念が確定するものではないので ましてや小・中学校では , , 実験事実を事実として授業時の終りに確認させることは大切なことである しかし 一単元のすべ , . ての授業時において, 法則や概念が操作的に定義され理解されて良い, と考えることはできな い , 教師は, 単元目標とかかわって, 子供たちに物質・生物の本質 的理解および自然観をもたせる指導. 観点を意識 しなければいけないであろう.. ここでの分析資料は, 実習終末終業 (1回) のみの 「授業記録」 であり, 単元のすべての授業に ついて記録されたものでないため, 上記のような指 導観点を求める評価に立ち入る ことはしない . 少しでも物質認識の深まりがあると考えられる 「まとめ」 が4例みられた ので それを次に指摘す , る に と どめ た い.. 「ものがとげると小さくなって 目に見えない粒になる 「どんな磁石でもNとSがあ り NとS 」 , , , 「酸素の中では物は明るく はげしく 高温になっ は引き合い, NとN, SとSはしりぞけ合う」 , , , 「 「 て燃える」 , 酸素にはものを燃やすはたらきがある」 . もちろん, これらの まとめ」 が実験結果に たいして飛躍のあるまとめであっ てはならず, それぞれが実際の授業内容からみて無理のないもの で あ っ た,. ところで, 実験に関する実習生の特徴で指摘したところの実験目的が成功しているといえない実 験例について, それぞれの 「まとめ」 をみると, ほとん どが必らず しも明瞭とはいえない実験結果 の押 しつけであった. 実験事実を事実として操作的にまとめることも大切であることをすでに述べ たが, 実習生の実験は成功していない場合が多いので, 彼らの操作的な 「まとめ」 は妥当性を欠く 傾向が強いとみることが できよう. 7) 妥当性を欠く, 「なぜ, どうして一 の発問が17%であったが, 筆者の予測からみて少ない件 数といえる. このような発問をする実習生は, 授業中に一度ならず数度 同様の発問をするのが特 , 徴であっ た. 8) 児童の 「誤りの論理」 があらわれた 「授業」 は5件のみであった そこでの児童の発言を以 . 下に示す. 「(電 磁 石 に は) 電 池 の 十 と - を つ か っ て い る の で N 極 と S 極 は な い 十 と - に な る と 思 う 」 , ,. 「塩酸も水酸化ナトリウムも水でうすめると (リトマス紙の) 色はうすくなると思う 」 , 「食塩の粒は(水に溶かすと) 一度わかんなくなるけど(見えなくなるけど) 時間がたて ば見え , ,. る よ う に な る」. 「(食塩を水 に入れると重さは) かわらないと思うけど 消えるんだから少しは軽ろくなる 」 , 「(フラスコの空気をあたためて 口につけた風船がふくらむのは) あ たかい空気が上に上が っ っ , たから」 「新しい空気ができたと思う」 「誤りの論理」や子供の自然認識の実態が現わ れるような授業内容及 び教材提 示は 奨励される 4 ) , . しか・し, そのような 「授業記録」 は極めて少ないうえ, 上記の例示中後者の3例では その児童の , 意見が生かさ れるような指導がなされなかっ た 前者の2例は的確な実験 によ って 「児童の概念く . だ き」 カミな さ れ て い た .. 9) 児童からの質問や, 児童 どう しの討論が極めて少ない, 質問は1例 「先生, そうすると(糸. 146.
