第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性
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(2) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. 燃料ガスは淡バーナに 65 %、濃バーナに 35 %の比率で配分されるため、淡バーナ一本あ たりの定格燃焼量は 2.27 kW となる。設定空気比は淡バーナがλ=1.7、濃バーナがλ=0.6 程度でありバーナ炎口面積から算出した淡バーナ上の燃料ガス・空気混合気流速は最大 3 m/sec 程度である。淡バーナは9つの炎口を持っており各炎口はスリット板により6分割か ら8分割されているが、火炎は炎口1つにつき1つ形成される。そこで代表径をバーナ炎 口幅である 7 mm と仮定するとレイノルズ数は 1,800 程度となり層流領域であることがわ かる。図2.2に淡バーナ炎口上の流速と流速変動分布を示す。流速の測定はバーナ炎口直 上高さ 1 mm で熱線風速計(1次元プローブ:4 μm タングステン、幅 1.5 mm)を用い て行った。サンプリング回数は 8,192 回、サンプリング周波数 5.12 kHz である。流速変動 は 0.15 m/sec 程度であり時間平均平均流速の最大約 5 %である。 近年は低 NOx 化とコンパクト化により NOx 排出量の少ない淡バーナの負荷割合を増加 させ炎口面積を減少させているが騒音増加や吹き飛びにより炎口噴出流速を増加すること は難しい。実機都市ガス給湯器用バーナの炎口面積あたりの燃焼量(炎口負荷)は最大 4.7 kW/m2(4.0 kcal/h/mm 2)となっている。また予混合燃焼方式を用いたセラミックバーナ の炎口負荷が最大 11.6 kW/m2(10.0 kcal/h/mm2)程度であることから概算の噴出流速は最 大 7.5 m/sec 程度である。セラミックバーナは直径 2 mm 程度の炎口が10個程度の炎口群 となり、1つの火炎を形成している。濃淡燃焼バーナと同様にその炎口群の代表径は約 10 mm であるのでレイノルズ数は 5,400 程度となり層流から乱流遷移領域となる。 3. 0.5 velocity velocity fluctuation. 0.45 0.4 0.35. 2. 0.3 1.5. 0.25 0.2. 1. 0.15. velocity fluctuation m/sec. mean velocity m/sec. 2.5. 0.1. 0.5. 0.05 0 0. Fig. 2.2 2.2.2. 20. 40. 60 80 position mm. 100. 120. 0 140. Velocity distribution on a lean burner. 流速測定結果による燃焼領域の特定. 火炎の動的特性を把握する上で実機燃焼器に使用される火炎の燃焼領域と同じ火炎を使. 19.
(3) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. 用した実験と解析が必要であるため、以下に示す方法により燃焼領域の特定を行った。図2. 3に示す Klimov-Williams 判定図から乱流中での層流火炎の存在を火炎帯厚さ δ L (≒0.1. mm)、Kolmogorov スケール l k 、乱流レイノルズ数 R l = u′l0 ν 0 および乱流強度 u ′ により 検証する。ここで l 0 は積分スケールである。Kolmogorov スケールや Taylor スケール λ と 乱流レイノルズ数 R l は式(2.1)の関係にあり表2.1に示すように火炎帯厚さ δ L とこれ らのスケールとの比較で火炎の分類(1)を行える。. lk = l0 Rl. 34. (2.1). λ = l0 Rl 2. Table 2.1. Flame type. δ L < lk. lk < δ L < λ. λ < δ L < l0. l0 < δ L. wrinkled flame. severely wrinkled flame. flamelets in eddies. distributed reaction front. Residential Gas Appliances. Fig. 2.3 Klimov-Williams criterion. 乱流レイノルズ数 R l を求めるために積分スケール l 0 を前述した淡バーナ炎口噴出流速の 測定データから求めた。炎口直上かつ中心付近の流速を熱線風速計(DANTEC 製)により. 20.
(4) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. 測定し、FFT(小野測器製 CF-6400)にて自己相関関数を求めた。自己相関関数の一例を 図2.4に示す。このとき自己相関係数が最初にゼロとなるまで相関係数を時間積分するこ とによって時間スケールを定義した。この時間スケールと時間平均流速との積を取ること で積分スケール l0 が算出でき、この結果 l 0 は 2〜5 mm であった。式(2.1)を用いて算 出した各スケールと δ L 、 R l を表2.2に示す。Kolmogorov スケールよりも積分スケールは 1オーダー、Taylor スケールよりも1〜2オーダー大きい。. Auto-correlation coefficient. 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0. 1. 2. 3. 4. 5. -0.2 Time msec Fig. 2.4 Auto-correlation coefficient function. Table 2.2. Flow scales and flame thickness. Laminar flame thickness: δ L Integral scale: l0. 0.1 mm 2〜5 mm. Kolmogorov scale: l k. 0.11〜0.18 mm. Taylor scale: λ Turbulent Reynolds number: Rl. 0.07〜0.29 mm 60〜100. 層流燃焼速度 Su は 0.4 m/sec 程度であるため、u ′ Su ≈ 1.0 程度となる。また積分スケー ルと火炎帯厚さの比 l 0 δL = 20 : 50 であり、図2.5に示す Abdul-Gayed らによる乱流燃焼 の種別(1)において、しわ状層流火炎が適用できる領域であることがわかる。以上の検討によ り図2.3のハッチングした領域が実機ガス燃焼機器の燃焼領域となる。このとき混合の特 性時間と反応の特性時間との比を示す Damköhler 数 Da = τm τc が 100 程度の領域を占め ているので小型ガス燃焼機器の燃焼は混合律速であることがわかる。. 21.
(5) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. Residential Gas Appliances. Fig. 2.5 Turbulent combustion regimes 2.3. 可視化手法を用いた火炎挙動の測定. 燃焼騒音、振動燃焼ともに火炎による発熱量変動が圧力波の発生源となっていることが 従来研究より明らかになっている。このとき火炎による発熱量測定には火炎温度を直接測 定することが望ましいが火炎全体の同時測定を行える CARS 法では非定常測定における応 答速度が小さいため適用が難しい。しかし本研究で扱う火炎がしわ状層流火炎を適用でき るため流れの乱れスケールに対して非常に薄い火炎帯で燃焼反応が完結していることがわ かっている。したがって燃料ガス・空気混合気は全て火炎帯で消費されること、非定常火 炎においても火炎面面積と燃料消費量は各時間において比例関係を持つという仮説のもと 火炎面面積を可視化撮影することで非定常火炎の発熱量変動を測定することができると考 えた。本研究では以下2種類の可視化手法を検討した。 2.3.1. LLS 法による濃淡燃焼バーナの可視化. 火炎の可視化手法として 1 mm 程度のレーザーシートを測定部に照射し測定部に供給さ れた散乱粒子の散乱光を撮影する LLS(Laser Light Sheet)法を用いた。図2.6に可視化 装置の概要を示す。 光源にはアルゴンレーザ(波長 514.4 nm、出力 1.6 W)を使用し、円筒レンズと球面レ ンズにより幅 200 mm のレーザーシートを形成し測定部に照射した。散乱粒子として TiO 2 粒子(平均粒径 0.2μm)を用いた。TiO 2 粒子は TiCl4 溶液中に燃焼用空気の一部をバイパ スしてバブリングさせることで容易に得られ、金属粒子にも関わらず比較的比重が小さい. 22.
