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自動開閉窓の制御方法と省エネルギー効果に関する研究 [ PDF

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37-1

自動開閉窓の制御方法と省エネルギー効果に関する研究

田安 未奈 1. はじめに 近年,低炭素社会の実現に向けて省エネルギー基準が改正 されており,エネルギー消費量が特に増加している業務・家庭 部門においては,エネルギー消費量削減が急務である。住宅 の省エネルギー性能の向上だけでなく,国民が地球温暖化問 題を自らの問題として捉え,再生可能エネルギーの導入や,省 エネルギー対策・エネルギー管理に徹底して取り組む必要があ る。しかし,外気冷房やナイトパージを目的として通風を行うこと により,冷房負荷を大きく削減できることが分かっている。また外 気温湿度・室内温湿度・雨センサー等を兼ね備えた自動開閉窓 を用いることにより,通風を制御することが可能である。既往研 究では,高断熱土壁住宅を対象として,自動開閉窓の省エネル ギー性と室内環境改善効果に関する研究が行われている。 本研究では,標準住宅を対象として,自動開閉窓の制御方法 の検討を行う。熱・水分・空気移動の連成を考慮した建築全体の 温湿度・熱負荷予測ツールTHERB for HAM を使用して,制御 方法を変更した場合の省エネルギー効果を明らかにし,また室 内の快適性を評価する。

2. 数値シミュレーションの概要 2.1 THERB for HAM の概要

熱・水分・空気連成を考慮した建築全体の温湿度予測ツー ルTHERB for HAM を使用した数値シミュレーションにより, 自動開閉窓による通風について検討を行う。THERB for HAM(Simulation Software of the Thermal Environment of Residential Building for Heat and Mass Transfer)は,多数室を対象 とした建築温湿度(空間と躯体の温湿度)・体感指標(PMV)・ 暖冷房熱負荷の動的計算ソフトである。自然通風量はネット ワークエアーフローモデルにより算出した。 2.2 自動開閉窓システム 自動開閉窓システムとは,室内外の温湿度センサー・雨セン サー等を兼ね備え,その値を閾値として,エアコンと連動して通 風を制御するシステムである。外気が通風に適していると制御 部が判断した時に電動ユニットにより自動で窓が開き,外気が 通風に適していないと判断した場合には,自動で窓が閉まりエ アコンを稼働させる。 本研究で用いた自動開閉窓の温度制御図を図1 に,湿度制 御図を図2 に示す。温度制御図のみの場合と温度制御に湿度 制御を加えた場合の検討を行った。湿度制御を加えた場合は, 図2 の制御図の条件を満たした場合にのみ窓が開く。リビング・ ダイニングの温度を代表室温として窓の開閉とエアコンの稼働 を判断する。 2.3 建物モデル 図3 に数値シミュレーションに用いた建物モデルの平面図を 示す。赤丸で示す窓は,外気が通風に適している場合に自動 で開く自動開閉窓として計算を行った。住宅の外皮性能は平成 25 年省エネ基準相当とする。 3. 自動開閉窓の制御方法の検討 3.1 計算条件 自動開閉窓の制御温度と制御湿度を変更して計算を行った。 表1 に計算ケースを示す。温度制御は窓を開閉する上限値と 下限値の差を4℃とした 6 ケースで計算を行った。AC 設定温 度は通常の空調方式と比較するために,上限値26℃以下のケ ースは26℃とした。窓開の上限値が 27℃以上のケースは,AC 設定温度を上限値と同じ値にした。湿度制御については,湿度 制御なしのケース(以下 t とする)と設定値を変更させたケース の計4 ケースとした。比較対象として,窓の開閉を行わず 26℃ 60%の設定温湿度で空調するケース(以下 AC とする)の計算 外気温 室温 窓閉温度 下限値 窓閉 AC-ON 上限値 窓開 AC-OFF 窓制限開 AC-OFF 1℃ 1℃ 1℃ 1℃ 窓閉 AC-OFF 上限値 下限値 窓閉制御ライン 窓開制御ライン 外気絶対湿度 室内絶対湿度 窓閉 設定値 温度制御図に従う 1g/kg(DA) 窓閉制御ライン 窓開制御ライン 図1 温度制御図 図2 湿度制御図