(10) . 教科教育と教育実習の関連. 導入段階で, 前時の学 電話) , どうして音は聞こえるんですか」があっ たのみである, この質問は, 入ったところで出さ 「 その後糸電話の学習に 習 音を出すものはふるえている」 の復習を指導して, れたものである. しかし, この質問は 「教師」 から無視された, 10) 児童の感動表現がみられた授業は, 4件のみであった. 磁石を試験管の中で浮かせた実験, 酸素中のローソクおよび線香の燃焼 実験, 水は押し縮められるか どうかの実験. 塩酸と水酸化ナト リウムを水でうすめたときに, リトマス紙の色に変化があるかないかの 実験, で感動表現がみられ た, ここでは言語表現されたものについての指摘をしたが, 筆者がこれまで数年にわた っ て実習学 生の授業を参観してきた経験か らも, 実習生の 「授業」 には子供の感動表現が乏しいのが特徴と言 える.. 以上, 教育実習 生の 「授業」 の特徴を述べたが, 教育実地研究の観点からみた 「授業」 およ び教 育実習にたいする 考察は, 後の章において展開する. 4. 教育実習生の教材研究に関するアンケー ト結果 アンケート結果 理科専攻学生の昭和60年および61年度教育実習 生にたいして, 実習中の教材研究を中 心に, ア ンケート調 査をおこなった. 年度による議論されるべき相 違がみられなかったので, 両年度を総計 して結果を示す, アンケート回収数は55名 (回収率68%) であるが, 前述の 「授業記録」 の分析で 対象となった60年度および61年度の実習 生34名は, 全員がアンケート調査に答えている, 4-1. 以下にアンケート項目 と解答数を示す. 解答数は百分率 (%) で表わした,. 教育実習についてのア ンケー ト結果 (該当する解答項目は何個選んでもよいことを指示してある) 教育実習ではつぎの項目中, どんなことに時間と労力をつかいましたか, 6. 生活指導 78% 1. 指導案の作成 7. 特活 (クラ ブ) 指導 8 9% 2, 実習録を書くこと 遊び 子 ども との遊 8, 子どもとの 76% 3 教材研究 ,. 4. 教材, 教具の製作 5, 実 験 の 準 備. 4 9% 51%. 9. その他. 教材研究はおこないましたか, 1. 教材研究はしなかった 2. 教材研究は終末授業の時だけおこなった 3. 教材研究は理科以外の教科の実地授業についておこなった 4, 教材研究はほとんどの実地授業のたびにおこなった 教材研究で受けた指導について. 1, 実習校の教諭の指導があったので教材研究を始めた 2, 自主的に始めた 3, 教材研究途中で, 実習校の教諭に質問等, 指導を求めた 4. 大学の先生に質問等, 指導を求めた 5, 実習校の教諭に指導を一度も受けたことがない 教材研究のために使用した文献, 資料について, 1, 実習校にある (教諭の私物をふくむ) 図書等を借りた. 4% 4% 5 8% 0% 4%. 16%%% 4 75 総% 42% 58%. 4% 2%. 93%. 147.
(11) . 徳 永 好 治 2, 大学研究室及び大学図書館の図書等を借りた 3. 図 書 等 を 自 分 で買 い 求 めた. 4, 市内の情報機関 (図書館, 博物館, 教育センター等,) を利用した 5, その他 (先輩, 知人から借りた, 自分で持っていた, と記入) E どのような内容について教材研究をしましたか . 1, 単 元の 教 育 目 的, 目標 に つ い て お こな っ た 2. 教 育 内 容 の 専 門 的 な 理 解 を深 め る た め にお こ な っ た 3, 実 験, 実 習 に つ い てお こ な っ た 4, 授 業 (学 習 指 導) の 展 開 に つ いて お こ な っ た. 5. 学 習 の 評 価 に つ いて お こ な っ た 6, 子 供 の 考 え かた や反 応 を 事 前 に知 る た め に お こ な っ た. F. 7, ある先生の同単元の授業記録を読んで教材研究をした 実地授業及び終末授業における実験 (観察) について . 1, 実験 器 具 はす べて 実 習 枝 に あ る も の で用 が足 りた. 2. やりたい実験の器具が実習校になかったため, その実験を断念した 3. 子供たちの持っている市販の理科実験セットを使用した 4, 実 験器 具 を 自 作 した 5, 実 験 の た め の 費用 を 自分 で出 した. G. 6. その他 (実験器具を他校から借りた, 先生に買っていただいたを記入) 終末授業の指導案について, 1. 指 導 案 の 一 次 案 は 自 分 でつく っ た 2. 指 導 案 の 一 次 案 は 指 導 教 諭 が つく っ た. 3, 最終の指導案をつくるまでに数度, 教諭の指導をう けた 4, 最 終 の 指 導 案 を つく る ま で ほ ぼ自 分 一 人 にま かさ れた 5. 指 導 案 に 自 分の 独 創 的な 試み を入 れた. その試みは (a. 成功した 内数67%, b, 失敗した 内数27%). 6, 指 導 案 は ほ ぼ教 師 指 導 書 の とう り で あ っ た 7. 