(6) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. ため燃焼場に使用できるメリットがある。TiO 2 粒子からの散乱光はバンドパスフィルタ(中 心波長 514.6 nm、半値幅 2.8 nm)を通じてイメージインテンシファイアを搭載した高速度 カメラ(FASTCAM ultima UV、撮影速度 45,000 frame/sec、画素数 256×256)で撮影し 画像は AVI ファイルとして記録した。. Argon Laser Cylindrical Lens Spherical Lens Laser Light Sheet. FASTCAM ultima UV with I. I. 45,000 frames/sec. Driver & Memory Natural Gas (13A) Air. PC. Air. TiCl4-HCl溶液 Fig. 2.6. Flame visualization system applied with LLS method. 上記可視化装置を用いて実機ガス燃焼器用バーナ火炎の可視化を行った。測定対象とし て濃淡燃焼型給湯器(52.3 kW)の淡バーナ火炎を用いた。図2.7に示すようにバーナ炎口 部の深さが 20 mm ではバーナ火炎の一部がちぎれていることが解る。この炎口深さを 30 mm に構造変更したところ、その効果が火炎の瞬間画像として現れ、火炎がちぎれること なく燃焼していることが解る。これは流速変動の測定結果にも現れており炎口深さを大き くすることにより流速変動が抑制されたためであることが解る。. 23.
(7) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. Burner-port depth = 20 mm 6 burner-port depth=30mm burner-port depth=20mm. velocity fluctuation u'/Um %. 5. Burner-port depth = 30 mm. 4. 3. 2. 1. 0 0. 20. 40. 60. 80. 100. 120. 140. position mm. Fig. 2.7 2.3.2. Flame visualization images by LLS method. 直接撮影法による層流予混合火炎の可視化. LLS 法により撮影された画像は火炎面が鮮明であるため定性的な評価には適している。 しかし火炎面の発光強度の変化を測定することは不可能であることと、トレーサ粒子が火 炎の動的挙動に影響を及ぼす恐れがあるため直接撮影法を用いた可視化を行った。可視化 を行うためには火炎面を精度良く撮影することが重要であり測定する波長を選択する必要 がある。炭化水素系燃料を用いた火炎による自発光は反応帯での OH ラジカル(306.4 nm)、 CH ラジカル(431.5 nm)、C2(516.5 nm)と C2 swan-band による3種類と火炎後流で CO2 と水蒸気が発する reddish glow(after glow とも呼ばれる)が観測される。燃料に都 市ガス 13A(CH4: 88.5%, C2H4: 4.6%, C3H8: 5.4%, C4H10: 1.5%)を用いた火炎の発光スペ クトルの分光計(Ocean Optics 社製 S2000N、250〜800 nm、分解能 1.5nm、分光スリッ ト幅 25 μm)による測定結果を図2.8に示す。反応帯での自発光強度は空気比により変化 するが OH ラジカルと CH ラジカルは比較的広範な空気比で存在する。 2000. 2000 air excess ratio=0.8. air excess ratio=1.2. OH (306.4 nm). C2 swan band. 500. 1000. 1500. OH CH (306.4 nm) (431.5 nm) C2 (516.5 nm). intensity a.u.. 1500. CH (431.5 nm). intensity a.u.. intensity a.u.. 1500. 1000. 2000 air excess ratio=1.0. C2 (516.5 nm). 500. 0 350. 550 wave length nm. 750. Fig. 2.8. OH (306.4 nm). 500. 0 150. 1000. CH (431.5 nm). 0 150. 350. 550 wave length nm. 750. Flame luminescence spectrum. 24. 150. 350. 550 wave length nm. 750.
(8) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. このとき図2.9に示すように、GRI-Mech. 2.11 (2)を用いた CHEMKIN による予混合火炎 の反応計算では熱発生の位置と CH の生成領域が良く一致していることがわかる。一方 OH は火炎帯下流まで存在することがわかる。反応計算による CH と OH の一部が励起されて 自発光として観測されるため燃焼反応による生成化学種とラジカル類の励起・緩和による 発光とは生成メカニズムが異なる可能性があるものの、CH がごく狭い領域で生成されるこ とから CH ラジカルによる自発光が観測される位置を火炎帯と仮定して可視化撮影を行っ た。 air excess ratio=1.00. 5000. CH(×5e+4). Heat Release Rate. Mole Fraction. OH. 0.15. 3000. T. CH4. 2000 CO2. 0.05. 1000. 0 0. 0.05. 0.1. 0.15. 0.2. 0.25. 0 0.3. 2.3.3. 4000. CH(× 5e+4). O2. H2O. 0.15. 3000. OH T. 0.1. 2000. CH4 CO2. 0.05. 1000. 0 0. Position cm. Fig. 2.9. 0.2. 0.05. 0.1. 0.15. 0.2. 0.25. 0 0.3. Position cm. Profiles of concentration of chemical species and heat release rate in flame zone 火炎可視化システムと画像処理方法. 図2.10に示す軸対称単炎口燃焼器を使用して火炎面挙動の測定を行った。燃料には都市 ガス 13A を使用し、空気とあらかじめベンチュリミキサにより十分に混合して供給管壁面 の小孔(直径 4 mm)から供給した。また供給管下端に設置したスピーカにより強制的に供給 管内の混合気に微小な圧力変動を与えた。この圧力波はバーナ炎口に伝播し大気圧との圧 力差によりスピーカにより与えた圧力変動に応じた流速変動を生じさせる。バーナ炎口上 流にはプローブ型マイクロフォン(B&K 製)と同位置に熱線プローブ(Dantec 製)を設 置して音圧と流速を測定する。図中のトリガによりスピーカの駆動開始、音圧と流速の測 定および撮影開始を同期させることができる。混合気流速変動に対して火炎面が軸対象に 変動すると仮定できるためイメージインテンシファイアを搭載した高速度カメラは火炎を 側面から撮影できるよう設置した。. 25. Temperature K Heat release rate J/cm3/sec. H2O. Temperature K Heat release rate J/cm3/sec. 4000 O2. 5000. Heat Release Rate. 0.2. 0.1. air excess ratio=1.20. 0.25. Mole Fraction. 0.25.
