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論文高 速 流 動 法 に よ る ス テ ン レス 鋼 管 内 壁 面 の 研 磨*

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Academic year: 2022

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(1)論文高 速 流 動 法 に よ る ス テ ン レス 鋼 管 内 壁 面 の 研 磨* 黒. High. 部. 利. 次**中. 森. Speed Flow Finishing. 啓. 介***青. of Inner. 木. Wall of Stainless. Toshiji KUROBE, Keisuke NAKAMORI. 一. 浩†. Steel Pipe. and Kazuhiro AOKI. High speed flow finishing method has recently developed, which has an excellent performance for polishing an inner wall of stainless steel capillary D Present paper focuses on the finishingcharacteristics of the inner wall of stainless steel pipe with high speed flow finishingmethodD It is foundthat bar-typemandrel inserted into the hole of pipe has great performancein finishing, in which a diameter of mandrel is slightlysmallerthan inside diameterof the pipe D Experimentsindicate that surfaceroughnessof the inner wall of pipe decreaseswith the numberof slurryflow pass D It is shown that both of largergrain size and higherconcentration of the abrasivein water solvent,have a greater finishingrate of the pipe D. It is described that larger flow pressure of slurry yields greater surfaceroughness decrease D Key words : stainless steel pipe, inner wall, high speed flow finishing, mandrel,surface roughness. 1.緒. み が入 れ られ てい る.カ ー トリッジAに 挿 入 され て い る2本 の 管 の. 言. 内 の1本(容 液 体 や ガス の 輸 送 手 段 として 管(パ. イプ)が. 用 い られ て い るが,. 器 底 面 近 くまで 挿 入 され て い る管)は 被 研 磨 管 の一. 端 に ゴム 製 の ジ グ を介 して 接 続 され て い る.も う1本 の 挿 入 管 は. 高 純 度 の 液 体 や ガスを輸 送 す る場 合 に は 管 の 内 壁 面 を何 らか の 方. カ ー トリッジBに. 法 で 研 磨 して いる場 合 が 多 い.研 磨 の方 法 として は,ホ ー ニ ング 1)や電 解 研 磨 法2) ,磁 気 研 磨 法3),化 学 研 磨 法4)等 が あり目的 に 応. 管 の 内 の1本 は 直 圧 式 増 圧 器 に接 続 され て い る.カ ー トリッジBは. じて使 い 分 け られ て いる.電 解 研 磨 に砥 粒 の擦 過 作 用 を複 合 させ. させ るた め の トラップ で ある.. た 電 解 複 合 研 磨 法5)も,効 果 が あるとい わ れ て いる.