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37-2 も行った。 図4 に各地域の夜間平均風速と日最低気温を示す。夜間風 速と日最低気温の異なる10 地域を選定し,各地域での制御方 法の検討を行った。計算期間は6 月~10 月とし,1 分間隔で計 算を行った。各室の室内温湿度と期間処理熱量とPMV を算出 した。 図5 に,本研究で用いた快適評価方法を示す。PMV および 相対湿度により,非空調時の室内環境を9 つのセグメントに分 けて評価を行った。PMV0.5 以下かつ相対湿度 70%以下の範 囲を快適域とした。 3.2 計算結果および考察 一例として,図6 に各制御方法の各セグメント割合と快適率を 示す。図5 の各セグメントの色と対応して示した。窓が開いてい る時間帯は塗りつぶし,窓が閉じている時間帯は斜線部,AC により空調している時間帯を格子部として示した。快適率①と は,PMV0.5 以下かつ相対湿度 70%以下の範囲を快適域とし た場合の全時間に対する快適域の割合である。また,自動開閉 窓システムを導入し自然通風を行う場合,室内環境のやや高温 高湿域になることを許容することが考えられるため,PMV0.75 以下かつ相対湿度80%以下の範囲を快適域とした快適率②も 示す。AC 制御では,快適率①は 60.7%,快適率②は 87.7%と なった。 まず,温度制御に比べて湿度制御を加えたケースでは空調時 間が増加している。さらに,湿度制御の設定値を小さくすること により空調時間が増加している。これは,湿度制御を加えること により外気絶対湿度が高い場合には自動開閉窓を閉じるため である。それに伴い,温度制御に比べて湿度制御を加えたケー スでは窓が閉じている時間帯が増加していることが分かる。よっ て,湿度制御を加えたケースの方が,快適率が高い傾向となっ ている。 また,温度制御の設定値を23-27℃・24-28℃・25-29℃にする と,空調時の室内環境がPMV0.5 以上の範囲に多く分布するこ とが分かった。24-28℃のケースでは,空調している時間帯の室 内環境がPMV0.75 以上になることにより,快適率が減少してい ることが分かった。また,25-29℃のケースでは,空調している時 間帯の室内環境がPMV0.75 以上になることに加え,非空調時 のPMV0.75 以上の範囲が増加することにより,快適率が減少 することが分かった。 自動開閉窓 奈良 広島 大阪 山形 秋田 仙台 東京 新潟 福井 高知 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 14 16 18 20 22 24 夜間平均風速 [m/ s] 日最低気温平均値[℃] 相対湿度 0.5 0.75 PMV 70% 80% 90% HUMID HOT&HUMID Slightly HUMID Slightly

HOT&HUMID

COMFORT Slightly

HOT HOT Very HUMID HOT&

Very HUMID 1 階 図3 建物モデル 2 階 図4 夜間平均風速と日最低気温 図5 快適評価 湿度制御 下限値 上限値 窓閉温度 AC設定温度 設定値 20℃ 24℃ 21℃ 25℃ 22℃ 26℃ 23℃ 27℃ 27℃ 24℃ 28℃ 28℃ 25℃ 29℃ 29℃ 18℃ 26℃ 温度制御 × 湿度制御なし(以下 t ) 16g/kg(DA) 14g/kg(DA) 12g/kg(DA) 表1 計算ケース

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37-3 図7 に期間処理熱量を示す。顕熱負荷に関しては,温 度制御と比較して空調時間が増加する湿度制御を加えた ケースの方が増大する傾向となった。しかし,潜熱負荷に 関しては,湿度制御を加えたケースでは高湿域の外気を 室内に流入させないために,21-25℃の AH14 と AH12 の ように,空調時間が長いAH12 よりも,AH14 のほうが小さ いという結果になった。 図8 に各制御方法の快適率①と負荷削減率の相関図 を示す。25-29℃の制御は 23-27℃の制御と比較すると, 負荷削減率は約2 倍であるが快適率は約 10%の差であ る。温度制御の設定値を大きくすることにより,省エネルギ ーになることが分かった。しかし,23-27℃・24-28℃・25-29℃の制御では快適率①は 40%以下という結果になっ た。 図9 に各制御方法の快適率②と負荷削減率の相関図 を示す。快適域をPMV0.75 以下かつ相対湿度 80%以下 の範囲とすることにより,23-27℃の制御は快適率が約 70%となることが分かった。通常の空調方式と比較して 30%の負荷削減を行い,70%の時間帯で快適な温熱環 境とすることができる制御が可能であることが分かった。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

t AH16 AH14 AH12 t AH16 AH14 AH12 t AH16 AH14 AH12 t AH16 AH14 AH12 t AH16 AH14 AH12 t AH16 AH14 AH12 AC 20-24度 21-25度 22-26度 23-27度 24-28度 25-29度 快適率 [%] 全時間に 対す る 各セグ メン ト の割合 [%]

t AH16 AH14 AH12 t AH16 AH14 AH12 t AH16 AH14 AH12 t AH16 AH14 AH12 t AH16 AH14 AH12 t AH16 AH14 AH12

AC 20-24度 21-25度 22-26度 23-27度 24-28度 25-29度 潜熱負荷 1.616 1.611 1.611 1.615 1.614 1.647 1.630 1.615 1.612 1.669 1.628 1.603 1.608 1.298 1.173 1.144 1.153 0.908 0.846 0.809 0.803 0.508 0.521 0.501 0.502 顕熱負荷 6.052 5.661 5.661 5.696 5.743 5.524 5.537 5.594 5.637 5.387 5.419 5.483 5.527 4.171 4.233 4.315 4.349 3.145 3.267 3.365 3.447 2.298 2.430 2.540 2.665 削減率 5.2% 5.2% 4.7% 4.1% 6.5% 6.5% 6.0% 5.5% 8.0% 8.1% 7.6% 6.9% 28.7% 29.5% 28.8% 28.2% 47.1% 46.4% 45.6% 44.6% 63.4% 61.5% 60.3% 58.7% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 0.000 2.000 4.000 6.000 8.000 10.000 12.000 削減率 [%] 期間処理熱量 [G J/ p erio d ] 快適率① 快適率② 図6 各制御方法の各セグメント割合と快適率 図7 各制御方法の期間処理熱量 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 快適率① [%] 負荷削減率[%] ●20-24度●21-25度●22-26度●23-27度●24-28度●25-29度 × t △ AH16 □ AH14 〇 AH12 ●AC