(9) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. FASTCAM ultima UV with I. I. 45,000 frames/sec. H. h D. probe mic.. hot-wire probe. Images Driver & Memory. mixture Amp.. PC. CTA unit. audio amp. Velocity function generator sinusoidal wave. Fig. 2.10. Trigger. A/D converter FFT analyzer Sound pressure. Schematic diagram of real-time measuring system of flame shape. 撮影画像は AVI ファイルとして記録し後述する画像処理を行うことで動的挙動を解析で きる。撮影画像処理システムの仕様を表2.3に示す。. Table 2.3 High-speed video camera Gate time Image amplification rate Measurement wave length Maximum sensitivity Pixels Resolution UV filter Lens Image file format Image processing software Image processing menu. Specification of the visualization system FASTCAM Ultima UV-plus1 4,500 frames/sec (full segment) 30 μsec 100 dB (2,300 lm/m2/lx) 400〜850 nm (with UV cut filer) 430 nm 256×256 pixels 約 0.2 mm/pixel MC-L370 Dynamic PENTAX B7514C AVI DIPP-Motion (Detect Inc.) 1. Area and ferimeter length calculation 2. Luminescence analysis (256 steps) 3. Coordinates extraction (CSV format). 26.
(10) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. また図2.11に高速度カメラ、光学フィルタ、レンズの波長特性から推測した撮影感度の 波長特性を示す。前述した自発光強度スペクトルと比較すると CH ラジカルの発光のみを 撮影できる特性を持つことが解る。. 10 sensitivity %. 80 sensitivity %. 1200 Filter*Lens*camera air excess ratio=1.0. 60 40 Ultima-UV Plus1 MC-L370Dynamic PENTAX B7514C. 20 0 100. 300. 500 700 wave length nm. Fig. 2.11. 900. 1100. 1000. 8. 800. 6. 600. 4. 400. 2. 200. 0 100. 300. 500 700 wave length nm. 900. luminous intensity a.u.. 12. 100. 0 1100. Sensitivity of high-speed vide o camera. このシステムを用いることにより供給管下端のスピーカによる加振周波数ごとに火炎面 の挙動を高速度ビデオカメラ(4,500 コマ/秒)を用いて撮影し、その二値化画像を解析す ることで、各時間の火炎面面積を解析できる。この際の空間分解能は約 0.2 mm/pixel であ る。また、図中のトリガにより、スピーカの駆動開始、音圧の測定および撮影開始を同期 させているので、火炎面積の圧力変動に対する時間遅れを測定できることになる。このと きの実験条件を表2.4に示す。. Combustion rate kW 2.33 1.75 1.16 2.4. Table 2.4 Experimental Conditions Burner-port Flame length on diameter mm crescent state mm 12 73 12 55 12, 8.5 36, 54. Velocity at the burner-port m/sec 5.34 4.00 2.67, 5.34. 予混合気の周期的流速変動に対する火炎面面積の動的特性. 2.4.1. 全火炎面面積の変動. 図2.10のシステムを用いて、スピーカで混合気流に 120 Hz に相当する正弦波の変動を 与えたときの火炎の挙動を撮影した。使用したバーナは図2.12に示すように主炎口と主炎 を保持するための環状スリット(幅 0.5 mm)炎口で構成されている。炎口面から 24 mm 上流に設置されたマイクロフォンと熱線プローブにて圧力変動と流速変動を測定できる。. 27.
(11) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. Main burner-port Circular retention burner-port 24. Fuel for retention burner. Hot-wire probe. Probe microphone. Water-cooling Fine mesh Gas fuel and air mixture for main burner. Speaker box. Fig. 2.12. Experimental burner. 各撮影画像の輝度を 256 階調に AD 変換し、CH ラジカル自発光が観測される火炎面にお いてその輝度が極大値を持つため、さらに輝度のピークのみを抽出することで火炎面の座 標と輝度を数値データとして抽出した。撮影画像と火炎面の抽出画像を図2.13に示す。 Excitation frequency = 100 Hz, (Δt=2.2 msec) 静止状態. (a) Instantaneous images of flame with high speed video camera (4,500 fps). 静止状態. (b) Extracted flame edge. Fig. 2.13. Instantaneous images of flame and extracted flame edge. 28.
(12) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. このとき火炎が軸対称で変動していると仮定して数値データより式(2.2)を用いて 火炎面面積 a を算出(3)した。. a ( t ) = ∫ π D ( h ) ⋅ dh H. (2.2). 0. 算出した火炎面面積とこれに対応する火炎の瞬間画像を図2.14に示す。 7.0. Excitation frequency at 100 Hz. Area cm2. 6.5. 6.0. 5.5. 5.0. 4.5. 4.0 5. 10. 15. 20. 25. 30. 35. 40. 45. 50. 55. 60. 65. 70. Time msec. 0. π. 2. π. 3 π 2. 2π. Fig. 2.14 Instantaneous flame shapes corresponding to flame surface area スピーカに正弦波信号を印加して混合気を加振したときに、その加振周波数と火炎面面 積の変動周波数は一致することがわかる。このとき位相 0 とπで火炎形状は同じであるが、 火炎面面積が同じであるにもかかわらず π 2 と 3π 2 でその形状が異なることがわかる。 さらに同時に測定を行った炎口上流の流速と圧力変動と火炎面面積を比較したものを図 2.15に示す。バーナ炎口近傍での圧力変動と流速変動は加振周波数によらず π 2 の位相差 を持つが、火炎面面積は流速や圧力変動に対する位相差が加振周波数とともに変化する様 子が観測された。. 29.
(13) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. 7.0. Area cm2. 6.5 6.0. 5.5. 5.0. Delay time τ. 4.5. 4.0 5. 10. 15. 20. 25. 30. 35. 40. 45. 50. 55. 60. 65. 70. Time msec 0.010. UUm/sec a.u.. 0.008. 0.006. 0.004. 0.002. Phase difference π/2. 0.000. 5. 10. 15. 20. 25. 30. 35. 40. 45. 50. 55. 60. 65. 70. 50. 55. 60. 65. 70. Time msec 0.15. p' a.u.. 0.10. 0.05. 0.00. -0.05. -0.10. -0.15 5. 10. 15. 20. 25. 30. 35. 40. 45. Time msec. Fig. 2.15. 2.4.2. Time dependent flame surface area, velocity and sound pressure at the excitation frequency as 120 Hz. 局所火炎面面積の変動. 加振周波数により位相差が変化する現象を以下に示す方法により検討した。図2.16に示 すように、バーナ炎口面から高さ方向に複数の輪切り状の微小領域を設定し、それぞれの 領域での火炎面面積の変動を測定した。領域の幅は約 4 mm であり、加振周波数 f とバーナ 炎口での混合気平均流速 U から算出されるスケール U/f に比べて最大 30 % 程度である。 図2.17にこのときの加振周波数に対する遅れ時間τを静止した状態の火炎長 L とバー ナ炎口出口での混合気平均流速 L で無次元化したものを示す。横軸は、無次元化した微小 領域の位置 x/L である。図中の直線は、混合気平均流速 U で流速変動が火炎の各位置に到 達するとしたときの無次元時間遅れを示している。図2.17により周波数によらず、火炎面 の変動が平均流速に近い速度で火炎先端に伝播していくことがわかる。. 30.