し か しな が ら,. 連 結 され て いる.カ. ー トリッジBに 挿 入 され て い る. 直 圧 式 増 圧 器 に砥 粒 が 侵 入 す ることを防 ぎ,装 置 の 耐 久 性 を 向 上. 図2に,新. た に製 作 した 試 料 保 持 具 の詳 細 図 を 示 す.溶 媒 に 砥. ホー ニ ングや 電 解 研 磨 法 は研 磨 で きる管 の 長 さが 数 十cm前 後 と短. 粒 を懸 濁 させ た 液(ス ラリー)を 管 内 で 高 速 流 動 させ るた め,図2. く,工 具 等 を 管 内 に挿 入 しな けれ ば な らな い とい った 問 題 もあ り,. に 示 す ように管 内 に芯 棒(マ ン ドレル)を 挿 入 した.マ. 研 磨 で きる管 の 内 径 も 自ず と制 約 を受 けることにな る.一 方,磁 気. 外 径dは,管. 研 磨 法 や 化 学 研 磨 法 は,研. と管 内壁 との 間 に極 め て小 さな 隙 間(ク リア ランス)が で きる.. 磨 媒 体 として 磁 性 流 体 や 化 学品. を. 使 用 す るた め 液 の 管 理 が 難 しく,必 ず しも良 好 な 仕 上 げ 面 とは な ら. の 内 径Dよ りも僅 か に 小 さい.こ のた め,マ ン ドレル. スラリー は,こ の 隙 間 を通 ることによって 高 速 で 流 れ ることにな る. マ ンドレル の左 右 両 端 面 に は,円 錐 状 の座 ぐりが入 れ られ て い る.. な い とい っ た 問 題 もある. これ らの 研 磨 法 以 外 に,高 速 流 動 研 磨 法 と呼 ば れ る研 磨 法 が 近 年 開 発 され た6).そ れ は,溶. ン ドレル の. 媒 に 砥 粒 を懸 濁 した 液 体(ス ラリー). そ の 円 錐 穴 に キ リ状 の支 え棒 を 差 込 み,マ. ンドレル を保 持 ・固 定. す る.マ ン ドレル は ステ ン レス鋼 製 で,そ の 寸 法 は 外 径 φ4mmx長. を空 気 圧 を介 して 微 細 管(キ ャピラリー)内 に 強 制 流 入 させ,そ れ を. さ200mmで. キャピラリー の 両端 間 で 交 互 に繰 り返 し往 復 動 させ ることに よっ て研. 端 の太 い 丸 棒(外 側 に ね じ切 りが施 され て い る)と一 体 成 形 され て. 磨 す る方 法 で ある.工 夫 を施 せ ば,本 研 磨 法 は 内 径1mm以. あ る.マ ンドレル を支 える円 錐 状 の 支 え 棒 は,左(右). 上の. 管 の 場 合 にも適 用 可 能 で は な い か と考 え られ る. 本 研 究 で は,管. 内 に 芯 棒(マ. ンドレル)を 挿 入 して 高 速 流 動 研. 磨 を行 う方 法 につ い て 実 験 的 検 討 を行 っ た.. 2.実. 2.1研. 験. 方. 法. 磨 装 置 お よび 試 料 保 持 具. ステ ンレス鋼 管 内 壁 面 の 研 磨 は. ,先 に開 発 され た 高 速 流 動 研 磨. 装 置 に 一 部 改 良 を加 えて 行 った,装 置 の構 成 と機 構 を簡 潔 に 記 す と次 ぎ の ようで ある.研 圧 式 増 圧 器,カ. 磨 装 置(図1)は ,エ アコン プ レッサ,直 ー トリッジ,架 台 等 か ら構 成 され て い る.図1に 示. Fig.1 Schematic. view of polishing. す ように,ス テ ンレス鋼 管 の左 右 両 端 に は そ れ ぞ れ2個 の カー トリッ ジ(A,B)が配置 (水 道 水)が *原 **正 ***金. され て お り,カ ー トリッジAに 入 れ られ て い る.一 方,カ. 稿 受 付 平 成14年4月26日 会員 金 沢 大 学 工 学 部(金 沢大 学大 学院. † 金 沢大 学. 274精. 粒 と溶 媒. 沢 市 小 立 野2‑40‑20). 工学部. 密 工 学 会 誌Vol.69,No. は ,砥. ー トリッジBに は 水 道 水 の. Fig.2 Pipe holding device. .2,2003. setup.

