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多田 和代(Tada Kazuyo)  指導:小野 充一

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Academic year: 2022

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人間科学研究 Vol. 28, Supplement(2015)

修士論文要旨

【研究背景と目的】レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies.以下DLBと略す)は認知症の約20%を占め るが、周知の認知症に比べて社会的認知度は低い。DLBの 看護・介護分野の研究は高原ら(1999)の「レビー小体型 痴呆患者に対するケア技術」等が散見されるが、家族介護 者に関する研究は少ない。本研究はDLBの幻視等の症状や BPSD(認知症に伴う行動及び心理症状;Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia.以下BPSDと略 す) に直面する家族介護者の介護の認識や理解、DLB者と の相互性に着目し、家族介護者はどの様な問題を抱えて介 護を行っているか、DLB家族会という社会的支援に機縁の ある家族介護者の語りから、現実に即した介護の質向上に 役立つ構造とプロセスの解明を目的とする。このことは家 族介護者の介護負担感軽減の示唆を得、同時にDLB者の QOL向上の一端として意義があると考える。

【研究方法】対象者:DLB者を介護し、DLB家族会に機縁 のある家族介護者5名を対象とした。調査は2012年11月~

2013年3月に半構造化面接(60 ~ 130分)を行った。面接 内容は協力者の了解を得て記録し、逐語録(平均18,067字/

人)を作成した。分析方法は、修正版グラウンデッド・セ オリー・アプローチ(木下,2007)により質的分析を行っ た。

【結果および考察】分析の結果、35の概念<>、10のカテゴ リー【 】、6のサブカテゴリー[ ]が生成された。家族介 護者は、被介護者の日常に些細な違和感を認め、それは【た めらい交じりの不安】に転じる。その後、被介護者は、介 護者には見えない「幻視」を訴え【病識不明の戸惑い】は 増幅する。家族介護者はこれまでの病歴や家族史を紐解き 理解を試みるが、やがて認知症告知の場面を迎える。診断 への拒否反応に加え「健常者と見間違う状態と、ぼーっと した状態」が交互に現れる現象に【変な認知症】の印象を 膨らませ、他者が理解し難い【言うに言えない認知症】に 戸惑う。また、初診時に確定診断されないことは<DLB確 定に至る不透明さ>を導く。BPSDの頻発は被介護者の【生 活行動の変化に動揺する介護姿勢】を招く。程なく認知機 能の低下は明白になり、DLB確定診断を迎えると【症状の 進行による新たな葛藤】が始まる。この葛藤は、家族の絆 も同時に強める。これまでの家族史から得られた直感的な

介護の手がかりは[その人らしさに寄り沿う介護の気遣い]

に自然に繋がり、【気遣いが織りなす介護の見直し】に辿り 着く。しかし、介護者は社会的孤立感を深め、それは[他介 護者への関心]に変換され、家族会への参加を促す。【家族 会で分かち合う悩みと励み】は、<共感が生み出す安らぎ による介護見直し>といった介護に対する肯定感を導く。

また、DLB治療に応じた介護に関して<医療専門家から得 られる介護の実感>は、主観的な介護の視点に加え、客観 的な視野の広がりを介護者に目覚めさせる。そして、DLB 者を多視点に捉え、不安・喜び・安らぎをDLB者と一体と なって受容する介護姿勢に辿り着く。その結果、家族介護 者のDLB介護に対する態度は、【身構えない介護の受容】を 自然と肯定する姿勢へと転じ、自らの介護負担感の軽減と ともにDLB者と歩む長期的な介護展望へと繋がった。

【総合考察】家族介護者は、認知症診断は受けてもDLB確 定診断がないため、幻視などDLB特有のBPSDは介護負担 感の増加に繋がった。家族介護者はこれまでも、DLB者と の家族史から直感的な手掛かりを得て、介護に自然に生か すことで、無意識的に介護負担感を軽減させてきた。加え て、家族会に参加して共感を得たことや、医療専門家であ るメンバーからDLB治療に応じた介護の実感を得たこと が、安らぎを伴う介護の見直しに繋がった。家族介護者が、

主観的な介護の視点に加えて、客観的な視野の広がりに目 覚め、介護負担感軽減の自覚的な肯定を受容することに よって介護負担感を軽減させていたと考えられた。

【結論】幻視はDLBのBPSDの中でも比較的早期から出現す るが、初期以降の介護者の主な介護負担感は、認知機能の低 下の進行と認知機能の変動の落差、幻覚・妄想等の頻発、

DLB確定診断に至る変遷であった。したがって、DLBが、

認知症診断から確定診断まで長期間を要し、認知症を伴う パーキンソン病との鑑別も困難な現状から、DLB家族介護 者にとって認知症診断以降の幻視の早期発見及び状況把握 は、DLB早期確定診断・治療に有用であると同時に、介護 負担感軽減に繋がることが示唆された。また、医師・看護 士・介護職員による幻視に関する啓蒙や、それを支援する 国の施策及びDLB家族会等の社会的支援を推進すること の有用性が示唆された。加えて、DLB告知時の医療者の介 護者に対する心理面の配慮の重要性が示唆された。

幻視を伴うレビー小体型認知症者の介護における家族介護者の受容プロセス

Acceptance process of family caregivers in the care for patients having dementia with Lewy bodies with visual hallucinations

多田 和代(Tada Kazuyo)  指導:小野 充一

参照

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