(14) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. ΔXi ≒ 4 mm. Fig. 2.16. Perturbation of local flame surface area. 1. 100Hz 200Hz 300Hz 400Hz. τ/(L/U). 0.8. 0.6. 0.4. Combustion 2.326 rate =kW 2.326 kW Excess airair ratio ratio=1.0 = 1.0 d=12 mm= 12 mm Burner-port diam.. 0.2. 0. 0. 0.2. 0.4. 0.6. 0.8. 1. x/L x/L Fig. 2.17. Normalized time delay at various excitation frequencies. また、各領域の平均火炎面面積 a で無次元化した火炎面面積変動の標準偏差 a’を図2.18 に示す。火炎先端付近での変動量が大きく、かつ先端に向かうに従い変動量が急激に増加 していことがわかる。このことは、全火炎面面積の変動を支配するのは、火炎先端付近で あることを示しており、その遅れ時間は、火炎先端まで流速変動が伝播する時間であるこ とを示している。また図2.19に示すように、他の燃焼条件でも火炎長と混合気平均流速に より、遅れ時間を整理できることが解る。さらに局所火炎面面積の変動量については、先. 31.
(15) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. 端に向かうほど増加する傾向は同じであるが、条件により a’/a の曲線が多少異なることが 解る。 0.15. 100Hz 200Hz 300Hz 400Hz. a’/a. 0.1. 0.05. Combustion rate = 2.326 kW Excess air ratio = 1.0 Burner-port diam. = 12 mm 0 0. Fig. 2.18. 0.2. 0.4. x/L x/L. 0.6. 0.8. 1. Normalized area perturbation at various excitation frequencies. 0.15. 1 d=12mm, d=12mm, d=12mm, d=85mm,. 0.8. d=12mm, d=12mm, d=12mm, d=85mm,. 2.33kW 1.75kW 1.16kW 1.16kW. 2.33kW 1.75kW 1.16kW 1.16kW. a’/a. τ/(L/U). 0.1 0.6. 0.4. 0.05. 0.2. 0. 0 0. 0.2. 0.4. x/L x/L. 0.6. 0.8. 1. 0. 0.2. 0.4. x/L x/L. 0.6. 0.8. 1. Fig. 2.19 Normalized time delay and area perturbation at various combustion conditions 2.4.3. 全火炎面面積変動の遅れ時間. 全火炎面面積変動の遅れ時間が、火炎先端付近での面積変動の遅れ時間に大きく影響さ れることが実験的に明らかになった。従って、上記の実験結果から得られた x/L とτ/(L/U). 32.
(16) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. の関係式を用いて、例えば x/L=1 として、遅れ時間を見積もることが可能だと考えられる。 ただし、全体の面積変動を支配する領域は、a’/a のピーク付近だとすれば、火炎により x/L の値が多少異なると考えられる。例として図2.20に圧力変動に対する全火炎面面積変 動の遅れ時間と上記関係式から得られた遅れ時間(破線)を示す。炎口径 d=12 mm の火炎 では x/L=1.15 としたときの遅れ時間が全火炎面面積の遅れ時間に近く、一方で d=8.5 mm の火炎では x/L=0.95 が最も近い。このように炎口径の違いによって x/L の値は異なるが火 炎面面積の変動周波数によらず流速変動に対する遅れ時間τは式(2.3)のように静止 時の火炎長 L と炎口上の時間平均流速 U による特性時間との比ξを用いて表すことができ る。. ξ≡ τ. (L U). (2.3). =constant. L/U は燃焼速度と混合気流速により決まるため、遅れ時間τをξにより評価することは は図2.15で示した混合気流速変動や圧力変動に対する火炎の発熱量変動の位相差を決定 するため重要である。この炎口径によるξの変化については次項2.5にて検討する。 20. Delay time msec. 15. 10. Burner-port diam. = 12mm Combustion rate = 2.33kW ξ=1.15. 5. Burner-port diam. = 8.5mm Combustion rate = 1.16kW ξ=0.95. 0 0. 100. 200. 300. 400. 500. 600. Frequency Hz. Fig. 2.20 2.4.4. The effect of time delay of area perturbation at various excitation frequencies 全火炎面面積の変動振幅. 反応性熱流体 の支配方程式より導出された波動方程式を解析することにより 燃焼騒音 (4),(5)や振動燃焼(6)-(9)を記述できることが示されているが、発熱量変動を定式化するために、. ここでは振幅に関する解析を行った。測定は前述した直接撮影法による可視化システムを 用いて、燃料ガス・空気予混合気は炎口での流速変動が周波数によらず一定となるように. 33.
(17) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. スピーカへの印加電圧を調整した。撮影画像は画像処理により火炎面の抽出と火炎面面積 の算出を行い、燃焼速度が火炎面全体にわたって等しいという仮定のもとで発熱量に変換 し、その変動の標準偏差を振幅とした。このとき第4章での波動方程式による振動燃焼の 解析に用いるため、発熱量変動は炎口近傍で同時測定されたプローブマイクロフォンによ る音圧(圧力変動振幅)に対する比として整理した。その結果、図2.21に示すように空気 比や燃焼量によらず加振周波数の-1.85 乗に発熱量変動の振幅比が比例することがわかった。 Roberts(10)による層流予混合火炎による音圧の増幅率の解析では、スピーカによる予混合気 の加振周波数のほぼ-1 乗に増幅率が比例することが報告されている。したがって本実験結 果より発熱量変動の周波数応答特性は火炎による生成音圧の特性と若干異なることを示し ている。. Amplification ratio of the heat release fluctuation to sound pressure W/Pa. 1000 λ =1.0, λ =1.2, λ =1.0, λ =1.2, 100. Q& p. 1.163 kW 0.983 kW 1.745 kW 1.474 kW. ∝ f −1.85. 10. 1 10. 100. 1000. Excitation frequency Hz Fig. 2.21 2.5. Amplification ratio of the heat release fluctuation to sound pressure. 層流予混合火炎の簡易動的特性モデルの検討. 本項ではバーナ開発にて実用的な使用を視野に入れた層流予混合火炎の簡易動的特性モ デル構築の検討とその検証を多炎口バーナ火炎を用いた動的特性の実験と G-equation を用 いた数値計算の双方から行った。 2.5.1. 火炎の動的特性モデルの概要と問題点. 低周波から高周波まで広範な変動周波数をもつ乱流場での燃焼騒音発生に関する実験的 研究では主に火炎の発光強度変動と音圧の相関(11), (12)が調べられている。しかしバーナ形状. 34.