(2) 黒 部 ・中 森 ・青 木:高 速 流 動法 によ る ステ ン レス 鋼 管 内壁 面 の 研 磨. Table. 1 Experimental. condition. (a) Virgin pipe. い る.マ ン ドレル は,外 ことが な い,供. 筒 に 強 くね じ締 め され スラリー は 漏 洩 す る. 試 材 は ス テン レス鋼 製 の 管 で,そ. 4イ ンチ で 外 径6.35mmx内 は,配. 径4.35mmx長. の 呼 び 寸 法 は1/. さ190mmで. ある.外. (b) Polished pipe. 筒. Fig.3. 管 用 の 継 ぎ 手 を用 い て研 磨 装 置 に接 続 され て い る.. Surface. roughness. 実 験 に 際 し,エ ア コンプ レッサ を稼 動 し圧 縮 空 気 をフィル タレギ ュ レター を 介 して 一 定 の 圧 力(0.49MPa)に. 制 御 し,直. よって シ リンダ 内 部 の 水 道 水 を 空 気 圧 の25倍. 圧 式増圧 器 に. まで 増 圧 し,カ ー ト. リッジB内 の 水 道 水 に 流 体 圧 を加 え る,こ の た め,カ ー トリッジB内 の 水 道 水 は カー トリッジA内. に 注 送 され,カ. ー トリッジA内. の水道. 水 に 流 体 圧 を加 えることにな る.こ の ことによって,カ ー トリッジA内 の 底 部 近 くまで 挿 入 され てい る管 を通 って,底 部 に予 め 沈 殿 させ て お い た砥 粒 が 水 道 水 ごと管 内 に注 送 され ることに なる.研 磨 は,ス ラリー が マ ン ドレル と管 内 壁 との 隙 間 を高 速 で流 れ ることに よって 行 われ る.図1の. 左(右)側. リー が,右(左)側. のカ ー トリッジAの 容 積 に相 当 す るスラ. の カー トリッジAに. 注 送 され て 移 動 し終 わ った. ときを1パ スとす る. 2.2実. 験 条 件 お よび 評 価 方 法. ステ ンレス鋼 管 内 壁 面 の研 磨 は,ア て行 った.実. 験 条 件 を 表1に 示 す.実. ル ミナ 砥 粒(Al2O3)を 験 は,管. 内 壁 面 とマ ン ドレル との 隙 間 を 一 定 に して,且 の 注 送 圧 力 を2.9〜12.8MPと 径5.5,20,57μmの3種. 用い. の 長 さお よび 管. Fig.4 Relationship. between. surface roughness. and pass number. surface. and pass number. つ スラリー の 管 内 へ. 変 えて 行 っ た.研 類 の 砥 粒 を用 い,砥. 磨 に は,平. 均粒. 粒 濃 度 を5,10,. 15vol%と 変 化 させ て 実 験 を行 った. 研 磨 後,薄 刃 回 転 砥 石 を 用 い て 管 をそ の 長 手 方 向 に切 断 し,管 内 壁 面 を 光 学 顕 微 鏡(ニ コン製:OPTOPHOTO)で た,触. 観 察 した.ま. 針 式 粗 さ計(東 京 精 密 製:サ ー フコム1400A)を. 用 い てプ. ロー ブ を 管 軸 方 向 に トレー ス し,粗 さ曲 線 を描 画 させ た.カ ットオフ 値 は0.8mmで. ある. 3.実. 3.1注. 験. 結. 果. 送圧 力 の影響. 先 ず 始 め に,管 に マ ンドレル を挿 入 しな い状 態 で研 磨 を行 っ た. 実 験 は,粒. 径57μmの. 砥 粒 を用 い 砥 粒 濃 度 を15vol%と して,ス. ラリー を160パ ス 流 動 させ て 行 った.図3に,実 3に は,研 磨 前(N=0)の る.図3か. 験 結 果 を示 す.図. ら,マ ンドレル を挿 入 しな い で 加 工 した場 合 の表 面 粗 さ. は2.99μmで. Fig.5 Relationship. between. roughness. バ ー ジンパ イプ の測 定 結 果 も併 記 してい. あ り,研 磨 前(N=0)の. 供 試 材 の 表 面 粗 さ3.35μ. た.図4に,平. 均 粒 径57μmの. 砥 粒 を用 い,砥. 粒 濃 度 を5vol%. とした場 合 の パ ス回 数 と表 面 粗 さの 関 係 を示 す.図4か. ら,パ ス 回. mと 比 較 して幾 分 加 工 が な され た ことが わ か る.し か しな が ら,管. 数 が増 える につ れ てい ず れ の 注 送 圧 力 の 場 合 も表 面 粗 さが急 激 に. に マ ンドレル を挿 入 しな い 加 工 は 大 きな効 果 がな いとい え る.こ の. 減 少 し,そ の 後 漸 減 状 態 へ と推 移 す ることが わ か る.注. ことは,写. 最 も大 きい12.8MPaの. そこで,管. 真 や 粗 さプ ロフィー ル か らも明 らか で あ る, に マ ンドレル を挿 入 して 研 磨 を行 った 。 実 験 は,ス ラ. リー の 注 送 圧 力 を2.9,5,9,8.8,12.7MPaと4段. 階 に変 えて 行 っ. 場 合 は,160パ. は まだ 低 減 す る傾 向 が 見 られ る.表. 送圧 力が. ス 回 数 に 至 って も表 面 粗 さ 面 粗 さの 絶 対 値 をパ ス 回 数. 160の ところ で 比 較 す ると,2.9,5.9,8.8,12.7MPaの. 精 密 工 学 会 誌Vol.69,No.2,2003. 順 に小 さ. 275.