指 導 案 をつ く る の に大 変 苦 労 した. H. 0% 5% 51% 35% 36% 75% 5% 33%. 2 0% 69%. 0% 24% 36% 16%. 4% 78% 5%. 85% 9% 27% 2% 45%. 8. 教諭の示範授業をみて学んでいたので, さほど苦労しなかった 9% 終末授業を終えて, 1, 終末授業をおこなってみて, 指導案はほぼ満足のいくものであった 47% 2, 終末授業をおこなってみて, 指導案は不十分であった 18% 3. 終末授業をおこなってみて, 指導案はよかったが, 指導技術のまずさから授業は不満足なものとなった 36%. 実地授業及び終末授業を終えて, 実習校の先生から指摘されたこと . 29% 服装に関 6, 服装に関すること 2. 板書, 掲示物に関すること 58% 子供にたいする指示に関すること 7, 子供にた 3, 実験器具の扱いに関すること 25% 机間巡視に関すること 8. 机間巡視 4. 実験教材の妥当性に関すること 13% 9, 指導 (学 学習) 内容に関すること 5. 話 しかた に 関 す る こ と 60% その 他 (子供のつぶやきを大切に 10 , その他 , 生徒理解について, を記入) T J 大学の授業科目であなたの教育実習に生かされていたと考えられるもの . 1. 教職専門 (教育原理, 教育心理) 13% 5, 理科教材研究 2, 一般教育 5% 6. 他教科の教材 材研究 3. 教科専門科目 20% 7, クラブ活動 4. 理 科 教 育 法 13% 生 かさ れた も の無し 8. 生かされたも K 大学へ帰ってから勉強し 更に能力をつけたいと思ったこと , . 1. 教職専門 (教育原理, 教育心理) に 5. 教科教育法, 教材研究に関する力 1. 指 導 案 に つ い て. 148. 4% 22%. 0% 弱% 24% 溺%. 4% 4 7% 2 0% 10% 24% 55%.
(12) . 教科教育と教育実習の関連. 2. 子供とのつきあい方 3. 基礎的な指導技術 4. 教科専門に関する力 L 実習期間の日数について,. 関する力 24% 4 4% 4 9% 49%. 1, 長 す ぎる 2, 短す ぎる. 13%. 1, は い 2, い い え. 84%. 9%. 6, 指導案の書き方 生活 7, 特別活動, 生活指導に関する力 8, その他. 4% 17% 0%. 3, ち ょ う どよ い. M 教育実習を終えた直後, あなたは教職につこうという気持になりましたか, 4%. 3, どち ら でも ない. アンケートにみる教材研究の特徴 アンケート集計結果にあ らわれた, 教育実習生の教材研究の特徴を以下に概括する.. 4-2. 1) 教材研究にたいして, 指導案の作成とほぼ同様の率(約80%)で, 実習中に多くの時間と労 力は使われている. 更に, ほとんどの実地授業のたびに, 多くの者が教材研究をおこなっ ている. しかし, 教材・教具の製作や実験の準備には半数の者しか力を入れていない, 2) 教材研究の途中で, 実習校の指導教諭に質問等, 指導を求めた者は約60%だけであり, 教材. 研究にさほど積極的でない者も少なくない, 大学の先生に, 質問等, 指導を求めた者は僅か2名で ある.. 3) 教材研究のために使用した文献・資料は, ほぼ全員が実習校にある (教諭の私物もふくむ) 図書等を借りておこなっ ている, だが, それらを大学研究室や大学図書館から借用 しているものは わずかに2名であり, 極めて少ない. 教材研究の内容は, 授業の展開および実験についての教材研究が最も多く, 教育内容の専門 的内容を深めたり, 子供の考えかたや反応を事前に知ったり, ある先生の同単元の授業記録を読ん 4). で, 教材研究した者は, それぞれ三分の一, あるいはそれ以下で, 多いとはいえない. 5) 実習生の多くが終末授業の 一次指導案を自分自身の手でつくり,その後の完成させる過程で. 教諭の指導をうけている, その指導案に自分の独創的な試みを取り入れた者がおよそ3割存在し, 大半がその試みが成功していると自己評価している.. 6) 授業を終えた後の, 自分の指導案にたいする自己評価は, 満足のいく指導案であっ たとする 者が半数を超え, 指導技術のまずさから授業が不満足なものになっ たとするものが次に多く, 指導 が不十分であったとする者は少ない. 7) 終末授業を終えて, 実習後の教諭から指摘さ れた内容は, 最も多いのが「話方に関すること」 「 であり, 「板書, 掲示に関すること」 , 子供にたいする指示に関すること」が次に多く, いずれも半 数を超える, しかし, 「指導案や実験・観察教材の妥当性に関すること」 が少ない, 8) 大学の授業科目で教育実習に生かされていたものは少ない,生かされた授業科目が無いと答 えた者が2 4%も存在する, 筆者が担当した 「理科教材研究」 は, ほぼ半数が生かされていた と答え ているが, 筆者がアンケート依頼者であるので, その数は儀礼的なものを含むと見るべきであろう,. 5. 教育実地研究としての教育実習の問題点 教育実習生がおこなった理科授業記録および教育実習アンケート結果にも とづき, 教育実地研究 149.