(18) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. に関して火炎から発生する音圧レベルを系統的に検討した研究(13)は少ない。 熱流体の保存式から導出した波動方程式(6)-(9)では発熱量の変動が生成項となっている。生 成項である発熱量の変動が何らかの形で与えられたとき、適当な境界条件のもとで波動方 程式を解くことにより対象とする系への圧力波の伝播が解析できる。したがって燃料の流 速変動や圧力変動と発熱量変動との関係を解明する必要がある。しわ状層流火炎モデルを 適用すれば、発熱量変動は火炎面の動的挙動を解析的、実験的に解明することで火炎の伝 達関数として定式化することができる。層流火炎の非定常モデルについては、Crocco ら(14) の非定常発熱変動の遅れ時間モデル( n − τ model)をはじめ、Bohn(15)らは遅れ時間τは 円錐状火炎においてバーナ幅、燃焼速度および予混合気流速で決定されることを示し、乱 流火炎に対してもこのモデルを適用しようと試みた。一方で Fleifil ら(16)は燃焼速度一定の 条件で、振動する流れに対する火炎面面積の変動を燃焼速度とバーナ炎孔半径によるスト ローハル数を定義して解析的にモデル化した。いずれの研究も予混合気流速の変動によっ て引き起こされる火炎面の変形が火炎全体における発熱量変動を遅れ時間を決定づける因 子になることを示唆している。しかし実機燃焼器開発においてバーナ設計指針として利用 できるような実用的な知見は少なく、対象とする流れ場やバーナによって火炎の動的モデ ルが異なること問題としてあげられる。 2.5.2. 層流予混合火炎の簡易動的特性モデル. 前項において火炎動的特性の把握により発熱量変動振幅や流速変動に対する遅れ時間τ の検討を行った。振幅については、式(2.4)に示すように、変動周波数の-1.85 乗に比 例するが、燃焼量や空気比によって音圧に対する発熱量変動振幅比の絶対値は異なる。発 熱量変動振幅は燃焼騒音を生成することがわかっているので、燃焼量や空気比と燃焼騒音 との関係については第3章にて検討する。. Q& p. ∝ f −1.85. (2.4). また予混合気の変動周波数によらず遅れ時間τをξにて表すことができることは、熱流 体の保存式から導出された波動方程式による振動燃焼の発生シミュレーションにおいて、 生成項に使用する発熱量変動のモデルが簡易になるという利点がある。しかし前項により 炎口径によりξが変化することがわかった。このξは火炎面面積変動が最大となる位置に 影響される可能性があることがわかったため、火炎面面積の変動振幅を決定する因子を検 討する必要がある。 ここではξの炎口径に対する影響を調べることと、実機バーナを視野に入れたより実用 的なモデル構築を検討するため火炎の自発光強度により発熱量変動を測定した。このとき 遅れ時間τは火炎長と混合気平均流速を用いたストローハル数によって整理する。このと き、燃焼速度が火炎面すべてにおいて等しいと仮定し、しわ状層流火炎モデルを適用する. 35.
(19) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. と火炎長 L は燃焼速度 Su と混合気流速 U で表されるため、遅れ時間τは式(2.5)で 表される。. τ =ξ ⋅. 2.5.3. L d Su =ξ⋅ 1− U 2Su U . 2. (2.5). 自発光強度変動測定による簡易動的特性モデルの実験的検証. 混合気流速を正弦波的に変動させたとき、発熱量変動も正弦波として扱えると仮定し、 式(2.6)のように表す。. Q& ∝ I f sin {ω ( t −τ )}. (2.6). ここでτは式(2.6)での流速変動に対する熱発生量の遅れ時間、If は CH ラジカル自 発光強度変動の振幅である。この遅れ時間τを図2.22に示すシステムにより測定した。 バーナは多炎孔の金属プレートでありバーナ上流に設置したスピーカにより white noise を与えることで混合気に流速変動を強制的に与えた。燃料には都市ガス 13A を用いた。バ ーナ上流約 5 mm に配置した熱線プローブによる流速変動とバーナ面に対して 45 度に設置 したバンドパスフィルタ付き光電子増倍管(浜松ホトニクス製)により CH ラジカル自発 光(431.5 nm)の発光強度変動を測定した。得られた時系列データを解析して混合気の流 速変動に対する火炎の発光強度変動の遅れ時間τを算出した。 pitch 3.0mm. Photo multiplier with a band-pass filter (CH radical: 431.5 nm). d=1.5〜4.0mm. pitch 3.0mm. 45゜ hot-wire probe PC. mixture. CTA unit. High voltage amp.. audio amp. A/D converter FFT analyzer function generator (White noise). Fig. 2.22. • Phase shift • Amplification of heat release to velocity fluctuation. Experimental apparatus. 36.
(20) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. 図2.23に測定結果の一例を示す。混合気流速変動に対する発光強度変動の位相差は 500 Hz 程度まで直線的に変化するがそれ以上の周波数ではデータにばらつきが見られる。この 理由の一つとしてスピーカにより与えた流速変動の周波数特性に起因し図2.23右図のよ うに高周波領域では流速変動が小さく発熱量変動の大きさも小さいことが解る。 velocity fluctuation u' m/sec. 0.0010. d1=d2=2.0 mm λ=1.2, Su=0.317 m/sec freq. =0~1000 Hz 200. 100. 0.0006. 0.0004. 0.0002. 0.0000 0. 200. 400. 0. 600. 800. 1000. 1200. Frequency Hz 20. -100. -200 0. 200. 400. 600. 800. 1000. 1200. Frequency Hz. unsteady heat release rate q' W. Phase shift deg.. 5.815 kW. 5.815 kW 0.0008. 5.815 kW 15. 10. 5. 0 0. 200. 400. 600. 800. 1000. 1200. Frequency Hz. Fig. 2.23. Phase shift of heat release rate to velocity fluctuation. 測定した位相差から算出した遅れ時間τと式(2.5)第2項にそれぞれ周波数 f を掛 けることによりストローハル数 St=f(L/U)に対する無次元遅れ時間τf を用いた整理を行っ た。バーナ炎口径 2 mm、空気比 1.2、燃焼量 3.49 kW における一例を図2.24に示す。こ のときプロットの傾きが式(2.5)におけるξを示している。図2.23の加振周波数 600 Hz に相当する St<2 において無次元遅れ時間τf は直線的に増加することから遅れ時間τは 加振周波数によらず一定であることがわかる。一方 St>3.5 の高周波領域では前述した理由 により位相差を解析するための流速変動強度が小さいことが考えられる。さらに Flifil によ る解析的式を破線で示したが、ξを示す傾きやストローハル数が高くなると遅れ時間が一 定になる現象に定性的な一致がみられた。さらに単炎口バーナによる火炎の可視化データ を同様にストローハル数を用いて整理を行い、併せて図2.24に示す。. 37.