(3) 黒 部 ・中 森 ・青 木:高 速 流 動 法 に よ る ス テ ン レス 鋼 管 内壁 面 の 研 磨. (a) Grain concentration. (b) Grain concentration. 5vol% (a). Grain. size. 5.5 ƒÊm. (b). Grain. size. 57 ƒÊm. 10vol%. Fig.7. Relation. between. surface. roughness. and Grain. concentration. ス 回 数 と表 面 粗 さの 関 係 を 示 す.図6(a),図6(b),図6(c)は,砥 粒 濃 度 をそ れ ぞ れ5,10,15vol%と 図6(a)か ら,砥 57μmの. した 場 合 の 測 定 結 果 を表 す,. 粒 濃 度 が5vol%の. 場 合,平. 均 粒 径 が5.5,20,. い ず れ の 砥 粒 の 場 合 とも,パ ス回 数 が 増 え るに つ れ て 表. 面 粗 さが な だ らか に 減 少 して い く様 子 が わか る.、実 験 は パ ス 回 数 160回 まで 行 って い るが,160回. のパ ス 回 数 で もまだ 表 面 粗 さが 減. 少 す る傾 向 が 見 られ る.減 少 の度 合 い は,粒 径 の 大 きい粗 粒 ほど 大 きい.ま (c) Fig.6. Grain concentration. 15vol%. Effect of pass numer on surface. roughness. た,表. 面 粗 さの 絶 対 値 は,細. 図6(b)か ら,砥 粒 濃 度 が10vol%の. 粒 の 砥 粒 ほ ど大 きい,. 場 合 も砥 粒 濃 度 が5vol%の 場. 合 と同 様 なカ ー ブ を描 くことが わ か る.し か しな が ら,い ず れ の 粒 径 の場 合 も表 面 粗 さの 絶 対 値 は 砥 粒 濃 度5vol%の 場 合 よりも小 さな. な値 で あ ることが わ か る.. 値 となる.ま た,図6(c)か. ら砥 粒 濃 度 が15vol%と 濃 くな った 場 合 も,. 5,10vol%の. 砥 粒 濃 度 と同様 な 曲線 を描 くことが わ かる.平 均 粒 径. か ら,砥 粒 濃 度 が15vol%の 場 合 もパ ス回 数 が増 え るに つ れ て 表 面. が57μmの. 砥 粒 に 関 して み ると,表. 粗 さが 急 激 に 減 少 し,そ の 後 漸 減 状 態 へ と推 移 す ることが わか る.. 砥 粒 径 に 比 べ 極 め て 大 きくなることが わ か る.表. ま た,砥. は,砥. 図5に,砥. 粒 濃 度 を15vol%と した 場 合 の実 験 結 果 を示 す 。 図5. 粒 濃 度 が15vol%と 高 い 場 合 に は,砥. 粒 濃 度 が5vol%の. 場 合 より表 面 粗 さの絶 対 値 は 小 さくな ることが わ か る. 3.2注 1)パ. 送 圧 カ ー 定 の結 果 ス回数と表面粗さ. 粒 濃 度 が5,10vol%の. この ように,図6か くな るが,管. 注 送 圧 力 に 関 す る実 験(図4 ,図5)か. 面 粗 さの 低 減 度 合 い は 他 の 面 粗 さの 絶 対 値. 場 合 よりも小 さくな る.. ら砥 粒 径 が 大 きくな る につ れ て表 面 粗 さは小 さ. とマ ンドレル の クリアランスを 考 えた 場 合,表. 面 粗 さの. 