(13) . 徳 永 好 治. の観点からみた教育実習の現状と問題点を考察する, 1) 筆者が, 実習生の 「授業記録」 を分析しようとした主たる動機 は, 筆者の担当する 「理科教 材研究」 の教授内容が, 教育実習にどのように実践的に生かさ れているかを知ることであった 結 . 果は, その教授内容が実習生の授業に具体的かつ意識的に生かされているとは言えなかっ た 「授業 , 記録」 を分析評価したいずれの類型においても, 「生かされている」 と筆者を納得させるものは極め て少なかった, 妥当性を欠く 「なぜ, どう して一 の発問が, 問題視されるほどには多く見られず,. その点にのみ, 教授効果が推測される. 2) 教育実習生は, 教材研究に多く の時間と労力を使っている しかし彼らの指導案は 主に「課 , ,. 題解決学習」 の形式的展開で.しかなく, 不十分なものとなっ ている 児童に与える課題, 予想, た . しかめる方法, 実験, まとめ, のそれぞれの理科授業における意味と学習効果が, 教育実習生にお いて実践的に自覚さ れていないと考えられる.. 実習生の教材研究は, 教科書, 教師指導書, 参考図書 等の表面的かつ形式的な研究でしかなく, 問題意識をもった研究, あるいは批判的研究に乏しいことが, 「授業記録」の分析評価から十分に推 測される. 以上の指摘は, 次に述べる 「授業」 後の反省意見からも 明らかである. 3) 実習終末授業後の反省会で出された各自の授業にたいする自己反省 実習生仲間および現場 , 教師の批評が 「授業記録」 の欄外に述べられているが, その特徴を以下に要約する, 実習生の自己評価 の内容として最も多い指摘は,授業展開における時間配分がまずいこと,「教師」 側の話しす ぎ, 言葉づかいに関することであっ た. 「授業記録」を分析評価した類型に関連する彼らの自己評価としては 次の数例について それぞ , , れ一名ほどでしかなかった. 「やはり 導入段階での発問にもう一工夫 できればよかっ た 「予想をあまりにも簡単にかたづけ 」 , , 「予想がないとの指摘が出されたが (自分は)ここは教えこむところなので なくて て しまった」 , , , 「 「実験できない子供が多かっ よいと考える」 , 簡単な実験操作も子供たちができずに, こまっ た」 , 「 た, 子供の能力をも っ と認識すべきだった」 , 実験結果がまちまち で, 子供が理解しづらかったよ 「 うだ」 , まとめの段階で予想外の意見が出たり, 事実を否定 してしまっ ておさまりがつかなく, 結 局, 結論を子供に押 しつけた形になっ た」 , これらの自己評価 に加えて, 改善すべき観点を述べた 者はいなかっ た , 更に, 教材研究の新たな課題を反 省のなかで提示した者はほとん どなく, 「教科書では答えがわ 「 かっ ている, どう したらよいか」 , 附属校では, 子供たちがすべて答えを知っ ている, どうしたら い い か」 の 2 例 だ け で あ っ た.. 4) 現場教師の批評の典型は, 次 のようなものであっ た , 「発問に主語 (何が) や目的語 (何を) がぬけている 「生徒 に話をさ せる 機会を与えなか た っ 」 」 , , 「子供にもっ と考えさせる時間を」 「子供達のひとり言 つ ぶやきを大切に 「実験技術を一度に 」 , , , 「 教えすぎである」 , 小さくまとまらず, 豪快な授業を考えた方が, 若い教師にとっ ては良いのでは ないか」. 上記 の現場教師の批評は的確である. しかしながら, これらの批評とアンケート結果からみて , 実習生にたいする実習校の教諭の指導は, 教師の話法, 子供への指示, 板書・掲示に関することが 主である. 教師が与えた実験 ・観察教材と子供たちの自然認識との相互作用に立ち入って授業を評 価し, 実習生を指導す るという面に重点がおかれていないように思われる, 教師の 「話法, 指示, 板書」 に関する事柄といえども, その側面からとらえてはじめて正当な 教育技術となりうるのであ 150. ..