20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 快適率② [%] 負荷削減率[%] ●20-24度●21-25度●22-26度●23-27度●24-28度●25-29度 × t △ AH16 □ AH14 〇 AH12 ●AC

図8 快適率①と負荷削減率

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37-4 20-24℃・21-25℃・22-26℃の AH12 制御では快適率を 87% まで達することが分かった。 図 10 に各地域における快適率②と負荷削減率の相関図 を示す。日最低気温の平均値が 16℃から 18℃の範囲であ る秋田・仙台・山形においては,風速が大きい秋田・仙台・山 形の順に負荷削減率が大きい。これにより,夜間風速が大き い地域の方が自動開閉窓により十分な自然通風ができるこ とが分かる。これは,他の 6 地域においても同じ傾向となっ ている。 日最低気温の平均値が20℃から 22℃の範囲である広島・ 大阪・高知においては,温度制御の設定値を高くすることに より,快適率が大幅に減少している。これらの地域では,空 調時間が長いために空調を行っている時間帯に快適域より 高温な室内環境になる時間が多くなるためであると考えられ る。夜間平均風速が大きく,日平均最低気温が小さい地域の 方が,快適な室内環境を保ちながら,冷房による負荷を削減 可能であることが分かった。しかし,いずれの地域において も,室内環境の快適域を広くみることにより,快適環境を保ち ながら,自動開閉窓による負荷削減が可能であることが分か った。 4. むすび 本研究では,熱・水分・空気移動の連成を考慮した建築 全体の温湿度・熱負荷予測ツールTHERB for HAM を使用 して,標準住宅モデルを対象とした場合の自動開閉窓の 制御方法について検討を行った。制御方法を変更した場合 の省エネルギー効果を明らかにし,また室内の快適性を評 価した。各地域において自動開閉窓により通風を制御するこ とにより,室内環境を保ちながら,省エネルギー効果が得ら れることが分かった。 参考文献 1)田安未奈,尾崎明仁,大浦豊,村松奈美,李明香:高断 熱土壁住宅における温度自動開閉窓の省エネルギー最適 制御に関する研究,日本建築学会九州支部研究報告,第 54 号,pp221-224,2015 年 3 月 2)田安未奈,尾崎明仁,大浦豊,村松奈美:高断熱土壁住 宅における自動開閉窓の室内環境評価,日本建築学会九 州支部研究報告,第 55 号,pp265-268,2016 年 3 月 3)尾崎 明仁:熱・水分・空気連成を考慮した建築の温湿 度・熱負荷計算,Technical Papers of Annual Meeting of IBPSA-Japan,pp.19-26,2005 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 快適率② [%] 負荷削減率[%] ●20-24度●21-25度●22-26度●23-27度●24-28度●25-29度 × t △ AH16 □ AH14 〇 AH12 ●AC

20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 快適率② [%] 負荷削減率[%] ●20-24度●21-25度●22-26度●23-27度●24-28度●25-29度 × t △ AH16 □ AH14 〇 AH12 ●AC

20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 快適率② [%] 負荷削減率[%] ●20-24度●21-25度●22-26度●23-27度●24-28度●25-29度 × t △ AH16 □ AH14 〇 AH12 ●AC

20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 快適率② [%] 負荷削減率[%] ●20-24度●21-25度●22-26度●23-27度●24-28度●25-29度 × t △ AH16 □ AH14 〇 AH12 ●AC

20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 快適率② [%] 負荷削減率[%] ●20-24度●21-25度●22-26度●23-27度●24-28度●25-29度 × t △ AH16 □ AH14 〇 AH12 ●AC

20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 快適率② [%] 負荷削減率[%] ●20-24度●21-25度●22-26度●23-27度●24-28度●25-29度 × t △ AH16 □ AH14 〇 AH12 ●AC

20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 快適率② [%] 負荷削減率[%] ●20-24度●21-25度●22-26度●23-27度●24-28度●25-29度 × t △ AH16 □ AH14 〇 AH12 ●AC 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 快適率② [%] 負荷削減率[%] ●20-24度●21-25度●22-26度●23-27度●24-28度●25-29度 × t △ AH16 □ AH14 〇 AH12 ●AC

20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 快適率② [%] 負荷削減率[%] ●20-24度●21-25度●22-26度●23-27度●24-28度●25-29度 × t △ AH16 □ AH14 〇 AH12 ●AC

(b) 新潟 (a) 秋田 (c) 広島 (e) 福井 (d) 仙台 (f) 大阪 (h) 奈良 (g) 山形 (i) 高知 図10 各地域における快適率②と負荷削減率

図 8  快適率①と負荷削減率

参照

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