低 減 に 最 適 な粒 径 が 存 在 す るもの と考 えられ る.む や み に 砥 粒 径. ら,注 送 圧 力 を大 きくした 方 が 表 面 粗 さの 低 減 に効 果 があ ることが. が 大 きくな って も逆 の 効 果 をもた らす と考 え られ る.こ の 点 に 関 して. わ か っ た.そ こで,注. は,今. 10,15vol%の3通. 定 とし,砥 粒 濃 度 を5,. りに 変 え ,さ らに そ れ ぞ れ の 濃 度 に つ い て 砥 粒. 径 を5.5,20,57μmの3通. 276精. 送 圧 力 を12 .7MPa一. り変 えて 実 験 を行 った.図6に,パ. 密 工 学 会 誌 陵Vol.69.No. .2,2003. 後 さらに詳 細 な検 討 が必 要 であ る.. II)砥 粒 径 と表 面 粗 さの 関係. 図6の 実 験 結 果 をもとに,表 面 粗. さと砥 粒 濃 度 の 関 係 をパ ス回 数 をパ ラメー タとして 再 整 理 した.図.

(4) 黒 部 ・中 森 肩 木:高 速 流 動 法 に よ るス テ ン レス 鋼 管 内 壁 面の 研 磨. Fig.9. Fig.8 Optical micrographs of inner wall surface 7に,そ. の 結 果 の 一 例 を示 す.図7(a)は. に 関 す る結 果 を,図7(b)は. 平 均 粒 径5.5μmの. 平 均 粒 径57μmの. 砥粒. 砥 粒 の結 果 を 表 す.. Optical. micrographs. of inner wall surface. 粒 を 懸 濁 した 液 で あ る.そ の 液 は,固 体 一 液 体 系 で の 単 分 散 系 粒 子 群 に属 して い て,疎 液 性 で 高 濃 度 に なるまで ニ ュー トン 流 体 とし. 砥 粒 に 関 して は,い ず れ の パ ス 回 数. て の 性 質 を示 す.実 験 に は,数 ミクロンか ら数 十 ミクロン の 大 きさの. の 場 合 も表 面 粗 さは 砥 粒 濃 度 に ほ とん ど依 存 しな い ことが わ か る.. 砥 粒 を用 い てい るの で,研 磨 媒 体 は ヒドロゾル と呼 ば れ る構 造 流 体. 図7(a)か ら,細 粒(5.5μm)の 一方. ,図7(b)か. ら粗 粒(57μm)の. 砥 粒 の 場 合 は,砥. える と表 面 粗 さは 直 線 的 に 減 少 す る とこが わ か る.減 は,パ. 粒 濃 度が増 少の度 合 い. これ は 次 の 理 由 によるもの と考 え られ る.作 用 砥 粒 数 が 一 定 で あ ると,1パ スあ た りの 表 面 粗 さの低 減 量 は 一 定 の 値 にな ると考 えられ る.砥 粒 濃 度 の 増 加 は 作 用 砥 粒 数 の 増 加 を意 味 す るの で,表. 面. 粗 さの低 減 量 も砥 粒 濃 度 に比 例 して 大 きくなった もの と推 察 され る. 皿)光 学 顕 微 鏡 に よる観 察.研 磨 後 の 管 内 壁 面 を光 学 顕 微 鏡 を. 5vol%に して160パ. 径57μmの. 砥 粒 を用 い 砥 粒 濃 度 を. スを繰 り返 した ときの観 察 結 果 を示 す.図8に. は,粗 さプ ロフィー ル も併 記 して い る.図8か. ら,パ ス 回 数 が 多 くな. る につ れ て 表 面 粗 さは 次 第 に 低 減 して い く様 子 が わか る.