(14) . 教科教育と教育実習の関連 る. 5). 教育実習生は指導教諭の示範授業 を模倣するものである, 示範授業は, 実習生にたいする最 も実践的な教育指導であ るといってよい. しかし, 教師の 「話法, 指示, 板書」 は, 短期間の模倣 によって修得できるもの ではなく, それこそが学生と専門職業家である教師との基本的な相違では. なかろうか. 結局, 再度強調すれば, 実習生が模倣可能であったものは, 授業展開の形式であったと考えられ, 形式に意味をもた せるところの教材観と教科教授理論こそが実地研究される必要があると考える.. 6. 教育実習と教科教育との関連, およびカリキュラム構成 筆者が担当する 「理科教材研究」 の講義 内容が, 教育実習に十分 生かされなかったことから, 教 科教育と教育 実習との関連について, 次のような問題が指摘される.. 第一には, 講義の問題である, 教科教育に関する講義内容がたとえ ビデオ教材や実験教材で教授 され, その時の学生の評価が好ましいものであっ ても, 実地指導の経験のない学生には, その内容 が十分に理解され定着することが困難である, と思われる. 教科教育の内容が実践的内容を含めば 含むほど, 学生に実地指導の経験があることが必要不可欠であろう. 一方, 言うまでもなく, 多人 数教育の講義では, 教育効果の不十分さは否めないことも事実である, 第二は, 教育実習の目的, 機能をどうとらえるかの問題である, 学校教育の実際について, 体験 的, 総合的な認識を得るこ とと, 研究的な態度と能力を重視した実地研究をおこなうこととは, 共 に重要な教育 実習のとらえ方である, しかし, その両面の同時的実現を望むことは困難ではなかろ う か,. 教育実習生は, アンケート結果からも明らかなように, 体験的, 総合的教育実習に関する 「実習 録」を書くことに, ほとんどの者が最も多くの 時間と労力を使っているのである, 帰校後に自宅で, 毎日のように 「実習録」 の作成に時間 を費していて, 筆者が期待するところの教材研究にたいして. は, たとえ学生がその重要性を意識したとしても, 時間的余裕がないの が実情である. 本学の場合, その 「実習録」 は実習単位を評点するための重要な評価対象となっ ている, 第三は, 学生の能力の実際に即 して指摘される問題である, 「授業記録」にたいする筆者の分析 が批判的評価であるにもかかわら ず, アンケート結果から明 ら. かなように, 学生のほとん どは終末授業をおこなってみて自分の指導案は評価できる, と考えてい る. こ ・の矛盾は, 学生の評価基準が筆者のものと異なるためと思われる. 学生は自分の授業 をトー タルな印象として評価する傾向にある. 近年の実習生は, 実習態度がいわゆる 「場なれ」 していて, 顕著にあがっ て平常の落着きを失なうことが稀である. そして, 語り口は概して軽く滑らかである, そのため彼らの授 業は, 実習生の授業という気安さとめずらしさで子供たちに受けとめられる こと も加わって, 学級の児童から強い拒否反応を示されることがほとん どない, 「反省会」での自己評価 で,「楽しい授業ができたことは良かった」と主観的に述べているの が,彼らの評価基準の典型 といっ て よ い で あ ろ う,. )そこで明らかにした学 生の 筆者は, かっ て, 大学生の授業批評能力にたいする分析を報告した.5 して積極的な興味を示し 能力を簡略に述べると, 今日の学生は現場教育にたい , 感性豊かな批評力 を備えていること, 更に理科授業に期待する教育者の観点と被教育者の観点を備えていることであ る, それらは, 今日の学生の評価される べき資質である, 学生の感性は,「体験的, 総合的教育実習」 を貴重なかつ魅力的な体験学習ととらえ, アンケート結果からも明らかなように, 教育実習 を終え 151.