(21) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. whiteBurner noiseport (sampling: 12.8kHz) diameter = 2.0 mm non-dimensionalized delay time τ*f. Dimensionless delay time τf. 3.489 kW Fleifil. 1.5. 1.0. 0.5. 0.0 0. 1. 2. 3. 4. Strouhal number St=fL/u. Fig. 2.24. Burner port diameter = 8.5 and 12 mm. 10. 2.0. 9. d=8.5mm d=12mm. 8 7 6 5 4 3 2 1 0 0. 2. 4 6 Strouhal number St=fL/U. 8. Dimensionless delay time. 以上の測定より多炎口バーナ火炎でも式(2.5)が単炎口バーナ火炎の可視化画像を 用いた解析と同様に発熱量変動が火炎長 L と混合気平均流速 U を用いて混合気の流速変動 に対する遅れ時間τを表す事ができることがわかった。ただしξが一定と見なせる周波数 領域が存在し、かつ炎口径によってその上限ストローハル数が異なることがわかった。 ところがξの値は図2.24の傾きが示すように多炎口バーナにおいて単炎口バーナ(ξ≒ 1.0)よりもかなり小さな値(ξ≒0.4)を持つことがわかる。そこで、多炎口バーナの炎口 ピッチを固定(4.0 mm)して炎口径のみ異なる(d=1.5〜4.0 mm)バーナプレートを使用 して燃焼量や空気比を変化させて ξ の評価を行った。その結果 ξ は 0.35〜0.5 の値となり炎 口径や燃焼条件により異なることがわかった。 1 d=1.5 d=2.0 d=3.0 d=4.0. 0.9 0.8. mm mm mm mm. ζ=τ/(L/U). 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0. Fig. 2.25. 2. 4 6 Flame length mm. 8. 10. Effect of burner-port and combustion conditions on ξ. 多炎口バーナ火炎のξが単炎口バーナ火炎よりも大幅に小さくなることは火炎長と混合 気流速による時間スケール L/U よりも発熱量変動の遅れ時間τが小さいことを示している。. 38. 10.
(22) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. この理由として静止時の火炎長 L よりも非定常時の平均火炎長がかなり小さくなり、流速 変動の伝播時間が短くなることが考えられる。すなわち炎口径が小さいほど火炎は乱れや すくなると考えられる。高本(13)らによる燃焼騒音に対するバーナ炎口形状の影響を実験的 に検討した報告においてバーナ炎口周囲長が長くなるほど燃焼騒音の音響出力が増加する 傾向があることを示している。燃焼騒音は発熱量変動、すなわち火炎面の乱れと相関があ るため、バーナ形状により火炎面の乱れが変化し、これがξを変化させていると考えた。 そこでバーナ炎口面積あたりの周囲長が乱れを生成し、火炎面の乱れを引き起こすと考え、 下式(2.7)に示すような指標でξを整理した。Ls はバーナ炎口周囲長、Ap は炎口断面 積を示す。また Q は混合気流量、Su は層流燃焼速度を示す。. ξ∝. (L. s. (Q. Ap ). (2.7). Su ). (炎口形状による乱れの生成: Ls Ap 、乱れが作用する火炎面面積: Q Su ) 上記指標を用いて整理したξを図2.26に示す。上記仮説による指標を用いると、バーナ炎 口径は最大 10 倍の違いであるにもかかわらず、指標により 2 オーダーの違いがあることが わかる。したがってバーナ炎口径によるξの変化は炎口周縁付近で形成される乱れが火炎 面に作用することにより引き起こされることが予測される。 1.2. 1. 0.6. 0.4. d=1.5 mm d=2.0 mm d=3.0 mm d=4.0 mm d=8.5 mm d=12 mm. 0.2. 0 0.00001. 0.0001. 0.001. 0.01. 0.1. (Ls/Ap)/(Q/Su) mm-3. Fig. 2.26. Effect of burner-port shape on ξ. 39. 1. ζ=τ/(L/U). 0.8.
(23) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. 2.5.4. G-equation を用いた簡易動的特性モデルの数値解析による検証. 前節により炎口径がξに与える影響について検討した。さらに炎口近傍での流速分布が ξに与える影響について検討した。しかし可視化や発光強度による測定ではこれらの測定 が困難であるためしわ状層流火炎を仮定した G-equation(17)の手法を用いた非定常火炎挙動 の数値解析を行う。 (1)G-equation モデルの概要と適用性の検討 層流燃焼速度と流速が均衡する場所で火炎面が存在するという G-equation モデルを火炎 の動的特性解析に導入する際には、局所燃焼速度が火炎伸長や曲率により変化する可能性 がある。ここでは上記の影響を考慮した火炎面モデルを検討した後に、本研究が対象とす る火炎の燃焼領域での適用を行った。ここで使用する記号を表2.5に示す。. Table 2.5. Nomenclature. G. Geometry of the surface. Ka 0. Karlovitz number. n. Unit normal vector of G. Le. Lewis number =. v. Flow velocity. Tb0. V. Local propagation velocity of the surface Local burning velocity Burning velocity which is not affected by stretch and curvature Thickness of flame. Su Su 0 lT. 0. Ma. ~. ~. Normalized flame temperature. Ta λ. Normalized activate temperature. Cp. Specific heat. ρu κ. Markstein number. λ Cp ρD . Ratio of specific heat. Density of unburned mixture Stretch index. 火炎厚さが流体のスケールに比べて十分小さく流れによって火炎面が伝播すると仮定 する。ここで、火炎面を. G ( x, t ) = 0. (2.8). とおき、これが微分可能かつ連続であるとすると、G に関する単位法線ベクトルを定義 できる。. n=−. ∇G ∇G. (2.9). 火炎面の局所燃焼速度を Su とすると、G-equation が得られる。. ∂G + v ⋅ ∇G = Su ∇G (2.10) ∂t ここで v は流速となり反応を含めた燃焼による効果はすべて燃焼速度 Su に含まれること になる。このとき火炎面局所の燃焼速度は火炎面の接線方向の流速によって伸長を受け変. 40.