し か し, 160回 パ スを繰 り返 した 後 でも表 面 に は 筋 状 の模 様 が未 だ 幾 分 残 っ て い る.こ の ことか ら,本 研 磨 条 件 で は 平 渦 な表 面 を得 ることは で. 径57μmの. 験 で は,砥. 粒 濃 度 を最 大. このような 研 磨 媒 体(ス ラ リー)を 用 い てステ ン レス鋼 管 内 壁 面 を 研 磨 して い るが,以. 砥 粒 を用 い砥 粒 濃 度 を15vol%と 多 くして. 160回 パ ス研 磨 した ときの観 察 結 果 を示 す.図9か. ら,パ ス回 数 が. 下 に そ の 研 磨 機 構 に つ い て 考 察 す る.研. なクリア ランス をつ くり行 って い る.管 の 軸 方 向 に流 れるスラリー の流 動 状 態 は,レ D,マ. イノル ズ 数 に よっ て規 定 され る.い. ンドレル の 外 径 をd,ス. 過 す る時 間 をt,流. ま,管. ラリー の流 速 をu,ス. 量 をQ,直. 圧 式 増 圧 器 の コラムの 容 積 をVと. す ると,連 続 の 式 より, Q=π(D2‑d2)u/4. (1). が 成 り立 つ.Q=V/tで ここで,Dは. あるの で,u=4V/π(D2‑d2)tと. φ4.35mm,dは. φ4mm,tは. あ るので,管. 5.50m/sと な る.こ こで,水 Reは,Re=u(D‑d)/2vで. の 穴 の 中 を流 れ る流 体 の 流 速uは. の 動 粘 度 をvと す る と,レ イノル ズ数. 表 され る.vの. 値 は1.0064mm2/sで. 増 し160パ ス 流 動 させ ると,表 面 に 見 られ た 筋 状 の 模 様 が ほ ぼ 消 え. 管 内 の 流 体 の 流 れ は 層 流 に な って い ると推 測 され る.. 沢 の ある平 滑 な 面 に なる.. 4.考. 察. 図10に,管. な る.臨. な る.. 実 測 の 結 果6.1秒,V. 40回 でか な り表 面 が 滑 らか に なる様 子 が わ か る.さ らにパ ス 回 数 を. 面 は,光. の 内径を. ラリー が 管 を通. の で,Re=956と. てな くな る.表. 磨. は,管 内 に マ ン ドレル を挿 入 して 管 内 壁 面 とマ ンドレル の 間 に 狭 隘. は77×103mm3で. きな い とい える. 図9に,粒. な って い る.実. す ことが で きる.. ス 回 数 に依 存 しな い ように 思 わ れ る.. 用 い て 観 察 した.図8に,粒. (粒 径:1〜50μm)と. で15vol%と してい るの で研 磨 媒 体 は 比 重 の 大 きな等 質 な 液 体 とみ な. 界 レイノル ズ 数 は2300で. 内 を流 れる 流 体(ス ラリー)の. ある. あるの で7B),. 流 動 状 態(模. 式 図). を示 す.図10は,管. の 中 心 を通 る軸 に 関 して 切 断 した ときの 断 面. を表 す.u(y)は,管. 内 壁 か らマ ン ドレル に 向 か っ て 距 離y隔 っ た位. 置 に お け るスラリー の 流 速 を示 す. 研 磨 媒 体 のスラリー は,溶 媒(水)に. 溶 質 の アル ミナ(Al2O3)砥. 層 流 状 態 で 流 れ る流 体 中 の 砥 粒 は,溶 媒 か ら静 水 圧 と軸 方 向 に. 精 密 工 学 会 誌Vol.69,No.2,2003. 277.