(15) . 徳 永 好 治. たほとんどの 学生が教職の道を選ぶ決意を 固めるのである , 一方, 上述の筆者の報告で, 学生が教材や実験と関連させて現場の授業を評価 分析する能力は , 極めて乏しいものであることを指 摘した. 理科教育 においては, 教師が与えた実験 ・観察教材と子 供たち の自然認識の相互作用に立ち入って授業研究ができるような 学生の理論的 実践的な能力 , , の形成に力点がおかれる必要がある, アンケート結果から明らかなように ほぼ半数の学生が 教 , , 科教育法, 教材研究に関する 力をはじめ, 基礎的な指導技術, 教科専門の力を 大学 へ帰っ てから , 勉強し更に能力をつけたいと思っ ている. このような, 学生の教育実習後の要求を生かすような教 科教育の内容が実現されるべき である. 最後に指摘される 問題は, 実習校側の教育実習観ともいうべきも のについてである . 本学が依頼して いる実習協力校側 の調査はなされていないが 全国的には 大学にたいして実習 , , } だが 教育実地研究として の実習の在 に役立つ学生の教育を求める声が実習校側に強く存 在する6 , , り方からみるとき, 大学での教育内容が実 習に役立たないのではなくて 役立 つように実習が組ま , れていないという側 面も考慮されてよいと考える, もっ とも, 連続した 6週間の長期にわたっ て教 育実習が実施された場合, どのような実習の在り方であっ ても, 実習校の教育課程および学級経営. に多大な支障をもたらすこと は必至である. 筆者の上述した見解 は, 実習校にあっては いわ ば迷 , 惑な話となろう. 教育実習の実地研究としての在り方と実習校の対応は矛盾である その矛盾の解 . 決も又, 教科教育と教育実習の関連を考えるうえ での課題とならなくてはならない , 以上, 四点にわた っ て問題点を述べたが, それらの解決は, 教科教育と教育実習との関連をカリ キュラム上でどのように構成する かが鍵となるであろう . 筆者の試案は次のようなカ リキュラム構成の基本である , 教育実習を基礎実 習と応用実習の二段実習に分け, 教科教育との関連のみで考えるならば , 教科教育原論→基礎実習→教科教育 (教材研究) 各論→応用実 習 という基本カリキュラムの構 , 成が望ましい.. 教科教育原論 は, 小学校児童 を対象にした教科教育の原論的性格であり 理科教育では 児童の , , 自然観や理科学習における心理な ど, 理科授業 における児童の実態と教師の対応を理解する基本観. 点を中心におく. 中学生や高校生にた いする理科教育にあっ ても 小学校児童を対象にした基本内 , 容が同時に原論的性格をもつものといえよう. 具体的な授業科目としては 「初等理科教育原論」と , なろう. 単位は2単位で, 現行免許法の 「教材研究」 に読みかえることができる 科目である そし . て, 履習中に 「観察」 の形態による実地研究を組 み入れる 「教育実地研究指導セ ンタ」」 等の施設 , の利用 が考えられる. 開講学年は1年後期から3 年前期にかけて, 8教科を開講する , 基礎実習は, 「観察」 およ び 「参加」 の形態により 「体験的 総合的な認識」 を得ることを目的 , , にする. 学生の評価されるべき感性 的能力に, 更に教科教育原論 で学んだ内容が加味さ れて 基礎 , 実習は教育上効果的なものとなろう. 実習期間は3~4週間で 3年次に実施する 附属校を中心 , , に函館市内の協力校を含めた配置とする, 実習期 間が6週間より短期間である ことと 「観察]と「参 , 加」 の形 態のみをとることで協力校 の負担は少しは軽減されると推 測される , 教科教育 (教材研究)の各論は, 実践的研究授業としての内容を中心におく 理科教育では 小 . , , 中学校の教材の系統性を考慮しつつ, 教材および実験と子供たちの認識の相互作用を理論 的 実践 , 的に研究する, 授業科目としては, 「理科教育各論」 あるいは 「理科教材研究各論」 となろう 受講 . 学生は理科専攻学生 3年次のみとし, 単位は4単位で, 現行免許法の 「教科教育法」 に読みかえる ことのできる 科目である. 開講学年を3年次後 期から4年次前期とする 基礎実習で 「参加」 を経 . 験 した学生は, 実践的研究授 業の内容を体験にもとづいてより深く理解することとなろう ここで , , 152.