(24) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. 化する。このとき以下の指標を導入して表す。. κ=. 1 dA A dt. (2.11). A は火炎面の各所における微小な表面積である。この火炎面にせん断が作用し、火炎面が 伸長を受けながら移動すると、 κ は以下のように表される。ここで V は火炎面の移動速度 である。. κ = ∇ ⋅ n × ( v × n ) + ( V ⋅ n )( ∇ ⋅ n ). = −n ⋅ ∇ × ( v ×n ) +( V ⋅ n )( ∇⋅ n ) = − ( n ⋅∇ )( v ⋅ n ) + ∇ ⋅ v + ( V ⋅ n )( ∇⋅ n ). (2.12). 第1項と第2項は火炎面の前後において、密度一定と仮定すると、せん断率をテンソル で表現できる。. b ≡ n ⋅ e⋅ n 1 T = n ⋅ ( ∇v ) + ( ∇v ) ⋅ n 2 したがって、 κ は以下のように表される。 1 T κ = −n ⋅ ( ∇v ) + ( ∇v ) ⋅ n + ( V ⋅ n )( ∇ ⋅ n ) 2. (2.13). (2.14). ここで、Karlovitz 数(Ka0)および Markstein 数(Ma)を用いると燃焼速度は以下の ように表される。. Su 1 = 1 − Ma ⋅ Ka 0 0 Su 2. (2.15). 1 Ma = − 1 / ε Le . (2.16). 2. ~ ~ ε = Tb0 / Ta . (2.17). λ Ka0 = (2.18) ⋅ ρu ⋅κ Cp このとき Su 0 、 l T 0 はそれぞれ、伸長を受けないときの燃焼速度、火炎帯厚さである。ま た火炎面の曲率にも燃焼速度は影響を受け、これは火炎帯厚さと曲率の積で表される。し たがって、伸長および曲率の効果をあわせると燃焼速度は以下のように表される。. Su 1 0 = 1 − lT ∇ ⋅ n + Ma ⋅ Ka 0 0 Su 2. (2.19). 41.
(25) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. したがって式(2.10)と式(2.19)を計算することにより非定常流場の火炎の 挙動を求めることができる。本研究で扱うメタン系燃料では Le 数がほぼ 1 と見なせるため 式(2.19)の右辺第3項は無視できると考えられる。 (2)火炎面曲率の影響 ここでは式(2.19)右辺第2項の曲率の影響について定性的な検討を行った。直接 撮影法による火炎可視化システム(図2.10)を用いて火炎面の自発光強度と曲率の関係を 求めた。図2.27に示すように静止時の火炎は水平方向に曲率を持っている。また火炎面が 変動しているときには水平方向の曲率ρ1 に加えて垂直方向の曲率ρ2 が存在する。このと き静止状態の自発光強度 L1 と水平方向の火炎半径ρ1 の関係を用いて、火炎面が湾曲した際 の曲率ρ2 による自発光強度の変化を求めた。 1 R1. 60. ρ2 = ±. 1 R2. R1 R2. R1. Excess air ratio = 1.3 Combustion rate = 0.465 kW Curvefit. 50 Luminous Intensity L1 a.u.. ρ1 = −. R2. R1. 40. 30. 20. 10. Mixture (a) Quiescent flame. (b) Wrinkled flame. Fig. 2.27. 0 -1.4. -1.2. -1 -0.8 -0.6 Curvature ρ1 mm-1. -0.4. -0.2. Luminous intensity of quiescent flame. 燃料ガス・空気予混合気を 100 Hz と 200 Hz で加振したときの火炎画像から求めた自発 光強度 L2 と L1 の比を求めた。これを図2.28に示す。その結果、火炎が未燃側に凸の場合 (曲率:正)の場合、発光強度比は大きく、既燃側に凸(曲率:負)の場合は発光強度比 が小さくなることがわかる。発光強度は局所での発熱量と強い相関を持つため、発光強度 が大きい場合、燃焼速度が増加していることが予測できる。. 42.
(26) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. 1.6. Luminous Intensity Ratio L2/L1. 1.4. 1.2. 1 100Hz 100Hz 100Hz 200Hz 200Hz 200Hz. 0.8. 0.6. 0.4 -1.5. -1. -0.5. 0 0.5 Curvature ρ2 mm-1. 1. 1.5. Fig. 2.28 Curvature effect on the luminous intensity (3)火炎の動的特性に対する流速と流速分布の影響 以上の検討により燃焼速度に対する曲率の定性的な影響を確認したが、プログラム開発 における技術的な問題により G-equation モデルへ曲率の効果を導入は行うことができなか った。したがって火炎各所での燃焼速度 Su は一定とした。G-equation モデルは汎用熱流 体解析ソフトウエア CFX-4.2 のサブルーチンとしてプログラミングを行い、数値計算を行 った。一例として混合気を 100 Hz で変動させたときの計算による火炎面形状を図2.29に 示す。火炎の可視化による画像と異なる原因は前述した曲率による局所燃焼速度の変化に よるものと考えられる。 Laminar burning velocity Su = 0.317 m/sec Mixture velocity at burner-port = 2.0 m/sec Velocity fluctuation = 0.8 m/sec Frequency of mixture fluctuation = 100 Hz Flame surface (G=0). Flame surface (G=0). 0 msec. 2 msec. 4 msec. Fig. 2.29. 8 msec. 10 msec. 12 msec. 14 msec. 16 msec. 18 msec. 20 msec. Calculated flame shape with G-equation model. 数値計算により無次元遅れ時間に対する混合気平均流速、流速変動強度の影響、層流燃. 43.
(27) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. 焼速度およびバーナ炎口径の影響を調べた。図2.30は炎口径 1.5 mm での炎口流速を変化 させた。一方で図2.31は炎口径 2.0 mm での層流燃焼速度と混合気流速変動を変化させた。 その結果いずれも St で遅れ時間を整理できることがわかる。この結果は実験結果(図2.2 4)と定性的に一致した。さらに Fleifil ら(16)が解析的に導いた結果ともほぼ一致する。 D=1.5mm, Su=0.317m/sec, u'=0.5m/sec 0.50 1.0m/sec 1.2m/sec 1.5m/sec 1.7m/sec 2.0m/sec 2.3m/sec. dimensionless delay time τ*f. 0.45. ξ = 0.3. 0.40 0.35. Fleifil 1.0m/sec. Fleifil 2.0m/sec. 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 0.0. 0.5. 1.0. 1.5. 2.0. Strouhal number St=fL/U. Fig. 2.30. Effect of mean velocity. D=2.0mm, Su=0.317, 0.404m/sec, u'=0.1, 0.5, 0.8m/sec 0.50. dimensionless delay time τ*f. 0.45 0.40 0.35. 1.0m/sec 1.5m/sec 2.0m/sec 2.0m/sec, u'=0.1m/sec. ξ = 0.3. Fleifil 1.0m/sec Fleifil 2.0m/sec 2.0m/sec, u'=0.8m/sec 2.0m/sec, Su=0.404m/sec. 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 0.0. 0.5. 1.0. 1.5. 2.0. Strouhal number St=fL/U. Fig. 2.31. Effect of laminar burning velocity and velocity fluctuation. 上記数値計算ではバーナ炎孔上流速の境界条件にプラグ・フローを設定した。ここでは、 バーナ炎孔上の流速分布をポアズイユ・フローとした場合および伴流が存在する場合の遅. 44.