(5) 黒 部 ・中森 ・青木:高 速 流 動 法 に よ るス テ ン レス 鋼 管 内 壁 面の 研 磨. が 低 くな っ て くると,研 磨 対 象 とな る突 起 数 は 増 加 して くる.す な わ ち,負 荷 率 が 大 きくなっ て くる.し か し,突 起 高 さの 減 少 は 衝 突 確 率 の 減 少 と衝 突 断 面 積 の 低 下 をもた らす.こ の ことが,表 面粗 さの 低 減 が次 第 に緩 や か なもの にな った 原 因 で あ ると考 え られ る.. 5.結. 言. 高 速 流 動 法 を適 用 して ステ ン レス 鋼 管 内 壁 面 の 研 磨 を行 っ た結 果,次. の結 論 を得 た.. (1)管 内 壁 面 を効 率 よく研 磨 す るた め に,管 内 にマ ン ドレル を挿 入 す る新 た な 高 速 流 動 研 磨 法 を開 発 した. (2)製 作 したマ ンドレル 保 持 装 置 は 良 好 な 水 密 性 を有 して お り, スラリー の繰 返 し高 速 流 動 に 対 して 十 分 耐 えることが わ か った . (3)表 面 粗 さは,パ ス 回 数 が増 え るに つ れ て 小 さくなる.ま た, 表 面 粗 さの 絶 対 値 は粒 径 が 大 きい ほ ど小 さくな る. (4)砥 粒 濃 度 が 高 くな るに つ れ て,表 Fig.10. Slurry flow mode. 謝. 流 体 圧 を受 け る.静 水 圧 は研 磨 作 用 に影 響 を 及 ぼ さな い の で,研 磨 に は 軸 方 向 に 流 れ る流 体 圧 だ けが 関 与 す る.研. 磨 は,砥. 粒の. 壁 面 へ の衝 突 と引 っ掻 き作 用 によって 行 わ れ るの で,ス ラリー の 流 動 速 度 が 大 きい ほ ど砥 粒 の運 動 エ ネ ル ギ ー が大 きくな る.ま た,粒. 高速 流動研 磨 装 置および マンドレル保 持 具は,金 沢 大学 技術支. 径 の 大 きな 砥 粒 ほ ど運 動 エ ネ ル ギ ー が 大 きくな る.こ の た め,表 面. 図6に 示 す 実 験 結 果 は,こ の ことを物 語 っ て い る. 図6に 示 す ように,表 面 粗 さは パ ス 回 数 の 少 な い段 階 で急 激 に減 少 す る.そ して,そ の 後 パ ス回 数 が 増 え るに つ れ て 漸 減 して い く. の 理 由 によると思 わ れ る.研. 磨 前 の パ イプ 内 壁 面 は,. 微 細 な 凹 凸 形 状 を 有 す る粗 い 面(図10)と な って い る.こ の 凹 凸 形 状 の 除 去 が 研 磨 作 用 で ある の で,図4,図5,図6の 砥 粒 の 壁 面 突 起(凹. 凸 形 状)へ. 測定結 果は. の 衝 突 確 率 と衝 突 断 面 積 を考 え. ることに よって 説 明 で きると思 われ る.高. い 突 起 ほ ど砥 粒 に 対 す る. 衝 突 断 面 積 は 大 きい.ま た,高 い 突 起 ほ ど衝 突 す る砥 粒 の 数 が 多 くな り衝 突 確 率 も大 きくな る.ス ラリー は 層 流 状 態 で 流 れ て い るの. 参 考 文 献 1) 田 中 義 信,津. 2). は,こ の ことが 原 因 して い ると考 え られ る.研 磨 が 進 み 突 起 の 高 さ. 田島. 栄:表. 面 処 理 ハ ン ドブ ック,産. 3) 進 村 武 男:磁. 立 出 版,(1982). 業 図 書, (1969)377.. 気 研 磨 法 の 現 状 と課 題,機. 械 と工 具,. 40,. 4) 鴨 川 昭 夫:実. 践 機 械 工 作 法,機. 5) 木 本 康 雄,矢. 野 章 成,杉. 械 技 術, 39,. 5 (1991) 106 .. 田 忠 彰:マ イクロ応 用 加 工,共. 立出. 版, (1986) 67. 6) 山 本 桂 一 郎,黒. 部 利 次,山. 田 良 穂,三. レス鋼 管 内壁 の 高 速 流 動 研 摩(第1報)‑研 精 密 工 学 会 誌, 7) 加 藤 8). 