(16) . 教科教育と教育実習の関連. 履習中に実地研究を組み入れる. 「教育実地研究指導セ ンター」 等の利用や 「合宿研究」 が有効であ ろ う.. 応用実習は2週間で, 4年次に実施する, 附属校を中心に協力校を含めた配置とする, この応用. 実習における協力校は北海道道南全域に依頼し, 配置学生は極少数とする, 通勤不可能な協力校の 場合が多くなるが, 現地宿泊による実習を実施する, 実習生は, 教科教育各論の教授指導のもとに 研究課題を設定する, 応用実習においては, 実習生の主体的な実習能力が求められ, 現場教師の援 助のもとにおこなわれる, 実習期間が短いこと, 実習生が少ないこと, 実習生が主体的に実習する ことから, 協力校側の負担は, 少しは軽減されると推測される, 以上, カリキュラムについて基本的な見解をのべたが, 現実性をもっ たより詳細な検討のために は, 次の先験的実践研究から学ぶことができる. 〉の実践と成果からも学ぶことができる 更に教科教育と 二段実習の可能性と有効性は, 琉球大学7 ,. 教育実習との関連について大学と附属校の教員が共通理解をもつような連携と共同研究を実践研究 0 ) 東京学芸大9 )から学ぶことができる 又 東京学芸大1 )での作業課題 研究課題 している長崎大8 , , , , 1 〉の実践から 更に 「教育 の設定から学 ぶことができる, 「合宿実習」 については北教大岩見沢分校1 , 2 }など「同センター」を持つ実践研究から学ぶこと 実地実践セ ンター」の利用については, 福井大学1 が でき る,. お. わ. り. に. 本研究では, 教科教育およ び教育実習に関与する者の主観的意識や, 教育実習 一般に顕在する事 象などによる分析を極力避けて, 実習の主体者である教育実習生の能力を表わす客観的資料として の 「授業記録」 を分析することによって, 教育実地研究としての教育実習の本質的問題を明らかに し, 同時にその問題を論拠にして教科教育と教育実習の関連について考察 をおこなった.. しかしながら, あくまでも理科教育の観点からのみ述べたものであり, 他の教職科目や教科教育 の観点からも考察されなければならないことは当然である,教員養成は大学がおこなうものである, 他の学問分野からの研究に期待し, さらに大学の責任と機能において, 教育実地研究としての教育 実習が改善, 充実されるための共同研究にも寄与していきたいと考える, 〈注〉 19 2年6月) 1) 日本教育大学協会 「教員養成の改善について (意見)」 ( 7 1 9 86年1月) 2) 日本教育大学協会教員養成制度委員会 「教員の資質向上と教員養成の改善について (意見) 」( l 24 1 3) 拙稿「大学生の授業批評能力と教職専門科目理科教材研究との関連」日本理科教育学会研究紀要Vo . . ,No , 9 81年度の講義感想文だが, その後今日まで評価は低下していない, ( 1 983年) に詳しく分析報告した. 1 l 12( 19 86年) 4) 拙稿 「理科学習におけるつまずきの教育的意義」9~13頁 理科の教育 Vo 3 5 . . ,No 5) 拙稿, 前掲3) 6) 岩井勇児他 「教育実習, 事前指導に対する実習校教師の意見」 教育実習・事前指導に関する研究報告書, 3号 ( 1979年) 愛知教育大学 1 3頁 日本教育大協二部会研究会発表要旨 ( 985年) 7) 吉田一晴 9~1. 02~107頁 上掲 8) 世羅博昭 1 1 9 8 2年) 7集 ( 1 98 3年) 8集 ( 1 98 4年) 東京学芸大学 9) 教育実習の改善に関する研究 第6集 ( ) 次山信男 上掲 10 1 11 ) 笹島勇治郎 47~56頁 僻地教育研究 40号 ( 98 6年) 北海道教育大学 12 ) 高橋哲郎 21~25頁 前掲7) (本学助教授, 函館分校) 153.
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