(28) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. れ時間および火炎面面積の変動量への影響を調べた。 境界条件および定常時の火炎面を図2.32、ポアズイユ・フローとプラグ・フローとの比 較を図2.33、伴流の有無による比較を図2.34に示す。図2.33においてポアズイユ・フ ローの境界条件を与えたところ無次元遅れ時間τf はプラグ・フローの場合よりも小さくな る。ただし流速変動に対する火炎面面積変動の強度比(a’/u’)/(A/U)はポアズイユ・フローの 方が上回っていることがわかった。一方で図2.34に示すように遅れ時間および変動強度比 に対する伴流の影響は小さいことがわかった。 Effect of co-flow around the burner port D=2mm, U=2.0m/sec, Su=0.317m/sec plug flow with co-flow (0.35m/sec). Effect of velocity distribution at burner port plug flow and Poiseuille flow. 8. 8. 2 r ur = 2u plug 1− 2 , v = 0 R . plug flow plug flow with co-flow. plug flow Poeseuille flow. 6. u plug. 4. Height mm. Height mm. 6. u plug. 4. 2. 2. uco − flow 0 0.0. 0. Radius r 0. R. 1. 2. 0.5. Fig. 2.32. 1.5. 2.0. Steady state flame surface on various boundary conditions. D=2.0mm, U=2.0m/sec, u'=0.8m/sec, Su=0.317m/sec plug flow and Poiseuille flow inlet. D=2.0mm, U=2.0m/sec, u'=0.8m/sec, Su=0.317m/sec velocity distributed 1.5. 0.5. Poiseuille flow plug flow. 0.4. 0.3. poiseuille flow plug flow. ξ = 0.3 Gain (a'/u')/(A/U). dimensionless delay time τ*f. 1.0 Radius mm. Radius mm. ξ = 0.2. 0.2. 1.0. 0.5. 0.1. 0.0. 0.0 0. 1. 2. Fig. 2.33. 0. 1. Strouhal number St=fL/U. Strouhal number St=fL/U. Effect of velocity distribution at the burner port. 45. 2.
(29) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. D=2.0mm, U=2.0m/sec, u'=0.8m/sec, Su=0.317m/sec Uco-flow=0.35m/sec plug flow and plug flow with co-flow inlet. D=2.0mm, U=2.0m/sec, u'=0.8m/sec, Su=0.317m/sec Uco-flow=0.35m/sec plug flow and plug flow with co-flow inlet 1.5. with co-flow plug flow. with co-flow plug flow. 0.4. Gain (a'/u')/(A/U). dimensionless delay time τ*f. 0.5. 0.3. 0.2. 1.0. 0.5. 0.1. 0.0. 0.0 0. 1. 0. 2. Fig. 2.34 2.6. 1. 2. Strouhal number St=fL/U. Strouhal number St=fL/U. Effect of co-flow. まとめ. 小型ガス燃焼機器に使用される火炎の燃焼領域の検討を行い層流域から乱流遷移領域の 流れ場で形成されるしわ状層流火炎であることを明確にした。この燃焼領域で実機バーナ 火炎に適用できる実用的な火炎の簡易動的特性モデルを検討し、実験と数値計算にて検証 した。以下に検証事項を示す。 (1)発熱量変動は流速変動に起因する。 (2)発熱量の変動振幅は周波数の累乗(-1.85 乗)に比例する。 (3)火炎の可視化により、混合気流速変動に対する火炎面面積の変動の遅れ時間τは火 炎長と混合気流速により決定される。 (4)遅れ時間τに対する静止時の火炎長 L と燃料ガス・空気混合気のバーナ炎口におけ る平均流速 U を用いた特性時間との比ξを定義した。このときξ=τ/(L/U)は炎口径 が小さいほど小さくなる。 (5)火炎面に流入する乱れをバーナ炎口面積あたりの周囲長で代表した指標を用いて、 ξへの影響を整理した。 (6)多炎口バーナ火炎においても発熱量変動の遅れ時間τは L/U に比例するが、ξが一 定と見なせる周波数の上限が存在する。 (7)G-equation モデルを用いた数値計算においてξ=τ/(L/U)は炎口上の流速分布の違 いによって変化する。 2.7. 参考文献. (1) I. Glassman, Combustion 3rd edition, p.185-215 (2) GRI-Mech ホームページ, http://www.me.berkeley.edu/gri_mech/ (3) Y. Kori and K. Hase, Proceedings of 1995 International Gas Research Conference (IGRC95), vol.4, p.54-63, 1995. 46.
(30) 第2章 流速変動に対する層流予混合火炎の動的特性. (4) W. C. Strahle, J. Fluid Mech., vol. 49, p.399-414, 1971 (5) H. A. Hassan, J. Fluid Mech., vol. 66, p.445-453, 1974 (6) Takeno, Inst. Space and Aero. Sci., Univ. of Tokyo Report, No.430, p.309-347, 1968 (7) 竹野, Journal of the J.S.M.E., 72-610, p.22-29, 1969 (8) B. D. Mugridge, Journal of Sound and Vibration, 70(3), p.437-452, 1980 (9) P. Clavin, J. S. Kim, F. A. Williams, Combustion Science and Technology, vol.96, p.61-84, 1994 (10) J. P. Roberts, Combustion and Flame, 33, p.79-83, 1978 (11) I. R. Hurl, R. B. Price, T. M. Sugden, and A. Thomas, Proc. Roy. Soc. London, A303, p.409-427, 1968 (12) M. Katsuki, Y. Mizutani, M. Chikami and T. Kittaka, 21st Symposium (International) on Combustion, The Combustion Institute, Pittsburgh, p.1543-1550, 1986 (13) 高本, 小竹, 日本機械学会論文集 B 編, vol.48-434, p.2110-2115, 1982 (14) L. Crocco and S. L. Cheng, AGARDOGRAPH No.8, Butterworth Science Publication, 1956 (15) D. Bohn and E. Deuker, CIMAC 20th International Congress on Combustion Engines, 1993 (16) M. Fleifil, A. M. Annaswamy, Z. A. Ghoneim and A. F. Ghoniem, Combustion and Flame, vol. 106, p.487-510, 1996 (17) N. Peters, Journal of Fluid Mech., vol.242, p.611-629, 1992. 47.
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