宏:流. 生 井 武 文,井. 64,. 浦 毅 彦:極. 細 ス テン. 摩 の 基 本 特 性‑,. 1(1998) 126.. れ の 力 学,丸. 善, (1993) 50.. 上 雅 弘:粘. 性 流 体 の 力 学,理. 工 学 社, (1978). 185.. 編 集 後 記 本 特 集 で は 近接 場 技 術 の 最 近 の 動 向 と工 学応 用 へ の展 開 の 方 向 を 知 る こ と が で き れ ば と 企 画 い た し ま し た.プ. ロ ー ブ技 術 は ナ ノ. メ ー トル 領 域 の 研 究 手 段 と し て 大 い に 期 待 さ れ て い る 状 況 で す . 電 素 子 を 用 い た 位 置 決 め 技 術 や,制 御 技 術,. 装 置 の 構 成 上 も,圧 計 測 技 術,剛. 性 の 高 い 構 造 等,精. 注 目 す べ き 分 野 と 思 い ま す.最 ノ ー ベ ル 賞 を 受 け たIBMチ タス トレ ー ジの り,プ. 密 工 学 に 関 係 す る 技 術 も 多 く, 近 で は,本. 技術 の発明者 であ り. ュ ー リ ッ ヒ 研 究 所 のBinnigら. しい 中,ご 執 筆 い た だ い た 著 者 の. 賞 受 賞 に 関す る背 景 を知 る タイ ム リー な記 事 とな りま した.ノ ー ベ ル 賞 が 身近 に感 じられ,閉 塞 感 の あ る 日本 に お いて,夢 を与 え て くれ ま した.イ. ン タ ビ ュ ー を受 け て い た だ い た 吉 田氏 を は じ. め,島 津 製 作 所 の 社 長 室広 報 の中 田 さん,紹 介 をい た だ い た経 済. 「ナ ノ ド ラ イ ブ 」 プ ロ ジ ェ ク トに か か わ っ て お. 産業 省 の小 西 氏 お よび ワ ー キ ン グ グル ー プ の方 々 に感 謝 い た し ま. 術 で 製 作 し,う. ま く行 け ば 数 年. 後 の 実 用 化 を 目 指 し て い る と の こ と で す(Scientific. America,. Jan. 2003あ る い はhttp://www.zurich.ibm.com /st /storage /mil‑ lipede.html).科 学 分 野 で 主 に利 用 さ れ て きた プ ロ ー ブ 技 術 が , 産 業 技 術 と して 展 開 さ れ る 兆 し で あ り ま す.本. 278精. の一 助 と な れ ば 幸 い で す.忙. 方 々 に 感謝 い た します. イ ン タビ ュ ーは,昨 年 度 話 題が 集 中 し ま した 田 中氏 の ノーベ ル. がデー. ロ ー ブ ア レ イ をMEMS技. 密 工 学 会 誌Vol.69,No.2,2003. 特 集 が読 者 の 関 心. 5. (1996) 16.. の 形 で 速 くな る.す な わ ち,高 い 突 起 ほ ど研 磨 作 用 を 強 く受 け るこ 面 粗 さが パ ス回 数 の 少 な い 段 階 で 急 激 に減 少 した の. 和 秀 夫:機 械 工 作 法(下),共. 33.. で,流 速 は パ イプ 内 壁 面 か らパ イプ 中 心 軸 に 向 か っ て 放 物 線 形 状. とにな る.表. 辞. 援セ ンターで製 作 されたもの であり記して謝意 を表す.. 粗 さの低 減 度 合 い は 粗 粒 ほ ど大 きくな る と推 察 され る.図4,図5,. これ は,次. 面 粗 さは 小 さくな る.. (5)ス ラリー の 注 送 圧 力 が 大 きくなる と,表 面 粗 さは 小 さくな る.. す。 最 後 に短 い 時 間 に もかか わ らず 本特 集 を取 りま とめ て いた だ い た,学 会 編 集 部 の 方 々 に感 謝 い た し ます. (羽根 一博).

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参照

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